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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029543
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】シール機構
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/453 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
F16J15/453
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132859
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雄一郎
【テーマコード(参考)】
3J042
【Fターム(参考)】
3J042AA03
3J042BA01
3J042CA10
3J042DA01
3J042DA02
(57)【要約】
【課題】ラビリンスシールの密封形態を利用して流体をシール可能な、新しいシール機構を提供する。
【解決手段】回転部としての回転軸2の外周を囲む静止部としてのハウジング3に取り付けられ、ハウジング3と回転軸2との間の流体Rをシールするシール機構としてのワイヤシール1であって、ワイヤシール1は、回転軸2が挿通される貫通孔8が形成された基体6と、基体6に配設される線材としてのワイヤ9、を備え、ワイヤ9は、貫通孔8の複数箇所を横切るように基体6に架け渡されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部の外周を囲む静止部に取り付けられ、前記静止部と前記回転部との間の流体をシールするシール機構であって、
前記シール機構は、前記回転部が挿通される貫通孔が形成された基体と、
前記基体に配設される線材と、を備え、
前記線材は、前記貫通孔の複数箇所を横切るように前記基体に架け渡されているシール機構。
【請求項2】
前記線材は、軸方向に複数積層されている請求項1に記載のシール機構。
【請求項3】
軸方向に積層された複数の前記線材は、周方向の位相が互いに異なるように配置されている請求項2に記載のシール機構。
【請求項4】
前記線材は、前記基体に径方向に複数回巻回されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシール機構。
【請求項5】
前記基体は、複数の基板が重ね合わせて構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のシール機構。
【請求項6】
前記線材は、前記基板に巻回されている請求項5に記載のシール機構。
【請求項7】
前記基板に、複数のピン部材が立設されており、前記ピン部材に前記線材が巻回されている請求項5または6に記載のシール機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガスタービン、蒸気タービン等の回転機械に適用され、相対回転する回転側要素と静止側要素との間を軸封するシール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービン等の回転機械を構成する回転軸の周りには、高圧側から低圧側に流体が漏れることを防止するシール機構が設けられている。このシール機構としては、非接触シールとして分類されるラビリンスシールが広く用いられている。
【0003】
ラビリンスシールは、回転軸の外周を囲む静止側要素を構成するケーシングの内周部に凹溝が形成されたラビリンス部を有することで、このラビリンス部と回転軸との間の被密封流体を凹溝内に回りこませることで高圧側の流体の圧力を降下させ、低圧側への流体の漏れ量を減少させる非接触シールである。ラビリンス部は、耐熱性の高い金属で成形された肉厚の円筒体である。このような、ラビリンスシールは、上記したガスタービンや蒸気タービンのように高回転かつ高熱の被密封流体を用いた回転機械に多用されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実願昭53-136872号(実開昭55-55667号)のマイクロフィルム(第2頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のラビリンスシール装置は、ラビリンス部と回転軸との離間幅が大きいと、シール性が低下することから流体の漏れが発生し、ラビリンス部と回転軸との離間幅が小さいと、高回転の回転軸が振動等を生じて近接するラビリンス部に接触してしまう虞が生じ、塊状の金属材から成形されたラビリンス部や回転軸が損傷して、流体のシール性低下の原因となり得ることから、ラビリンス部と回転軸との離間幅を狭めることには限界があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ラビリンスシールの密封形態を利用して流体をシール可能な、新しいシール機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のシール機構は、
