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特開2022-29361壁面仕上材剥離防止具及びコンクリート壁体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029361
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】壁面仕上材剥離防止具及びコンクリート壁体
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20220209BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20220209BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
E04F13/08 101G
E04F13/08 101B
E04C2/04 D
E04C2/30 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132673
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】517144994
【氏名又は名称】株式会社KAH
(71)【出願人】
【識別番号】308031337
【氏名又は名称】株式会社オリオンセラミック
(71)【出願人】
【識別番号】520292970
【氏名又は名称】株式会社オガタストーン
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】横田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 謙一郎
【テーマコード(参考)】
2E110
2E162
【Fターム(参考)】
2E110AA21
2E110AA24
2E110AA50
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BC07
2E110BC15
2E110CA03
2E110CA04
2E110CA14
2E110CC04
2E110CC06
2E110CC18
2E110CC25
2E110DA12
2E110DC06
2E110DC12
2E110DC37
2E110EA01
2E110GA14Z
2E110GA33Y
2E110GA34W
2E110GB02Z
2E110GB03Z
2E110GB13W
2E110GB23Y
2E110GB26W
2E110GB28W
2E110GB32W
2E110GB42W
2E162CA08
2E162CA11
(57)【要約】
【課題】化粧タイル等の壁面仕上材をコンクリート壁から剥離させない壁面仕上材剥離防止具及びコンクリート壁体を提供することを課題とする。
【解決手段】コンクリート壁に埋設されるコンクリート側固定部材と、壁面仕上材の裏面側に開口部を設けた、断面が円状の有底孔に嵌設される壁面仕上材側固定部材とを備え、前記コンクリート側固定部材は、複数の貫通孔を穿設した多角形で平板状の平板部と、前記平板部の平面に対して直角方向に突設された多角形フランジボルト部とを備えて、側面視で略T字形の形態を有し、前記壁面仕上材側固定部材は、断面が略円状の外周面に、断面が円状の前記有底孔の内周壁面に係止可能な係止手段を備えた係止手段付ナットであり、前記多角形フランジボルト部の先端部の雄ねじ部を前記係止手段付ナットの雌ねじ部に螺入させて締結させることを特徴とする壁面仕上材剥離防止具により課題解決できた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁から平板状の壁面仕上材の剥離を防止する壁面仕上材剥離防止具であって、
前記コンクリート壁に埋設されるコンクリート側固定部材と、前記壁面仕上材の裏面側に開口部を設けた、断面が円状の有底孔に嵌設される壁面仕上材側固定部材とを備え、
前記コンクリート側固定部材は、複数の貫通孔を穿設した多角形で平板状の平板部と、前記平板部の平面に対して直角方向に突設された多角形フランジボルト部とを備えて、側面視で略T字形の形態を有し、
