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特開2022-29241検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029241
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20220209BHJP
   B65B 9/04 20060101ALI20220209BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20220209BHJP
   B65B 57/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G01N21/85 A
B65B9/04
B65B57/00 G
B65B57/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132478
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】小田 将蔵
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 英志
【テーマコード(参考)】
2G051
3E050
【Fターム(参考)】
2G051AA02
2G051AB20
2G051BA05
2G051CA04
2G051CB02
2G051CC07
2G051EA12
2G051EB01
2G051EB05
3E050AA02
3E050AB02
3E050AB08
3E050BA20
3E050CA01
3E050CB03
3E050DA01
3E050DA06
3E050FA01
3E050FB01
3E050FB08
3E050FC10
3E050GA10
3E050HA02
3E050HA03
3E050HB03
(57)【要約】
【課題】ポケット部の側部の成形不良をより精度良く検出可能な検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法を提供する。
【解決手段】ポケット部検査装置21は、ポケット部2の成形された容器フィルム3に対し所定の電磁波を照射可能な照明装置50と、容器フィルム3のポケット部2の底部を透過した電磁波を撮像するカメラ51とを備え、これにより取得された画像データを基に、ポケット部2の底部に生じる濃淡模様に相当する濃淡模様データを抽出する。そして、ニューラルネットワークに対し、成形不良のないポケット部2に係る濃淡模様データのみを学習データとして学習させて生成したAIモデルへ、前記抽出された濃淡模様データを入力して再構成された再構成濃淡模様データを取得する。次に、濃淡模様データと再構成濃淡模様データとを比較し、少なくともポケット部2の側部の成形状態に関する良否判定を行う。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスターパックのポケット部の成形状態を検査するための検査装置であって、
前記ポケット部が成形された容器フィルムに対し所定の電磁波を照射可能な照射手段と、
前記容器フィルムを介して前記照射手段とは反対側に設けられ、少なくとも前記ポケット部の底部を透過した前記電磁波を撮像し画像データを取得可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に、前記電磁波の照射により前記ポケット部の底部に生じる濃淡模様に相当する濃淡模様データを抽出可能な濃淡模様抽出手段と、
入力される濃淡模様データから特徴量を抽出する符号化部と該特徴量から濃淡模様データを再構成する復号化部とを有するニューラルネットワークに対し、成形不良のない前記ポケット部に係る濃淡模様データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段と、
前記濃淡模様抽出手段により抽出された濃淡模様データを前記識別手段へ入力して再構成された濃淡模様データである再構成濃淡模様データを取得可能な再構成データ取得手段と、
前記濃淡模様抽出手段により抽出された濃淡模様データと、前記再構成データ取得手段により取得された再構成濃淡模様データとを比較可能な比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、少なくとも前記ポケット部の側部の成形状態に関する良否判定を実行可能な良否判定手段とを備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記容器フィルムは、透光性を有する樹脂フィルム材料により構成され、
前記照射手段は、前記電磁波として紫外光を照射可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記電磁波には、前記容器フィルムの透過率が15パーセント以上かつ60パーセント以下となる波長の電磁波が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記ポケット部は、平坦な前記容器フィルムに熱成形されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の検査装置を備えたことを特徴とするブリスター包装機。
【請求項6】
容器フィルムに成形されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるブリスターパックの製造方法であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形するポケット部成形工程と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填工程と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体から前記ブリスターパックを切離す切離工程と、
前記ブリスターパックのポケット部の成形状態を検査する検査工程とを備え、
前記検査工程において、
前記ポケット部が成形された容器フィルムに対し所定の電磁波を照射する照射工程と、
少なくとも前記ポケット部の底部を透過した前記電磁波を撮像し画像データを取得する撮像工程と、
前記撮像工程において取得された画像データを基に、前記電磁波の照射により前記ポケット部の底部に生じる濃淡模様に相当する濃淡模様データを抽出する濃淡模様抽出工程と、
入力される濃淡模様データから特徴量を抽出する符号化部と該特徴量から濃淡模様データを再構成する復号化部とを有するニューラルネットワークに対し、成形不良のない前記ポケット部に係る濃淡模様データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段へ、前記濃淡模様抽出工程において抽出された濃淡模様データを入力して再構成された濃淡模様データである再構成濃淡模様データを取得する再構成データ取得工程と、
前記濃淡模様抽出工程において抽出された濃淡模様データと、前記再構成データ取得工程において取得された再構成濃淡模様データとを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づき、少なくとも前記ポケット部の側部の成形状態に関する良否判定を行う良否判定工程とを備えたことを特徴とするブリスターパックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスターパックのポケット部の成形状態を検査する検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品や食料品、電子部品などを包装する包装容器として、ブリスターパックが広く利用されている。中でも、医薬品の分野において、錠剤やカプセル等を包装するために用いられるPTP(プレススルーパッケージ)シートがよく知られている。
【0003】
PTPシートは、錠剤などの内容物を収容するためのポケット部が成形された容器フィルムと、その容器フィルムにポケット部の開口側を密封するように取着されたカバーフィルムとから構成されており、ポケット部を外側から押圧し、そこに収容された内容物によって蓋となるカバーフィルムを突き破ることで、該内容物を取出すことができる。
【0004】
かかるPTPシートは、帯状の容器フィルムに対しポケット部を成形するポケット部成形工程、該ポケット部に内容物を充填する充填工程、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対しカバーフィルムを取着する取着工程、該帯状の両フィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムから最終製品となるPTPシートを切り離す切離工程等を経て製造される。
【0005】
ここで、ポケット部の成形は、例えば真空成形、圧空成形、プラグ成形、プラグアシスト圧空成形など、部分的に加熱軟化された帯状の容器フィルムの一部(成形予定部)を延伸加工するのが一般的である。
【0006】
このため、ポケット部の底部及び側部それぞれの肉厚には相関関係があり、底部が厚ければ側部が薄くなり、底部が薄ければ側部が厚くなる。
【0007】
このような底部及び側部の肉厚バランスが崩れた場合には、ポケット部の一部が過度に薄肉となり、ガスバリア性の低下など種々の不具合が発生するおそれがある。特に底部よりも薄肉とされる側部において、過度の薄肉化が懸念される。
【0008】
これに対し、上記相関関係を利用して、ポケット部の底部を撮像して得られた画像データを基に、ポケット部の側部の成形不良を検出する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6368408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術では、ポケット部の底部を撮像して得られた画像データを基に、光の透過率と底部の肉厚との関係性から、底部上の各位置における肉厚を算出し、その平均値(底部の平均肉厚)を基に、ポケット部の側部の成形不良を検出する構成となっている。
【0011】
このように、ポケット部の側部の成形状態は、概ね底部の肉厚から推定できるが、例え底部の肉厚の平均値や最大値、最小値が所望の値となり、底部の成形状態が適正であると判断される場合であっても、底部の肉厚分布に偏りがある場合や底部の形状が複雑な場合などは、側部が所望の肉厚になっていなかったり、側部の肉厚分布に偏りが生じている場合もある。
【0012】
そのため、上記従来技術では、ポケット部の側部の成形不良(肉厚不良)を精度良く検出できないおそれがあった。
【0013】
尚、上記課題は、PTP包装に限らず、他のブリスター包装の分野においても内在するものである。
