(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029538
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】冷凍施設
(51)【国際特許分類】
E04H 5/10 20060101AFI20220210BHJP
F25D 13/00 20060101ALI20220210BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
E04H5/10
F25D13/00 A
E04B1/76 200D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132847
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中垣 康平
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基之
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】下町 浩二
【テーマコード(参考)】
2E001
3L045
【Fターム(参考)】
2E001DD04
2E001FA21
2E001FA26
2E001NA03
3L045AA04
3L045BA03
3L045CA03
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】複数のピットを備える冷凍施設に関し、各ピット内において外気を可及的均一に供給することのできる冷凍施設を提供すること。
【解決手段】冷凍庫60を内蔵する冷凍施設80であり、冷凍庫60が搭載される土間スラブ10と、土間スラブ10の下方にある複数のピット20とを有し、隣接するピット20は仕切壁15にて仕切られ、仕切壁15には通気口15aが設けられており、少なくとも一つのピット20のうち、外部に隣接する外壁13に強制排気口13aが設けられ、他の少なくとも一つのピット20のうち、外部に隣接する外壁12に給気口12aが設けられており、対向する外壁12と仕切壁15のそれぞれの給気口12aと通気口15a、対向する二つの仕切壁15のそれぞれの通気口15a、対向する仕切壁15と外壁13のそれぞれの通気口15aと強制排気口13aがいずれも、水平方向に相互にずれた位置に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍庫を内蔵する冷凍施設であって、
冷凍庫が搭載される土間スラブと、該土間スラブの下方にある複数のピットとを少なくとも有し、
隣接する前記ピットは仕切壁にて仕切られ、それぞれの該仕切壁には通気口が設けられており、
少なくとも一つの前記ピットのうち、外部に隣接する外壁に強制排気口が設けられ、他の少なくとも一つの前記ピットのうち、外部に隣接する外壁に自然給気口もしくは強制給気口のいずれか一種の給気口が設けられており、
対向する前記外壁と前記仕切壁のそれぞれの前記給気口と前記通気口、対向する二つの前記仕切壁のそれぞれの前記通気口、対向する前記仕切壁と前記外壁のそれぞれの前記通気口と前記強制排気口がいずれも、水平方向に相互にずれた位置に設けられていることを特徴とする、冷凍施設。
【請求項2】
複数の前記ピットが一列に並んで通気ラインを形成し、該通気ラインを形成して隣接する該ピットを仕切る前記仕切壁は第一仕切壁であり、該第一仕切壁に設けられている前記通気口は第一通気口であり、
複数の前記通気ラインが併設され、異なる該通気ラインに属して相互に隣接する二つの前記ピットを仕切る前記仕切壁は第二仕切壁であり、該第二仕切壁に設けられている前記通気口は第二通気口であり、
それぞれの前記通気ラインがいずれも、一端に固有の前記給気口を備え、他端に前記強制排気口を備えており、隣接する該通気ラインにおいて、それぞれの有する前記給気口と前記強制排気口が相互に反対側にあることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍施設。
【請求項3】
前記第一通気口と前記第二通気口がいずれも、点検用の人通口と通気口の兼用口であることを特徴とする、請求項2に記載の冷凍施設。
【請求項4】
前記第一通気口と前記第二通気口がそれぞれ、手動もしくは自動にて開閉自在な第一ダンパーと第二ダンパーを備えていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の冷凍施設。
【請求項5】
少なくとも、前記通気口の近傍と前記強制排気口の近傍において、地盤の温度を計測する温度センサが設けられていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の冷凍施設。
【請求項6】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
