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特開2022-29474ガス器具流量推定装置及びガス器具流量推定方法
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  • 特開-ガス器具流量推定装置及びガス器具流量推定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029474
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ガス器具流量推定装置及びガス器具流量推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132740
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】特許業務法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 信仁
(72)【発明者】
【氏名】小貝 和史
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CB01
2F030CC13
2F030CE02
2F030CE04
2F030CE27
2F030CF05
2F030CF11
(57)【要約】
【課題】ガスの実流量が緩やかに変化する場合でも、ガス器具の流量値を適切に推定することができるガス器具流量推定装置を提供する。
【解決手段】ガス器具流量推定装置10は、ガス器具3に向けて流れるガスの実流量を検出する検出部11と、今回のガスの実流量と前回のガス器具の合計流量値との差分となる緩流量を算出する緩流量算出部12と、今回のガスの実流量と前回のガスの実流量との差分となる変化流量を算出する変化流量算出部13と、算出された変化流量が予め設定された所定流量以上であるか否かを判定する流量判定部14と、所定流量以上となる変化流量が増加量となる場合、その変化流量を新たなガス器具3の流量値とし、所定流量以上となる変化流量が減少量となる場合、記憶されている全てのガス器具3の流量値の中から、変化流量及び緩流量に基づいた値に最も近い流量値を削除する推定部15とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のガス器具に向けて流れるガスの実流量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具の合計流量値との差分を、緩流量として算出する緩流量算出部と、
前記検出部によって検出された今回のガスの実流量と、前記検出部によって検出された前回のガスの実流量との差分を、変化流量として算出する変化流量算出部と、
前記変化流量算出部によって算出された変化流量が、予め設定された所定流量以上であるか否かを判定する流量判定部と、
前記流量判定部によって変化流量が所定流量以上であると判定され、且つ、変化流量が増加量となる場合、その変化流量を新たなガス器具の流量値とし、前記流量判定部によって変化流量が所定流量以上ではないと判定され、且つ、変化流量が減少量となる場合、記憶されている全てのガス器具の流量値の中から、変化流量及び緩流量に基づいた値に最も近い流量値を削除する推定部とを備える
ことを特徴とするガス器具流量推定装置。
【請求項2】
前記推定部によって流量値が削除され、且つ、前記検出部によって検出されたガスの実流量が0である場合、記憶されている緩流量をリセットし、前記推定部によって流量値が削除され、且つ、前記検出部によって検出されたガスの実流量が0ではない場合、記憶されている緩流量を更新する更新部を備える
ことを特徴とする請求項1記載のガス器具流量推定装置。
【請求項3】
前記緩流量算出部によって算出された緩流量が、正の値であるか否かを判定する正負判定部と、
前記正負判定部によって緩流量が正の値であると判定された場合、記憶されている全てのガス器具の流量値の中で最も大きな値となる流量値とその緩流量とを加算した合計値を、判断流量値と設定し、前記正負判定部によって緩流値が正ではないと判定された場合、記憶されている全てのガス器具の流量値の中で最も大きな値となる流量値を、判断流量値と設定する設定部と、
前記設定部によって設定された判断流量値が閾値を超える場合、前記ガス器具に接続するガス通路を遮断する遮断弁及び前記ガス器具の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を制御する制御部とを備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のガス器具流量推定装置。
【請求項4】
検出部が、1つ以上のガス器具に向けて流れるガスの実流量を検出し、
緩流量算出部が、前記検出部によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具の合計流量値との差分を、緩流量として算出し、
変化流量算出部が、前記検出部によって検出された今回のガスの実流量と、前記検出部によって検出された前回のガスの実流量との差分を、変化流量として算出し、
流量判定部が、前記変化流量算出部によって算出された変化流量が、予め設定された所定流量以上であるか否かを判定し、
