(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029109
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
G01R15/20 D
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132252
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 智也
(72)【発明者】
【氏名】原 宇史
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA15
2G025AB01
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】周囲に生じる磁界の影響を抑制できる電流センサを提供する。
【解決手段】電流センサは、磁束密度の検出結果として第1検出結果を出力する第1磁気検出部14と、磁束密度の検出結果として第2検出結果を出力する第2磁気検出部24と、磁束密度の検出結果として第3検出結果を出力する第3磁気検出部34と、予め設定された第1影響度と第2検出結果を増幅した第2増幅信号と第3検出結果を増幅した第3増幅信号とに基づいて第1検出結果を増幅した第1増幅信号を補正する第1補正部16と、予め設定された第2影響度と第1増幅信号と第3増幅信号とに基づいて第2増幅信号を補正する第2補正部26と、予め設定された第3影響度と第1増幅信号と第2増幅信号とに基づいて第3増幅信号を補正する第3補正部36と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体、第2導体、及び第3導体の夫々に流れる電流の電流値を測定する電流センサであって、
前記第2導体及び前記第3導体よりも前記第1導体側において、前記第1導体を流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面が設けられ、前記磁束密度の検出結果として第1検出結果を出力する第1磁気検出部と、
前記第1導体及び前記第3導体よりも前記第2導体側において、前記第2導体を流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面が設けられ、前記磁束密度の検出結果として第2検出結果を出力する第2磁気検出部と、
前記第1導体及び前記第2導体よりも前記第3導体側において、前記第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面が設けられ、前記磁束密度の検出結果として第3検出結果を出力する第3磁気検出部と、
周囲の温度に基づいて予め設定された第1増幅率を補正する第1増幅率補正部と、
前記温度に基づいて予め設定された第2増幅率を補正する第2増幅率補正部と、
前記温度に基づいて予め設定された第3増幅率を補正する第3増幅率補正部と、
補正された前記第1増幅率に基づいて前記第1検出結果を増幅し、第1増幅信号として出力する第1増幅部と、
補正された前記第2増幅率に基づいて前記第2検出結果を増幅し、第2増幅信号として出力する第2増幅部と、
補正された前記第3増幅率に基づいて前記第3検出結果を増幅し、第3増幅信号として出力する第3増幅部と、
前記第1検出結果に対する前記第2導体及び前記第3導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示し、予め設定された第1影響度を補正する第1影響度補正部と、
前記第2検出結果に対する前記第1導体及び前記第3導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示し、予め設定された第2影響度を補正する第2影響度補正部と、
前記第3検出結果に対する前記第1導体及び前記第2導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示し、予め設定された第3影響度を補正する第3影響度補正部と、
補正された前記第1影響度と前記第2増幅信号と前記第3増幅信号とに基づいて前記第1増幅信号を補正する第1補正部と、
補正された前記第2影響度と前記第1増幅信号と前記第3増幅信号とに基づいて前記第2増幅信号を補正する第2補正部と、
補正された前記第3影響度と前記第1増幅信号と前記第2増幅信号とに基づいて前記第3増幅信号を補正する第3補正部と、
を備える電流センサ。
【請求項2】
前記第1影響度は、前記第1導体のみに電流を流した場合の前記第1検出結果に対して、前記第1導体と同時に前記第2導体及び前記第3導体にも電流を流した場合に前記第1磁気検出部に入力される前記第2導体及び前記第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標であって、
前記第2影響度は、前記第2導体のみに電流を流した場合の前記第2検出結果に対して、前記第2導体と同時に前記第1導体及び前記第3導体にも電流を流した場合に前記第2磁気検出部に入力される前記第1導体及び前記第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標であって、
前記第3影響度は、前記第3導体のみに電流を流した場合の前記第3検出結果に対して、前記第3導体と同時に前記第1導体及び前記第2導体にも電流を流した場合に前記第3磁気検出部に入力される前記第1導体及び前記第2導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標である請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1導体と前記第2導体と前記第3導体とは、夫々の軸心が互いに平行になるように設けられ、
前記第1影響度は、前記第1導体と前記第2導体との間隔、前記第1導体と前記第3導体との間隔、前記第1導体の軸心から見た前記第2導体の軸心の位置、及び前記第1導体の軸心から見た前記第3導体の軸心の位置に基づいて規定され、
前記第2影響度は、前記第1導体と前記第2導体との間隔、前記第2導体と前記第3導体との間隔、前記第2導体の軸心から見た前記第1導体の軸心の位置、及び前記第2導体の軸心から見た前記第3導体の軸心の位置に基づいて規定され、
