(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029176
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】画像生成装置、画像生成方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20220209BHJP
G01S 13/90 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G01S13/90 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132381
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】501078421
【氏名又は名称】株式会社日豊
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】里村 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広和
(72)【発明者】
【氏名】植田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】末野 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 智博
(72)【発明者】
【氏名】山口 範洋
【テーマコード(参考)】
2C032
5J070
【Fターム(参考)】
2C032HB22
5J070AA11
5J070AC01
5J070AC06
5J070AE07
5J070AF06
5J070AF08
5J070AH31
5J070AJ13
5J070AK22
5J070BE04
(57)【要約】
【課題】所定の地表範囲の面全体における任意地点の座標と地殻変動の状況を精度高く把握する俯瞰画像を提供する。
【解決手段】所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得する。所定範囲の地表に関する俯瞰画像を取得する。所定範囲の地表における所定地点の座標を含む地点データを取得する。干渉SAR画像において特定した所定地点と、俯瞰画像において特定した所定地点と、地点データとに基づいて、干渉SAR画像と俯瞰画像と地点データとを合成した統合画像を生成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得し、
前記地表に関する俯瞰画像を取得し、
前記地表における所定地点の座標を含む地点データを取得し、
前記干渉SAR画像において特定した前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像と前記地点データとを合成した統合画像を生成する
画像生成装置。
【請求項2】
前記俯瞰画像は、空中写真画像であり、当該空中写真画像は前記地表の前記所定範囲の画像または航空写真画像の少なくとも一方を示す
請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記俯瞰画像は、3次元地図画像または2次元地図画像の少なくとも一方を示す
請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記所定地点に設置され、前記SAR画像の生成に利用される撮影データを生成するSAR衛星から受信した電波を反射する反射板と、複数のGNSS衛星から受信した衛星信号を受信して自装置の座標を算出する位置算出手段と、を備えた位置測位装置から通信ネットワークを介して前記地点データを取得し、
前記干渉SAR画像において特定した前記位置測位装置の位置を示す前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記位置測位装置の位置を示す前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像とを合わせて前記統合画像を生成する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記干渉SAR画像において示される前記所定地点を特定し、
前記俯瞰画像において示される前記所定地点を特定する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記干渉SAR画像または前記俯瞰画像において示される前記所定地点を当該所定地点の位置の輝度に基づいて特定する請求項5に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記干渉SAR画像または前記俯瞰画像において示される前記所定地点を当該所定地点の位置のマークに基づいて特定する請求項5に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記所定地点を除く前記統合画像の各画素に対応する座標を前記所定地点の座標に基づいてさらに算出し、それら各画素に対応する座標を保持した前記統合画像を生成する
