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特開2022-29576発泡シート及びそれを使用した本革製表皮材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029576
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】発泡シート及びそれを使用した本革製表皮材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
C08J9/04 CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132919
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000181136
【氏名又は名称】持田商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】監物 孝明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸治
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA13B
4F074AA25A
4F074AA98
4F074AC36
4F074AG01
4F074BA13
4F074BB02
4F074BC12
4F074CA25
4F074CC03X
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC06X
4F074CE02
4F074CE43
4F074DA02
4F074DA20
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA38
4F074DA45
(57)【要約】
【課題】切削加工性の優れた発泡シート、並びに、例えば鞄や靴の材料として用いられる、前記発泡シートを使用した本革製表皮材を提供する。
【解決手段】ゴム、熱可塑性エラストマー、及び無機物充填剤から成る混合物を架橋発泡させて成る発泡シートであって、前記発泡シートは、厚さが0.3mm~3mmの範囲内である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム、熱可塑性エラストマー、及び無機物充填剤から成る混合物を架橋発泡させて成る発泡シートであって、前記発泡シートは、厚さが0.3mm~3mmの範囲内であることを特徴とする発泡シート。
【請求項2】
前記発泡シートは、前記ゴムが20重量部~80重量部、前記熱可塑性エラストマーが80重量部~20重量部、前記無機物充填剤が30重量部~150重量部である請求項1に記載の発泡シート。
【請求項3】
前記ゴムは、エチレン‐プロピレンゴムである請求項1又は2に記載の発泡シート。
【請求項4】
前記ゴムは、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴムであり、該エチレン‐プロピレン‐ジエンゴムは、ジエン含有量が3%から6%の範囲内にある請求項1又は2に記載の発泡シート。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項6】
前記無機物充填剤が、タルクである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項7】
前記発泡シートは、見掛け密度が0.065g/cm~0.250g/cmである請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発泡シートを使用して成ることを特徴とする本革製表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工性の優れた発泡シート、並びに、例えば鞄や靴の材料として用いられる、前記発泡シートを使用した本革製表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
皮革は、大まかに、牛や豚などの哺乳類、ダチョウ等の鳥類、爬虫類、魚類といった脊椎動物に由来する天然皮革と、合成皮革若しくは人工皮革といった人造皮革に分類される。
【0003】
皮革は、天然皮革若しくは合成皮革の如何に関わらず、一般に衣料品や装身具などに利用されることが多い。とりわけ、衣服(コート、パンツ、ライディングウェア、消防士の防火服、溶接作業服、第二次世界大戦中までのフライトジャケットなどの飛行服や、潜水艦乗組員、戦車兵の制服など)、革靴、鞄、ベルト、サスペンダー、椅子の表張り、車両用シートなど、耐摩擦性、耐火性、引っ張り強度などの耐久性が求められるものに多く使われる。
【0004】
ここで、皮革について、牛を例に概略を説明する。図1は、牛の革皮膚(単に「皮」と記すことがある。)の層構造を示す概略図である。革皮膚100は、図1に示すように、順に表皮101、乳頭層102、網状層(網状組織)103、及び皮下組織104で構成されている。一般的に、例えば牛革鞄の場合、牛革とは、革皮膚からなめし段階で表皮101、皮下組織を除去し、真皮層(ここでは、乳頭層102及び網状層103から成る部分)のみにしたものを言う。そして真皮部分を牛革鞄の材料として使用する。ちなみに、牛革(真皮)を鞄材に使用する場合、その厚みは1.2~2mmくらいが一般的である。
