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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029318
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220209BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132605
(22)【出願日】2020-08-04
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 裕介
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA16
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】 低コストで製造でき、繰り返し使用可能で、優れた立体形状を形成し着用感にも優れたマスク及びその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】マスクは、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成し、当該マスク本体に紐状の耳掛けを取り付けてなるマスクであって、少なくともこの稜線部分を含むライン状領域からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい基礎部と、この基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織が編成されてなる支持部と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成し、当該マスク本体に紐状の耳掛けを取り付けてなるマスクであって、
少なくとも前記稜線部分を含むライン状領域からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい基礎部と、
前記基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織が編成されてなる支持部と、
を有することを特徴とする
マスク。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクにおいて、
前記筒状体が丸編みで編立てられたことを特徴とする
マスク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマスクにおいて、
前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部と同じ伸縮性の編地で編成され、前記基礎部に連結してなる固定部と、
を有することを特徴とする
マスク。
【請求項4】
請求項3に記載のマスクにおいて、
前記マスク本体の各開口端部が袋編みで形成され、
前記固定部が、当該袋編みに隣接してなることを特徴とする
マスク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のマスクにおいて、
前記変化組織が、タック編み、パール編み、リブ編み、パイル編み、又はインレイ編みで編成されることを特徴とする
マスク。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のマスクにおいて、
前記二重の平面編地が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されることを特徴とする
マスク。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のマスクにおいて、
前記耳掛けが、前記マスク本体の各開口端部に、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなることを特徴とする
マスク。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のマスクにおいて、
編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルターであって、少なくとも一の平面編地がパイル編みで編成され、前記内部空間に着脱可能及び/又は前記マスク本体のうちの着用者に接触する編地に着脱可能な内部フィルターを備えることを特徴とする
マスク。
【請求項9】
編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成するマスク本体製造工程であって、当該稜線からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい編地からなる基礎部を編成すると共に、当該基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織からなる支持部を編成するマスク本体製造工程と、
前記マスク本体に紐状の耳掛けを取り付ける耳掛け形成工程と、を含むことを特徴とする
マスク製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のマスク製造方法において、
前記マスク本体製造工程が、前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部と同じ伸縮性の編地からなる固定部を編成することを特徴とする
マスク製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10のいずれかに記載のマスク製造方法において、
前記マスク本体製造工程が、前記マスク本体の各開口端部を袋編みで形成し、前記固定部を当該袋編みに隣接して編成することを特徴とする
マスク製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクとして優れた諸機能を発揮すると共に、低コストで製造でき、繰り返し使用可能で、優れた立体形状を形成し着用感にも優れたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新型コロナウィルス(COVID-19)による感染症が世界的に流行するなかで、マスク着用の重要性が増している。マスクは、着用者の顔面と密着することでウィルスを含んだ飛沫等からの感染予防や着用者からの飛沫拡散防止の効果を発揮する。
【0003】
しかし、マスクを長時間着用する場合には、着用者の口元が圧迫され、その密着性から息苦しさの原因となり、着用感を低下させている。特に、気温の上昇する夏場では、マスクを長時間着用することで、マスク内に暑さと湿度が籠もり、熱中症の原因ともなり、著しく着用感を低下させるものとなる。
【0004】