前記壁面仕上材側固定部材は、断面が略円状の外周面に、断面が円状の前記有底孔の内周壁面に係止可能な係止手段を備えた係止手段付ナットであり、
前記多角形フランジボルト部の先端部の雄ねじ部を前記係止手段付ナットの雌ねじ部に螺入させて締結させることを特徴とする壁面仕上材剥離防止具。
【請求項2】
前記係止手段付ナットの外周面に設けた係止手段の形態が、突先を嵌入方向とは逆方向に向けた複数の突片を前記外周面に軸方向に複数段で周方向に所定の間隔を設けて突設させた形態、あるいは、外側外周溝付円筒体の溝付部を、先端側ほど外径を大きくした軸方向断面が台形状の先端部を形成した内側円筒体の先端部の外周面に沿って、略半径方向に滑動させて嵌入方向とは逆方向に向けた面を形成可能とする形態であることを特徴とする請求項1に記載の壁面仕上材剥離防止具。
【請求項3】
前記コンクリート側固定部材と前記壁面仕上材側固定部材とを螺入により締結させた、請求項1又は2に記載の前記壁面仕上材剥離防止具の前記係止手段付ナットが、予め定めた配置の複数の前記壁面仕上材のそれぞれの裏面側に設けた有底孔に嵌設され、前記壁面仕上材剥離防止具の前記コンクリート側固定部材が打設されたコンクリート壁内に埋設されていることを特徴とするコンクリート壁体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁、塀又は門柱などのコンクリート壁に化粧タイル等の壁面仕上材を剥離しないように固定する壁面仕上材剥離防止具、及び前記壁面仕上材剥離防止具を使用したコンクリート壁体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、裏面に設けられた溝と、前記溝に固定された金具と、を含み、前記金具は、スリットを挟んで設けられた2つの接触部と、2つの前記接触部を連結する連結部と、を含み、前記金具は、2つの前記接触部が前記溝の対向する2つの側面に接触し、前記スリットに変形防止部材が配置されて2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することが制限されたことを特徴とする、タイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-120020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、タイルの溝に挿入した金具から突出した2本の細くて短い線状の連結部がコンクリート壁面に塗布されたモルタルに埋設される事例と、前記2本の細くて短い線状の連結部がコンクリートで打設されてコンクリート壁に連結される事例が記載されているが、いずれの場合もコンクリート壁には2本の細くて短い線状の連結部なのでタイルが暴風や地震で揺動されると容易にコンクリート壁から引き抜かれて剥離するという問題があった。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、化粧タイル等の壁面仕上材にしっかりと固定されかつコンクリート壁にもしっかりと固定されて、前記壁面仕上材をコンクリート壁から剥離させない壁面仕上材剥離防止具及びコンクリート壁体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の壁面仕上材剥離防止具は、コンクリート壁から平板状の壁面仕上材の剥離を防止する壁面仕上材剥離防止具であって、前記コンクリート壁に埋設されるコンクリート側固定部材と、前記壁面仕上材の裏面側に開口部を設けた、断面が円状の有底孔に嵌設される壁面仕上材側固定部材とを備え、前記コンクリート側固定部材は、複数の貫通孔を穿設した多角形で平板状の平板部と、前記平板部の平面に対して直角方向に突設された多角形フランジボルト部とを備えて、側面視で略T字形の形態を有し、前記壁面仕上材側固定部材は、断面が略円状の外周面に、断面が円状の前記有底孔の内周壁面に係止可能な係止手段を備えた係止手段付ナットであり、前記多角形フランジボルト部の先端部の雄ねじ部を前記係