【0005】
しかしながら、牛革は、合成皮革や合成繊維などに比べて重いので、これらの繊維の需要に比べるとピーク時の1/5に減少している。ここで、牛革を先に述べた厚みの半分、即ち0.6mmくらいにした場合、軽量化するという意味では、弱点を克服できるものの、耐久性、長期使用による劣化に対しては、一般的な厚みを持つ牛革と比べると更に問題となってしまう。
【0006】
近年では、牛革において、図1に示す乳頭層102、網状層103からなる真皮層部分に、ワディングシート(具体的には発泡材シート若しくは発泡シートといったもの)と称されるシートを接着して、天然皮革と同様な風合いの良い表皮材、更には連続加工に適した表皮材を考慮するという研究がされている。一般的にワディングシートは、多孔質のポリウレタン系発泡シートやポリオレフィン系樹脂等の発泡シートが使用される。その際の牛革とワディングシートの接合に関しては、主に接着剤、縫製、又はワディングシートの表面を熱溶融して牛革を貼付するといった方法を用いるのが公知の技術である。例えば、そのような発明が、特許第6357367号公報(特許文献1)や特開2019-101069号公報(特許文献2)に開示されている。
【0007】
特許文献1に記載の表皮材は、牛革、豚革、又はワニ革等といった天然皮革と、先に述べた発泡体補強材とを、湿気硬化型ホットメルト接着剤から成る層により接着して製造されるものである。また、特許文献2に記載されている本革製表皮は、仮止めシートの上に、本革表皮を配置させ、その後に表皮と、表面を溶融したワディングシートとを接着して得られたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6357367号公報
【特許文献2】特開2019-101069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の表皮材については、裏基布を用いて、天然皮革や発泡体補強材の熱による劣化は解消され得るものの、ホットメルト接着剤を用いるため、溶融温度やプレスの際の圧力を考慮しなくてはならない。また裏基布を用いることにより、天然皮革の熱劣化が解消され得るとしたが、ホットメルト接着剤の溶融温度によっては、熱劣化が起こりうるため、含水の天然皮革が必須になる。また、特許文献2に記載の本革製表皮において、使用されるワディングシートには、主に多孔質のウレタン発泡シートが使用されているが、耐水性の問題があり、長期間使用している間に、本革との剥離現象や、ワディングシート本体が劣化し、本革表面のシワの発生等の懸念材料を有する。
【0010】
ここで、上記のワディングシートに使用される多孔質のウレタン発泡シートにかわるものとしては、ポリエチレン発泡シートやスポンジゴムシートなどがある。しかし、これらの発泡シートは、本革との積層した場合、本革がもつ本来の風合いが損なわれるといった問題がある。また、薄くスライスして使用することが難しいといった課題、即ち切削加工性についても要求される性質である。
【0011】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、切削加工性の優れた発泡シート、並びに、例えば鞄や靴の材料として用いられる、前記発泡シートを使用した本革製表皮材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る発泡シートの上記目的は、ゴム、熱可塑性エラストマー、及び無機物充填剤から成る混合物を架橋発泡させて成る発泡シートであって、前記発泡シートは、厚さが0.3mm~3mmの範囲内であることを特徴とすることにより達成される。
【0013】
更に本発明に係る発泡シートの上記目的は、前記発泡シートは、前記ゴムが20重量部~80重量部、前記熱可塑性エラストマーが80重量部~20重量部、前記無機物充填剤が30重量部~150重量部であることにより、或いは前記ゴムは、エチレン‐プロピレンゴムであることにより、或いは前記ゴムは、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴムであり、該エチレン‐プロピレン‐ジエンゴムは、ジエン含有量が3%から6%の範囲内にあることにより、或いは前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーであることにより、或いは前記無機物充填剤が、タルクであることにより、或いは前記発泡シートは、見掛け密度が0.065g/cm~0.250g/cmであることにより、より効果的に達成される。
【0014】
本発明に係る本革製表皮材の上記目的は、上記記載の発泡シートを使用して成ることを特徴とすることにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る発泡シートは、EP(エチレン‐プロピレン)ゴムとスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物にタルクを配合することにより、切削加工性が良く、3mm以下にスライス加工したものは、本革の一部として、革本来の特性を生かした、即ち本革製表皮材として、その工業的価値がきわめて高いものである。
