IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 明志科技大學の特許一覧

特開2022-29430複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池
<>
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図1
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図2
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図3
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図4
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図5
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図6
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図7
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図8
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図9
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図10
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図11
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図12
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図13
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図14
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図15
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図16
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図17
  • 特開-複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029430
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20220209BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220209BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220209BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20220209BHJP
   H01B 1/06 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
H01M10/0562
H01M10/058
C01G25/00
H01B1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118546
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】109126389
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521318952
【氏名又は名称】明志科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】楊純誠
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼宜萱
(72)【発明者】
【氏名】クムラーチェフ ゼラレム ワレ
【テーマコード(参考)】
4G048
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA06
4G048AB02
4G048AC04
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE06
4G048AE07
5G301CA02
5G301CA16
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM11
5H029CJ02
5H029CJ04
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029HJ14
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】イオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料の製造方法は、連続テイラーフロー反応器を使用し、共沈法によりLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体を製造することを含む。自立式二層及び三層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法は、全固体リチウムイオン導電材料をポリマー基材に加え、ブレードコーティング法により塗布して生成する。
【効果】全固体リチウム電池は、リチウムイオンの導電率を高め、固体電解質膜と電極間の界面インピーダンスを低下させ、電池に優れた性能を持たせることができるほか、針状のリチウム樹枝状結晶の形成抑制にも効果があり、使用時の安全性を高めることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)と工程(2)とを含み、
工程(1)は、イオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料を製造する工程であって、
(1-a)LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体、リチウム源としてのリチウム塩及びイオンドーピング源を混ぜ合わせて混合物を形成し、メタノール溶媒が入ったボールミル缶において、ボールミルを用いて研磨混合させて混合溶液を形成し、研磨完了後、研磨ボールをボールミル缶から取り出し、ボールミル缶をオーブンに入れて乾燥させ、メタノール溶媒を取り除いて粉末を形成し、
前記LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法には以下の工程が含まれ、
(a) それぞれランタン源、ジルコニウム源、及びガリウム源である金属塩粉末を、脱イオン水に溶解して金属塩溶液aを形成する工程であって、前記金属塩粉末は相応するモル量組成により合成時に変化の調整が可能であり、
(b) 水酸化ナトリウム沈殿剤溶液と、キレート剤としての水酸化アンモニウムと、前記工程(a)から得られた金属塩溶液aとを連続テイラーフロー反応器の反応チャンバーへ同時に加え、pH値コントロールシステムにより反応チャンバー内のpH値を維持し、共沈法により連続生産を行う工程であって、前記沈殿剤及びキレート剤の用量は異なる水酸化物前駆体のモル量組成により適宜調整可能であり、
(c) 反応完了後、前記工程(b)から得られた沈殿物をろ過し、エタノールと脱イオン水で数回洗浄して残ったイオンを取り除く工程、
(d) 前記工程(c)から得られたろ過洗浄後の沈殿物をオーブンに入れ乾燥させ、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体を得る工程、
(1-b)前記工程(1-a)から得られた乾燥後の粉末を空気又は純酸素雰囲気の高温炉でか焼処理し、全固体リチウムイオン導電材料の粉末を取得し、
前記工程(1-a)のイオンドーピングは、シングルイオンドーピング、デュアルイオンドーピング、及びマルチイオンドーピングからなる群より選ばれる少なくとも1種のドーピング方式であって、
前記工程(1-a)のイオンドーピング源は、フッ素イオン、ガリウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、タンタルイオン、ストロンチウムイオン、スカンジウムイオン、バリウムイオン、イットリウムイオン、タングステンイオン、ニオブイオン、ガドリニウムイオン、及びシリコンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
工程(2)は、自立式二層有機/無機複合固体電解質膜を製造する工程であって、
(2-a)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及び前記工程(1)で製造された全固体リチウムイオン導電材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させた後、前記混合溶液Aをガラス基板上に塗布し、室温の下、それを真空オーブンに入れ乾燥させて、一部のN,N-ジメチルホルムアミド溶媒を取り除き、第1層膜を形成し、
(2-b)前記工程(2-a)に基づき、リチウム塩とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率、及び前記全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率を下げて溶液Bを製造し、次に前記溶液Bを前記工程(2-a)で得られた第1層膜上に塗布して第2層膜を形成し、二層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れて乾燥させ、残った溶媒を取り除いて製造した膜を円形に裁断し、
リチウム塩とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率は前記工程(2-a)で添加した際の33.3%~100%に調整し、前記全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率は前記工程(2-a)で添加した際の25%~150%に調整する、
ことを特徴とする自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項2】
下記の工程(1)と工程(2)とを含み、