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の画像生成装置。
【請求項9】
所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得し、
前記地表に関する俯瞰画像を取得し、
前記地表における所定地点の座標を含む地点データを取得し、
前記干渉SAR画像において特定した前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像と前記地点データとを合成した統合画像を生成する
画像生成方法。
【請求項10】
画像生成装置のコンピュータを、
所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得する手段、
前記地表に関する俯瞰画像を取得する手段、
前記地表における所定地点の座標を含む地点データを取得する手段、
前記干渉SAR画像において特定した前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像と前記地点データとを合成した統合画像を生成する手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置、画像生成方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地表の座標について、地殻変動により時間変化を含めたダイナミック座標管理が求められるようになってきている。このため地殻変動に基づいて変動する任意の測位点の所定の日時における地図上の変位点の座標を算出する技術が特許文献1に開示されている。一方、人工衛星などの飛翔体がマイクロ波やミリ波等の電磁波を地球の地表に送信し、その反射波を飛翔体が受信したデータを干渉させて地表範囲の面全体における任意地点の地殻変動を求める技術が知られている。関連技術として、測位装置で取得された位置情報を衛星画像の一態様であるSAR干渉画像に対応付ける技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6528293号公報
【特許文献2】特許第6555522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような関連する技術では、所定の地表範囲の面全体における任意地点の座標と地殻変動の状況を精度高く把握する俯瞰画像を提供することはできなかった。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決する画像生成装置、画像生成方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、画像生成装置は、所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得し、前記地表に関する俯瞰画像を取得し、前記地表における所定地点の座標を含む地点データを取得し、前記干渉SAR画像において特定した前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像と前記地点データとを合成した統合画像を生成する。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、画像生成方法は、所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得し、前記地表に関する俯瞰画像を取得し、前記地表における所定地点の座標を含む地点データを取得し、前記干渉SAR画像において特定した前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像と前記地点データとを合成した統合画像を生成する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、画像生成装置のコンピュータを、所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得する手段、前記地表に関する俯瞰画像を取得する手段、前記地表における所定地点の座標を含む地点データを取得する手段、前記干渉SAR画像において特定した前記所定地点と、前記俯瞰画像において特定した前記所定地点と、前記地点データとに基づいて、前記干渉SAR画像と前記俯瞰画像と前記地点データとを合成した統合画像を生成する手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の地表範囲の面全体における任意地点の座標と地殻変動の状況を精度高く把握する俯瞰画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による画像生成システムの構成を示す図である。
【
図2】本実施形態による画像生成装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】本実施形態による画像生成装置の機能ブロック図である。