【0016】
また、本発明に係る発泡シートを使用した本革製表皮材によれば、軽量且つ、天然皮革由来の風合いや美観を残した本革製表皮材を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】牛の革皮膚の層構造を示す概略図である。
図2】本発明に係る本革製表皮材の構造を示す概略図である。
図3】本発明に係る発泡シート(網状層)の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本革製表皮材1の層断面及び製造の概略を示す図である。
図5】本発明に係る本革製表皮材の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る発泡シート及び該シートを使用した本革製表皮材について、図面等を参照しながら説明する。
【0019】
図2は、本発明に係る本革製表皮材の構造を示す概略図である。図2に示すように、本革製表皮材1は、発泡シート層若しくはワディングシート層2、接着剤層3及び真皮層4から成る。
【0020】
ここで、従来の牛皮革の層構造を示す図1と、本願の本革製表皮材に係る図2とを対比して説明すると、真皮層4は、乳頭層102及び網状層103から成る。次に、図2の本革製表皮材1に係る各構成要素について説明する。
【0021】
先ず、発泡シート層2について説明する。発泡シート層2については、発泡シートを用いる。本発明に係る発泡シート層2、即ち発泡シートは、ゴム、熱可塑性エラストマー、及び無機系充填剤を架橋発泡させて成る。
【0022】
次に発泡シート層2、即ち発泡シートの各構成要素について説明する。先ず、ゴムとしては、本発明の発泡シートの目的たる、切削加工性や切削容易性、耐候性、耐薬品性、耐老化性等を考慮すると、非ジエン系のゴムが好ましい。そして、非ジエン系のゴムについては、エチレン‐プロピレンゴム(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレンゴム(IIR))、ウレタンゴム(U)、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、シリコーンゴム(Q)及びその誘導体、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)類、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、加硫ゴム等といったものが可能であるが、先に述べた切削加工性や、後述する添加剤の配合、臭気等の自然環境などを考慮すると、エチレン‐プロピレンゴム(EPM)又はエチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)が望ましい。ちなみに、EPDMは、ジエン含有量が3%から6%の範囲内にあるものが好ましい。
【0023】
次に、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系などが使用可能である。そして、ゴム同様に、本発明の発泡シートの目的たる、切削加工性や切削容易性、耐候性、耐薬品性、耐老化性等を考慮すると、スチレン系が望ましい。ちなみに、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用するときは、スチレン含有量が30%以下のものを使用するとよい。
【0024】
次に、無機物充填剤としてタルクを用いる。タルクとは、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末で、平均粒子径が、1μm~10μmの範囲内にあるもので、一般的に微粉タルクと言われているものであれば、使用できる。タルクの他にも炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、クレー、酸化チタン、カーボンブラック等が使用可能であるが、発泡シートの切削加工性の効果は少なく、本発明においてはタルクを併用することによって、大幅に切削加工性が改善されることを見出した。
【0025】
次に、ゴム、熱可塑性エラストマー及び無機物充填剤の配合比ついて説明する。ゴム20重量部~80重量部と熱可塑性エラストマー80重量部~20重量部の混合物に対して、無機物充填剤30重量部~150重量部を混合する。言い換えると、ゴム:熱可塑性エラストマー=4:1~1:4の混合物を100重量部とした場合、当該混合物に対して、無機物充填剤を30重量部~150重量部添加するという意味である。切削性を大幅に改善することを見出した。ゴムの使用量が20重量部未満の場合、発泡シート(網状層2)を製造する工程で、架橋効率が低下し、良好なシートを得ることが困難になる。また、80重量部を超えると、得られる発泡シートを薄くスライスする工程で、切削性が低下する。特に好ましくは、30重量部から60重量部の範囲内で使用するのが良い。
【0026】
ゴムに対するエラストマーの配合量は、80重量部~20重量部の範囲内で使用することが好ましく、80重量部以上では、良好な発泡シートが得られ難くなり、また、20重量部未満では、発泡シートにした場合、圧縮特性が低下しやすくなり、特に好ましくは、70重量部~30重量部の範囲内である。