止手段付ナットの雌ねじ部に螺入させて締結させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の壁面仕上材剥離防止具は、請求項1において、前記係止手段付ナットの外周面に設けた係止手段の形態が、突先を嵌入方向とは逆方向に向けた複数の突片を前記外周面に軸方向に複数段で周方向に所定の間隔を設けて突設させた形態、あるいは、外側外周溝付円筒体の溝付部を、先端側ほど外径を大きくした軸方向断面が台形状の先端部を形成した内側円筒体の先端部の外周面に沿って、略半径方向に滑動させて嵌入方向とは逆方向に向けた面を形成可能とする形態であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のコンクリート壁体は、前記コンクリート側固定部材と前記壁面仕上材側固定部材とを螺入により締結させた、請求項1又は2に記載の前記壁面仕上材剥離防止具の前記係止手段付ナットが、予め定めた配置の複数の前記壁面仕上材のそれぞれの裏面側に設けた有底孔に嵌設され、前記壁面仕上材剥離防止具の前記コンクリート側固定部材が打設されたコンクリート壁内に埋設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の壁面仕上材剥離防止具は、強風の吹く高所や地震などの強度の揺れがあってもコンクリート壁が崩壊しない限り、タイル等の壁面仕上材をコンクリート壁から剥離させないという効果を奏する。化粧タイル等の壁面仕上材をコンクリート壁から剥離させる力に対して、T字型の平板部の大きさで引張力を高め、かつ前記平板部に設けた貫通孔にコンクリートを打設させることによりせん断力も高めることができることにより、化粧タイル等の壁面仕上材をコンクリート壁から強力に抜けないようにすることができた。
【0010】
また、化粧タイル等の前記壁面仕上材の裏面側の有底孔から前記係止手段付ナットが、強風の吹く高所や地震などの強度の揺れがあっても抜けないという効果を奏する。
【0011】
そして、コンクリート壁に埋設した前記コンクリート側固定部材の雄ねじ部を、化粧タイル等の前記壁面仕上材の有底孔に嵌設した前記係止手段付ナットの雌ねじ部に螺入させて締結させているので、コンクリート側固定部材と前記壁面仕上材側固定部材とは強風の吹く高所や地震などの強度の揺れがあっても弛緩せず締結状態は不変であるという効果を奏する。
【0012】
請求項2に記載の壁面仕上材剥離防止具は、化粧タイル等の前記壁面仕上材の有底孔の内周面に対して、引き抜き方向の力が加わると前記有底孔の内周壁面に突先を突き刺す形態で引き抜け防止力を高め、又は、引き抜き方向の力が加わると前記有底孔の底広穴の引き抜き方向側の面に対向する面を形成して引き抜け防止を高めるという効果を奏する。
【0013】
請求項3に記載のコンクリート壁体は、例えば、プレキャストコンクリートとして製作することもでき、該プレキャストコンクリートとして製作した場合は、工場で予め精度よく製作できるので、壁面仕上材と係止手段付ナットの嵌設に関する寸法精度等の品質のばらつきを抑え、かつコンクリートをコンクリート側固定部材の平板部の貫通孔に充填させる等、コンクリート側固定部材に密接させてしっかりとコンクリートを打設できるので、コンクリート壁と化粧タイル等の壁面仕上材とを強力に固着でき、強風の吹く高所や地震などの強度の揺れがあってもコンクリート壁が崩壊しない限り、タイル等の壁面仕上材をコンクリート壁から剥離させないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】係止手段が嵌入方向とは逆方向に向けた面を形成可能とする形態の係止手段付ナットの場合の本発明の壁面仕上材剥離防止具の概要図である。
図2】係止手段が突先を嵌入方向とは逆方向に向けた複数の突片の形態の係止手段付ナットの場合の本発明の壁面仕上材剥離防止具の概要図である。
図3】コンクリート側固定部材の斜め上方からの斜視図である。
図4】コンクリート側固定部材の斜め下方からの斜視図である。
図5】コンクリート側固定部材の平板部を図1におけるE矢視から見た説明図である。