その一方で、現在では、マスクは、不織布を用いて多層化する等の高機能化が進んだ結果、複雑な製造工程が必要とされ、製造コストが嵩んで高額化している。また、マスクは、従来から使い捨て型(ディスポーザブルタイプ)が主流であるため、購入者の経済的負担が大きく、また大量に廃棄される使い捨てマスクが環境に与える負荷も大きいものとなっている。
【0005】
そのため、低コストで製造でき、繰り返し使用可能であると共に、着用感にも優れた通気性の良いマスクが望まれている。
【0006】
また、マスク着用時には、着用者の顔面は、鼻などの立体部分があるため、平面状のマスクを着用者の顔面の立体形状に追従するように手作業で膨らませて使用する必要があるが、平面状のマスクを使って着用者の顔面の立体形状に隙間なく追従することには限界がある。そのため、マスクと顔面との間に隙間が形成されやすく、当該隙間からウィルスを含んだ飛沫等を通過させてしまう危険性もある。そのため、より顔面にフィットできる立体的なマスクも需要が高い。
【0007】
従来のマスクでは、通気性を向上させる目的で、メリヤス生地を用いたマスクが提案されている。
【0008】
このような従来のマスクとしては、例えば、マスク本体を丸編み機を用いて筒状にメリヤス編成すると共に、該マスク本体の中央部においてシリンダの略半周にあるニードルを非編成レベルに置き、残る略半周のニードルにてシリンダの正逆往復回転により減らし目次いで増やし目を行いながら編成することで立体形状に構成したマスクが開示されている(特許文献1参照)。
【0009】
また、従来のマスクとしては、ニット生地を用いたマスクであって、ニット生地には、ブラックシリカの微粉末を含有する鉱物含有繊維が、マスクの表側および裏側のうち裏側に相当する面だけにプレーティング編みされたマスクが開示されている(特許文献2参照)。
【0010】
この他にも、従来のマスクとして、部分的に所定の加工を行うことで、より顔面にフィットするための立体的なマスクも提案されている。
【0011】
例えば、従来のマスクとしては、顔面覆い部中央の上辺または下辺の少なくとも一方にV字型の切り欠けを設け、該切り欠きの両斜辺を接合して立体性を付与された顔面覆い部と耳かけ部から構成される不織布製マスクであって、顔面覆い部が連続一体の不織布からなり、顔面覆い部の中央上辺に上方に張り出した襟部を設けたマスクが開示されている(特許文献3参照)。
【0012】
また、従来のマスクとしては、伸縮性を有するシートを打ち抜き形成してなる一体型のマスクの防護面中央部に、上下方向へ連続する非伸縮性の縦芯を形成するマスクが開示されている(特許文献4参照)。
【0013】
また、従来のマスクとしては、メッシュ生地をジャバラ状に折りたたみ、その上部中央部分に切り込みをいれ、また中心部に三角形のタックを寄せてなるマスクが開示されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実用新案登録第3153416号公報
【特許文献2】特開2010-162209号公報
【特許文献3】特開2007-54381号公報
【特許文献4】特開平8-308946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来のマスクでは、例えば、特許文献1のように、マスク本体を丸編み機を用いて筒状にメリヤス編成してなるマスクも提案されているが、平坦なメリヤス編成のみから編成されたマスクによる立体形状は、局所的なものにとどまり、着用者の顔面全体にかけての起伏ある立体形状に隙間なく追従することは困難である。
【0016】
また、従来のマスクとして、例えば、特許文献2のように、ブラックシリカの微粉末等の天然鉱石を練り込んで、天然鉱石による健康的な作用を享受しようとするものがあるが、上記特許文献1と同じく、平坦なメリヤス編成のみから編成されたマスクでは、着用者の顔面の立体形状に隙間なく追従することは困難である。また、天然鉱石が練り込まれた状態を維持するために洗濯できないことから、繰り返し使用できず、実質的には使い捨て型マスクにとどまり、購入者の経済的負担及び環境負荷が大きいものとなる。
【0017】
また、従来のマスクとして、例えば、特許文献3のように、顔面覆い部の中央上辺に上方に張り出した襟部を設けたマスクもあるが、襟部を付け加える工程が別途必要となり、製造コストが嵩むと共に、不織布材料のため、洗濯できないことから、繰り返し使用できず、実質的には使い捨て型マスクにとどまり、購入者の経済的負担及び環境負荷が大きいものとなる。
【0018】
また、従来のマスクとして、例えば、特許文献4のように、マスクの防護面中央部に、上下方向へ連続する非伸縮性の縦芯を形成するマスクもあるが、縦芯を形成する工程が別途必要となり、製造コストが嵩むと共に、不織布材料のため、洗濯できないことから、繰り返し使用できず、実質的には使い捨て型マスクにとどまり、購入者の経済的負担及び環境負荷が大きいものとなる。
【0019】
また、従来のマスクとして、例えば、特許文献5のように、メッシュ生地をジャバラ状に折りたたみ、その上部中央部分に切り込みをいれ、また中心部に三角形のタックを寄せてなるマスクもあるが、メッシュ生地を折りたたむことやタックを寄せるのみでは、編成されたマスクによる立体形状は、寄せられた領域近傍のみの局所的なものにとどまり、着用者の顔面全体にかけての起伏ある立体形状に隙間なく追従することは困難である。
【0020】
このようなことから、低コストで製造でき、繰り返し使用可能であると共に、立体的なマスクが望まれているものの、そのような需要者のニーズをすべて満たすような使い勝手の良い優れたマスクは現在のところ見当たらない。
【0021】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、低コストで製造でき、繰り返し使用可能で、優れた立体形状を形成し着用感にも優れたマスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るマスクは、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成し、当該マスク本体に紐状の耳掛けを取り付けてなるマスクであって、少なくとも前記稜線部分を含むライン状領域からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい基礎部と、前記基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織が編成されてなる支持部と、を有するものである。このように、当該マスク本体の上部と下部に各々ライン状領域から形成される当該基礎部が、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さいと共に、当該基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織が編成されてなる支持部を有することから、当該基礎部がマスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さいことによって、当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となると共に、当該支持部が、当該マスク本体の上部及び下部に起伏した変化組織で形成されることによって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインが自然な形状で円滑に隆起することとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状が確実に形成されると共に、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的なマスクが、簡素な製法により製造コストを抑えて大量生産できると共に、洗濯により繰り返し使用することが可能なマスクが実現される。