【0014】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポケット部の側部の成形不良をより精度良く検出可能な検査装置、ブリスター包装機及びブリスターパックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0016】
手段1.ブリスターパックのポケット部の成形状態を検査するための検査装置であって、
前記ポケット部が成形された容器フィルムに対し所定の電磁波を照射可能な照射手段と、
前記容器フィルムを介して前記照射手段とは反対側に設けられ、少なくとも前記ポケット部の底部を透過した前記電磁波を撮像し画像データを取得可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に、前記電磁波の照射により前記ポケット部の底部に生じる濃淡模様(濃淡分布像)に相当する濃淡模様データを抽出可能な濃淡模様抽出手段と、
入力される濃淡模様データから特徴量を抽出する符号化部(エンコーダ)と該特徴量から濃淡模様データを再構成する復号化部(デコーダ)とを有するニューラルネットワークに対し、成形不良のない前記ポケット部に係る濃淡模様データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段(生成モデル)と、
前記濃淡模様抽出手段により抽出された濃淡模様データを前記識別手段へ入力して再構成された濃淡模様データである再構成濃淡模様データを取得可能な再構成データ取得手段と、
前記濃淡模様抽出手段により抽出された濃淡模様データと、前記再構成データ取得手段により取得された再構成濃淡模様データとを比較可能な比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、少なくとも前記ポケット部の側部の成形状態に関する良否判定を実行可能な良否判定手段とを備えたことを特徴とする検査装置。
【0017】
尚、以下の手段においても同様であるが、上記「ニューラルネットワーク」には、例えば複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワークなどが含まれる。また、上記「学習」には、例えば深層学習(ディープラーニング)などが含まれる。上記「識別手段(生成モデル)」には、例えばオートエンコーダ(自己符号化器)や、畳み込みオートエンコーダ(畳み込み自己符号化器)などが含まれる。
【0018】
また、上記「ブリスターパック」には、例えば錠剤等を収容するPTPシート、食料品等を収容するポーションパック、電子部品等を収容するキャリアテープなどが含まれ、上記「電磁波」には、例えば可視光、紫外光、X線などが含まれる。
【0019】
また、上記「前記電磁波の照射により前記ポケット部の底部に生じる濃淡模様(濃淡分布像)」とは、ポケット部の底部上の各位置(二次元座標位置)における肉厚の違い(肉厚分布)と、そこを透過する電磁波の透過率等との関係から、ポケット部の底部に生じる濃淡の二次元分布像を意味する。
【0020】
つまり、ここでいう「濃淡」とは、ポケット部の底部上の各位置を透過した電磁波の強度(輝度)の大小を意味する。従って、上記「前記電磁波の照射により前記ポケット部の底部に生じる濃淡模様(濃淡分布像)」との表現は、例えば「ポケット部の底部を透過した電磁波の強度分布像」や「ポケット部の底部の各位置における肉厚の違いにより各位置で異なる電磁波強度(輝度)の二次元分布像」、「ポケット部の底部の肉厚分布に対応した濃淡分布像(電磁波強度分布像、輝度分布像)」などの表現に置き換えることもできる。
【0021】
上記「背景技術」で述べたように、容器フィルムを部分的に延伸して成形されるポケット部の底部及び側部それぞれの肉厚には相関関係があり、底部が厚ければ側部が薄くなり、底部が薄ければ側部が厚くなる。
【0022】
このような相関関係を利用して、上記手段1では、所定の電磁波を照射しつつ、ポケット部の底部を撮像して得られた画像データから、ポケット部の底部に生じた濃淡模様(すなわち底部の肉厚分布状態)を抽出し、これを基に、少なくともポケット部の側部の成形状態に関する良否判定を行う構成となっている。
【0023】
かかる構成により、ポケット部の側部における肉厚分布の偏りの有無など、ポケット部の側部の成形不良(肉厚不良)をより精度良く検出することができる。
【0024】
特に本手段では、ニューラルネットワークを学習して構築した自己符号化器等の識別手段(生成モデル)を用いて、ポケット部の側部の成形状態に関する検査を行う構成となっている。
【0025】
具体的には、検査対象となるポケット部の底部を撮像して得られた濃淡模様データと、その濃淡模様データを識別手段により再構成して得た再構成濃淡模様データとを比較して良否判定を行う構成となっている。
【0026】
これにより、従来では検出することが困難であった微細な成形不良や、底部の形状や肉厚分布が複雑なポケット部などであっても検査を行うことが可能となる。結果として、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0027】
さらに、本手段では、比較する両濃淡模様データにおいて、検査対象物である容器フィルム側の撮像条件(例えば容器フィルムの配置位置や配置角度、たわみ等)や、検査装置側の撮像条件(例えば照明状態やカメラの画角等)の違いに基づく影響がなく、より微細な成形不良などをより正確に検出することが可能となる。
【0028】
尚、ポケット部の側部の成形状態を検査するにあたり、側部を直接撮像し検査することも考えられる。この場合、ガスバリア性などを考慮し、側部全周の成形状態を把握する必要がある。しかしながら、側部を直接撮像する構成の下、側部全周の成形状態を把握するには多くの時間又は大掛かりな装置を要するため、ブリスターパックの生産性が低下するおそれがある。
【0029】
この点、本手段によれば、ポケット部の底部を撮像し、その成形状態を把握することに基づき、側部全周の成形状態を短期かつ簡単に把握することができる構成となっているため、検査の高速化、ひいてはブリスターパックの生産性の向上を図ることができる。
【0030】
手段2.前記容器フィルムは、透光性を有する樹脂フィルム材料により構成され、
前記照射手段は、前記電磁波として紫外光(例えば200nm以上280nm以下の範囲内にピーク波長をもつ紫外光など)を照射可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の検査装置。
【0031】
容器フィルムが透光性を有する樹脂フィルム材料により構成されている場合において、仮に照射手段から可視光が照射される構成となっている場合には、ポケット部の底部の薄肉部位と厚肉部位における光の透過率に差が生じにくくなるおそれがある。つまり、底部全体が一様となり、濃淡模様が生じにくくなるおそれがある。結果として、検査を適切に行うことが困難となるおそれがある。
【0032】
これに対し、上記手段2によれば、透光性を有する樹脂フィルム材料により構成された容器フィルムに対し紫外光を照射する構成となっている。
【0033】
紫外光は、可視光に比べて透過率が低く、透光性を有する容器フィルムを透過しにくいため、ポケット部の成形状態に関する検査をより適切に行うことができる。
【0034】
尚、ここで「透光性を有する樹脂フィルム材料」には、例えば『光が透過する性質(透光性)を有するフィルムであって、電磁波(光)の透過率が極めて高く、当該フィルムを通してその向こう側が透けて見える「透明の樹脂フィルム材料」』や、『透光性は有しているが、透過する電磁波(光)が拡散される又は電磁波(光)の透過率が低いため、人の肉眼では、該フィルムを通して向こう側にある物の形状等を明確に認識できない又は全く認識できない「半透明の樹脂フィルム材料」』などが含まれる。
【0035】
また、「透明」及び「半透明」は、透光性を有するフィルムの材質を示す表現であり、色彩の有無とは無関係である。従って、「透明」又は「半透明」のフィルムには、例えば「無色透明」又は「無色半透明」のフィルムは勿論のこと、「有色透明」又は「有色半透明」のフィルムも含まれる。
【0036】
手段3.前記電磁波には、前記容器フィルム(例えばポリプロピレンやポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム材料)の透過率が15パーセント以上かつ60パーセント以下となる波長の電磁波が含まれることを特徴とする手段1又は2に記載の検査装置。
【0037】
容器フィルムを透過する電磁波の透過率が高すぎても低すぎても、ポケット部の底部の薄肉部位と厚肉部位における光の透過率に差が生じにくくなるおそれがある。結果として、検査を適切に行うことが困難となるおそれがある。
【0038】
これに対し、上記手段3のように、容器フィルムの透過率が15パーセント以上かつ60パーセント以下となる波長の電磁波を用いることで、検査をより適切に行うことができる。より好ましくは、容器フィルムの透過率が20パーセント以上かつ50パーセント以下(例えば30パーセント)となる波長の電磁波を用いて検査を行うことが好ましい。
【0039】
手段4.前記ポケット部は、平坦な前記容器フィルムに熱成形されたものであることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の検査装置。
【0040】
ここで、「熱成形」とは、平坦な容器フィルムの一部(成形予定部)を部分的に加熱軟化させ延伸加工する成形方法であり、例えば真空成形、圧空成形、プラグ成形、プラグアシスト圧空成形などが含まれる。
【0041】
従って、本手段4に係る構成の下において、上記手段1等の作用効果がより奏効することとなる。
【0042】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載の検査装置を備えたことを特徴とするブリスター包装機。
【0043】
上記手段5のように、上記検査装置をブリスター包装機(例えばPTP包装機)に備えることで、ブリスターパック(例えばPTPシート)の製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。また、ブリスター包装機は、上記検査装置によって不良と判定されたブリスターパックを排出する排出手段を備える構成としてもよい。
【0044】
より具体的なブリスター包装機の構成として、以下のような構成が挙げられる。
【0045】