【0027】
そして、本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)においては、架橋発泡させることが重要な点である。その理由としては、切削加工性の改善を目的とする。本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)において用いられる架橋剤は、有機過酸化物系架橋剤が好ましい。その理由として、例えば加硫剤や硫黄で架橋する場合は硫黄特有の臭気を有すること、加硫戻りがあること、また有機過酸化物系架橋剤の場合に比べると耐熱性が弱かったり、ひずみが生じやすくなったりするためである。有機過酸化物系架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチル)パーオキシ‐1,3-ジイソプロピル]ベンゼン、過酸化ジベンゾイル(BPO)などが使用される。また、架橋度を微調整するために、架橋助剤として、トリアリルイソシアヌレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの多官能性モノマーを併用することも出来る。
【0028】
また、本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)において用いられる発泡剤は、一般的に用いられる化学発泡剤を用いることが出来る。例えば、アゾジカルボンアミド(以下、ADCAと言う)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などがあげられる。また、発泡助剤として、亜鉛華、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、尿素などの併用も可能である。
【0029】
次に上記架橋剤及び発泡剤の発泡シート(発泡シート層2)への配合については、それぞれに係る架橋率及び発泡倍率が見掛け密度に比例するため、発泡シートの見掛け密度0.250g/cm~0.065g/cmの範囲内であれば、配合量は、適宜変化可能である。ここで、見掛け密度については、後述する。
【0030】
発泡シート層2の厚さについては、0.3~3mmが望ましい。0.3mmよりも薄い場合は、接着がうまくいかなかったり、本革製表皮材1としての強度が十分ではなかったり、本革製表皮材1を作製した時にクッション性が失われるたりする。3mmよりも厚いと、鞄や靴などを加工するときにうまく加工できなかったり、また、本革製表皮材1の重さがそれらの加工製造にふさわしくなかったり、本革製表皮材自体の風合いが損なわれたりする。また、発泡シート層2、即ち発泡シートの見掛け密度については、0.065g/cm~0.250g/cmの範囲が望ましい。見掛け密度が0.065g/cmよりも小さい場合、発泡シートの強度がもろくなり、本革が持つ風合いが損なわれるといった懸念がある。また、見掛け密度が0.250g/cmよりも大きい場合、切削加工性が低下したり、風合いが損なわれるといったことがある。
【0031】
なお、本発明においては、無機物充填剤以外の添加剤としては、帯電防止剤、抗菌防カビ剤、消臭剤、加工助剤、酸化防止剤、着色剤なども発泡シート層2(発泡シート)に使用することが出来る。また、本発明においては、ゴム及び熱可塑性エラストマーの混合物の代わりに、発泡ゴムを単独材料で作成可能なエチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質ポリウレタン、硬質ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、フェノール類、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ユリア、アクリル、メタクリル、ポリイミドなども使用することができる。
【0032】
接着剤層3は、特許文献1にも記されていたようなホットメルト接着剤の他、エマルション接着剤、天然ゴム系接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤、合成ゴム系接着剤、膠、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン系接着剤、紫外線硬化型接着剤、イソシアネート系接着剤、線状ポリアミド系接着剤、レゾルシノール系接着剤などといったものが使用でき、真皮層4の材質や後に説明する網状層2に用いる発泡体の材質の接着の如何によっては、液状、固形、エマルション(乳状)タイプといった様態に使い分けることが可能である。
【0033】
接着剤層3の厚さは、0.1~0.5mmくらいが望ましい。0.1mmよりも薄い場合は、接着が十分ではない。0.5mmよりも厚いと、却って接着が十分ではなかったり、本革製表皮材1全体の美観を損ねたりする。なお、接着剤層3の設置(塗布)方法については、特に限定はない。
【0034】
真皮層4は、牛革、豚革、馬、羊、カンガルー、ゾウ、ラクダ、アザラシ等といった哺乳類、ダチョウ、エミューといった鳥類、ワニ、蛇といった爬虫類の真皮部分が使用される。特に、牛革からなる天然皮革は、耐久性に優れることから好適なものである。天然皮革の厚みは、0.5~2mmとされる。なお、真皮については後述するが、既知の方法でなめしたものを使用する。
