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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029409
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】抗ウイルス組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/48 20060101AFI20220209BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20220209BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20220209BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220209BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220209BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20220209BHJP
   A01N 33/04 20060101ALI20220209BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20220209BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20220209BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20220209BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20220209BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20220209BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/77 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/60 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D1/62
C11D1/02
A01P1/00
A01N25/02
A01N31/02
A01N33/04
A01N37/02
A01N31/08
A01N37/10
D06M13/463
D06M13/144
D06M13/184
A61K31/14
A61K31/05
A61K31/19
A61K31/77
A61K31/185
A61K31/60
A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021037716
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾本 百合子
(72)【発明者】
【氏名】小山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀内 惇平
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H003
4H011
4L033
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA17
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206CA17
4C206DA03
4C206FA41
4C206JA08
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
4H003AB03
4H003AB08
4H003AB15
4H003AB21
4H003AB23
4H003AB31
4H003AC08
4H003AD04
4H003AE04
4H003BA20
4H003DA01
4H003DA02
4H003DA05
4H003EA03
4H003EA12
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB08
4H003EB14
4H003EB16
4H003EB17
4H003EB19
4H003EB28
4H003EB37
4H003EB41
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA26
4H011AA04
4H011BA05
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB06
4H011DA13
4H011DE16
4L033AB01
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA11
4L033BA16
4L033BA86
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れたウイルス不活化効果を有する抗ウイルス組成物を提供する。
【解決手段】(A)カチオン性界面活性剤、(B)アニオン性界面活性剤、(C)殺菌剤から選ばれる1種以上を含む抗ウイルス組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性界面活性剤、
(B)アニオン性界面活性剤、
(C)殺菌剤
から選ばれる1種以上を含む抗ウイルス組成物。
【請求項2】
(A)以下の式(1)で表されるカチオン性界面活性剤、
R1R2R3R4N+X- (1)
(式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に選択され、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐アルキル基、分岐アルケニル基、ベンジル基、又は-(AO)nRであり、Aは炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキレン基から選ばれる1種又は2種以上であり、nは(AO)の平均付加モル数を表し、0.1~20であり、RはHまたはCH3であり、X-は無機酸もしくは有機酸の1価のアニオン又は当量の多価のアニオンである。)
