(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029391
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】乾燥コーヒー粕を利用した有機汚泥堆肥製造方法
(51)【国際特許分類】
C05F 15/00 20060101AFI20220209BHJP
C05F 17/00 20200101ALI20220209BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C05F15/00 ZAB
C05F17/00
C02F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020142135
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】308003415
【氏名又は名称】熊谷 和栄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 俊宏
【テーマコード(参考)】
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA10
4D059BA01
4D059BA44
4D059BF15
4D059BJ00
4D059CC01
4D059DB36
4D059EB01
4H061AA01
4H061AA02
4H061AA03
4H061CC35
4H061CC41
4H061CC51
4H061GG49
4H061GG67
4H061LL02
4H061LL05
4H061LL24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安価で効率よく有機汚泥を発酵堆肥化する方法を提供する。
【解決手段】有機汚泥の発酵堆肥化方法は、ヤード内のスペースに、乾燥したコーヒー粕を所定量投入し、そこにコーヒー粕の1~2倍の重量の有機汚泥を投入して簡易混合したものを、エアレーションにより好気発酵をおこなう。7日間程度の発酵乾燥期間が終了した段階で、発酵乾燥品全量に、初回と同量の有機汚泥を添加して簡易混合したものを、再度エアレーションにより好気発酵をおこなう。この繰り返しを10から20回程度実施することで、有機汚泥を発酵堆肥化する方法である。
【効果】従来の方法に比較し、臭気がほぼ無臭となり、発酵工程での所要面積が約85%削減でき、製造される堆肥製品容積が約85%削減(重量で75%削減)される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定重量の含水率35%以下に乾燥したコーヒー粕に、有機汚泥を添加して含水率が好気発酵に適した55~70%になるように配合量を調整して混合した後、一定期間発酵乾燥を実施。次に、実施後の発酵乾燥物の全量に、一回目に投入した量と同量の有機汚泥を投入する。この工程を連続して繰り返すことにより、有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機汚泥が下水汚泥・し尿汚泥・食品汚泥・家畜糞尿・グリストラップであることを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【請求項3】
請求項1記載の一定期間発酵乾燥することにおいて、その期間が5~12日であることを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【請求項4】
乾燥コーヒー粕と有機汚泥を混合する方法が、ショベルローダー等での簡易混合、もしくは機械混合であることを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【請求項5】
乾燥コーヒー粕に有機汚泥を連続的に添加していく場合において、発酵後の乾燥物の容積重が0.75以下であることを特徴とする請求項1記載の有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【請求項6】
発酵工程で、製造に必要な所要面積が、少なくとも50%以上、大幅に削減できることを特徴とする、請求項1に記載の有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【請求項7】
