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特開2022-29439装置、プラント設備、装置の制御方法、プログラム、プラントシステム、及び、プラントシステムの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029439
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】装置、プラント設備、装置の制御方法、プログラム、プラントシステム、及び、プラントシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 15/04 20060101AFI20220209BHJP
   F23K 3/02 20060101ALI20220209BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20220209BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B02C15/04
F23K3/02 302
B02C25/00 B
G05B11/36 505A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127111
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020132593
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】溝脇 豊
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩志
(72)【発明者】
【氏名】植田 優也
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
5H004
【Fターム(参考)】
4D063EE03
4D063EE12
4D063EE26
4D063GA08
4D063GC29
4D063GD13
4D067FF01
4D067FF13
4D067GA04
4D067GB02
5H004GA14
5H004GB04
5H004HA03
5H004HB02
5H004HB03
5H004JA12
5H004KB01
(57)【要約】
【課題】プラント機器の運転条件が変更された場合においても、操作パラメータに基づく制御パラメータの制御目標値を精度よく算出する。
【解決手段】プラント機器の制御装置は、制御部と、関数更新部とを備える。制御部は、関数を用いて第1操作パラメータに対応する制御パラメータの制御目標値を求め、制御パラメータが制御目標値になるようにプラント機器を制御する。関数更新部は、プラント機器の運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、関数を更新する。また関数更新部は、関数のうち第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、関数を更新する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御部と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新部と、
を備え、
前記関数更新部は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新するように構成される、装置。
【請求項2】
前記関数更新部は、前記操作パラメータが前記複数の領域間で変化するたびに前記関数を更新するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記関数更新部は、前記複数の領域の各々に規定された第1操作パラメータ代表値からの前記第1操作パラメータの乖離量に基づいて設定される重み付けした前記バイアス値が加算されるように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1操作パラメータ代表値は、前記複数の領域の各々における前記第1操作パラメータの中央値として規定される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記運転状態パラメータが目標値に近づくように、前記バイアス値を算出するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記運転状態パラメータの目標値は、第1操作パラメータに基づいて算出される第1目標値と、前記プラントの第2操作パラメータに基づいて算出される第2目標値を加算することで算出される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記運転状態パラメータの目標値は、前記プラントの第3操作パラメータに基づいて算出される補正係数を用いて補正される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1操作パラメータは前記プラント機器である粉砕機に対する固体燃料の供給量であり、
前記制御パラメータは前記粉砕機のジャーナル油圧であり、
前記運転状態パラメータは前記粉砕機の粉砕テーブル差圧である、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置を備えるプラント設備。
【請求項10】
プラント機器に関する操作パラメータと、前記操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める装置の制御方法であって、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新する関数更新工程を備え、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する、装置の制御方法。
【請求項11】
プラント機器に関する操作パラメータと、前記操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求めるプログラムであって、
コンピュータを用いて、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新する関数更新工程を実行可能であり、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する、プログラム。
【請求項12】
端末と装置とが通信可能なように接続されたプラントシステムであって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御部と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新部と、
を備え、
前記関数更新部は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新するように構成される、プラントシステム。
【請求項13】
端末と装置とが通信可能なように接続されたプラントシステムの制御方法であって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御工程と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新工程と、
を備え、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する、プラントシステムの制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装置、プラント設備、装置の制御方法、プログラム、プラントシステム、及び、プラントシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭やバイオマス燃料等の固体燃料(炭素含有固体燃料)は、ミル(粉砕機)で所定粒径範囲内の微粉状に粉砕して、燃焼装置へ供給される。ミルは、粉砕テーブルへ投入された石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を、粉砕テーブルと粉砕ローラの間に挟み込んで粉砕し、粉砕テーブルの外周から供給される搬送用ガス(一次空気)によって、粉砕されて微粉状となった固体燃料のうち、所定粒径範囲内の微粉燃料を分級機で選別し、ボイラへ搬送して燃焼装置で燃焼させている。火力発電プラントのようなプラント設備では、ボイラで微粉燃料を燃焼して生成された燃焼ガスとの熱交換により蒸気を発生させ、該蒸気により蒸気タービンを回転駆動して、蒸気タービンに接続した発電機を回転駆動することで発電が行なわれる。
【0003】
ミルの運転は、ミルに対する固体燃料の供給量(給炭量)に対応して、固体燃料を粉砕するための粉砕ローラに粉砕荷重を付与するジャーナル油圧を制御することにより行われる。従来、ジャーナル油圧の制御目標値は、給炭量とジャーナル油圧の制御目標値との関係を規定するジャーナル油圧設定関数に基づいて設定される。ここで実際のミル運用では、異なる性状を有する固体燃料(例えば粉砕性の指標であるHGIが異なる固体燃料)が供給されることがある。このように固体燃料の性状が変化すると、ミルで固体燃料を粉砕するために必要なジャーナル油圧の大きさが変化するため、ジャーナル油圧設定関数に対して、固体燃料の性状に応じた所定のバイアス値を加えることがある(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-247246号公報