「容器フィルムに成形されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるブリスターパックを製造するためのブリスター包装機であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形するポケット部成形手段と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体(帯状のブリスターフィルム)から前記ブリスターパックを切離す切離手段(シート単位に打抜く打抜手段を含む)と、
手段1乃至4のいずれかに記載の検査装置とを備えたことを特徴とするブリスター包装機。」。
【0046】
尚、仮に姿勢の定まらない容器フィルムを検査する場合には、ポケット部の位置を特定する処理を実行しなければならないのは勿論のこと、非円形状のポケット部の場合には、画像データから検査対象となるポケット部の中心位置を算出し、該ポケット部の中心位置に、予め記憶したパターンマッチング用の基準画像の中心を合わせた上で、該基準画像を所定角度ずつ回転させていき、両者が一致するか否かをその都度判定するといった処理を行わなければならず、ポケット部に係る検査が非常に処理数が多く、手間のかかるものとなるおそれがある。
【0047】
これに対し、上記手段5のように、ブリスター包装機上に上記検査装置を備えることにより、撮像手段に対する容器フィルムの停止位置や向き(姿勢)が一定となるため、検査に際し検査対象の位置合わせや向き調整等を行う必要がなく、検査の高速化を図ることができる。結果として、1つのポケット部にかかる処理数が格段に減り、検査処理速度を格段に速めることができる。
【0048】
さらに、上記手段5に係る構成の下、
「前記検査装置よりも下流側に前記充填手段を配置し、
前記検査装置による検査結果に基づき前記充填手段の動作を制御し、前記ポケット部に対する前記内容物の充填の可否を切換可能な充填制御手段を備えた」構成としてもよい。
【0049】
かかる構成により、例えば成形不良のポケット部に対しては内容物を充填しないようにすることも可能となる。これにより、ポケット部の成形不良に起因してブリスターパックが廃棄される場合において、該ブリスターパックとともに内容物までも廃棄されてしまうといった不具合の発生を防止することができる。また、内容物を再利用するために、ポケット部に一旦充填した内容物を取出す等の面倒な作業を行う必要がなくなる。結果として、生産性の低下抑制を図ることができる。
【0050】
また、上記手段5に係る構成の下、
「前記ポケット部成形手段は、第一の型と、該第一の型と前記容器フィルムを介して相対する第二の型と、該両型により挟まれた前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形する延伸手段(延伸成形手段)とを備えた」構成としてもよい。
【0051】
かかる構成においては、上記「背景技術」で述べたようなポケット部の底部と側部の肉厚の相関関係、すなわち底部の肉厚が厚ければ側部の肉厚が薄くなり、底部の肉厚が薄ければ側部の肉厚が厚くなるといった相関関係が生じるため、ポケット部の底部を撮像して得られた画像データを基に、ポケット部の側部の成形不良を検出するといった上記手段1等の作用効果がより奏効することとなる。
【0052】
手段6.容器フィルムに成形されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるブリスターパックの製造方法であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに対し前記ポケット部を成形するポケット部成形工程と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填工程と、
前記ポケット部に前記内容物が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体(帯状のブリスターフィルム)から前記ブリスターパックを切離す切離工程(シート単位に打抜く打抜工程を含む)と、
前記ブリスターパックのポケット部の成形状態を検査する検査工程とを備え、
前記検査工程において、
前記ポケット部が成形された容器フィルムに対し所定の電磁波を照射する照射工程と、
少なくとも前記ポケット部の底部を透過した前記電磁波を撮像し画像データを取得する撮像工程と、
前記撮像工程において取得された画像データを基に、前記電磁波の照射により前記ポケット部の底部に生じる濃淡模様(濃淡分布像)に相当する濃淡模様データを抽出する濃淡模様抽出工程と、
入力される濃淡模様データから特徴量を抽出する符号化部(エンコーダ)と該特徴量から濃淡模様データを再構成する復号化部(デコーダ)とを有するニューラルネットワークに対し、成形不良のない前記ポケット部に係る濃淡模様データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段(生成モデル)へ、前記濃淡模様抽出工程において抽出された濃淡模様データを入力して再構成された濃淡模様データである再構成濃淡模様データを取得する再構成データ取得工程と、
前記濃淡模様抽出工程において抽出された濃淡模様データと、前記再構成データ取得工程において取得された再構成濃淡模様データとを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づき、少なくとも前記ポケット部の側部の成形状態に関する良否判定を行う良否判定工程とを備えたことを特徴とするブリスターパックの製造方法。
【0053】
上記手段6によれば、上記手段1,5と同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】PTPシートの斜視図である。
図2】PTPシートの部分拡大断面図である。
図3】PTPフィルムの斜視図である。
図4】ポケット部検査装置の概略構成図である。
図5】PTP包装機の概略構成図である。
図6】ポケット部検査装置の機能構成を示すブロック図である。
図7】ポケット部成形装置及び加熱装置の概略構成を示す一部破断正面図である。
図8】ニューラルネットワークの構造を説明するための模式図である。
図9】ポケット部成形工程の流れを示すフローチャートである。
図10】ニューラルネットワークの学習処理の流れを示すフローチャートである。
図11】ポケット部の検査処理の流れを示すフローチャートである。
図12】成形不良のないポケット部に生じる濃淡模様等を示す図である。
図13図12のA-A線に沿った各画素に係る輝度値を示すグラフである。
図14】成形不良のあるポケット部に生じる濃淡模様等を示す図である。
図15図14のB-B線に沿った各画素に係る輝度値を示すグラフである。
図16】(a)は、濃淡模様データを再構成して得られる再構成濃淡模様データを模式的に示した図であり、(b)は、比較処理において不良画素が生じた部位を模式的に示した図である。
図17】別の実施形態に係るブリスターパックについて説明するための図であって、(a)は、その斜視図であり、(b)は、その平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、ブリスターパックとしてのPTPシート1について説明する。
【0056】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0057】
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の無色透明な熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。
【0058】
PTPシート1は、平面視略矩形状に形成されている。PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、内容物としての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0059】
ポケット部2は、カバーフィルム4と相対向するように配置される平面視略円形状の底部2aと、該底部2aの周囲に連接しかつ該底部2aとフィルム平坦部(ポケット非成形部)3bとを繋ぐ略円筒形状の側部2bとから構成されている。
【0060】
本実施形態における底部2aは、緩やかに湾曲した断面略円弧状に成形されているが、これに限らず、底部2aが平坦状に成形された構成としてもよい。また、底部2a及び側部2bが交わる角部2cが明らかでないような、より曲率の大きい断面円弧状に成形された構成としてもよい。
【0061】
PTPシート1(図1参照)は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図3参照)が矩形シート状に打抜かれることにより製造される。
【0062】
次に、上記PTPシート1を製造するブリスター包装機としてのPTP包装機11の概略構成について図5を参照して説明する。
【0063】
PTP包装機11の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0064】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15とポケット部成形装置16とが順に配設されている。加熱装置15及びポケット部成形装置16によって、本実施形態におけるポケット部成形手段が構成される。加熱装置15及びポケット部成形装置16の構成については、後に詳述する。
【0065】
ここで、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部成形装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が一度に成形される(ポケット部成形工程)。尚、ポケット部2の成形は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバル中に行われる。
【0066】
また、ガイドロール13と間欠送りロール14との間であって、ポケット部成形装置16の下流には、ポケット部検査装置21が配設されている。
【0067】
ポケット部検査装置21は、ポケット部成形装置16によって成形されたポケット部2の成形状態に関する検査(検査工程)を行うためのものである。ポケット部検査装置21の構成については、後に詳述する。
【0068】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。
【0069】
フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0070】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、錠剤充填装置22が配設されている。
【0071】