前記第3影響度は、前記第1導体と前記第3導体との間隔、前記第2導体と前記第3導体との間隔、前記第3導体の軸心から見た前記第1導体の軸心の位置、及び前記第3導体の軸心から見た前記第2導体の軸心の位置に基づいて規定される請求項1又は2に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導体の夫々に流れる電流の電流値を測定する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の導体の夫々を流れる電流の電流値を測定する電流センサが利用されてきた。このような電流センサとして、導体を流れる電流に応じて当該導体の周囲に生じる磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出し、その検出された磁束密度に基づいて導体に印加された電流を演算して求めるものがある。このような電流センサとして、例えば下記に出典を示す特許文献1-2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の電流センサは、3本の導体の夫々に対して対向するように3つの磁気検出素子を配置する。これら3本の導体及び3つの磁気検出素子は、位置や角度を調整して配置することで、3本の導体における互いの干渉を抑制している。
【0004】
特許文献2に記載の電流センサは、1本の導体に対して2つの磁気センサを配置し、夫々の磁気センサは導体からの距離が略等しく、且つ、互いの感度軸がほぼ同一方向を向くように配置される。2つの磁気センサの出力の差をとることにより、外部磁界の影響を低減し、互いの出力のオフセットを相殺してオフセットの影響を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-100923号公報
【特許文献2】国際公開2013/011859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術は、導体の周囲に生じる磁界の磁束を集磁するコアを用いずにコンパクト、且つ、低コストで構成している。しかしながら、周囲に生じる磁界の影響を抑制するために、磁気検出素子を配置する際に位置、角度、距離等を考慮して行う必要があり、配置上の制約を受け、容易に構成することができない。
【0007】
そこで、周囲に生じる磁界の影響を抑制し、容易に構成することが可能な電流センサが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電流センサの特徴構成は、第1導体、第2導体、及び第3導体の夫々に流れる電流の電流値を測定する電流センサであって、前記第2導体及び前記第3導体よりも前記第1導体側において、前記第1導体を流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面が設けられ、前記磁束密度の検出結果として第1検出結果を出力する第1磁気検出部と、前記第1導体及び前記第3導体よりも前記第2導体側において、前記第2導体を流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面が設けられ、前記磁束密度の検出結果として第2検出結果を出力する第2磁気検出部と、前記第1導体及び前記第2導体よりも前記第3導体側において、前記第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面が設けられ、前記磁束密度の検出結果として第3検出結果を出力する第3磁気検出部と、周囲の温度に基づいて予め設定された第1増幅率を補正する第1増幅率補正部と、前記温度に基づいて予め設定された第2増幅率を補正する第2増幅率補正部と、前記温度に基づいて予め設定された第3増幅率を補正する第3増幅率補正部と、補正された前記第1増幅率に基づいて前記第1検出結果を増幅し、第1増幅信号として出力する第1増幅部と、補正された前記第2増幅率に基づいて前記第2検出結果を増幅し、第2増幅信号として出力する第2増幅部と、補正された前記第3増幅率に基づいて前記第3検出結果を増幅し、第3増幅信号として出力する第3増幅部と、前記第1検出結果に対する前記第2導体及び前記第3導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示し、予め設定された第1影響度を補正する第1影響度補正部と、前記第2検出結果に対する前記第1導体及び前記第3導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示し、予め設定された第2影響度を補正する第2影響度補正部と、前記第3検出結果に対する前記第1導体及び前記第2導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示し、予め設定された第3影響度を補正する第3影響度補正部と、補正された前記第1影響度と前記第2増幅信号と前記第3増幅信号とに基づいて前記第1増幅信号を補正する第1補正部と、補正された前記第2影響度と前記第1増幅信号と前記第3増幅信号とに基づいて前記第2増幅信号を補正する第2補正部と、補正された前記第3影響度と前記第1増幅信号と前記第2増幅信号とに基づいて前記第3増幅信号を補正する第3補正部と、を備える点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、第1磁気検出部の出力に第2磁気検出部及び第3磁気検出部の出力をフィードバックし、第2磁気検出部の出力に第1磁気検出部及び第3磁気検出部の出力をフィードバックし、第3磁気検出部の出力に第1磁気検出部及び第2磁気検出部の出力をフィードバックして検出することができる。したがって、第1磁気検出部の出力に対して第2導体及び第3導体の夫々を流れる電流の影響を低減し、第2磁気検出部の出力に対して第1導体及び第3導体の夫々を流れる電流の影響を低減し、第3磁気検出部の出力に対して第1導体及び第2導体の夫々を流れる電流の影響を低減することができるので、磁束密度の検出精度を向上することが可能となる。本電流センサは、このように検出精度を向上して検出された磁束密度に基づいて電流の電流値を測定するので、精度良く電流値を測定することが可能となる。また、集磁するための部品や外乱を抑制するための部品(例えばコアやシールド板)を必要とせず、導体に流れる電流を高精度に検出することが可能となる。更には、集磁するための部品や外乱を抑制するための部品が必要ないので電流センサを小型化できる共に、低コストで実現できる。
【0010】