(B)高級脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、エーテルカルボン酸、アミノ酸系界面活性歳、オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上
(C)エタノール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸から選ばれる1種以上である請求項1記載の抗ウイルス組成物。
【請求項3】
(A)炭素数8~18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数4~18のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩であり、対イオンとしては、ハロゲンイオン、アルキル硫酸イオンである1種以上
(B)ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる1種以上、である請求項1又は2記載の抗ウイルス組成物。
【請求項4】
塩化ドデシルトリメチルアンモニウム及びエタノール、ラウリン酸カリウム及び/又はミリスチン酸カリウム及びイソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びイソプロピルメチルフェノール、の組合せから選ばれる請求項1~3記載の抗ウイルス組成物。
【請求項5】
皮膚用又は硬質表面用又は繊維製品処理用の請求項1~4記載の抗ウイルス組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス組成物に関する
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)が世界的猛威を振るい、パンデミックを引き起こしている。インフルエンザやノロウイルス等によるウイルス性の感染症の拡大はこれまでも繰り返し流行しており、これらのウイルスに感染すると高熱や激しい嘔吐、下痢などの重い症状が発症するため、感染予防に対する生活者の意識は非常に高い。ウイルスの感染経路としては、感染者の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込むことによる飛沫感染に加え、感染者の唾や鼻水のついたドアノブやスマートフォン、衣類などの繊維製品を触った手指を口、鼻、目などの粘膜に接触させたことによる接触感染が知られている。このようにウイルス性の感染症は手指や環境の抗ウイルス対策が非常に重要な予防法であり、経済産業省とNITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)により、各種界面活性剤などの成分の新型コロナウイルスに対する有効性評価(非特許文献1)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告)、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)、令和2年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、優れたウイルス不活化効果を有する抗ウイルス組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)カチオン性界面活性剤、(B)アニオン性界面活性剤、(C)殺菌剤から選ばれる1種以上を含む優れたウイルス不活化効果を有する抗ウイルス組成物を見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記の抗ウイルス組成物を提供する。
<1> (A)カチオン性界面活性剤、
(B)アニオン性界面活性剤、
(C)殺菌剤
から選ばれる1種以上を含む抗ウイルス組成物。
<2> (A)以下の式(1)で表されるカチオン性界面活性剤、
R1R2R3R4N+X- (1)
(式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に選択され、炭素数1~24
の直鎖もしくは分岐アルキル基、分岐アルケニル基、ベンジル基、又は-(AO
)nRであり、Aは炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキレン基から選ばれる1種
又は2種以上であり、nは(AO)の平均付加モル数を表し、0.1~20であ
り、RはHまたはCH3であり、X-は無機酸もしくは有機酸の1価のアニオン
又は当量の多価のアニオンである。)
(B)高級脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、エーテルカルボン酸、アミノ酸系界面活性歳、オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上
(C)エタノール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸から選ばれる1
種以上
である<1>記載の抗ウイルス組成物。
<3> (A)炭素数8~18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数4~18のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩であり、対イオンとしては、ハロゲンイオン、アルキル硫酸イオンである1種以上
(B)ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる1種以上
である<1>又は<2>記載の抗ウイルス組成物。
<4> 塩化ドデシルトリメチルアンモニウム及びエタノール、ラウリン酸カリウム及び
/又はミリスチン酸カリウム及びイソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエ
チレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びイソプロピルメチルフェノール、
の組合せから選ばれる<1>又は<2>又は<3>記載の抗ウイルス組成物。
<5> 皮膚用又は硬質表面用又は繊維製品処理用の<1>又は<2>又は<3>又は
<4>記載の抗ウイルス組成物
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れたウイルス不活化効果を有する抗ウイルス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の抗ウイルス組成物は、(A)カチオン性界面活性剤、(B)アニオン性界面活性剤、(C)殺菌剤から選ばれる1種以上を含む抗ウイルス組成物である。
【0009】
<(A)カチオン性界面活性剤>
前記(A)成分のカチオン性界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミン及びその塩、アルコキシアルキルジメチルアミン及びその塩、アルキルアミドアミン及びその塩等が挙げられる。
【0010】
前記(A)成分のカチオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート塩、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ベンザルコニウム、酢酸ラウリン酸アミドブチルグアニジン、酢酸ミリスチン酸アミドブチルグアニジン、酢酸パルミチン酸アミドブチルグアニジン、ジステアリルジメチルアンモニウムサルフェート、ステアリルエチルジヒドロキシエチルアンモニウムエチルサルフェート、N-ヤシ油脂肪酸L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
これらの中でも、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート塩、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ベンザルコニウムが好ましく、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート塩が特に好ましい。
【0012】
前記(A)成分としては、市販品を用いてもよく、適宜合成したものを用いてもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:リポカードT-800(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、商品名:カチナールCTC-70ET(塩化セチルトリメチルアンモニウム、東邦化学工業(株)製)、商品名:リポカード12-37W(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、商品名:カチナールHTB-70ET(臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、東邦化学工業(株)製)、商品名:リポカード210-80E(塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、商品名:リポカード16-30MSK(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート塩、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記(A)成分の含有量は、組成物全体の0.01~1質量%が好ましく、より好ましくは0.01~0.5質量%である。0.01質量%以上であれば、ウイルス不活化効果に優れ、1質量%以下であれば、対象物に対するべたつき感のなさや刺激感のなさに優れる。
【0014】
<(B)アニオン性界面活性剤>
前記(B)成分のアニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アシル化アミノ酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(アルキレン部分としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが好ましく、ポリオキシエチレンがより好ましい)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩等のN-アシル-N-メチルタウリン塩、オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸石ケン、アルキルリン酸エステル塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩、N-パルミトイルグルタミン酸塩等のN-アシルグルタミン酸塩、N-ラウロイル-N-エチルグリシン塩等のN-アシル-N-カルボキシアルキル-グリシン塩、N-ラウロイルサルコシン塩等のアシルサルコシン塩、N-ミリストイル-β-アラニン塩等のN-アシル-β-アラニン塩等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの塩の対イオンとしては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸石ケンが好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウムが特に好ましい。
