(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029440
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/16 20060101AFI20220209BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20220209BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20220209BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
E04D13/16 A
E04D13/18
H02S20/23 Z
E04B1/76 100Z
E04B1/76 200A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127237
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020132316
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】510027179
【氏名又は名称】株式会社ワールドルーム ブリス
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】崔 軍
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬治
【テーマコード(参考)】
2E001
2E108
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DD12
2E001FA16
2E001NA04
2E001NB01
2E001ND21
2E001ND27
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM05
2E108NN04
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルを有する屋根構造において、太陽光による熱回収は十分とは言えなかった。
【解決手段】支持部材の上方に配置された底板と、
前記底板上に配置され
山部と谷部を有し、
前記山部と谷部の何れか一方の棟側端に屋内送風口が設けられ、
前記山部と谷部の他方の棟側端に外気取り入れ口が設けられ、
前記山部と前記谷部は、軒側端で共通空間を有する折板材と、
前記折板材上に設置された太陽光パネルと、
前記屋内送風口に接続されたチャンバーと、
前記チャンバーに接続された送風ファンを有することを特徴とする屋根構造は、棟側端から取り込んだ外気を太陽光パネルの下方を軒側まで往復させてから棟側から屋内に取り込むので、太陽光パネルの熱を十分に回収することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材の上方に配置された底板と、
前記底板上に配置され
山部と谷部を有し、
前記山部と谷部の何れか一方の棟側端に屋内送風口が設けられ、
前記山部と谷部の他方の棟側端に外気取り入れ口が設けられ、
前記山部と前記谷部は、軒側端で共通空間を有する折板材と、
前記折板材上に設置された太陽光パネルと、
前記屋内送風口に接続されたチャンバーと、
前記チャンバーに接続された送風ファンを有することを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
前記屋内送風口は前記山部の軒側端に設けられ、
前記外気取り入れ口は、前記谷部の軒側端に設けられたことを特徴とする請求項1に記載された屋根構造。
【請求項3】
前記送風ファンは、屋外から屋内に送風させるファンであることを特徴とする請求項1または2の何れかの請求項に記載された屋根構造。
【請求項4】
前記送風ファンは、屋内から屋外に向かって送風させるファンであることを特徴とする請求項1または2の何れかの請求項に記載された屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根一体型太陽光パネルを利用した熱回収システムを有する屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅・建築の高気密・高断熱が進むと共に、太陽熱などの再生可能エネルギーの有効活用と太陽光発電電力を自立での積極的な利用等が求められている。特に、日本の国土や住宅の狭小事情においては、太陽熱と太陽光発電を同時に効率的に利用することが非常に難しいゆえに、先進的な再生エネルギー利用技術が求められている。
【0003】