製造された発酵堆肥が、ほぼ無臭の粒状乾燥物であることを特徴とする、請求項1に記載の有機汚泥を発酵堆肥化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、高含水有機汚泥の発酵堆肥化において、コーヒー粕の乾燥物を利用する堆肥製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今まで出願されている堆肥製造方法、並びに水分調整材に関する特許文献の調査、並びに農研機構等から提出されている技術文献も調査検討したが、発明者が今回開示する特許出願に関連するものは見当たらなかった。そこで、以下に、現在の堆肥化製造に関する所見を述べる。
堆肥製造においては、様々な有機汚泥、例えば下水汚泥や食品汚泥や家畜糞尿などのバイオマス系の汚泥類を発酵乾燥することにより、有機堆肥を製造している事業所が全国各所に存在する。それに伴い、地域によっては堆肥生産過剰の問題が発生しているところもある。更には、不法投棄等のコンプライアンスに反する問題なども発生している。この背景には、これらの臭気の強いバイオマス系汚泥類の有効な処理方法が、堆肥化以外にないという問題がある。有機汚泥は高含水率で臭気も強い為、堆肥以外では埋め立てや焼却での処分となるが、それでは処理コストが高くなるため為、処理コストの安い堆肥化が進んでいる。しかしながら、今後は農業自体が縮減していく中で、堆肥使用量も将来的に減少していく。その状況を考えれば、将来的に堆肥製造事業は縮減の方向に向かうのに対し、有機系汚泥類の排出量は、殆ど横ばいになると予測される。
その場合、今後、如何に堆肥生産量を低減させていくかが非常に大きな課題となってくる。
【0003】
また、堆肥の過剰により発生している問題は、堆肥価格の低迷である。一部の完熟した良質堆肥は別として、現在製造されている堆肥は未完熟なものも多く、現実には非常に安価な引き取り価格となっている。このような脆弱な事業環境からも、堆肥製造における過剰生産は非常に大きな問題となっている。
【0004】
ではなぜ、堆肥製造においてこのような問題が発生するのかについて説明する。堆肥製造施設では、様々な有機汚泥を受け入れている。それらの汚泥は含水率が高く約80%程度である為、様々な水分調整材を添加して発酵に最適な含水率である60~70%に調整した後、発酵工程に投入している。水分調整材としては木質系チップが最もよく使用されており、その他はオガ粉やもみ殻などが使用されている。これらの水分調整材の共通点は、かさ比重が非常に低く、含水率が30%以下では0.15~0.25程度のものである。
例えば、重量においては、汚泥10t(比重0.8)に対し、水分調整材として含水率25%の木質チップ4t(かさ比重0.2)が投入された場合、容積換算では汚泥12m3に対し、木質チップ20m3が投入されることになる。この様に、水分調整材が加えられることにより、容積量が大幅に増大する。これが堆肥製造量を増加させる最大の要因である。
【0005】
つまり、堆肥製造においては、汚泥に水分調整材を入れることで、重量では約4割であっても、容積としては、汚泥の容積の2倍以上にまで大幅に増大してしまう。その為に、数か月の発酵期間に必要なヤードも非常に大きなスペースが必要となる。しかも、その間、ヤードにおいてブロアー等でエアレーションを連続使用する場合も多く、消費電力もアップする。更には出来上がった製品のストックヤードも大きなスペースが必要となる。
【0006】
いずれにしても、現状の堆肥製造方法では、堆肥施設は非常に大きな面積が必要となり、エネルギー消費も大きくなってしまう。それらの問題点を解決する方法を提供するのが本発明の目的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
堆肥化における水分調整材に関しては、様々な乾燥物、例えば茸培地などの検討報告がなされているが、大部分が木質チップや農業残渣(もみ殻等)に依存しているのが現状である。特に木質系チップが最も大量に使用されている。但し近年、木質チップは木質バイオマス発電事業の影響で需要が増大しており、将来にわたり安定した供給が受けられるかについての課題が出ている。
【0008】
木質チップ等の水分調整材の問題点の一つは、発酵による分解率の低さである。木質チップの種類により多少変化があるものの、発酵過程での分解率は凡そ5%程度にとどまる。一般的にバイオマス系汚泥類の場合、一次・二次発酵により固形分の約40%前後は分解される。それに対し、木質チップの場合、分解率が低い為、水分調整材として使用されたものは、そのまま95%以上が分解されずに残ることになる。これが堆肥製造量を増やす、もう一つの大きな問題点であるといっても過言ではない。
つまり、堆肥化の場合、原料となるバイオマス系汚泥自体は分解により40%程度減量化されるのに対し、その処理過程で使用する水分調整材の使用が減容化を妨げていることになる。勿論、現実の生産では戻し堆肥の利用などにより、水分調整材の使用を減らす様々な工夫がなされている。