【
図4】第一実施形態による画像生成装置の処理フローを示す図である。
【
図5】本実施形態による干渉SAR画像と俯瞰画像の対応関係を特定する処理の概要を示す図である。
【
図6】本実施形態による俯瞰画像とその変動量を含む統合画像を得るシステムのイメージを示す図である。
【
図7】本実施形態による画像生成装置の最小構成を示す図である。
【
図8】本実施形態による最小構成の画像生成装置による処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の第一実施形態による画像生成装置を説明する。
図1は第一実施形態による画像生成システムの構成を示す図である。
この図で示すように、画像生成システム100は、画像生成装置1と、リフレクタ2と、SAR衛星3とを含んで構成される。画像生成装置1は情報処理装置の一例である。管理者は、対象物の一例であるリフレクタ2を地表に設置する。リフレクタ2は、SAR(synthetic aperture radar;合成開口レーダ)を搭載したSAR衛星3(飛翔体)から受信したマイクロ波またはミリ波の電磁波を反射する反射板と、複数のGNSS衛星から受信した衛星測位信号を受信してリフレクタ2の設置されている座標を算出する位置センサとを少なくとも備えた位置測位装置の一例である。リフレクタ2は地表や地物(ビルやその他構造物)の所望の位置に複数設置されている。リフレクタ2は、算出した自装置の座標と自装置のIDと、座標の算出時刻とを少なくとも含む位置情報(地点データ)を、所定の間隔で、通信ネットワーク等で接続された画像生成装置1へ送信する。
【0012】
SAR衛星3は、SARが地表に向けて送信した可視光以外の波長帯の電磁波の反射波をSARにより受信する。SAR衛星3は、SARで受信した反射波のデータに基づいてSAR画像(合成開口レーダ画像)を生成し、そのSAR画像を示すSAR画像データを地表に設置されている衛星アンテナ4へ送信する。SAR画像は、撮影画像の一例である。
【0013】
衛星アンテナ4は、SAR画像データを画像生成装置1へ送信する。なおSAR衛星3が、電磁波の反射波の受信データを衛星アンテナ4へ送信し、衛星アンテナ4がそのデータを画像生成装置1へ転送して、画像生成装置1が受信したそのデータに基づいてSAR画像を生成してもよい。
【0014】
図2は画像生成装置のハードウェア構成を示す図である。
画像生成装置1のコンピュータは、
図2で示すようにCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、データベース104、インタフェース105、通信モジュール106等のハードウェアを備える。
【0015】
図3は画像生成装置の機能ブロック図である。
画像生成装置1のCPU101は、画像生成プログラムを実行する。これにより画像生成装置1には、制御部11、SAR画像生成部12、干渉SAR画像生成部13、取得部14、統合画像生成部15の各機能を発揮する。
【0016】
制御部11は、画像生成装置1の各機能を制御する。
SAR画像生成部12は、地表の所定範囲のSAR画像を生成する。
干渉SAR画像生成部13は、所定範囲の地表に関して異なる時刻で生成された複数のSAR画像に基づいて干渉SAR画像を生成する。
取得部14は、所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像、所定範囲の地表に関する俯瞰画像、所定範囲の地表における所定地点の座標データと変位データとを含む地点データ、それぞれを少なくとも取得する。
統合画像生成部15は、干渉SAR画像に示された所定地点と、俯瞰画像に示された所定地点と、地点データとに基づいて、干渉SAR画像と俯瞰画像と地点データとを合成した統合画像を生成する。
【0017】
図4は画像生成装置の処理フローを示す図である。
以下、画像生成装置1の処理の詳細について説明する。
画像生成装置1のSAR画像生成部12は、衛星アンテナ4を介してSAR衛星3から受信したデータに基づいてSAR画像を生成する(ステップS101)。このSAR画像の生成は公知の手法により行えばよい。一例としてSAR画像生成部12は、SAR衛星3から受信したデータに基づいて、地表に複数設定された所定の矩形範囲ごとのSAR画像を生成する。SAR画像生成部12は、地表の矩形範囲を示すIDと、その画像の矩形範囲を示す位置情報(例えば矩形範囲の各頂点座標)と、その矩形範囲について生成したSAR画像の画像データとを紐づけて、データベース104に記録する(ステップS102)。
【0018】
なおSAR画像が示す地表の範囲には予めリフレクタ2が複数設置されているものとする。従って、SAR画像には、リフレクタ2の反射板が反射したマイクロ波またはミリ波等の電磁波の受信に基づいて輝度が高く光っている位置が含まれる。SAR画像において当該輝度が高く光っている位置はリフレクタ2の座標に対応する位置を示す。
【0019】
