(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029425
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】大型ディーゼル機関のための燃料噴射弁及び燃料噴射方法、並びに大型ディーゼル機関
(51)【国際特許分類】
F02M 47/00 20060101AFI20220209BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20220209BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F02M47/00 P
F02M47/00 A
F02M51/06 C
F02M21/02 N
F02M21/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112640
(22)【出願日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】20189462.3
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515111358
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トゥルハン イルディリム
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA01
3G066AA07
3G066AA08
3G066AA16
3G066AB02
3G066AB05
3G066BA49
3G066CC14
3G066CE22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大型ディーゼル機関のための燃焼噴射弁及び対応するディーゼル機関を提供する。
【解決手段】大型ディーゼル機関のための燃料噴射弁であって、制御室4が作動ピストン2の一方の端部21を受け入れ、閉鎖可能な流れ接続部6を介して制御室4に接続され得る中間室5が設けられ、作動ピストンの端部が作動ピストン2が第1の位置にあるときに制御室4と中間室5との間の流れ接続部6を閉鎖する閉鎖体21として設計され、閉鎖可能な開口絞り弁7が設けられ、閉鎖可能な開口絞り弁7を用いることにより、中間室5が燃料のための出口9に接続され得、制御室4を燃料管10に接続する第1の閉口絞り弁81が設けられ、中間室5を燃料管10に接続する第2の閉口絞り弁82が設けられ、第2の閉口絞り弁82の直径d2が第1の閉口絞り弁81の直径d1よりも小さい燃料噴射弁である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを通じて燃料が燃焼室(50)内に導入され得る少なくとも1つの噴口(32)を有するノズル・ヘッド(31)と、それを通じて前記燃料が高圧下で圧力室(33)内に導入され得る燃料管(10)と、ばね(34)により荷重をかけられる針弁(3)と、前記針弁(3)の開口状態では前記圧力室(33)と前記ノズル・ヘッド(31)との間の流れ接続が開かれ、閉口状態では前記圧力室(33)と前記ノズル・ヘッド(31)との間の前記流れ接続が閉鎖されるように、前記針弁(3)が第1の弁座(35)と密封態様で協働するように、前記針弁(3)と協働するように設計された、前記第1の弁座(35)と、行程運動により前記針弁(3)を前記開口状態から前記閉口状態へ移動させるように設計された、移動可能な作動ピストン(2)と、前記作動ピストン(2)を前記針弁(3)が前記開口状態にある第1の位置から前記針弁(3)が前記閉口状態にある第2の位置へ移動させるための制御室(4)と、を備え、前記制御室(4)が、前記作動ピストン(2)の一方の端部(21)を受け入れる、大型ディーゼル機関のための燃料噴射弁であって、閉鎖可能な流れ接続部(6)を介して前記制御室(4)に接続され得る中間室(5)が設けられ、前記作動ピストンの前記端部が、前記作動ピストン(2)が前記第1の位置にあるときに前記制御室(4)と前記中間室(5)との間の前記流れ接続部(6)を閉鎖する閉鎖体21として設計され、閉鎖可能な開口絞り弁(7)が設けられ、前記閉鎖可能な開口絞り弁(7)を用いることにより、前記中間室(5)が前記燃料のための出口(9)に接続され得、前記制御室(4)を前記燃料管(10)に接続する第1の閉口絞り弁(81)が設けられ、前記中間室(5)を前記燃料管(10)に接続する第2の閉口絞り弁(82)が設けられ、前記第2の閉口絞り弁(82)の直径(d2)が、前記第1の閉口絞り弁(81)の直径(d1)よりも小さいことを特徴とする、燃料噴射弁。
【請求項2】
前記作動ピストン(2)は、前記作動ピストン(2)が前記第1の位置にあるときに、前記第1の閉口絞り弁(81)を完全に閉鎖する、請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記第1の閉口絞り弁(81)の前記直径(d1)による流れ断面積と前記第2の閉口絞り弁(82)の前記直径(d2)による流れ断面積との合計が、前記開口絞り弁(7)の直径(D)による流れ断面積よりも小さい、請求項1又は2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記第2の閉口絞り弁(82)の前記直径(d2)が、前記第1の閉口絞り弁(81)の前記直径(d1)のせいぜい2分の1の大きさ、好ましくはせいぜい4分の1の大きさである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記第2の閉口絞り弁(82)の前記直径(d2)が、前記第1の閉口絞り弁の前記直径(d1)のせいぜい10分の1の大きさである、請求項1から4までのいずれか一項に記載の燃料噴射ノズル。