【特許文献2】特開平07-213936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなジャーナル油圧設定関数に対するバイアス値の付与は、ミルに供給される固体燃料の種類が切り替わる毎に行われる必要がある。しかしながら、ミルの運転中にリアルタイムでの固体燃料の切り替わりを計測することが困難であるため、固体燃料の切り替わりに対して、ジャーナル油圧設定関数に迅速かつ適切にバイアス値を付与することが困難であった。そのため、例えば、ミルに供給される固体燃料の種類の切り替わりによりHGIが低下するように(粉砕し難く)変化した場合に、ジャーナル油圧設定関数にバイアス値が付与されていない状態が継続されると、切り替わり後の固体燃料の粉砕に必要なジャーナル油圧が不足するおそれがある。このようなジャーナル油圧の不足は、ミルの粉砕性能の低下をもたらし、粉砕テーブル差圧の増加や、需要先の要求に対する粉砕燃料供給の応答遅れの要因となってしまう。
【0006】
また従来技術においてジャーナル油圧設定関数に付与されるバイアス値は、ミルに対する固体燃料の供給量(給炭量)に対して一定に設定されていたが、固体燃料の供給量とバイアス値は必ずしも一定の関係とはならない場合があり、従来のバイアス値によるジャーナル油圧設定関数の補正では、適切なジャーナル油圧の制御目標値を精度よく得ることができない。
【0007】
尚、上記では火力発電プラント等のプラント設備に用いられるミルに着目して課題を述べたが、その他のプラント設備に用いられるプラント機器にも同様の課題がある。すなわち、操作パラメータから関数を用いて算出される制御パラメータの制御目標値に基づいてプラント機器の制御を行う場合、プラント機器の運転条件が変化した場合に、関数に対してバイアス値を付与することにより、運転条件の変化による影響を加味することがある。
この場合、運転条件の変化による影響は、操作パラメータの範囲によって一定でないことがある。そのため、操作パラメータによらずバイアス値を一定に設定してしまうと、十分な制御精度が得られないおそれがある。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、プラント機器の運転条件が変更された場合においても、操作パラメータに基づく制御パラメータの制御目標値を精度よく算出することで、プラント性能を好適に維持するための装置、プラント設備、装置の制御方法、プログラム、プラントシステム、及び、プラントシステムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る装置は、上記課題を解決するために、
プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御部と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新部と、
を備え、
前記関数更新部は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新するように構成される。
【0010】
本開示の一態様に係るプラント設備は、上記課題を解決するために、
本開示の一態様に係るプラント機器の制御装置を備える。
【0011】
本開示の一態様に係る装置の制御方法は、上記課題を解決するために、
プラント機器に関する操作パラメータと、前記操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める装置の制御方法であって、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新する関数更新工程を備え、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する。
【0012】
本開示の一態様に係る装置のプログラムは、上記課題を解決するために、
プラント機器に関する操作パラメータと、前記操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める装置のプログラムであって、
コンピュータを用いて、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新する関数更新工程を実行可能であり、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する。
【0013】
本開示の一態様に係るプラントシステムは、上記課題を解決するために、
端末と装置とが通信可能なように接続されたプラントシステムであって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御部と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新部と、
を備え、
前記関数更新部は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新するように構成される。
【0014】
本開示の一態様に係るプラントシステムの制御方法は、上記課題を解決するために、
端末と装置とが通信可能なように接続されたプラントシステムの制御方法であって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御工程と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新工程と、
を備え、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、プラント機器の運転条件が変更された場合においても、操作パラメータに基づく制御パラメータの制御目標値を精度よく算出することで、プラント性能を好適に維持するための装置、プラント設備、装置の制御方法、プログラム、プラントシステム、及び、プラントシステムの制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る発電プラントの全体構成図である。
図2図1の制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】ジャーナル油圧設定関数の一例である。
図4】固体燃料の性状が変化した場合における各パラメータ変化を図3と比較して示す図である。
図5図2の制御部の制御フロー図である。
図6図2の関数更新要否判定部の制御フロー図である。
図7】デッドバンド部の入出力特性の一例である。
図8】更新演算部の制御フロー図である。
図9A】第1ゲインと給炭量との関係を示す図である。
図9B】第2ゲインと給炭量との関係を示す図である。
図9C】第3ゲインと給炭量との関係を示す図である。
図10A】給炭量と第1重付係数との関係の一例を示す図である。
図10B】給炭量と第2重付係数との関係の一例を示す図である。
図10C】給炭量と第3重付係数との関係の一例を示す図である。
図11A】給炭量が第1値である場合におけるジャーナル油圧設定関数の更新制御を示す図である。
図11B図11Aの状態から給炭量が第2値に変化した場合におけるジャーナル油圧設定関数の更新制御を示す図である。
図11C図11Bの状態から更に給炭量が第3値に変化した場合におけるジャーナル油圧設定関数の更新制御を示す図である。
図12図11Cの変形例である。
図13】一実施形態に係る発電プラントの全体構成図である。
図14】制御装置及び情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るプラント設備である発電プラント1は、固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを備えている。
以降の説明では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0018】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、一例として石炭やバイオマス燃料等の固体燃料(炭素含有固体燃料)を粉砕し、微粉燃料を生成してボイラ200のバーナ(燃焼装置)220へ供給する装置である。
図1に示す固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを含む発電プラント1は、1台の固体燃料粉砕装置100を備えるものであるが、1台のボイラ200の複数のバーナ220のそれぞれに対応する複数台の固体燃料粉砕装置100を備えるシステムとしてもよい。
【0019】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、プラント機器の一種であるミル(粉砕部)10と、給炭機(燃料供給機)20と、送風部(搬送用ガス供給部)30と、状態検出部40と、制御装置50とを備えている。
【0020】
ボイラ200に供給する石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を、微粉状の固体燃料である微粉燃料へと粉砕するミル10は、石炭のみを粉砕する形式であっても良いし、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、石炭とともにバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。
ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃木材、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。バイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。
【0021】
ミル10は、ハウジング11と、粉砕テーブル(回転テーブル)12と、粉砕ローラ13と、駆動部14と、駆動部14に接続され粉砕テーブル12を回転駆動させるミルモータ15と、回転式分級機16と、燃料供給部17と、回転式分級機16を回転駆動させる分級機モータ18とを備えている。
ハウジング11は、鉛直方向に延びる筒状に形成されるとともに、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13と回転式分級機16と、燃料供給部17とを収容する筐体である。
ハウジング11の天井部42の中央部には、燃料供給部17が取り付けられている。この燃料供給部17は、バンカ21から導かれた固体燃料をハウジング11内に供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向に沿って配置され、下端部がハウジング11内部まで延設されている。