工程(1)は、イオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料を製造する工程であって、
(1-a)LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体、リチウム源としてのリチウム塩及びイオンドーピング源を混ぜ合わせて混合物を形成し、メタノール溶媒が入ったボールミル缶において、ボールミルを用いて研磨混合させて混合溶液を形成し、研磨完了後、研磨ボールをボールミル缶から取り出し、ボールミル缶をオーブンに入れて乾燥させ、メタノール溶媒を取り除いて粉末を形成し、
前記LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法には以下の工程が含まれ、
(a) それぞれランタン源、ジルコニウム源、及びガリウム源である金属塩粉末を、脱イオン水に溶解して金属塩溶液aを形成する工程であって、前記金属塩粉末は相応するモル量組成により合成時に変化の調整が可能であり、
(b) 水酸化ナトリウム沈殿剤溶液と、キレート剤としての水酸化アンモニウムと、前記工程(a)から得られた金属塩溶液aとを連続テイラーフロー反応器の反応チャンバーへ同時に加え、pH値コントロールシステムにより反応チャンバー内のpH値を維持し、共沈法により連続生産を行う工程であって、前記沈殿剤及びキレート剤の用量は異なる水酸化物前駆体のモル量組成により適宜調整可能であり、
(c) 反応完了後、前記工程(b)から得られた沈殿物をろ過し、エタノールと脱イオン水で数回洗浄して残ったイオンを取り除く工程、
(d) 前記工程(c)から得られたろ過洗浄後の沈殿物をオーブンに入れ乾燥させ、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体を得る工程、
(1-b)前記工程(1-a)から得られた乾燥後の粉末を空気又は純酸素雰囲気の高温炉でか焼し、全固体リチウムイオン導電材料の粉末を取得し、
前記工程(1-a)のイオンドーピングは、シングルイオンドーピング、デュアルイオンドーピング、及びマルチイオンドーピングからなる群より選ばれる少なくとも1種のドーピング方式であって、
前記工程(1-a)のイオンドーピング源は、フッ素イオン、ガリウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、タンタルイオン、ストロンチウムイオン、スカンジウムイオン、バリウムイオン、イットリウムイオン、タングステンイオン、ニオブイオン、ガドリニウムイオン、及びシリコンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
工程(2)は、自立式三層有機/無機複合固体電解質膜を製造する工程であって、
(2-a)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及びコーティング材料でコーティングされたカーボンベース材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させた後、前記混合溶液Aをガラス基板上に塗布し、それを真空オーブンに入れ乾燥させて一部の溶媒を取り除き、第1層膜を形成し、
前記工程(2-a)で使用するカーボンベース材料は多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェン、及び多孔質炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
(2-b)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及び前記工程(1)で製造されコーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させて溶液Bを製造し、次に前記溶液Bを前記工程(2-a)で得られた第1層膜上に塗布して第2層膜を形成し、
前記工程(2-a)及び(2-b)で使用するコーティング材料はLi-Nafion、LiPSS、LiF、Li-PAA、LiMoO、LiSiO、及び多孔質炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
(2-c)前記工程(2-b)に基づき、コーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率を下げて溶液Cを製造し、次に前記溶液Cを前記第2層膜上に塗布し、三層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れて乾燥させ、残った溶媒を取り除いて製造した膜を円形に裁断し、
前記コーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率は前記工程(2-b)で添加した際の25%~150%に調整する、
ことを特徴とする自立式三層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)のランタン源は硫酸水素ランタン、シュウ酸ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、塩化ランタン、フッ化ランタン、及び水酸化ランタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)のジルコニウム源はオキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)のガリウム源はシュウ酸ガリウム、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、水酸化ガリウム、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、リン酸ガリウム、及び酸化ガリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)における金属塩溶液aの濃度は1.0~2.5Mである、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)におけるキレート剤としての水酸化アンモニウムの濃度は2.0~8.0Mとし、
前記連続テイラーフロー反応器の反応チャンバー内のpH値は10~12に制御し、
前記連続テイラーフロー反応器の回転速度は500~1500rpmに設定し、
前記連続テイラーフロー反応器の反応時間は8~20時間とする、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項8】
前記工程(d)の乾燥条件は、50℃~100℃で10~30時間乾燥させるものとする、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項9】
工程(1-a)のリチウム源は水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸リチウム、及び炭酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、
前記工程(1-a)のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体とリチウム塩のモル比は1:5.95~6.10であって、
イオンドーピング源としてフッ化リチウムを使用し、且つモル量比は0.05~0.3であって、
前記工程(1-a)で利用するボールミルの研磨混合における回転速度は100~650rpm、時間は10分~2時間とし、酸化ジルコニウムボール(ZrO)、硬化スチール、ステンレススチール、炭化タングステン、メノウ、焼結酸化アルミニウム、及び窒化ケイ素ボールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて研磨混合を行い、
前記工程(1-a)の混合物とボールの重量比は1:1~20である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1-b)のか焼処理条件について、第1段階では150℃で1時間維持し、第2段階では300~400℃で3時間維持し、第3段階では400~600℃で1時間維持し、第4段階では500~800℃で4時間維持し、第5段階では800~1000℃で1~5時間維持し、前記五つの段階における昇温速度は1~10℃min-1である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項11】
前記工程(2-a)のリチウム塩はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート、及び四フッ化ホウ酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、
前記工程(2-a)の可塑剤はスクシノニトリル、アジポニトリル、アジ化リチウム、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、及び1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項12】
前記工程(2-a)及び(2-b)でそれぞれ行われる材料表面のコーティング処理におけるコーティング量は0.1~3.0wt.%である、
請求項2に記載の自立式三層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項13】
活性材料、導電剤及びバインダーを含む組成物を集電層に塗布し正極を生成する工程、
リチウム金属箔を負極とする工程、
請求項1又は2に記載の複合固体電解質膜の製造方法により製造された複合固体電解質膜を前記正極と前記負極との間に設置し、同時に隔離膜及び電解質として使用する工程、
を含むことを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法、前記前駆体を使用したイオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料の製造方法、及び前記全固体リチウムイオン導電材料を使用した自立式(Free standing)二層及び三層有機/無機複合固体電解質(Hybrid solid electrolyte、以下略称はHSE)膜の製造方法、並びに前記複合固体電解質膜を応用した全固体リチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は開回路電圧が高い、エネルギー密度が高い、充放電速度が速い、充放電循環寿命が長い、自己放電率が低い、軽量といった特性を具えていることから、消費性電子製品や交通施設などの蓄電及び給電設備でよく用いられている。しかし、その揮発性及び易燃性の液体電解質はリチウムイオン電池の安全性に極めて大きな影響を与え、充放電循環を何度も繰り返すと、過熱、燃焼ひいては爆発の恐れがあるほか、針状のリチウム樹枝状結晶が形成されやすくなり、電池内部の短絡などの問題が生じる。