【0023】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記筒状体が丸編みで編立てられたものである。このように、前記筒状体が丸編みで編立てられたことから、マスクを構成する多層構造が極めて簡易に得られると共に、着用者の呼吸に伴って生じる空気の流れに応じてさらに立体的な起伏ある動きが可能となることとなり、通気性の高さを維持しつつより着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0024】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部と同じ伸縮性の編地で編成され、前記基礎部に連結してなる固定部とを有するものである。このように、前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部と同じ伸縮性の編地で編成され、前記基礎部に連結してなる固定部とを有することから、当該固定部が、前記基礎部に連結すると共に、当該基礎部と同じく、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さいことによって、さらに当該4つの角領域においても当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインが自然な形状で円滑に隆起することとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状をさらに確実に形成し、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的なマスクが実現される。
【0025】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記マスク本体の各開口端部が袋編みで形成され、前記固定部が、当該袋編みに隣接してなるものである。このように、前記マスク本体の各開口端部が袋編みで形成され、前記固定部が、当該袋編みに隣接してなることから、当該固定部が、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい前記基礎部に連結すると共に、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい袋編みから編成された当該各開口端部にも隣接することから、さらに当該4つの角領域から当該各開口端部にかけても当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインがさらに自然な形状で円滑に隆起することとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状をさらに確実に形成し、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的なマスクが実現される。
【0026】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記変化組織が、タック編み、パール編み、リブ編み、パイル編み、又はインレイ編みで編成されるものである。このように、前記変化組織が、タック編み、パール編み、リブ編み、パイル編み、又はインレイ編みで編成されることから、前記変化組織が特殊な加工を必要とすることなく、簡素な編立てのみによって編成されることとなり、簡素な製法により製造コストを抑えて大量生産できると共に、洗濯により繰り返し使用することが可能なマスクが実現される。
【0027】
また、本発明に係るマスクは、必要に応じて、前記二重の平面編地が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されるものである。このように、前記二重の平面編地が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されることから、表糸では天然繊維由来の水分に対する親和性の高さから高い吸湿性が発揮されて空気中の飛沫を吸収しやすくなると共に、化学繊維由来の糸で編成された裏糸により速乾性や通気性の高さが得られると共に摩擦や摩耗等に対する経年的な耐久性が発揮されることから、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に、洗濯を行うことで、さらに長期間にわたって繰り返し使用することが可能となる。
【0028】
また、本発明に係るマスクは、必要に応じて、前記耳掛けが、前記マスク本体の各開口端部に、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなるものである。このように、前記耳掛けが、前記マスク本体の各開口端部に、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなることから、表側の編地が外部の円筒面にあり裏側の編地が内部の円筒面にあることで表側の編地が裏側の編地より面積(表面積)が大きい一方で表側の編地と裏側の編地とが同じ供給量の糸から形成され、表側の編地から裏側の編地に向かって内側に巻き込む方向の強い収縮力が作用して自然に丸まった形状が紐状の耳掛けとして形成されることとなり、簡易な製法で、より自然で柔らかい感触の耳掛けが形成され、通気性の高さを維持しつつ耳への優しい着け心地と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0029】