【0022】
ハウジング11の底面部41付近には駆動部14が設置され、この駆動部14に接続されたミルモータ15から伝達される駆動力により回転する粉砕テーブル12が回転自在に配置されている。
粉砕テーブル12は、平面視円形の部材であり、燃料供給部17の下端部が対向するように配置されている。粉砕テーブル12の上面は、例えば、中心部が低く、外側に向けて高くなるような傾斜形状をなし、外周部が上方に曲折した形状をなしていてもよい。燃料供給部17は、固体燃料(本実施形態では例えば石炭やバイオマス燃料)を上方から下方の粉砕テーブル12に向けて供給し、粉砕テーブル12は供給された固体燃料を粉砕ローラ13との間で粉砕する。
【0023】
固体燃料が燃料供給部17から粉砕テーブル12の略中央領域へ向けて投入されると、粉砕テーブル12の回転による遠心力によって、固体燃料は粉砕テーブル12の外周側へと導かれ、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13との間に挟み込まれて粉砕される。粉砕された固体燃料は、搬送用ガス流路(以降は、一次空気流路と記載する)100aから導かれた搬送用ガス(以降は、一次空気と記載する)によって上方へと吹き上げられ、回転式分級機16へと導かれる。
粉砕テーブル12の外周には、一次空気流路100aから流入する一次空気を、ハウジング11内の粉砕テーブル12の上方の空間に流出させる吹出口(図示省略)が設けられている。吹出口には旋回羽根(図示省略)が設置されており、吹出口から吹き出した一次空気に旋回力を与える。旋回羽根により旋回力が与えられた一次空気は、旋回する速度成分を有する気流となって、粉砕テーブル12上で粉砕された固体燃料を、ハウジング11内の上方にある回転式分級機16へと搬送する。なお、粉砕された固体燃料のうち、所定粒径より大きいものは回転式分級機16により分級されて、または、回転式分級機16まで到達することなく落下して、粉砕テーブル12上に戻されて、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13との間で再度粉砕される。
【0024】
粉砕ローラ13は、燃料供給部17から粉砕テーブル12上に供給された固体燃料を粉砕する回転体である。粉砕ローラ13は、粉砕テーブル12の上面に押圧されて粉砕テーブル12と協働して固体燃料を粉砕する。
図1では、粉砕ローラ13が代表して1つのみ示されているが、粉砕テーブル12の上面を押圧するように、周方向に一定の間隔を空けて、複数の粉砕ローラ13が配置される。例えば、外周部上に120°の角度間隔を空けて、3つの粉砕ローラ13が周方向に均等な間隔で配置される。この場合、3つの粉砕ローラ13が粉砕テーブル12の上面と接する部分(押圧する部分)は、粉砕テーブル12の回転中心軸からの距離が等距離となる。
【0025】
粉砕ローラ13は、ジャーナルヘッド45によって、上下に揺動可能となっており、粉砕テーブル12の上面に対して接近離間自在に支持されている。粉砕ローラ13は、外周面が粉砕テーブル12の上面の固体燃料に接触した状態で、粉砕テーブル12が回転すると、粉砕テーブル12から回転力を受けて連れ回りするようになっている。燃料供給部17から固体燃料が供給されると、粉砕ローラ13と粉砕テーブル12との間で固体燃料が押圧されて粉砕される。
【0026】
ジャーナルヘッド45の支持アーム47は、中間部が水平方向に沿った支持軸48によって、ハウジング11の側面部に支持軸48を中心として粉砕ローラ13を上下方向に揺動可能に支持されている。また、支持アーム47の鉛直上側にある上端部には、押圧装置49が設けられている。押圧装置49は、ハウジング11に固定されており、粉砕ローラ13を粉砕テーブル12に押し付けるように、支持アーム47等を介して粉砕ローラ13にジャーナル油圧(粉砕荷重)を付与する。
【0027】
駆動部14は、粉砕テーブル12に駆動力を伝達し、粉砕テーブル12を中心軸回りに回転させる装置である。駆動部14は、ミルモータ15に接続されており、ミルモータ15の駆動力を粉砕テーブル12に伝達する。
【0028】
回転式分級機16は、ハウジング11の上部に設けられ中空状の略逆円錐形状の外形を有している。回転式分級機16は、その外周位置に上下方向に延在する複数のブレード16aを備えている。各ブレード16aは、回転式分級機16の中心軸線周りに所定の間隔(均等間隔)で設けられている。
回転式分級機16は、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13により粉砕された固体燃料(以降、粉砕された固体燃料を「粉砕燃料」という。)を、所定粒径(例えば、石炭では70~100μm)より大きいもの(以降、所定粒径を超える粉砕燃料を「粗粉燃料」という。)と、所定粒径以下のもの(以降、所定粒径以下の粉砕燃料を「微粉燃料」という。)に分級する装置である。回転により分級する回転式分級機16は、ロータリセパレータとも呼ばれ、制御装置50によって制御される分級機モータ18により回転駆動力を与えられ、ハウジング11の上下方向に延在する円筒軸(図示省略)を中心に燃料供給部17の周りを回転する。
尚、分級機としては、固定された中空状の逆円錐形状のケーシングと、そのケーシングの外周位置にブレード16aに替わって複数の固定旋回羽根とを備えた固定式分級機を用いてもよい。
【0029】
回転式分級機16に到達した粉砕燃料は、ブレード16aの回転により生じる遠心力と、一次空気の気流による向心力との相対的なバランスにより、大きな径の粗粉燃料は、ブレード16aによって叩き落とされ、粉砕テーブル12へと戻されて再び粉砕され、微粉燃料はハウジング11の天井部42にある出口ポート19に導かれる。回転式分級機16によって分級された微粉燃料は、一次空気とともに出口ポート19から微粉燃料供給流路100bへ排出され、ボイラ200のバーナ220へ供給される。微粉燃料供給流路100bは、固体燃料が石炭の場合には、微粉炭管とも呼ばれる。
【0030】
燃料供給部17は、ハウジング11の天井部42を貫通するように上下方向に沿って下端部がハウジング11内部まで延設されて取り付けられ、燃料供給部17の上部から投入される固体燃料を粉砕テーブル12の略中央領域に供給する。燃料供給部17は、給炭機20から固体燃料が供給される。
【0031】
給炭機20は、搬送部22と、給炭機モータ23とを備える。搬送部22は、例えばベルトコンベアであり、給炭機モータ23から与えられる駆動力によって、バンカ21の直下にあるダウンスパウト24の下端部から排出される固体燃料を、ミル10の燃料供給部17の上部まで搬送し、燃料供給部17の内部へ投入する。
通常、ミル10の内部には、微粉燃料をバーナ220へ搬送するための一次空気が供給されており、給炭機20やバンカ21よりも圧力が高くなっている。バンカ21の直下にある上下方向に延在する管であるダウンスパウト24には、内部に燃料が積層状態で保持されていて、ダウンスパウト24内に積層された固体燃料層により、ミル10側の一次空気と微粉燃料がバンカ21側へ逆流しないようなシール性を確保している。
ミル10へ供給される固体燃料の供給量は、例えば、搬送部22のベルトコンベアの移動速度によって調整される。
【0032】
送風部30は、粉砕燃料を乾燥させるとともに、回転式分級機16へ搬送するための一次空気を、ハウジング11の内部へ送風する装置である。
送風部30は、ハウジング11の内部へ送風される一次空気の流量と温度を適切に調整するために、本実施形態では、一次空気通風機(PAF:Primary Air Fan)31と、熱ガス流路30aと、冷ガス流路30bと、熱ガスダンパ30cと、冷ガスダンパ30dとを備えている。
【0033】
本実施形態では、熱ガス流路30aは、一次空気通風機31から送出された空気(外気)の一部を、例えば空気予熱器などの熱交換器34を通過して加熱された熱ガスとして供給する。熱ガス流路30aの下流側には、熱ガスダンパ30cが設けられている。熱ガスダンパ30cの開度は、制御装置50によって制御される。熱ガスダンパ30cの開度によって、熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量が決定される。
【0034】
冷ガス流路30bは、一次空気通風機31から送出された空気の一部を常温の冷ガスとして供給する。冷ガス流路30bの下流側には、冷ガスダンパ30dが設けられている。冷ガスダンパ30dの開度は、制御装置50によって制御される。冷ガスダンパ30dの開度によって、冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量が決定される。
【0035】
一次空気の流量は、本実施形態では、熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量と冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量の合計の流量となり、一次空気の温度は、熱ガス流路30aから供給する熱ガスと冷ガス流路30bから供給する冷ガスの混合比率で決まり、制御装置50によって制御される。
また、熱ガス流路30aから供給する熱ガスに、図示しないガス再循環通風機を介してボイラ200から排出された燃焼ガスの一部を導き、混合することで、一次空気流路100aからハウジング11の内部へ送風する一次空気の酸素濃度を調整してもよい。
【0036】
本実施形態では、ミル10の状態検出部40により、計測又は検出したデータを制御装置50に送信する。本実施形態の状態検出部40は、例えば、差圧計測手段であり、一次空気流路100aからハウジング11の内部へ一次空気が流入する部分における圧力と、ハウジング11の内部から微粉燃料供給流路100bへ一次空気と微粉燃料が排出される出口ポート19における圧力との差圧を、ミル10の差圧として計測する。このミル10の差圧の増減は、回転式分級機16の分級効果によってハウジング11内部の回転式分級機16付近と粉砕テーブル12付近の間を循環している粉砕燃料の循環量の増減に対応する。すなわち、このミル10の差圧に応じて回転式分級機16の回転数を調整することで、ミル10に供給する固体燃料の供給量に対して、出口ポート19から排出される微粉燃料の量を調整することができるので、微粉燃料の粒度がバーナ220の燃焼性に影響しない範囲で、ミル10への固体燃料の供給量に対応した量の微粉燃料を、ボイラ200に設けられたバーナ220に安定して供給することができる。