推定部が、前記流量判定部によって変化流量が所定流量以上であると判定され、且つ、変化流量が増加量となる場合、その変化流量を新たなガス器具の流量値とし、前記流量判定部によって変化流量が所定流量以上ではないと判定され、且つ、変化流量が減少量となる場合、記憶されている全てのガス器具の流量値の中から、変化流量及び緩流量に基づいた値に最も近い流量値を削除する
ことを特徴とするガス器具流量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス器具の流量値を推定するガス器具流量推定装置及びガス器具流量推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスメータは、その内部を通過するガスの流量を検出し、この検出したガスの実流量の変化に基づいて、使用されているガス器具を推定する。また、ガスメータは、ガス器具の流量値及び使用時間を監視して、ガスの遮断及び警告を行う機能を有している。これにより、ガスメータには、ガス器具の流量値の変化を高精度に推定することが求められている。特許文献1には、ガス器具の流量値の変化を推定することができるガスメータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-91188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたガスメータは、今回の実流量と前回の実流量との差分(変化流量)が、所定流量以上となる場合に、今回の実流量と前回のガス器具の合計流量値との差分を、記憶されている最も大きなガス器具の流量値に加減算することで、当該ガス器具の流量値を補正する。このため、特許文献1に開示されたガスメータでは、今回の実流量と前回の実流量との差分が、所定流量以上でなければ、補正が行われないため、ガスの実流量が所定流量未満で緩やかに変化する場合には、ガス器具の流量値を適切に推定することはできない。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ガスの実流量が緩やかに変化する場合でも、ガス器具の流量値を適切に推定することができるガス器具流量推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るガス器具流量推定装置は、1つ以上のガス器具に向けて流れるガスの実流量を検出する検出部と、検出部によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具の合計流量値との差分を、緩流量として算出する緩流量算出部と、検出部によって検出された今回のガスの実流量と、検出部によって検出された前回のガスの実流量との差分を、変化流量として算出する変化流量算出部と、変化流量算出部によって算出された変化流量が、予め設定された所定流量以上であるか否かを判定する流量判定部と、流量判定部によって変化流量が所定流量以上であると判定され、且つ、変化流量が増加量となる場合、その変化流量を新たなガス器具の流量値とし、流量判定部によって変化流量が所定流量以上ではないと判定され、且つ、変化流量が減少量となる場合、記憶されている全てのガス器具の流量値の中から、変化流量及び緩流量に基づいた値に最も近い流量値を削除する推定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ガスの実流量が緩やかに変化する場合でも、ガス器具の流量値を適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るガス器具流量推定装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係るガス器具流量推定装置における流量推定動作を示すフローチャート図である。
図3】実施の形態1に係るガス器具流量推定装置における遮断弁及び警報器に対する制御動作を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1に係るガス器具流量推定装置の動作と従来のガス器具流量推定装置の動作とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10について、図1から図4を用いて説明する。
【0011】
先ず、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示したガス器具流量推定装置10は、例えば、ガスメータ1に設けられている。ガスの供給元となるガス供給源2と、ガスの供給先となる1つ以上のガス器具3とは、ガス通路4によって接続されている。ガス器具3は、ガス通路4から分岐した分岐路4aにそれぞれ繋がっている。ガスメータ1は、分岐路4aの手前のガス通路4上に設けられている。ガス器具3は、例えば、給湯器、ファンヒータ、及び、床暖房装置等である。
【0013】
ガス器具流量推定装置10は、検出部11、緩流量算出部12、変化流量算出部13、流量判定部14、推定部15、更新部16、正負判定部17、設定部18、制御部19、及び、記憶部20を備えている。
【0014】
検出部11は、ガス通路4の内部をガス器具3に向けて流れるガスの実流量を一定周期で検出する。また、検出部11は、検出したガスの実流量を記憶部20に記憶させる。この検出部11は、例えば、超音波センサ等である。
【0015】