【0003】
固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池は、電解液の漏れや燃焼、爆発といった安全性の問題を効果的に防止できるが、リチウム樹枝状結晶の形成、固体電解質膜と電極間の接触不良による界面インピーダンスの上昇、室温/常温(25℃)でのリチウムイオン導電率が一般的に低い(約10-7S cm-1)などの問題が存在し、電池全体の性能性に影響を与える。
【0004】
したがって、現行技術のリチウム電池に対し、いかにして針状のリチウム樹枝状結晶の形成を防ぎ、リチウムイオンの導電率を高め、固体電解質膜と電極間の界面インピーダンスを低下させ、電池に優れた性能性を持たせるかについては、未だ改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許出願公開第202014382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現行技術のリチウム電池では、針状のリチウム樹枝状結晶が形成される、リチウムイオン導電率が一般的に低い、固体電解質膜と電極の接触不良により界面インピーダンスが高くなるなどの問題が存在し、その電気特性の表現に制限をかけている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このことから、本発明人は前記問題を解決するために研究を重ね、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法、イオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料の製造方法、及び前記全固体リチウムイオン導電材料を使用し生成する自立式二層及び三層有機/無機(セラミック入りのポリマー)複合固体電解質膜の製造方法を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、第1態様として、本発明はLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、以下の工程が含まれる。
(a)それぞれランタン源、ジルコニウム源、及びガリウム源である金属塩粉末を、脱イオン水に溶解して金属塩溶液aを形成する工程であって、前記金属塩粉末は相応するモル量組成により合成時に変化の調整が可能であり、
(b)水酸化ナトリウム沈殿剤溶液と、キレート剤としての水酸化アンモニウムと、前記工程(a)から得られた金属塩溶液aとを連続テイラーフロー反応器(Taylor flow reactor、以下略称はTFR)の反応チャンバーへ同時に加え、pH値コントロールシステムにより反応チャンバー内のpH値を維持し、共沈法により連続生産を行う工程であって、前記沈殿剤及びキレート剤の用量は異なる水酸化物前駆体のモル量組成により適宜調整可能であり、
(c)反応完了後、前記工程(b)から得られた沈殿物をろ過し、エタノールと脱イオン水で数回洗浄して残ったイオン(Na、NO3-及びその他イオン)を取り除く工程、
(d)前記工程(c)から得られたろ過洗浄後の沈殿物をオーブンに入れ乾燥させ、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体粉末を得る工程。
【0009】
第2態様として、本発明はイオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料の製造方法に関し、以下の工程が含まれる。
(a)第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体、リチウム源としてのリチウム塩及びイオンドーピング源を混ぜ合わせて混合物を形成し、メタノール溶媒が入ったボールミル缶において、ボールミルを用いて研磨混合させて混合溶液を形成し、研磨完了後、研磨ボールをボールミル缶から取り出し、ボールミル缶をオーブンに入れて乾燥させ、メタノール溶媒を取り除いて粉末を形成する工程、
(b)前記工程(a)から得られた前記乾燥後の粉末を空気又は純酸素雰囲気の高温炉でか焼(calcination)処理し、全固体リチウムイオン導電材料の粉末を取得する工程であって、
前記工程(a)のイオンドーピングは、シングルイオンドーピング、デュアルイオンドーピング、及びマルチイオンドーピングからなる群より選ばれる少なくとも1種のドーピング方式であり、
前記工程(a)のイオンドーピング源は、フッ素イオン、ガリウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、タンタルイオン、ストロンチウムイオン、スカンジウムイオン、バリウムイオン、イットリウムイオン、タングステンイオン、ニオブイオン、ガドリニウムイオン、及びシリコンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0010】
第3態様として、本発明は自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法に関し、以下の工程が含まれる。
(a)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル(PAN)、可塑剤及び第2様態に記載のイオンがドーピングされた全固体リチウムイオン導電材料の製造方法から製造された全固体リチウムイオン導電材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させた後、前記混合溶液Aをガラス基板上に塗布し、室温の下、それを真空オーブンに入れ乾燥させて、一部のDMF溶媒を取り除き、第1層膜を形成する工程、
(b)前記工程(a)に基づき、リチウム塩とPVDF及びPANとの比率(即ちリチウム塩:PVDF及びPAN)、及び前記全固体リチウムイオン導電材料とPVDF及びPANとの比率を下げて溶液Bを製造し、次に前記溶液Bを前記工程(a)で得られた第1層膜上に塗布して第2層膜を形成し、二層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れて乾燥させ、残った溶媒を取り除き、電池組み立て時に電解質膜として使用するため、製造した膜を円形に裁断する工程であって、
リチウム塩とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率(PVDF及びPANに対するリチウム塩の質量基準の比率)は前記工程(a)で添加した際の33.3%~100%に調整し、
前記全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率(PVDF及びPANに対する全固体リチウムイオン導電材料の質量基準の比率)は前記工程(a)で添加した際の25%~150%に調整する。
【0011】
第4態様として、本発明は自立式三層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法に関し、以下の工程が含まれる。
(a)PVDFをDMF溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にPAN、可塑剤及びコーティング材料でコーティングされたカーボンベース材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させた後、前記混合溶液Aをガラス基板上に塗布し、それを真空オーブンに入れ乾燥させて一部の溶媒を取り除き、第1層膜を形成する工程、
(b)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及びコーティング材料でコーティングされた第2態様に記載のイオンがドーピングされた全固体リチウムイオン導電材料の製造方法から製造された全固体リチウムイオン導電材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させて溶液Bを製造し、次に前記溶液Bを前記工程(a)で得られた第1層膜上に塗布して第2層膜を形成する工程、
(c)前記工程(b)に基づき、コーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率を下げて溶液Cを製造し、次に前記溶液Cを前記第2層膜上に塗布し、三層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れて乾燥させ、残った溶媒を取り除き、電池組み立て時に電解質膜として使用するため、製造した膜を円形に裁断する工程であって、
前記工程(a)で使用するカーボンベース材料は多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェン、及び多孔質炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記工程(a)及び(b)で使用するコーティング材料はLi-Nafion(Nafionは登録商標)、LiPSS(Lithium Polystyrene Sulfonate)、LiF、Li-PAA(Lithium Polyacrylate)、LiMoO、LiSiO、及び多孔質炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記コーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率(PVDF及びPANに対する全固体リチウムイオン導電材料の質量基準の比率)は前記工程(b)で添加した際の25%~150%に調整する。
【0012】
第5態様として、第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、前記工程(a)のランタン源は硫酸水素ランタン、シュウ酸ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、塩化ランタン、フッ化ランタン、及び水酸化ランタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0013】
第6態様として、第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、前記工程(a)のジルコニウム源はオキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