また、本発明に係るマスクは、必要に応じて、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルターであって、少なくとも一の平面編地がパイル編みで編成され、前記内部空間に着脱可能及び/又は前記マスク本体のうちの着用者に接触する編地に着脱可能な内部フィルターを備えるものである。このように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルターであって、少なくとも一の平面編地がパイル編みで編成され、前記内部空間に着脱可能及び/又は前記マスク本体のうちの着用者に接触する編地に着脱可能な内部フィルターを備えることから、当該内部フィルターも洗濯により繰り返し使用できると共にパイル編みの編地によりさらに確実に空気中の飛沫を吸収できることとなり、同質素材の多層構造のマスクとして、当該内部フィルターをマスク本体とは別個に取り出して洗濯でき着脱可能に繰り返し使用できて利便性がさらに高められ、通気性の高さを維持しつつさらに優れた立体形状と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0030】
また、本発明に係るマスク製造方法は、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成するマスク本体製造工程であって、当該稜線からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい編地からなる基礎部を編成すると共に、当該基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織からなる支持部を編成するマスク本体製造工程と、前記マスク本体に紐状の耳掛けを取り付ける耳掛け形成工程と、を含むものである。このように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成するマスク本体製造工程であって、当該稜線からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい編地からなる基礎部を編成すると共に、当該基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織からなる支持部を編成するマスク本体製造工程と、前記マスク本体に紐状の耳掛けを取り付ける耳掛け形成工程と、を含むことから、当該基礎部がマスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さいことによって、当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となると共に、当該支持部が、当該マスク本体の上部及び下部に起伏した変化組織で形成されることによって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインが自然な形状で円滑に隆起することとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状が確実に形成されると共に、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体形状を有する繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【0031】
また、本発明に係るマスク製造方法は、必要に応じて、前記マスク本体製造工程が、前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部と同じ伸縮性の編地からなる固定部を編成するものである。このように、前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部と同じ伸縮性の編地で、前記基礎部に連結してなる固定部を編成することから、当該固定部が、前記基礎部に連結すると共に、当該基礎部と同じく、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さいことによって、さらに当該4つの角領域においても当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインが自然な形状で円滑に隆起することとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状をさらに確実に形成し、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的なマスクが簡易な製法によって実現される。
【0032】
また、本発明に係るマスク製造方法は、必要に応じて、前記マスク本体製造工程が、前記マスク本体の各開口端部を袋編みで形成し、前記固定部を当該袋編みに隣接して編成するものである。このように、前記マスク本体製造工程が、前記マスク本体の各開口端部を袋編みで形成し、前記固定部を当該袋編みに隣接して編成することから、当該固定部が、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい前記基礎部に連結すると共に、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい袋編みから編成された当該各開口端部にも隣接して編成されることから、当該固定部による立体的形状が前記基礎部と各開口端部の両側から支持されて、さらに立体形状が強固に維持された多層構造のマスクが簡素な編立てにより形成されることとなり、快適な通気性を両立すると共に洗濯により繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るマスクの側面から見たAーA断面図(a)と上部から見たBーB断面図(b)である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るマスクの製造フローを示す説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図(a)及び着用状態図(b)である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るマスクの着用状態を説明する説明図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係るマスクの耳掛けの製造フローを説明する説明図である。
図10】本発明の第4の実施形態に係るマスクの着用状態を説明する説明図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係るマスクの内部フィルターの製造フローを説明する説明図である。
図12】本発明の第5実施形態に係るマスクの内部フィルターの使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(本発明の第1の実施形態) 以下、本発明の第1の実施形態に係るマスクを上記図1図4に基づいて説明する。
【0035】