また、前記第1影響度は、前記第1導体のみに電流を流した場合の前記第1検出結果に対して、前記第1導体と同時に前記第2導体及び前記第3導体にも電流を流した場合に前記第1磁気検出部に入力される前記第2導体及び前記第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標であって、前記第2影響度は、前記第2導体のみに電流を流した場合の前記第2検出結果に対して、前記第2導体と同時に前記第1導体及び前記第3導体にも電流を流した場合に前記第2磁気検出部に入力される前記第1導体及び前記第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標であって、前記第3影響度は、前記第3導体のみに電流を流した場合の前記第3検出結果に対して、前記第3導体と同時に前記第1導体及び前記第2導体にも電流を流した場合に前記第3磁気検出部に入力される前記第1導体及び前記第2導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標であると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、第1検出結果に対して第2導体及び第3導体の夫々を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を見積もり、第2検出結果に対して第1導体及び第3導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を見積もり、第3検出結果に対して第1導体及び第2導体を流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を見積もることが可能となる。
【0012】
また、前記第1導体と前記第2導体と前記第3導体とは、夫々の軸心が互いに平行になるように設けられ、前記第1影響度は、前記第1導体と前記第2導体との間隔、前記第1導体と前記第3導体との間隔、前記第1導体の軸心から見た前記第2導体の軸心の位置、及び前記第1導体の軸心から見た前記第3導体の軸心の位置に基づいて規定され、前記第2影響度は、前記第1導体と前記第2導体との間隔、前記第2導体と前記第3導体との間隔、前記第2導体の軸心から見た前記第1導体の軸心の位置、及び前記第2導体の軸心から見た前記第3導体の軸心の位置に基づいて規定され、前記第3影響度は、前記第1導体と前記第3導体との間隔、前記第2導体と前記第3導体との間隔、前記第3導体の軸心から見た前記第1導体の軸心の位置、及び前記第3導体の軸心から見た前記第2導体の軸心の位置に基づいて規定されると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、第1影響度、第2影響度、及び第3影響度を容易に設定することが可能となる。したがって、第1補正部、第2補正部、及び第3補正部が、夫々、第1増幅信号、第2増幅信号、及び第3増幅信号を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】補正後の各導体を流れる電流の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電流センサは、コアを用いることなくコンパクトに、且つ、周囲に生じる磁界の影響を抑制することができるように構成される。以下、本実施形態の電流センサ1について説明する。ここで、導体に電流が流れる場合には、当該電流の大きさに応じて導体を軸心として磁界が発生する(アンペールの右ネジの法則)。本電流センサ1は、このような磁界における磁束の磁束密度を検出し、検出された磁束密度に基づいて第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cの夫々に流れる電流の電流値を測定する。
【0016】
図1は第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cに対する電流センサ1の配置図である。第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cは、例えば三相モータに接続される3本のバスバが相当する。より具体的には、第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cは、三相モータの3つの端子の夫々と当該三相モータを流れる電流を制御するインバータの3つの端子の夫々とを電気的に接続する。
【0017】
本実施形態では第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cは、互いに隣接する隣接方向である第1方向に直交する第2方向に沿って延出する。互いに隣接する隣接方向とは、
図1におけるX方向が相当し、第1方向に直交する第2方向とは、
図1におけるY方向が相当する。したがって、第1導体2Aと第2導体2Bと第3導体2Cとは、夫々の軸心が互いに平行になるように設けられる。また、第1方向及び第2方向の双方に直交する方向を第3方向(Z方向)として説明する。本実施形態では、第1導体2Aと後述する第1磁気検出部14とが第3方向に沿って配置され、第2導体2Bと後述する第2磁気検出部24とが第3方向に沿って配置され、第3導体2Cと後述する第3磁気検出部34とが第3方向に沿って配置される。
【0018】
電流センサ1は、第1磁電変換ユニット11と第2磁電変換ユニット21と第3磁電変換ユニット31とを備えて構成される。第1磁電変換ユニット11、第2磁電変換ユニット21、及び第3磁電変換ユニット31は、入力される磁束の磁束密度に応じた電気信号を出力するよう構成される。第1磁電変換ユニット11は5本の端子13を有し、第2磁電変換ユニット21は5本の端子23を有して構成される。また、第3磁電変換ユニット31は5本の端子33を有して構成される。本実施形態では、第1磁電変換ユニット11は5本の端子13を介して第1基板12に実装され、第2磁電変換ユニット21は5本の端子23を介して第2基板22に実装され、第3磁電変換ユニット31は5本の端子33を介して第3基板32の夫々に実装される。
【0019】
第1磁電変換ユニット11の5本の端子13は、電源電圧Vccが印加される電源端子13A、第1磁電変換ユニット11としての出力Vout1が出力される出力端子13B、後述する第1増幅信号が出力される第1増幅信号出力端子13C、後述する第2増幅信号及び第3増幅信号が入力される第1増幅信号入力端子13D、基準電位が設定される基準端子13Eから構成される。第2磁電変換ユニット21の5本の端子23は、電源電圧Vccが印加される電源端子23A、第2磁電変換ユニット21としての出力Vout2が出力される出力端子23B、後述する第2増幅信号が出力される第2増幅信号出力端子23C、後述する第1増幅信号及び第3増幅信号が入力される第2増幅信号入力端子23D、基準電位が設定される基準端子23Eから構成される。第3磁電変換ユニット31の5本の端子33は、電源電圧Vccが印加される電源端子33A、第3磁電変換ユニット31としての出力Vout3が出力される出力端子33B、後述する第3増幅信号が出力される第3増幅信号出力端子33C、後述する第1増幅信号及び第2増幅信号が入力される第3増幅信号入力端子33D、基準電位が設定される基準端子33Eから構成される。