緩流量算出部12は、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具3の合計流量値との差分を、緩やかに変化した分の変化流量となる緩流量として算出する。また、緩流量算出部12は、算出した緩流量を記憶部20に記憶させる。
【0016】
変化流量算出部13は、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、当該検出部11によって検出された前回のガスの実流量との差分を、変化流量として算出する。また、変化流量算出部13は、算出した変化流量を記憶部20に記憶させる。
【0017】
流量判定部14は、変化流量算出部13によって算出された変化流量が、予め設定された所定流量以上であるか否かを判定する。
【0018】
推定部15は、流量判定部14によって変化流量が所定流量以上であると判定された場合、その変化流量が増加量であるか否かを判定する(その変化流量が増加量又は減少量であるかを判定する)。また、推定部15は、変化流量を増加量であると判定した場合、その変化流量を、新たなガス器具3の流量値とする。この推定部15は、新たなガス器具3の流量値を、記憶部20に記憶させる。
【0019】
また、推定部15は、変化流量を増加量ではないと判定した場合(変化流量を減少量であると判定した場合)、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中から、変化流量及び緩流量に基づいた値に最も近い流量値を削除する。具体的には、推定部15は、変化流量を増加量ではないと判定した場合、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中から、その変化流量から緩流量を除いた値に最も近い流量値を削除する。
【0020】
更新部16は、記憶部20に記憶されている緩流量を、更新又はリセットする。
【0021】
具体的には、更新部16は、流量判定部14によって変化流量が所定流量以上ではないと判定された場合、記憶部20に記憶されている緩流量を、緩流量算出部12によって算出された緩流量に更新する。
【0022】
また、更新部16は、推定部15によって流量値が削除され、且つ、検出部11によって検出されたガスの実流量が0である場合、記憶部20に記憶されている緩流量をリセットする。更に、更新部16は、推定部15によって流量値が削除され、且つ、検出部11によって検出されたガスの実流量が0ではない場合、記憶部20に記憶されている緩流量を更新する。
【0023】
正負判定部17は、緩流量算出部12によって算出された緩流量が、正の値であるか否かを判定する(正の値又は負の値であるのかを判定する)。
【0024】
設定部18は、正負判定部17の判定結果に基づいて、判断流量値を設定する。
【0025】
具体的には、設定部18は、正負判定部17によって緩流値が正の値であると判定された場合、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値と、その正の値となる緩流値とを加算した合計値を、判断流量値として設定する。
【0026】
また、設定部18は、正負判定部17によって緩流値が正の値ではないと判定された場合(緩流値が負の値であると判定された場合)、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値を、そのまま判断流量値として設定する。
【0027】
制御部19は、設定部18によって設定された判断流量値が、予め設定された閾値を超えているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、ガス通路4を遮断する遮断弁及びガス器具3の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を制御する。即ち、判断流量値は、ガス通路4を遮断する遮断弁及びガス器具3の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を動作させる際の判断に使用する流量値である。
【0028】
具体的には、制御部19は、判断流量値が閾値を超える場合、ガス通路4を遮断弁によって閉じることにより、ガスのガス器具3への流れを遮断する。また、制御部19は、警報器を駆動させて、ガスメータ1が設置される家屋の住人に対して、警報を発する。
【0029】
また、制御部19は、判断流量値が閾値を超えない場合、遮断弁をガス通路4に対して開けることにより、ガスをガス器具3に向けて供給する。また、制御部19は、警報器を駆動させない。
【0030】
次に、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10の動作について、図2から図4を用いて説明する。
【0031】
図2は、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10における流量推定動作を示すフローチャート図である。
【0032】
ステップST31において、検出部11は、ガス通路4を流れるガスの実流量を一定周期で検出する。
【0033】
ステップST32において、緩流量算出部12は、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具3の合計流量値との差分を、緩流量として算出する。
【0034】