また、本実施形態の状態検出部40は、例えば、温度計測手段であり、ハウジング11の内部へ供給される一次空気の温度(ミル入口における一次空気温度)や、ハウジング11の内部の粉砕テーブル12上部の空間から出口ポート19までの一次空気の温度を検出して、上限温度を超えないように送風部30を制御する。上限温度は、固体燃料への着火の可能性等を考慮して決定される。なお、一次空気は、ハウジング11の内部において、粉砕燃料を乾燥しながら搬送することによって冷却され、出口ポート19での一次空気の温度は、例えば約60~90度程度となる。
【0037】
制御装置50は、固体燃料粉砕装置100の各部を制御する装置である。
制御装置50は、例えば、ミルモータ15に駆動指示を伝達して粉砕テーブル12の回転速度を制御してもよい。
制御装置50は、例えば、分級機モータ18へ駆動指示を伝達して回転式分級機16の回転速度を制御して分級性能を調整し、ミル10の差圧、すなわちミル10内部の粉砕燃料の循環量を所定の範囲に適正化することにより、微粉燃料をバーナ220へ安定して供給することができる。
また、制御装置50は、例えば給炭機20の給炭機モータ23へ駆動指示を伝達することにより、搬送部22が固体燃料を搬送して燃料供給部17へ供給する固体燃料の供給量(給炭量)を調整することができる。
また、制御装置50は、開度指示を送風部30に伝達することにより、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御して一次空気の流量と温度を調整することができる。具体的には、制御装置50は、ハウジング11の内部へ供給される一次空気の流量が給炭量に対応して設定された所定流量となるように、かつ出口ポート19における一次空気の温度が固体燃料の種別毎に設定された所定温度となるように、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御する。
【0038】
制御装置50は、例えば、CPU(Central Proccessing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0039】
次に、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料を用いて燃焼を行って蒸気を発生させるボイラ200について説明する。ボイラ200は、火炉210とバーナ220とを備えている。
【0040】
バーナ220は、微粉燃料供給流路100bから供給される微粉燃料を含む一次空気と、押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)32から送出される空気(外気)を熱交換器34で加熱して供給される二次空気とを用いて、微粉燃料を燃焼させて火炎を形成する装置である。微粉燃料の燃焼は火炉210内で行われ、高温の燃焼ガスは、蒸発器、過熱器、節炭器などの熱交換器(図示省略)を通過した後にボイラ200の外部に排出される。
【0041】
ボイラ200から排出された燃焼ガスは、環境装置(脱硝装置、電気集塵機などで図示省略)で所定の処理を行うとともに、例えば空気予熱器などの熱交換器34で一次空気通風機31から送出される空気と押込通風機32から送出される空気との熱交換が行われ、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)33を介して煙突(図示省略)へと導かれて外気へと放出される。熱交換器34において燃焼ガスにより加熱された一次空気通風機31から送出される空気は、前述した熱ガス流路30aに供給される。
ボイラ200の各熱交換器への給水は、節炭器(図示省略)において加熱された後に、蒸発器(図示省略)および過熱器(図示省略)によって更に加熱されて高温高圧の蒸気が生成され、発電部である蒸気タービン(図示省略)へと送られて蒸気タービンを回転駆動し、蒸気タービンに接続した発電機(図示省略)を回転駆動して発電が行われ、発電プラント1を構成する。
【0042】
次に、制御装置50の内部構成について説明する。図2図1の制御装置50の構成を示すブロック図である。制御装置50は、制御部52と、関数更新部54と、を備える。
【0043】
制御部52は、ミル10の運転状態を制御するためのコントロールユニットである。本実施形態では制御部52は、制御装置50が実施する制御のうち、ミル10の押圧装置49において粉砕ローラ13を粉砕テーブル12に押し付けるためのジャーナル油圧Pjを制御対象とする機能を有する。すなわち、制御部52は、制御パラメータとしてジャーナル油圧Pjを取り扱い、当該ジャーナル油圧Pjが制御目標値Pj_targetになるようにミル10を制御する。ジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetは、後述するようにジャーナル油圧設定関数Fxに基づいて算出される。
【0044】
ここで図3はジャーナル油圧設定関数Fxの一例である。ジャーナル油圧設定関数Fxは、ミル10の第1操作パラメータである給炭量Cs(ミル10に対する固体燃料の供給量)と、ジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetとの関係を規定する関数として予め求められる。このようなジャーナル油圧設定関数Fxは、所定の性状を有する固体燃料を基準に予め規定される。図3では、ジャーナル油圧設定関数Fxを求めた条件下における、ミル10の第2操作パラメータである一次空気流量Afと、ミル10の運転状態パラメータである粉砕テーブル差圧Pdと、ミル10における保有炭量Qcとが、ジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetとともに示されている。図3に示すように、ジャーナル油圧Pjが制御目標値Pj_targetに制御される場合、給炭量Csに関わらず、ミル10に対する固体燃料の供給量とミル10からの微粉燃料の排出量とがバランスするため、保有炭Qcが略一定に維持される。
【0045】
図4は固体燃料の性状が変化した場合における各パラメータ変化を図3と比較して示す図である。図4では、固体燃料の性状が変化する前における各パラメータ(図3と同様)が破線で示されており、固体燃料の性状が変化した後(固体燃料のHGIが低下した場合)における各パラメータが実線で示されている。固体燃料のHGIが低下すると、固体燃料が粉砕しにくくなるため、粉砕に必要なジャーナル油圧が増加する。そのため、ジャーナル油圧設定関数Fxが不変である場合、ジャーナル油圧Pjが実質的に不足することにより、固体燃料の粉砕に遅れが生じ、ミル10内の保有炭量Qcが増加することにより、粉砕テーブル差圧Pdが増加してしまう。この状態でミル10の運転を継続した場合、粉砕テーブル差圧Pdが運転許容値を超えて過負荷状態となり、ミル10の運転が継続できなくなる。このような課題は、固体燃料の性状が変化した場合に、関数更新部54によってジャーナル油圧設定関数Fxを更新することにより解決される。
【0046】
関数更新部54は、制御部52においてジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetの算出に用いられるジャーナル油圧設定関数Fxを更新するように構成される。ジャーナル油圧設定関数Fxの更新は、後述するように、ジャーナル油圧設定関数Fxの各領域に対して適切なバイアス値がされることによって実施される。これにより、固体燃料の性状が変化した場合においても固体燃料を粉砕するために必要なジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetが得られる。その結果、図4に示すような保有炭量Qcの増加による粉砕テーブル差圧Pdの増加を抑制し、ミル10を好適な運転状態に維持することができる。
【0047】
続いて制御装置50が有する制御部52の詳細構成について説明する。図5図2の制御部52の制御フロー図である。制御部52は、給炭量取得部56と、制御目標値算出部58と、ジャーナル油圧取得部60と、PI制御部62と、を備える。
【0048】
給炭量取得部56は、給炭量Csを取得するように構成される。給炭量Csは、制御装置50から給炭機20に対して送信される駆動指示に基づいて調整されるため、給炭量取得部56は、当該駆動指示もしくは給炭機20からのフィードバック信号に基づいて給炭量Csを取得する。
【0049】
制御目標値算出部58は、ジャーナル油圧設定関数Fxに基づいてジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetを算出する。制御目標値算出部58で用いられるジャーナル油圧設定関数Fxは、関数更新部54によって適宜更新されることにより、ミル10に供給される固体燃料の性状に対応した、制御目標値Pj_targetが算出される。制御目標値Pj_targetの算出は、ジャーナル油圧設定関数Fxに対して、給炭量取得部56で取得された給炭量Csを入力することにより行われる。
【0050】
ジャーナル油圧取得部60は、ジャーナル油圧Pjの実測値を取得するように構成される。ジャーナル油圧Pjの測定は、例えば、粉砕ローラ13を粉砕テーブル12に押し付けるために供給される油圧回路(不図示)に設けられた油圧センサ(不図示)の検出値を取得することにより行われる。
【0051】
制御目標値算出部58で算出された制御目標値Pj_targetと、ジャーナル油圧取得部60で取得されたジャーナル油圧Pj(実測値)とは、減算器61に入力されることで、これらの偏差ΔPjが求められる。偏差ΔPjは、PI制御部62に入力される。PI制御部62は、当該偏差ΔPjに基づいて、ジャーナル油圧Pjが制御目標値Pj_targetになるようにミル10を制御するための制御信号を出力する。