【0020】
図2は、第1磁電変換ユニット11、第2磁電変換ユニット21、及び第3磁電変換ユニット31の構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、第1磁電変換ユニット11は、第1磁気検出部14、第1増幅部15、第1補正部16、第1影響度補正部17、第1影響度情報格納部18、第1増幅率補正部19の各機能部を備えて構成され、第2磁電変換ユニット21は、第2磁気検出部24、第2増幅部25、第2補正部26、第2影響度補正部27、第2影響度情報格納部28、第2増幅率補正部29の各機能部を備えて構成される。また、第3磁電変換ユニット31は、第3磁気検出部34、第3増幅部35、第3補正部36、第3影響度補正部37、第3影響度情報格納部38、第3増幅率補正部39の各機能部を備えて構成される。各機能部は、磁束密度の検出に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0021】
図1に示されるように、第1磁気検出部14は、第2導体2B及び第3導体2Cよりも第1導体2A側において、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面14Aが設けられる。「第2導体2B及び第3導体2Cよりも第1導体2A側において」とは、第2導体2B及び第3導体2Cまでの距離よりも第1導体2Aまでの距離の方が近いことを意味する。第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線とは、第1導体2Aを電流が流れることにより、第1導体2Aの周囲に生じる磁界の磁力線をいう。磁束密度を検出する検出面14Aとは、第1磁気検出部14が検出する磁束が入力される面であって、上記磁力線が垂直に入力されるように設けられる。本実施形態では、検出面14Aは第1方向に直交する面である。したがって、第1磁気検出部14は、第2導体2B及び第3導体2Cまでの距離よりも第1導体2Aまでの距離の方が近い位置に配置され、第1導体2Aを電流が流れることにより、第1導体2Aの周囲に生じる磁界の磁力線が、第1磁気検出部14の検出面14Aに垂直に入力されるように設けられる。
【0022】
第1磁気検出部14は、磁束密度の検出結果として第1検出結果を出力する。第1磁気検出部14は、検出した磁束密度に応じた検出結果として電気信号を出力するが、この電気信号は本実施形態では第1検出結果と称される。この第1検出結果は
図2に示されるように、後述する第1増幅部15に伝達される。
【0023】
図1に示されるように、第2磁気検出部24は、第1導体2A及び第3導体2Cよりも第2導体2B側において、第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面24Aが設けられる。「第1導体2A及び第3導体2Cよりも第2導体2B側において」とは、第1導体2A及び第3導体2Cまでの距離よりも第2導体2Bまでの距離の方が近いことを意味する。第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線とは、第2導体2Bを電流が流れることにより、第2導体2Bの周囲に生じる磁界の磁力線をいう。磁束密度を検出する検出面24Aとは、第2磁気検出部24が検出する磁束が入力される面であって、上記磁力線が垂直に入力されるように設けられる。本実施形態では、検出面24Aは第1方向に直交する面である。したがって、第2磁気検出部24は、第1導体2A及び第3導体2Cまでの距離よりも第2導体2Bまでの距離の方が近い位置に配置され、第2導体2Bを電流が流れることにより、第2導体2Bの周囲に生じる磁界の磁力線が、第2磁気検出部24の検出面24Aに垂直に入力されるように設けられる。
【0024】
第2磁気検出部24は、磁束密度の検出結果として第2検出結果を出力する。第2磁気検出部24は、検出した磁束密度に応じた検出結果として電気信号を出力するが、この電気信号は本実施形態では第2検出結果と称される。この第2検出結果は
図2に示されるように、後述する第2増幅部25に伝達される。
【0025】
図1に示されるように、第3磁気検出部34は、第1導体2A及び第2導体2Bよりも第3導体2C側において、第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線と直交するように配置されて磁束密度を検出する検出面34Aが設けられる。「第1導体2A及び第2導体2Bよりも第3導体2C側において」とは、第1導体2A及び第2導体2Bまでの距離よりも第3導体2Cまでの距離の方が近いことを意味する。第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界の磁力線とは、第3導体2Cを電流が流れることにより、第3導体2Cの周囲に生じる磁界の磁力線をいう。磁束密度を検出する検出面34Aとは、第3磁気検出部34が検出する磁束が入力される面であって、上記磁力線が垂直に入力されるように設けられる。本実施形態では、検出面34Aは第1方向に直交する面である。したがって、第3磁気検出部34は、第1導体2A及び第2導体2Bまでの距離よりも第3導体2Cまでの距離の方が近い位置に配置され、第3導体2Cを電流が流れることにより、第3導体2Cの周囲に生じる磁界の磁力線が、第3磁気検出部34の検出面34Aに垂直に入力されるように設けられる。
【0026】
第3磁気検出部34は、磁束密度の検出結果として第3検出結果を出力する。第3磁気検出部34は、検出した磁束密度に応じた検出結果として電気信号を出力するが、この電気信号は本実施形態では第3検出結果と称される。この第3検出結果は
図2に示されるように、後述する第3増幅部35に伝達される。
【0027】