回転部の外周を囲む静止部に取り付けられ、前記静止部と前記回転部との間の流体をシールするシール機構であって、
前記シール機構は、前記回転部が挿通される貫通孔が形成された基体と、
前記基体に配設される線材と、を備え、
前記線材は、前記貫通孔の複数箇所を横切るように前記基体に架け渡されている。
これによれば、貫通孔の複数箇所を横切るように架け渡された線材の胴部によって、貫通孔内を進入する流体の流路を遮ることができるため、流体の圧力降下を生じさせ、流体をシールすることができる。
【0008】
前記線材は、軸方向に複数積層されていてもよい。
これによると、軸方向に線材の胴部による複数の層が形成されることから、流体のシール性を高めることができる。
【0009】
軸方向に積層された複数の前記線材は、周方向の位相が互いに異なるように配置されていてもよい。
これによると、周方向の位相が互いに異なるように積層された複数の線材によって、回転部と静止部の間に、流体を回りこませるラビリンスを形成させることができる。
【0010】
クレーム4 (1~3従属
前記線材は、前記基体に径方向に複数回巻回されていてもよい。
これによると、線材が径方向に巻回されることから、回転部と静止部との間隙を埋めることができ、シール性を高めることができる。
【0011】
クレーム5 (1~4従属
前記基体は、複数の基板が重ね合わせて構成されていてもよい。
これによると、複数の基板を重ね合わせることで、基体の厚みを設計し易い。
【0012】
クレーム6 (5従属
前記線材は、前記基板に巻回されていてもよい。
これによると、線材を基板に対して密に配置させることができる。
【0013】
クレーム7 (5、6従属
前記基板に、複数のピン部材が立設されており、前記ピン部材に前記線材が巻回されていてもよい。
これによると、線材をピン部材に強固に巻回させることができ、ピン部材を基板間のスペーサとしても機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1におけるワイヤシールを示す断面図である。
図2】実施例1におけるワイヤシールの基板を示す上面図である。
図3】(a)は、図2における基板を同一方向に重合させた斜視図を示し、(b)は、その上面図である。
図4】実施例1におけるワイヤシールに回転軸を挿通させた態様を示す一部側断面図である。
図5】(a)は、図4におけるA-A断面図を示し、(b)は図4におけるB-B断面図である。
図6】実施例1におけるワイヤシールに回転軸が接触した態様示す模式図である。
図7】本発明の実施例2における基板を示す上面図である。
図8】実施例2におけるワイヤシールを示す一部側断面図である。
図9】基板に巻回させたワイヤを帯状に溶接させた例を示す変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るシール機構を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例1に係るシール機構につき、図1から図6を参照して説明する。尚、本実施例においては、図1の紙面左右を軸方向として、図1の回転軸から放射状に延びる方向を径方向、回転軸の軸心から等距離の円周に沿った方向を周方向とし、図2図7における正面側を上面とし、その裏面を下面側として説明する。
【0017】
図1には、タービン等の回転機械に、本発明のシール機構としてのワイヤシール1が組み込まれた例が示されている。ワイヤシール1は、回転機械を構成する回転軸2の周囲を取り囲む静止部としてのハウジング3の内周部3aに形成された段部5に、スナップリング4を配設し、段部5とスナップリング4とで挟持させることにより、固定状態で配設されている。このワイヤシール1の内周側は、回転軸2の外周面と対向して近接した状態に配置されている。そして、ワイヤシール1により機内側であり高圧側Hから機外側であり低圧側Lへの流体の漏洩が封止される。
【0018】
図1,2に示されるように、ワイヤシール1は、基体6と、線材としてのワイヤ9とから主に構成されている。基体6は、耐熱性を備える金属材から円環形状に成形され、薄板状の基板6Aを、軸方向に複数枚重合させて構成されている。
【0019】
各基板6Aは、ハウジング3の内周部3aと略同径の外周縁を有すると共に、基板6Aの中央部に回転軸2の直径よりも大径に形成された真円形状の貫通孔8が形成された枠部16と、該枠部16の上面から垂直方向上方に向けて立設された複数の円柱状のピン7a~7hと、から構成されている。尚、基板6Aの外周縁と貫通孔8とは、同心円である。