【0052】
続いて制御装置50が有する関数更新部54の詳細構成について説明する。関数更新部54は、関数更新要否判定部64と、更新演算部66とを備える。図6図2の関数更新要否判定部64の制御フロー図である。
【0053】
関数更新要否判定部64は、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新を実施する必要があるか否かを判定するための構成である。関数更新要否判定部64は、ミル10の運転状態を示す運転状態パラメータに基づいてジャーナル油圧設定関数Fxの更新要否を判定し、具体的には、給炭量取得部65と、第1目標値算出部68と、一次空気流量取得部70と、第2目標値算出部72と、分級機回転数取得部74と、補正係数算出部76と、粉砕テーブル差圧取得部78と、デッドバンド部80と、を備える。
【0054】
給炭量取得部56は、図5を参照して前述したように、給炭量Csを取得するように構成される。給炭量Csは、制御装置50から給炭機20に対して送信される駆動指示に基づいて調整されるため、給炭量取得部65は、当該駆動指示もしくは給炭機20からのフィードバック信号に基づいて給炭量Csを取得する。
【0055】
第1目標値算出部68は、給炭量Csに対応する第1目標値Cs_targetを算出するように構成される。第1目標値算出部68は、給炭量Csと第1目標値Cs_targetとの関係を規定する関数Fxに基づいて、給炭量取得部65で取得された給炭量Csに対応する第1目標値Cs_targetを算出する。当該関数Fxは、例えば、ミル静特性試験にて各給炭量に対して実測したテーブル差圧から、後述する一次空気流量分の差圧を除いたものをプロットすることにより規定される。
【0056】
一次空気流量取得部70は、一次空気流路100aにおける一次空気流量Afを取得するように構成される。一次空気流量Afは、例えば、一次空気流路100aに設けられた流量センサ(不図示)の検出値を取得することにより得られる。
【0057】
第2目標値算出部72は、一次空気流量Afに対応する第2目標値Af_targetを算出するように構成される。第2目標値算出部72は、一次空気流量Afと第2目標値Af_targetとの関係を規定する関数Fxに基づいて、一次空気流量取得部70で取得された一次空気流量Afに対応する第2目標値Af_targetを算出する。当該関数Fxは、例えば、ミル風量試験にて各風量に対して実測したテーブル差圧をプロットすることにより規定される。
【0058】
第1目標値算出部68で算出された第1目標値Cs_targetと、第2目標値算出部72で算出された第2目標値Af_targetとは、加算器73で加算されることにより、粉砕テーブル差圧目標値Pd_target(=Cs_target+Af_target)が求められる。
【0059】
分級機回転数取得部74は、回転式分級機16の分級機回転数Rを取得するように構成される。回転式分級機16は、前述のように分級機モータ18によって回転駆動されており、分級機回転数取得部74は分級機モータ18に対する制御指令値もしくは分級機モータ制御部(不図示)からのフィードバック信号に基づいて回転式分級機16の分級機回転数Rを取得する。
【0060】
分級機回転数取得部74で取得された分級機回転数Rは、減算器77において予め設定された分級機回転数目標値R_targetとの差分ΔRが算出される。差分ΔRは、補正係数算出部76に入力されることで補正係数αとして算出される。補正係数算出部76は、差分ΔRと補正係数αとの関係を規定する関数に基づいて、入力される差分ΔRに対応する補正係数αを算出する。
【0061】
加算器73で求められた粉砕テーブル差圧目標値Pd_targetは、乗算器75において、補正係数算出部76で算出された補正係数αが乗算されることにより、粉砕テーブル差圧目標値Pd_target´が求められる。乗算器75で求められた粉砕テーブル差圧目標値Pd_target´は、減算器79において、粉砕テーブル差圧取得部78で取得された粉砕テーブル差圧Pdの実測値と減算されることにより、偏差ΔPdが求められる。偏差ΔPdはデッドバンド部80に入力される。
【0062】
デッドバンド部80は、偏差ΔPdの大きさに基づいて、更新演算部66に入力される判定結果として関数更新指標値Nrpを出力するように構成される。ここで図7はデッドバンド部80の入出力特性の一例である。
【0063】
図7に示すように、デッドバンド部80は、入力される偏差ΔPdの絶対値が基準値ΔPd1以内である範囲(-ΔPd1≦ΔPd≦+ΔPd1)では、関数更新指標値Nrpとしてゼロを出力する。この場合、更新演算部66に対する入力値がゼロとなり、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新は行われない。すなわち、粉砕テーブル差圧Pdと粉砕テーブル差圧目標値Pd_targetとの偏差ΔPdが小さいため、ミル10に対して供給される固体燃料の性状に変化がなく、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新は不要と判断される。
【0064】
一方、偏差ΔPdの絶対値が基準値ΔPd1より大きい範囲(ΔPd<-ΔPd1、又は、+ΔPd1<ΔPd)では、デッドバンド部80は、関数更新指標値Nrpとしてゼロではない値を出力する。具体的には、偏差ΔPdが基準値ΔPd1より大きい範囲(+ΔPd1<ΔPd)では、偏差ΔPdが増加するに従って、正の関数更新指標値Nrpが増加する。また偏差ΔPdが基準値-ΔPd1より小さい範囲(ΔPd<-ΔPd1)では、偏差ΔPdが減少するに従って、負の関数更新指標値Nrpが減少する。
【0065】
このように関数更新要否判定部64では、運転状態パラメータである粉砕テーブル差圧Pdの目標値Pd_targetに対する差分ΔPdの絶対値が基準値ΔPd1より大きくなった場合に、ミル10に供給される固体燃料の性状が変化したと判定し、ゼロより大きな関数更新指標値Nrpが出力される。これにより、ミル10に供給される固体燃料の性状が変化したことを運転状態パラメータに基づいて判定し、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新要否を、オペレータの主観に頼ることなく、定量的に判断することができる。
【0066】
関数更新要否判定部64から出力される関数更新指標値Nrpは、更新演算部66に入力される。更新演算部66では関数更新指標値Nrpに基づいて、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新演算が行われる。
【0067】
図8は更新演算部66の制御フロー図である。更新演算部66は、給炭量Csの大きさに基づいて関数更新演算を行うための第1演算部66a、第2演算部66b、第3演算部66cと、第1演算部66a、第2演算部66b及び第3演算部66cの各々の演算結果に基づいてジャーナル油圧設定関数Fxを更新するための合成演算部77とを備える。本実施形態では、給炭量Csの大きさによって、第1給炭量領域R1(Cs1<Cs)、第2給炭量領域R2(Cs2<Cs≦Cs1)、第3給炭量領域R3(Cs≦Cs2)が規定される。第1演算部66a、第2演算部66b、第3演算部66cは、それぞれ給炭量Csが第1給炭量領域R1(Cs1<Cs)、第2給炭量領域R2(Cs2<Cs≦Cs1)、第3給炭量領域R3(Cs≦Cs2)に含まれる場合に、ジャーナル油圧設定関数Fxを更新するための演算を行うように構成される。
【0068】
第1演算部66aは、第1ゲイン設定部88aと、第1基本ジャーナル油圧設定部90aと、第1バイアス値算出部92aと、第1重付係数算出部94aと、を含む。
【0069】
第1ゲイン設定部88aは、第1演算部66aに入力された関数更新指標値Nrpに対する第1ゲインG1を給炭量Csに基づいて設定する。図9Aは第1ゲインG1と給炭量Csとの関係を示す図である。図9Aに示すように、第1ゲインG1は給炭量Csが第1給炭量領域R1(Cs1<Cs)においてゼロより大きな値を有することで、第1演算部66aが第1給炭量領域R1(Cs1<Cs)において機能するように構成される。本実施形態では特に、第1ゲインG1は、第1給炭量領域R1の下限値Cs1から第1給炭量領域R1に設定された第1代表給炭量Csm1まで給炭量Csに対して増加し、第1代表給炭量Csm1より大きな範囲では一定値(=1.0)を有するように設定される。
【0070】
第1基本ジャーナル油圧設定部90aは、現在のジャーナル油圧設定関数Fxに基づいて、第1代表給炭量Csm1に対応する第1基本ジャーナル油圧Pj_base1を求める。第1バイアス値算出部92aは、乗算器91aにおいて第1ゲインG1が乗算された関数更新指標値Nrpに基づいて第1バイアス値Pj_bias1を算出するPI制御器である。第1基本ジャーナル油圧Pj_base1及び第1バイアス値Pj_bias1は、加算器93aによって加算される。
【0071】
第1重付係数算出部94aは、給炭量Csに基づいて第1重付係数β1を算出する。ここで図10Aは給炭量Csと第1重付係数β11との関係の一例を示す図である。図10Aでは、第1重付係数β1は第2給炭量力R2から第1給炭量領域R1の下限値Cs1を介して第1代表給炭量Csm1に至るまで給炭量Csに応じて増加し、第1代表給炭量Csm1より大きな給炭量Csでは一定(=1.0)を有するように設定される。このように第1重付係数β1は第1代表給炭量Csm1と給炭量Csとの乖離量に応じて設定されることにより、第1代表給炭量Csm1に近い給炭量Csほど第1バイアス値Pj_bias1の影響が大きくなる。
【0072】
第1演算部66aは、乗算器95aにおいて、第1重付係数算出部94aで算出された第1重付係数β1を、加算器93aの加算結果に乗算することにより第1関数更新値Pjn1を出力する。
【0073】
第2演算部66bは、第2ゲイン設定部88bと、第2基本ジャーナル油圧設定部90bと、第2バイアス値算出部92bと、第2重付係数算出部94bと、を含む。
【0074】