たとえば、特許文献1は、太陽光パネルと屋根の間の温められた外気を太陽光パネルの中央裏から家屋内に取り込む全館空調システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、屋根に反射部と吸収部を切り替える切替機構とその上に配置した光透過型太陽電池を設け、その間に屋内空気を流すシステムで、ソーラーチムニーと同様の原理により太陽熱を利用する換気を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-122564号公報:特許第6303105号公報
【特許文献2】特開2017-218825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は太陽光による発電と、太陽熱によって温められた空気を室内で利用する物であって、太陽光の効率的な利用を行っているといえる。しかし、太陽光パネルの下を通過する外気は、太陽光パネルの棟から軒の長さの半分の距離で温められるだけあり、太陽熱を十二分に回収しているとは言えない。
【0007】
特許文献2は、太陽光以外に太陽熱を利用しているものの、太陽熱の利用は、換気に利用されるものであって、室内に居住している人に対してその熱を直接還元するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、太陽光発電を行うと同時に、日射熱によって得られる熱を室内に居住している人に対して直接還元することができる、熱回収システムを有する屋根構造を提供するものである。
【0009】
より具体的に本発明に係る屋根構造は、
支持部材の上方に配置された底板と、
前記底板上に配置され
山部と谷部を有し、
前記山部と谷部の何れか一方の棟側端に屋内送風口が設けられ、
前記山部と谷部の他方の棟側端に外気取り入れ口が設けられ、
前記山部と前記谷部は、軒側端で共通空間を有する折板材と、
前記折板材上に設置された太陽光パネルと、
前記屋内送風口に接続されたチャンバーと、
前記チャンバーに接続された送風ファンを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る屋根構造は、所謂折板材を底板と太陽光パネルで挟み込んだ構造をしていて、送風ファンを屋内側に外気を吸気する方向に回転させることで、棟側端部の谷部(若しくは山部)から外気を取り入れ、太陽光パネルの下を通過させ、軒側で、山部(若しくは谷部)に折り返させ、さらにもう一度太陽光パネルの下を通過させ、棟側から室内に取り入れるため、外気は太陽光パネルの下を往復する間に十分温められ、冷たい外気であっても、暖かい空気として室内の暖房若しくは水の加熱などに利用することができる。
【0011】
また、夏季に屋内をクーラー等で冷却している際は、送風ファンを室内側から屋外に送風するように運転し、屋内の冷気を太陽光パネルの下を通過させ、外気取り入れ口から屋外に排出することで、太陽光パネルを冷却させることができ、太陽光パネルの発電効率を高めることができる。また、このように屋内の空気を屋外に排出することで、温度の高い外気が室内に流れ込むことや屋根構造からの貫流熱の侵入を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】
図1の一部を取り除き内部を可視化した図である。
【
図7】風路の方向が異なる場合の屋根構造の斜視図である。
【
図8】実施例のために作製した屋根構造の見取り図である。
【
図9】実施例の屋根構造の設置状況を示す図である。
【
図10】冷却した空気を室内側から屋外に向かって放出することで太陽光パネルの表面温度を低下できることを示す実験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係る屋根構造について図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0014】
図1は本発明に係る屋根構造の斜視図である。
図2は、
図1を後方斜め下から見た図である。本発明に係る屋根構造1は、屋根の全部であってもよいし、屋根の一部であってもよい。
【0015】
屋根構造1は、南北方向に設けられ、南側から北側に向かって水平から高くなるように傾斜(
図1では角度θ)して設けられるのが望ましい。屋根構造1の北側は棟側、南側を軒側と呼び、棟側の端を棟側端Rtと呼び、軒側の端を軒側端Etと呼ぶ。棟側端Rtは棟側端縦壁30が形成され、軒側端Etは、軒側端壁34が形成されている。
【0016】
屋根構造1は、太陽光パネル10と、折板材12と、底板14とチャンバー16と、ダクト18と送風ファン20で構成される。なお、屋根構造1は図示しない支持部材で支持されている。支持部材は、木材、金属材が好適に利用でき、建物の構造若しくは骨格の一部であってよい。支持部材は、所謂屋根を支える柱、若しくは屋根を壁で支える場合は壁であってよい。