ステップST33において、変化流量算出部13は、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、検出部11によって検出された前回のガスの実流量との差分を、変化流量として算出する。
【0035】
ステップST34において、流量判定部14は、変化流量算出部13によって算出された変化流量が、予め設定された所定流量以上であるか否かを判定する。ここで、流量判定部14が変化流量を所定流量以上であると判定した場合(YESの場合)、流量推定動作は、ステップST35に進む。一方、流量判定部14が変化流量を所定流量以上ではないと判定した場合(NOの場合)、流量推定動作は、ステップST41に進む。
【0036】
ステップST35において、推定部15は、流量判定部14によって所定流量以上となる変化流量が増加量であるか否かを判定する。ここで、推定部15が変化流量を増加量であると判定した場合(YESの場合)、流量推定動作は、ステップST36に進む。一方、推定部15が変化流量を増加量ではないと判定した場合(NOの場合)、流量推定動作は、ステップST37に進む。
【0037】
ステップST36において、推定部15は、増加量となる変化流量を、新たなガス器具3の流量値として、記憶部20に記憶させる。そして、流量推定動作は、終了する。
【0038】
ステップST37において、推定部15は、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中から、その変化流量から緩流量を除いた値に最も近い流量値を削除する。
【0039】
ステップST38において、更新部16は、検出部11によって検出されたガスの実流量が「0」であるか否かを判定する。ここで、更新部16がガスの実流値を「0」であると判定した場合(YESの場合)、流量推定動作は、ステップST39に進む。一方、更新部16がガスの実流量を「0」ではないと判定した場合(NOの場合)、流量推定動作は、ステップST40に進む。
【0040】
ステップST39において、更新部16は、記憶部20に記憶されている緩流量をリセットする。そして、流量推定動作は、終了する。
【0041】
ステップST40において、更新部16は、記憶部20に記憶されている緩流量を更新する。そして、流量推定動作は、終了する。
【0042】
ステップST41において、更新部16は、記憶部20に記憶されている緩流量を更新する。そして、流量推定動作は、終了する。
【0043】
図3は、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10における遮断弁及び警報器に対する制御動作を示すフローチャートである。
【0044】
ステップST51において、検出部11は、ガス通路4を流れるガスの実流量を一定周期で検出する。
【0045】
ステップST52において、緩流量算出部12は、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具3の合計流量値との差分を、緩流量として算出する。
【0046】
ステップST53において、正負判定部17は、緩流量算出部12によって算出された緩流量が、正の値であるか否かを判定する。ここで、正負判定部17が緩流量を正の値であると判定した場合、遮断弁及び警報器に対する制御動作は、ステップST54に進む。一方、正負判定部17が緩流量を正の値ではないと判定した場合、遮断弁及び警報器に対する制御動作は、ステップST55に進む。
【0047】
ステップST54においては、設定部18は、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値と、その正の値となる緩流値とを加算した合計値を、判断流量値として設定する。
【0048】
ステップST55において、設定部18は、記憶部20に記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値を、そのまま判断流量値として設定する。
【0049】
ステップST56において、制御部19は、判断流量値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する。ここで、制御部19が、判断流量値が閾値を超えていると判定した場合、遮断弁及び警報器に対する制御動作は、ステップST57に進む。一方、制御部19が、判断流量値が閾値を超えていないと判定した場合、遮断弁及び警報器に対する制御動作は、終了する。
【0050】
ステップST57において、制御部19は、ガス通路4を遮断弁によって閉じることにより、ガスのガス器具3への流れを遮断する。また、制御部19は、警報器を駆動させて、ガスメータ1が設置される家屋の住人に対して、警報を発する。そして、遮断弁及び警報器に対する制御動作は、終了する。
【0051】
図4は、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10の動作と従来のガス器具流量推定装置の動作とを比較した図である。
【0052】
図4の上段に記載されるグラフは、検出部11によって検出されたガスの実流量の推移を、時間の経過と共に示したものである。図4の中段に記載される表は、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10によって推定される、複数のガス器具3の各流量値の変化を示したものである。図4の下段に記載される表は、従来のガス器具流量推定装置によって推定される、複数のガス器具の各流量値の変化を示したものである。また、図4においては、時間経過は、(1)~(7)の範囲で区分している。なお、従来のガス器具流量推定装置は、例えば、上記特許文献1に開示されたガス器具流量推定装置を想定している。