【0020】
枠部16に立設されているピン7a~7hは、貫通孔8の周縁部8a近傍の同心円上の位置に、周方向に等間隔で互いに離間して本実施例では計8本が構成されている。これらのピン7a~7hは互いに同じ形状であって、ピン7a~7hの立設寸法は、ワイヤ9の径と同寸若しくは僅かに大寸に形成されている。なお、枠部16の下面は平坦状に形成されているが、これに限らず例えば、ピン7a~7hの背面位置にピン7a~7hと同径の凹部が形成されてもよい。
【0021】
ワイヤ9は、耐熱性が高く且つ弾性のある金属製の素材、例えば、ニッケル、クロム等から成り、断面視で円形に形成されている。ワイヤ9は、枠部16に立設されている複数のピン7a~7hのうち選択された一部のピンに沿って巻回される。実施例1においては、1本のワイヤ9の一方端部9aをピン7gにスポット溶接して巻回の起点とし、ピン7a、ピン7c、ピン7eを経ることで各90度屈曲して、起点としたピン7gに戻るように、ワイヤ9の胴部をこれらのピンの外周面に沿って張力を生じさせながら周方向に巻回する。さらに、ワイヤ9の胴部を先に巻回したワイヤ9に沿って張力を生じさせながら複数回巻回させ、ワイヤ9の他方端部9bを径方向に隣接するワイヤ9の胴部にスポット溶接することで、張力を維持させたままワイヤ9を基板6Aに配設及び固定できるようになっている。このようにワイヤ9を巻回することで、巻回数に応じて貫通孔8の内外に亘って径方向に厚みのある上面視略正方形のワイヤ層Wが枠状に形成される。すなわち、各ピンの間で張設されたワイヤ9の胴部は、直線状に延設されている。
【0022】
ワイヤ層Wは、貫通孔8の周縁部8a近傍に形成されるようになっている。ワイヤ層Wの一部は、貫通孔8の複数箇所、本実施例では4箇所を覆うように配置され、貫通孔8を横切るワイヤ層Wの胴部9Aが形成されるようになっている。尚、ワイヤ9のピンに対する巻回回数については、ワイヤ9の直径やピン7a,…7hの立設位置により異なるが、中空の貫通孔8の一部を周縁部8aまで覆うことが好ましい。
【0023】
次に、図3(a)に示されるように、上述したワイヤ層Wが同じように形成された基板6Aを4枚用意し、それぞれワイヤ層Wを周方向に一定角度の22.5度ずつ順次異なる位置に配置させて軸方向に表裏を統一し重ね合わせる。基板6Aには、ピン7a~7hが立設されているので、基板6Aのピン7a~7hがその上面側に位置する基板6Aの下面に当接することで、枠部16間(図1参照)において軸方向に等間隔に間隙が生じ、適切な距離でそれぞれのワイヤ層Wを離間させるようになっている。更に、基板6Aに巻回されたワイヤ層Wが、当該基板6Aとその上方の基板6Aの下面とによって挟まれることで、流体の進入を防止できるように構成される。
【0024】
また、ワイヤ層Wが形成された基板6Aを周方向に一定角度ずつ順次異なる位置に配置させて重ね合わせたので、図3(b)に示されるように、貫通孔8からワイヤ層W(図2参照)の胴部9Aの内周部が、軸方向視で回転軸2と同径の円形に近似した正多角形を成して露出されるようになっている。それぞれ適切な位置で複数(本実施例では4枚)の基板6Aを重ね合わせた後、ワイヤ層Wが開放されている左端の基板6A(図1参照)に対して枠部16と同形状でピンが立設されない蓋板26を重合させ、これらの基板6A及び蓋板26を溶接により連結させることで基体6として構成し、一体的にハウジング3への取付けや交換、運搬等ができるようになっている。また、先に複数の基板6Aと蓋板26とから基体6を構成し、後から基体6に対してワイヤ9を巻回させることとしてもよい。
【0025】
図1図4図5(a),(b)を参照し、流体の密封態様を説明する。図1に示されるように、回転軸2にワイヤシール1を挿通させた状態でハウジング3に形成されている段部5に環状に形成されたスナップリング4によりワイヤシール1を固定する。
【0026】
図1及び図5(a),(b)に示されるように、左端の基板6Aに配置されたワイヤ層をW1とし、以降右側に隣接した基板6Aに配置されたワイヤ層を順次W2,W3及びW4とする。これらのワイヤ層W1~W4は、それぞれ周方向の位相が異なるように配置されるようになっている。よって、それぞれのワイヤ層W1~W4は、基板6Aの貫通孔8の周縁部8aよりも内径側に突出したワイヤ層、例えば図5(b)のワイヤ層W1,W3,W4や、あるいは周縁部8aよりも外径側にて基板6A同士の間に位置したワイヤ層、例えば図5(b)のワイヤ層W2により、径方向に凹凸状のラビリンス流路が形成されるようになっている。
【0027】
図4に示されるように、ワイヤシール1に形成されている貫通孔8に回転軸2が挿通された状態で、回転軸2とワイヤ層Wの最も内径側に配設されているワイヤ9は、回転軸2の周面2aに近接しているものの、僅かに離間して配設されるようになっている。後述するが、回転軸2が振動やブレを生じワイヤ9と接触しても、接触箇所が破損し難いようになっている。