SAR画像生成部12は、SAR衛星3の移動に伴って地表において設定される矩形範囲を少しずつずらしながら、繰り返し、各矩形範囲のSAR画像を生成する。またSAR画像生成部12は、SAR衛星3の移動と地球の自転による相対的な位置関係が同じ位置関係となる度に当該SAR衛星3が送信したデータを、衛星アンテナ4を介して受信し、同じ位置の同じ矩形範囲のSAR画像を順次生成する。これにより、データベース104は、地表においてずらして設定された各矩形範囲のSAR画像であって、異なる時刻で複数生成された各矩形範囲のSAR画像を順次記憶する。
【0020】
なお、画像生成装置1のデータベース104は、地表の矩形範囲を示すIDに紐づけて、矩形範囲毎の俯瞰画像を予め記憶している。俯瞰画像は一例としては、空中写真画像や地図画像である。空中写真画像は、地表の矩形範囲ごとの衛星画像または航空写真画像などであってよい。または地図画像は、3次元地図画像または2次元地図画像などであってよい。俯瞰画像は所定の時間間隔で更新されて最新の俯瞰画像がデータベース104に記録されていてよい。俯瞰画像においてもリフレクタ2の位置やマークが付されていてよい。
【0021】
画像生成装置1は、複数の各リフレクタ2から位置情報を受信する(ステップS103)。画像生成装置1は、位置情報に含まれるリフレクタ2のIDに基づいて、当該位置情報に含まれる時刻と座標とをデータベース104に順次記録する(ステップS104)。
【0022】
画像生成装置1において干渉SAR画像生成部13は、矩形範囲を示すIDに紐づいてデータベース104に登録されている異なる時刻の撮影によって生成された複数のSAR画像を取得する。干渉SAR画像生成部13は、それら複数のSAR画像を用いて干渉SAR画像を生成する(ステップS105)。干渉SAR画像生成部13は、矩形範囲を示すIDに紐づけて、生成した干渉SAR画像をデータベース104に記録する(ステップS106)。
【0023】
ここで、SAR画像は、一例としては、白から黒までの階調に応じた濃淡で表される画像で、地表において反射した反射電波が強い位置が明るく(階調の値が大きく)、反射電波が弱い位置が暗く(階調の値が小さく)表される画像である。一方で、干渉SAR画像は、異なる時刻の撮影により生成された2つのSAR画像を干渉させて生成した画像であり、例えば、同じ矩形範囲を撮影した第一のSAR画像と第二のSAR画像の2つのSAR画像の各電波の位相差の情報を持つ画像である。
【0024】
例えば、波長10cmの電波の地表からの反射波の受光情報に基づいてSAR画像が生成された場合を想定する。この時、地表の特定の場所において、第一の撮影により第一のSAR画像が生成された後に、その地表が2cmだけSAR衛星に近づく地殻変動が起こり、その後、同じ位置の撮影により第二SAR画像が生成されたとする。この場合、第二の撮影時にSAR衛星3が出力した電波は、地表で反射し、再度、SAR衛星3に戻ってくるが、地殻変動が起こった位置とSAR衛星3との距離は、第一のSAR画像の撮影時と比較して、第二のSAR画像の撮影時には4cm短くなる。そして、第一のSAR画像と第二のSAR画像の電波を干渉させると、地殻変動が起こった位置の反射波は、波長10cmに対して4cm早くSAR衛星3で受信するため、地殻変動が起こっていない位置に比べ0.4波長分だけ位相に違いが出る。干渉SAR画像は、この位相の違いの分布を図化した画像である。なお干渉SAR画像の生成処理は公知の技術である。
【0025】
干渉SAR画像は、一例としては地上の空間を南北に移動するSAR衛星から得られた信号により、地殻変動による上下成分や東西成分の移動量や移動方向ベクトルを導くためのSAR衛星方向への移動量を各画素について保持している。SAR衛星が南北以外の方向に移動し、地殻変動による上下成分や当該移動方向に直交する方向の南北成分の移動量や移動方向ベクトルを導くためのSAR衛星方向への移動量を干渉SAR画像の各画素が保持していてもよい。または干渉SAR画像は、地殻変動による上下成分や水平成分の移動量や移動方向ベクトルを合成した結果、何れかの方向の地殻変動による上下成分や東西成分や南北成分の移動量や移動方向ベクトルを導くためのSAR衛星方向への移動量を画素ごとに保持した画像であってよい。
【0026】
以上の処理によりデータベース104には、SAR画像、SAR干渉画像、リフレクタ2の座標、などの情報が記録されている。このような状態で、画像生成装置1の制御部11は、統合画像の生成を統合画像生成部15に指示する。この時、制御部11は、統合画像を生成する対象の矩形範囲を示すIDを統合画像生成部15へ出力する。統合画像生成部15は、矩形範囲のIDに紐づいてデータベース104に記録されている最新の干渉SAR画像と、最新の俯瞰画像を取得する(ステップS107)。また統合画像生成部15は、対象の矩形範囲を示すIDについて予めデータベース104等に記憶されている当該矩形範囲を示す座標を取得し、それら座標に基づいて特定される矩形範囲内のリフレクタ2の座標の情報を取得する(ステップS108)。なお、対象となる矩形範囲内にはリフレクタ2が3つ以上設置されているものとする。