【0053】
図4は、3つのガス器具3を用いた例を示している。例えば、1つ目のガス器具3における通常使用時の流量値は、250[L/h]となっている。2つ目のガス器具3における通常使用時の流量値は、200[L/h]となっている。3つ目のガス器具3における通常使用時の流量値は、150[L/h]となっている。
【0054】
また、Q0[L/h]は、ガスを現在使用しているガス器具3の流量値の中で、最も大きな流量値を示している。Q1[L/h]は、ガスを現在使用しているガス器具3の流量値の中で、2番目に大きな流量値を示している。Q2[L/h]は、ガスを現在使用しているガス器具3の流量値の中で、3番目に大きな流量値を示している。Qdiff[L/h]は、緩流量を示している。Qjudge[L/h]は、判断流量値を示している。
【0055】
そこで、図4の上段及び中段に示すように、時間経過(1)の範囲においては、全てのガス器具3が起動しておらず、ガスの実流量は、0[L/h]となっている。
【0056】
時間経過(2)の範囲においては、3つ目のガス器具3が起動し始める。このため、Q0は、150[L/h]となっている。Qdiffは、0[L/h]となっている。Qjudgeは、150[L/h]となっている。ガスの実流量は、150[L/h]となっている。
【0057】
時間経過(3)の範囲においては、3つ目のガス器具3の起動に加えて、1つ目のガス器具3が起動し始める。このため、Q0は、250[L/h]となっている。Q1は、150[L/h]となっている。Qdiffは、0[L/h]となっている。Qjudgeは、250[L/h]となっている。ガスの実流量は、400から450[L/h]まで、緩やかに増加する。
【0058】
時間経過(4)の範囲においては、1つ目及び3つ目のガス器具3が共に起動している。このため、Q0は、250[L/h]となっている。Q1は、150[L/h]となっている。Qdiffは、50[L/h]となっている。Qjudgeは、300[L/h]となっている。ガスの実流量は、450[L/h]となっている。
【0059】
時間経過(5)の範囲においては、1つ目及び3つ目のガス器具3の起動に加えて、2つ目のガス器具3が起動し始める。このため、Q0は、250[L/h]となっている。Q1は、200[L/h]となっている。Q2は、150[L/h]となっている。Qdiffは、50[L/h]となっている。Qjudgeは、300[L/h]となっている。ガスの実流量は、650[L/h]まで増加している。
【0060】
時間経過(6)の範囲においては、2つ目及び3つ目のガス器具3が起動し続けるものの、1つ目のガス器具3の起動が停止される。このため、Q0は、200[L/h]となっている。Q1は、150[L/h]となっている。Qdiffは、50[L/h]となっている。Qjudgeは、250[L/h]となっている。ガスの実流量は、400から350[L/h]まで、緩やかに減少する。
【0061】
時間経過(7)の範囲においては、2つ目及び3つ目のガス器具3が共に起動している。このため、Q0は、200[L/h]となっている。Q1は、150[L/h]となっている。Qdiffは、0[L/h]となっている。Qjudgeは、200[L/h]となっている。ガスの実流量は、350[L/h]となっている。
【0062】
このとき、時間経過が(2)の範囲から(3)の範囲に移る際に、実流量は、150から400[L/h]に増加している。このため、推定部15は、時間経過(3)の範囲において、その変化流量となる250[L/h]を、新たなガス器具3の流量値としている。
【0063】
また、時間経過が(5)の範囲から(6)の範囲に移る際に、実流量は、650から400[L/h]に減少している。このため、推定部15は、時間経過(5)の範囲において記憶されているQ0=250[L/h]、Q1=200[L/h]、及び、Q2=150[L/h]の中から、その変化流量となる250[L/h]からQdiff=50[L/h]を除いた値(200[L/h])に最も近いQ1=200[L/h]を、時間経過(6)において削除する。
【0064】
従って、ガス器具流量推定装置10は、ガスの実流量が緩やかに変化する場合でも、全てのガス器具3の流量値を適切に推定することができる。
【0065】
更に、設定部18は、正負判定部17によって緩流量が正の値であると判定された場合、記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値とその緩流量とを加算した合計値を、判断流量値と設定する。また、設定部18は、正負判定部17によって緩流値が正ではないと判定された場合、記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値を、判断流量値と設定する。そして、制御部19は、設定部18によって設定された判断流量値が閾値を超える場合、ガス器具3に接続するガス通路4を遮断する遮断弁及びガス器具3の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を制御する。
【0066】