錠剤充填装置22は、ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する充填手段としての機能を有する。錠剤充填装置22は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作と同期して、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が充填される(充填工程)。錠剤充填装置22の動作は、後述する充填制御装置82によって制御される。
【0072】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。加熱ロール25は、フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。
【0073】
そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる(取着工程)。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状体としてのPTPフィルム6が製造される。フィルム受けロール20及び加熱ロール25により本実施形態における取着手段が構成される。
【0074】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。
【0075】
間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0076】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。
【0077】
間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0078】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット成形装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット成形装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを成形する機能を有する。刻印装置34は、PTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0079】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。
【0080】
間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜くシート打抜手段(切離手段)としての機能を有する。
【0081】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、取出しコンベア38によって搬送され、完成品用ホッパ39に一旦貯留される(切離工程)。但し、PTPシート1を選択的に排出可能な不良シート排出機構40に対し後述する充填制御装置82から不良品信号が入力されると、不良品のPTPシート1は、不良シート排出機構40によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送される。
【0082】
連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残ったスクラップ部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。ここで、連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、スクラップ部42を挟持しながら搬送動作を行う。
【0083】
裁断装置41は、スクラップ部42を所定寸法に裁断する機能を有する。裁断されたスクラップ部42はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0084】
尚、上記各ロール14,19,20,28,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、各ロール14等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、基本的には、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が各ロール14等の凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0085】
次いで、図7を参照して加熱装置15及びポケット部成形装置16の構成について説明する。
【0086】
加熱装置15は、上部ヒータプレート15a及び下部ヒータプレート15bを備えている。両ヒータプレート15a,15bは、図示しないヒータによって加熱可能に構成されている。両ヒータプレート15a,15bは、容器フィルム3の搬送経路を挟むようにして設けられており、それぞれ容器フィルム3に接近又は離間する方向に移動可能とされている。
【0087】
また、各ヒータプレート15a,15bは、容器フィルム3におけるポケット部2の成形予定部3aに対応する位置に、複数の突出部15c,15dを備えている。
【0088】
間欠的に搬送される容器フィルム3は、一時停止中に、両ヒータプレート15a,15bの接近移動に伴い突出部15c,15dにより挟まれることで部分的に(スポット的に)加熱され、この加熱された部分が軟化状態となる。尚、本実施形態では、突出部15c,15dにおける容器フィルム3との接触部が、ポケット部2の平面形状よりも一回り小さなものとされている。
【0089】
ポケット部成形装置16は、第二の型としての下型61及び第一の型としての上型71を備えている。下型61は、筒状の下型チャンバー62を介して固定状態にある支持台63に固定されている。また、下型61は、ポケット部2の位置に対応する位置に複数の挿通孔64を備えている。
【0090】
支持台63には、複数の貫通孔が形成されており、該貫通孔にはベアリング機構を介して棒状のスライダ65が挿通されている。スライダ65は、図示しないカム機構によって上下動可能とされている。
【0091】
スライダ65の上部には、ポケット部成形型66が固定されており、当該ポケット部成形型66は、前記挿通孔64に挿通可能でかつ上下方向に延びる棒状をなすプラグ66aを複数備えている。プラグ66aの先端形状は、ポケット部2の内面に対応する形状とされている。ポケット部成形型66は、前記カム機構の駆動によるスライダ65の上下動に伴い上下動する。尚、下型61やポケット部成形型66などは、生産するPTPシート1の品種に応じて適宜交換可能である。
【0092】
さらに、スライダ65及びポケット部成形型66のそれぞれの内部には、冷却水(又は温水)を循環させるための循環路67が形成されている。これにより、各プラグ66aにおける表面温度のばらつきが抑制されるようになっている。
【0093】
プラグ66aは、ポケット部2の成形時に、初期位置、中間停止位置、突出位置へとこの順で配置され、最終的に初期位置へと戻るようになっている。尚、このようなプラグ66aの動作は後述する成形制御装置81によって制御される。
【0094】
初期位置は、ポケット部2の成形工程の開始時にプラグ66aが配置される位置であり、この位置に配置されたプラグ66aは挿通孔64の下方であって挿通孔64外に配置された状態となる。
【0095】
中間停止位置は、ポケット部2の成形工程の中間段階にてプラグ66aが配置される位置であり、この位置に配置されたプラグ66aは挿通孔64内に配置され、容器フィルム3との間で所定の隙間を形成した状態となる。
【0096】
突出位置は、ポケット部2の成形工程の最終段階にてプラグ66aが配置される位置であり、この位置に配置されたプラグ66aの先端面は、ポケット部2の深さに対応する分だけ下型61から突出した状態となる。
【0097】
一方、上型71は、プレート72を介して上下動可能な上板73に固定されており、下型61に対し接近又は離間する方向に沿って移動可能とされている。上型71は、下型61の挿通孔64と相対する位置に気体供給孔74を備えている。
【0098】
さらに、プレート72及び上板73の内部には、気体供給孔74と連通する気体供給路75が形成されており、当該気体供給路75に対し、例えばコンプレッサ等により構成された気体供給装置76から、所定の高圧の気体(不活性ガス、本実施形態では空気)が供給される。
【0099】
尚、本実施形態では、ポケット部成形装置16の一回の動作によって、2枚分のPTPシート1に対応する計20個のポケット部2が同時に成形される構成となっている。すなわち容器フィルム3のフィルム幅方向(Y方向)に対し5つ、かつ、フィルム搬送方向(X方向)に対し4つのポケット部2が同時に成形される構成となっている。
【0100】
ここで、成形制御装置81について説明する。成形制御装置81は、加熱装置15及びポケット部成形装置16によるポケット部2の成形に関する制御を行うためのものであり、CPUやRAMなどを有するコンピュータシステムによって構成されている。
【0101】
成形制御装置81には、ポケット部成形装置16のプラグ66aの初期位置に関する情報や、プラグ66aの中間停止位置に関する情報、プラグ66aの突出位置に関する情報などが設定記憶されており、これらの情報に基づきプラグ66aの動作制御が行われる。尚、プラグ66aの初期位置、中間停止位置及び突出位置に関する情報は、製造対象となるPTPシート1におけるポケット部2の深さなどに応じて適宜変更される。
【0102】
次いで、ポケット部検査装置21の構成について詳しく説明する。図4~6に示すように、ポケット部検査装置21は、照射手段としての照明装置50、撮像手段としてのカメラ51、及び、これらを制御する検査制御装置52を備えている。
【0103】
照明装置50は、ポケット部2の突出側(図4下側)から容器フィルム3の所定範囲に対し所定の電磁波を照射するものである。照明装置50は、電磁波照射装置50aと、これを覆う拡散板50bとを有しており、面発光可能に構成されている。本実施形態における照明装置50は、容器フィルム3に対し紫外光を含む電磁波を照射する。
【0104】
カメラ51は、照明装置50から照射される電磁波の波長領域に感度を有するものである。カメラ51は、容器フィルム3のポケット部2開口側(図4上側)に設けられており、そのレンズの光軸OLが容器フィルム3のフィルム平坦部3bと直交する鉛直方向(Z方向)に沿うように配置されている。
【0105】
また、カメラ51のレンズに対応して、バンドパスフィルタ51aが設けられている。バンドパスフィルタ51aは、紫外光のみがレンズへ入るように設けられたものである。
【0106】
バンドパスフィルタ51aを設けることで、照明装置50から照射される電磁波のうち、容器フィルム3を透過した紫外光のみがカメラ51により二次元撮像されることとなる。また、このようにカメラ51によって取得された透過画像データは、容器フィルム3における紫外光の透過率の差異に基づき各画素(各座標位置)で輝度の異なる輝度画像データとなる。