第1増幅率補正部19は、周囲の温度に基づいて予め設定された第1増幅率を補正する。周囲の温度とは、第1磁気検出部14の周囲の温度である。このような周囲の温度は、例えば第1増幅率補正部19が温度検出素子を備えて検出しても良いし、第1増幅率補正部19とは別体で設けられた図示しない温度検出素子の検出結果を取得するように構成しても良い。予め設定された第1増幅率とは、第1磁気検出部14の検出結果である第1検出結果を後述する第1増幅部15が増幅する増幅率であって、第1増幅部15に対して予め設定されている。したがって、第1増幅率補正部19は、第1磁気検出部14の周囲の温度に基づいて、第1増幅部15に対して予め設定されている増幅率であって、第1磁気検出部14の検出結果である第1検出結果を第1増幅部15が増幅する増幅率を補正する。換言すれば、第1増幅率補正部19は、第1磁気検出部14の周囲の温度に基づいて、第1増幅部15が第1磁気検出部14の検出結果である第1検出結果を増幅する際に利用する増幅率を温度補償する。
【0028】
第2増幅率補正部29は、周囲の温度に基づいて予め設定された第2増幅率を補正する。周囲の温度とは、第2磁気検出部24の周囲の温度である。このような周囲の温度は、例えば第2増幅率補正部29が温度検出素子を備えて検出しても良いし、第2増幅率補正部29とは別体で設けられた図示しない温度検出素子の検出結果を取得するように構成しても良い。予め設定された第2増幅率とは、第2磁気検出部24の検出結果である第2検出結果を後述する第2増幅部25が増幅する増幅率であって、第2増幅部25に対して予め設定されている。したがって、第2増幅率補正部29は、第2磁気検出部24の周囲の温度に基づいて、第2増幅部25に対して予め設定されている増幅率であって、第2磁気検出部24の検出結果である第2検出結果を第2増幅部25が増幅する増幅率を補正する。換言すれば、第2増幅率補正部29は、第2磁気検出部24の周囲の温度に基づいて、第2増幅部25が第2磁気検出部24の検出結果である第2検出結果を増幅する際に利用する増幅率を温度補償する。
【0029】
第3増幅率補正部39は、周囲の温度に基づいて予め設定された第3増幅率を補正する。周囲の温度とは、第3磁気検出部34の周囲の温度である。このような周囲の温度は、例えば第3増幅率補正部39が温度検出素子を備えて検出しても良いし、第3増幅率補正部39とは別体で設けられた図示しない温度検出素子の検出結果を取得するように構成しても良い。予め設定された第3増幅率とは、第3磁気検出部34の検出結果である第3検出結果を後述する第3増幅部35が増幅する増幅率であって、第3増幅部35に対して予め設定されている。したがって、第3増幅率補正部39は、第3磁気検出部34の周囲の温度に基づいて、第3増幅部35に対して予め設定されている増幅率であって、第3磁気検出部34の検出結果である第3検出結果を第3増幅部35が増幅する増幅率を補正する。換言すれば、第3増幅率補正部39は、第3磁気検出部34の周囲の温度に基づいて、第3増幅部35が第3磁気検出部34の検出結果である第3検出結果を増幅する際に利用する増幅率を温度補償する。
【0030】
第1増幅部15は、補正された第1増幅率に基づいて第1検出結果を増幅し、第1増幅信号として出力する。補正された第1増幅率とは、第1増幅率補正部19により補正された増幅率である。第1増幅部15には第1磁気検出部14から第1検出結果が伝達され、この第1検出結果を補正された第1増幅率で増幅する。このように増幅された第1検出結果は、第1増幅部15から第1増幅信号として後述する第1補正部16に伝達されると共に、第1増幅信号出力端子13C及び第2増幅信号入力端子23Dを介して第2磁電変換ユニット21に入力され、第1増幅信号出力端子13C及び第3増幅信号入力端子33Dを介して第3磁電変換ユニット31に入力される。
【0031】
第2増幅部25は、補正された第2増幅率に基づいて第2検出結果を増幅し、第2増幅信号として出力する。補正された第2増幅率とは、第2増幅率補正部29により補正された増幅率である。第2増幅部25には第2磁気検出部24から第2検出結果が伝達され、この第2検出結果を補正された第2増幅率で増幅する。このように増幅された第2検出結果は、第2増幅部25から第2増幅信号として後述する第2補正部26に伝達されると共に、第2増幅信号出力端子23C及び第1増幅信号入力端子13Dを介して第1磁電変換ユニット11に入力され、第2増幅信号出力端子23C及び第3増幅信号入力端子33Dを介して第3磁電変換ユニット31に入力される。
【0032】
第3増幅部35は、補正された第3増幅率に基づいて第3検出結果を増幅し、第3増幅信号として出力する。補正された第3増幅率とは、第3増幅率補正部39により補正された増幅率である。第3増幅部35には第3磁気検出部34から第3検出結果が伝達され、この第3検出結果を補正された第3増幅率で増幅する。このように増幅された第3検出結果は、第3増幅部35から第3増幅信号として後述する第3補正部36に伝達されると共に、第3増幅信号出力端子33C及び第1増幅信号入力端子13Dを介して第1磁電変換ユニット11に入力され、第3増幅信号出力端子33C及び第2増幅信号入力端子23Dを介して第2磁電変換ユニット21に入力される。
【0033】
第1影響度補正部17は、予め設定された第1影響度を補正する。第1影響度とは、第1検出結果に対する第2導体2B及び第3導体2Cの夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示すパラメータであって、本実施形態では、第1影響度情報格納部18に予め格納されている。
【0034】
具体的には、第1影響度は、第1導体2Aのみに電流を流した場合の第1検出結果に対して、第1導体2Aと同時に第2導体2B及び第3導体2Cにも電流を流した場合に第1磁気検出部14に入力される第2導体2B及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標である。第1導体2Aのみに電流を流した場合の第1検出結果とは、第2導体2B及び第3導体2Cに電流を流さない状態で、且つ、第1導体2Aに電流を流した状態での第1磁気検出部14による磁束密度の検出結果である。すなわち、第2導体2B及び第3導体2Cを流れる電流の影響がない状態での第1磁気検出部14による磁束密度の検出結果が相当する。一方、第1導体2Aと同時に第2導体2B及び第3導体2Cにも電流を流した場合とは、第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cに電流を流した状態である。したがって、この状態では、第1磁気検出部14には、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界と、第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界と、第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界とが入力される。このため、第1磁気検出部14による磁束密度の検出結果に、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度だけでなく、第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度も含まれる。第1影響度は、このような第1磁気検出部14による磁束密度の検出結果に含まれる第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度の度合いを示すパラメータが相当する。