【請求項6】
前記制御室(4)と前記中間室(5)との間の前記閉鎖可能な流れ接続部(6)が、第2の弁座(61)を備え、前記作動ピストン(2)の前記端部(21)が、前記第2の弁座(61)と密封協働するように設計される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項7】
前記開口絞り弁(7)が、前記燃料噴射弁の長手軸(A)の方向に流れを通され得るように設計される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項8】
前記開口絞り弁(7)が、前記燃料噴射弁の長手軸(L)に対して直角に流れを通され得るように設計される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項9】
前記開口絞り弁(7)を開口及び閉口させるための電磁作動部材(40)が設けられる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項10】
前記電磁作動部材(40)が、コイル(41)と、針(44)を有する電機子(42)とを備え、前記針(44)が、前記コイル(41)に電気エネルギーが印加されていない限り、前記開口絞り弁(7)を通る通路を閉鎖する、請求項9に記載の燃料噴射弁。
【請求項11】
前記コイル(41)が、前記燃料噴射弁の長手軸(A)と同軸上に配置される、請求項10に記載の燃料噴射弁。
【請求項12】
前記コイル(41)が、前記燃料噴射弁の長手軸(A)に平行に配置される、請求項10に記載の燃料噴射弁。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に従って設計された燃料噴射弁(1)を備えることを特徴とする、大型ディーゼル機関。
【請求項14】
長手方向掃気式2行程大型ディーゼル機関として設計された、請求項13に記載の大型ディーゼル機関。
【請求項15】
液体燃料が燃焼のために前記燃焼室内に導入される液体モードで動作されることが可能であり、ガスが燃料として前記燃焼室内に導入される気体モードでさらに動作されることが可能である複式燃料大型ディーゼル機関として設計された、請求項13又は14に記載の大型ディーゼル機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ディーゼル機関のための燃料噴射弁、及び、それぞれのカテゴリの独立特許請求項のプリアンブルに記載の大型ディーゼル機関に関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向掃気式2行程大型ディーゼル機関などの大型ディーゼル機関は、船舶のための駆動ユニットとして使用されるか、さらには例えば電気エネルギーを生成するための大型発電機を駆動するために定置運転で使用されることが多い。機関は、通常、かなりの期間にわたって連続運転で稼働し、そのことが、動作上の安定性及び稼働率に関して強い要求を突きつける。結果として、特に長い保全間隔、低摩耗性、及び動作材料の経済的な取扱いが、オペレータにとって中心的な基準となる。大型ディーゼル機関は、内径(ボア)が少なくとも200mmであるシリンダを典型的に有する。現在では、960mmまでのボア、さらにはそれより大きなボアを有する大型ディーゼル機関が使用されている。
【0003】
ここ数年間、排気ガスの質もまた、重要性が増すにつれて本質的な側面となってきた。結果として、排出閾値の順守はさらに困難になってきており、技術的により複雑でしたがってより高額になってきているので、又は閾値の順守はもはや有意な方法では不可能であるので、特に2行程大型ディーゼル機関では、汚染物質で強く汚染されている古典的な重油の燃焼だけでなくディーゼル油又は他の燃料の燃焼もまた、より問題になっている。
【0004】
したがって、実際には、最少2種類の異なる燃料で動作され得る機関に対する必要性が長らく存在してきた。それらの燃料は、例えば2種類の異なる液体燃料であるか、又は液体燃料と気体燃料であってもよい。そのような機関は、通常、多種燃料機関と呼ばれ、運転中に1種類の燃料から別の種類の燃料に切り換えられ得る。多種燃料大型ディーゼル機関において選択的に燃焼され得る既知の液体燃料又は気体燃料は、重油に加えて、舶用ディーゼル及びディーゼル、特にメタノール若しくはエタノールなどのアルコール、(液体状態若しくは気体状態の)天然ガス、又は乳濁液若しくは懸濁液を含む。
【0005】
実例として、MSAR(Multiphase Superfine Atomized Residue、多相超微細噴霧残留物)と呼ばれる乳濁液が、ここで言及され得る。これらは基本的に、重炭化水素、例えばビチューメンと、重油又は同種のものと、水との乳濁液であり、それらは特別な工程で作製される。別の実例は、例えば炭塵と水に由来する懸濁液であり、それらもまた大型ディーゼル機関のための燃料として使用される。
【0006】
特殊なタイプの多種燃料機関が、通常「複式燃料機関」と呼ばれる機関であり、これは2種類の異なる燃料で動作され得る。気体モードでは、ガス、例えばLNG(liquefied natural gas、液化天然ガス)などの天然ガスが燃焼され、一方で、液体モードでは、ディーゼル又は重油などの適切な液体燃料が、同じ機関内で燃焼され得る。
【0007】
本出願の枠組み内では、用語「大型ディーゼル機関」はまた、燃料の自己点火を特徴とするディーゼル運転のみならず燃料の火花点火を特徴とするオットー運転で又はそれら2つの混合形式で動作され得る、多種燃料大型機関、複式燃料機関、及びそれらの大型機関を意味する。用語「大型ディーゼル機関」はまた、少なくとも2種類の異なる燃料で選択的に動作され得るそのような大型機関を含み、この場合、異なる燃料のうちの少なくとも1つは、機関をディーゼル運転で動作させるのに適したものである。