地盤の温度の閾値を格納する格納部と、
前記温度センサから送信される温度計測データを受信する通信部と、
前記温度計測データと前記閾値を比較する判定部と、
前記判定部による判定結果に基づいて前記第一ダンパーと前記第二ダンパーの開閉制御を実行する、ダンパー駆動部と、を有し、一つの前記強制排気口と一つの前記給気口を備えた複数の前記ピットにより構成される、複数の通気エリアを形成することを特徴とする、請求項4に従属する請求項5に記載の冷凍施設。
【請求項7】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
一つの前記強制排気口と一つの前記給気口を備えた複数の前記ピットにより構成される、複数の通気エリアを形成するように、前記第一ダンパーと前記第二ダンパーの開閉制御を実行するダンパー駆動部を有することを特徴とする、請求項4又は請求項4に従属する請求項5に記載の冷凍施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍施設に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場をはじめとする冷凍施設においては、大規模な冷凍庫が建物内に装備されており、庫内の温度がマイナスであることから、この冷熱が建物下方の地盤へ伝熱されることに起因して凍上が発生する恐れがある。凍上のメカニズムは以下の通りである。まず、冷凍庫からの伝熱によって地盤凍結線が発生し、アイスレンズの発生と地中の水分移動が生じる。ここで、アイスレンズとは、地中水分の凍結過程において、水分が凍結面付近に集まり、レンズ状の氷晶が形成される現象のことである。その後、アイスレンズが増長し、地盤の隆起に至る。このように、地中水分の凍結と体積膨張によって地盤が隆起することにより、施設が傾斜する等の被害が生じ得る。この凍上を防止する対策として、凍上防止管を設置する、所謂通気管工法と、地下ピットを造成して施設の直下から凍上対象の地盤そのものを排除する、所謂二重床工法(もしくはピット工法)を挙げることができる。
【0003】
上記する二重床工法は、土間スラブ下に設けられている複数のピットに外気等を流通させることにより、冷凍庫が載置される床及びその下の地盤を加温して凍上を防止する工法である。ところで、この二重床工法では、相互に隣接する複数のピットを仕切る仕切壁に通気口が設けられ、それぞれの仕切壁の通気口を介して外気が流通するようになっているが、往々にして外気の流れが複雑になり、また、ピット内において外気が流通しないエリアが発生し、このように外気が流通しないエリアにおいては外気による加温が行われないことから凍上の危険性がある。
【0004】
ここで、ピットと凍上防止通気管等を併用した冷凍庫土間下凍上防止工法が提案されている。具体的には、冷凍庫の土間下において、ピット部分の各ピットの境目になる地中梁に通気口を設けて各ピット間を連結し、ピット部分の外部に面している部分には適宜突き出し立ち上げた通気口を設け、ピット部分以外の土間下には厚く砕石を敷き均し、ピットに向かって下り勾配をつけて凍上防止通気管を設けて各ピット部分間を連結する工法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の冷凍庫土間下凍上防止工法では、ピットのないエリアに対しては外気が供給されないことから、地盤の凍上の危険性のあるエリアが生じ得る。また、上記する課題、すなわち、ピット内において外気が流通しないエリアが発生するといった課題を解消できるものではない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数のピットを備える冷凍施設に関し、各ピット内において外気を可及的均一に供給することのできる冷凍施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による冷凍施設の一態様は、
冷凍庫を内蔵する冷凍施設であって、
冷凍庫が搭載される土間スラブと、該土間スラブの下方にある複数のピットとを少なくとも有し、
隣接する前記ピットは仕切壁にて仕切られ、それぞれの該仕切壁には通気口が設けられており、
少なくとも一つの前記ピットのうち、外部に隣接する外壁に強制排気口が設けられ、他の少なくとも一つの前記ピットのうち、外部に隣接する外壁に自然給気口もしくは強制給気口のいずれか一種の給気口が設けられており、