【0028】
図4におけるA-A断面図である図5(a)を参照して説明すると、ワイヤシール1の左端側のワイヤ層W1が回転軸2の周面2aに最も近接して配置されている。ここで機内H側(図示左側)のハウジング3と回転軸2との間の被密封流体Rは、大気L側(図示右側)よりも高い圧力である。
【0029】
次に、機内H側の流体Rのシールについて説明する。例えば図5(a)に示されるように、回転軸2の周面2aに最も近接したワイヤ層W1は、機内H側の流体Rの大気L側への進行を遮り、当該ワイヤ層W1の周方向または径方向へ分岐させるようになっている。なお、各ワイヤ層Wが、ワイヤ9を径方向に巻回させた集合体であることから、微量の流体Rがこれらのワイヤ9同士の間を通過することで流体Rの圧力を低下させることができ、シール性を確保することができる。
【0030】
また、例えば、図4におけるB-B断面図である図5(b)を参照して説明すると、ワイヤシール1の右端側のワイヤ層W4が回転軸2の周面2aに最も近接して配置されている。機内H側の最も周縁部8a近傍に位置する流体R1は、周縁部8aよりも僅かに内径側に配置された左端のワイヤ層W1に接触することによって、その圧力が低下するとともに、ワイヤ層W1の周方向または径方向へ分岐されるようになっている。
【0031】
また、流体R1よりも内径側の流体R2は、ワイヤ層W1よりも内径側に配置されているワイヤ層W3に接触することによって、圧力が低下し周方向または径方向へ分岐されるようになっている。分岐した流体R1,R2の一部は、ワイヤ層W2が配置されている基板6A,6A間に形成されている凹部11内や、ワイヤ層W3,W4間に形成されている凹部12内に流入され、更に流体圧力が低下するようになっている。すなわちこれらの凹部11、12は、上述したラビリンス流路を構成している。
【0032】
また、流体R2よりも内径側の流体R3と、ラビリンス流路によって流体圧力が低下した流体R1,R2は、回転軸2の周面2aに最も近接して配置されているワイヤ層W4によって、シールされるようになっている。
【0033】
このように、回転部としての回転軸2の外周を囲む静止部としてのハウジング3に取り付けられ、ハウジング3と回転軸2との間の流体Rをシールするシール機構としてのワイヤシール1であって、ワイヤシール1は、回転軸2が挿通される貫通孔8が形成された基体6と、基体6に配設される線材としてのワイヤ9、を備え、ワイヤ9は、貫通孔8の複数箇所を横切るように基体6に架け渡されていることから、貫通孔8の複数箇所を横切るように架け渡されたワイヤ9の胴部9Aによって、貫通孔8内を進入する流体Rの流路を遮ることができるため、流体の圧力降下を生じさせ、流体をシールすることができる。
【0034】
また、ワイヤ9は、軸方向に複数積層されていることから、軸方向にワイヤ9の胴部9Aによる複数の層が形成され、流体のシール性を高めることができる。
【0035】
また、軸方向に積層された複数のワイヤ9は、周方向の位相が互いに異なるように配置されていることから、周方向の位相が互いに異なるように積層された複数のワイヤ9によって、回転軸2とハウジング3の間に、流体を回りこませるラビリンスを形成させることができる。
【0036】
また、ワイヤ9は、基体6に径方向に複数回巻回されていることから、ワイヤ9が径方向に巻回され、回転軸2とハウジング3との間隙を埋めることができ、シール性を高めることができる。
【0037】
更に、図6に示されるように、回転軸2が意図しない振動により、瞬間的に所定位置から径方向へ移動された場合、回転軸2が最も内径側に配設されたワイヤ層Wに接触することとなる。接触されたワイヤ層Wは、径方向に複数回巻回されており張力を備える構造から、下方のワイヤ9が左右に移動され振動することになり、破損し難くなっている。また、線材を径方向に複数回巻回させた構造から、弾性を備えており、回転軸2によって変形された形状を戻そうとするので、回転軸2を所定位置へ押し戻そうとし、元の径方向に積層されたワイヤ層Wの形状に戻るようになっている。
【0038】
また、基体6は、複数の基板6Aが重ね合わされることで構成されていることから、複数の基板6Aを重ね合わせることで、基体6の厚みを設計し易い。
【0039】
また、ワイヤ9は、基板6Aに巻回されているので、ワイヤ9を基板6Aに対して密に配置させることができる。
【0040】
また、基板6Aに、複数のピン部材としてのピン7a~7hが立設されており、ピン7a~7hにワイヤ9が巻回されることから、ワイヤ9を各ピンに強固に巻回させることができ、ピン7a~7hを基板間のスペーサとしても機能させることができる。
【実施例0041】
次に、本発明に係るワイヤシールの実施例2について、図7図8を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