【0008】
現代の大型ディーゼル機関は、通常、完全に電子的に制御され、また典型的には、重油又はディーゼル油などの燃料をシリンダに供給するために、燃料のための蓄圧器とともに、燃料噴射のためのコモン・レール・システムを備える。それぞれのシリンダの燃焼室内に燃料を噴射するために、各シリンダに対して少なくとも1つの燃料噴射弁が設けられる。複数の燃料噴射弁、例えば2つ又は3つの燃料噴射弁が、各シリンダに対して設けられることが多い。各燃料噴射弁は、蓄圧器に接続され、且つ、ノズル本体及びノズル・ヘッドを備え、ノズル・ヘッドは、典型的にはシリンダの燃焼室内に突出する。噴霧器とも呼ばれるノズル・ヘッドは、通常、いくつかの噴口を備え、この噴口を通じて、燃料が燃焼室内に噴射される。噴射過程を開始又は終了させるために、移動可能な針弁が燃料噴射弁内に設けられ、この針弁は、噴口への通路が開放又は閉鎖されるように弁座と協働する。噴射過程を開始するために、針弁は、噴射圧力下にある燃料が噴口へ流れることができるように、ばねの力に逆らう行程により弁座から持ち上げられる。噴射過程を終了させるために、針弁は、噴口への通路が閉鎖されるように、弁座と密封接触(sealing contact)させられる。
【0009】
この噴射過程は、例えば電磁制御弁への電流の印加によって電子制御され、電子制御弁への電流の印加は、燃料噴射弁の針弁の対応する行程運動をもたらす。噴射が完了すると、ばねの力及び作動ピストンの力は、針弁を押し返して弁座と密封接触させる。
【0010】
図1は、液体及び自己点火燃料、即ち例えば重油又はディーゼルを大型ディーゼル機関のシリンダの燃焼室内に導入することができる既知の燃料噴射弁を、断面図で示す。
【0011】
本出願の枠組み内では、「~より下に(below)」、「頂部(top)」、「~の下に(underneath)」、「~より上に(above)」などの相対位置の指定は、いずれの場合にも通常の使用位置に言及していると理解されるべきである。
【0012】
図1は、大型ディーゼル機関のための既知の燃料噴射弁1’を概略的な長手方向断面図で示す。具体的には、燃料噴射弁1’は、長手方向掃気式2行程大型ディーゼル機関に適する。当然ながら、燃料噴射弁1’は、他の大型機関、例えば4行程大型ディーゼル機関、又は異なる液体燃料で動作され得る大型機関にも適する。
【0013】
図1は、その通常の使用位置における燃料噴射弁1’を表す。
【0014】
大型ディーゼル機関が、それ自体が知られた態様で複数のシリンダを備え、例えば6個から12個、さらにはそれより多くのシリンダを備える。各シリンダ内にピストンが設けられ、このピストンは、シリンダの滑り面に沿って上死点と下死点との間で前後に移動可能であるように配置され、ピストンの上側は、シリンダ・カバーと一緒に燃焼室50’の境界を定める。例えば重油といった燃料が、燃料噴射弁1’により燃焼室50’内に噴射される。
【0015】
燃料噴射弁1’は、例えばコモン・レール噴射システムとして設計される噴射システムの一部である。噴射システムは、燃焼室50’内に燃料を噴射するために、少なくとも1つの、しかし通常は複数の、例えば2つ又は3つの燃料噴射弁1’を各シリンダに対して備え、それらは通常、シリンダ・カバー内に配置される。
【0016】
噴射システム、ガス交換システム、掃気空気又は給気空気を提供するための排気システム又は過給機システム、並びに大型ディーゼル機関のための監視及び制御システムの詳細などの、大型ディーゼル機関の構造及び個々の構成要素は、当業者には良く知られており、したがって、それ以上の説明はここでは必要としない。
【0017】
今日、現代の大型ディーゼル機関は、完全に電子的に制御され且つ監視される。機関制御ユニット(図示せず)が、例えばガス交換のための出口弁の作動又は燃料のための噴射過程といった大型ディーゼル機関の全ての機能を制御し且つ監視する。種々の機能の制御及び調整は、機関の対応する構成要素を作動させる電気信号又は電子信号によって行われる。さらに、機関制御ユニットは、種々の検出器、センサ、又は測定デバイスから情報を受信する。
【0018】
各シリンダの燃焼室50’に例えば重油といった燃料を供給するコモン・レール噴射システムは、典型的には、アキュムレータとしても知られている蓄圧器(図示せず)を備える。蓄圧器は、高圧下の燃料を収容し、この高圧は、基本的に、それぞれの燃焼室50’内に燃料を噴射する噴射圧力に相当する。蓄圧器は、通常、大型ディーゼル機関の全てのシリンダに沿って延在する管状容器として設計される。1つ又は複数の燃料ポンプが、高圧下で蓄圧器に燃料を供給する。蓄圧器内の燃料の圧力は、例えば700~900バールであり得るが、より高い又はより低い圧力であってもよい。燃料のための槽に接続される増圧ポンプが、燃料を高圧燃料ポンプへ運ぶ。
【0019】
燃料噴射弁1’のそれぞれは、噴射圧下の燃料が蓄圧器から燃料噴射弁1’へ進むことができるように、圧力管を介して蓄圧器に接続される。さらに、例えば機能不良による故意ではない連続噴射を防止するために、各燃料噴射弁1’と蓄圧器との間に流れ制限弁(flow limitation valve)が設けられ得る。
【0020】
図1に概略的に表され且つ先行技術から知られている燃料噴射弁1’及びその動作を、以下によりここで詳細に説明する。
【0021】
