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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029540
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】断熱層形成用組成物及び断熱部材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220210BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 165/00 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220210BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D165/00
C09D175/04
C09D7/65
F16L59/02
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132854
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000230397
【氏名又は名称】株式会社イーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】末光 由樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 学
(72)【発明者】
【氏名】藤川 愛
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB23
3H036AC06
3H036AE13
4F100AK01A
4F100AK12A
4F100AK15A
4F100AK22A
4F100AK25A
4F100AK28A
4F100AK51A
4F100AK73A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DE01A
4F100GB07
4F100GB08
4F100JA05A
4F100JA13A
4F100JJ02A
4F100YY00A
4J038CA041
4J038CC041
4J038CG141
4J038CG142
4J038CG162
4J038DG001
4J038HA156
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA21
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA16
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】剥離性、乾燥性及び断熱性に優れる断熱層を形成することができる断熱層形成用組成物及び断熱部材を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と、中空粒子と、水とを含有し、上記中空粒子の含有量が30体積%以上75体積%以下であり、上記水の含有量が30体積%以下である断熱層形成用組成物。上記バインダー樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、ジエン化合物及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種のビニルモノマ-を重合した共重合体又はウレタン系樹脂であり、そのガラス転移温度が-100℃以上0℃以下である、前記断熱層形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、
中空粒子と、
水と
を含有し、
上記中空粒子の含有量が30体積%以上75体積%以下であり、
上記水の含有量が30体積%以下である断熱層形成用組成物。
【請求項2】
上記バインダー樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、ジエン化合物及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種のビニルモノマ-を重合した共重合体又はウレタン系樹脂である請求項1に記載の断熱層形成用組成物。
【請求項3】
上記バインダー樹脂のガラス転移温度が-100℃以上0℃以下である請求項1又は請求項2に記載の断熱層形成用組成物。
【請求項4】
上記中空粒子が合成樹脂粒子である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の断熱層形成用組成物。
【請求項5】
上記中空粒子の平均粒子径が0.1μm以上200μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の断熱層形成用組成物。
【請求項6】
上記中空粒子の比重が0.01以上0.5以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の断熱層形成用組成物。
【請求項7】
基材と、この基材上に直接又は間接に積層される断熱層とを備える断熱部材であって、
上記断熱層が断熱層形成用組成物から形成され、
上記断熱層形成用組成物が、
バインダー樹脂と、
中空粒子と、
水と