【0107】
特に本実施形態では、上記バンドパスフィルタ51aとして、例えば容器フィルム3の透過率がおよそ30±10パーセントとなる波長253±20nmの紫外光のみを通すものが用いられている。これは、容器フィルム3を透過する電磁波の透過率が高すぎても低すぎても、ポケット部2の底部2aの薄肉部位と厚肉部位における光の透過率に差が生じにくくなるおそれがあるためである。
【0108】
尚、本実施形態におけるカメラ51の撮像範囲は、少なくともポケット部成形装置16の一回の動作で容器フィルム3に成形される2枚分のPTPシート1に対応する計20個のポケット部2を含む範囲、すなわち容器フィルム3のフィルム幅方向(Y方向)に対し5つ、かつ、フィルム搬送方向(X方向)に対し4つのポケット部2を含む範囲を一度に撮像するように設定されている。
【0109】
検査制御装置52は、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムや固定値データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、各種演算処理の実行に際して各種データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)及びこれらの周辺回路等を含んだコンピュータからなる。
【0110】
そして、検査制御装置52は、CPUが各種プログラムに従って動作することで、後述するメイン制御部171、照明制御部172、カメラ制御部173、画像取得部174、画像処理部175、学習部176、検査実行部177などの各種機能部として機能する。
【0111】
但し、上記各種機能部は、上記CPU、ROM、RAMなどの各種ハードウェアが協働することで実現されるものであり、ハード的又はソフト的に実現される機能を明確に区別する必要はなく、これらの機能の一部又は全てがICなどのハードウェア回路により実現されてもよい。
【0112】
さらに、検査制御装置52には、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される入力部185、液晶ディスプレイなどの表示画面を有する表示部186と、各種データやプログラム、演算結果等を記憶可能な記憶部187、外部と各種データを送受信可能な通信部188などが設けられている。
【0113】
ここで、検査制御装置52を構成する上記各種機能部について詳しく説明する。メイン制御部171は、ポケット部検査装置21全体の制御を司る機能部であり、照明制御部172やカメラ制御部173など他の機能部と各種信号を送受信可能に構成されている。
【0114】
照明制御部172は、照明装置50を駆動制御する機能部であり、メイン制御部171からの指令信号に基づき照明タイミングなどを制御する。
【0115】
カメラ制御部173は、カメラ51を駆動制御する機能部であり、メイン制御部171からの指令信号に基づき撮像タイミングなどを制御する。尚、上記照明及び撮像のタイミングは、メイン制御部171が、PTP包装機11に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御する。
【0116】
これにより、ポケット部2の成形された容器フィルム3の搬送が一旦停止するインターバル毎に、該容器フィルム3に対し照明装置50から電磁波が照射されると共に、該容器フィルム3を透過した電磁波(紫外光)をカメラ51により撮像する処理が実行される。
【0117】
そして、カメラ51により撮像され生成された透過画像データは、該カメラ51の内部においてデジタル信号(画像信号)に変換された上で、デジタル信号の形で検査制御装置52(画像取得部174)に転送される。
【0118】
画像取得部174は、カメラ51により撮像され取得された画像データを取り込むための機能部である。
【0119】
画像処理部175は、画像取得部174により取り込まれた画像データに所定の画像処理を行う機能部である。例えば、後述する学習処理においては、ディープニューラルネットワーク190(以下、単に「ニューラルネットワーク190」という。図8参照。)の学習に用いる学習データとなる学習用濃淡模様データを生成する。また、後述する検査処理を行う際に用いる検査用濃淡模様データを生成する。尚、学習処理に用いられる学習用濃淡模様データの撮影条件と、検査処理に用いられる検査用濃淡模様データの撮影条件とが、できる限り一致することが好ましい。
【0120】
学習部176は、学習データ等を用いてニューラルネットワーク190の学習を行い、識別手段としてのAI(Artificial Intelligence)モデル200を構築する機能部である。
【0121】
尚、本実施形態におけるAIモデル200は、後述するように成形不良のない良品の容器フィルム3のポケット部2に係る濃淡模様データのみを学習データ(学習用濃淡模様データ)として、ニューラルネットワーク190を深層学習(ディープラーニング)させて構築した生成モデルであり、いわゆるオートエンコーダ(自己符号化器)の構造を有する。
【0122】
ここで、ニューラルネットワーク190の構造について図8を参照して説明する。図8は、ニューラルネットワーク190の構造を概念的に示した模式図である。図8に示すように、ニューラルネットワーク190は、入力される画像データ(濃淡模様データ)GAから特徴量(潜在変数)TAを抽出する符号化部としてのエンコーダ部191と、該特徴量TAから画像データ(濃淡模様データ)GBを再構成する復号化部としてのデコーダ部192と有してなる畳み込みオートエンコーダ(CAE:Convolutional Auto-Encoder)の構造を有している。
【0123】
畳み込みオートエンコーダの構造は公知のものであるため、詳しい説明は省略するが、エンコーダ部191は複数の畳み込み層(Convolution Layer)193を有し、各畳み込み層193では、入力データに対し複数のフィルタ(カーネル)194を用いた畳み込み演算が行われた結果が次層の入力データとして出力される。同様に、デコーダ部192は複数の逆畳み込み層(Deconvolution Layer)195を有し、各逆畳み込み層195では、入力データに対し複数のフィルタ(カーネル)196を用いた逆畳み込み演算が行われた結果が次層の入力データとして出力される。そして、後述する学習処理では、各フィルタ194,196の重み(パラメータ)が更新されることとなる。
【0124】
検査実行部177は、ポケット部2の成形状態について検査を行う機能部である。検査実行部177によって実行されるポケット部検査の詳細については後述する。
【0125】
記憶部187は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成され、検査に用いられる各種設定情報や、検査結果などを記憶するためのものである。本実施形態では、各種設定情報として、例えばPTPシート1、ポケット部2及び錠剤5の形状及び寸法や、検査範囲(1枚のPTPシート1に対応する範囲)を画定するための検査枠の形状及び寸法並びにカメラ51との相対位置関係、ポケット部2の領域を画定するためのポケット枠Wの形状及び寸法並びにカメラ51(又は検査枠)との相対位置関係などが設定記憶されている。
【0126】
さらに、記憶部187には、AIモデル200(ニューラルネットワーク190及びその学習により獲得した学習情報)を記憶するための所定の記憶領域が設けられている。
【0127】
通信部188は、例えば有線LAN(Local Area Network)や無線LAN等の通信規格に準じた無線通信インターフェースなどを備え、外部と各種データを送受信可能に構成されている。例えば通信部188は、後述する充填制御装置82との間で信号を送受信可能に構成され、検査結果などを充填制御装置82へ出力可能に構成されている。
【0128】
次いで、成形制御装置81の制御により実行されるポケット部成形工程について図9を参照しつつ説明する。
【0129】
かかるポケット部成形工程では、まずステップS101の中間停止位置配置工程が行われる。中間停止位置配置工程では、スライダ65の移動によりポケット部成形型66を上方へと移動させることで、初期位置に配置されたプラグ66aが上方に向かって移動する。
【0130】
そして、設定された中間停止位置にプラグ66aが到達すると、スライダ65の移動が停止され、プラグ66aが中間停止位置に配置された状態になる。このとき、プラグ66aの先端面は、容器フィルム3から所定距離だけ離れた状態とされる。この所定距離は、通常、ポケット部2の深さよりも小さなものとされる。
【0131】
次いで、ステップS102の挟持工程において、上型71を下方に向けて移動させることで、固定状態にある下型61と上型71とで容器フィルム3を挟んだ状態とする。このとき、容器フィルム3のうち、ポケット部2となる成形予定部3a(図7参照)の周囲に位置する環状部分が、両型61,71で挟持された状態となる。尚、中間停止位置配置工程及び挟持工程を同時に行ってもよいし、挟持工程を中間停止位置配置工程よりも先に行ってもよい。
【0132】
続くステップS103の膨出工程では、気体供給装置76から気体供給路75を介して気体供給孔74へと気体を供給することで、容器フィルム3におけるポケット部2の成形予定部3aに対し、その表側(図7上側)から圧縮エアを吹き付ける。気体の供給により、成形予定部3aは、ポケット部2の突出側(図7上側)とは反対側(図7下側)に膨出し、引き伸ばされて薄くなる。
【0133】
そして、成形予定部3aは、プラグ66aの先端面により支持された状態となるまで膨出する。気体の供給により成形予定部3aを膨出させる場合、膨出後の成形予定部3aの肉厚は全体的にほぼ同じになる。
【0134】
尚、プラグ66aの中間停止位置に応じて、容器フィルム3の延伸量が変化し、成形予定部3aの肉厚も変化する。プラグ66aの中間停止位置が比較的高い場合には、容器フィルム3の延伸量が比較的小さなものとなるため、成形予定部3aは全体的に厚い状態となる。
【0135】
一方、プラグ66aの中間停止位置が比較的低い場合には、容器フィルム3の延伸量が比較的大きなものとなるため、成形予定部3aは全体的に薄い状態となる。
【0136】
続くステップS104の最終成形工程では、プラグ66aが上方へと移動し、突出位置へと配置される。その結果、成形予定部3aにおける膨らみ方向が反転して、所定の深さを有するポケット部2が成形される。従って、本実施形態では、プラグ66aや気体供給装置76等により、容器フィルム3の一部(成形予定部3a)を延伸してポケット部2を成形する延伸手段(延伸成形手段)が構成されることとなる。