対向する前記外壁と前記仕切壁のそれぞれの前記給気口と前記通気口、対向する二つの前記仕切壁のそれぞれの前記通気口、対向する前記仕切壁と前記外壁のそれぞれの前記通気口と前記強制排気口がいずれも、水平方向に相互にずれた位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、ピットの有する相互に対向する外壁(二重床(ピット)の外壁)と仕切壁のそれぞれの給気口と通気口や、ピットの有する相互に対向する二つの仕切壁のそれぞれの通気口、さらにはピットの有する相互に対向する仕切壁と外壁のそれぞれの通気口と強制排気口において、対向する給気口と通気口、対向する二つの通気口、対向する通気口と強制排気口が水平方向に相互にずれた位置に設けられていることにより、例えば平面視矩形の各ピット内を対角線状もしくは略対角線状に外気が流通することとなり、一つのピット内における全域に対して外気を可及的均一に流通させることができる。各仕切壁には、通気口が一つあればよく、例えば、対向する仕切壁の対角位置にそれぞれの通気口が設けられていることにより、例えば平面視矩形のピットに供給された外気は、対角線状に流通しながら、外気の一部は異なる対角線状にも流れることになり、結果としてピット内の全域に外気が供給されることになる。
【0010】
本態様の冷凍施設では、例えば、対向する二つの外壁の一方に強制排気口が設けられ、他方の外壁に給気口が設けられている。強制排気口は、排気口と排気ファンとにより構成される。一方、給気口は自然給気口もしくは強制給気口のいずれであってもよいが、強制排気口の排気により外気が強制的に給気口より給気されることから、給気口は自然給気口でよい。
【0011】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、複数の前記ピットが一列に並んで通気ラインを形成し、該通気ラインを形成して隣接する該ピットを仕切る前記仕切壁は第一仕切壁であり、該第一仕切壁に設けられている前記通気口は第一通気口であり、
複数の前記通気ラインが併設され、異なる該通気ラインに属して相互に隣接する二つの前記ピットを仕切る前記仕切壁は第二仕切壁であり、該第二仕切壁に設けられている前記通気口は第二通気口であり、
それぞれの前記通気ラインがいずれも、一端に固有の前記給気口を備え、他端に前記強制排気口を備えており、隣接する該通気ラインにおいて、それぞれの有する前記給気口と前記強制排気口が相互に反対側にあることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、複数のピットにより形成され、かつ固有の給気口と強制排気口を備えている、複数の通気ラインが相互に併設される構成において、隣接する通気ラインの有する強制排気口と給気口が相互に反対側にあることにより、一方の強制排気口側の地盤を他方の給気口側の地盤から加温することができ、冷凍施設の全域の地盤を可及的均一に加温することが可能になる。外気が供給された直後の給気口付近のピットは十分に加温される一方、流通過程で外気の温度は徐々に低下し、例えば強制排気口付近のピットにおいては十分な加温が行われないことになり、強制排気口付近のピット下の地盤の凍上の危険性がある。しかしながら、本態様においては、隣接する通気ラインの一方の通気ラインの強制排気口の近傍に他方の通気ラインの給気口が存在することから、一方の通気ラインの強制排気口を有するピットの地盤(外気にて十分に加温されていない地盤)に対して、他方の通気ラインの給気口を有するピットの地盤(外気にて十分に加温されている地盤)から伝熱されることにより、強制排気口に対応するピットの地盤も十分に加温されることになる。
【0013】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、前記第一通気口と前記第二通気口がいずれも、点検用の人通口と通気口の兼用口であることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、各ピットに必ず設けられる点検用の人通口を通気口にも兼用することにより、通気口を別途設ける必要がなくなる。本態様の冷凍施設においては、ピットを構成する各仕切壁(第一仕切壁と第二仕切壁)にそれぞれ一つの通気口が設けられていればよいことから、同様に各仕切壁に設けられる人通口を通気口にも兼用することにより、兼用口にて人通口と通気口の双方の機能が奏される。
【0015】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、前記第一通気口と前記第二通気口がそれぞれ、手動もしくは自動にて開閉自在な第一ダンパーと第二ダンパーを備えていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第一通気口と第二通気口にそれぞれ手動もしくは自動にて開閉自在な第一ダンパーと第二ダンパーが設けられていることにより、各ダンパーを所望に開閉させることで、通気ラインごとの外気の流通の他、隣接する通気ラインを跨いだ多様な外気の流通を生じさせることができる。例えば、通気ラインが5つのピットを有し、2つの通気ラインを備えている冷凍施設において、各通気ラインを跨いで4つのピットからなるエリアと6つのピットからなるエリアにエリア分割したい場合が生じ得る。4つのピットからなるエリアと6つのピットからなるエリアで、上方に設置される冷凍庫の温度が異なる場合などにおいてこのような要請が生じ得る。この場合、4つのピットからなるエリアと6つのピットからなるエリアにエリア分割するように、各第一通気口と第二通気口の有する第一ダンパーと第二ダンパーを手動もしくは自動にて開閉する。第一通気口と第二通気口が上記するように人通口と兼用された兼用口である場合は、人が兼用口を通過しながら各通気口のダンパーを開閉できることから好適である。