図6】コンクリート側固定部材の構成部材である多角形フランジボルト部の説明図である。
図7】コンクリート側固定部材がT字型であることの説明図である。
図8】壁面仕上材に壁面仕上材剥離防止具を螺入した状態の斜め上方からの斜視説明図である。
図9】壁面仕上材の有底孔が底広穴の場合に嵌設する係止手段付ナットの説明図で、(a)が、外側外周溝付円筒体の下端部を上に上昇させて曲げた状態の側面説明図で、(b)が分割された外側外周溝付円筒体の溝がある部分の縦方向の断面説明図で、(c)が分割された外側外周溝付円筒体の溝がない部分の縦方向の断面説明図で、(d)が外側外周溝付円筒体の下端部がまだ円筒状の周壁にあるときの断面説明図で、(e)が(a)に示す状態において中心で縦方向に切断したときの、外側外周溝付円筒体の下端部を上に上昇させて曲げた状態の断面説明図である。
図10】突先を嵌入方向とは逆方向に向けた複数の突片を係止手段とする係止手段付ナットの説明で、(a)は外観説明図で、(b)は(a)のE-E断面図である。
図11】壁面仕上材の一つとしての化粧タイルの概要説明図である。
図12】壁面仕上材の説明図で、(a)は図11における有底孔が底広穴を形成している場合のC-C断面図であり、(b)は(a)のD部拡大図で、(c)は図11における有底孔が円筒形を形成している場合のC-C断面図である。
図13】壁面仕上材の有底孔を加工する切削工具の説明図で、(a)は円筒形状に加工するダイヤモンドホルソーの説明図で、(b)は底広穴を形成可能な特殊ドリルの説明図である。
図14】壁面仕上材の有底孔に係止手段付ナットを嵌設した状態の説明図で、(a)は底広穴用の係止手段付ナットを嵌設した状態の説明図で、(b)は円筒状の孔用の係止手段付ナットを嵌設した状態の説明図である。
図15】本発明のコンクリート壁の一部の説明図である。
図16】本発明のコンクリート壁の説明図である。
図17】壁面仕上材剥離防止具のコンクリートせん断力・引張力の説明図である。
図18】壁面仕上材剥離防止具を使用するコンクリート壁を製作するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の壁面仕上材剥離防止具1は、建物の外壁、塀又は門柱などのコンクリート壁9に化粧タイル等の壁面仕上材8の剥離防止に使用される。そして、例えば、強風の吹く高所や地震などの強度の揺れがあっても、高層建築物の外壁なるコンクリート壁9に貼り付けた化粧タイル等の壁面仕上材8の剥離防止ができる。
【0016】
そして、コンクリート壁9と化粧タイル等の壁面仕上材8との本発明の壁面仕上材剥離防止具1による固定化は、図16に示すように、工場内で型枠にコンクリートを打設してプレキャストコンクリートとして製造してもよく、現地で型枠にコンクリートを打設して施工してもよい。
【0017】
本発明の壁面仕上材剥離防止具1は、図1図2図15に示すように、コンクリート壁9から平板状の壁面仕上材8の剥離を防止する壁面仕上材剥離防止具1であって、前記コンクリート壁9に埋設されるコンクリート側固定部材2と、前記壁面仕上材8の裏面側41に開口部を設けた、断面が円状の有底孔42に嵌設される壁面仕上材側固定部材3とを備えている。
【0018】
本発明の壁面仕上材剥離防止具1は、前記コンクリート側固定部材2の構成は略同じであるが、前記壁面仕上材側固定部材3の構成はいかなる係止手段にするかで異なる。図12(a)、(b)に示すような底広穴形状を形成した有底孔42aを備える壁面仕上材8aに使用する場合は、図9に示すような底広穴の壁面に当接させて係止させる係止手段付ナット5a(壁面仕上材側固定部材3a)を組み合わせた、図1に示すような壁面仕上材剥離防止具1aを使用し、図12(c)に示すような円筒形状を形成した有底孔42bを備える壁面仕上材8bに使用する場合は、図10(a)、(b)に示すような円筒状の内周壁面に突き刺すようにさせて係止させる係止手段付ナット5b(壁面仕上材側固定部材3b)を組み合わせた、図2に示すような壁面仕上材剥離防止具1bを使用する。
【0019】