【0035】
例えば、第1影響度は、第1導体2Aと第2導体2Bとの間隔、第1導体2Aと第3導体2Cとの間隔、第1導体2Aの軸心から見た第2導体2Bの軸心の位置、及び第1導体2Aの軸心から見た第3導体2Cの軸心の位置に基づいて規定することが可能である。すなわち、第1影響度は、第1導体2Aから第2導体2B及び第3導体2Cの夫々までの距離と、第1導体2Aを基準とした第2導体2B及び第3導体2Cの夫々の方向とに応じて設定される。
【0036】
例えば第1影響度補正部17は、第1導体2Aと第1磁気検出部14(第1磁気検出部14の検出面14A)との間の距離に基づき第1影響度を補正する。具体的には、第1影響度補正部17は、第1影響度を、第1磁気検出部14(第1磁気検出部14の検出面14A)から第2導体2Bまでの距離と、第1磁気検出部14(第1磁気検出部14の検出面14A)から第3導体2Cまでの距離と、第1磁気検出部14(第1磁気検出部14の検出面14A)から見たXZ平面上における第2導体2Bの軸心の位置(方向)、及び第1磁気検出部14(第1磁気検出部14の検出面14A)から見たXZ平面上における第3導体2Cの軸心の位置(方向)に基づいて規定するように補正すると良い。
【0037】
第2影響度補正部27は、予め設定された第2影響度を補正する。第2影響度とは、第2検出結果に対する第1導体2A及び第3導体2Cの夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示すパラメータであって、本実施形態では、第2影響度情報格納部28に予め格納されている。
【0038】
具体的には、第2影響度は、第2導体2Bのみに電流を流した場合の第2検出結果に対して、第2導体2Bと同時に第1導体2A及び第3導体2Cにも電流を流した場合に第2磁気検出部24に入力される第1導体2A及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標である。第2導体2Bのみに電流を流した場合の第2検出結果とは、第1導体2A及び第3導体2Cに電流を流さない状態で、且つ、第2導体2Bに電流を流した状態での第2磁気検出部24による磁束密度の検出結果である。すなわち、第1導体2A及び第3導体2Cを流れる電流の影響がない状態での第2磁気検出部24による磁束密度の検出結果が相当する。一方、第2導体2Bと同時に第1導体2A及び第3導体2Cにも電流を流した場合とは、第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cに電流を流した状態である。したがって、この状態では、第2磁気検出部24には、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界と、第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界と、第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界とが入力される。このため、第2磁気検出部24による磁束密度の検出結果に、第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度だけでなく、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度も含まれる。第2影響度は、このような第2磁気検出部24による磁束密度の検出結果に含まれる第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度の度合いを示すパラメータが相当する。
【0039】
例えば、第2影響度は、第1導体2Aと第2導体2Bとの間隔、第2導体2Bと第3導体2Cとの間隔、第2導体2Bの軸心から見た第1導体2Aの軸心の位置、及び第2導体2Bの軸心から見た第3導体2Cの軸心の位置に基づいて規定することが可能である。すなわち、第2影響度は、第2導体2Bから第1導体2A及び第3導体2Cの夫々までの距離と、第2導体2Bを基準とした第1導体2A及び第3導体2Cの夫々の方向とに応じて設定される。
【0040】
例えば第2影響度補正部27は、第2導体2Bと第2磁気検出部24(第2磁気検出部24の検出面24A)との間の距離に基づき第2影響度を補正する。具体的には、第2影響度補正部27は、第2影響度を、第2磁気検出部24(第2磁気検出部24の検出面24A)から第1導体2Aまでの距離と、第2磁気検出部24(第2磁気検出部24の検出面24A)から第3導体2Cまでの距離と、第2磁気検出部24(第2磁気検出部24の検出面24A)から見たXZ平面上における第1導体2Aの軸心の位置(方向)、及び第2磁気検出部24(第2磁気検出部24の検出面24A)から見たXZ平面上における第3導体2Cの軸心の位置(方向)に基づいて規定するように補正すると良い。
【0041】
第3影響度補正部37は、予め設定された第3影響度を補正する。第3影響度とは、第3検出結果に対する第1導体2A及び第2導体2Bの夫々を流れる電流に応じて生じる磁界の影響度を示すパラメータであって、本実施形態では、第3影響度情報格納部38に予め格納されている。
【0042】