図7に示されるのは、実施例2における基板22であり、基板22には、中央に真円状の貫通孔8が形成されており、基板22は、円環状の枠部27と、該枠部27に立設されたピン17a~17h及びピン18a~18hと、から構成されている。
【0043】
枠部27に立設されているピン17a~17h及びピン18a~18hは、貫通孔8の周縁部8a近傍の同心円上の位置に、周方向に等間隔で互いに離間して本実施例では計16本が構成されている。これらのピン17a~17h及びピン18a~18hは、互いに同じ形状であって、その立設寸法は、ワイヤ9の径の4倍の寸法若しくはそれよりも僅かに大寸に形成されている。
【0044】
ワイヤ9は、枠部27に立設されている複数のピン17a~17h及びピン18a~18hのうち選択された一部のピンに沿って巻回される。具体的には一層目としてピン18a、ピン18c、ピン18e、ピン18gを経ることで巻回数に応じて貫通孔8の内外に亘って径方向に厚みのある上面視略正方形のワイヤ層Wが形成され、その形成されたワイヤ層Wの上面に、二層目としてピン17a、ピン17c、ピン17e、ピン17gを経てワイヤ層Wを形成させる。同様に、三層目として、ピン18h、ピン18b、ピン18d、ピン18fを経てワイヤ層Wを下方側のワイヤ層Wに重ね合わせるように形成させ、最後に、4層目としてピン17h、ピン17b、ピン17d、ピン17fを経て、一枚の基板22に対して4層のワイヤ層Wを形成させる。
【0045】
実施例2の基体24は、1枚の基板22と蓋板23とから構成されており、ワイヤ9が上述したように基体24に巻回されることでワイヤシール21として機能させることができるようになっている。図8に示されるように、ワイヤシール21をハウジング3の内周部3aに形成された段部5に、スナップリング4を配設し、段部5とスナップリング4とで挟持させることにより、固定状態で配設させることができる。
【0046】
また、ワイヤシール21を軸方向に複数重ね合わせて配設させてもよく、この場合、流体のシール性を向上させることができる。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0048】
例えば、前記実施例では、4枚の基板6Aを22.5度ずつ傾斜させて、貫通孔8に略円形状を成すワイヤ層を形成させることとして説明したが、これに限らず、例えば、8枚の基板を用いて、それぞれ11.25度ずつ傾斜させ、貫通孔8に略円形状を成すワイヤ層を形成させることとしてもよい。
【0049】
また、前記実施例では、ワイヤ9の一方端部9aをピン7gにスポット溶接させ、他方端部9bを隣接するワイヤ9にスポット溶接することとして説明したが、これに限らず、例えば、図7に示される変形例のように、ワイヤ9の一方端部9aをピン7gにスポット溶接させ、ピン7a,7c,7e,7gに巻回させた後、巻回させたそれぞれのピンから外方側に向けて帯状に溶接し、巻回されているワイヤ9を溶接することとしてもよい。この場合、摩擦により内径側のワイヤ9が一部破断したとしても、ワイヤ9の張力が失われること無く継続して使用できる。
【0050】
また、前記実施例では、ワイヤ9を基板6Aに立設されているピン7a,7c,7e,7gに巻回させ、上面視略四角形状にワイヤ層Wを形成させることとして説明したが、これに限らず、例えば、上面視略三角形状や、上面視略六角形状に巻回させ、基板Aを複数重合させることで、上面視略円形のワイヤ層を形成させることとしてもよい。
【0051】
また、前記実施例では、ワイヤ9を各ピンに対して複数回巻回させていたが、これに限らず、例えば、ワイヤを1回のみ巻回させることとしてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、ワイヤ9を各ピンに対して巻回させることとしたが、巻回は必須ではなく、貫通孔が形成されている周縁部に直線状のワイヤを溶接することとしてもよい。
【0053】
また、前記実施例では、断面形状略真円のワイヤ9を使用していたが、これに限られず、断面形状楕円径状や、角形状、偏平形状を成したワイヤを使用することとしてもよい。
【0054】
また、前記実施例では、ワイヤシール1,21を、回転軸2に対して非接触のシール機構として説明したがこれに限られず、接触型のシール機構として使用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ワイヤシール(シール機構)
2 回転軸(回転部)
3 ハウジング(静止部)
4 スナップリング
5 段部
6 基体
6A 基板
7a~7h ピン(ピン部材)
8 貫通孔
8a 周縁部
9 ワイヤ
9A 胴部
16 枠部
17a~17h ピン
18a~18h ピン
21 ワイヤシール
22 基板
23 蓋板
24 基体
26 蓋板
27 枠部
R 流体
W ワイヤ層
H 機内側高圧側
L 機外側低圧側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9