前記コンクリート側固定部材2は、図3図7に示すように、複数の貫通孔10を穿設した多角形で平板状の平板部6と、前記平板部6の平面に対して直角方向に突設された多角形フランジボルト部7とを備えて、側面視で略T字形の形態を有し、前記壁面仕上材側固定部材3は、図9又は図10に示すように、断面が略円状の外周面に、断面が円状の前記有底孔42の内周壁面に係止可能な係止手段を備えた係止手段付ナット5であり、前記多角形フランジボルト部7の先端部の雄ねじ部12を前記係止手段付ナット5の雌ねじ部33aに螺入させて締結させる。
【0020】
まず、コンクリート側固定部材2について説明する。図3図7図15に示すように、前記コンクリート側固定部材2は、前記コンクリート壁9の外壁面51と略平行になるようにコンクリート壁9内部に埋設される、複数の貫通孔10を穿設した剛性体の平板部6と、前記コンクリート壁9の外壁面51と前記平板部6との間隔と略同じ長さを有する、前記コンクリート壁9内部に埋設される円筒部11と、前記円筒部11の先端部に螺刻された、前記壁面仕上材8の裏面側41に設けられた有底孔42に嵌設された雌ねじ部33aに螺入可能な雄ねじ部12とを有する、前記平板部6の平面に対して直角方向に突設された多角形フランジボルト部7とを、備え、前記平板部6と前記多角形フランジボルト部7とで略T字形の形態を有する。
【0021】
前記コンクリート壁9としては、高層建築物等の建物の外壁、塀又は門柱などが該当する。
【0022】
前記壁面仕上材8としては、セラミック、磁器質、せっ器質、陶器質等を素地とした外壁タイル、石材、ガラス、特殊樹脂化粧板等があり、サイズでは、大きいサイズの大判タイルから、小さいサイズの小口平タイル、50角タイル、二丁掛タイル、45二丁タイル、ボーダータイル等がある。いずれの種類やサイズにも本発明の壁面仕上材剥離防止具1は適用できるが、寸法精度を要する底広穴状や円筒状の有底孔を加工可能な硬質な素地が好ましい。
【0023】
前記コンクリート側固定部材2は略T字形の形態を有し、前記平板部6と前記多角形フランジボルト部7を備える。前記平板部6の中心に前記多角形フランジボルト部7が固定されており、その固定方法は、固定可能な方法であればいずれでもよく、例えば、前記平板部6に穿孔した、前記多角形フランジボルト部7の頭部13と同じ多角形の孔に前記多角形フランジボルト部7の頭部13を挿通させ前記頭部13をプレス機で塑性変形を与えて前記多角形フランジボルト部7と前記平板部6とをカシメで固定させる方法がある。前記多角形フランジボルト部7は前記平板部6の略中央部に突設するのが好ましい。
【0024】
前記平板部6は、複数の貫通孔10を穿設した剛性体である。前記貫通孔10形状は図5に示すような円形、図8に示すような楕円形、四角形、多角形のいずれでもよく、前記貫通孔10の数は少なくとも2以上とし、その数及びその貫通孔10の位置は、コンクリート打設時にコンクリートが前記平板部6と前記壁面仕上材8との間に満遍なく充填可能となるように設ける。前記貫通孔10にコンクリートが充填することにより、コンクリート壁9と前記平板部6との結合の強度が高まる。また、前記貫通孔10の大きさは、前記壁面仕上材8の大きさ等により変わるが、例えば直径6~12mmの貫通孔10を穿孔する。
【0025】
前記平板部6の大きさは、前記壁面仕上材8が剥離方向に引っ張られても変形しない大きさとし、例えば最大幅を40~100mmとする。前記平板部6の厚みは、予測される壁面仕上材8の剥離方向の引張力で変形しない厚みとし、例えば1~4mmとする。
【0026】
また、平板部6の外郭形状は、円状や楕円状でなく、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状などの多角形状とする。これにより、コンクリート壁9に対して平板部6が空回りするのを防止できる。
【0027】
また、前記平板部6の中心には前記多角形フランジボルト部7の頭部13を挿通させられる、該頭部13と同じ多角形の孔を穿孔している。この多角形にすることにより、コンクリート壁9に埋設された平板部6と前記多角形フランジボルト部7の頭部13とが空回りするのを防ぐ。
【0028】