燃料噴射弁1’は、燃料噴射弁1’の長手軸によって画定される軸方向A’に延在し、且つ、ノズル本体30’及びノズル・ヘッド31’を備え、ノズル・ヘッド31’は、燃料噴射弁1’の下端部に設けられ、且つ、ノズル本体30’に接続される。ノズル・ヘッド31’は、ノズル本体30’に接続される別個の構成要素として設計され得る。代案として、ノズル・ヘッド31’は、ノズル本体30’の一体部品であってもよい。ノズル・ヘッド31’は、少なくとも1つの噴口32’、典型的には複数の噴口32’を有し、この噴口32’を通じて、シリンダの燃焼室50’内に燃料が導入され得る。燃料噴射弁1’は、例えば、ノズル・ヘッド31’がシリンダの燃焼室50’内に突出するように、シリンダのシリンダ・カバー上に取り付けられる。
【0022】
燃料噴射弁1’は、燃料管10’をさらに有し、燃料管10’は、好ましくはノズル本体30’内のボアとして設計される。燃料管10’は、噴射圧下にある燃料が燃料管10’に入ることができるように、それを用いることにより燃料噴射弁1’が燃料のための蓄圧器(図示せず)に接続される圧力管(図示せず)に接続され得る。
【0023】
燃料管10’は、圧力下にある燃料が燃料管10’を通じて圧力室33’内に導入され得るように、ノズル本体30’内の圧力室33’へ延在する。圧力室33’は、基本的に環状の形状で設計される。
【0024】
燃料噴射弁1’は、針弁3’をさらに備える。針弁3’は、圧力室33’内へ軸方向A’に延在し、且つ、軸方向A’に関して前後に移動可能であるように配置される。
【0025】
針弁3’の下端部は、第1の弁座35’と協働するように設計され、第1の弁座35’は、圧力室33’より下に配置され、且つ、圧力室33’に隣接するか又は圧力室33’の下端部を形成する。針弁3’の下端部は、円錐形又は円錐台形で設計され、第1の弁座35’もまた、針弁3’と弁座35’が密封態様で(in a sealing manner)協働し得るように、円錐形又は円錐台形で設計されることが、好ましい。
【0026】
閉口状態では、針弁3’は、圧力室33’とノズル・ヘッド31’との間の流れ接続が閉鎖されて燃料が圧力室33’からノズル・ヘッド31’に入ることができないように、第1の弁座35’と密封態様で協働する。開口状態では、圧力室33’とノズル・ヘッド31’との間の流れ接続は、燃料が圧力室33’から針弁3’と第1の弁座35’との間でノズル・ヘッド31’に流入し且つ噴口32’へ流れることができるように、軸方向A’における針弁3’の(表されるように、上方への)行程によって開かれる。針弁3’は、ばね34’によりばね荷重をかけられ、それにより、ばね34’は、そのばね力が第1の弁座35’の方向に向けられるように、即ちそのばね力が針弁3’を第1の弁座35’に押し込もうとするように、配置される。
【0027】
作動ピストン2’が、針弁3’を作動させるために、即ち開口状態と閉口状態とを切り換えるために、設けられる。作動ピストン2’は、長手軸A’の方向に延在し、且つ、表されているように、その下端部により、針弁3’に、より正確には第1の弁座35’と反対の側を向いた針弁3’の端部に、作用する。当然ながら、針弁3’及び作動ピストン2’が1つの部品として設計されることが可能である。針弁3’と反対の側を向く作動ピストン2’の端部は、作動ピストン2’を移動させるために使用される制御室4’に受け入れられる。制御室4’内に提供される制御流体-通常、これは圧力下の燃料である-の助けにより、作動ピストン2’は、第1の位置から第2の位置へ、また第2の位置から第1の位置へ移動され得る。作動ピストン2’が第1の位置にある場合、針弁3’は開口状態にあり、作動ピストン2’が(
図1に示されるように)第2の位置にある場合、針弁3’は閉口状態にある。
【0028】
制御室4’は、開口絞り弁(opening throttle)7’を介して環状空間91’に接続され、環状空間91’は、出口9’に接続され、制御流体は、出口9’を通じて低圧側へ、例えば制御流体又は燃料のための貯蔵槽内へ流出することができる。例えば、低圧側には、雰囲気圧、又は雰囲気圧よりも僅かに高い戻り管路圧力が存在する。
【0029】
制御室4’は、高圧下の燃料が燃料管10’から制御室4’内に流れることができるように、閉口絞り弁(closing throttle)8’を介して燃料管10’にさらに流れ接続(flow-connect)される。閉口絞り弁8’は、開口絞り弁7’の直径D’よりも小さい直径d’を有する。
【0030】
さらに、それを用いることにより開口絞り弁7’を通る通路が開放及び閉鎖され得る電磁作動部材40’が設けられる。電磁作動部材40’は、好ましくはモータ制御ユニットによって作動され得る。
図1に表された実施例では、電磁作動部材40’は、コイル41’及び電機子42’を備える。電機子42’は、実質的に棒状の針44’を有して設計され、且つ、針44’が開口絞り弁7’を通る通路をその軸方向端部で解放又は閉鎖することができるように配置される。電機子42’は、コイル41’の無電流状態では、電機子42’が針44’により開口絞り弁7’の口に押し付けられて環状空間91’に押し込まれ、したがって開口絞り弁7’を通る通路を密封態様で閉鎖するように、電機子ばね43’により開口絞り弁7’に対して予め荷重をかけられる。
【0031】
燃料噴射弁1’は、以下の通りに動作する。シリンダの燃焼室50’内への噴射が行われていない限り、電磁作動部材40’のコイル41’は、エネルギーを印加されない。結果として、電機子ばね43’は、制御流体-この場合、圧力下の燃料-が開口絞り弁7’を通って制御室4’から流出することができないように、針44’を有する電機子42’を押して開口絞り弁7’と密封接触させる。制御室4’は閉口絞り弁8’を介して燃料管10’に流れ接続されているので、制御室4’内には高圧が行き渡る。この高圧の値は、具体的には、燃料管10’内の燃料の圧力に依存する。具体的には、作動ピストン2’は、燃料が圧力室33’から燃焼室50’内に流れることができないように、制御室4’内の高圧がばね34’によって及ぼされる力と一緒に針弁3’を第1の弁座35’に密封態様で押し込むのに十分であるように寸法決めされる。開口絞り弁7’及び閉口絞り弁8’は、それらが両方向における針弁3’の移動を最適に制御し且つ針弁3’の開口及び閉口の速度を実質的に決定するように、寸法決めされる。