第7態様として、第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、前記工程(a)のガリウム源はシュウ酸ガリウム、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、水酸化ガリウム、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、リン酸ガリウム、及び酸化ガリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
第8態様として、第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、前記工程(a)における金属塩溶液aの濃度は1.0~2.5M、より好ましくは2.0Mであり、前記工程(a)におけるランタン源としてのLa(NO・6HO、ジルコニウム源としてのZrOCl・8HO、及びガリウム源としてのGa(NOのモル量組成比は3:2:0.05~0.5である。
【0016】
第9態様として、第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、前記工程(b)におけるキレート剤としての水酸化アンモニウムの濃度は2.0~8.0M、好ましくは3.6Mであり、前記TFR反応チャンバー内のpH値は10~12の間、好ましくは11となるよう制御し、前記TFRの回転速度は500~1500rpm、好ましくは1300rpmとなるよう設定し、前記TFRの反応時間は8~20時間、好ましくは12~16時間である。
【0017】
第10態様として、第1態様に記載のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法に関し、前記工程(d)の乾燥条件は、50℃~100℃(好ましくは80℃)で10~30時間、好ましくは24時間乾燥させるものとする。
【0018】
第11態様として、第2態様に記載のイオンがドーピングされた全固体リチウムイオン導電材料の製造方法に関し、前記工程(a)のリチウム源は水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸リチウム、及び炭酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、前記工程(a)のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体とリチウム塩とのモル比は1:5.95~6.10(即ちリチウム塩5~20%超過)、好ましくは1:6(即ちリチウム塩10%超過)であって、イオンドーピング源としてフッ化リチウム(LiF)を使用し、且つモル量比は0.05~0.3(好ましくは0.2)であって、前記工程(a)で利用するボールミルでの研磨混合の回転速度は100~650rpm、時間は10分~2時間とし、より好ましいボールミルでの研磨条件は400rpm/20minであり、酸化ジルコニウムボール、硬化スチール、ステンレススチール、炭化タングステン、メノウ、焼結酸化アルミニウム、及び窒化ケイ素ボールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて研磨混合を行い、前記工程(a)の混合物とボールとの重量比は1:1~20、好ましくは1:10である。
【0019】
第12態様として、第2態様に記載のイオンがドーピングされた全固体リチウムイオン導電材料の製造方法に関し、前記工程(b)にあるか焼処理の条件について、第1段階では150℃で1時間維持し、第2段階では300~400℃(好ましくは350℃)で3時間維持し、第3段階では400~600℃(好ましくは550℃)で1時間維持し、第4段階では500~800℃(好ましくは750℃)で4時間維持し、第5段階では800~1000℃(好ましくは900℃)で1~5時間(好ましくは2時間)維持し、これら5つの段階における昇温速度は1~10℃ min-1、好ましくは3℃ min-1である。
【0020】
第13態様として、第3態様に記載の二層複合固体電解質膜の製造方法に関し、前記工程(a)のリチウム塩はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート、及び四フッ化ホウ酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、前記工程(a)の可塑剤はスクシノニトリル、アジポニトリル、アジ化リチウム、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、及び1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0021】
第14態様として、第4態様に記載の三層複合固体電解質膜の製造方法に関し、前記工程(a)及び(b)でそれぞれ行われる材料表面のコーティング処理におけるコーティング量は0.1~3.0wt.%、好ましくは0.5~1.5wt.%の間である。
【0022】
本発明の別の目的は、前記複合固体電解質膜を使用し、優れた性能を備える全固体リチウム電池を製造、提供することである。
【0023】
第15態様として、本発明は正極、負極及び第3又は4に記載の複合固体電解質膜を含む全固体リチウム電池に関し、前記複合固体電解質膜は正極と負極との間に設置され、同時に隔離膜及び電解質として使用し、前記負極はリチウム金属箔であって、前記正極は活性材料、導電剤及びバインダーを含む組成物が集電層(アルミニウム箔又はカーボンコーティングアルミニウム箔)上で生成されたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明で製造する三層HSE膜は、リチウムイオンの導電経路を増やし、リチウム樹枝状結晶の形成を抑制するため、コーティング材料Li-Nafionでコーティングされたカーボンベース材料の多層カーボンナノチューブ(即ちLi-Nafion@MWCNT)及びコーティング材料Li-NafionでコーティングされたイオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料(即ちLi-Nafion@Ga-F-LLZO)を使用している。
【0025】
また本発明は二層及び三層HSE膜におけるリチウムイオンの導電率、電気化学的安定性及びその界面インピーダンスなどの測定分析も行い、Ga-F-LLZO全固体リチウムイオン導電圧縮錠(pellet)の室温でのイオン導電率は2.50×10-4S cm-1、二層及び三層HSE膜の室温でのイオン導電率はそれぞれ2.67×10-4S cm-1及び4.45×10-4S cm-1であった。
【0026】
本発明で製造する全固体リチウム電池は、リチウムイオンの伝送経路を増やすことでリチウムイオンの導電率を高め、固体電解質膜と電極間における界面インピーダンスが低下し、電池に優れた性能を持たせることができるほか、針状のリチウム樹枝状結晶の形成抑制にも効果があり、使用時の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体粉末のXRD図である。
図2】(a)LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体粉末及び(b)Ga-F-LLZO粉末のSEM図である。
図3】(a)TFRにより製造されたLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体粉末の粒子径分布図、(b)TFRにより製造され、乾燥及びボールミルでの研磨がなされたLaZrGa(OH)粉末の粒子径分布図、(c)ボールミルでの研磨後のGa-F-LLZO粉末の粒子径分布図である。
図4】(a)Ga-F-LLZO粉末及びHSE膜のXRD図、(b)Ga-F-LLZO粉末の顕微ラマン分光図である。
図5】(a)及び(b)はコーティング材料Li-NafionでコーティングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料粉末のSEM図、(c)及び(d)は元のコーティングされていないGa-F-LLZO粉末のSEM図である。
図6】Ga-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料粉末のEDS元素マッピング図である。
図7】Ga-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料粉末を圧縮錠にした後のNyquist図である。
図8】(a)二層及び(b)三層HSE膜のNyquist図である。
図9】(a)二層及び(b)三層HSE膜をLSV測定した場合の電気化学的安定性電位窓図である。
図10】二層HSE膜の(a)頂部(空気側)、(b)底部(ガラス側)のSEM図である。
図11】三層HSE膜の(a)頂部(空気側)、(b)中間部(サンドイッチ層)、(c)底部(ガラス側)のSEM図である。
図12】(a)全固体NCM523/Bi-HSE/Li電池の充放電曲線図、(b)速度0.2Cで30回循環させた場合の性能性を示す図である。
図13】(a)全固体NCM811/Bi-HSE/Li電池の充放電曲線図、(b)速度0.5Cで30回循環させた場合の性能性を示す図である。
図14】全固体NCM811/Bi-HSE/Li電池の速度(0.1C~1C)能力を示す図である。
図15】(a)全固体NCM811/Tri-HSE/Li電池の充放電曲線図、(b)速度0.5Cで30回循環させた場合の性能性を示す図である。
図16】全固体NCM811/Tri-HSE/Li電池の速度(0.1C~1C)能力を示す図である。
図17】(a)全固体NCM622/Tri-HSE/Li電池の充放電曲線図、(b)速度0.5Cで30回循環させた場合の性能性を示す図である。
図18】全固体LFP/Tri-HSE/Li電池を0.2Cで3回循環させた場合の充放電曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施例の実施形態により、本発明のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法、全固体リチウムイオン導電材料の製造方法、複合固体電解質膜の製造方法、及び前記複合固体電解質膜を使用した全固体リチウム電池の性能を説明しているが、下記実施例の実施形態は本発明を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を制限するものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0029】