【0027】
統合画像生成部15は、対象となる矩形範囲の干渉SAR画像、俯瞰画像それぞれにおいてリフレクタ2の位置を特定する。例えばリフレクタの電磁波の反射により所定の輝度以上となっている画素を干渉SAR画像、俯瞰画像それぞれにおいてリフレクタ2の位置と特定してよい。または干渉SAR画像、俯瞰画像それぞれにおいてリフレクタ2のマークやその他の情報が付されている場合には、統合画像生成部15は、それらの情報に基づいて干渉SAR画像、俯瞰画像それぞれにおいてリフレクタ2の位置を特定してよい。または干渉SAR画像、俯瞰画像それぞれにおいてユーザ操作によりリフレクタ2の位置が指示されてその指示情報を、統合画像生成部15が取得してもよい。
【0028】
統合画像生成部15は、対象となる矩形範囲内の複数のリフレクタ2の座標と、干渉SAR画像、俯瞰画像それぞれに含まれる複数のリフレクタ2の座標を合わせて、俯瞰画像に干渉SAR画像を合成し、さらリフレクタ2の位置の画素に対応するリフレクタ2の座標の情報を含む統合画像を生成する(ステップS109)。なお、統合画像生成部15は、干渉SAR画像が示す矩形範囲や、俯瞰画像が示す矩形範囲に歪みが生じている場合には、公知の歪み補正技術を用いてその歪みを補正した後に、リフレクタ2の座標に基づいて位置を合わせてそれら画像を統合した統合画像を生成してもよい。歪み補正技術としては、アフィン変換や、ヘルマート変換の技術を利用してよい。
【0029】
統合画像生成部15は、統合画像の各画素に対応する地表の矩形範囲の位置の座標をそれぞれ算出し、統合画像の各画素に対応する情報として保持した統合画像を生成してもよい。この場合、統合画像生成部15は、3つ以上のリフレクタ2を示す画素の位置とその座標の関係と、統合画像における座標算出対象の画素の位置とに基づいて、当該座標算出対象の画素に対応する地表の座標を補間計算により算出する。統合画像生成部15は、リフレクタ2を示す画素以外の全ての統合画像の各画素を座標算出対象の画素と順に特定し、当該座標算出対象の画素に対応する地表の座標を順に算出する。これにより、統合画像生成部15は、統合画像の各画素に対応する地表の座標を算出でき、それら統合画像の各画素に対応する地表の座標の情報を保持した統合画像を生成することができる。なおリフレクタ2を示す位置が複数画素によって示されてもよいし、複数の画素のまとまりが同じ座標の値として算出され、それらの座標の情報を保持した統合画像が生成されてもよい。
【0030】
上述の処理により生成された統合画像は、統合画像の矩形範囲に含まれるリフレクタ2の座標と、リフレクタ2を示す点や画素以外の統合画像中の各画素の位置の座標を全て保持し、かつ干渉SA画像に基づいてそれら各座標における地殻変動の単位時間当たりまたは所定期間における移動量や移動方向ベクトルや移動速度を導くためのSAR衛星方向への移動量を画素ごとに保持した統合画像を生成することができる。これにより、リフレクタ2などの位置測位装置が設置された位置の座標と、その座標の移動量や移動方向ベクトルだけでなく、対象の地表の矩形範囲の面全体の各位置の座標と、その座標の移動量や移動方向ベクトルや移動速度を視覚的に把握することができる統合画像を生成することができる。また統合画像の生成に利用した俯瞰画像が航空写真や地図画像であれば、どの位置にどの程度の地殻変動が生じたかを精度高く把握することができる。
【0031】
なお、統合画像生成部15は、統合画像におけるリフレクタ2の位置に対応する画素以外の任意の一つまたは複数の画素に対応する地点や一部の範囲における各地点の、座標や移動量や移動方向ベクトルを算出し、それらの情報を保持した統合画像を生成してもよい。
【0032】
上述の処理においては、統合画像に対応する地表の矩形範囲を示すIDに紐づいてデータベース104に登録されている干渉SAR画像と俯瞰画像とを取得し、またその矩形範囲に含まれるリフレクタ2の座標を特定している。ここで、同じリフレクタ2を矩形範囲に示す干渉SAR画像と俯瞰画像とを特定する際に、以下のような処理により特定してもよい。
【0033】
図5は干渉SAR画像と俯瞰画像の対応関係を特定する処理の概要を示す図である。
以下、最新の干渉SAR画像S1において示されるリフレクタ2の座標P
iをに基づいて、その矩形範囲に対応する俯瞰画像S2を、データベース104から特定する処理の詳細について説明する。この処理においては、統合画像生成部15は、俯瞰画像S2中に示される複数のリフレクタ2の座標群を示す点群位置X
iを、
【0034】
【0035】
と定義する。なおxは緯度、yは経度、zは標高を示す。iは算出対象点の番号を示す。また統合画像生成部15は、最新の干渉SAR画像S1において特定された複数のリフレクタ2の座標の点群位置Piを、
【0036】
【0037】
と定義する。なおpは緯度、qは経度、rは標高を示す。ここで、回転拡大縮小と平行移動を含む同次変換行列Tを、
【0038】
【0039】
と定義する。また、俯瞰画像S2中の複数のリフレクタ2の地表座標群を示す点群位置をXiに基づいて、
【0040】
【0041】