【0035】
そして、本革製表皮材1の厚さは、0.6~5mmくらいが望ましい。0.6mmよりも薄いと強度がもろく、尚且つ鞄や靴の加工といった場合に、出来上がりがよくない。5mmよりも厚いと、鞄や靴の加工した時の美観を損なったり、単純に天然の皮革と変わらない重さになってしまい、わざわざ本革製表皮材にする意味合いが無くなる。
【0036】
次に、本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)の製造方法について、フローチャートを用いて説明する。図3は、本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)の製造方法を示すフローチャートである。
【0037】
先ず、ゴム、熱可塑性エラストマー、無機系充填剤、架橋剤及び発泡剤を溶融混合する(ステップS1)。溶融混合の方法については、任意(既知)の方法が採られ、溶融混合の温度は、使用するゴムやエラストマーの軟化温度以上で、かつ架橋剤や発泡剤が分解する温度以下であれば良い。通常は、90℃から130℃の範囲内で行うことが出来る。また、混合時間については、10分から30分の範囲内で効率よく行うことが出来る。ゴムについては、先に述べたように、非ジエン系のゴムが好ましい。そして、非ジエン系のゴムについては、エチレン‐プロピレンゴム(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレンゴム(IIR))、ウレタンゴム(U)、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、シリコーンゴム(Q)及びその誘導体、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)類、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、加硫ゴム等といったものが可能であるが、先に述べた切削加工性や、後述する添加剤の配合、臭気等の自然環境などを考慮すると、エチレン‐プロピレンゴム(EPM)又はエチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)が望ましい。ちなみに、EPDMは、ジエン含有量が3%から6%の範囲内にあるものが好ましい。
【0038】
次に、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系などが使用可能である。そして、ゴム同様に、本発明の発泡シートの目的たる、切削加工性や切削容易性、耐候性、耐薬品性、耐老化性等を考慮すると、スチレン系が望ましい。ちなみに、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用するときは、スチレン含有量が30%以下のものを使用するとよい。また、本発明においては、ゴム及び熱可塑性エラストマーの混合物の代わりに、発泡ゴムを単独材料で作成可能なエチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質ポリウレタン、硬質ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、フェノール類、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ユリア、アクリル、メタクリル、ポリイミドなども使用することができる。
【0039】
次に、無機物充填剤としてタルクを用いる。タルクとは、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末で、平均粒子径が、1μm~10μmの範囲内にあるもので、一般的に微粉タルクと言われているものであれば、使用できる。タルクの他にも炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、クレー、酸化チタン、カーボンブラック等が使用可能であるが、発泡シートの切削加工性の効果は少なく、本発明においてはタルクを併用することによって、大幅に切削加工性が改善されることを見出した。
【0040】
次に、ゴム、熱可塑性エラストマー及び無機物充填剤の配合比ついて説明する。ゴム20重量部~80重量部と熱可塑性エラストマー80重量部~20重量部の混合物に対して、無機物充填剤30重量部~150重量部を混合する。言い換えると、ゴム:熱可塑性エラストマー=4:1~1:4の混合物を100重量部とした場合、当該混合物に対して、無機物充填剤を30重量部~150重量部添加するという意味である。切削性を大幅に改善することを見出した。ゴムの使用量が20重量部未満の場合、発泡シート(網状層2)を製造する工程で、架橋効率が低下し、良好なシートを得ることが困難になる。また、80重量部を超えると、得られる発泡シートを薄くスライスする工程で、切削性が低下する。特に好ましくは、30重量部から60重量部の範囲内で使用するのが良い。
【0041】