本実施形態に係るマスクは、図1に示すように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体1を形成し、当該マスク本体1に紐状の耳掛け2を取り付けてなるマスクであって、少なくとも稜線部分を含むライン状領域からなり、マスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい基礎部11と、前記基礎部を跨いで対称な位置に起伏した変化組織が編成されてなる支持部12と、を有する構成である。
【0036】
このマスク本体1を構成する筒状体の編立ての種類については、筒状体が編立てられれば特に限定されず、平編みでも丸編みでも可能であり、より好ましくは丸編みとすることであり、より立体感に富んだマスクを作成することができ、発話時や呼吸時に息苦しくない良好な着心地が得られる。また、丸編みとすることにより、マスクを構成する多層構造が極めて簡易に得られると共に、着用者の呼吸に伴って生じる空気の流れに応じてさらに立体的な起伏ある動きが可能となることとなり、通気性の高さを維持しつつより着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0037】
この基礎部11は、図1(a)に示すように、マスク本体1の筒状体の側面の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)部分を含むライン状領域からなる。すなわち、この基礎部11は、一の稜線1a部分を含むライン状領域が、マスク上部に形成されると共に、他の稜線1b部分を含むライン状領域が、マスク下部に形成されることとなり、この基礎部11は、マスクの上側と下側の2箇所に、この上側基礎部11a及び下側基礎部11bとして、形成されることとなる。
【0038】
また、この基礎部11(上側基礎部11a及び下側基礎部11b)は、マスク本体1のマスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい編地で編成される。例えば、マスク本体1のマスク中央領域が平編みで編成された場合に、平編みよりも伸縮性が小さい鹿の子編みで編成することができる。この他にも、マスク本体1のマスク中央領域がパイル編みで編成された場合に、パイル編みよりも伸縮性が小さい平編みで編成することができる。また、この他にも、マスク本体1のマスク中央領域がメッシュ編みで編成された場合に、メッシュ編みよりも伸縮性が小さい平編みで編成することもできる。
【0039】
また、この支持部12は、図1(b)に示すように、マスク本体1の筒状体の側面の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)部分を含むライン状領域から形成される基礎部11(上側基礎部11a及び下側基礎部11b)を跨いで対称な位置に起伏した変化組織が編成されて形成される。すなわち、この支持部12は、マスク本体1の上側と下側の2箇所に形成され、図1(b)に示すように、各々の箇所で、この基礎部11の稜線を対称線として対称に形成される。すなわち、この支持部12は、図1(b)に示すように、マスク本体1の上側において、上側基礎部11aを跨いだ対称な位置に一の上側支持部12a及び他の上側支持部12bとして形成されると共に、マスク本体1の下側において、下側基礎部11bを跨いだ対称な位置に一の下側支持部12c及び他の下側支持部12dとして形成される。
【0040】
この変化組織の編成は、特に限定されないが、タック編み、パール編み、リブ編み、パイル編み、又はインレイ編みで編成することができる。このように編成されることによって、特殊な加工を必要とすることなく、簡素な編立てのみによってこの変化組織が編成されることとなり、簡素な製法により製造コストを抑えて大量生産できると共に、洗濯により繰り返し使用してもこの変化組織により着用者の鼻元から口元にかけての縦のラインに沿って強固な立体形状を維持することが可能となる。
【0041】
図2(a)に示すように、本実施形態に係るマスクは、着用者に接触する側の編地である一の平面編地1cと、外気に接する側の編地である他の平面編地1dからなる二重の平面編地の2層構造で構成される。
【0042】
この一の平面編地1c及び他の平面編地1dに用いる糸の材質は、特に限定されないが、より好ましくは、この一の平面編地1c及び他の平面編地1dが、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されるものである。
【0043】
天然繊維由来の糸としては、例えば、綿、絹、麻等を用いることができ、このうち例えば、綿を用いることができる。化学繊維由来の糸としては、ナイロン等を用いることができる。
【0044】
このように、この一の平面編地1c及び他の平面編地1dが、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されることから、表糸では天然繊維由来の水分に対する親和性の高さから高い吸湿性が発揮されて空気中の飛沫を吸収しやすくなると共に、化学繊維由来の糸で編成された裏糸により速乾性や通気性の高さが得られると共に摩擦や摩耗等に対する経年的な耐久性が発揮されることから、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に、使用後に洗濯を適宜行うことで、さらに長期間にわたって繰り返し使用することが可能となる。
【0045】
本実施形態に係るマスクは、図2(a)に示すように、マスク本体1の上側と下側の2箇所に編成された支持部12(一の上側支持部12a、他の上側支持部12b、一の下側支持部12c、及び他の下側支持部12d)が、このマスク本体1の膨出の基端となって、特に着用者の鼻元から口元にかけての縦のラインに沿う膨出の基端となって、しっかりとした立体形状が形成され、この一の平面編地1cと、着用者の口元周辺との間に広い口元空間(口元領域C)が確実に形成される。また、本実施形態に係るマスクを上からみた断面である図2(b)に示すように、このマスク本体1の中央部分を中心として形成された自然な膨出によって、この二重の平面編地間には内部空間Bが確実に形成され、この内部空間B内にこの支持部12(一の上側支持部12a、他の上側支持部12b、一の下側支持部12c、及び他の下側支持部12d)の変化組織の編成が確認される。
【0046】
この一の平面編地1c及び他の平面編地1dの編成の種類は、特に限定されず、例えば、プレーン編み、パイル編み、又はメッシュ編みを用いることができる。この編成の種類について、一の平面編地1c及び他の平面編地1dは、各々、同じ種類の編成とすることもでき、例えば、共にプレーン編みとすることができる。この他にも、この一の平面編地1c及び他の平面編地1dは、異なる種類の編成とすることもでき、例えば、一方がプレーン編みとすると共に他方がパイル編みとすることも可能である。
【0047】