【0009】
また、使用される木質チップの中には、建築廃材関係の木質系水分調整材が使用される場合も考えられないことはない。今後、木質チップの需給バランスが崩れて、供給がひっ迫するようなことになれば、建築廃材チップが堆肥に使用されかねない。その場合、廃材に含まれる様々な有害物質(接着剤・塗料・コーティング剤・防腐材の中に含まれる化学物質)が畑に散布されてしまう危険性も想定される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
解決すべき課題は、堆肥の過剰生産、並びに生産スペースの増大にある。堆肥に使用される有機汚泥と称されるものには、下水汚泥・し尿汚泥・家畜糞尿・食品汚泥・グリストラップなどがある。これらを合わせると、全産業廃棄物中の約40%程度にまで達する膨大な排出物である。しかも、有機汚泥の多くは堆肥化により処理されているのが現状である。その為に、近年は堆肥の過剰生産が全国で問題となっている。有機肥料として有効なものではあるが、過剰生産となった場合、不法投棄等の問題も発生する。
【0011】
発明者は、以前よりコーヒー粕の効能に注目していた。特に、コーヒー粕乾燥品の持つ水分や臭気をトラップする能力を有効利用できないかという観点より、様々な検討を重ねていた。但し、コーヒー粕は排出時65%程度の含水率を有する湿潤物であり、それ自体では水分や臭気をトラップする特性はない。当然、含水率が高い為、そのままで水分調整材として使用することもできない。それにも関わらず、産業廃棄物である高含水率のコーヒー粕は、堆肥製造の副資材として、実際には各所で使用されている。使用目的は臭気の低減や増量材として使用されている。コーヒー粕自体は難分解性物質であり、発酵工程では殆ど分解されないことから、主として臭気改善を期待されて使用されているようであるが、含水率が高いままでは、その効果はさほど期待できない。
【0012】
発明者は、コーヒー粕を乾燥することで、含水率の低下に伴い、水分や臭気を捕集する性能が著しく向上していくことを確認していた。そこで、コーヒー粕乾燥品(含水率20%)を食品汚泥に混合し、その混合物を62%の含水率に調整してエアレーションにより発酵試験を実施した。その結果、2日目から放線菌の発生が認められて発酵が確認され、発酵温度も2日目で最大80℃まで温度上昇した。その後、発酵温度が低下し始め、7日目で含水率が29.5%にまで低下して乾燥物は臭気がほとんどない粒状乾燥物となった。この結果より、乾燥コーヒー粕であれば、単独で水分調整材並びに発酵促進材としての機能を有することを確証した。
【0013】
発明者は、7日間発酵後の粒状乾燥物全量に、再度、食品汚泥を1回目と同重量添加して簡易混合した。混合直後の含水率は63%であった。1回目同様、そのまま7日間エアレーション使用で発酵したところ、前回同様の発酵状態(発酵最高温度82℃)となり、1週間後には含水率が30.2%にまで低下していた。ここまで含水率が低下した為、発酵後の粒状乾燥物全量に、1,2回目と同じ重量の汚泥を添加して簡易混合した。混合物は2回目同様の発酵状態(発酵最高温度84℃)を経て、1週間後には30.7%まで含水率が低下していた。
【0014】
その後、同様に連続して10回まで繰り返し実施した。その結果、10回目においても、発酵最高温度は75~85℃を維持し、7日後の含水率は30~33%の含水率内を維持できることを発見した。
【0015】
今回の試験で最も驚いたのは、1週間という短い期間で、10回連続で発酵温度も80℃に達し、発酵開始から2日ぐらいで白い放線菌の発生も確認され、1週間経過した段階で含水率が30%程度にまで低下していたことである。更に驚いたことは、発酵乾燥物の臭気が殆ど無くなっていたことである。発酵乾燥において、これだけの短期間での含水率低下や臭気改善は初めての経験であった。
【0016】
更にもう一つ、顕著な結果となったものが、発酵乾燥物の量であった。今回の試験で使用した面積と同じスペースが6つ使用できれば、毎日一定量の有機汚泥を連続的に処理できるのではと考えた。この方法で堆肥化を実施した場合、堆肥化に必要な所要面積の大幅な低減、更に堆肥製造量の大幅な低減の可能性がある。この方法に転換するだけで、堆肥生産必要面積、並びに堆肥生産量共に大幅な低下が可能となり、堆肥生産の効率化と無駄な堆肥生産の抑制につながる、大きな効果を有するスキームになりうると判断した。
【0017】