【0016】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、アルキル基部分の炭素数として10~24が好ましく、12~14がより好ましく、エチレンオキサイドの平均付加モル数(以下、「EO」とも称することがある)としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属、アンモニウム、アルカノールアミンなどが挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属、アンモニウムが好ましく、ナトリウム、アンモニウムがより好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0017】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、市販品を用いてもよく、適宜合成したものを用いてもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:エマール170J(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(EO:1)、花王株式会社製)、商品名:シノリンSPE-1250(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(EO:2)、新日本理化株式会社製)、商品名:テイカポールNE1270(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(EO:3)、テイカ株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、泡立ちのよさ、及び泡のきめ細かさの点から、商品名:シノリンSPE-1250(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(EO:2)、新日本理化株式会社製)が好ましい。
【0018】
脂肪酸石ケンとしては、市販品を用いてもよく、適宜、例えば脂肪酸を水酸化カリウム等のアルカリで中和して合成したものを用いてもよい。
【0019】
前記(B)成分の含有量は、組成物全体の0.2~10質量%が好ましく、より好ましくは3~10質量%である。0.2質量%以上であれば、ウイルス不活化効果に優れ、10質量%以下であれば、対象物に対するべたつき感のなさやすすぎ時のぬるつきのなさに優れる。
【0020】
<(C)殺菌剤>
前記(C)成分の殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、サリチル酸、次亜塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エタノール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸が好ましい。
【0021】
前記(C)成分の含有量は、エタノールであれば、組成物全体の5~60質量%が好ましく、より好ましくは5~50質量%である。5%質量以上であれば、ウイルス不活化効果に優れ、60%質量以下であれば、刺激性のなさに優れる。イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸であれば、組成物全体の0.01~1質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%である。0.01%質量以上であれば、ウイルス不活化効果に優れ、1%質量以下であれば、刺激性のなさに優れる。
【0022】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記(A)成分~前記(C)成分の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有することができる。 前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分以外のカチオン性界面活性剤、(B)成分以外のアニオン性界面活性剤、前記(C)成分以外の殺菌剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、ポリオール類、食塩、芒硝等の無機塩類、有機塩類、モノラウリン酸ポリグリセリル、プロピレングリコール等の保湿剤、トニック剤、可溶化剤、BHT、α-トコフェロール等の酸化防止剤、脂肪酸ジエタノールアミド等の粘度調整剤、紫外線吸収剤、タンパク質誘導体、動植物抽出液、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン等のフケ防止剤、グリチルリチン酸ジカリウム等の抗炎症剤、安息香酸又はその塩、パラベン類、ケーソンCG等の防腐剤、クエン酸、トリエタノールアミン等のpH調整剤、乳濁剤、ハイドロトロープ、低級アルコール、ビタミン類、揮発性油分、疎水性溶媒、精製水等の希釈性溶媒、色素、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<製造方法>
前記抗ウイルス組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記(A)成分~前記(C)成分、及び前記その他の成分を混合して調製することができる。前記抗ウイルス組成物を調製する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剪断と全体混合できる複数の攪拌羽根(プロペラ、タービン 、ディスパー等)を備えた攪拌装置などが挙げられる。
【0024】
<容器>
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポンプディスペンサー容器、スプレー容器、フォーマーポンプ容器、チューブ容器、袋状容器などが挙げられる。
前記ポンプディスペンサー容器の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-ビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ガラスなどが挙げられ、単層乃至2層以上組み合わせて用いることが好ましい。例えば、株式会社吉野工業所製のノズル口径(内径)3.5mm、吐出量3mLのポンプディスペンサー容器などが挙げられる。