具体的には、第3影響度は、第3導体2Cのみに電流を流した場合の第3検出結果に対して、第3導体2Cと同時に第1導体2A及び第2導体2Bにも電流を流した場合に第3磁気検出部34に入力される第1導体2A及び第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界から受ける影響を示す指標である。第3導体2Cのみに電流を流した場合の第3検出結果とは、第1導体2A及び第2導体2Bに電流を流さない状態で、且つ、第3導体2Cに電流を流した状態での第3磁気検出部34による磁束密度の検出結果である。すなわち、第1導体2A及び第2導体2Bを流れる電流の影響がない状態での第3磁気検出部34による磁束密度の検出結果が相当する。一方、第3導体2Cと同時に第1導体2A及び第2導体2Bにも電流を流した場合とは、第1導体2A、第2導体2B、及び第3導体2Cに電流を流した状態である。したがって、この状態では、第3磁気検出部34には、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界と、第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界と、第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界とが入力される。このため、第3磁気検出部34による磁束密度の検出結果に、第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度だけでなく、第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度及び第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度も含まれる。第3影響度は、このような第3磁気検出部34による磁束密度の検出結果に含まれる第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度及び第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界に基づく磁束密度の度合いを示すパラメータが相当する。
【0043】
例えば、第3影響度は、第1導体2Aと第3導体2Cとの間隔、第2導体2Bと第3導体2Cとの間隔、第3導体2Cの軸心から見た第1導体2Aの軸心の位置、及び第3導体2Cの軸心から見た第2導体2Bの軸心の位置に基づいて規定することが可能である。すなわち、第3影響度は、第3導体2Cから第1導体2A及び第2導体2Bの夫々までの距離と、第3導体2Cを基準とした第1導体2A及び第2導体2Bの夫々の方向とに応じて設定される。
【0044】
例えば第3影響度補正部37は、第3導体2Cと第3磁気検出部34(第3磁気検出部34の検出面34A)との間の距離に基づき第3影響度を補正する。具体的には、第3影響度補正部37は、第3影響度を、第3磁気検出部34(第3磁気検出部34の検出面34A)から第1導体2Aまでの距離と、第3磁気検出部34(第3磁気検出部34の検出面34A)から第2導体2Bまでの距離と、第3磁気検出部34(第3磁気検出部34の検出面34A)から見たXZ平面上における第1導体2Aの軸心の位置(方向)、及び第3磁気検出部34(第3磁気検出部34の検出面34A)から見たXZ平面上における第2導体2Bの軸心の位置(方向)に基づいて規定するように補正すると良い。
【0045】
第1補正部16は、補正された第1影響度と第2増幅信号と第3増幅信号とに基づいて第1増幅信号を補正する。補正された第1影響度とは第1影響度補正部17から伝達される。第2増幅信号は第2増幅部25から出力され、第2増幅信号出力端子23C及び第1増幅信号入力端子13Dを介して第1補正部16に伝達される。第3増幅信号は第3増幅部35から出力され、第3増幅信号出力端子33C及び第1増幅信号入力端子13Dを介して第1補正部16に伝達される。また、第1補正部16には、第1増幅部15から第1増幅信号が伝達される。したがって、第1補正部16は、第1増幅部15から伝達される第1増幅信号を、第1影響度補正部17から伝達された第1影響度と第2増幅信号出力端子23C及び第1増幅信号入力端子13Dを介して第1補正部16に伝達された第2増幅信号と第3増幅信号出力端子33C及び第1増幅信号入力端子13Dを介して第1補正部16に伝達された第3増幅信号とに基づいて補正する。
【0046】
第2補正部26は、補正された第2影響度と第1増幅信号と第3増幅信号とに基づいて第2増幅信号を補正する。補正された第2影響度とは第2影響度補正部27から伝達される。第1増幅信号は第1増幅部15から出力され、第1増幅信号出力端子13C及び第2増幅信号入力端子23Dを介して第2補正部26に伝達される。第3増幅信号は第3増幅部35から出力され、第3増幅信号出力端子33C及び第2増幅信号入力端子23Dを介して第2補正部26に伝達される。また、第2補正部26には、第2増幅部25から第2増幅信号が伝達される。したがって、第2補正部26は、第2増幅部25から伝達される第2増幅信号を、第2影響度補正部27から伝達された第2影響度と第1増幅信号出力端子13C及び第2増幅信号入力端子23Dを介して第2補正部26に伝達された第1増幅信号と第3増幅信号出力端子33C及び第2増幅信号入力端子23Dを介して第2補正部26に伝達された第3増幅信号とに基づいて補正する。
【0047】
第3補正部36は、補正された第3影響度と第1増幅信号と第2増幅信号とに基づいて第3増幅信号を補正する。補正された第3影響度とは第3影響度補正部37から伝達される。第1増幅信号は第1増幅部15から出力され、第1増幅信号出力端子13C及び第3増幅信号入力端子33Dを介して第3補正部36に伝達される。第2増幅信号は第2増幅部25から出力され、第2増幅信号出力端子23C及び第3増幅信号入力端子33Dを介して第3補正部36に伝達される。また、第3補正部36には、第3増幅部35から第3増幅信号が伝達される。したがって、第3補正部36は、第3増幅部35から伝達される第3増幅信号を、第3影響度補正部37から伝達された第3影響度と第1増幅信号出力端子13C及び第3増幅信号入力端子33Dを介して第3補正部36に伝達された第1増幅信号と第2増幅信号出力端子23C及び第3増幅信号入力端子33Dを介して第3補正部36に伝達された第2増幅信号とに基づいて補正する。
【0048】