例えば、着用者に接触する側の一の平面編地1cをプレーン編みで編成することで、着用者がマスクを着用してマスクに接触した際に柔らかく優しい肌触りとなる。また、例えば、他の平面編地1dをパイル編みで編成することで、タオル生地と同様に優れた吸水性を発揮し、確実に空気中を浮遊する飛沫を吸収できる。また、この一の平面編地1c及び/又は他の平面編地1dをメッシュ編みで編成することで高い通気性が実現される。
【0048】
この耳掛け2は、紐状の形状であれば特に限定されないが、綿等の天然繊維を糸に用いることで、耳への肌触り感を向上することが可能である。
【0049】
次に、本実施形態に係るマスクの製造方法について以下説明する。
【0050】
(マスク本体製造工程)
マスク本体製造工程では、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体1を形成する(図3の工程:S11~S18)。
【0051】
先ず、このマスク本体1を構成する筒状体は、図3に示すように、丸編みによって、開始位置から袋編みで開口状の一の端部13aが編立てられ(S11)、引き続いて編立られて筒状に形成され(S12~S13)、編立ての末端部では袋編みでルーズコースによるかがり縫いで開口状の他の端部13bが編立てられる(S14)。すなわち、マスク自体が連続した一連の編立て工程で、一気通貫に筒状体を形成して作成されるので、従来のような複数工程で多層構造を形成する製法と比べても、簡易且つ大量に製造することが可能である。
【0052】
編立てられた筒状体について、図3に示すように、筒状体の側面の任意の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)を折り畳むことで(折り畳み方向A)(S15)、二重の平面編地である一の平面編地1c及び他の平面編地1dが形成される(S16)。この一の稜線1a及び他の稜線1bは、筒状体の側面にある任意の対向する稜線であれば特にその位置は限定されない。
【0053】
このように、この筒状体が折り畳まれることで、図3に示すように、この二重の平面編地間(一の平面編地1c及び他の平面編地1d間)に内部空間Bが形成され、この二重の平面編地から構成される多層構造を有する平面状のマスク本体1が簡易な製法で形成される(S17)。
【0054】
次に、形成された平面状のマスク本体1の基礎部11を跨いで対称な位置に変化組織を編成して起伏した支持部12(一の上側支持部12a、他の上側支持部12b、一の下側支持部12c、及び他の下側支持部12d)を形成する(S18)。例えば、この変化組織は、タック編み、パール編み、リブ編み、パイル編み、又はインレイ編みのいずれかとして編成される。
【0055】
(耳掛け形成工程)
次に、耳掛け形成工程では、上記のマスク本体製造工程で得られたマスク本体1に紐状の耳掛け2を取り付ける(図3の工程:S21)。
【0056】
すなわち、図3に示すように、このマスク本体1の両端に構成されたマスク本体の各開口端部13(一の端部13a及び他の端部13b)に各々紐状の耳掛け2が耳掛け縫合部21で縫製されてマスクが完成する(S21)。すなわち、すべての製造工程のうちで縫製が必要なのは、上記の支持部12(一の上側支持部12a、他の上側支持部12b、一の下側支持部12c、及び他の下側支持部12d)の変化組織の縫製と、この紐状の耳掛け2の耳掛け縫合部21での縫製のみという極めて簡素な製法となる。
【0057】
このような製法によって、高い通気性と優れた立体形状が形成される多層構造のマスクが簡素な編立てにより形成されることとなり、優れた立体形状と快適な通気性を両立すると共に洗濯により繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【0058】
このようにして得られた本実施形態に係るマスクは、図4(a)に示すように、この変化組織により、一の上側支持部12a及び他の上側支持部12bによってマスク本体1の上側を隆起させると共に、一の下側支持部12c及び他の下側支持部12dによってマスク本体1の下側を隆起させるとととなり、マスク本体1の上側と下側との両端からマスク本体1の中央領域に縦方向に横断する中央線が形成されて自然に隆起する立体形状が形成される(隆起方向E)。
【0059】
これにより、図4(b)に示すように、本実施形態に係るマスクを着用者を外部から見た場合に、マスク上下部の支持部12(一の上側支持部12a、他の上側支持部12b、一の下側支持部12c、及び他の下側支持部12d)が、この変化組織により起伏した立体形状によって、着用者の鼻から口元にかけてのラインが自然に起伏し、着用者の顔面に沿った自然な立体形状が形成される。
【0060】
また、上述したように、マスク本体1を構成する筒状体の編立ては、特に限定されないが、より好ましくは丸編みで編立てられることである。このように、このマスク本体1を構成する筒状体が丸編みで編立てられることから、この筒状体が一連の編立て動作で極めて簡易に得られ、またマスクの多層構造が折り畳むのみという極めて簡易な製法で得られると共に、マスク本体1の立体的な膨出形状が形成されやすくなることとなり、通気性の高さを維持しつつ優れた立体感を有する着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0061】
このように、本実施形態に係るマスクは、この基礎部11がマスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さいことによって、このマスク本体の中央領域の膨出の基端となると共に、この支持部12(一の上側支持部12a、他の上側支持部12b、一の下側支持部12c、及び他の下側支持部12d)が、このマスク本体の上部及び下部に起伏した変化組織で形成されることによって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインが自然な形状で円滑に隆起することとなり、このマスク本体の中央領域の膨出形状が確実に形成されると共に、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的な形状が形成されると共に、簡素な製法により製造コストを抑えて大量生産でき、さらに、洗濯により繰り返し使用することが可能となる。
【0062】
(本発明の第2の実施形態) 以下、本発明の第2の実施形態に係るマスクを上記図5図7に基づいて説明する
【0063】
本発明の第2の実施形態に係るマスクは、上記の第1の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記基礎部11と、前記支持部12と、前記耳掛け2と、を備え、さらに、前記二重の平面編地(前記一の平面編地1c及び前記他の平面編地1d)の略矩形状の4つの角領域に基礎部11と同じ伸縮性の編地で編成され、前記基礎部11に連結してなる固定部14とを有する構成である。
【0064】
略矩形状とは、正方形や長方形のみならず、正方形や長方形の4つの角領域における角が尖った形状のみならず丸みを帯びた形状や、ほぼ正方形や長方形とみなせる形状(例えば略楕円形状)も含まれる。