また、前記平板部6の材質は耐食性や強度に優れる材質、例えばステンレス鋼が好ましく、より好ましくは例えばSUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)、SS400(一般構造用圧延鋼材)又はさらに強いS45C(機械構造用炭素鋼鋼材)があるが、耐食性や強度に優れる材質であればいずれの材質でもよい。そして、板厚はコンクリート打設時に流入されるコンクリートにより変形しない厚みであり、壁面仕上材8が剥離方向に引っ張られても変形しない厚みとし、例えば1~4mmとする。
【0029】
前記多角形フランジボルト部7は、図7に示すように、頭部13、フランジ部14、前記円筒部11、前記雄ねじ部12を有する。前記頭部13はプレス機により塑性変形されカシメにより前記平板部6に固定され、前記フランジ部14は前記平板部6の裏面に密着され、カシメ加工した頭部13とともに前記平板部6の表面と裏面を強く挟み込んで前記平板部6に前記多角形フランジボルト部7を固定する。
【0030】
そして、前記円筒部11の長さは、平板部6をコンクリート壁9内に埋設させたい深さと略同一とする。この深さはコンクリート壁9のせん断力の大きさに影響を与えるので、壁面仕上材8がコンクリート壁9から剥離しないためのせん断力や引張力を求めて、そのせん断力や引張力が得られる深さに設定する。
【0031】
壁面仕上材8がコンクリート壁9から剥離するときには、図17に示すように前記平板部6が壁面仕上材8のある方向に引張力Pで引っ張られ、前記コンクリート壁9の外壁面51と前記平板部6との間に充填された厚みTのコンクリート壁9が引張力及びせん断力で破壊されることにより、壁面仕上材8がコンクリート壁9から剥離する。コンクリートの強度は、一般的に引張力は圧縮力の1/10~1/13で、一般的にせん断力は圧縮力の1/4~1/6であるので、本発明の壁面仕上材剥離防止具1は耐引張力増加と耐せん断力増加を実現させて剥離防止を図る技術である。
【0032】
図17に示すように、壁面仕上材8に剥離方向の引張力Pに対して、前記壁面仕上材剥離防止具1の耐剥離阻止力としては、前記平板部6の前記壁面仕上材8側の引張力発生部位22に囲まれた、前記厚みTのコンクリート壁9の範囲に係る耐引張力と、前記平板部6の外周縁におけるせん断力発生部位23における、前記厚みTのコンクリート壁9の範囲に係る耐せん断力と、前記複数の貫通孔10の周縁部のせん断力発生部位24における、前記厚みTのコンクリート壁9の範囲に係る耐せん断力との合計となるので、平板部6の面積の大きさと前記貫通孔10の外周縁の長さの合計の長さが増加できたことにより、コンクリート壁9から壁面仕上材8の剥離阻止力を高めることができ、壁面仕上材8をコンクリート壁9に対して安定した強固な固定をすることができた。
【0033】
そして、前記雄ねじ部12は、図1図2図14図15に示すように、壁面仕上材8の裏面側41の例えば中央部に設けられた雌ねじ部33aに螺入される。この螺入により、前記壁面仕上材8に前記壁面仕上材剥離防止具1を固定させることができる。これにより、コンクリート打設時に流入するコンクリートで前記壁面仕上材8と前記壁面仕上材剥離防止具1の位置関係は固定される。
【0034】
次に、前記壁面仕上材8は、図11に示すように平板状体であり、前記壁面仕上材剥離防止具1を使用する場合は、壁面仕上材8a又は8bの裏面側41の中央に有底孔42a又は42bを設ける。
【0035】
前記有底孔42aは、図12(a)、(b)に示すように壁面仕上材8aに設けられ、開口部側は円筒形状を形成し、奥底部に前記円筒状の内周壁面の内径より奥底になるほど徐々に内径が大きくなる、底広穴形状部43を形成する有底孔42aを備える。前記底広穴形状部43を有する有底孔42aは、例えば、焼き上げたタイルに切削治具を用いて固定し、図13(a)に示すようなダイヤモンドホルソー及び図13(b)に示すような特殊ドリルを用いて切削し形成する。寸法精度と硬さを要するので、前記壁面仕上材8aは組織が緻密で硬度が高い材質が好ましい。
【0036】