第2ゲイン設定部88bは、第2演算部66bに入力された関数更新指標値Nrpに対する第2ゲインG2を給炭量Csに基づいて設定する。図9Bは第2ゲインG2と給炭量Csとの関係を示す図である。図9Bに示すように、第2ゲインG2は給炭量Csが第2給炭量領域R2(Cs2<Cs≦Cs1)においてゼロより大きな値を有することで、第2演算部66bが第2給炭量領域R2(Cs2<Cs≦Cs1)において機能するように構成される。本実施形態では特に、第2ゲインG2は、第2給炭量領域R2の下限値Cs2から第2給炭量領域R2に設定された第2代表給炭量Csm2まで給炭量Csに対して増加し、第2代表給炭量Csm2から第2給炭量領域R2の上限値Cs1まで給炭量Csに対して減少するように設定される。
【0075】
第2基本ジャーナル油圧設定部90bは、現在のジャーナル油圧設定関数Fxに基づいて、第2代表給炭量Csm2に対応する第2基本ジャーナル油圧Pj_base2を求める。第2バイアス値算出部92bは、乗算器91bにおいて第2ゲインG2が乗算された関数更新指標値Nrpに基づいて第2バイアス値Pj_bias2を算出するPI制御器である。第2基本ジャーナル油圧Pj_base2及び第2バイアス値Pj_bias2は、加算器93bによって加算される。
【0076】
第2重付係数算出部94bは、給炭量Csに基づいて第2重付係数β2を算出する。ここで図10Bは給炭量Csと第2重付係数β2との関係の一例を示す図である。図10Bでは、第2重付係数β2は第3給炭量領域R3から第2給炭量領域R2の下限値Cs2を介して第2代表給炭量Csm2に至るまで給炭量Csに応じて増加し、第2代表給炭量Csm2において最大値(=1.0)をとり、第2代表給炭量Csm2から第2給炭量領域R2の上限値Cs1を介して第1給炭量領域R1に至るまで給炭量Csに応じて減少するように設定される。このように第2重付係数β2は第2代表給炭量Csm2と給炭量Csとの乖離量に応じて設定されることにより、第2代表給炭量Csm2に近い給炭量Csほど第2バイアス値Pj_bias2の影響が大きくなる。
【0077】
第2演算部66bは、乗算器95bにおいて、第2重付係数算出部94bで算出された第2重付係数β2を、加算器93bの加算結果に乗算することにより第2関数更新値Pjn2を出力する。
【0078】
第3演算部66cは、第3ゲイン設定部88cと、第3基本ジャーナル油圧設定部90cと、第3バイアス値算出部92cと、第3重付係数算出部94cと、を含む。
【0079】
第3ゲイン設定部88cは、第3演算部66cに入力された関数更新指標値Nrpに対する第3ゲインG3を給炭量Csに基づいて設定する。図9Cは第3ゲインG3と給炭量Csとの関係を示す図である。図9Cに示すように、第3ゲインG3は給炭量Csが第3給炭量領域R3(Cs<Cs2)においてゼロより大きな値を有することで、第3演算部66cが第3給炭量領域R3(Cs<Cs2)において機能するように構成される。本実施形態では特に、第3ゲインG3は、第3給炭量領域R3の上限値Cs2から第3給炭量領域R3に規定された第3代表給炭量Csm3まで給炭量Csが減少するに従って増加し、第3代表給炭量Csm3以下の給炭量Csでは一定値(=1.0)を有するように設定される。
【0080】
第3基本ジャーナル油圧設定部90cは、現在のジャーナル油圧設定関数Fxに基づいて、第3代表給炭量Csm3に対応する第3基本ジャーナル油圧Pj_base3を求める。第3バイアス値算出部92cは、乗算器91cにおいて第3ゲインG3が乗算された関数更新指標値Nrpに基づいて第3バイアス値Pj_bias3を算出するPI制御器である。第3基本ジャーナル油圧Pj_base3及び第3バイアス値Pj_bias3は、加算器93cによって加算される。
【0081】
第3重付係数算出部94cは、給炭量Csに基づいて第3重付係数β3を算出する。ここで図10Cは給炭量Csと第3重付係数β3との関係の一例を示す図である。図10Cでは、第3重付係数β3は、第2給炭量領域R2から第3給炭量領域R3の下限値Cs2を介して第3代表給炭量Csm3まで給炭量Csに応じて増加し、第3代表給炭量Csm3以下の給炭量Csでは一定値(=1.0)を有するように設定される。このように第3重付係数β3は第3代表給炭量Csm3と給炭量Csとの乖離量に応じて設定されることにより、第3代表給炭量Csm3に近い給炭量Csほど第3バイアス値Pj_bias3の影響が大きくなる。
【0082】
第3演算部66cは、乗算器95cにおいて、第3重付係数算出部94cで算出された第3重付係数β3を、加算器93cの加算結果に乗算することにより第3関数更新値Pjn3を出力する。
【0083】
合成演算部77は、上述の第1演算部66a、第2演算部66b及び第3演算部66cの各々の演算結果に基づいてジャーナル油圧設定関数Fxを更新する。ここで合成演算部77によるジャーナル油圧設定関数Fxの更新演算について、図11A図11Cを参照して、具体的に説明する。以下の具体例では、給炭量Csが、第3給炭量領域R3に含まれる第1値CsAから、第2給炭量領域R2に含まれる第2値CsBを経て、第1給炭量領域R1に含まれる第3値CsCに至る過程におけるジャーナル油圧設定関数Fxの更新制御について述べる。
【0084】
図11Aは、給炭量Csが第1値CsAである場合におけるジャーナル油圧設定関数Fxの更新制御を示す図である。第1値CsAは前述のように第3給炭量領域R3に含まれるため、第1給炭量領域R1及び第2給炭量領域R2に対応する第1演算部66aで算出される第1バイアス値Pj_bias1、及び、第2演算部66bで算出される第2バイアス値Pj_bias2はゼロであり、第3演算部66cで算出される第3バイアス値Pj_bias3のみがゼロより大きな値を有する。その結果、合成演算部77は、図11Aに示すように、第3給炭量範囲R3の第3代表給炭量Csm3に対応するジャーナル油圧設定値Pj_targetが第3バイアス値Pj_bias3によって移動するように、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新を行う。このとき、第1演算部66aで算出される第1バイアス値Pj_bias1、及び、第2演算部66bで算出される第2バイアス値Pj_bias2はゼロであるため、第1給炭量領域R1の第1代表給炭量Csm1及び第2給炭量領域R2の第2代表給炭量Csm2に対応するジャーナル油圧設定値Pj_targetは変化しない。
【0085】
図11Bは、図11Aの状態から給炭量Csが第2値CsAに変化した場合におけるジャーナル油圧設定関数Fxの更新制御を示す図である。第2値CsAは前述のように第2給炭量領域R2に含まれるため、第1給炭量領域R1及び第3給炭量領域R3に対応する第1演算部66aで算出される第1バイアス値Pj_bias1、及び、第3演算部66cで算出される第3バイアス値Pj_bias3はゼロであり、第2演算部66bで算出される第2バイアス値Pj_bias2のみがゼロより大きな値を有する。その結果、合成演算部77は、図11Bに示すように、図11Aに対して、第2給炭量範囲R2の第2代表給炭量Csm2に対応するジャーナル油圧設定値Pj_targetが第2バイアス値Pj_bias2によって移動するように、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新を行う。このとき、第1演算部66aで算出される第1バイアス値Pj_bias1、及び、第3演算部66cで算出される第3バイアス値Pj_bias3はゼロであるため、第1給炭量領域R1の第1代表給炭量Csm1及び第3給炭量領域R3の第3代表給炭量Csm3に対応するジャーナル油圧設定値Pj_targetは図11Aの場合から変化しない。
【0086】
図11Cは、図11Bの状態から更に給炭量Csが第3値CsCに変化した場合におけるジャーナル油圧設定関数Fxの更新制御を示す図である。第3値CsCは前述のように第1給炭量領域R1に含まれるため、第2給炭量領域R2及び第3給炭量領域R3に対応する第2演算部66bで算出される第2バイアス値Pj_bias2、及び、第3演算部66cで算出される第3バイアス値Pj_bias3はゼロであり、第1演算部66aで算出される第1バイアス値Pj_bias1のみがゼロより大きな値を有する。その結果、合成演算部77は、図11Cに示すように、図11Bに対して、第1給炭量範囲R1の第1代表給炭量Csm1に対応するジャーナル油圧設定値Pj_targetが第1バイアス値Pj_bias1によって移動するように、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新を行う。このとき、第2演算部66bで算出される第2バイアス値Pj_bias2、及び、第3演算部66cで算出される第3バイアス値Pj_bias3はゼロであるため、第2給炭量領域R2の第2代表給炭量Csm2及び第3給炭量領域R3の第3代表給炭量Csm3に対応するジャーナル油圧設定値Pj_targetは図11Aの場合から変化しない。
【0087】
このような関数更新部54によるジャーナル油圧設定関数Fxの更新は、関数更新部54に入力される給炭量Csが、複数の領域(第1給炭量領域R1、第2給炭量領域R2、第3給炭量領域R3)間を遷移するごと(すなわち、ミル10の運転状態の変化が、関数の複数の領域間で生じるたびに)に実施される。これにより、ミル10に投入される固体燃料の性状の変化によるミル10の運転状態の変化に応じて、ジャーナル油圧設定関数Fxを迅速に更新し、良好な制御精度を得ることができる。
【0088】
また図12図11Cの変形例である。図12では、図11に比べて、第1給炭量領域R1に含まれる第3値CsCが第1代表給炭量Csm1から離れている。すなわち、図12では、第3値CsCの第1代表給炭量Csm1からの乖離量が大きくなっている。前述したように、第3重付係数β3は当該乖離量に基づいて設定されるため、第1代表給炭量Csm1からの乖離量が大きくなるに従って第3重付係数β3が小さくなる。その結果、図12では図11に比べて、第1代表給炭量Csm1に対する更新量が少なくなっている。このように各領域におけるジャーナル油圧設定関数Fxの更新は、各領域における代表値からの乖離量に基づいて重み付けしたバイアス値を加算して行われることで、信頼性の高いジャーナル油圧設定関数Fxを更新によって得ることができ、制御精度を向上することができる。