【0017】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、少なくとも、前記通気口の近傍と前記強制排気口の近傍において、地盤の温度を計測する温度センサが設けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、少なくとも通気口の近傍と強制排気口の近傍に地盤の温度を計測する温度センサが設けられていることにより、各ピットの複数箇所における地盤の温度を随時確認することができ、地盤の温度から凍上の危険性のあるピットを速やかに特定し、凍上対策を講じることが可能になる。
【0019】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
地盤の温度の閾値を格納する格納部と、
前記温度センサから送信される温度計測データを受信する通信部と、
前記温度計測データと前記閾値を比較する判定部と、
前記判定部による判定結果に基づいて前記第一ダンパーと前記第二ダンパーの開閉制御を実行する、ダンパー駆動部と、を有し、一つの前記強制排気口と一つの前記給気口を備えた複数の前記ピットにより構成される、複数の通気エリアを形成することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、温度センサから送信される温度計測データを制御装置が受信し、制御装置が凍上の危険性のあるエリアと危険性のないエリアを判定し、判定結果に基づいて複数の通気エリアにエリア分割するべく、各第一ダンパーと第二ダンパーの開閉制御を実行することにより、凍上を無人かつ効率的に防止することが可能になる。
【0021】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
一つの前記強制排気口と一つの前記給気口を備えた複数の前記ピットにより構成される、複数の通気エリアを形成するように、前記第一ダンパーと前記第二ダンパーの開閉制御を実行するダンパー駆動部を有することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、冷凍施設において温度の異なる複数の冷凍庫の配置が変更等される場合に、この冷凍庫の配置変更に応じて通気エリアのエリア分割を変更する場合に、制御装置による各第一ダンパーと第二ダンパーの開閉制御により、効率的かつ速やかに通気エリアのエリア分割を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の冷凍施設によれば、複数のピットを備える冷凍施設に関し、各ピット内において外気を可及的均一に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る冷凍施設の一例のうち、土間スラブ下のピットの途中位置で切断した横断面図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であって、実施形態に係る冷凍施設のX軸方向に沿う縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III矢視図であって、実施形態に係る冷凍施設のY軸方向に沿う縦断面図である。
【
図4】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】制御装置による制御方法の一例を説明する図である。
【
図7】制御装置による制御方法の他例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る冷凍施設の一例とその制御方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0026】
[実施形態に係る冷凍施設]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係る冷凍施設の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る冷凍施設の一例のうち、土間下のピットの途中位置で切断した横断面図である。また、
図2と
図3はそれぞれ、
図1のII-II矢視図であって、実施形態に係る冷凍施設のX軸方向に沿う縦断面図と、
図1のIII-III矢視図であって、実施形態に係る冷凍施設のY軸方向に沿う縦断面図である。さらに、