【0032】
表されているように、噴射過程を開始するために、電磁作動部材40’のコイル41’は、電流を印加されて、電機子ばね43’のばね力に逆らう電機子42’の上方への行程運動を生じさせる。その結果、開口絞り弁7’を通る通路が開放され、それにより、制御流体-この場合、燃料-は、今や制御室4’を出て開口絞り弁7’を通り環状空間91’に流入し、そして環状空間91’から出口9’を通って低圧側へ流れることができる。圧力下の燃料は燃料管10’から閉口絞り弁8’を通って制御室4’に流入することができるが、制御室4’内の圧力は、開口絞り弁7’のより大きな直径D’により、より低い圧力に降下する。開口絞り弁7’は、制御室4’内の低圧の値、したがってばね34’のばね力と合わさった作動ピストンの力が針弁3’を閉口状態に維持するのにもはや十分ではないように、設計される。圧力室33’内に行き渡る圧力により、針弁3’は、開口状態において第1の弁座35’から持ち上げられ、それにより、燃料は、今や圧力室35’からノズル・ヘッド31’に流入し、そしてノズル・ヘッド31’から噴口32’を通って燃焼室50’に流入することができる。その結果、噴射が始まる。
【0033】
噴射を終了させるために、電磁作動部材40’のコイル41’の給電が終了される。その結果、電機子42’は、表されているように、電機子ばね43’のばね力により下方に移動し、したがって、針44’は、それ以上の燃料が開口絞り弁7’を通って出口9’へ流出することができないように、開口絞り弁7’を通る通路を閉鎖する。閉口絞り弁8’は依然として開口しているので、高圧下の燃料は、引き続き燃料管10’から閉口絞り弁8’を通って制御室4’に流入し、それにより、制御室4’の圧力は、高圧の値まで再び上昇する。その結果、針弁3’は、作動ピストン2’に加わる動水力及びばね34’の力により、第1の弁座35’に密封態様で押し込まれ、噴射過程が終了される。
【0034】
大型ディーゼル機関のためのそのような燃料噴射弁1’は、実際に有能であることを示したが、依然として改良の余地がある。
【0035】
問題のうちの1つは、燃料噴射弁1’の構成要素の高い摩耗性である。噴射過程中、燃料管10’内の高圧から出口9’における低圧への全圧力降下が閉口絞り弁8’及び開口絞り弁7’を介して行われるように、閉口絞り弁8’は持続的に開かれ、開口絞り弁7’もまた開かれる。開口絞り弁7’及び閉口絞り弁8’は、燃料噴射弁1’の機能のために、互いに最適比にある。これは、特に閉口絞り弁8’を通じて、しかし開口絞り弁7’も通じて、極めて高い流速をもたらす。燃料噴射弁1’の開口又は閉口挙動のために最適比にある閉口絞り弁8’の比較的大きな直径d’により、開口絞り弁7’を通過する燃料の流速は非常に高く、それにより摩耗の増大がもたらされ、このことはまた、開口絞り弁8’の出口と電磁作動デバイス40’の電機子42’の針44’の先端との間の領域において特に明白である。この領域は密封領域を表すので、これは特に重大な意味を持つ。
【0036】
具体的には、燃料が流れる燃料噴射弁1’の構成要素での摩耗は、ほんの数例を挙げると、それらの構成要素を通過する燃料の流速、並びに流下時間-即ち、噴射の持続時間、流れる燃料の質量、及び燃料中に存在する粒子に依存する。この摩耗は、具体的には摩滅又は浸食によってもたらされる。
【0037】
具体的には、開口絞り弁7’上及び開口絞り弁7’内での摩耗、並びに開口絞り弁7’と協働する電機子42’の針44’の端部での摩耗もまた、噴射の始まり、噴射の持続時間、及び噴射の終わりがずれる可能性があるという事実につながる場合があり、それにより機関制御ユニットによって予め定められた噴射の開始及び終了タイミング、したがって噴射の持続時間は、摩耗のせいでもはや実際の値に一致しないので、大型機関の経済的且つ効率的な運転及び熱力学は、少なくとも危うくされる。さらに、開口絞り弁7’がもはや密封態様で閉口され得ないということが起こり得る。このことは、噴射が行われていないときの望ましくない漏れをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明は、この問題に捧げられる。
【0039】
したがって、この先行技術を発端とすると、本発明の目的は、摩耗が著しく減少した大型ディーゼル機関のための燃料噴射弁を提案することである。さらに、本発明の目的は、対応するディーゼル機関を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
この目的に適う本発明の主題は、それぞれの分類区分の独立請求項の特徴によって特徴付けられる。
【0041】
したがって、本発明によれば、それを通じて燃料が燃焼室内に導入され得る少なくとも1つの噴口を有するノズル・ヘッドと、それを通じて燃料が高圧下で圧力室内に導入され得る燃料管と、ばねにより荷重をかけられる針弁と、針弁の開口状態では圧力室とノズル・ヘッドとの間の流れ接続が開放され、また閉口状態では圧力室とノズル・ヘッドとの間の流れ接続が閉鎖されるように針弁が第1の弁座と密封態様で協働するように、針弁と協働するように設計された、第1の弁座と、行程運動により針弁を開口状態から閉口状態に移動させるように設計された、移動可能な作動ピストンと、作動ピストンを針弁が開口状態にある第1の位置から針弁が閉口状態にある第2の位置へ移動させるための制御室と、を備える、大型ディーゼル機関のための燃料噴射弁であって、制御室が、作動ピストンの一方の端部を受け入れ、閉鎖可能な流れ接続部を介して制御室に接続され得る中間室が設けられ、作動ピストンの端部が、作動ピストンが第1の位置にあるときに制御室と中間室との間の流れ接続部を閉鎖する閉鎖体として設計され、閉鎖可能な開口絞り弁が設けられ、閉鎖可能な開口絞り弁を用いることにより、中間室が燃料のための出口に接続され得、制御室を燃料管に接続する第1の閉口絞り弁が設けられ、中間室を燃料管に接続する第2の閉口絞り弁が設けられ、第2の閉口絞り弁の直径が第1の閉口絞り弁の直径よりも小さい、燃料噴射弁が提案される。