【0065】
この固定部14は、基礎部11と同じ伸縮性の編地で編成される。例えば、基礎部11が鹿の子編みの場合は、この固定部14は鹿の子編みで編成され、例えば、基礎部11が平編みの場合は、この固定部14は平編みで編成される。
【0066】
この固定部14は、図5(a)に示すように、マスク本体1の筒状体の側面の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)部分を含むライン状領域からなる基礎部11に連結して編成される。すなわち、図5(b)に示すように、この固定部14は、マスク本体1上部の一の稜線1a部分を含むライン状領域に連結して編成されると共に、マスク本体1下部の他の稜線1b部分を含むライン状領域に連結して編成される。
【0067】
また、この固定部14は、マスク本体1のマスク中央領域の編地よりも伸縮性が小さい編地で編成される。例えば、マスク本体1のマスク中央領域が平編みで編成された場合に、平編みよりも伸縮性が小さい鹿の子編みで編成することができる。この他にも、マスク本体1のマスク中央領域がパイル編みで編成された場合に、パイル編みよりも伸縮性が小さい鹿の子編みで編成することができる。また、この他にも、マスク本体1のマスク中央領域がメッシュ編みで編成された場合に、メッシュ編みよりも伸縮性が小さい鹿の子編みで編成することもできる。
【0068】
4つの角領域とは、上記の略矩形状の4つの角を含む周辺領域を示し、その角領域の形状は特に限定されない。例えば、図6(a)に示すように、その角領域を曲線(例えばテーパー形状のなだらかな曲線)で仕切られた領域とすることや、図6(b)に示すように、その角領域を直線で仕切られた領域(略三角形状)とすることや、図6(c)に示すように、その4つの角領域がすべて連結した楕円形状とすることも可能である。
【0069】
本実施形態のマスクの製造方法は、上記図3のマスク本体製造工程(工程:S11~S14)において、マスク本体1の前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部11と同じ伸縮性の編地で、前記基礎部11に連結してこの固定部14が編成されて得られる。このように、高い通気性と立体形状が形成される多層構造のマスクが編立てにより形成されることとなり、優れた立体形状と快適な通気性を両立すると共に洗濯により繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【0070】
図7に示すように、マスク本体1の筒状体の4つの角領域に基礎部11と同じ伸縮性の編地で編成され、前記基礎部11に連結してなる固定部14とを有することで、マスク本体1の4つの角領域がしっかり固定されて、この4つの角領域から当該各開口端部13にかけても当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインがさらに自然な形状で円滑に隆起することとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状をさらに確実に形成し、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的なマスクが実現される。
【0071】
(本発明の第3の実施形態) 以下、本発明の第3の実施形態に係るマスクを上記図8に基づいて説明する
【0072】
本発明の第3の実施形態に係るマスクは、上記の第2の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記基礎部11と、前記支持部12と、前記固定部14と、前記耳掛け2と、を備え、さらに、図8に示すように、前記マスク本体の各開口端部13が袋編みで形成され、前記固定部14が、当該袋編みに隣接してなる構成である。
【0073】
この固定部14は、袋編みに編成されたマスク本体の各開口端部13に隣接して形成される。ここでいう隣接とは、図8(a)に示すように、この固定部14が、この袋編みに編成されたマスク本体の各開口端部13(一の端部13a及び他の端部13b)に地続きで連続して形成されることも含まれ、この他にも、図8(b)に示すように、この固定部14が、この袋編みに編成されたマスク本体の各開口端部13(一の端部13a及び他の端部13b)に連続しないで隔離され、この各開口端部13(前記一の端部13a及び他の端部13b)の近傍に形成されることも含まれる。
【0074】
本実施形態のマスクの製造方法は、上記図3のマスク本体製造工程(工程:S11~S14)において、マスク本体1の前記二重の平面編地の略矩形状の4つの角領域に基礎部11と同じ伸縮性の編地で、この基礎部11に連結してこの固定部14が編成されると共に、袋編みの各開口端部13(前記一の端部13a及び他の端部13b)に隣接して編成されて得られる。このように、この固定部14による立体的形状がこの基礎部11と各開口端部13(前記一の端部13a及び他の端部13b)の両側から支持されて、さらに立体形状が強固に維持された多層構造のマスクが編立てにより形成されることとなり、快適な通気性を両立すると共に洗濯により繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【0075】
このように、本実施形態のマスクは、マスク本体1の4つの角領域から各開口端部13(一の端部13a及び他の端部13b)にかけても当該マスク本体の中央領域の膨出の基端となって、着用者の鼻から口元にかけての顔面の縦の中央ラインがさらに自然な形状で円滑に隆起するように編成されることとなり、当該マスク本体の中央領域の膨出形状をさらに確実に形成し、着用者の顔の顔面の立体形状に隙間なく追従する立体形状が形成されることで、より顔面にフィットできる立体的なマスクが簡易な製法によって実現される。
【0076】
(本発明の第4の実施形態) 以下、本発明の第4の実施形態に係るマスクを上記図9及び図10に基づいて説明する。
【0077】
本発明の第4の実施形態に係るマスクは、上記の第1の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記基礎部11と、前記支持部12と、前記固定部14と、前記耳掛け2と、を備え、さらに、前記耳掛け2が、前記マスク本体1の各開口端部13(一の端部13a及び他の端部13b)に、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなる構成である。
【0078】
この耳掛け2は、図9に示すように、先ず、丸編みで表側(表側生地2a)と裏側(裏側生地2b)とが同じ供給量の糸で編成された筒状体から編成される。この表側生地2aが筒状体の外側にあり、裏側生地2bが筒状体の内側にあることから、この表側生地2aが裏側生地2bより面積(表面積)が大きいこととなる。この耳掛け2を編成する糸の種類は、特に限定されないが、例えば、30/30FTYの1種類の糸を用いることができる。