前記スプレー容器としては、エアゾールスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧型あるいは蓄圧型)や、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。エアゾールスプレー容器の例としては、特開平9-3441号公報及び特開平9-58765号公報等に記載されているものが挙げられる。また、噴射剤としてはLPG(液化プロパンガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガスや、窒素ガス等が挙げられ、これらは単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。トリガースプレー容器の例としては、特開平9-268473号公報、特開平9-256272号公報及び特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。ディスペンサースプレー容器の例としては、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。
前記フォーマーポンプ容器としては、例えばノンガス型の泡吐出容器等が挙げられる。ノンガス型の泡吐出容器としては、液体洗浄剤組成物と空気とを多孔質膜体を通過させて発泡状態で吐出できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボトル胴部を手で圧搾することによって泡を吐出できるスクイズフォーマー容器、ノズル部を押し下げることによって泡を吐出できるフォーマーポンプ容器等が挙げられる。このようなフォーマーポンプ容器としては、大和製罐株式会社製、株式会社吉野工業所製等を使用することができる。
ノンガス型の泡吐出容器は、通常、泡を形成するための多孔質膜体(材質はナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等のプラスチック材料が好ましい)を有し、液体皮膚洗浄剤組成物がこの多孔質膜体を空気と共に通過することにより泡が形成されるものである。多孔質膜体のメッシュとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、泡の弾力性の点から100メッシュ以上が好ましく、100~400メッシュがより好ましく、200~350メッシュが更に好ましい。多孔質膜体の枚数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、泡性能を向上させる観点から2~4枚が好ましい。より具体的には、特開平7-315463号公報、特開平8-230961号公報、及び特開2005-193972号公報に記載されたフォーマーポンプ容器を好適に使用することができる。
【0025】
<用途>
本発明の抗ウイルス組成物は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ハンドソープ、ボディソープ、クレンジングフォーム、メイク落としなどの皮膚用、硬質表面用又は繊維製品処理用の組成物として利用できる。
本発明の抗ウイルス組成物を硬質表面又は繊維製品に使用する方法としては、特に限定されない。繊維製品を組成物中に浸漬した後風乾してもよいし、組成物をスプレー容器に収納し、硬質表面や繊維製品に対して組成物を噴霧した後風乾または拭き取りをしてもよい。特に、家庭においても手軽に実施できる簡便性や、必要量の組成物を硬質表面や繊維製品の気になる部位にのみ作用できるという経済性の点から、組成物をスプレー容器に収納し、硬質表面や繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。
本発明は、抗ウイルス組成物を皮膚上、硬質表面上、繊維上のウイルスに適用することを含む、ウイルス不活化方法にも関するが、ここで言う「適用」には、本発明の抗ウイルス組成物の原液又はその希釈溶液を滴下、塗布、噴霧等して適用対象となる部位や硬質表見、繊維製品に接触又は浸漬又はその後拭き取ることが含まれる。
本発明の抗ウイルス組成物を硬質表面用又は繊維製品に使用する対象としては、特に限定されないが、例えば、食卓、調理台、キッチンカウンター、床(フローリング・ビニール)、子ども用品(おもちゃ・ベビーチェア・プレイマット等)、ペット用品(おもちゃ・ケージ・トイレ等)、家具、戸棚、鏡、窓、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、コート、ニット、ジーンズ、パジャマ、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、クッション、座布団、ソファ、枕カバー、シーツ、ベッドパッド、枕、布団、ベッドカバー、毛布、マットレス、靴、トイレマット、バスマット、玄関マット、カーペット、ラグ、絨毯等が挙げられる。
本発明の抗ウイルス組成物により不活化され得るウイルスは、エンベロープ型及び非エンベロープ型の両者を含む。また、本発明の抗ウイルス組成物により不活化され得るウイルスは、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、一本鎖(+)RNAウイルス、一本鎖(-)RNAウイルス、及び逆転写ウイルスが挙げられる。例えば、カリシウイルス科、オルトミクソウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科などに属するウイルスが挙げられる。
なお、本発明の抗ウイルス組成物におけるウイルス不活化効果は、ウイルスの感染又は増殖能力を除去又は低下させる効果を発揮するものであればよい。
【0026】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例の記載の各成分の含有量は、全て純分換算した値である。
【0027】
(実施例1~28)
下記表1に示す組成、及び含有量の抗ウイルス組成物を以下の方法で調製した 。即ち、(C)成分、及び一部の精製水を混合し、(A)成分及びメチルグリシン酢酸3ナトリウム、硫酸亜鉛、ポリエーテル変性シリコン、香料を添加し、均一に混合した。その後、攪拌しながら、希硫酸を添加し、pHメーター((株)堀場製作所 pHメーター F-52)を用いてpHを4.5に調整し、残りの精製水を添加した。
【0028】
(実施例29~44)
下記表2に示す組成、及び含有量の抗ウイルス組成物を以下の方法で調製した 。即ち