を含有し、
上記中空粒子の含有量が30体積%以上75体積%であり、
上記水の含有量が30体積%以下である断熱部材。
【請求項8】
上記断熱層の比重が0.1以上0.5以下である請求項7に記載の断熱部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱層形成用組成物及び断熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内外壁、サッシ等の建材などに断熱層を形成するための組成物として、例えば特開2001-240809号公報において、バインダー樹脂、中空粒子及び熱融着性繊維を含有する断熱性層形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-240809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DIY等の浸透により、例えば家庭内でアルミサッシ等に断熱層を形成するといった作業が行われている。この場合、簡便な作業により断熱層を形成できるだけでなく、例えばオフシーズンのような使用後に断熱層を綺麗に剥離できることが求められている。
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、剥離性、乾燥性及び断熱性に優れる断熱層を形成できる断熱層形成用組成物及び断熱部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、バインダー樹脂と、中空粒子と、水とを含有し、上記中空粒子の含有量が30体積%以上75体積%以下であり、上記水の含有量が30体積%以下である断熱層形成用組成物である。
【0007】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基材と、この基材上に直接又は間接に積層される断熱層とを備える断熱部材であって、上記断熱層が上述の当該断熱層形成用組成物から形成された断熱部材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の断熱層形成用組成物及び断熱部材によれば、剥離性、乾燥性及び断熱性に優れる断熱層を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の断熱層形成用組成物及び断熱部材について詳説する。
【0010】
<断熱層形成用組成物>
当該断熱層形成用組成物は、バインダー樹脂(以下、「[A]バインダー樹脂」ともいう)と、中空粒子(「[B]中空粒子」ともいう)と、水(以下、「[C]水」ともいう)とを含有する。当該断熱層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて[A]バインダー樹脂、[B]中空粒子及び[C]水以外のその他の成分(以下、単に「その他の成分」ともいう)を含有していてもよい。
【0011】
当該断熱層形成用組成物によれば、剥離性、乾燥性及び断熱性に優れる断熱層を形成することができる。当該断熱層形成用組成物が上記構成を備えることにより上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。
即ち、当該断熱層形成用組成物における[B]中空粒子の含有量を30体積%以上75体積%以下とすることにより、剥離性及び断熱性に優れる断熱層を形成することができ、[C]水の含有量を30体積%以下とすることにより、乾燥性に優れると考えられる。
【0012】
以下、当該断熱層形成用組成物が含有する各成分について説明する。
【0013】
[[A]バインダー樹脂]
[A]バインダー樹脂としては、[C]水に溶解又は分散する樹脂であれば特に制限されず、例えばアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、塩素化ポリプロピレン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、天然ゴム、再生ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS、SIS、SEBS等)等が挙げられる。当該断熱層形成用組成物は1種又は2種以上の[A]バインダー樹脂を含有することができる。
【0014】
[A]バインダー樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、ジエン化合物及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種のビニルモノマ-を重合した共重合体又はウレタン系樹脂が好ましい。
【0015】
[A]バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、-100℃以上0℃以下が好ましい。特に、[A]バインダー樹脂のTgが上記上限を超えると、当該断熱層形成用組成物により形成される断熱層の剥離性が悪化するおそれがある。[A]バインダー樹脂のTgは、示差走査熱量計(ティー・アイ・インスツルメント・ジャパン(株)の「DSC Q200」)により測定した値である。
【0016】
[A]バインダー樹脂としては市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばJSR(株)の「JSR SBLTX 0561」、(株)イーテックの「AE299」、「AE887」、「AE872D」、第一工業製薬(株)の「スーパーフレックス E-200」等が挙げられる。