を定義できる。式(4)は、計算上都合が良く数式を簡潔に表すために式(1)を変形したものである。また、最新の干渉SAR画像S1において特定された複数の算出対象点の地表座標の点群位置をPiに基づいて、
【0042】
【0043】
を定義できる。式(5)は、計算上都合が良く数式を簡潔に表すために式(2)を変形したものである。ここで、俯瞰画像S2中の複数のリフレクタ2の点群Nを表した行列X^は式(6)のように表される。また最新の干渉SAR画像S1において特定された複数のリフレクタ2の点群Nを表した行列P^は式(7)のように表される。
【0044】
【0045】
【0046】
そして、最新の干渉SAR画像S1において特定された複数のリフレクタ2の地表座標の点群と、俯瞰画像S2中の複数のリフレクタ2の地表座標群と点群の変換は、式(8)のように表される。
【0047】
【0048】
従って、統合画像生成部15は、次の同次変換行列Tを表す式(9)が最小となる地表座標群を示す点群位置Xiを有する、俯瞰画像S2の画像データを、データベース104に記録される複数の俯瞰画像の中から特定する。統合画像生成部15は、特定した俯瞰画像S2をデータベース104から取得する。統合画像生成部15は、特定した俯瞰画像S2の中から、最新の干渉SAR画像S1中において特定したリフレクタ2の座標に対応する位置の画素をリフレクタ2の座標と特定する。
【0049】
【0050】
統合画像生成部15は、これにより取得したリフレクタ2の座標のうち、任意の矩形範囲に含まれるリフレクタ2の位置を含む、干渉SAR画像S1と俯瞰画像S2との対応関係を特定することができる。なお統合画像生成部15は、リフレクタ2の座標に基づいてその座標を含む俯瞰画像S2を特定し、上述の処理と同様に俯瞰画像S2に対応する干渉SAR画像S1を特定してもよい。統合画像生成部15は、このように特定した干渉SAR画像S1と俯瞰画像S2と、それらの矩形範囲に含まれるリフレクタ2を統合した統合画像を生成してよい。
【0051】
上述の処理によって取得したリフレクタ2の座標は、リフレクタ2以外の位置の座標は、四次元統合網平均計算によって化成された化成値であってよい。
【0052】
統合画像生成部15は、取得したリフレクタ2の座標と単位期間あたりの移動速度、IGS観測点の座標及びその単位期間あたりの移動速度、他の異なる1つまたは複数の人工衛星、有人航空機、無人航空機の座標の何れか1つまたは複数と、四次元統合網平均計算とを用いて、リフレクタ2の座標を化成した化成値と、移動速度の推定値を算出する(ステップS107)。四次元統合網平均とは、三次元の座標と速度の四次元の情報を用いて行う統合網平均計の計算手法である。ここで四次元統合網平均計算式は式(10)により表される式である。
【0053】
【0054】
この式(10)においてベクトルVは残差、ベクトルXは未知の測位点の座標、ベクトルSは未知の点の座標の変化率(移動速度)を示す。また式(10)においてl(Lの小文字)は観測値(既知の測位点の座標とIGS観測点とを結ぶ基線の長さと、そのベクトル)、Aは計画行列(デザインマトリクス)、Gは係数行列を示す。なお測位点はリフレクタ2の地点である。そして式(10)を最小二乗コロケーションで解くと、
【0055】
【0056】
【0057】
となり、X,S,Vの推定値X^,S^,V^(^は推定値を表す)は、
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
により算出することができる。以上の処理によれば、統合画像生成部15は、リフレクタ2の座標と単位期間あたりの移動速度、IGS観測点の座標及びその単位期間あたりの移動速度、他の異なる1つまたは複数の人工衛星、有人航空機、無人航空機の座標の何れか1つまたは複数と、四次元統合網平均計算とを用いて、リフレクタ2の座標の化成値を推定する。これにより、画像生成装置1は、干渉SAR画像や俯瞰画像に示されるリフレクタ2の位置に対応する地表の座標の化成値とそれらの移動速度を精度の高く算出することができる。統合画像生成部15は、他の画素に対応する座標を、リフレクタ2について算出した座標の化成値や移動速度を用いて、同様に四次元統合網平均計算を用いて算出してもよい。そして統合画像生成部15は、これらの処理により算出した座標や移動速度の情報を各座標に保持した統合画像を生成してもよい。
【0062】
図6は俯瞰画像とその変動量を含む統合画像を得るシステムのイメージを示す図である。
この図で示すように、画像生成装置1は、SAR衛星3や、他の人工衛星であるQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)31、GPS(Global Positioning System)32、GLONASS(Global Navigation Satellite System)33、光学衛星34や、有人航空機35、無人航空機36(ドローンなど)の撮影したデータを取得して統合画像を生成する。
【0063】