例えば、時間経過(3)においては、ガスの実流量が緩やかに増加し、時間経過(4)においては、Qdiff=50[L/h]が、正の値となっている。このため、設定部18は、時間経過(4)において最大流量値となるQ0=250[L/h]と、Qdiff=50[L/h]とを加算した合計値(300[L/h])を、時間経過(4)におけるQjudgeとしている。
【0067】
そして、時間経過(4)において、制御部19は、Qjudge=300[L/h]が閾値を超える場合、ガス通路4を遮断する遮断弁及びガス器具3の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を制御する。また、制御部19は、Qjudge=300[L/h]が閾値を超えない場合、遮断弁及び警報器を動作させない。なお、図4には、閾値を記載していない。
【0068】
また、時間経過(6)においては、ガスの実流量が緩やかに減少し、時間経過(7)においては、Qdiff=0[L/h]が、負の値 となっている。このため、設定部18は、時間経過(6)において最大流量値となるQ0=200[L/h]を、時間経過(7)におけるQjudgeとしている。
【0069】
そして、時間経過(7)において、制御部19は、Qjudge=200[L/h]が閾値を超える場合、ガス通路4を遮断する遮断弁及びガス器具3の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を制御する。また、制御部19は、Qjudge=200[L/h]が閾値を超えない場合、遮断弁及び警報器を動作させない。
【0070】
従って、ガス器具流量推定装置10においては、設定部18は、Qjudgeを設定する際に、Qdiffを加味して設定することができる。このため、制御部19は、遮断弁及び警報器を適切に制御することができる。
【0071】
これに対して、図4の下段に示すように、従来のガス器具流量推定装置は、緩やかに流れる実流量に対応するものではないため、ガス器具3の流量値を適切に推定することができない。また、従来のガス器具流量推定装置は、遮断弁及び警報器を適切に制御することができない。
【0072】
以上、実施の形態1に係るガス器具流量推定装置10は、1つ以上のガス器具3に向けて流れるガスの実流量を検出する検出部11と、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、前回のガス器具3の合計流量値との差分を、緩流量として算出する緩流量算出部12と、検出部11によって検出された今回のガスの実流量と、検出部11によって検出された前回のガスの実流量との差分を、変化流量として算出する変化流量算出部13と、変化流量算出部13によって算出された変化流量が、予め設定された所定流量以上であるか否かを判定する流量判定部14と、流量判定部14によって変化流量が所定流量以上であると判定され、且つ、変化流量が増加量となる場合、その変化流量を新たなガス器具3の流量値とし、流量判定部14によって変化流量が所定流量以上ではないと判定され、且つ、変化流量が減少量となる場合、記憶されている全てのガス器具3の流量値の中から、変化流量及び緩流量に基づいた値に最も近い流量値を削除する推定部15とを備える。このため、ガス器具流量推定装置10は、ガスの実流量が緩やかに変化する場合でも、ガス器具3の流量値を適切に推定することができる。
【0073】
ガス器具流量推定装置10は、推定部15によって流量値が削除され、且つ、検出部11によって検出されたガスの実流量が0である場合、記憶されている緩流量をリセットし、推定部15によって流量値が削除され、且つ、検出部11によって検出されたガスの実流量が0ではない場合、記憶されている緩流量を更新する更新部16を備える。このため、ガス器具流量推定装置10は、ガスの実流量に対応する緩流量を常に使用することができるため、ガス器具3の流量値を高精度に推定することができる。
【0074】
ガス器具流量推定装置10は、緩流量算出部12によって算出された緩流量が、正の値であるか否かを判定する正負判定部17と、正負判定部17によって緩流量が正の値であると判定された場合、記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値とその緩流量とを加算した合計値を、判断流量値と設定し、正負判定部17によって緩流値が正ではないと判定された場合、記憶されている全てのガス器具3の流量値の中で最も大きな値となる流量値を、判断流量値と設定する設定部18と、設定部18によって設定された判断流量値が閾値を超える場合、ガス器具3に接続するガス通路4を遮断する遮断弁及びガス器具3の周囲に警報を発する警報器のうち、少なくともいずれか一方を制御する制御部19とを備える。このため、ガス器具流量推定装置10は、遮断弁及び警報器を適切に制御することができる。
【0075】
なお、本願発明は、その発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは、実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ガスメータ
2 ガス供給源
3 ガス器具
4 ガス通路
10 ガス器具流量推定装置
11 検出部
12 緩流量算出部
13 変化流量算出部
14 流量判定部
15 推定部
16 更新部
17 正負判定部
18 設定部
19 制御部
20 記憶部
図1
図2
図3
図4