以上の結果から、乾燥コーヒー粕は、水分調整材として優れた特性を有することが明確となり、様々な有機汚泥の堆肥化において、水分調整材として使用できることが明確となった。現在も、コーヒー粕を乾燥しないで含水率が65%程度のものを副資材として使用している例はあるが、乾燥したコーヒー粕を水分調整材として使用した例はない。何故ならば、コーヒー粕を乾燥する為には乾燥エネルギーが必要であり、その処理コストが高い為に、実用性において問題があると考えられていた。従って、コーヒー粕乾燥品を水分調整材として使用することは、検討もなされてこなかった。
【0018】
何故、今回の方法は実用性があり、コーヒー粕を乾燥し、費用をかけても十分使用可能となるのかについて述べる。現在、使用されている水分調整材であるチップやおが粉などは、そのもの自体のコストは非常に低いが、傘比重が低い為、運賃がかかる有価物である。運搬距離等で変化はするが、ほぼm3当たりで5,000円程度はかかっている。含水率の低い良品はもっと価格は高くなる。それに対し、コーヒー粕を含水率20%以下に乾燥する為には、設備導入による減価償却や、エネルギー等ランニングコストから10円以上の乾燥コストがかかる。そのように単価には違いがあり、コーヒー粕乾燥品は高いコストとなる。
【0019】
しかしながら、それぞれの使用方法には明確な相違点がある。まず、木質チップ等の使用は、汚泥の水分調整の為に必ず毎回使用する。戻し堆肥を使用することで低減している施設もあるが、含水率調整の為にはほぼ毎回使用される。それに対し、本発明の場合、乾燥コーヒー粕はスタート時に必要であるが、その後は10~20回は連続で汚泥投入できるため、その間、乾燥コーヒー粕は一切使用しない。その為に乾燥コーヒー1kgで処理可能な汚泥量が大幅に増えることで、汚泥処理コストは低減でき、十分実用性がある。
【0020】
実は、コーヒー粕は有機物の中でも難分解性であり、発酵段階では殆ど分解されない性質がある。つまり、最初に入れたコーヒー粕固形分は、ほぼ、そのまま汚泥投入を繰り返している時点で殆ど変わらず残っている。なお、汚泥連続投入により、少しづつ汚泥の固形分が上昇し、同時に容積重も増加していく。その結果、容積重が0.75になると堆積状態が最適の範囲を超える。これにより、エアレーションの効果がやや低下する為、発酵効率も低下傾向を示す。従って、容積重が0.75に到達した段階で繰り返しは終了する。その時は、再度、乾燥コーヒー粕をヤード内に投入し、有機汚泥を投入していく工程を繰り返すことで、連続的に汚泥を処理できる。この方法により、解決すべき課題である堆肥の過剰生産防止、並びに生産スペースの縮減が達成される。
【0021】
以下に、本明細書が開示する技術の詳細について、「発明を実施するための形態」で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】実施例1の効果結果の表である。(比較例との比較)
【発明を実施するための形態】
【0023】
コーヒー粕は排出時に65~75%程度の含水率を有する。これを本発明に使用する為に、含水率を少なくとも35%以下、最適範囲は20%以下に乾燥する。乾燥方法は自然乾燥、強制乾燥等様々な乾燥方法がある。要求される含水率や使用条件に合った含水率に調整する最も効率的且つ効果的な方法を選択して実施する。もし、コーヒー粕の含水率が35%以上の場合は、コーヒー粕の持つ水分や臭気の捕集効果が著しく低下する。その為、コーヒー粕の含水率は少なくとも35%以下にしなければならない。また、含水率が低いほどコーヒー粕の水分・臭気の捕集効果は相乗的にアップする。特に20%以下になるとその性質が顕著となることから、最適な含水率は20%以下である。
【0024】
本発明は、乾燥したコーヒー粕を使用して、様々な高含水率の有機汚泥を発酵により堆肥化する為に、効果的な運営方法に関するものである。以下に実施例で説明をする。
【実施例0025】
コーヒー粕乾燥品(含水率15%)をヤード内に5t(容積12.5m3)投入する。そこに下水汚泥10t(容積12.5m3)を投入してショベルローダーで簡易混合し、1.5m堆積高さで静置。下からエアレーションにより好気発酵を開始する。開始時の含水率は58%であった。この状態で1週間放置した。2日目に最高発酵温度は84℃となり、内部全面に放線菌の発生を確認した。その後、5日目から発酵温度が低下し、7日目の段階で含水率は29%まで低下していた。
【0026】
この結果より、今回の下水汚泥では発酵期間は7日に設定した。その根拠は4つある。▲1▼大腸菌やサルモネラ菌、ブドウ球菌などの菌が死滅する条件である発酵温度が60℃以上に達すること。▲2▼発酵温度が最高温度より徐々に低下していること。▲3▼含水率が35%以下となること。▲4▼臭気がほぼなくなること。以上の4条件を満たした段階を発酵期間設定の目安とした。これによれば、汚泥の種類により変化するが、ほぼ5~12日程度である。
【0027】