実施例1《LaZrGa0.3(OH)、x=17.9水酸化物前駆体の製造》
従来の回分式反応器(Batch reactor)による製造方法と比較すると、
テイラー流体の流動原理を利用するTFRは混合力が前者の約7倍あり、そのため比較的短い反応時間(反応時間:1/8、比較的速い物質移動速度:1.0m s-1(従来は3.3m s-1))で、前者の約1/2となる、より細かな粒子径分布、純粋なキュービック相(Cubic phase)の水酸化物前駆体及び高収率(反応器容積:1~300L)が得られる。よって、本発明ではTFRを用い、LaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体を製造する。
【0030】
LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法における具体的な一実施形態は以下の通りである。
まず、金属塩粉末を秤量し、相応するモル量比が3:2:0.3(化学計量により合成時に変化調整が可能)となる2MのLa(NO・6HO、ZrOCl・8HO及びGa(NOの金属塩溶液を製造し、1Lの脱イオン水に4時間溶解させる。同時に4Mの水酸化ナトリウム(NaOH)の沈殿剤溶液も等モル反応用に製造する。3.6Mのキレート剤としての水酸化アンモニウム(NHOH)はLaZrGa0.3(OH)17.9を合成するための共沈反応に用いる。TFR(LCTR-tera 3100,反応器容積:0.5~1.5L)で化学共沈反応させる間、反応チャンバー内のpH値は11に制御し、且つ25℃の下、反応器の回転速度は1300rpmに固定し、供給速度は1.7ml min-1、反応時間は12~16時間となるようにする。TFRは2つの同軸円筒からなり、作業容積は1Lである。内円柱及び外円柱間の間隙にテイラー渦流(Taylor vortex flow)を生じさせるため、2つのスチールシリンダーにそれぞれヒートジャケットを設けて反応温度を制御し、外円柱を静止状態に保ったまま内円柱を回転させることをその作動原理とする。最後に、反応器円筒の末端ノズル部からLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体のサンプル懸濁液を連続的に収集し、ろ紙でろ過し、エタノールと脱イオン水で数回洗浄して残ったイオン(Na、NO3-及びその他イオン)を取り除き、80℃のオーブンで24時間乾燥させ、LaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体粉末を取得する。
【0031】
実施例2《イオンがドーピングされたGa-F-LLZO(即ちLi5.9Ga0.3LaZr0.211.8)全固体リチウムイオン導電材料の合成》
フッ素をドーピングして(計量は0.2、イオンドーピング源としてLiFを使用する)形成する、イオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料は、以下の方法により製造される。実施例1で取得した乾燥後のLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体、10%超過のLiOH・HO(即ちモル比はLaZrGa(OH):LiOH・HO=1:6、その後、か焼処理時に高温によりリチウムが損失することから、それを補うために用いる)及びLiFを99%メタノール溶媒が入ったボールミル缶(酸化ジルコニウムボールを使用、混合物及びボールの重量比は1:10とする)において、遊星ボールミル(Planetary Ball Mill PM 200,Retsch,Germany)を用い、回転速度400rpmで20分間研磨混合を行う。研磨完了後、研磨ボールをボールミル缶から取り出し、ボールミル缶を80℃のオーブンに入れて5~10時間乾燥させ、メタノール溶媒を取り除き粉末にする。最後に、前記乾燥後の粉末を空気雰囲気の高温炉でか焼処理し、Ga-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料の粉末を取得する。か焼条件については下記表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例3《自立式二層複合固体電解質(Bi-HSE)膜の製造》
自立式二層複合固体電解質膜、即ち二層構造のGa-F-LLZO@PVDF+PAN/LiTFSI/SN//Ga-F-LLZO@PVDF+PAN/LiTFSI/SN膜(本発明において、同一層膜内の物質は/、異なる層膜は//で隔て、上層から下層にかけての配列は「第一層//第二層//第三層」と示す)の製造方法の具体的な一実施形態は以下の通りである。
リチウムイオン導電性を持つ自立式二層複合固体電解質膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリマー、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)リチウム塩、スクシノニトリル(SN)可塑剤及び実施例2のイオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料からなる。前記膜の製造において、以下2種類の溶液、即ち溶液A及び溶液Bを準備する。
【0034】
工程(1)溶液A:まずPVDFをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒に溶かし、LiTFSI(PVDF及びPANに対して1:1,wt.%)を添加し、65℃で4時間混合撹拌させ、ホモジニアス溶液(溶液A)を取得する。次にPAN(PAN:PVDFは1:9,wt.%)、SN(SN:PVDF及びPANは1:9,wt.%)及びイオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料(Ga-F-LLZO:PVDF及びPANは0.2:1,wt.%)を前記ホモジニアス溶液Aに添加し、65℃で6時間混合撹拌させる。その後、前記混合溶液をブレードコーティング(Doctor-blade coating)法によりガラス基板上に塗布し(即ち第1層、ガラス側)、室温の下、それを真空オーブンに入れて乾燥させ、一部のDMF溶媒を取り除く。
【0035】
工程(2)溶液Bの製造方法は工程(1)と類似するが、相違点はLiTFSIとPVDF及びPANポリマーとの比率を1:2(wt.%)に、Ga-F-LLZOとPVDF及びPANとの比率を0.125:1(wt.%)に下げている部分にある。次に溶液Bを室温で乾燥させた溶液Aからなる第1層膜上に塗布し、第2層(即ち空気側)を形成する。次に、60℃で48時間乾燥させた後、二層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れ、70℃で24時間乾燥させ、残った溶媒を取り除く。
【0036】
前記工程から得られる自立式二層複合固体電解質膜の厚さは約150~160μmで、これをさらに500~2000psi、25℃~60℃の条件下で厚さが約100~150μmとなるようプレスした後、直径18mmの円形に裁断し、同時に電池組み立て時の隔離膜及び電解質として使用する。最後に、完成した二層複合固体電解質膜が、湿気と空気が充満する外界の環境へ晒されるのを防ぐために、アルゴンで満たされたグローブボックスに入れる。
【0037】
実施例4《自立式三層複合固体電解質(Tri-HSE)膜の製造》
自立式三層複合固体電解質膜、即ち三層構造のLi-Nafion@Ga-F-LLZO@PVDF+PAN/LiTFSI/SN//Li-Nafion@Ga-F-LLZO@PVDF+PAN/LiTFSI/SN//Li-Nafion@MWCNT@PVDF+PAN/LiTFSI/SN膜の製造方法の具体的な一実施形態は以下の通りである。
リチウムイオン導電性を持つ自立式三層複合固体電解質膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリマー、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)リチウム塩、スクシノニトリル(SN)可塑剤、コーティング材料Lithium-Nafion(Li-Nafion)でコーティングされたカーボンベース材料の多層カーボンナノチューブ(即ちLi-Nafion@MWCNT、閉塞又はリチウム樹枝状結晶の形成を抑制する)及びコーティング材料Lithium-Nafion(Li-Nafion)でコーティングされたイオンがドーピングされたGa-F-LLZO(即ちLi-Nafion@Ga-F-LLZO)全固体リチウムイオン導電材料からなる。前記膜の製造において、以下A、B及びC、3種類の溶液を準備する。
【0038】
工程(1)溶液A:まずPVDFをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒に溶かし、LiTFSI(PVDF及びPANに対して1:1,wt.%)を添加し、65℃で4時間混合撹拌させホモジニアス溶液(溶液A)を取得し、次にPAN(PAN:PVDFは1:9,wt.%)、SN(SN:PVDF及びPANは1:9,wt.%)及び1wt.%のコーティング材料Li-Nafion@MWCNT(PVDF+LiTFSI+PAN+SNに対して)を前記ホモジニアス溶液Aに添加し、65℃で6時間混合撹拌させる。その後、溶液Aをガラス基板上に塗布し、室温の下、それを真空オーブンに入れて乾燥させ、一部の溶媒を取り除き、第1層(ガラス側)を形成する。
【0039】
工程(2)溶液Bの製造方法は実施例3の工程(1)と類似するが、相違点はイオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料が1wt.%のコーティング材料Li-Nafion(Ga-F-LLZOに対して)@Ga-F-LLZOに代わっている部分にある。その後、溶液Bを室温で乾燥させた溶液Aからなる第1層膜上に塗布する(即ち第2層、サンドイッチ層)。
【0040】
工程(3)溶液Cの製造方法は実施例3の工程(2)と類似するが、相違点はGa-F-LLZOが1wt.%のLi-Nafion@Ga-F-LLZOに代わり、且つLiTFSIとPVDF及びPANとの比率を1:1(wt.%)に高めている部分にある。次に溶液Cを室温で乾燥させた溶液AとBからなる両層膜上に塗布し、第3層(即ち空気側)を形成する。60℃で48時間乾燥させた後、三層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れ、70℃で24時間乾燥させ残った溶媒を取り除く。