【0137】
尚、押圧により容器フィルム3を変形させる場合、成形予定部3aのうち底部2aに相当する部位はプラグ66aと接触して冷却されるため、底部2aに相当する部位はほとんど延伸されない。従って、中間停止位置を比較的高くすることで成形予定部3aが全体的に厚い状態となっていれば、プラグ66aによる押圧時に底部2aに相当する部位は厚い状態で維持されるため、結果的に、成形されるポケット部2における側部2bが比較的薄肉となる。
【0138】
一方、中間停止位置を比較的低くすることで成形予定部3aが全体的に薄い状態となっていれば、プラグ66aによる押圧時に底部2aに相当する部位は薄い状態で維持されるため、結果的に、成形されるポケット部2における側部2bが比較的厚肉となる。
【0139】
このようにプラグ66aの中間停止位置を調節し成形予定部3aの肉厚を調節することで、最終的に成形されるポケット部2における底部2a及び側部2bのそれぞれの肉厚のバランスを調節することが可能となる。
【0140】
最終成形工程の後には、プラグ66aを初期位置に配置するとともに、両型61,71による容器フィルム3の挟持を解除することで、ポケット部成形工程が終了する。
【0141】
次いで、充填制御装置82について説明する。充填制御装置82は、錠剤充填装置22による錠剤5の充填に関する制御を行うためのものであり、CPUやRAMなどを有するコンピュータシステムによって構成されている。充填制御装置82が本実施形態における充填制御手段を構成する。
【0142】
特に本実施形態に係る充填制御装置82は、ポケット部検査装置21による検査結果に基づき、所定のポケット部2に対し錠剤5を充填するか否かを切換え制御可能に構成されている。
【0143】
具体的に、充填制御装置82は、ポケット部検査装置21から所定のPTPシート1(10個のポケット部2の成形状態)に関する検査結果が入力され、かかる検査結果が良品判定結果である場合には、かかるPTPシート1に含まれる10個すべてのポケット部2に対し錠剤5を充填するように錠剤充填装置22を制御する。
【0144】
一方、所定のPTPシート1に関する検査結果が不良判定結果である場合には、かかるPTPシート1に含まれる10個すべてのポケット部2に対し錠剤5を充填しないように錠剤充填装置22を制御する。同時に、不良シート排出機構40に対し不良品信号を出力する。その結果、不良シート排出機構40によって、不良品信号に係るPTPシート1(不良シート)が排出される。
【0145】
次に、ポケット部検査装置21によって行われるニューラルネットワーク190の学習処理について図10のフローチャートを参照して説明する。
【0146】
まず、作業者は、良品の容器フィルム3(良品のポケット部2が多数成形された複数枚分のPTPシート1に対応する容器フィルム3)を用意する。尚、ここで用意する容器フィルム3としては、検査対象となる容器フィルム3と同形状のポケット部2を有しているものであることが好ましい。但し、容器フィルム3の厚さや材質、ポケット部2の大きさや配置レイアウト等の同一性は必要なく、多様な種類の学習データを基に学習した方が汎用性の面においては好ましい。
【0147】
そして、作業者は、ポケット部検査装置21の所定の検査位置に、まず予め用意した良品の容器フィルム3(良品のポケット部2が成形された容器フィルム3)を配置した上で、メイン制御部171に所定の学習プログラムを実行させる。
【0148】
所定の学習プログラムの実行に基づき、学習処理が開始されると、メイン制御部171は、はじめにステップS201において、ニューラルネットワーク190の学習を行うための前処理を行う。
【0149】
具体的には、メイン制御部171からの指令に基づき、まず照明制御部172が照明装置50を点灯させる。続いて、メイン制御部171からの指令に基づき、カメラ制御部173がカメラ51を駆動させ、容器フィルム3の所定範囲を撮像する。これにより、容器フィルム3の所定範囲に係る画像データが取得される。ここで、カメラ51により取得された画像データは、画像取得部174により取り込まれた後、画像処理部175において所定の画像処理(例えばシェーディング補正や傾き補正など)が施された上で、記憶部187に記憶される。
【0150】
尚、上記一連の処理は、学習データとして必要な数のポケット部2に係る画像データ(濃淡模様データ)が取得されるまで、容器フィルム3上の撮像範囲を移動させながら繰り返し行われる。
【0151】
ステップS201において学習に必要な数のポケット部2に係る画像データ(濃淡模様データ)が取得されると、続くステップS202において、メイン制御部171からの指令に基づき、学習部176が、未学習のニューラルネットワーク190を準備する。例えば予め記憶部187等に格納されているニューラルネットワーク190を読み出す。又は、記憶部187等に格納されているネットワーク構成情報(例えばニューラルネットワークの層数や各層のノード数など)に基づいて、ニューラルネットワーク190を構築する。
【0152】
ステップS203では、学習データとしての学習用濃淡模様データを取得する。具体的には、メイン制御部171からの指令に基づき、画像処理部175が、ステップS201において記憶部187に記憶された画像データを基に、該画像データに含まれる複数のポケット部2の中から1つのポケット部2を抽出し、該ポケット部2の底部2aに生じる濃淡模様(濃淡分布像)に相当する濃淡模様データを1つの学習用濃淡模様データとして取得する。そして、この学習用濃淡模様データを学習部176へ出力する。つまり、成形不良のない良品の容器フィルム3のポケット部2に係る濃淡模様データのみが学習データ(学習用濃淡模様データ)として用いられる。
【0153】
ステップS204では、再構成濃淡模様データを取得する。具体的には、メイン制御部171からの指令に基づき、学習部176が、ステップS203において取得された学習用濃淡模様データを入力データとして、ニューラルネットワーク190の入力層に与え、これによりニューラルネットワーク190の出力層から出力される再構成データである濃淡模様データを再構成濃淡模様データとして取得する。
【0154】
続くステップS205では、学習部176が、ステップS203において取得した学習用濃淡模様データと、ステップS204においてニューラルネットワーク190により出力された再構成濃淡模様データとを比較し、その誤差が十分に小さいか否か(所定の閾値以下であるか否か)を判定する。
【0155】
ここで、その誤差が十分に小さい場合には、ニューラルネットワーク190及びその学習情報(後述する更新後のパラメータ等)をAIモデル200として記憶部187に格納し、本学習処理を終了する。
【0156】
一方、その誤差が十分に小さくない場合には、ステップS206においてネットワーク更新処理(ニューラルネットワーク190の学習)を行った後、再びステップS203へ戻り、上記一連の処理を繰り返す。
【0157】
具体的に、ステップS206のネットワーク更新処理では、例えば誤差逆伝播法(Backpropagation)などの公知の学習アルゴリズムを用いて、学習用濃淡模様データと再構成濃淡模様データの差分を表す損失関数が極力小さくなるように、ニューラルネットワーク190における上記各フィルタ194,196の重み(パラメータ)をより適切なものに更新する。尚、損失関数としては、例えばBCE(Binary Cross-entropy)などを利用することができる。
【0158】
これらの処理を何度も繰り返すことにより、ニューラルネットワーク190では、学習用濃淡模様データと再構成濃淡模様データの誤差が極力小さくなり、より正確な再構成濃淡模様データが出力されるようになる。
【0159】
次に、ポケット部検査装置21によって行われるポケット部検査の流れについて図11のフローチャートを参照して説明する。
【0160】
尚、図11に示すポケット部検査に係る検査処理は、製品となる1枚のPTPシート1として矩形シート状に打抜かれる範囲に対応した各検査範囲について、それぞれ行われる処理である。つまり、容器フィルム3の搬送が一旦停止するインターバル毎に、2つの検査範囲に対しそれぞれ図11に示すポケット部検査が行われることとなる。以下、詳しく説明する。
【0161】
ポケット部成形装置16によってポケット部2の成形された容器フィルム3の所定範囲がポケット部検査装置21に一旦停止すると、検査制御装置52は、メイン制御部171に所定の検査プログラムを実行させる。
【0162】
所定の検査プログラムの実行に基づき、検査処理が開始されると、まず容器フィルム3の所定範囲に対し照明装置50から電磁波(紫外光)を照射する照射処理(照射工程)が実行されると共に、カメラ51による撮像処理(撮像工程)が実行される。
【0163】
具体的には、メイン制御部171からの指令に基づき、照明制御部172が照明装置50を点灯させ、カメラ制御部173がカメラ51を駆動させる。これにより、容器フィルム3上の所定の検査範囲が撮像され、複数のポケット部2を含んだ透過画像データが取得される。そして、この透過画像データは、画像取得部174に取り込まれる。
【0164】
容器フィルム3の透過画像データが画像取得部174に取り込まれると、検査制御装置52は、まず検査画像取得処理を実行する(ステップS301)。
【0165】
具体的には、メイン制御部171からの指令に基づき、画像処理部175が、画像取得部174に取り込まれた容器フィルム3の透過画像データを基に、上記検査枠を用いて、1枚のPTPシート1に対応する検査範囲(10個のポケット部2を含む範囲)に係る画像データを検査画像として取得し、記憶部187に記憶する。
【0166】
尚、本実施形態において、容器フィルム3上の各PTPシート1に対応する範囲が停止する位置はカメラ51の撮像範囲に対し毎回一定であり、上記検査枠の設定位置はカメラ51との相対位置関係により予め定められている。そのため、本実施形態では、上記検査枠の設定位置が、画像データに応じてその都度、位置調整されることはないが、これに限らず、位置ずれの発生等を考慮して、画像データから得られる情報を基に上記検査枠の設定位置を適宜、調整する構成としてもよい。
【0167】
また、検査画像に対し各種加工処理を施す構成としてもよい。例えば照明装置50から撮像範囲全体に対し電磁波を均一に照射することは技術的に限界があることから、位置の相違により生じる電磁波強度(輝度)のばらつきを補正するシェーディング補正を行う構成としてもよい。
【0168】
検査画像が取得されると、検査制御装置52は、続くステップS302においてマスク処理を実行する。
【0169】
具体的には、メイン制御部171からの指令に基づき、画像処理部175が、ステップS301にて取得した検査画像上の10個のポケット部2の位置に合わせてそれぞれポケット枠W(図12参照)を設定すると共に、該ポケット枠Wにより特定されたポケット領域以外の領域、すなわちフィルム平坦部3bに対応する領域に対しマスクMをかける処理を行う。