【0089】
また上述の実施形態では、給炭量Csを3つの複数の領域(第1給炭量領域R1、第2給炭量領域R2、第3給炭量領域R3)に分けた場合について説明したが、これらの領域の数は任意でよい。例えば領域の数を多くすると、領域の数が増えることに伴って更新演算部66が備える演算部の数も増えるため、制御装置50における演算負荷が大きくなってしまうが、より精度のよいジャーナル油圧設定関数Fxの更新演算を行うことができる。一方、領域の数を少なくすると、領域の数が少なくなるに伴って更新演算部66が備える演算部の数も減るため、ジャーナル油圧設定関数Fxの更新精度が低下する可能性があるものの、制御装置50における演算負荷を効果的に減少させることができる。
【0090】
また、上述した実施形態では、固体燃料として石炭を使用するミルとしたが、固体燃料としては、バイオマス燃料や石油精製時に発生するPC(石油コークス:Petroleum Coke)燃料であってもよい。
【0091】
続いて、上述した実施形態の変形例を説明する。尚、変形例においては、上述した実施形態とほぼ同等の部を備えているが、同等の構成や同等の処理を行う部については、同一の符号を用いて説明を行い、異なる部のみ異なる符号を用いて説明を行う。
【0092】
上述した実施形態の制御装置50における各処理を実行する装置として図13に示す情報処理装置300を、クラウド環境上あるいはVPN(Virtual Private Network)を介して制御装置50に通信可能なように接続することが可能である。
この場合、図14に示すように、制御装置50は、データ中継部304及び制御部52を備え、情報処理装置300は、データ送受信部306、制御部308、及び関数更新部54を備えた構成とすることが可能である。
【0093】
データ中継部304は、前述した各々の方法により取得された、情報処理装置300において実行する種々の処理で必要とされるデータ等(給炭量Cs、ミルの運転状態パラメータ、一次空気流量Af、及び分級回転数R、ジャーナル油圧Pj(実測値)等)を情報処理装置300に対して中継する。
【0094】
制御装置50の制御部52は、上述した実施形態と異なっており、給炭量取得部56、制御目標値算出部58、及びジャーナル油圧取得部60を備えておらず、これらは情報処理装置300の制御部308に備えた構成としている。
そして、制御部308及び関数更新部54は、データ送受信部306により受信したデータ等を入力として前述した各々の処理を実行する。
【0095】
尚、関数更新部54は、ジャーナル油圧Pj(実測値)とジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_targetとから求まる偏差ΔPjに関するこれらの情報を、データ送受信部306を介してデータ中継部304へ送信することにより、制御部52(PI制御部62)では、データ中継部304で受信したこれらの情報の当該偏差ΔPjに基づいて、ジャーナル油圧Pjが制御目標値Pj_targetになるようにミル10を制御するための制御信号を出力する。
【0096】
尚、関数更新部54によるジャーナル油圧Pj(実測値)、ジャーナル油圧Pjの制御目標値Pj_target、あるいは偏差ΔPjに関する情報を端末302に表示させて、オペレータはその表示内容を参照し、ミル10へ制御指示を出すか否かを判断する。
【0097】
オペレータが制御指示を出すと判断した場合は、オペレータが操作指示を行うと、端末302から制御部52へこれらの情報を用いてミル10を制御するよう要求する。
あるいは、オペレータは端末302から直接操作指示を行うことなく、制御部52に対して直接指示を行うことが可能なアプリケーションを搭載した別のデバイスからミルの制御を行うよう要求する態様でも良い。
さらに、情報処理装置300は、端末302からの要求により、情報処理装置300において各処理を実行する構成を備えても良い。
【0098】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0099】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0100】
(1)一態様に係る装置(例えば上記実施形態の制御装置50あるいは情報処理装置300)は、
プラント機器(例えば上記実施形態のミル10)に関する第1操作パラメータ(例えば上記実施形態の給炭量Cs)と、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値(例えば上記実施形態のPj_target)との関係を規定する関数(例えば上記実施形態のジャーナル油圧設定関数Fx)を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御部(例えば上記実施形態の制御部52あるいは制御部308)と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータ(例えば上記実施形態の粉砕テーブル差圧Pd)の実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新部(例えば上記実施形態の関数更新部54)と、
を備え、
前記関数更新部は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域(例えば上記実施形態の第1給炭量領域R1、第2給炭量領域R2、第3給炭量領域R3)のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値(例えば上記実施形態の第1バイアス値Pj_bias1、第2バイアス値Pj_bias2、第3バイアス値Pj_bias3)を加算することにより、前記関数を更新するように構成される。
【0101】
上記(1)の態様によれば、プラント機器の制御を実施するために、プラント機器に関する第1操作パラメータに対応するように関数から求められる制御パラメータの制御目標値を求める。運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいてプラント機器の運転状態が変化したことが認識された場合には、関数の更新が行われる。関数の更新は、第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域にバイアス値を加算することにより行われる。このような関数の更新は、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域ごとにバイアス値の加算を行うことで、第1操作パラメータの全領域に対して一定のバイアス値を付与する場合に比べて、制御精度を向上させることができる。
【0102】
(2)他の態様では上記(1)の態様において、
前記関数更新部は、前記第1操作パラメータが前記複数の領域間で変化するたびに前記関数を更新するように構成される。
【0103】
上記(2)の態様によれば、プラント機器の運転状態の変化が、関数の複数の領域間で生じるたびに、関数の更新が行われる。これにより、プラント機器の運転状態の変化に応じて、関数を迅速に更新し、良好な制御精度を得ることができる。
【0104】
(3)他の態様では上記(1)又は(2)の態様において、
前記関数更新部は、前記複数の領域の各々に規定された第1操作パラメータ代表値(例えば第1代表給炭量Csm1、第2代表給炭量Csm2、第3代表給炭量Csm3)からの前記第1操作パラメータの乖離量に基づいて設定される重み付けした前記バイアス値が加算されるように構成される。
【0105】
上記(3)の態様によれば、各領域における関数の更新は、各領域における第1操作パラメータ代表値から、プラント機器の運転状態に対応する第1操作パラメータの乖離量に基づく重み付けしたバイアス値を加算することにより行われる。
【0106】
(4)他の態様では上記(3)の態様において、
前記第1操作パラメータ代表値は、前記複数の領域の各々における前記第1操作パラメータの中央値として規定される。
【0107】
上記(4)の態様によれば、各領域における第1操作パラメータ代表値が、各領域における第1操作パラメータの中央値として規定される。
【0108】
(5)他の態様では上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記制御部は、前記運転状態パラメータが目標値に近づくように、前記バイアス値を算出するように構成される。
【0109】
上記(5)の態様によれば、このように算出されるバイアス値を用いることで、プラント機器の運転状態が変化した場合においても、更新後の関数に基づいて適切な制御パラメータの制御目標値を算出し、良好な制御精度が得られる。
【0110】
(6)他の態様では上記(5)の態様において、
前記運転状態パラメータの目標値は、第1操作パラメータに基づいて算出される第1目標値(例えば上記実施形態の第1目標値Cs_target)と、前記プラント機器の第2操作パラメータに基づいて算出される第2目標値(例えば上記実施形態の第2目標値Af_target)を加算することで算出される。
【0111】
上記(6)の態様によれば、プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの目標値が、プラント機器に関する第1操作パラメータ及び第2操作パラメータに基づいて算出される第1目標値及び第2目標値を加算することで求められる。プラント機器の制御では、このように求められる運転状態パラメータの目標値と、運転状態パラメータの実測値とを比較することにより、プラント機器の運転状態の変化を的確に認識し、前述の関数更新を迅速に実施することができる。
【0112】
(7)他の態様では上記(6)の態様において、
前記運転状態パラメータの目標値は、前記プラントの第3操作パラメータに基づいて算出される補正係数(例えば上記実施形態の補正係数α)を用いて補正される。