【0017】
底板14は、支持部材上に固定される平面状の部材である。材質は特に限定されないが、断熱効果を奏するものであれば望ましい。折板材12は、山部12mと谷部12vで構成される断面が凹凸状の板材である。なお、
図4には
図1のB-B断面を示す。底板14は、山部12mの下方を閉じる。底板14と山部12mで形成される空間を上昇路46と呼ぶ。
【0018】
再び
図1を参照する。折板材12の上には太陽光パネル10が設置される。
図4の断面で示されるように、太陽光パネル10は、折板材12の谷部12vの上方を塞ぐ。太陽光パネル10と谷部12vで形成される空間を下降路44と呼ぶ。上昇路46と下降路44は単に風路と呼んでもよい。なお、山部12mの山頂幅を符号12mw、谷部12vの谷底幅を符号12vw、山谷の深さを符号12d、山谷のピッチを符号12pで表す。
【0019】
再び
図1を参照する。太陽光パネル10の棟側端10Rtは、折板材12の棟側端12Rtより軒側で終わる。棟側端Rtと太陽光パネル10の棟側端10Rtとの間のギャップをギャップ10Gと呼ぶ。ギャップ10Gには、折板材12の山部12mおよび谷部12vが露出する。
【0020】
谷部12vは、太陽光パネル10との間で下降路44が形成されているので、ギャップ10Gで露出している谷部12vは、下降路44に繋がる開口となる。この開口を外気取り入れ口40と呼ぶ。なお、折板材12の棟側端12Rtにおいて、山部12mは、棟側端Rtに設けられた棟側端縦壁30で塞がれている。
【0021】
次に
図2および
図3を参照する。
図2は、屋根構造1を棟側(北側)下方から見た斜視図であり、
図3は
図1のA-A断面である。A-A断面は折板材12の山部12mで切断した図となる。山部12mと底板14との間で上昇路46が形成されている。折板材12の棟側端12Rtにおける山部12mは棟側端縦壁30で塞がれている。また、底板14の棟側端Rt付近には、下方に抜ける開口が設けられている。この開口を屋内送風口42と呼ぶ。
【0022】
屋根構造1の棟側端Rtの下方には、屋根構造1の幅方向に渡ってチャンバー16が設けられる。チャンバー16は、上方が開口して底板14と接続され、下方および側方が閉じたられた、内部空間を有する。チャンバー16は、全ての屋内送風口42と連通している。また、チャンバー16は、ダクト18とも連通している。ダクト18には送風ファン20が配置されている。
【0023】
送風ファン20は太陽熱の有効利用という観点では、冬季において、屋外から屋内(本明細書において「屋内」は「室内」と同意に使う。)に向かって空気を送風する吸気ファンとして運転させる。一方、夏季においては、太陽光パネルの温度が過度に高くなり、光電変換の効率が低下する。また、室内はクーラーなどで冷却していても、屋根構造1の風路を通って温度の高い外気が室内に侵入する場合もある。
【0024】
そこで、送風ファン20は、冷房によって冷えた室内の冷気や比較的温度の低い小屋裏の空気を屋内から屋外に向かって流れるように排気ファンとして運転させてもよい。このように、室内の空気を、風路を通じて屋外に排気すれば、外気の侵入や高温の屋根構造からの貫流熱の侵入を防止できると共に、太陽光パネルを冷却することにも寄与する。
【0025】
図5は、
図1の一部を省略して記載し、内部を可視化したものである。折板材12の棟側端12Rtは棟側端縦壁30に当接しているが、折板材12の軒側端12Etは軒側端Etまでは延びていない。屋根構造1としては、軒側端Etは軒側端壁34で塞がれてる。
【0026】
軒側端壁34は、軒側端縦壁34aと、軒側端上壁34bと軒側端側壁34sで形成され、底板14とともに、閉鎖空間を形成している。すなわち、軒側端壁34と底板14で囲まれた空間が形成されている。この空間は下降路44および上昇路46のどちらにも連通している。この空間を共通空間36と呼ぶ。
【0027】
次に本発明に係る屋根構造1の作用について説明する。
図2を参照して、送風ファン20を屋外から屋内側に空気を送るように運転させ、風路を通じて屋内側へ吸引すると、チャンバー16、上昇路46、共通空間36、下降路44(
図5または
図6参照。)、外気取り入れ口40と順に負圧となる。したがって、外気は、上記の経路を逆にたどるように屋内に吸引される。
【0028】
図6は、太陽光パネル10を半省略した屋根構造1の平面図である。外気取り入れ口40から吸引された外気CWは、下降路44を通って、軒側に流れる。この際、温められた太陽光パネル10からの熱を受けて温度が上昇し、外暖気Wmとなる。外暖気Wmは、共通空間36に至ると、共通空間36から上昇路46を昇る。この際再び太陽光パネル10から熱をもらい温度が上昇し、暖気WMとなる。
【0029】
暖気WMは、棟側端Rt側の屋内送風口42からチャンバー16内に流れ込む(