ゴムに対するエラストマーの配合量は、80重量部~20重量部の範囲内で使用することが好ましく、80重量部以上では、良好な発泡シートが得られ難くなり、また、20重量部未満では、発泡シートにした場合、圧縮特性が低下しやすくなり、特に好ましくは、70重量部~30重量部の範囲内である。
【0042】
そして、本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)においては、架橋発泡させることが重要な点である。その理由としては、切削加工性の改善を目的とする。本発明に係る発泡シート(発泡シート層2)において用いられる架橋剤は、有機過酸化物系架橋剤が好ましい。その理由として、例えば加硫剤や硫黄で架橋する場合は硫黄特有の臭気を有すること、加硫戻りがあること、また有機過酸化物系架橋剤の場合に比べると耐熱性が弱かったり、ひずみが生じやすくなったりするためである。有機過酸化物系架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチル)パーオキシ‐1,3-ジイソプロピル]ベンゼン、過酸化ジベンゾイル(BPO)などが使用される。また、架橋度を微調整するために、架橋助剤として、トリアリルイソシアヌレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの多官能性モノマーを併用することも出来る。
【0043】
また、本発明に係る発泡シートにおいて用いられる発泡剤は、一般的に用いられる化学発泡剤を用いることが出来る。例えば、アゾジカルボンアミド(以下、ADCAと言う)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などがあげられる。また、発泡助剤として、亜鉛華、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、尿素などの併用も可能である。
【0044】
次に上記架橋剤及び発泡剤の発泡シート(発泡シート層2)への配合については、それぞれに係る架橋率及び発泡倍率が見掛け密度に比例するため、発泡シートの見掛け密度0.250g/cm~0.065g/cmの範囲内であれば、配合量は、適宜変化可能である。
【0045】
発泡シートの見掛け密度であるが、0.065g/cm~0.250g/cmの範囲が望ましい。見掛け密度が0.065g/cmよりも小さい場合、発泡シートの強度がもろくなり、本革が持つ風合いが損なわれるといった懸念がある。また、見掛け密度が0.250g/cmよりも大きい場合、発泡シートの切削加工性が低下したり、風合いが損なわれるといったことがある。
【0046】
ステップS1の後、本発明に係る発泡シートに成り得る当該混合物をシート状に成型した後、所定のサイズの金型に投入し、加圧下で加熱することにより、当該混合物の架橋並びに発泡剤の初期分解を行う(ステップS2)。このステップS2において、当該混合物をシート状に成型する方法については任意且つ既知の方法を用いる。なお、架橋並びに発泡剤の初期分解における、加圧圧力、加熱温度、時間については任意であるが、プレス圧力は、10MPsから15MPaが好ましい。また、温度は、140℃~150℃の範囲内が良い。時間は、使用する金型の厚みによって、適宜変えることが出来る。金型の深さが15mmの場合は、15分~20分の範囲内が良い。金型の深さが2倍になれば、時間も2倍にするのが好ましい。
【0047】
次に、ステップS2の後、オーブンに移して、再度加熱することにより、発泡剤を完全に分解させてブロック状の発泡シートを得る(ステップS3)。ステップS3における加熱温度は、任意であるが、通常は、160℃から200℃の範囲内が良い。200℃以上の温度では、発泡速度が速く、亀裂が発生しやすくなる。また、160℃以下では、発泡終了時間が長くなり、作業性が悪い。
【0048】
ステップS3で得られたブロック状の発泡シートを、厚さ0.3mm~3mmの範囲内にスライスする(ステップS4)。ステップS4におけるスライスの方法については、既知のバンドナイフスライサ等で切削すればよい。この時、発泡シートを、厚さ0.3mm~3mmの範囲内にスライスするとしたのは、発泡シートの厚みが、0.3mm以下の場合、本革と積層した場合、クッション性が失われる。また、3mm以上では、本革の本来の風合いが失われる。好ましくは、0.5mm~2mmの範囲が良い。
【0049】
次に、本革製表皮材1の製造方法について図面を用いて説明する。図4は、本革製表皮材1の層断面及び製造の概略を示す図である。図5は、本発明に係る本革製表皮材の製造方法を示すフローチャートである。なお、図4に記されている符号については、図2と同一である。
【0050】
発泡シート層4を、マスキングシート5の上に貼り、連続シートにする(ステップS11)。真皮層4については、上述のように、牛革、豚革、馬、羊、カンガルー、ゾウ、ラクダ、アザラシ等といった哺乳類、ダチョウ、エミューといった鳥類、ワニ、蛇といった爬虫類の真皮部分が使用される。特に、牛革からなる天然皮革は、耐久性に優れることから好適なものである。天然皮革の厚みは、0.5~2mmとされる。なお、真皮層4については、ステップS11の前に予めなめしておく。ちなみになめしについては、既知の方法でよく特に制限はない。
【0051】