統合画像に統合する俯瞰画像は、例えば、滑走路の航空写真や地図画像、工事現場の航空写真や地図画像、敷設された道路の航空写真や地図画像、山体エリアの航空写真、森林管理エリアの航空写真や地図画像などであってよい。このような航空写真や地図画像を用いて生成された俯瞰画像により、滑走路の面全体の各位置の座標と移動量や移動方向ベクトルや移動速度、工事現場の面全体の各位置の座標と移動量や移動方向ベクトルや移動速度、道路の面全体の各位置の座標と移動量や移動方向ベクトルや移動速度、山体エリアの面全体の各位置の座標と移動量や移動方向ベクトルや移動速度、森林管理エリアの面全体の各位置の座標と移動量や移動方向ベクトルや移動速度、などを容易に把握することができる。
【0064】
ここで地図画像が熱帯雨林の地図画像である場合、その熱帯雨林の地図画像の各画素に精度の高い地表座標の化成値や、移動量(地殻変動量)、移動方向ベクトル、移動速度などの情報が含まれる。このような熱帯雨林の地図画像を所定期間ごとに作成して、比較することで、精度の高い同じ位置の画像の情報の違いにより、焼き畑による森林の消失状況、伐木状況、人口植樹森林の樹木の生育状況などの監視を行うことができる。
【0065】
また地図画像が道路を含む地図画像である場合、その道路を含む地図画像の各画素に精度の高い地表座標の化成値や、移動量(地殻変動量)、移動方向ベクトル、移動速度などの情報が含まれる。このような道路を含む地図画像を所定期間ごとに作成して、比較することで、地震などによる地殻変動の影響により道路の位置にどのようなずれが生じているかを把握することができる。また車などの移動体がこのような地図画像を用いて自動走行する場合に、最新の精度の高い位置情報を、地図の各画素に格納された情報から得ることができる。
【0066】
また地図画像が滑走路を含む地図画像である場合、その滑走路を含む地図画像の各画素に精度の高い地表座標の化成値や、移動量(地殻変動量)、移動方向ベクトル、移動速度などの情報が含まれる。このような滑走路を含む地図画像を所定期間ごとに作成して、比較することで、地震などによる地殻変動の影響により空港の滑走路の位置にどのようなずれが生じているかを把握することができる。またドローンや航空機の空中浮遊体がこのような地図画像を用いて自動走行する場合に、最新の精度の高い位置情報を、地図の各画素に格納された情報から得ることができる。
【0067】
また地図画像が鉄道路線を含む地図画像である場合、その鉄道路線を含む地図画像の各画素に精度の高い地表座標の化成値や、移動量(地殻変動量)、移動方向ベクトル、移動速度などの情報が含まれる。このような鉄道路線を含む地図画像を所定期間ごとに作成して、比較することで、地震などによる地殻変動の影響により建設中の鉄道路線の位置にどのようなずれが生じているかを把握することができる。またトンネルの坑心の真上の位置を地図画像で特定しておくことにより、隧道地盤監視をすることができる。
【0068】
また地図画像が建設現場を含む地図画像である場合、その建設現場を含む地図画像の各画素に精度の高い地表座標の化成値や、移動量(地殻変動量)、移動方向ベクトル、移動速度などの情報が含まれる。このような建設現場を含む地図画像を所定期間ごとに作成して、比較することで、建設現場における工事期間の各時点における進捗を確認するための出来形管理や、建設物の竣工後の経年変化監視を行うことができる。
【0069】
また地図画像が山岳地帯を含む地図画像である場合、その山岳地帯を含む地図画像の各画素に精度の高い地表座標の化成値や、移動量(地殻変動量)、移動方向ベクトル、移動速度などの情報が含まれる。このような山岳地帯を含む地図画像を所定期間ごとに作成して、比較することで、地殻変動、火山などの山体膨張、土砂崩れ、を監視することができる。また同様に、所定地域の盛土地盤の監視や、人工島の沈降監視を行うことができる。
【0070】
図7は画像生成装置の最小構成を示す図である。
図8は最小構成の画像生成装置による処理フローを示す図である。
画像生成装置1は少なくとも、取得部14と統合画像生成部15の機能を備えればよい。
取得部14は、所定範囲の地表に関する複数のSAR(synthetic aperture radar)画像に基づいて生成された干渉SAR画像を取得し、所定範囲の地表に関する俯瞰画像を取得し、所定範囲の地表における所定地点の座標を含む地点データを取得する(ステップS901)。
統合画像生成部15は、干渉SAR画像において特定した所定地点と、俯瞰画像において特定した所定地点と、地点データとに基づいて、干渉SAR画像と俯瞰画像と地点データとを合成した統合画像を生成する(ステップS902)。
【0071】
上述の画像生成装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0072】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0073】
1・・・画像生成装置
2・・・リフレクタ
3・・・SAR衛星
4・・・衛星アンテナ
11・・・制御部
12・・・SAR画像生成部
13・・・干渉SAR画像生成部
14・・・取得部
15・・・統合画像生成部