図3参照)。チャンバー16からはダクト18を経由して屋内に送り込まれる。
【0030】
このように外気の温度が低い場合であっても、太陽光パネル10の下側を棟側から軒側に往復させることで、太陽光パネル10との間で熱交換が行われ、温かい暖気を室内に取り込むことができる。言い換えると、太陽光パネル10の冷却と熱の回収を同時に行うことができる。
【0031】
一方、夏季などで外気温および太陽光が強い場合であって、室内をクーラーなどで冷却している場合は、送風ファン20を室内から屋外方向に空気を送る排気ファンとして運転してもよい。この場合は、チャンバー16、上昇路46、共通空間36、下降路44(
図5または
図6参照。)の順に陽圧となり、室内の冷気は上記の経路をたどって屋外に放出される。
【0032】
その際にクーラー等で冷やされた室内の空気を、太陽光パネル10の下側を棟側から軒側に往復させることで、太陽光パネル10を冷却することができる。加熱時の太陽光パネル10は、効率が低下するため、太陽光パネル10を冷却することができれば、夏季における加熱された太陽光パネル10の効率を改善することができる。
【0033】
また、室内の空気を屋外に排出することで、温度の高い外気が室内に漏れ込むことを防止することもできる。
【0034】
なお、送風ファン20を屋外から室内側に吸引するように運転するか、室内側から屋外側に排出するように運転するかは、切換スイッチなどで切り替えることができるようにしておいてよい。また、送風ファン20として吸引用ファンと排出用ファンを別々に設けておき、使い分けできるようにしておいてもよい。
【0035】
なお、上記の説明では、送風ファン20はダクト18に接続されるように例示したが、屋内側でダクト18に対して吸引作用(若しくは排出作用)を奏するものであれば、上記の説明以外の構成であってもよい。例えば、屋内に配置された冷暖房機器の送風ファンがダクト18内を陰圧にする場合は、暖房器具の送風ファンは本発明の吸気用として用いた送風ファン20と解釈できる。また、折板材12と太陽光パネル10との間は、実質的に下降路44および上昇路46が確保されれば、多少の隙間があってもよい。折板材12に太陽光パネル10を設置する際に取付金具の厚み分の隙間は必要となる場合もあるからである。
【0036】
本発明においては、棟側端Rtと軒側端Etの間で外気を往復させ、冷たい外気の温度を高め集熱する。上記の説明では、外気を谷部12vから取り込み、軒側端Etまで下降させ、山部12mを通って棟側端Rtまで上昇させて往復させた。しかし、外気を往復させる際に、山部12mの棟側端Rtから軒側端Etに下降させ、谷部12vを軒側端Etから棟側端Rtに上昇させてもよい。
【0037】
図7には、そのような風路にした場合の屋根構造2の一例を示す。太陽光パネル10、折板材12、底板14、チャンバー16、送風ファン20といった構成は、
図1~
図5までと同じである。
【0038】
屋根構造2では、ギャップ10Gを塞ぐギャップ板10GBが設けられる。ギャップ板10GBには、貫通孔10GBhが形成されている。これは
図1の外気取り入れ口40に相当する。
【0039】
ギャップ板10GBは、ギャップ10Gに露出している折板材12の山部12mと隙間なく当接する。そして、貫通孔10GBhは、山部12mに設けられた貫通孔12mhと一致する位置に設けられている。
【0040】
また、折板材12の谷部12vでは、チャンバー16上部の屋内送風口42と一致する位置に貫通孔12vhが設けられている。
【0041】
以上の構成の屋根構造2では、外気を室内に吸引する方向に送風ファン20を運転させると、ギャップ板10GBの貫通孔10GBhから外気CWが吸引される。外気CWは、山部12mの貫通孔12mhを通って山部12m内に取り込まれ、棟側端Rtから軒側端Etに向かって屋根構造2を下降する。
【0042】
共通空間で折り返された外気CWは、谷部12vを軒側端Etから棟側端Rtに向けて屋根構造2を上昇する。そして、屋内送風口42からチャンバー16に集められる。したがって、屋根構造2の場合は、下降路は山部12mとなり、上昇路は谷部12vである。このように、風路の方向を変えても本発明の屋根構造の集熱効果は同じである。
【0043】
すなわち、本発明においては、屋外から屋根構造2に外気を取り入れる外気取り入れ口40と、屋根構造2内を往復して屋内側(チャンバー16)に取り込まれる屋内送風口42は、折板材12の山部12mと谷部12vのどちら側にも設けることができる。
【実施例0044】
実証実験として作製した屋根構造1を
図8に示す。
図8(a)は、側面視であり、
図8(b)は平面視した図である。縦10Lが1020mm、幅10wが1670mmの太陽光パネル10を使った。太陽光パネル10の下には折板材12を配置させた。なお、