【0041】
前記工程から得られる自立式三層複合固体電解質膜の厚さは約210~220μmで、これをさらに500~2000psi、25℃~60℃の条件下で厚さが約150~200μmとなるようプレスした後、直径18mmの円形に裁断し、同時に電池組み立て時の隔離膜及び電解質として使用する。最後に、完成した三層複合固体電解質膜が、湿気と空気が充満する外界の環境へ晒されるのを防ぐために、アルゴンで満たされたグローブボックスに入れる。
【0042】
実施例5《ボタン型の全固体リチウム電池の製作》
正極の活物質(Active material)はLiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と命名)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)又はLiFePO(LFP)とし、これらとSuper P導電性カーボンブラック(導電剤、Conductive agent)及びバインダーとしてのPVDFとを、N-メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散混合し、正極のスラリーを製造する。その後、混合から得られたスラリーをアルミニウム箔又はカーボンコーティングアルミニウム箔(集電層)上に塗布する。次に、塗布が完了した材料を60℃のオーブンに入れて12時間乾燥させ、NMP溶媒を取り除き、さらに120℃のオーブンに入れて1時間乾燥させ、水分や湿気を取り除く。最後に乾燥させた電極を直径1.3cmの円形に裁断する。その面積は約1.33cmである。
【0043】
前記乾燥させた正極(作業電極)片をアルゴンが充填されたグローブボックス(1TS100-1,ドイツMBRAUN社 UniLab-B,HO及びO<0.5ppm)内でCR2032ボタン型電池に形成する。リチウム金属箔は負極(対応電極及び参考電極)として、実施例3又は4の複合固体電解質膜は同時に隔離膜及び電解質膜として使用する。このほか、本発明で形成した電池は「正極/電解質膜/負極」と表示する。例えば、NCM523を正極、リチウム金属箔を負極、実施例3のBi-HSE膜を電解質膜とした場合、形成後の電池は「NCM523/Bi-HSE/Li電池」となる。
【0044】
《Ga-F-LLZO圧縮錠の製作》
80℃のオーブンで乾燥させた後、0.45gのGa-F-LLZO粉末を量り取り、メッシュ(Mesh#325)でふるいにかけた後、打錠機で4000psiの圧力をかけ、前記粉末を直径13mm、厚さ1.0~1.2mmのGa-F-LLZO圧縮錠(Pellet)にする。
【0045】
《材料特性の分析》
X線粉末回折装置(XRD,Bruker D2 PHASER,Germany,CuKα5,λ=0.1534753nm,30kV,10mA)を利用し、製造した金属水酸化物前駆体粉末、Ga-F-LLZO粉末及び複合固体電解質膜などの材料の結晶構造及び不純物相の検出分析を行う。電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM,JEOL JSM-7610F Plus,Japan)とエネルギー分散型X線分光器(EDS,Oxford X-MaxN,UK)はそれぞれ金属水酸化物前駆体粉末、Ga-F-LLZO粉末及び複合固体電解質膜などのサンプルの表面モフォロジー及び化学元素組成を測量する。ラマンマイクロスコープ(Micro-Raman,InVia confocal micro Renishaw,UK)によりサンプル分析を行う。レーザー粒度分布測定装置(LS 13320,Beckman Coulter)を利用し、合成粉末の粒度及びサイズ分布を測量する。
【0046】
《電気化学測定》
前記実施例5で組み立てた電池を室温(25℃)で、測定が必要な電流速度に基づき、終止電圧範囲内で定電流の充放電循環測定を行う。このほか、電気化学インピーダンス分析装置(Electrochemical impedance spectroscope,EIS;Metrohm Autolab B. V.,Netherlands)を使用し、厚さを1.1mm、150μm及び200μmとした時のGa-F-LLZO圧縮錠、二層及び三層複合固体電解質膜におけるイオン導電率を測量する。電気化学インピーダンス分析装置によるインピーダンス測定時の周波数範囲は10-10-2Hz、電圧幅は10mVである。
【0047】
《LaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体の材料分析》
図1に示すのは、XRDで確認したLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体粉末の結晶構造である。前記粉末のXRD図と水酸化ランタン構造(PDF#83-2034)La(OH)相の図は非常によく似ている。このほか、文献の報告で示されているZr(OH)やGa(OH)などその他の水酸化物のピーク型は、本発明で製造されるLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体と類似している。
【0048】
乾燥後のLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体粉末及びGa-F-LLZO粉末のSEM図をそれぞれ図2(a)及び(b)に示す。TFRから得られるLaZrGa(OH)水酸化物前駆体粉末の顆粒は非常に細かいが、これらの顆粒は塊となりやすく、d50の平均粒子径が約13μmの団塊状を形成する。
【0049】
レーザー粒度分布測定装置を利用し、LaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体の粒子径分布を検出する。前記粉末を超音波振とう機(Ultrasonicator,DC-900H,Delta Co.,Taiwan)で約30分間振とうさせ、エタノール溶媒中に分散させた後、前記粉末の粒子径を測量する。図3(a)に示すように、TFRで製造したLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体粉末の粒子径分布、d10、d50及びd90の値はそれぞれ4.307μm、13.69μm及び39.69μmであった。図3(b)に示すように、TFRで製造し、120℃で乾燥させ、循環式ナノ研磨分散機(JUSTNANO JBM-C020,Taiwan)で研磨して粒子径サイズを小さくした後のLaZrGa0.3(OH)17.9の粒子径分布、d10、d50及びd90の粒子径はそれぞれ0.519μm、2.165μm及び11.37μmであった。このほか、図3(c)に示すように、ボールミルでGa-F-LLZOを研磨した後、その研磨後のd10、d50及びd90の粒子径分布はそれぞれ0.089μm、0.213μm及び0.956μmであった。
【0050】
図4(a)に示すのは、XRDにより検出したGa-F-LLZO粉末の結晶構造である。そのGa-F-LLZO粉末のXRD図と文献中のLLNO(PDF#45-0109)の図はいずれも典型的な立方晶(Cubic)構造を示している。類似の結果として、その複合固体電解質(HSE)膜もGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電性材料成分に由来する回折ピークを示している。
【0051】
ガーネット型(Garnet)構造を有するリチウムイオン導電性を具えるLLZO材料の相(phase)情報は、顕微ラマン散乱分析から得られる。図4(b)に示すように、粉末のマイクロラマンスペクトルは異なる陽イオンを用い安定化された立方晶LLZOのスペクトルと良好な整合性を示している。即ち、示された立方晶ガーネット型構造と図4(a)のXRD図の結果は一致する。また、湿気を含む空気に晒されると、Ga-F-LLZO表面に形成されたLiCO(1100cm-1付近)不純物と絶対的な関係を有し、且つ前記炭酸リチウム塩は絶縁性を具えているため、LLZO粉末のリチウムイオン導電率に影響を与える。
【0052】
《イオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料の分析》
表面モフォロジーと電子顕微構造:
乾燥後のLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体粉末及びGa-F-LLZO粉末のSEM顕微鏡写真を図5に示す。TFRから製造されたLaZrGa0.3(OH)17.9金属水酸化物前駆体粉末の顆粒は非常に細かいが、これらの顆粒は結合し比較的大粒の顆粒を形成しやすく、その平均粒子径d50は約13μmである。しかし、か焼処理及びボールミルでの研磨を経たGa-F-LLZO粉末の粒子径は大幅に小さくなり、その直径は1~3μm範囲内である(図5(a)及び(b)に示す)。また、図5(a)及び(b)は、コーティング材料Li-NafionでコーティングされたGa-F-LLZO粉末及び元のコーティングされていない粉末を示している(図5(c)及び(d))。コーティング材料Li-Nafionでコーティングされた顆粒は、元の顆粒と比べて塊となりにくいため(図5(b)vs.(d))、複合固体電解質膜の製造過程において、Li-Nafionでコーティングされた粉末をポリマー基材に混ぜ込むことで、元のコーティングされていない粉末と比べ、より均一な分散性を達成できる。
図6はGa-F-LLZO粉末のEDS元素マッピング図である。図6に示すように、イオンがドーピングされたGa-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料粉末にはLa、Zr及びドーピングされたGaとF元素が含まれ、これらがいずれも合成された粉末顆粒上に表れていることから、製造したGa-F-LLZOの成分が正しいことが分かる。
【0053】
リチウムイオン導電率:
80℃で乾燥させた後、0.45gのGa-F-LLZO粉末を量り取り、メッシュ(Mesh#325)でふるいにかけ、その後4000psiの圧力条件下で直径13mm、厚さ1.1mmの圧縮錠を生成する。次に電気化学インピーダンス分析装置(EIS)を使用し、前記Ga-F-LLZO圧縮錠のイオン導電率(図7)を測量する。その値はσ=2.50×10-4S cm-1であると算定される。Ga-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料からなる圧縮錠におけるリチウムイオン導電率の測量結果は、表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