【0170】
尚、本実施形態において、ポケット枠Wの設定位置は、上記検査枠との相対位置関係により予め定められている。そのため、本実施形態では、ポケット枠Wの設定位置が検査画像に応じてその都度、位置調整されることはないが、これに限らず、位置ずれの発生等を考慮して、検査画像から得られる情報を基にポケット枠Wの設定位置を適宜、調整する構成としてもよい。
【0171】
次に、検査制御装置52は、ステップS303において、全ポケット部2のポケット良品フラグの値に「0」を設定する。
【0172】
尚、「ポケット良品フラグ」は、対応するポケット部2の良否判定結果を示すためのものであり、記憶部187の所定領域に設定される。そして、所定のポケット部2が良品判定された場合には、これに対応するポケット良品フラグの値に「1」が設定される。
【0173】
続くステップS304において、検査制御装置52は、記憶部187に設定されたポケット番号カウンタの値Cに初期値である「1」を設定する。
【0174】
尚、「ポケット番号」とは、1つの検査範囲内における10個のポケット部2それぞれ対応して設定された通し番号であり、ポケット番号カウンタの値C(以下、単に「ポケット番号C」という)によりポケット部2の位置を特定することができる。
【0175】
そして、検査制御装置52は、ステップS305において、ポケット番号Cが一検査範囲あたり(1枚のPTPシート1あたり)のポケット数N(本実施形態では「10」)以下であるか否かを判定する。
【0176】
ここで肯定判定された場合にはステップS306へ移行する。ステップS306では、メイン制御部171からの指令に基づき、検査実行部177が、現在のポケット番号Cのポケット部2に係る濃淡模様データを抽出する濃淡模様抽出処理(濃淡模様抽出工程)を実行する。かかる処理を実行する機能により、主として本実施形態における濃淡模様抽出手段が構成されることとなる。
【0177】
具体的には、ステップS302にてマスク処理された検査画像(マスキング画像データ)における、現在のポケット番号C(例えばC=1)に対応するポケット部2に係るポケット枠W内の濃淡画像を、該ポケット部2の底部2aに生じた濃淡模様K(図12の濃淡模様K1、及び、図14の濃淡模様K2など参照)に相当する濃淡模様データとして抽出する。
【0178】
尚、図12は、成形不良のないポケット部2の底部2aに生じる濃淡模様K1を示す図であり、図13は、図12に示す濃淡模様K1のA-A線に沿った各画素に係る輝度値を示すグラフである。
【0179】
また、図14は、成形不良のあるポケット部2の底部2aに生じる濃淡模様K2を示す図であり、図15は、図14に示す濃淡模様K2のB-B線に沿った各画素に係る輝度値を示すグラフである。
【0180】
つまり、濃淡模様(濃淡模様データ)Kとは、各画素ごとに輝度情報(例えば0から255までの256階調のうちのいずれかの値)を有した二次元画像情報であり、ポケット部2の底部2a等の各位置(座標位置)における肉厚の違い(肉厚分布)と、そこを透過する電磁波の透過率等との関係から、ポケット部2の底部2a等に生じる濃淡の二次元分布を示す像(透過電磁波の強度分布像)に相当するものである。
【0181】
尚、本実施形態では、ポケット枠Wが、ポケット部2の開口周縁部(側部2bとフィルム平坦部3bとの連接部)に合わせて設定されているため、このステップS306にて取得される濃淡模様Kには、ポケット部2の底部2aのみならず、ポケット部2の側部2b、並びに、底部2a及び側部2bが交わるポケット部2の角部2cに係る濃淡模様も含まれることとなる。
【0182】
また、濃淡模様Kのうち、底部2aに対応する範囲に関しては、概ね底部2aの肉厚分布に対応した濃淡分布(輝度分布)を有する濃淡模様が得られる。一方、側部2bや角部2cに対応する範囲に関しては、その輝度情報が、側部2b等の肉厚方向(X方向やY方向)に沿って透過した電磁波に対応したものではなく、その成形時延伸方向(Z方向)に沿って透過した電磁波に対応したものとなるため、側部2b等の肉厚とは関係の薄いものとなる。
【0183】
続くステップS307において、検査実行部177は、再構成処理(再構成データ取得工程)を実行する。かかる処理を実行する機能により、主として本実施形態における再構成データ取得手段が構成されることとなる。
【0184】
具体的に、検査実行部177は、ステップS306において抽出したポケット番号C(例えばC=1)のポケット部2の底部2aに係る濃淡模様データKを、AIモデル200の入力層に入力する。そして、AIモデル200によって再構成されて出力層から出力される再構成データである濃淡模様データを、前記ポケット番号C(例えばC=1)のポケット部2の底部2aに係る再構成濃淡模様データKSとして取得する。
【0185】
ここで、AIモデル200は、図12に示すような成形不良のないポケット部2の底部2aに係る濃淡模様データK1を入力した場合は勿論のこと、図14に示すような成形不良のあるポケット部2の底部2aに係る濃淡模様データK2を入力した場合であっても、上記のように学習したことにより、再構成濃淡模様データKSとして、図16(a)に示すような成形不良のないポケット部2の底部2aに係る濃淡模様データを出力することとなる。
【0186】
続くステップS308において、検査実行部177は、比較処理(比較工程)を実行する。かかる処理を実行する機能により、主として本実施形態における比較手段が構成されることとなる。
【0187】
具体的に、検査実行部177は、まずステップS306において抽出した濃淡模様データKと、ステップS307において取得された再構成濃淡模様データKSとを比較して、両データの各画素毎の輝度の差分を算出する。続いて、該差分が予め定めた許容範囲内にない画素を不良画素Pxとして特定し、該不良画素Pxの総数(不良面積)を算出する。図16(b)は、比較処理において不良画素Pxが生じた部位を模式的に示した図である。
【0188】
そして、ステップS309において、検査実行部177は、ステップS308にて算出した不良画素Pxの数が予め設定した判定基準Po以下であるか否かを判定する。つまり、不良画素Pxの数が許容範囲内であるか否かを判定することにより、該ポケット部2の成形状態に関する良否判定を行う。かかるステップS309の良否判定処理(良否判定工程)を実行する機能により、本実施形態における良否判定手段が構成されることとなる。
【0189】
これに限らず、ここで、例えば不良画素Pxの連結成分のうち、最大面積のものが許容範囲内にあるか否かを判定する方法や、不良画素Pxの連結成分のばらつき度合い(分布状況)を判定する方法など、他の方法により良否判定を行う構成としてもよい。勿論、その大小に関係なく、不良画素Pxが1箇所でも存在すれば、不良品判定する構成としてもよい。
【0190】
ステップS309において不良画素Pxの数が判定基準Po以下であると肯定判定された場合にはステップS310へ移行する。一方、ここで否定判定された場合には、現在のポケット番号Cに対応するポケット部2が不良品であるとみなし、そのままステップS311へ移行する。
【0191】
ステップS310において、検査実行部177は、現在のポケット番号Cに対応するポケット部2が良品であるとみなし、該ポケット番号Cに対応したポケット良品フラグの値に「1」を設定し、ステップS311へ移行する。
【0192】
その後、検査制御装置52は、ステップS311において現在のポケット番号Cに「1」を加えた後、ステップS305へ戻る。
【0193】
ここで、新たに設定したポケット番号Cが未だポケット数N(本実施形態では「10」)以下である場合には、再度ステップS306へ移行し、上記一連の処理を繰り返し実行する。
【0194】
一方、新たに設定したポケット番号Cがポケット数Nを超えたと判定された場合には、すべてのポケット部2に関する良否判定処理が終了したとみなし、ステップS312へ移行する。
【0195】
ステップS312において、検査制御装置52は、検査範囲内の全ポケット部2のポケット良品フラグの値が「1」であるか否かを判定する。これにより、該検査範囲に対応するPTPシート1が良品であるか、不良品であるか判定する。
【0196】
ここで肯定判定された場合、すなわち検査範囲内のすべてのポケット部2が「良品」で、「不良品」判定されたポケット部2が1つも存在しない場合には、ステップS313において、該検査範囲に対応するPTPシート1を「良品」と判定し、本検査処理を終了する。
【0197】
一方、ステップS312において否定判定された場合、すなわち検査範囲内に「不良品」判定されたポケット部2が1つでも存在する場合には、ステップS314において、該検査範囲に対応するPTPシート1を「不良品」と判定し、本検査処理を終了する。
【0198】
尚、ステップS313の良品判定処理、及び、ステップS314の不良品判定処理において、検査制御装置52は、該検査範囲に対応するPTPシート1に関する検査結果を記憶部187に記憶すると共に、充填制御装置82に出力する。
【0199】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ポケット部2の成形された容器フィルム3の搬送が一旦停止するインターバル毎に、該容器フィルム3に対し照明装置50から電磁波が照射されると共に、該容器フィルム3を透過した電磁波(紫外光)をカメラ51により撮像し、取得された透過画像データから、ポケット部2の底部2aに生じた濃淡模様(濃淡模様データ)Kを抽出し、これを基に、ポケット部2の成形状態に関する良否判定を行う構成となっている。
【0200】
かかる構成により、ポケット部2の底部2aの成形状態(肉厚分布状態)に関する良否判定は勿論のこと、ポケット部2の側部2bや角部2cの成形状態(肉厚分布状態)に関する良否判定を行うことも可能となり、ポケット部2の側部2b等における肉厚分布の偏りの有無など、ポケット部2の側部2b等の成形不良(肉厚不良)をより精度良く検出することができる。
【0201】
特に本実施形態では、ニューラルネットワーク190を学習して構築したAIモデル200を用いて、ポケット部2の側部2b等の成形状態に関する検査を行う構成となっている。
【0202】
具体的には、ポケット部2の底部2aを撮像して得られた濃淡模様データKと、その濃淡模様データKをAIモデル200により再構成して得た再構成濃淡模様データKSとを比較して良否判定を行う構成となっている。
【0203】
これにより、従来では検出することが困難であった微細な成形不良や、底部2aの形状や肉厚分布が複雑なポケット部2などであっても検査を行うことが可能となる。結果として、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0204】