【0113】
上記(7)の態様によれば、運転状態パラメータの目標値を第3操作パラメータに基づいて補正することで、より精度よく求めることができる。
【0114】
(8)他の態様では上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記第1操作パラメータは前記プラント機器である粉砕機(例えば上記実施形態のミル10)に対する固体燃料の供給量(例えば上記実施形態の給炭量Cs)であり、
前記制御パラメータは前記粉砕機のジャーナル油圧(例えば上記実施形態のジャーナル油圧Pj)であり、
前記運転状態パラメータは前記粉砕機の粉砕テーブル差圧(例えば上記実施形態の粉砕テーブル差圧Pd)である。
【0115】
上記(8)の態様によれば、粉砕機に供給される固体燃料の性状が変化することで粉砕機の運転状態が変化したことが、粉砕テーブル差圧の実測値と目標値との差分に基づいて認識された場合に、固体燃料の供給量に対するジャーナル油圧の制御目標値を規定する関数の更新が行われる。これにより、固体燃料の性状が変化した場合においても、適切なジャーナル油圧制御が可能となる。
【0116】
(9)一態様に係るプラント設備は、
上記(1)から(8)のいずれか一態様に係る装置(例えば上記実施形態の制御装置50)を備える。
【0117】
上記(9)の態様によれば、プラント機器の運転状態が変化した場合においても、更新された関数に基づいて制御パラメータの制御目標値を得ることで、良好な制御精度が得られ、プラント性能を確保できる。
【0118】
(10)一態様に係る装置の制御方法は、
プラント機器に関する操作パラメータと、前記操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める装置の制御方法であって、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新する関数更新工程を備え、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する。
【0119】
上記(10)の態様によれば、プラント機器の制御を実施するために、プラント機器に関する第1操作パラメータに対応するように関数から求められる制御パラメータの制御目標値を求める。運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいてプラント機器の運転状態が変化したことが認識された場合には、関数の更新が行われる。関数の更新は、第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域にバイアス値を加算することにより行われる。このような関数の更新は、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域ごとにバイアス値の加算を行うことで、第1操作パラメータの全領域に対して一定のバイアス値を付与する場合に比べて、制御精度を向上させることができる。
【0120】
(11)一態様に係るプログラムは、
プラント機器に関する操作パラメータと、前記操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求めるプログラムであって、
コンピュータを用いて、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新する関数更新工程を実行可能であり、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する。
【0121】
上記(11)の態様によれば、プラント機器の制御を実施するために、プラント機器に関する第1操作パラメータに対応するように関数から求められる制御パラメータの制御目標値を求める。運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいてプラント機器の運転状態が変化したことが認識された場合には、関数の更新が行われる。関数の更新は、第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域にバイアス値を加算することにより行われる。このような関数の更新は、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域ごとにバイアス値の加算を行うことで、第1操作パラメータの全領域に対して一定のバイアス値を付与する場合に比べて、制御精度を向上させることができる。
【0122】
(12)一態様に係るプラントシステムは、
端末と装置(例えば上記実施形態の情報処理装置300)とが通信可能なように接続されたプラントシステムであって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御部と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新部と、
を備え、
前記関数更新部は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新するように構成される。
【0123】
上記(12)の態様によれば、プラント機器の制御を実施するために、端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータに対応するように関数から求められる制御パラメータの制御目標値を求める。運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいてプラント機器の運転状態が変化したことが認識された場合には、関数の更新が行われる。関数の更新は、第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域にバイアス値を加算することにより行われる。このような関数の更新は、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域ごとにバイアス値の加算を行うことで、第1操作パラメータの全領域に対して一定のバイアス値を付与する場合に比べて、制御精度を向上させることができる。
【0124】
(13)一態様に係るプラントシステムの制御方法は、
端末と装置とが通信可能なように接続されたプラントシステムの制御方法であって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータと、前記第1操作パラメータに基づいて制御可能な制御パラメータの制御目標値との関係を規定する関数を用いて、前記第1操作パラメータに対応する前記制御パラメータの制御目標値を求める制御工程と、
前記プラント機器の運転状態に関する運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいて、前記関数を更新するように構成された関数更新工程と、
を備え、
前記関数更新工程は、前記関数のうち前記第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、前記第1操作パラメータの実測値が含まれる領域において、前記制御パラメータの制御目標値にバイアス値を加算することにより、前記関数を更新する。
【0125】
上記(13)の態様によれば、プラント機器の制御を実施するために、端末からの要求により、プラント機器に関する第1操作パラメータに対応するように関数から求められる制御パラメータの制御目標値を求める。運転状態パラメータの実測値と目標値との偏差に基づいてプラント機器の運転状態が変化したことが認識された場合には、関数の更新が行われる。関数の更新は、第1操作パラメータの大きさに基づいて規定される複数の領域のうち、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域にバイアス値を加算することにより行われる。このような関数の更新は、第1操作パラメータの実測値が含まれる領域ごとにバイアス値の加算を行うことで、第1操作パラメータの全領域に対して一定のバイアス値を付与する場合に比べて、制御精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 発電プラント
10 ミル
11 ハウジング
12 粉砕テーブル
13 粉砕ローラ
14 駆動部
15 ミルモータ
16 回転式分級機
16a ブレード
17 燃料供給部
18 分級機モータ
19 出口ポート
20 給炭機
21 バンカ
22 搬送部
23 給炭機モータ
24 ダウンスパウト
30 送風部
30a 熱ガス流路
30b 冷ガス流路
30c 熱ガスダンパ
30d 冷ガスダンパ
31 一次空気通風機
32 押込通風機
34 熱交換器
40 状態検出部
41 底面部
42 天井部
45 ジャーナルヘッド
47 支持アーム
48 支持軸
49 押圧装置
50 制御装置
52 制御部
54 関数更新部
56 給炭量取得部
58 制御目標値算出部
60 ジャーナル油圧取得部
62 PI制御部
64 関数更新要否判定部
65 給炭量取得部
66 更新演算部
66a 第1演算部
66b 第2演算部
66c 第3演算部
68 第1目標値算出部
70 一次空気流量取得部
72 第2目標値算出部
74 分級機回転数取得部
76 補正係数算出部
77 合成演算部
78 粉砕テーブル差圧取得部
80 デッドバンド部
88a 第1ゲイン設定部
88b 第2ゲイン設定部
88c 第3ゲイン設定部
90a 第1基本ジャーナル油圧設定部
90b 第2基本ジャーナル油圧設定部
90c 第3基本ジャーナル油圧設定部
92a 第1バイアス値算出部
92b 第2バイアス値算出部
92c 第3バイアス値算出部
94a 第1重付係数算出部
94b 第2重付係数算出部
94c 第3重付係数算出部
100 固体燃料粉砕装置
100a 一次空気流路
100b 微粉燃料供給流路
200 ボイラ
210 火炉
220 バーナ
300 情報処理装置
302 端末
304 データ中継部
306 データ送受信部
308 制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14