、(B)成分と一部の精製水をパドル式撹拌機を用いて70℃で均一に混合した。攪拌を続けながら、(C)成分、ソルビトール、プロピレングリコールを添加して溶解後、攪拌しながら25℃まで冷却した。その後、攪拌しながら、水酸化カリウムを添加し、pHメーター((株)堀場製作所 pHメーター F-52)を用いてpHを10.0に調整し、残りの精製水を添加した。
【0029】
得られた実施例1~44の抗ウイルス組成物について、以下の ようにして、「ウイルス不活化効果」を評価した。結果を表1~表3に示す。
【0030】
<ウイルス不活化試験法1>
実施例及び比較例の抗ウイルス組成物をウイルスに作用させ、TCID50法により、実施例及び比較例組成物のウイルス不活化効果1を評価した。
(1)供試ウイルス
A型インフルエンザウイルス(H1N1 A/PR/8/34)
(2)ウイルス液の調整
A型インフルエンザウイルスを発育鶏卵の漿尿膜腔に摂取し、ふ卵器で静置培養後、漿尿液を採取し密度勾配遠心法により精製したものをウイルス液とした。
(3)不活化試験及びウイルス量測定
(i)実施例又は比較例の組成物0.45mLと、上で調製したウイルス液0.05mLとを室温で混合し、30秒(作用時間)反応させた。
(ii)上記(i)で得られたA型インフルエンザウイルス液に、SCDLP(Soybean-Casein Digest Broth with Lecithin & Polysorbate)培地を添加し、10倍希釈することにより、反応を停止させた。得られた液体を原液とし、MEM(minimal essential medium)で10倍段階希釈した。得られた液体を原液とし、PBSで10倍階段希釈した。
(iii)96ウエルプレートにウイルスを感染させるための細胞を用意した。
(iv)上記(ii)で調製した原液または希釈液100μLを、(iii)で96ウエルプレートに準備した細胞に植え込んだ後、TCID50法(Behrens・Karber 法に準拠)に従って感染価を測定した。
上記(i)~(iv)の方法で作用時間を0秒とし、組成物の代わりにMEMを用いたものを試験し、感染価を測定した。その感染価の対数から、各組成物の感染価の対数を減じた値を、「感染価対数減少値」とした。感染価対数減少値に基づき、各組成物のウイルス不活化能を以下の基準により評価した。また予備試験として、ウイルスなしのサンプルを上記の不活化試験法にて評価することにより、細胞はすべて成育することを確認した。
<評価基準>
◎:評価ウイルスの感染価対数減少値が4以上
〇:評価ウイルスの感染価対数減少値が3以上4未満
△:評価ウイルスの感染価対数減少値が1以上3未満
×:評価ウイルスの感染価対数減少値1未満
【0031】
<ウイルス不活化試験法2>
実施例及び比較例の抗ウイルス組成物をウイルスに作用させ、布巾でふきとり後、TCID50法により、実施例及び比較例組成物のウイルス不活化効果2を評価した。
(1)供試ウイルス
A型インフルエンザウイルス(H1N1 A/PR/8/34)及びネコカリシウイルス(Feline Calicivirus F9)
(2)ウイルス液の調整
(a)A型インフルエンザウイルス液
A型インフルエンザウイルスを発育鶏卵の漿尿膜腔に摂取し、ふ卵器で静置培養後、漿尿液を採取し密度勾配遠心法により精製したものをウイルス液とした。
(b)ネコカリシウイルス液
ネコカリシウイルス(FCV)F9 株を培養細胞に接種し、PBS(-)で洗浄後、血清不含イーグルMEM 培地でふ卵器で静置培養した。全ての細胞に細胞変性効果が生じた時点で培養液および細胞を回収し、遠心分離した上清をウイルス液とした。
(3)不活化試験及びウイルス量測定
(i)ポリプロピレン試験片に、上で調製したウイルス液0.1mLを塗布し、室温で乾燥させた。
(ii)上記(i)の試験片に実施例又は比較例の組成物0.9mLを塗布し、1分(作用時間)後、布巾で試験片を1回ふき取った。
(iii)上記(ii)で得られた試験片に、EMEM(Eagle's Minimal Essential Medium)を添加し51倍希釈することにより、反応を停止させた。得られた液体を原液とし、EMEMで10倍階段希釈した。
(iv)96ウエルプレートにウイルスを感染させるための細胞を用意した。
(v)上記(iii)で調製した原液または希釈液100μLを、(iv)で96ウエルプレートに準備した細胞に植え込んだ後、TCID50法(Behrens・Karber 法に準拠)に従って感染価を測定した。
上記(i)~(v)の方法で作用時間を0分とし、組成物を塗布せず、、ふき取り操作を行わないものを試験し、感染価を測定した。その感染価の対数から、各組成物の感染価の対数を減じた値を、「感染価対数減少値」とした。感染価対数減少値に基づき、各組成物のウイルス不活化能を以下の基準により評価した。また予備試験として、ウイルスなしのサンプルを上記の不活化試験法にて評価することにより、細胞はすべて成育することを確認した。
<評価基準>
◎:評価ウイルス2種とも感染価対数減少値が4以上
〇:評価ウイルス2種とも感染価対数減少値が3以上4未満、又は評価ウイルスいずれか1種のみが感染価対数減少値4以上
△:評価ウイルス2種とも感染価対数減少値が1以上3未満、又は評価ウイルスいずれか1種のみが感染価対数減少値2以上3未満
×:評価ウイルス2種のうち、1種が感染価対数減少値1未満であり、もう1種が感染価対数減少値2未満
【0032】
ウイルス除去スプレー
【0033】
【表1】
【0034】
ウイルス除去スプレー
【0035】
【表2】
【0036】
ウイルス除去スプレー
【0037】
【表3】
【0038】
泡ハンドソープ
【0039】
【表4】
【0040】
泡ハンドソープ
【0041】
【表5】
【0042】
ボディソープ
【0043】
【表6】
【0044】
なお、前記実施例、及び前記比較例で使用した各種成分の詳細について、下記表7に示す。
【0045】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の抗ウイルス組成物は、優れたウイルス不活化効果を有しており、例えば、ハンドソープ、ボディソープ、クレンジングフォーム、メイク落としなどの皮膚用、硬質表面用又は繊維製品処理用の組成物として好適に用いられる。