7日経過後、発酵乾燥物全量に、2回目の下水汚泥10tを投入し、同様の過程を経て発酵乾燥を実施した。その後、1週間経過後に3回目の下水汚泥10tを投入し、同様な工程で発酵乾燥を実施した。この方法で繰り返しを10回実施した。その時の物質収支を
図1に示す。
図1より、この期間70日で、10回の10t有機汚泥を投入処理したことから、期間内の有機汚泥処理量は100tであった。
【0028】
10回までの繰り返しにより、
図1より最大の容積になるのは、10回目の下水汚泥投入直後であり、その時の重量は32tで、容積は43.5m3、堆積高さが1.5mで約30m2が所要面積であった。下水汚泥の1週間の投入回数は、日曜日を除き6回であるから、今回の所要面積と同じ面積が使用できるスペースが6つあれば、毎日10tを6つの山に順番に投入することで処理が可能となる。各スペースに1回づつ投入されたら、再度、1回目投入の山から順番に汚泥を投入する。この繰り返しを10回実施した場合、その所要面積は30m2×6=180m2となる。更に、この期間に処理される下水汚泥は100t×6=600tであり、製造される堆肥製造量は、
図1より重量で24t×6=144t、容積で33m3×6=198m3となる。
従来の方法で、70日間で実働60日とした場合に、どれだけの所要面積並びに堆肥製造量がどの程度になるかを以下の比較例1で示す。
【0029】
[比較例1]
従来の方法の場合、搬入した汚泥10tに対し、水分調整材としてバークチップ(含水率25%)を4t/日混合し、ショベルローダーで簡易混合する。簡易混合された混合物(含水率64%)を、発酵施設(複数ヤード)にて下からエアレーション(ブロア等)することで好気発酵を促進して発酵堆肥を製造している。その際、発酵期間は60~75日程度必要となる。混合方法としては、機械混合であればより均一な混合が可能である。ショベルローダーでの切り返しの回数は、混合量により変化するが、ある程度均一になるまで実施する。この1回の配合物を1つの山と表現する。
【0030】
発酵期間70日の場合、休みを除き60個の配合の山ができる。1山の重量は14t(容積重0.45t/m3)で容積は31m3、60個の山では60×31=1860m3となる。もし1.5mの堆積高さとした場合、1240m2の所要面積が必要となる。受け入れている汚泥は、1山に10t(容積重は0.8t/m3)で容積は12.5m3となり、60の山で約750m3となる。つまり容積で考えた場合、750m3の汚泥を受け入れて、発酵工程へ投入する段階では1860m3と約2.5倍強も増大している。
【0031】
その後、発酵期間を終了した段階で堆肥(含水率40~50%)として出荷される。堆肥製造量は、1山当たり重量9.8tで、容積は25,4m3となる。60山では堆肥生産量9.8×60=588t、容積は1524m3となる。
【0032】
以上の実施例1と比較例1において、堆肥製造に必要な所要面積(動線等は全く考慮しない配合物のみが占める面積)、堆肥製造量の比較結果を
図2に示す。この結果より、従来の方式と比較した場合、本発明での効果は圧倒的である。例えば、堆肥製造に必要な発酵工程での所要面積で約85%低減、堆肥製造量では、容積で約85%程度の低減が可能となる。
【0033】
図1に、10回連続投入までの容積重が記載されている。これにより、今回の10回連続での下水汚泥処理において、容積重は0.54から0.72に上昇している。この容積重が連続投入の限界の目安となる。この容積重が0.75を超えた場合、堆積による荷重増加によるエアレーションの通気性が低下することで、発酵効率も低下する。本発明の運営、特に連続投入回数の設定は、容積重が0.75以下で運営するのが特性を維持するポイントである。
規模の小さい処理での本発明の効果について検証した。含水率90%の乳牛糞尿を、本発明方式で処理した時の結果を示す。実施例1同様に、コーヒー粕乾燥品(含水率15%)をヤード内に400kg(容積1m3)投入する。そこに乳牛糞尿500kg(容積0.6m3)を投入してショベルローダーで簡易混合し、最大0.7m堆積高さで静置。下からエアレーションにより好気発酵を開始する。開始時の含水率は62%であった。この状態で1週間放置した。3日目に最高発酵温度は82℃となり、内部全面に放線菌の発生を確認した。その後、4日目から発酵温度が低下し、7日目の段階で含水率は30.4%まで低下していた。
以上の結果より、処理スケールが小さく、堆積高さが1m以下の低い状態となった場合でも、十分な発酵が確認された。有機汚泥の種類に関わらず、発酵開始時点で適正な含水率である60~70%に調整すれば、効率的に発酵し、7日程度で含水率も32%以内となることが明確になった。更に、15回経過段階で容積重が0.7であり、まだ連続して投入できる可能性を示した。