【0017】
[A]バインダー樹脂は、予め[C]水に溶解又は分散したエマルション等の状態で用いてもよい。
【0018】
[[B]中空粒子]
[B]中空粒子は、粒子内部に閉鎖された空隙を有する粒子である。「閉鎖された空隙」とは、粒子外殻により完全に閉鎖されている空隙又は完全に閉鎖されていなくとも空隙内部に[A]バインダー樹脂等の他の成分が侵入できない程度に粒子外殻により閉鎖された状態の空隙を意味する。
【0019】
当該断熱層形成用組成物によれば、[B]中空粒子を含有することにより、独立気泡を有する断熱層を形成することができる。
【0020】
当該断熱層形成用組成物における[B]中空粒子の含有量は30体積%以上75体積%以下である。[B]中空粒子の含有量を上記範囲とすることにより、剥離性及び断熱性に優れる断熱層を形成することができる。
【0021】
当該断熱層形成用組成物における[B]中空粒子の含有量の下限としては、35体積%が好ましく、40体積%がより好ましく、45体積%がさらに好ましい。[B]中空粒子の含有量の下限を上記範囲とすることにより、当該断熱層形成用組成物により形成される断熱層の断熱性をより向上させることができる。[B]中空粒子の含有量の上限としては、70体積%が好ましく、65体積%がより好ましく、60体積%がさらに好ましい。[B]中空粒子の含有量の上限を上記範囲とすることにより、当該断熱層形成用組成物により形成される断熱層の剥離性をより向上させることができる。
【0022】
[B]中空粒子の材質としては、有機材料であってもよいし、無機材料であってもよい。有機材料としては、例えばアクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。無機材料としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、フッ化マグネシウム等の金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらの中でも、[B]中空粒子の材質としては、合成樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂がより好ましい。当該断熱層形成用組成物は、1種又は2種以上の[B]中空粒子を含有することができる。
【0023】
[B]中空粒子の平均粒子径の下限としては、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。[B]中空粒子の平均粒子径の上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。[B]中空粒子の平均粒子径を上記範囲とすることで、配合時の分散安定性を向上させることができる。なお、[B]中空粒子の平均粒子径は、レーザー回折法により測定した体積平均粒子径(D50)である。
【0024】
[B]中空粒子の比重の下限としては、0.01が好ましく、0.02がより好ましい。[B]中空粒子の比重の上限としては、0.5が好ましく、0.1がより好ましい。[B]中空粒子の比重を上記範囲とすることで、当該断熱層形成用組成物により形成される断熱層の断熱性をより向上させることができる。なお、[B]中空粒子の比重は、JIS-Z8807(2012)に準拠して測定した値である。
【0025】
[B]中空粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば日本フィライト(株)の「Expancel 921WE40d24」、松本油脂製薬(株)の「マイクロスフェアーF-65E」等が挙げられる。
【0026】
[[C]水]
[C]水は、[A]バインダー樹脂、[B]中空粒子等を溶解又は分散させるために用いられる。
【0027】
当該断熱層形成用組成物における[C]水の含有量は30体積%以下である。[C]水の含有量を上記範囲とすることにより、乾燥性に優れる断熱層を形成することができる。
【0028】
[C]水の含有量の下限としては、5体積%が好ましく、10体積%がより好ましい。[C]水の含有量の上限としては、25体積%が好ましい。[C]水の含有量の上限を上記範囲とすることにより、当該断熱層形成用組成物により形成される断熱層の乾燥性をより向上させることができる。
【0029】
(その他の成分)
その他の成分としては、例えば増粘剤、消泡剤、濡れ剤、分散剤、有機溶剤、防腐剤、凍結防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防錆剤等が挙げられる。当該断熱層形成用組成物は、1種又は2種以上のその他の成分を含有することができる。当該断熱層形成用組成物におけるその他の成分の含有量としては用いる成分の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0030】
増粘剤としては、例えばアルカリ増粘型の増粘剤、会合型の増粘剤等が挙げられる。当該断熱層形成用組成物における増粘剤の含有量としては、例えば0.01質量%以上5質量%以下とすることができる。
【0031】