《二層及び三層複合固体電解質膜》
リチウムイオン導電率:
図8に示すように、製造が完了した(a)二層及び(b)三層複合固体電解質膜にイオン導電率の測量を行ったところ、その値はそれぞれσ=2.67×10-4及び4.45×10-4S cm-1(膜の厚さはそれぞれ150及び200μm)であった。関連する数値データを表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
電気化学的安定性:
より広い電位窓は、電池のエネルギー密度及び作業電圧と関係しているため、リチウム電池の電気化学反応において極めて重要な作用を発揮する。リニアスイープボルタンメトリー(LSV(Linear Sweep Voltammetry))により二層複合固体電解質(Bi-HSE)及び三層複合固体電解質(Tri-HSE)膜の電気化学的安定性を測量したところ、図9(a)に示すように、二層HSE膜は約4.75Vで分解が始まり、より多くのリチウム塩を含む三層HSE膜は約4.86Vで分解が始まった(図9(b))。つまり、上記製造した2種類の複合固体電解質膜はいずれも高電圧(≧4.3V)のNCM系列の正極材料、例えば前記NCM523、NCM622及びNCM811などでの使用に非常に適している。
【0058】
表面モフォロジーと電子顕微構造:
二層及び三層複合固体電解質膜のSEM図をそれぞれ図10及び図11に示す。図10は二層HSE膜の(a)頂部(空気側)、(b)底部(ガラス側)を写したSEM図で、図11は三層HSE膜の(a)頂部(空気側)、(b)中間(サンドイッチ層)、(c)底部(ガラス側)を写したSEM図である。SEM図において、Ga-F-LLZO全固体リチウムイオン導電材料粉末はポリマー基材中で均一に分散し、またこれらリチウムイオン導電材料粉末顆粒が均一に分布することで、その電気化学的性質の改善に効果があることが示されている。
【0059】
《全固体リチウム電池の電気化学特性(二層複合固体電解質膜)》
実施例3のHSE膜を全固体リチウム電池の電気性能に関する試験に応用し、全固体電池における複合電解質膜の特性を証明する。
【0060】
NCM523/Bi-HSE/Li電池
二層HSE膜を使用し、活物質65%のNCM523正極及び負極としてのリチウム金属箔を組み合わせ、速度を0.2C、終止電圧を2.5~4.2Vとし、室温にて充放電を30回繰り返す。これにより得られた結果を図12に示す。リチウム電池の初回放電容量(Specific capacity,Qsp)は130.4mAh g-1であったが、30回繰り返した後、その放電容量は150.6mAh g-1に上昇した。その電気容量維持率を計算すると約98.4%、その平均クローン効率(Coulombic efficiency,CE)は99.1%となる。
【0061】
NCM811/Bi-HSE/Li電池
二層HSE膜を使用し、活物質65%のNCM811正極及び負極としてのリチウム金属箔を組み合わせ、速度を0.5C、終止電圧を2.5~4.0Vとし、室温にて充放電を30回繰り返す。これにより得られた結果を図13に示す。リチウム電池の初回放電容量は99.5mAh g-1であったが、30回繰り返した後、その放電容量は102.8mAh g-1に上昇した。その電気容量維持率を計算すると約99.0%、その平均クローン効率は99.0%となる。
【0062】
図14は、二層HSE膜を組み合わせ作られたリチウム電池の異なる充放電速度能力を示している。異なる電流速度(0.1~1C)での初回放電容量は、0.1、0.2、0.5、1及び0.1Cの時、それぞれ153、137、128、112、そして、147mAh g-1に戻った。
【0063】
《全固体リチウム電池の電気化学特性(三層複合固体電解質膜)》
実施例4のHSE膜を全固体リチウム電池の電気性能に関する試験に応用し、全固体電池における複合電解質膜の特性を証明する。
【0064】
NCM811/Tri-HSE/Li電池
三層HSE膜を使用し、活物質65%のNCM811正極及び負極としてのリチウム金属箔を組み合わせ、速度を0.5C、終止電圧を2.5~4.2Vとし、室温にて充放電を30回繰り返す。これにより得られた結果を図15に示す。リチウム電池の初回放電容量は110.95mAh g-1であったが、30回繰り返した後、その放電容量は142.98mAh g-1に上昇した。その電気容量維持率を計算すると約99.4%、その平均クローン効率は98.5%となる。
【0065】
図16は、三層HSE膜を組み合わせ作られたリチウム電池の異なる充放電速度能力を示している。異なる電流速度(0.1~1C)での初回放電用量は、0.1、0.2、0.5、1及び0.1Cの時、それぞれ171、144、126、113、そして、163mAh g-1に戻った。
【0066】
NCM622/Tri-HSE/Li電池
三層HSE膜を使用し、活物質70%のNCM622正極及び負極としてのリチウム金属箔を組み合わせ、速度を0.5C、終止電圧を2.6~4.2Vとし、室温にて充放電を30回繰り返す。これにより得られた結果を図17に示す。リチウム電池の初回放電容量は94.0mAh g-1であったが、30回繰り返した後、その放電容量は107.2mAh g-1に上昇した。その電気容量維持率を計算すると約99.8%、その平均クローン効率は99.7%となる。
【0067】
LFP/Tri-HSE/Li電池
三層HSE膜を使用し、活物質80%のLiFePO正極及び負極としてのリチウム金属箔を組み合わせ、速度を0.2C、終止電圧を2.0~4.0Vとし、室温にて充放電を3回繰り返す。これにより得られた結果を図18に示す。リチウム電池の初回放電容量は138.3mAh g-1であったが、3回繰り返した後、その放電容量は145.1mAh g-1に上昇した。その電気容量維持率を計算すると約100%、その平均クローン効率は99.6%となる。
【0068】
以上より、本発明で製造する全固体リチウム電池は、リチウムイオンの伝送経路を増やすことでリチウムイオンの導電率を高め、固体電解質膜と電極間における界面インピーダンスが低下し、電池に優れた性能を持たせることができるほか、針状のリチウム樹枝状結晶の形成抑制にも効果があり、使用時の安全性を高めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2021-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)と工程(2)とを含み、
工程(1)は、イオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料を製造する工程であって、
(1-a)LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体、リチウム源としてのリチウム塩及びイオンドーピング源を混ぜ合わせて混合物を形成し、メタノール溶媒が入ったボールミル缶において、ボールミルを用いて研磨混合させて混合溶液を形成し、研磨完了後、研磨ボールをボールミル缶から取り出し、ボールミル缶をオーブンに入れて乾燥させ、メタノール溶媒を取り除いて粉末を形成し、
前記LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法には以下の工程が含まれ、
(a) それぞれランタン源、ジルコニウム源、及びガリウム源である金属塩粉末を、脱イオン水に溶解して金属塩溶液aを形成する工程であって、前記金属塩粉末の量前記LaZrGa(OH) 金属水酸化物前駆体における、ランタン、ジルコニウム、及び、ガリウムのモル基準の含有量に応じて調整が可能であり、
(b) 水酸化ナトリウム沈殿剤溶液と、キレート剤としての水酸化アンモニウムと、前記工程(a)から得られた金属塩溶液aとを連続テイラーフロー反応器の反応チャンバーへ同時に加え、pH値コントロールシステムにより反応チャンバー内のpH値を維持し、共沈法により連続生産を行う工程であって、前記沈殿剤及びキレート剤の用量は異なる水酸化物前駆体のモル量組成により適宜調整可能であり、
(c) 反応完了後、前記工程(b)から得られた沈殿物をろ過し、エタノールと脱イオン水で数回洗浄して残ったイオンを取り除く工程、
(d) 前記工程(c)から得られたろ過洗浄後の沈殿物をオーブンに入れ乾燥させ、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体を得る工程、
(1-b)前記工程(1-a)から得られた乾燥後の粉末を空気又は純酸素雰囲気の高温炉でか焼処理し、全固体リチウムイオン導電材料の粉末を取得し、
前記工程(1-a)のイオンドーピングは、シングルイオンドーピング、デュアルイオンドーピング、及びマルチイオンドーピングからなる群より選ばれる少なくとも1種のドーピング方式であって、
前記工程(1-a)のイオンドーピング源は、フッ素イオン、ガリウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、タンタルイオン、ストロンチウムイオン、スカンジウムイオン、バリウムイオン、イットリウムイオン、タングステンイオン、ニオブイオン、ガドリニウムイオン、及びシリコンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
工程(2)は、自立式二層有機/無機複合固体電解質膜を製造する工程であって、
(2-a)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及び前記工程(1)で製造された全固体リチウムイオン導電材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させた後、前記混合溶液Aをガラス基板上に塗布し、室温の下、それを真空オーブンに入れ乾燥させて、一部のN,N-ジメチルホルムアミド溶媒を取り除き、第1層膜を形成し、
(2-b)前記工程(2-a)に基づき、リチウム塩とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率、及び前記全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率を下げて溶液Bを製造し、次に前記溶液Bを前記工程(2-a)で得られた第1層膜上に塗布して第2層膜を形成し、二層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れて乾燥させ、残った溶媒を取り除いて製造した膜を円形に裁断し、