【0042】
異なる直径の2つの閉口絞り弁を含む本発明による実施例は、摩耗の著しい減少をもたらし、したがって、燃料噴射弁の最適な不変の機能とともに、非常に長い動作寿命をもたらす。噴射過程中、第1の閉口絞り弁、即ちより大きな直径を有する閉口絞り弁は、例えば燃料である高加圧制御液体が第2の閉口絞り弁及び中間室を介してのみ流出することができるように、閉鎖され得る。
【0043】
第2の閉口絞り弁は第1の閉口絞り弁よりも小さな直径を有するので、第2の閉口絞り弁を介した圧力降下は著しく大きくなり、これは、2つの有益な影響を有する。一方では、制御流体の流速は、第2の閉口絞り弁の小さな直径に起因して-より大きな直径を有する絞り弁の下流の速度と比較すると-第2の閉口絞り弁の下流でかなり大幅に減少される。結果として、制御流体は、非常に低い速度で中間室を通って流出し、それにより、開口絞り弁及び閉口絞り弁、又は電磁作動部材の電機子の針などの、その中又はその周りを流体が流れる構成要素での摩耗が、著しく減少することになる。燃料又は制御流体の流速の減少は、一般に、摩耗の減少をもたらす。他方では、噴射過程中に出口を通って流出する燃料の量もまた、第2の閉口絞り弁のより小さな直径により、かなり大幅に減少され、それにより、機関のエネルギー効率は大幅に改善される。使用されずに低圧側へ流れる高加圧燃料が少なくなるほど、エネルギー収支はより良くなる。
【0044】
既知の燃料噴射弁の場合、特に部分負荷運転又は低負荷では、高圧から低圧に放出される未使用燃料流出の割合は、噴射量の30%~40%になる場合があり、これは当然ながら、エネルギー上の理由から、満足できるものではない。この点で、本発明による燃料噴射弁は、非常に重要な利点を提供する。
【0045】
第2の閉口絞り弁が第1の閉口絞り弁よりも小さな直径を有する、第1の閉口絞り弁及び第2の閉口絞り弁を含む本発明による実施例によれば、出口を通って流出する燃料の量及び速度の両方が、噴射過程中に著しく減少され得る。これは、摩耗の相当な減少、及び、時間の観点から噴射過程の著しくより長い安定性をもたらし、したがって延長された動作寿命をもたらす。
【0046】
好ましい実施例によれば、作動ピストンは、第1の位置にあるときに第1の閉口絞り弁を完全に閉鎖する。このようにして、燃料は、第2の閉口絞り弁を介してのみ出口へ流れることができる。
【0047】
さらに、第1の閉口絞り弁の直径による流れ断面積と第2の閉口絞り弁の直径による流れ断面積の合計が開口絞り弁の直径による流れ断面積よりも小さい実施例が、好ましい。
【0048】
第2の閉口絞り弁の直径は、第1の閉口絞り弁の直径のせいぜい2分の1の大きさであることが好ましく、また好ましくはせいぜい4分の1の大きさである。閉口絞り弁の直径は、流体が閉口絞り弁を通って流れるのに利用可能な開口絞り弁の流れ断面又は流れ断面積を決定する寸法を意味する。
【0049】
第2の閉口絞り弁の直径は、第1の閉口絞り弁の直径のせいぜい10分の1の大きさであることが、特に好ましい。
【0050】
好ましい実施例では、制御室と中間室との間の閉鎖可能な流れ接続部は、第2の弁座を備え、作動ピストンの端部は、第2の弁座と密封協働(sealing cooperation)するように設計される。
【0051】
好ましい実施例によれば、開口絞り弁は、燃料噴射弁の長手軸の方向に流れを通され得るように設計される。
【0052】
別の好ましい実施例によれば、開口絞り弁は、燃料噴射弁の長手軸に対して直角に流れを通され得るように設計される。
【0053】
開口絞り弁を開口及び閉口させるための電磁作動部材が設けられることが、好ましい。
【0054】
電磁作動部材は、コイル、及び針を含む電機子を備えることが好ましく、電機子に組み込まれるか又は結合していない針は、コイルに電気エネルギーが印加されていない限り、開口絞り弁を通る通路を閉鎖する。
【0055】
好ましい実施例では、コイルは、燃料噴射弁の長手軸と同軸上に配置される。
【0056】
別の好ましい実施例では、コイルは、燃料噴射弁の長手軸に平行に配置される。
【0057】
当然ながら、コイルが燃料噴射弁の長手軸に対して異なる配向を有するような実施例も、可能である。例えば、コイルの軸は、長手軸とともに鋭角若しくは鈍角を形成するか、又は、何らかの他の任意の配向を有することができる。
【0058】
さらに、本発明に従って設計された燃料噴射弁を備える大型ディーゼル機関が、本発明によって提案される。
【0059】
大型ディーゼル機関は、長手方向掃気式2工程大型ディーゼル機関として設計されることが好ましい。
【0060】
具体的には、大型ディーゼル機関はまた、少なくとも2種類の異なる燃料で動作され得る多種燃料機関として設計され得る。
【0061】
特に、大型ディーゼル機関は、液体燃料が燃焼のために燃焼室内に導入される液体モードで動作されることが可能であり、またガスが燃料として燃焼室内に導入される気体モードでさらに動作されることが可能である複式燃料大型ディーゼル機関として設計され得る。
【0062】
大型ディーゼル機関は、動作中、液体モードから気体モードに、また気体モードから液体モードに切り替えられ得る。
【0063】
本発明のさらなる有利な方策及び実施例は、従属請求項から生じる。
【0064】