さらに、本実施形態では、ポケット部2を撮像して得た濃淡模様データKと、その濃淡模様データKを基に再構成して得た再構成濃淡模様データKSとを比較しているため、比較する両濃淡模様データにおいて、検査対象物である容器フィルム3側の撮像条件(例えば容器フィルム3の配置位置や配置角度、たわみ等)や、ポケット部検査装置21側の撮像条件(例えば照明装置50の照明状態やカメラ51の画角等)の違いに基づく影響がなく、より微細な成形不良をより正確に検出することが可能となる。
【0205】
また、本実施形態では、ポケット部2の底部2aを撮像する1回の撮像で側部2b全周の成形状態を把握することが可能となるため、検査の高速化、ひいてはブリスターパックの生産性の向上を図ることができる。
【0206】
さらに、本実施形態では、透光性を有する容器フィルムに対し、電磁波として、容器フィルム3の透過率がおよそ30±10パーセントとなる波長253±20nmの紫外光を用いて検査を行う構成となっている。紫外光は、可視光に比べて透過率が低く、透光性を有する容器フィルム3を透過しにくいため、ポケット部2の成形状態に関する検査をより適切に行うことができる。また、ポケット部2の底部2aの薄肉部位と厚肉部位における光の透過率に差が生じやすくなり、検査をより適切に行うことができる。
【0207】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0208】
(a)検査対象となるブリスターパックの構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ブリスターパックとして、錠剤5等の内容物を収容するPTPシート1が例示されている。
【0209】
これに限らず、例えば容器フィルムからカバーフィルムを引き剥がして内容物を取出すピールオープン式のブリスターパック(食料品等を収容するポーションパックなど)や、電子部品等の内容物を収容し搬送するブリスターパック(キャリアテープなど)、容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されず台紙等が組み付けられるタイプのブリスターパックなど、各種ブリスターパックを検査対象とすることができる。
【0210】
(b)容器フィルムにおけるポケット部の形状、大きさ、深さ、個数、配列など、ポケット部の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、内容物の種別や形状、用途などに応じて適宜選択することができる。例えばポケット部2の底部2aが平面視で略三角形状、略楕円形状、略四角形状、略菱形状等であってもよい。
【0211】
より具体的に、例えば図17(a),(b)に示すようなブリスターパック500を検査対象とすることもできる。ブリスターパック500は、ポケット部501を有している。ポケット部501は、平面視矩形状の底部501aと、該底部501aの周囲に連接した矩形枠状の側部501bとから構成されている。ポケット部501の底部501aには、ポケット内側に向け膨出した複数の膨出リブ501cが形成されている。
【0212】
このようなポケット部501について、上記実施形態の検査手順に則して、底部501aに生じる濃淡画像を抽出し(ステップS306)、再構成処理(ステップS307)及び比較処理(ステップS308)を行った場合には、厚肉領域(膨出リブ501c)に対応した低輝度領域や、薄肉領域(底部501a一般部)に対応した高輝度領域などが得られることとなり、ポケット部501の成形状態に関する良否判定を行うことができる。
【0213】
(c)容器フィルムやカバーフィルムの材質や層構造等は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、容器フィルム3がPPやPVC等の無色透明な熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。
【0214】
これに限らず、例えば容器フィルム3が無色半透明の樹脂材料や、有色透明又は有色半透明の樹脂材料は勿論のこと、不透明材料(不透明樹脂材料や金属材料など)により形成された構成としてもよい。金属材料としては、例えばアルミラミネートフィルムなど、アルミニウムを主材料としたものなどが一例に挙げられる。
【0215】
尚、不透明材料により形成された容器フィルム3に関しては、後述するように、例えばX線など、不透明材料を透過可能な電磁波を照明装置50から照射することにより、検査可能となる。
【0216】
(d)ポケット部の成形方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、プラグアシスト圧空成形法によりポケット部2が成形される構成となっている。
【0217】
これに代えて、例えば真空成形法、圧空成形法、プラグ成形法など、平坦な容器フィルム3の一部(成形予定部3a)を部分的に加熱軟化させ延伸加工する公知の各種成形方法を採用することができる。
【0218】
但し、容器フィルムがアルミラミネートフィルムの場合には、加熱することにより接着層間にて剥離が生じて成形時に破れてしまう可能性があるため、事前に加熱を行わない冷間成形(コールドフォーミング)が適している。かかる場合においても、ポケット成形時には、例えば挟持部分近傍などが引き伸ばされやすく、容器フィルムが必ずしも均一には延伸されないため、ポケット部の各部の肉厚に偏りが生じるおそれがある。
【0219】
(e)照射手段及び撮像手段の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、照明装置50がポケット部2の突出側に配置され、カメラ51がポケット部2の開口側に配置された構成となっているが、両者の位置関係が逆になった構成としてもよい。
【0220】
また、上記実施形態において、照明装置50は、紫外光を含む電磁波を照射するように構成されているが、容器フィルム3の材質や色などに応じて、照明装置50から照射される電磁波の波長を適宜変更してもよい。勿論、ここでバンドパスフィルタ51aを省略し、照明装置50から照射され容器フィルム3を透過した電磁波が直接カメラ51に入射する構成としてもよい。
【0221】
例えば容器フィルム3がアルミニウム等からなる不透明材料によって構成されている場合には、照明装置50からX線を照射することとしてもよい。また、容器フィルム3が色の付いた半透明材料によって構成される場合には、照明装置50から白色光などの可視光を照射してもよい。
【0222】
(f)上記実施形態では、容器フィルム3の透過率がおよそ30±10パーセントとなる波長253±20nmの紫外光が検査に用いられる構成となっているが、これとは異なる波長の電磁波を用いて検査を行う構成としてもよい。
【0223】
但し、容器フィルム3を透過する電磁波の透過率が高すぎても低すぎても、ポケット部2の底部2aの薄肉部位と厚肉部位における光の透過率に差が生じにくくなるおそれがあるため、容器フィルム3の透過率が15パーセント以上かつ60パーセント以下となる波長の電磁波、より好ましくは、容器フィルムの透過率が20パーセント以上かつ50パーセント以下となる波長の電磁波を用いることが好ましい。
【0224】
(g)識別手段としてのAIモデル200(ニューラルネットワーク190)の構成及びその学習方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0225】
(g―1)上記実施形態では、特に言及していないが、ニューラルネットワーク190の学習処理や、ポケット部検査処理における再構成処理などを行う際に、必要に応じて各種データに対し正規化等の処理を行う構成としてもよい。
【0226】
(g-2)ニューラルネットワーク190の構造は、図8に示したものに限定されず、例えば畳み込み層193の後にプーリング層を設けた構成としてもよい。勿論、ニューラルネットワーク190の層数や、各層のノード数、各ノードの接続構造などが異なる構成としてもよい。
【0227】
(g-3)上記実施形態では、AIモデル200(ニューラルネットワーク190)が、畳み込みオートエンコーダ(CAE)の構造を有した生成モデルとなっているが、これに限らず、例えば変分自己符号化器(VAE:Variational Autoencoder) など、異なるタイプのオートエンコーダの構造を有した生成モデルとしてもよい。
【0228】
(g―4)上記実施形態では、誤差逆伝播法によりニューラルネットワーク190を学習する構成となっているが、これに限らず、その他の種々の学習アルゴリズムを用いて学習する構成としてもよい。
【0229】
(g―5)ニューラルネットワーク190は、いわゆるAIチップ等のAI処理専用回路によって構成されることとしてもよい。その場合、パラメータ等の学習情報のみが記憶部187に記憶され、これをAI処理専用回路が読み出して、ニューラルネットワーク190に設定することによって、AIモデル200が構成されるようにしてもよい。
【0230】
(g―6)上記実施形態では、学習部176を備え、検査制御装置52内においてニューラルネットワーク190の学習を行う構成となっているが、これに限らず、少なくともAIモデル200(学習済みのニューラルネットワーク190)を記憶部187に記憶していればよく、学習部176を省略した構成としてもよい。従って、ニューラルネットワーク190の学習を検査制御装置52の外部で行い、これを記憶部187に記憶する構成としてもよい。
【0231】
(h)上記実施形態では、錠剤5等の内容物の充填まで行うPTP包装機(ブリスター包装機)11内に、ポケット部検査装置21を配置した構成となっている。これに限らず、例えば容器フィルム3の製造と、内容物の包装とを別々に行う製造ラインなどにおいては、容器フィルム3の製造装置にポケット部検査装置21を備えた構成としてもよい。また、容器フィルム3の製造装置とは別にオフラインで、ポケット部2の成形された容器フィルム3を検査する検査装置を備えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0232】
1…PTPシート、2…ポケット部、2a…底部、2b…側部、2c…角部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、11…PTP包装機、15…加熱装置、16…ポケット部成形装置、21…ポケット部検査装置、50…照明装置、51…カメラ、52…検査制御装置、176…学習部、177…検査実行部、190…ニューラルネットワーク、200…AIモデル、K(K1,K2)…濃淡模様。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17