また、前記有底孔42bは、図12(c)に示すように壁面仕上材8bに設けられ、円筒形状を形成した孔である。前記円筒形状の有底孔42bは、例えば、焼き上げたタイルに切削治具を用いて固定し、図13(a)に示すようなダイヤモンドホルソーを用いて切削し形成する。寸法精度と硬さを要するので、前記壁面仕上材8bは組織が緻密で硬度が高い材質が好ましい。
【0037】
次に、前記壁面仕上材側固定部材3である係止手段付ナット5は、図12(a)に示すような底広穴形状部43を形成する前記有底孔42a用として、図9に示すように、外側外周溝付円筒体31の溝付部を、先端側ほど外径を大きくした軸方向断面が台形状の先端部を形成した内側円筒体33の先端部の外周面に沿って、略半径方向に滑動させて嵌入方向とは逆方向に向けた面31aを形成可能とする形態、又は、図12(c)に示すような円筒形状を形成する前記有底孔42b用として、図10に示すように、突先60aを嵌入方向とは逆方向に向けた複数の突片60を前記外周面に軸方向に複数段で周方向に所定の間隔を設けて突設させた形態がある。
【0038】
まず、前記外側外周溝付円筒体31を有する係止手段付ナット5a(壁面仕上材側固定部材3aと同じ。)について説明する。係止手段付ナット5aは、図9に示すように、リング状の外側外周溝付円筒体31、及び、雌ねじ部33aを螺刻した内側円筒体33を備える。前記内側円筒体33は、図9(d)、(e)に示すように、中央部に前記コンクリート側固定部材2の前記雄ねじ部12を螺入させる雌ねじ部33aを螺刻し、その雌ねじ部33aの外周壁は下端部より上方の範囲は円筒形で下端部は下方にいくほど外方向に傾斜した傾斜部39を形成しており、その材質はボルトやナットに使用される材質が適し、前記外側外周溝付円筒体31の材質は曲げ変形可能でかつ強度も有する材質が好ましい。
【0039】
また、前記外側外周溝付円筒体31は、図9(a)~(c)に示すように、上部側35は円筒形状で分割された部分がなく、下部側36については、図9(b)に示すように上部側35と下部側36とが連続した部位と、図9(c)に示すように上部側35のみあって下部側36は溝が形成されている部位とが交互に構成されている。なお、溝数は予め定めた分割数で形成される。前記外側外周溝付円筒体31の材質は、圧縮には強いが曲げ変形可能な材質が好ましい。前記上部側35と前記下部側36との間は凹部37が形成され、前記外側外周溝付円筒体31を曲げ変形しやすくしている。
【0040】
前記外側外周溝付円筒体31は、図9(d)に示すように、最初は前記外側外周溝付円筒体31の下部側36は軸芯方向(嵌入方向と同じ)と同じ方向の状態にあり、前記内側円筒体33の雌ねじ部33aに螺入したハンドナッター(図示なし)を上方に引き上げると、図9(a)又は図9(e)に示すように前記内側円筒体33が徐々に上昇し、この上昇によって前記外側外周溝付円筒体31の下部側36の分割部分の下端部が前記内側円筒体33の外周壁の傾斜部39に押し上げられながら前記傾斜部39に沿うように上方に徐々に曲がり、当初は嵌入方向と同じ方向の面が嵌入方向に対して横方向に変わり逆方向に向けた面31aを形成する。
【0041】
次に、前記係止手段付ナット5aを前記壁面仕上材8aの有底孔42aに嵌設した状態を説明する。図14(a)の矢印Xに示すように、前記外側外周溝付円筒体31の面31aが前記壁面仕上材8aの底広穴形状部43の面に引っ掛かり押し付けられた状態になって、前記壁面仕上材8aから前記係止手段付ナット5aが抜けないようになる。
【0042】
次に、前記突先60aを嵌入方向とは同じ方向に向けた複数の突片60を有する係止手段付ナット5b(壁面仕上材側固定部材3bと同じ。)について説明する。係止手段付ナット5bは、図10(a)、(b)に示すように、突先60aを嵌入方向と同じ方向に向けた複数の突片60を外周面に軸方向に複数段で周方向に所定の間隔を設けて突設させ、中央部に雌ねじ部33aを螺刻している。
【0043】