図8では側面を塞いでいるので折板材12は見えない。折板材12には、山部12mの山頂幅12mw(谷部12vの谷底幅12vwが108mm)が幅21mm、山谷の深さ12dが30mm、ピッチ12pの山谷が163mmとした(
図4参照)。
【0045】
ギャップ10Gを通過する空気の温度を安定にするために、ギャップカバー50が設けられている。ギャップカバー50はギャップ10Gを全て気密に覆う。ギャップカバー50には、ギャップ10Gに出入りする空気の通過口50aを設けた。通過口50aの内径は100mmとした。チャンバー16には直径100mmのダクト18を設けた。通過口50aを通過する空気は、全てギャップ10Gを通過する。
【0046】
図9には、屋根構造1の設置状況を示す。
図9(a)は、太陽熱を回収する場合であり、
図9(b)は、太陽光パネル10を冷却する場合である。
図9(a)と
図9(b)は、空気の流れる方向(矢印で示した。)が逆になっている。屋根構造1は、南向きに傾斜角θが21.8度になるように図示しないフレーム(支持体)で固定した。
【0047】
ダクト18から通過口50aを断熱性のダクトホース54で連結した。ダクトホース54には途中に送風ファン20と空気冷却装置52を繋いだ。ダクトホース54には、風速計18kを配置した。風量は風速とダクトホース54の内径から算出した。また、通過口50aとダクト18には温度計50k、温度計16kを配置し、通過口50aおよびダクト18を通過する気温を測定できるようにした。また、屋根構造1の脇には、太陽光パネルに平行して日射計を配し、傾斜面日射量を測定できるようにした。また、
図9(b)の場合は、太陽光パネル10の表面温度を測定する温度計10kを配置した。
【0048】
[太陽熱回収の実験]
送風ファン20は、ダクト18から吸引する方向に送風ファン20を運転させ、
図9(a)の方向に空気を連続的に流した。日射量、通過口50aの気温、ダクト18の気温、風量測定は、10秒間隔で測定した。測定は2020年3月6日に測定した。測定結果を表1に示す。基準集熱効率ηおよび集熱量Qは、JIS A 4112(2011)により以下の(1)式および(2)式で算出した。日集熱効率は、「集熱量の合計/毎時日射量の合計」で算出した。
【0049】
【0050】
なお、d0、d1:実験結果から最小二乗法で求めた係数、今回はd0=0.2819、d1=-7.8016とした。
△θ’:試験体入口空気温度と周囲温度との差、K、JIS A 4112により、10Kとした。
I:毎時日射量、W/m2、JIS A 4112により、表1の値とした。
【0051】
【0052】
表1を参照して、本発明に係る屋根構造1によって、日集熱効率15.1%という非常に高い結果を得た。
【0053】
[太陽光パネル冷却の実験]
測定は、2021年6月9日に行った。空気冷却装置52は、通過口50aからの空気を冷却して、ダクト18に送る。太陽光パネル温度Tp、入口温度Ti(ダクト18の気温)、出口温度To(通過口50aの気温)、外気温Te、傾斜面全日射量Sr、ダクト内風量Avの測定結果を
図10に示す。
【0054】
図10を参照して、午前9時から午前11時までは、送風ファン20、空気冷却装置52は停止したままであった。この時通過口50aの気温は50℃から54℃であった。一方ダクト18の気温は30℃から31℃であった。
【0055】
午前11時から午前11時55分まで送風ファン20だけを稼働させた。送風ファン20を稼働させると、通過口50aの気温は一度32℃まで下がった後、再び50℃まで上昇した。ダクト18の気温は、送風ファン20を稼働した直後に50℃以上に上昇した。ダクトホース54内に蓄積した冷たい空気が流れたために通過口50aの気温は一時的に下がったが、空気が循環する間に空気の温度は一定に向かうためと考えられた。
【0056】
午前11時55分から13時30分まで送風ファン20と共に空気冷却装置52も稼働させた。この時間帯は、この日最も日射量が多い時間帯であった。通過口50aの気温は45℃程度まで下がりダクト18の気温は30℃程度まで下がった。
【0057】
ダクト18の気温は、空気冷却装置52によって冷却された空気が流れるので、温度は30℃程度まで下降したと考えられる。一方、通過口50aの気温は、温度の高い屋根構造1を通過するため、温度は高くなる。言い換えると、ダクト18の気温の空気によって、太陽光パネル10は冷たい空気が接していることになる。
【0058】
この冷却効果によって太陽光パネル10の表面温度は68℃から64℃程度に下がった。太陽光パネルの発電効率は、太陽光パネル温度の上昇により低下する。一般的に、(結晶系の太陽光発電素子の場合)1℃の温度上昇が0.4%の発電効率の低下を招く。したがって、太陽光パネルの表面温度が4℃~6℃程度低下すれば、太陽光パネルの発電効率が1.6~2.4%向上が見込めることがわかった。