当該断熱層形成用組成物は、例えば[A]バインダー樹脂を含有する[C]水の分散体を調製し、この分散体に、[B]中空粒子及び必要に応じてその他の成分を混合することで調製することができる。当該断熱層形成用組成物の固形分濃度の下限としては、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。当該断熱層形成用組成物の固形分濃度の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。なお、「固形分」とは、当該断熱層形成用組成物に含有される[C]水等の揮発性成分以外の成分を意味する。
【0032】
当該断熱層形成用組成物の比重としては、0.2以上0.6以下が好ましい。当該断熱層形成用組成物の比重は、JIS-Z8804(2012)に準拠して測定した値である。
【0033】
当該断熱層形成用組成物は、断熱層を形成するために用いられる。より詳細には、当該断熱層形成用組成物は、基材に塗工し、この基材上に断熱層を形成するために用いられる。
【0034】
基材としては、特に制限されないが、例えばアルミ、ステンレス、鉄、銅、トタン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート、アクリル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトニル・スチレン・ブタジエン(ABS)、木材、コンクリート、アスファルト、ガラス、タイル、レンガ、紙、段ボールなどの建材、自動車、梱包材で用いられるものが挙げられる。
【0035】
基材への当該断熱層形成用組成物の塗工方法としては、特に制限されず、例えばヘラやローラー等を用いた塗工方法、チューブ状容器などから押し出して基材に塗布する方法等が挙げられる。また、基材への塗工後、常温で乾燥させてもよいし、例えば40℃~120℃で加熱乾燥させてもよい。
【0036】
当該断熱層形成用組成物によれば、基材に塗工するといった簡便な作業により断熱層を形成できる。そのため、例えばアルミサッシ等の建材に断熱層を形成するという作業を業者による工事ではなく個人がDIY等の一環として簡便に行うことができる。また、形成された断熱層は剥離性に優れるため、例えばオフシーズンや経年劣化等の理由により断熱層が不要となった場合にも手作業で簡単に断熱層を剥離することができる。当該断熱層形成用組成物は、乾燥性及び剥離性といった作業者の利便性に優れるだけでなく、断熱層として求められる断熱性にも優れている。
【0037】
当該断熱層形成用組成物により形成される断熱層は、高温状態や低温状態を維持でき、状態を維持することでエネルギーを節約することができる。また、高温状態や低温状態が周囲の環境に影響を与えるのを抑制する、あるいはそれらの状態にあるものに直接に接触して火傷や凍傷になるのを防止する等の効果が得られる。例えば、冬場においては温度差のある室内、室外を隔てるアルミサッシにおいて、結露防止としての効果が見られ、有用である。具体的な用途としては、アルミサッシの結露防止用の建材用途、自動車用の断熱材の他に、断熱性のある緩衝材として窓ガラス、梱包材、包装材等にも使用できる。
【0038】
<断熱部材>
当該断熱部材は、基材と、この基材上に直接又は間接に積層される断熱層とを備える。断熱層は、上述の当該断熱層形成用組成物により形成される。したがって、当該断熱部材は、優れた断熱性を発揮する部材として好適に用いることができる。
【0039】
基材としては、特に制限されないが、例えばアルミ、ステンレス、鉄、銅、トタン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート、アクリル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトニル・スチレン・ブタジエン(ABS)、木材、コンクリート、アスファルト、ガラス、タイル、レンガ、紙、段ボールなどの建材、自動車、梱包材で用いられるものが挙げられる。
【0040】
断熱層は、上述の当該断熱層形成用組成物により形成される独立気泡構造の層である。断熱層の平均厚みは、断熱部材の使用用途等によって適宜決定することができ、例えば0.5mm以上20mm以下とすることができる。断熱層の平均厚みは、断熱層形成用組成物の塗布量等によって適宜調整することができる。また、断熱層の平均厚みは、任意の箇所10点の厚みの平均値である。
【0041】
断熱層の比重の下限としては、0.1が好ましく、0.2がより好ましい。断熱層の比重の上限としては、0.5が好ましく、0.4がより好ましい。断熱層の比重を上記範囲とすることで、断熱層の剥離性及び断熱性をより向上させることができる。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
<断熱層形成用組成物の調製>
断熱層形成用組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0044】
([A]バインダー樹脂)
(A-1):スチレン-ブタジエンゴム(JSR(株)の「JSR SBLTX 0561」、Tg:-63℃)
(A-2):アクリル系樹脂((株)イーテックの「AE299」、Tg:-60℃)
(A-3):ウレタン系樹脂(第一工業製薬(株)の「スーパーフレックス E-200」、Tg:-38℃)
(A-4):アクリル系樹脂((株)イーテックの「AE872D」、Tg:15℃)
【0045】
([B]中空粒子)