次に、前記係止手段付ナット5bを前記壁面仕上材8bの有底孔42bに嵌設した状態を説明する。図14(b)の矢印Yに示すように、係止手段付ナット5bは、図14(b)に示すように、円筒状の有底孔42bに嵌入するときは突片60の向きが嵌入方向と同じなのでスムーズに嵌入できるが、一端嵌設すると、引き抜き方向に対しては、突片60の突先60aが引き抜き方向(嵌入方向の逆方向)に対して、有底孔42bの内周壁面に対して引っ掛かり抜けないようになって、前記壁面仕上材8bから前記係止手段付ナット5bが抜けないようになる。
【0044】
以上から、前記係止手段付ナット5a、5bは、前記壁面仕上材8a、8bの前記有底孔42a、42bから抜けないので、強風の吹く高所や地震などの強度の揺れがあっても落下しないという効果を奏する。
【0045】
次に、前記コンクリート壁体4について説明する。前記コンクリート壁体4は、図15図16に示すように、前記コンクリート側固定部材2と前記壁面仕上材側固定部材3とを螺入により締結させた、前記壁面仕上材剥離防止具1の前記係止手段付ナット5が、予め定めた配置の複数の前記壁面仕上材8のそれぞれの裏面側41に設けた有底孔42に嵌設され、前記壁面仕上材剥離防止具1の前記コンクリート側固定部材2が打設されたコンクリート壁9内に埋設されている。
【0046】
前記コンクリート壁体4は、壁面仕上材8と係止手段付ナット5の嵌設に関する寸法精度等の品質のばらつきを抑え、かつコンクリートをコンクリート側固定部材2の平板部6の貫通孔10に充満させる等、コンクリート側固定部材2に密接させてしっかりとコンクリートを打設する必要があるため、工場で予め精度よく製作できるプレキャストコンクリートとして製作するのが好ましい。
【0047】
次に、図18に示すように、壁面仕上材剥離防止方法80について説明する。まず、壁面仕上材8への壁面仕上材剥離防止具装着ステップ81を説明する。壁面仕上材8の裏面側41の略中央に、円筒状の有底孔42b又は底広穴形状を形成した有底孔42aを備える壁面仕上材8a又は8bを準備する。
【0048】
前記壁面仕上材8は、例えば、圷土等を型に入れてプレスし、必要な釉薬を塗布した後に窯で焼成したタイルに切削治具を用いて固定し、図13(a)に示すようなダイヤモンドホルソーや図13(b)に示すような特殊ドリルの切削工具で、前記底広穴形状部43を有する前記有底孔42a又は円筒状の有底孔42bを形成する。
【0049】
そして、前記有底孔42aに前記係止手段付ナット5aを嵌設、又は、前記有底孔42bに前記係止手段付ナット5bを嵌設する。
【0050】
次に、前記係止手段付ナット5a又は5bの雌ねじ部33aに、前記コンクリート側固定部材2の雄ねじ部12を螺入し、図8に示すように、壁面仕上材8に壁面仕上材剥離防止具1を装着した装着済み壁面仕上材20を造る。
【0051】
次に、コンクリート打設ステップ82を説明する。図16に示すように、型枠内に複数の装着済み壁面仕上材20を、コンクリート壁9の壁面仕上材8の配置として予め定めた配置に並べてコンクリートを打設する。
【0052】
前記コンクリート打設ステップ82は、工場内で型枠にコンクリートを打設してプレキャストコンクリートを製造するか、又は、現地で型枠にコンクリートを打設して施工する。精度が必要なのでプレキャストコンクリートで製造する方が好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 壁面仕上材剥離防止具
2 コンクリート側固定部材
3 壁面仕上材側固定部材
4 コンクリート壁体
5 係止手段付ナット
6 平板部
7 多角形フランジボルト部
8 壁面仕上材
9 コンクリート壁
10 貫通孔
11 円筒部
12 雄ねじ部
13 頭部
14 フランジ部
20 装着済み壁面仕上材
22 引張力発生部位
23 せん断力発生部位
24 せん断力発生部位
31 外側外周溝付円筒体
31a 面
33 内側円筒体
33a 雌ねじ部
35 上部側
36 下部側
37 凹部
38 上端
39 傾斜部
41 裏面側
42 有底孔
43 底広穴形状部
51 外壁面
60 突片
60a 突先
80 壁面仕上材剥離防止方法
81 壁面仕上材への壁面仕上材剥離防止具装着ステップ
82 コンクリート打設ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図18