図4は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図5は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【0027】
図2及び
図3に示すように、冷凍施設80は、二重床を構成する土間スラブ10及び基礎スラブ11の間に複数のピット20を有し、土間スラブ10の上に冷凍庫60が載置され、さらに、施設建屋を構成する壁51と屋根52を有し、施設建屋内に制御装置70を有している。
【0028】
ここで、壁51は角波鋼板等により形成され、屋根52は折板により形成される。角波鋼板と折板はともに、鋼板やステンレス、ガリバリウム鋼板、これらの板材に合成樹脂塗装やメッキが施された板材等が適用される。また、土間スラブ10と基礎スラブ11は鉄筋コンクリート製のスラブであり、基礎スラブ11の下方には、不図示の砕石が敷設され、地盤G上において冷凍庫60と施設建屋を支持している。
【0029】
冷凍庫60の側壁と天井は、断熱パネル(もしくは断熱材フォーム)にて包囲されており、この断熱パネルは、発泡ポリスチレン、発泡スチレン、ポリスチレン、スチレン等のパネル材(もしくはフォーム材)により形成される。
【0030】
図1に示すように、二重床は、平面視矩形(図示例は正方形)の複数(図示例は5つ)のピット20をX軸方向に一列に備え、一列に並ぶ5つのピット20により通気ライン25が形成されており、複数の通気ライン25が併設されることにより二重床が構成されている。尚、図示例以外にも、例えば平面積の大きな複数のピットが一列に並ぶ、一つの通気ラインにより二重床の全体が形成される形態であってもよい。
【0031】
図1において、各通気ライン25は、外側にY軸方向に延設する外壁12,13を有し、一方の外壁12には自然給気口である給気口12aが開設され、他方の外壁13には強制排気口を構成する排気口13aが開設され、排気口13aには排気ファン38が取り付けられている。
図1において、下方の通気ライン25は、さらにX軸方向に延設する外壁14を備えている。尚、排気ファン38としては、プロペラファンやシロッコファン、ターボファン、斜流ファン、ラインフローファン(登録商標)など、多様な形態のファンが適用できる。
【0032】
通気ライン25において、隣接するピット20は第一仕切壁15により仕切られ、隣接する通気ライン25のそれぞれに属して相互に隣接するピット20は第二仕切壁16により仕切られている。ここで、仕切壁15,16は、文字通りの壁の他、地中梁により形成される。
【0033】
仕切壁15,16にはそれぞれ、一つの第一通気口15aと一つの第二通気口16aが開設されている。より詳細には、第一通気口15aと第二通気口16aはいずれも、点検用の人通口が通気口としても利用される兼用口である。兼用口15a,16aが人通口でもあることから、その径はφ500乃至φ800mm程度の大きさに設定できる。
【0034】
第一通気口15aと第二通気口16aにはそれぞれ、第一ダンパー30と第二ダンパー35が開閉自在に取り付けられている。これら第一ダンパー30と第二ダンパー35は、手動による開閉、自動による開閉制御のいずれの形態であってもよいが、制御装置70を備えている図示例の冷凍施設80において、第一ダンパー30と第二ダンパー35は制御装置70により開閉制御が行われるものとして説明する。
【0035】
また、第一通気口15aの近傍と強制排気口13aの近傍においては、地盤Gの温度を計測する温度センサ40が設けられている。この温度センサ40による各ポイントの温度計測は、管理者等が二重床内に入り、目視等にて行ってもよいが、図示例の冷凍施設80では、各温度センサ40による温度計測データが制御装置70に送信され、制御装置70により第一ダンパー30と第二ダンパー35の開閉制御が実行されるものとして説明する。
【0036】
各通気ライン25において、対向する外壁12と仕切壁15のそれぞれの給気口12aと通気口15a、対向する二つの仕切壁15のそれぞれの通気口15a、対向する仕切壁15と外壁13のそれぞれの通気口15aと強制排気口13aはいずれも、水平方向に相互にずれた位置に設定されている。
図1に示す例では、対向する各通気口15a等がY軸方向に相互にずれた位置に配設されている。
【0037】
より詳細には、対向する各通気口15a等が、平面視正方形のピット20の一つの対角線に近接する位置にくるように設定されている。
【0038】
このように、対向する各通気口15a等が水平方向に相互にずれた位置に設定されていることにより、排気ファン38を駆動して給気口12aから外気をピット20内に導入した際に、導入された外気は、各ピット20を対角線状へX2方向に蛇行するように流通する。このように、外気が各ピット20内において対角線状に流通することにより、外気はピット20内の全域に供給され易くなり、ピット20内の全域の下方にある地盤Gを可及的均一に加温することが可能になる。このことにより、各ピット20において、外気が流通しないことに起因して凍上の危険性があるエリアが生じることを抑制できる。