以下において、実施例に基づいて、及び、図面に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】先行技術から知られている燃料噴射弁の概略的な長手方向断面図である。
【
図2】本発明による燃料噴射弁の第1の実施例の概略的な長手方向断面図である。
【
図3】本発明による燃料噴射弁の第2の実施例の概略的な長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、それを用いることにより液体及び自己点火燃料、即ち例えば重油又はディーゼルが大型ディーゼル機関のシリンダの燃焼室50’内に導入され得る既知の燃料噴射弁1’を、概略的な断面図で示す。
【0067】
図1は先行技術としてすでに詳細に説明されたので、さらなる説明は、
図1には必要とされない。先行技術と本発明の実施例とをより良く区別するために、先行技術に属する構成要素に対しては、逆コンマ付きの参照記号が使用される。本発明による実施例の構成要素のうちの幾つかは、先行技術におけるのと同一の態様で又は類似した態様(analogously same manner)で設計され得る。
図1では、そのような構成要素には、逆コンマの付いた参照記号及び逆コンマの付かない同じ参照記号の両方が与えられている。本発明による実施例の以下の説明では、先行技術との違いのみが、より詳しく論じられる。
図1に対する他の説明は、本発明による実施例にも同じ態様で又は類似した態様で当てはまる。
【0068】
図2は、全体として参照記号1によって表された、本発明による燃料噴射弁の第1の実施例の概略的な長手方向断面図を示す。燃料噴射弁1の長手軸Aは、参照記号Aによって表される。
【0069】
燃料噴射弁1は、それ自体が知られた態様でノズル・ヘッド31(
図1)を備え、ノズル・ヘッド31は、少なくとも1つの噴口32、しかし好ましくは複数の噴口32を有し、この噴口32を通じて、より詳細には示されていない大型ディーゼル機関のシリンダの燃焼室50内に液体燃料が導入され得る。燃料は、例えば重油又はディーゼル油である。
【0070】
燃料噴射弁1は、燃料管10を備え、この燃料管10を通じて、燃料が高圧下で圧力室33内に導入され得る。燃料管10は、燃料が高圧下で提供されるコモン・レール・システムの蓄圧器に接続されることが好ましい。燃料噴射弁1は、長手軸の方向に延在する針弁3をさらに備え、この針弁3は、ノズル本体30内に配置される。表されているように、針弁3の下方端部は、圧力室33の直下に配置された第1の弁座35(
図1)と協働するように設計される。針弁3は、ばね34によってばね荷重をかけられ、このばね34は、表されているように(
図2)、ばね力が針弁3を第1の弁座35に押し付けようとするように、下向きの力を針弁3に働かせる。針弁3の開口状態では、針弁3は、圧力室33とノズル・ヘッド31との間の流れ接続が開放されるように、弁座35から持ち上げられる。閉口状態では、針弁3は、圧力室33とノズル・ヘッド31との間の流れ接続が閉鎖されるように、第1の弁座35に押し付けられて、第1の弁座35と密封態様で協働する。
【0071】
作動ピストン2が、針弁3を作動させるために設けられ、この作動ピストン2は、表されているように、ノズル本体3の上方端面上に配置され、且つ、一方の端部21まで長手軸Aの方向に延在する。作動ピストン2は、針弁3と一体部品として設計されるか、又は、別個の構成要素として設計されてもよい。作動ピストン2は、長手軸Aの方向における行程運動により針弁3を開口状態から閉口状態へ又は閉口状態から開口状態へ移動させるように設計される。作動ピストン2の運動を生じさせるために、作動ピストン2の端部21を受け入れる円筒形の制御室4が設けられる。制御室の内径は、作動ピストン2の外径Kに実質的に一致するか又はこの外径Kよりもわずかに大きいように寸法決めされる。制御室4によって受け入れられる作動ピストン2の端部21は、閉鎖体21として設計され且つ作動ピストン2の残りの部分よりも小さな直径を有することが好ましい。閉鎖体21として設計される作動ピストン2の端部は、第2の弁座61との密封協働のために設計された円錐形又は円錐台形又は球形の部分を備える。
【0072】
制御室4のおかげで、作動ピストン2は、針弁3が開口状態にある第1の位置から針弁3が閉口状態にある第2の位置へ移動され得る。作動ピストン2はまた、制御室4により、第2の位置から第1の位置へ移動され得る。
【0073】
表されているように、閉鎖可能な流れ接続部6を介して制御室4に接続され得る中間室5が、制御室4の上方に設けられる。流れ接続部6は、閉鎖体21として設計された作動ピストン2の端部と密封協働するように設計された第2の弁座61を備える。作動ピストン2が第1の位置にあるときに、閉鎖体21は、密封態様で第2の弁座61内に位置し、制御室4と中間室5との間の流れ接続部6は、閉鎖される。作動ピストン2が第2の位置にあるときに、閉鎖体21は、第2の弁座61から持ち上げられ、中間室5と制御室4との間の流れ接続部6は、開放される。
図2は、第2の位置にある作動ピストン2を示す。
【0074】
中間室5は、閉鎖可能な開口絞り弁7を介して環状空間91に接続され、環状空間91からは、出口9が低圧側につながっている。低圧側は、例えば槽又は収集容器を備えることができ、それらの中には、例えば雰囲気圧又は戻り管路圧力が存在し、戻り管路圧力は、雰囲気圧よりも高い。第1の実施例では、開口絞り弁7は、長手軸Aの方向に流れを通されるように、長手軸Aの方向に延在する。開口絞り弁は、直径Dを有する。
【0075】
絞り弁に関連して直径が述べられるときはいつでも、これは、本出願の枠組みにおいて、流体が絞り弁を通って流れるのに利用することができる絞り弁の流れ断面又は流れ断面積を決定するそれぞれの絞り弁の寸法を意味する。
【0076】