【0079】
その一方で、図9の上から1段目に示すように、この表側生地2aと裏側生地2bとが同じ供給量の糸から形成されることから、この表側生地2aから裏側生地2bに向かって内側に巻き込む方向の強い収縮力Fが作用し、開口形状の両端部から内向きの方向に向かって生地がロール状に巻かれる。この収縮力Fによって、図9の上から2段目に示すように、自然に丸まった形状が上下方向から各1つずつ形成され、合わせて2層の丸みを帯びた紐状の輪っかが形成される。
【0080】
図9の上から3段目に示すように、この紐状の輪っかの一部を任意の位置Gで切断することによって、紐状の耳掛け2が極めて簡易に形成される。形成された紐状の耳掛け2は、図9の上から4段目に示すように、マスク本体の両端の開口部である一の端部13a及び他の端部13bの各々に縫製される。
【0081】
この耳掛け2は、上述の製法で得られた2段の丸みを帯びた紐状の輪っかから形成されることから、図10(a)に示すように、着用者の耳に掛けられた耳掛け2は、図10(b)に示すように、この2段のロール状に巻かれた丸み構造により着用者に柔らかい感触が与えられ、心地良い着用感が提供される。
【0082】
このように、この筒状体の各開口端部13に、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成された紐状の耳掛け2が配設されたことから、表側の生地が外部の円筒面にあり裏側の生地が内部の円筒面にあることで表側の生地が裏側の生地より面積(表面積)が大きい一方で表側の生地と裏側の生地とが同じ供給量の糸から形成され、表側の生地から裏側の生地に向かって内側に巻き込む方向の強い収縮力Fが作用して自然に2段の丸まった形状を有する紐状の耳掛け2として形成されることとなり、簡易な製法で、より自然で柔らかい感触の耳掛け2が形成され、通気性の高さを維持しつつ耳への優しい着け心地を与える着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0083】
(本発明の第5の実施形態) 以下、本発明の第5の実施形態に係るマスクを上記図11及び図12に基づいて説明する。
【0084】
本発明の第5の実施形態に係るマスクは、上記の第1の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記耳掛け2と、前記基礎部11と、前記支持部12と、を備え、さらに、図11に示すように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルター3であって、少なくとも一の平面編地31がパイル編みで編成され、前記マスク本体1の内部空間Bに着脱可能及び/又は前記マスク本体のうちの着用者に接触する編地(前記一の平面編地1c)に着脱可能な内部フィルター3を備える構成である。
【0085】
この内部フィルター3を構成する筒状体の編立ての種類については、この筒状体が編立てられれば特に限定されず、平編みでも丸編みでも可能である。
【0086】
上述のように、二重の平面編地のうち少なくとも一の平面編地31がパイル編みで編成される。二重の平面編地のうち他の平面編地32の編地は、特に限定されず、プレーン編みでもパイル編みでも可能である。
【0087】
この内部フィルター3は、第1の実施形態で示したマスク本体1の筒状体を編成するのと同様の手順で編立てられる。すなわち、この内部フィルター3を構成する筒状体は、図11に示すように、開始位置から袋編みで開口状の一の端部3cが編立てられ(S1)、引き続いて編立られて筒状に形成され(S2~S3)、編立ての末端部では袋編みでルーズコースによるかがり縫いで開口状の他の端部3dが編立てられる(S4)。
【0088】
編立てられた筒状体について、図11の中段に示すように、筒状体の側面の任意の対向する稜線(一の稜線3a及び他の稜線3b)を折り畳み方向Aで折り畳むことで(S5)、この筒状体から二重の平面編地である一の平面編地31及び他の平面編地32が形成される(S6)。
【0089】
この一の稜線3a及び他の稜線3bは、筒状体の側面にある任意の対向する稜線であれば特にその位置は限定されない。図11の下段に示すように、この筒状体が折り畳まれて、この二重の平面編地が(一の平面編地31及び他の平面編地32間)が平面状となり、この二重の平面編地から構成される多層構造を有する内部フィルター3が形成される(S7)。すなわち、この内部フィルター3も、前記マスク本体1と同様に、連続した一連の編立て動作で簡易且つ大量に製造することが可能である。
【0090】
また、この内部フィルター3は、図12(a)に示すように、マスク本体1に形成された内部空間Bに対して、図12(b)に示すように、着脱可能に挿入することができ、これにより、マスク本体1とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。
【0091】
この他にも、この内部フィルター3は、図12(c)に示すように、マスク本体1の着用者に接触する側の一の平面編地1cに当接させて用いることも可能である。この場合も、マスク本体1とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。また、この内部フィルター3は、この内部空間Bに収納しつつ、着用者に接触する一の平面編地1cに当接させて用いることも可能である。この場合も、マスク本体1とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。
【0092】
このように、編成された内部フィルター3によって、この内部フィルター3も洗濯により繰り返し使用できると共にパイル編みの生地によりさらに確実に空気中の飛沫を吸収できることとなり、同質素材の多層構造のマスクとして、この内部フィルター3をマスク本体とは別個に取り出して洗濯でき着脱可能に繰り返し使用できて利便性がさらに高められ、通気性の高さを維持しつつさらに高度なフィルター機能と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 マスク本体
11 基礎部
11a 上側基礎部
11b 下側基礎部
1a 一の稜線
1b 他の稜線
1c 一の平面編地
1d 他の平面編地
12 支持部
12a 一の上側支持部
12b 他の上側支持部
12c 一の下側支持部
12d 他の下側支持部
13 開口端部
13a 一の端部
13b 他の端部
2 耳掛け
21 耳掛け縫合部
2a 表側生地
2b 裏側生地
3 内部フィルター
3a 一の稜線
3b 他の稜線
3c 一の端部
3d 他の端部
31 一の平面編地
31 他の平面編地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12