リチウム塩とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率は前記工程(2-a)で添加した際の33.3%~100%に調整し、前記全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率は前記工程(2-a)で添加した際の25%~150%に調整する、
ことを特徴とする自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項2】
下記の工程(1)と工程(2)とを含み、
工程(1)は、イオンがドーピングされたリチウムイオン導電性を具える全固体リチウムイオン導電材料を製造する工程であって、
(1-a)LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体、リチウム源としてのリチウム塩及びイオンドーピング源を混ぜ合わせて混合物を形成し、メタノール溶媒が入ったボールミル缶において、ボールミルを用いて研磨混合させて混合溶液を形成し、研磨完了後、研磨ボールをボールミル缶から取り出し、ボールミル缶をオーブンに入れて乾燥させ、メタノール溶媒を取り除いて粉末を形成し、
前記LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体の製造方法には以下の工程が含まれ、
(a) それぞれランタン源、ジルコニウム源、及びガリウム源である金属塩粉末を、脱イオン水に溶解して金属塩溶液aを形成する工程であって、前記金属塩粉末の量前記LaZrGa(OH) 金属水酸化物前駆体における、ランタン、ジルコニウム、及び、ガリウムのモル基準の含有量に応じて調整が可能であり、
(b) 水酸化ナトリウム沈殿剤溶液と、キレート剤としての水酸化アンモニウムと、前記工程(a)から得られた金属塩溶液aとを連続テイラーフロー反応器の反応チャンバーへ同時に加え、pH値コントロールシステムにより反応チャンバー内のpH値を維持し、共沈法により連続生産を行う工程であって、前記沈殿剤及びキレート剤の用量は異なる水酸化物前駆体のモル量組成により適宜調整可能であり、
(c) 反応完了後、前記工程(b)から得られた沈殿物をろ過し、エタノールと脱イオン水で数回洗浄して残ったイオンを取り除く工程、
(d) 前記工程(c)から得られたろ過洗浄後の沈殿物をオーブンに入れ乾燥させ、LaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体を得る工程、
(1-b)前記工程(1-a)から得られた乾燥後の粉末を空気又は純酸素雰囲気の高温炉でか焼し、全固体リチウムイオン導電材料の粉末を取得し、
前記工程(1-a)のイオンドーピングは、シングルイオンドーピング、デュアルイオンドーピング、及びマルチイオンドーピングからなる群より選ばれる少なくとも1種のドーピング方式であって、
前記工程(1-a)のイオンドーピング源は、フッ素イオン、ガリウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、タンタルイオン、ストロンチウムイオン、スカンジウムイオン、バリウムイオン、イットリウムイオン、タングステンイオン、ニオブイオン、ガドリニウムイオン、及びシリコンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
工程(2)は、自立式三層有機/無機複合固体電解質膜を製造する工程であって、
(2-a)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及びコーティング材料でコーティングされたカーボンベース材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させた後、前記混合溶液Aをガラス基板上に塗布し、それを真空オーブンに入れ乾燥させて一部の溶媒を取り除き、第1層膜を形成し、
前記工程(2-a)で使用するカーボンベース材料は多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェン、及び多孔質炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
(2-b)ポリフッ化ビニリデンをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に溶かし、そこへリチウム塩を添加し、混合撹拌させホモジニアス溶液Aを取得し、次にポリアクリロニトリル、可塑剤及び前記工程(1)で製造されコーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料を前記ホモジニアス溶液Aに添加し混合撹拌させて溶液Bを製造し、次に前記溶液Bを前記工程(2-a)で得られた第1層膜上に塗布して第2層膜を形成し、
前記工程(2-a)及び(2-b)で使用するコーティング材料はLi-Nafion、LiPSS、LiF、Li-PAA、LiMoO、LiSiO、及び多孔質炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
(2-c)前記工程(2-b)に基づき、コーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率を下げて溶液Cを製造し、次に前記溶液Cを前記第2層膜上に塗布し、三層複合固体電解質膜を真空オーブンに入れて乾燥させ、残った溶媒を取り除いて製造した膜を円形に裁断し、
前記コーティング材料でコーティングされた全固体リチウムイオン導電材料とポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルとの比率は前記工程(2-b)で添加した際の25%~150%に調整する、
ことを特徴とする自立式三層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)のランタン源は硫酸水素ランタン、シュウ酸ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、塩化ランタン、フッ化ランタン、及び水酸化ランタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)のジルコニウム源はオキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)のガリウム源はシュウ酸ガリウム、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、水酸化ガリウム、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、リン酸ガリウム、及び酸化ガリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)における金属塩溶液aの濃度は1.0~2.5Mである、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)におけるキレート剤としての水酸化アンモニウムの濃度は2.0~8.0Mとし、
前記連続テイラーフロー反応器の反応チャンバー内のpH値は10~12に制御し、
前記連続テイラーフロー反応器の回転速度は500~1500rpmに設定し、
前記連続テイラーフロー反応器の反応時間は8~20時間とする、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項8】
前記工程(d)の乾燥条件は、50℃~100℃で10~30時間乾燥させるものとする、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項9】
工程(1-a)のリチウム源は水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸リチウム、及び炭酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、
前記工程(1-a)のLaZrGa(OH)金属水酸化物前駆体とリチウム塩のモル比は1:5.95~6.10であって、
イオンドーピング源としてフッ化リチウムを使用し、且つモル量比は0.05~0.3であって、
前記工程(1-a)で利用するボールミルの研磨混合における回転速度は100~650rpm、時間は10分~2時間とし、酸化ジルコニウムボール(ZrO)、硬化スチール、ステンレススチール、炭化タングステン、メノウ、焼結酸化アルミニウム、及び窒化ケイ素ボールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて研磨混合を行い、
前記工程(1-a)の混合物とボールの重量比は1:1~20である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1-b)のか焼処理条件について、第1段階では150℃で1時間維持し、第2段階では300~400℃で3時間維持し、第3段階では400~600℃で1時間維持し、第4段階では500~800℃で4時間維持し、第5段階では800~1000℃で1~5時間維持し、前記五つの段階における昇温速度は1~10℃min-1である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項11】
前記工程(2-a)のリチウム塩はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート、及び四フッ化ホウ酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、
前記工程(2-a)の可塑剤はスクシノニトリル、アジポニトリル、アジ化リチウム、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、及び1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の自立式二層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項12】
前記工程(2-a)及び(2-b)でそれぞれ行われる材料表面のコーティング処理におけるコーティング量は0.1~3.0wt.%である、
請求項2に記載の自立式三層有機/無機複合固体電解質膜の製造方法。
【請求項13】
活性材料、導電剤及びバインダーを含む組成物を集電層に塗布し正極を生成する工程、
リチウム金属箔を負極とする工程、
請求項1又は2に記載の複合固体電解質膜の製造方法により製造された複合固体電解質膜を前記正極と前記負極との間に設置し、同時に隔離膜及び電解質として使用する工程、
を含むことを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。