ステップS11の後、接着剤層3を成す接着剤3’を真皮層4及びマスキングシート5の上にドット状(点状)に塗布する(ステップS12)。接着剤層3(接着剤3’)の材質であるが、ホットメルト接着剤の他、エマルション接着剤、天然ゴム系接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤、合成ゴム系接着剤、膠、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン系接着剤、紫外線硬化型接着剤、イソシアネート系接着剤、線状ポリアミド系接着剤、レゾルシノール系接着剤などといったものが使用でき、真皮層4の材質や後に説明する発泡シート層4に用いる発泡体の材質の接着の如何によっては、液状、固形、エマルション(乳状)タイプといった様態に使い分けることが可能である。ここで、ドット状に接着剤を塗布するとしているが、これは、真皮層4と、発泡シート層2とを接着する際、既知の方法よりは、塗り斑が出ずに接着できるためである。無論、十分な接着や本革製表皮材1の美観を損ねさえしなければ、ドット状にこだわる必要はない。なお、ドット状に塗布する際は、例えば接着工程にて使うローラに細工をしたり、任意の塗布器をドット状に塗布できるように工夫したりすることにより可能になる。
【0052】
なお、ドット状に塗布した接着剤3’は、結果として接着剤層3となるが、接着剤層3の厚さは、0.1~0.5mmくらいが望ましい。0.1mmよりも薄い場合は、接着が十分ではない。0.5mmよりも厚いと、却って接着が十分ではなかったり、本革製表皮材1全体の美観を損ねたりする。
【0053】
ステップS12の後、予め作製した厚さ0.3mm~3mmの発泡シート層(発泡シート。図3参照。)2をプレスなどで真皮層4と接着して本革製表皮材1を得る(ステップS13)。
【0054】
ステップS13の後、本革製表皮材1を適宜用途に応じて裁断する(ステップS14)。なお、裁断方法については特に限定はない。
【0055】
ちなみに、マスキングシート5については、真皮層4を連続シート状にするための型及び真皮層4の表面保護材の役割に過ぎず、必ずしも本発明に係る本革製表皮材1の必須要件ではない。マスキングシート5については、微粘着タイプということを除けば、材質に限定はなく、皮革部分の材質によって適宜変更可能である。
【0056】
以上、本発明に係る発泡シート及びそれを使用した本革製表皮材について記したが、本明細書、特許請求の範囲又は図面に記載の事項を逸脱しなければ、上記実施形態の限りではないことは言うまでもない。
【実施例0057】
本発明に係る発泡シート及び当該シートを使用した本革製表皮材について、実施形態を更に詳細に説明するために、実施例を挙げて説明する。
【0058】
[実施例1]ゴムとしてエチレンプロピレンゴム(三井EPT:X-3012P、以下EPゴム1と呼ぶ)60重量部、熱可塑性エラストマーとして、スチレン系エラストマー(クラレ:セプトン2004F、以下エラストマー1と呼ぶ)40重量部、タルク50重量部、ステアリン酸1.5重量部、発泡剤としてADCA(大塚化学製:ユニフォームAZ)4重量部、亜鉛華2重量部、架橋剤としてパーカドックス14-40を0.8重量部配合し、3Lニーダにて、溶融混合し取り出した後、オープンロールにて、厚み3mmのシート状に帯取りし、マザーシートを作成した。次に、深さ10mmで縦横サイズ:100mm×150mmの金型にマザーシートを投入し、165℃で16分加圧加熱した後、圧力を開放し、発泡体を得た。
【0059】
得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度を、JISK-6767に準拠して測定したところ、0.105g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工し、0.3mmの厚さのシートを得た。スライス加工の工程では、スライス面の状態は平滑で、厚さも均一なシートを得ることができた。次に、本発泡シートを用いて、厚み1mmの本革シートと接着剤を用いて、積層した。本革積層品、即ち実施例1に係る本革製表皮材を裁断加工した際の切削性は良好で、切削面は、均一でシワの発生も無かった。
【0060】
[実施例2]実施例1において、EPゴム1を40重量部、エラストマー1を60重量部、タルク50重量部、ステアリン酸1.5重量部、発泡剤としてADCA(大塚化学製:ユニフォームAZ)4重量部、亜鉛華2重量部、架橋剤としてパーカドックス14-40を0.6重量部配合し、同様の条件にて、発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度は、0.125g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工し、0.3mmの厚さのシートを得た。スライス加工の工程では、スライス面の状態は平滑で、厚さも均一なシートを得ることができた。次に、本発泡シートを用いて、厚み1mmの本革シートと接着剤を用いて、積層した。本革積層品、即ち実施例2に係る本革製表皮材を裁断加工した際の切削性は良好で、切削面は、均一でシワの発生も無かった。
【0061】