(B-1):アクリル系中空粒子(日本フィライト(株)の「Expancel 921WE40d24」、比重:0.024、平均粒子径:45μm)
(B-2):アクリロニトリル系中空粒子(松本油脂製薬(株)の「F-65E」、比重:0.025、平均粒子径:50μm)
【0046】
(その他の成分)
増粘剤:サンノプコ(株)の「SNシックナーA-812」
【0047】
[実施例1]断熱層形成用組成物(E-1)の調製
[A]バインダー樹脂としての(A-1)の水分散体145質量部((A-1)を69質量部含有する)を攪拌しながら、[B]中空粒子としての(B-1)299質量部及び増粘剤0.1質量部をこの順序で投入し、断熱層形成用組成物(E-1)を調製した。断熱層形成用組成物(E-1)の固形分濃度は30質量%であった。
【0048】
[実施例2~7及び比較例1~4]断熱層形成用組成物(E-2)~(E-7)及び(CE-1)~(CE-4)の調製
下記表1に示す種類及び配合量の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様にして、断熱層形成用組成物(E-2)~(E-7)及び(CE-1)~(CE-4)を調製した。
【0049】
下記表1中、[A]バインダー樹脂、[B]中空粒子、[C]水及び増粘剤の行に記載の数値は、質量部を表す。また、下記表1中、「-」は該当する成分を添加していないことを示す。例えば、下記表1の実施例1の列において「水」の行が「-」と表記されているが、これは断熱層形成用組成物(E-1)が水を含有していないということではなく、(E-1)を調製する際に(A-1)の水分散体に含まれていた水以外に水を添加していないということを意味する。
【0050】
(断熱層形成用組成物の比重の測定)
上記調製した各断熱層形成用組成物について、23℃50Rh%の雰囲気下、JIS-Z8804(2012)に準拠して比重を測定した。
【0051】
(バインダー樹脂、中空粒子及び断熱層の比重の測定)
バインダー樹脂、中空粒子及び断熱層について、40℃72時間加熱乾燥し、よく乾燥させた後に、23℃50Rh%の雰囲気下、JIS-Z8807(2012)に準拠して比重を測定した。
【0052】
(各成分の体積分率の算出)
下記式(1)~(3)により、断熱層形成用組成物における[A]バインダー樹脂、[B]中空粒子及び[C]水の体積分率をそれぞれ算出した。算出結果を下記表1に併せて示す。
[A]バインダー樹脂の体積分率=(Wr/Dr)/(Wf/Df) ・・・(1)
[B]中空粒子の体積分率=(Wp/Dp)/(Wf/Df) ・・・(2)
[C]水の体積分率=(Ww/Dw)/(Wf/Df) ・・・(3)
【0053】
なお、上記式(1)~(3)において用いた略号は以下の通りである。
Wr:[A]バインダー樹脂の質量
Dr:[A]バインダー樹脂の比重
Wf:断熱層形成用組成物の質量
Df:断熱層形成用組成物の比重
Wp:[B]中空粒子の質量
Dp:[B]中空粒子の比重
Ww:[C]水の質量
Dw:[C]水の比重(定数1)
【0054】
<断熱層の形成>
70mm×150mmのアルミ基材(表面をアルマイト処理したA6063)の周囲に、厚み2.7mmのSUS板を配置した。その中に上記調製した断熱層形成用組成物を流し込み、ヘラでSUS板と同じ厚みになるように均した。23℃50%Rh環境下で24時間乾燥させた後、SUS板を取り外してアルミ基材上に断熱層を形成した。得られた断熱層の厚みは2mmであった。
【0055】
<評価>
下記の方法に従って、剥離性、乾燥性及び断熱性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0056】
[剥離性]
上記形成した断熱層を指でつまんでアルミ基材から剥がせるかどうかを確認した。剥離性は、アルミ基材表面に断熱層が残らずきれいに剥がれる場合は「A」(良好)と、アルミ基材表面にわずかに断熱層が残るが、ふき取り等で綺麗になる場合は「B」(やや良好)、アルミ基材表面に断熱層が多く残る場合は「C」(不良)と評価した。
【0057】
[乾燥性]
基材を離型紙とし、乾燥時間を12時間とした以外は、上記「断熱層の形成」の方法と同様にして厚さ2mmの断熱層を形成した。形成した離型紙上の断熱層を剥がし、断熱層の離型紙と接触していた面(以下、「裏面」ともいう)を指で触って水分がない場合は「A」(良好)と、裏面がやや湿っている場合は「B」(やや良好)と、裏面に水滴が残っている場合又は離型紙に断熱層の一部が残る場合は「C」(不良)と評価した。
【0058】
[断熱性]
基材を離型紙とし、乾燥時間を24時間とした以外は、上記「断熱層の形成」の方法と同様にして2mmの断熱層を形成した。形成した離型紙上の断熱層を剥がし、20mm×40mmとなるように切り出した。切り出した断熱層をSUS容器の外側側面に貼り付け、容器内に氷水を入れ、23℃50Rh%の雰囲気下で2時間静置した。2時間後に断熱層表面に結露が発生しない場合は「A」(良好)と、わずかに結露が発生した場合は「B」(やや良好)と、結露が発生した場合は「C」(不良)と評価した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果から明らかなように、実施例の断熱層形成用組成物により形成された断熱層は、比較例の断熱層形成用組成物により形成された断熱層と比較して、剥離性、乾燥性及び断熱性に優れていた。