【0039】
一般的な外気の導入方法は、
図1に示すように、各通気ライン25において、第一ダンパー30を全て開き、固有の給気口12aからX1方向に導入された外気を、通気ライン25を構成する各ピット20内を対角線状へX2方向に順次流通させ、固有の強制排気口13aを介して外部へX3方向に排気する導入方法となる。この際、第二仕切壁16を構成する全ての第二ダンパー35を閉じた状態とし、第二通気口16aを介して隣接する通気ライン25間での外気の行き来が遮断される。
【0040】
ところで、外気が供給された直後の給気口12a付近のピット20は十分に加温される一方、流通過程で外気の温度は徐々に低下し、強制排気口13a付近のピット20においては十分な加温が行われないことになり、強制排気口13a付近のピット20の下の地盤Gの凍上が懸念される。
【0041】
そこで、
図1に示すように、図示例の二重床においては、隣接する通気ライン25において、それぞれの有する給気口12aと強制排気口13aが相互に反対側となるように構成されている。このように、隣接する一方の通気ライン25の強制排気口13aの近傍に他方の通気ライン25の給気口12aが存在することから、一方の通気ライン25の強制排気口13aを有するピット20の地盤G(外気にて十分に加温されていない地盤G)に対して、他方の通気ライン25の給気口12aを有するピット20の地盤G(外気にて十分に加温されている地盤G)から伝熱されることになる。このように地盤Gを介した伝熱作用により、強制排気口13aに対応するピット20の地盤Gも十分に加温されることになり、冷凍施設80の全域における地盤Gを可及的均一に加温することが可能になる。
【0042】
制御装置70は、マイクロコンピュータ(マイコン)により構成される。図示例においては、施設建屋の屋根52と壁51の一隅各部に制御装置70が設置されているが、施設建屋のいずれの場所に設置されてもよいし、冷凍施設80の外部にある別の建屋等に設置されてもよい。
【0043】
各温度センサ40による温度計測データは、制御装置70に送信されるようになっている。また、排気ファン38は駆動モータ(図示せず)を有し、商用交流電源(図示せず)に配線接続されている。また、この配線には運転/停止スイッチ(図示せず)が介在しており、制御装置70から送信される運転制御信号や運転停止制御信号を受け、運転/停止スイッチがON(運転)側もしくはOFF(運転停止)側に操作されるようになっている。尚、駆動モータと制御装置70とは、無線もしくは配線接続により、信号の送受信が行われる。
【0044】
ここで、
図4は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図5は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。また、
図6と
図7はいずれも、制御装置による制御方法の一例を説明する図である。
【0045】
マイクロコンピュータ(マイコン)により構成される制御装置70は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)71、RAM(Random Access Memory)72、ROM(Read Only Memory)73、NVRAM(Non-Volatile RAM)74、HDD(Hard Disc Drive)75、及びI/Oポート76等を有する。そして、各部は、情報伝達可能にバス77により接続されている。
【0046】
ROM73には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM72は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPU71は、RAM72にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDD75には、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。さらに、HDD75には、計測データに基づく一連のプロセスシーケンス(各種の冷凍施設の制御方法)等が記憶されている。NVRAM74には、各種の設定情報等が記憶される。I/Oポート76は、操作パネル79、各温度センサ40等に有線もしくは無線にて接続され、各種のデータや信号の入出力を制御する。
【0047】
CPU71は、制御装置70の中枢を構成し、ROM73等に記憶された制御プログラムを実行する。また、CPU71は、操作パネル79からの指示信号に基づき、HDD75内に格納されているプロセスシーケンスに沿って排気ファン38の駆動制御や、第一ダンパー30と第二ダンパー35の開閉制御を実行する。
【0048】