燃料噴射弁1は、2つの閉口絞り弁81及び82、即ち、それぞれ、制御室4を燃料管10に接続する第1の閉口絞り弁81、及び、中間室5を燃料管10に接続する第2の閉口絞り弁82をさらに備える。第1の閉口絞り弁81は、d1によって示された直径を有し、第2の閉口絞り弁82は、d2によって示された直径を有する。第2の閉口絞り弁82の直径d2は、第1の閉口絞り弁81の直径よりも小さい。閉口絞り弁81及び82は、それぞれ、制御室4及び中間室5それぞれの外殻表面に各々開口している。
【0077】
開口絞り弁7を開口及び閉口させるために、コイル41と、実質的に棒状の針44を含む電機子42とを備える電磁作動部材40が設けられ、電機子42及び針44は、両方とも一体に形成されてもよいし、結合していない別個の部品で構成されてもよい。針44は、長手軸Aの方向に延在する。ここで、コイル41は、長手軸Aと同軸上に配置される。電機子42は、針44を環状空間91内へ延在させ、且つ、コイル41に電気エネルギーが印加されていないときに中間室5から開口絞り弁7を経て環状空間91内に至る通路を針44が閉鎖するように設計される。電機子42は、電機子ばね43によってばね荷重をかけられ、電機子ばね43は、コイル41に電流が印加されていない限り、針44を有する電機子42を環状空間91に押し込んで開口絞り弁7の口に押し付ける。
【0078】
本発明によれば、第2の閉口絞り弁82の直径d2は、第1の閉口絞り弁81の直径d1よりも小さい。第2の閉口絞り弁82の直径d2は、第1の閉口絞り弁81の直径d1よりも相当に小さい、例えば、せいぜい5分の1の大きさ、又はせいぜい10分の1の大きさであることが好ましい。
【0079】
さらに、第1の閉口絞り弁81の直径d1及び第2の閉口絞り弁の直径d2の両方が、開口絞り弁7の直径Dよりもそれぞれ小さいことが好ましい。直径d1及びd2は、第1の閉口絞り弁81の直径d1による流れ断面積と第2の閉口絞り弁82の直径d2による流れ断面積との合計が開口絞り弁7の直径Dによる流れ断面積よりも小さいように寸法決めされることが、特に好ましい。つまり、d12+d22<D2である。
【0080】
図2は、その第2の位置、つまり針弁3が閉口状態にある位置における作動ピストン2を示す。ここで噴射過程が開始される場合、コイル41は電流を印加され、それにより電機子42は電機子ばね43の力に逆らってコイル41に引き付けられる。その結果、開口絞り弁7を通る通路が開放され、高圧下の燃料は、開口絞り弁7及び環状空間91を介して出口9内へと流出する。中間室5、及びこの状態では中間室5に流れ接続される制御室4における圧力降下に起因して、燃料により圧力室33(
図1)内でもたらされる押し上げ力は、ばね34のばね力と動水力の合計を上回り、その結果、針弁3は第1の弁座35から持ち上げられ、燃焼室内への噴射が始まる。
【0081】
この上方向移動により、作動ピストン2もまた、表されているように、その第2の位置まで上方に移動し、この第2の位置では、作動ピストン2の閉鎖体21は第2の弁座61と密封態様で協働し、その結果、制御室4と中間室5との間の流れ接続部が閉鎖される。結果として、燃料はそれ以上第1の閉口絞り弁81を通って流れることができない。
【0082】
針弁3の開口状態では-即ち、噴射過程中-高圧下の燃料は、第2の閉口絞り弁82を介してのみ出口9へ流れ出ることができるが、第1の閉口絞り弁81を介して流れ出ることは、もはやできない。第2の閉口絞り弁82は第1の閉口絞り弁81の直径d1よりも著しく小さな直径d2を有するので、一方では出口9に向かって流れる燃料の速度が、また他方では出口に向かって流れる燃料の量が、既知の燃料噴射弁と比較して大幅に減少される。
【0083】
噴射過程を終了させるために、コイル41を通過する電流がオフにされ、それにより、電機子42は電機子ばね43によって押されて、針44は環状空間91に押し込まれて開口絞り弁7の口に押し付けられ、したがって、開口絞り弁7を通る通路を閉鎖する。結果として、開いた第2の閉口絞り弁82により、より高い圧力が最初に中間室5内で生じ、それにより、作動ピストン2、及びしたがって針弁3は、表されているように、下方に移動する。この移動が始まるとすぐに、第1の閉口絞り弁81を通る通路も開放され、それにより、両方の閉口絞り弁81、82は、今や噴射過程を終了させるために流れを通すことができ、高速且つ正確な閉口過程がもたらされる。これは、作動ピストン2がその第2の位置に戻ったときに完了する。
【0084】
図3は、本発明による燃料噴射弁1の第2の実施例を、
図2に類似した描写で示す。第2の実施例の以下の説明では、第1の実施例との違いのみが、より詳しく論じられる。その他の点では、第1の実施例の実例に関する説明は、第2の実施例の実例にも同じ形で又は類似した形(analogously same way)で当てはまる。第2の実施例では、同一の部品又は機能において同等の部品は、第1の実施例におけるのと同じ参照記号で示される。
【0085】
第2の実施例では、環状空間91は、中間室5に横方向に隣接して、また好ましくは中間室5と同じ高さに配置される。したがって、第2の実施例では、中間室5と環状空間91との間に配置された開口絞り弁7は、長手軸Aに対して直角に流れを通されるように、長手軸Aの方向に延在する。
【0086】
第2の実施例では、コイル41と、針44を有する電機子42とを備える電磁作動部材40も設けられる。コイル41は、長手軸Aに平行に配置される。電機子42は、針44を環状空間91内へ延在させ、且つ、コイル41に電気エネルギーが印加されていない限り中間室5から開口絞り弁7を経て環状空間91内に至る通路を閉鎖するように設計される。
【0087】
3つ以上の閉口絞り弁81、82が設けられる本発明による燃料噴射弁のそのような実施例も、類似した態様で可能であることが、理解される。
【外国語明細書】