以上のように構成することにより、第1増幅部15が温度補償された第1増幅率で第1検出結果を増幅し、更に、第1補正部16が第1増幅信号から第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界の影響をなくすように補正した検出結果を第1磁電変換ユニット11から出力することが可能となる。また、第2増幅部25が温度補償された第2増幅率で第2検出結果を増幅し、更に、第2補正部26が第2増幅信号から第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界及び第3導体2Cを流れる電流に応じて生じる磁界の影響をなくすように補正した検出結果を第2磁電変換ユニット21から出力することが可能となる。また、第3増幅部35が温度補償された第3増幅率で第3検出結果を増幅し、更に、第3補正部36が第3増幅信号から第1導体2Aを流れる電流に応じて生じる磁界及び第2導体2Bを流れる電流に応じて生じる磁界の影響をなくすように補正した検出結果を第3磁電変換ユニット31から出力することが可能となる。換言すれば、隣接する導体や当該隣接する導体に更に隣接する導体に流れる電流に応じて生じる磁界をモニタし、これらの導体からの磁束を外乱ノイズ成分としてキャンセルする機能を付加することにより、精度良く磁束密度を検出し、これにより電流を精度良く検出することが可能となる。
【0049】
また、第1磁気検出部14、第2磁気検出部24、及び第3磁気検出部34は、磁気抵抗素子(TMRやAMR等)で構成せず、安価なホール素子を用いて構成できる。また、コアを備えないコアレス電流センサとして実現できる。
【0050】
次に、電流センサ1の出力を示す図を用いて電流センサ1の効果について説明する。
図3には、第1導体2Aに実際に流れる電流の電流波形と、第2導体2Bに実際に流れる電流の電流波形と、第3導体2Cに実際に流れる電流の電流波形とが示される。
図3では、第1導体2Aに流れる電流をU相電流として示し、第2導体2Bに流れる電流をV相電流として示し、第3導体2Cに流れる電流をW相電流として示している。
【0051】
この場合、
図4に示されるように、第1磁気検出部14による第1検出結果は第2導体2Bを流れる電流により生じる磁界及び第3導体2Cを流れる電流により生じる磁界の影響を受け、
図3に示される第1導体2Aに実際に流れる電流(U相電流)の電流波形に対して、振幅が小さくなり、位相がずれることがある。また、
図4に示されるように、第2磁気検出部24による第2検出結果は第1導体2Aを流れる電流により生じる磁界及び第3導体2Cを流れる電流により生じる磁界の影響を受け、
図3に示される第2導体2Bに実際に流れる電流(V相電流)の電流波形に対して、振幅が小さくなり、位相がずれることがある。更に、
図4に示されるように、第3磁気検出部34による第3検出結果は第1導体2Aを流れる電流により生じる磁界及び第2導体2Bを流れる電流により生じる磁界の影響を受け、
図3に示される第3導体2Cに実際に流れる電流(W相電流)の電流波形に対して、振幅が小さくなり、位相がずれることがある。
【0052】
係る場合、第1検出結果U’、第2検出結果V’、第3検出結果W’は、第1導体2Aを流れる電流をU、第2導体2Bを流れる電流をV、第3導体2Cを流れる電流をWとすると、以下の(1)式で示される。
【数1】
ここで、右辺第一項は上述した影響度を行列で示したものである。ここでは、隣接する導体からの影響度を0.1とし、一つ飛ばしで隣接する導体からの影響度を0.05としている。このような影響度は、設計時に測定し、予め記憶しておくと良い。
【0053】
(1)式を、U、V、Wについて解くと、(2)式を得る。
【0054】
【数2】
ここで右辺第一項は上述した影響度に係る行列の逆行列である。
【0055】
この(2)式に実際に測定して得られた第1検出結果U’、第2検出結果V’、第3検出結果W’を代入して演算することで、他の導体を流れる電流の影響を低減した算定値を得ることができ、
図5に示されるような電流の電流値(電流波形)を、第1磁電変換ユニット11、第2磁電変換ユニット21、第3磁電変換ユニット31から出力することが可能となる。
【0056】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第1基板12と第2基板22と第3基板32とは別体である場合の例を挙げて説明したが、第1基板12と第2基板22と第3基板32とは単一の基板で構成しても良い。
【0057】
上記実施形態では、第1磁電変換ユニット11が出力端子13Bから第1磁電変換ユニット11としての出力Vout1を出力し、第1増幅信号出力端子13Cから第1増幅信号を第2磁電変換ユニット21及び第3磁電変換ユニット31に出力するように示したが、高応答性が必須でない場合には、伝達するタイミングをずらして同一の端子(例えば出力端子13B)から出力Vout1を出力すると共に、第1増幅信号を出力するように構成しても良い。また、第2磁電変換ユニット21が出力端子23Bから第2磁電変換ユニット21としての出力Vout2を出力し、第2増幅信号出力端子23Cから第2増幅信号を第1磁電変換ユニット11及び第3磁電変換ユニット31に出力するように示したが、高応答性が必須でない場合には、伝達するタイミングをずらして同一の端子(例えば出力端子23B)から出力Vout2を出力すると共に、第2増幅信号を出力するように構成しても良い。また、第3磁電変換ユニット31が出力端子33Bから第3磁電変換ユニット31としての出力Vout3を出力し、第3増幅信号出力端子33Cから第3増幅信号を第1磁電変換ユニット11及び第2磁電変換ユニット21に出力するように示したが、高応答性が必須でない場合には、伝達するタイミングをずらして同一の端子(例えば出力端子33B)から出力Vout3を出力すると共に、第3増幅信号を出力するように構成しても良い。
【0058】
上記実施形態では、第1磁電変換ユニット11においては第2増幅信号及び第3増幅信号に基づいて第1増幅信号を補正し、第2磁電変換ユニット21においては第1増幅信号及び第3増幅信号に基づいて第2増幅信号を補正し、第3磁電変換ユニット31においては第1増幅信号及び第2増幅信号に基づいて第3増幅信号を補正するとして説明したが、出力変動時の第1磁電変換ユニット11、第2磁電変換ユニット21、及び第3磁電変換ユニット31の消費電流や電圧等の出力変動と同期する信号を検知して行っても良い。
【0059】
本発明は、複数の導体の夫々に流れる電流の電流値を測定する電流センサに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:電流センサ
2A:第1導体
2B:第2導体
2C:第3導体
14:第1磁気検出部
14A:検出面
15:第1増幅部
16:第1補正部
17:第1影響度補正部
19:第1増幅率補正部
24:第2磁気検出部
24A:検出面
25:第2増幅部
26:第2補正部
27:第2影響度補正部
29:第2増幅率補正部
34:第3磁気検出部
34A:検出面
35:第3増幅部
36:第3補正部
37:第3補正量設定部
39:第3増幅率補正部