尚、制御装置70が適用するプログラムは、例えば、ハードディスクやコンパクトディスク、光磁気ディスク等に記憶されてもよい。また、プロセスシーケンス等は、CD-ROM、DVD、メモリカード等の可搬性のコンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体に収容された状態で制御装置70にセットされ、読み出される形態であってもよい。制御装置70はその他、コマンドの入力操作等を行うキーボードやマウス等の入力装置、排気ファン38の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示装置、及びプリンタ等の出力装置といったユーザーインターフェイスを有していてもよい。
【0049】
また、
図4に示すように、制御装置70は、CPU71によるプログラムの実行により、少なくとも、通信部702、判定部704,ダンパー駆動部706,排気ファン駆動部708、及び格納部710の各種機能を提供する。尚、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0050】
通信部702は、各温度センサ40から送信される温度計測データを受信し、格納部710に格納する。
【0051】
格納部710には、地盤Gに凍上が生じ得る地盤の温度閾値が格納されており、この温度閾値としては0℃が適用できる。
【0052】
判定部704は、格納部710に随時格納される温度計測データを随時読み出し、格納部710に格納されている地盤の温度閾値と随時比較する。
【0053】
例えば、各温度センサ40の温度がいずれも0℃を超える場合は、判定部704が通常モードによる外気導入を行うことと判定する。この判定に基づき、ダンパー駆動部706により、全ての第二ダンパー35を閉じる制御が実行され、全ての第一ダンパー30を開く制御が実行された上で、排気ファン駆動部708によって各通気ライン25の排気ファン38を駆動させることにより、
図1に示す通気ライン25ごとに外気を導入する制御が実行される。
【0054】
一方、
図6に示すように、右側の四つのピット20のうち、例えば下方の2つのピット20の温度センサ40により計測された温度計測データが0℃を下回った場合には、このエリアの地盤Gの温度を速やかに0℃以上にするべく、右側の4つのピット20により構成される通気エリア26と、左側の6つのピット20により構成される通気エリア27を形成するように、ダンパー駆動部706は、各第一ダンパー30と第二ダンパー35の開閉制御を実行する。
図6において、30(開)、35(開)はそれぞれ、開いている第一ダンパー30と第二ダンパー35を示しており、30(閉)、35(閉)はそれぞれ、閉じている第一ダンパー30と第二ダンパー35を示している。
【0055】
図示例の制御により、通気エリア26のうち、地盤Gの温度が0℃を下回った右側下方2つのピット20に対して、最も近い位置にある給気口12aから外気が導入されることになり(外気の流れは順に、X1方向、X6方向、X7方向、X2方向、X3方向に流通)、当該右側下方2つのピット20の地盤を速やかに加温することができ、凍上防止を図ることができる。尚、他方の通気エリア27においては、凍上の恐れはないものとして、X1方向に導入された外気が順に、X2方向、X4方向、X5方向、X2方向、X3方向に流通する。
【0056】
一方、
図7に示すように、温度センサ40による温度計測データに基づく制御形態でなく、二重床上に載置される温度の異なる冷凍庫の配置計画が変更される場合においても、制御装置70により通気エリアを所望に分割することができる。
【0057】
図7に示す例は、右側の4つのピット20の上が-25℃の冷凍庫のエリアに計画され、左側の6つのピット20の上が-10℃の冷凍庫のエリアに計画されている。この場合においても、-25℃の冷凍庫に対応する通気エリア28においては、相対的に速やかに外気を流通させるべく、ダンパー駆動部706は、右側の4つのピット20により構成される通気エリア28と、左側の6つのピット20により構成される通気エリア29を形成するように、各第一ダンパー30と第二ダンパー35の開閉制御を実行する。
【0058】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0059】
10:土間スラブ
11:基礎スラブ
12,13:外壁
12a:給気口(自然給気口)
13a:排気口(強制排気口)
14:外壁
15:仕切壁(第一仕切壁)
15a:第一通気口(兼用口)
16:仕切壁(第二仕切壁)
16a:第二通気口(兼用口)
20:ピット
25:通気ライン
26、27,28,29:通気エリア
30:第一ダンパー
35:第二ダンパー
38:排気ファン
40:温度センサ
51:壁
52:屋根
60:冷凍庫
61:断熱パネル
70:制御装置
80:冷凍施設
702:通信部
704:判定部
706:ダンパー駆動部
708:排気ファン駆動部
710:格納部