[実施例3]実施例1において、スチレン系熱可塑性エラストマー(三菱化学(株)製:ラバロン:SJ4400、以下エラストマー2と呼ぶ)60重量部、を用いた以外は、同様の条件にて、発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度は、0.118g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工し、0.3mmの厚さのシートを得た。スライス加工の工程では、スライス面の状態は平滑で、厚さも均一なシートを得ることができた。次に、本発泡シートを用いて、厚み1mmの本革シートと接着剤を用いて、積層した。本革積層品、即ち実施例3に係る本革製表皮材を裁断加工した際の切削性は良好で、切削面は、均一でシワの発生も無かった。
【0062】
[実施例4]実施例1において、EPゴム2を40重量部、エラストマー2を60重量部、を用いた以外は、同様の条件にて、発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度は、0.132g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工し、0.3mmの厚さのシートを得た。スライス加工の工程では、スライス面の状態は平滑で、厚さも均一なシートを得ることができた。次に、本発泡シートを用いて、厚み1mmの本革シートと接着剤を用いて、積層した。本革積層品、即ち実施例4に係る本革製表皮材を裁断加工した際の切削性は良好で、切削面は、均一でシワの発生も無かった。
【0063】
[比較例1]EPゴム1を60重量部、エラストマー1を40重量部、炭酸カルシウム50重量部、ステアリン酸1.5重量部、発泡剤としてADCA(大塚化学製:ユニフォームAZ)4重量部、亜鉛華2重量部、架橋剤としてパーカドックス14-40を1.2重量部配合し、3Lニーダにて、溶融混合し取り出した後、オープンロールにて、厚み3mmのシート状に帯取りし、マザーシートを作成した。次に、深さ10mmで縦横サイズ:100mm×150mmの金型にマザーシートを投入し、165℃で16分加圧加熱した後、圧力を開放し、発泡体を得た。
【0064】
得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度は、0.118g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工したところ、1.5mmの厚さのシートは、得られたが、厚みのばらつきが大きく、また、1.5mm以下は、スライス出来なかった。
【0065】
[比較例2]EPゴム(三井EPT:3092PM、以下EPゴム2と呼ぶ)40重量部、エラストマー1を60重量部、炭酸カルシウム25重量部、ステアリン酸1.5重量部、発泡剤としてADCA(大塚化学製:ユニフォームAZ)4重量部、亜鉛華2重量部、架橋剤としてパーカドックス14-40を0.8重量部配合し、3Lニーダにて、溶融混合し取り出した後、オープンロールにて、厚み3mmのシート状に帯取りし、マザーシートを作成した。次に、深さ10mmで縦横サイズ:100mm×150mmの金型にマザーシートを投入し、165℃で16分加圧加熱した後、圧力を開放し、発泡体を得た。
【0066】
得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度は、0.112g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工したところ、2.0mmの厚さのシートは、得られたが、厚みのばらつきが大きく、また、2.0mm以下は、スライス出来なかった。
【0067】
[比較例3]EPゴム1を60重量部、エラストマー2を40重量部、タルク20重量部、ステアリン酸1.5重量部、発泡剤としてADCA(大塚化学製:ユニフォームAZ)4重量部、亜鉛華2重量部、架橋剤としてパーカドックス14-40を0.8重量部配合し、実施例1と同様の条件にて発泡体を得た。得られた発泡シートは、厚み:20mmで、見掛け密度は、0.155g/cmであった。このシートをバンドナイフスライサにて、スライス加工したところ、2.0mmの厚さのシートは、得られたが、厚みのばらつきが大きく、また、2.0mm以下は、スライス出来なかった。
【0068】
上記に記した実施例1乃至4並びに比較例1乃至3に係る材料の配合比や切削加工性の違いを表1として、下記に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
EPゴムとスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物にタルクを配合することで、実施例1乃至4に係る発泡シートは、切削加工性が良く、3mm以下にスライス加工したものは、本革との積層品として、革本来の特性を生かした本革製表皮材として、その工業的価値は、きわめて高いものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る発泡シート及びそれを使用した本革製表皮材によれば、軽量化や強度の調節が可能なため、鞄だけでなく、天然の皮革を利用する製品と同様の製品を製造することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 本革製表皮材
2 発泡シート層
3 接着剤層
4 真皮層
5 マスキングシート
図1
図2
図3
図4
図5