(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029596
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】微細素子の製造方法及び微細素子
(51)【国際特許分類】
B81C 1/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132954
(22)【出願日】2020-08-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「多層エレクトレット集積型CMOS-MEMS振動発電素子の創製」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】山根 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 有弥
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA13
3C081AA17
3C081BA47
3C081CA03
3C081CA27
3C081CA30
3C081DA03
3C081DA29
3C081EA02
3C081EA03
3C081EA08
3C081EA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができる微細素子の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体集積回路3上に形成されたMEMS構造体4に対し、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着することによって、該MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置している。さらに、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するにあたって、犠牲層Gを除去することによってMEMS構造体4に微細孔4aを形成し、該微細孔4aを用いて、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着することによって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路上に形成されたMEMS構造体に対し、エレクトレットを真空蒸着することによって、該MEMS構造体にエレクトレットを配置してなり、
前記エレクトレットは、帯電処理不要で、真空蒸着可能なものである微細素子の製造方法。
【請求項2】
犠牲層を除去することによって前記MEMS構造体に微細孔を形成し、該微細孔を用いて、前記エレクトレットを真空蒸着することによって、前記MEMS構造体にエレクトレットを配置してなる請求項1に記載の微細素子の製造方法。
【請求項3】
半導体集積回路上に形成されたMEMS構造体には、真空蒸着によって形成されたエレクトレットが配置されてなり、
前記エレクトレットは、帯電処理不要で、真空蒸着可能なものである微細素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細素子の製造方法及び微細素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製されたものとして、半導体集積回路(LSI)とMEMS構造体が一つのチップ上に形成された集積化MEMS素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このような集積化MEMS素子に、半永久的に電荷を保持する誘電体であるエレクトレットを形成するようにすれば、センサ感度向上や低消費電力化、発電機能付与等、集積化MEMS素子の性能が向上することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エレクトレットを形成するにあたっては、高温・高電圧印加等の帯電処理が必要であることから、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成すると、半導体集積回路(LSI)やMEMS構造体を破壊する可能性があるという問題があった。そのため、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができる微細素子の製造方法及び微細素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
請求項1に係る微細素子の製造方法は、半導体集積回路(3)上に形成されたMEMS構造体(4)に対し、エレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を真空蒸着することによって、該MEMS構造体(4)にエレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を配置してなり、
前記エレクトレット(自己組織化エレクトレット11)は、帯電処理不要で、真空蒸着可能なものであることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に係る微細素子の製造方法は、上記請求項1に記載の微細素子の製造方法において、犠牲層(G)を除去することによって前記MEMS構造体(4)に微細孔(4a)を形成し、該微細孔(4a)を用いて、前記エレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を真空蒸着することによって、前記MEMS構造体(4)にエレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を配置してなることを特徴としている。
【0010】
一方、請求項3に係る微細素子は、半導体集積回路(3)上に形成されたMEMS構造体(4)には、真空蒸着によって形成されたエレクトレット(自己組織化エレクトレット11)が配置されてなり、
前記エレクトレット(自己組織化エレクトレット11)は、帯電処理不要で、真空蒸着可能なものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1,3に係る発明によれば、エレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を真空蒸着によって、MEMS構造体(4)にエレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を配置するようにしているから、半導体集積回路(3)や、MEMS構造体(4)を破壊しまう事態を防止することができる。これにより、集積化MEMS素子にエレクトレットを形成することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、犠牲層(G)を除去することによってMEMS構造体(4)に微細孔(4a)を形成し、該微細孔(4a)を用いて、エレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を真空蒸着することによって、MEMS構造体(4)にエレクトレット(自己組織化エレクトレット11)を配置しているから、エレクトレットの機能が低下してしまう事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る微細素子を示す斜視図である。
【
図2】(a)~(c)は、同実施形態に係る基板上に形成された半導体集積回路上に、MEMS構造体を形成する工程を示す一部縦断面図である。
【
図3】(a)~(b)は、
図2に示す同実施形態に係る基板上に形成された半導体集積回路上に、MEMS構造体を形成する工程の続きを示す一部縦断面図、(c)は、MEMS構造体にエレクトレットを形成する工程を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る微細素子の製造方法及び微細素子を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る微細素子1は、集積化MEMS素子10に自己組織化エレクトレット11が形成されているものである。より詳しく説明すると、集積化MEMS素子10は、基板2と、半導体集積回路3と、MEMS構造体4と、で主に構成されている。基板2は、
図1に示すように矩形状に形成され、例えばシリコン基板などにて形成されている。
【0017】
一方、半導体集積回路3は、
図1に示すように、基板2上に形成されており、容量素子、抵抗素子やメモリセルなど、種々の素子を有しているものである。
【0018】
MEMS構造体4は、
図1に示すように、半導体集積回路3上に形成されており、半導体製造技術による微細加工を施して形成された微小構造である。このMEMS構造体4は、例えば圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、光スキャナ、デジタルミラーデバイス、光変調器等の機械的要素を構成することができる。より詳しく説明すると、MEMS構造体4は、
図1に示すように、半導体集積回路3上に固定されている固定電極部40と、固定電極部40と間隔を隔てて設けられた可動電極部41とで構成されており、可動電極部41は、図示はしないが、従来周知の通り、揺動可能に支持部によって支持されている。
【0019】
かくして、上記のように構成される集積化MEMS素子10が一般的に知られている。
【0020】
ところで、このような集積化MEMS素子10に、半永久的に電荷を保持する誘電体であるエレクトレットを形成しようとすると、高温・高電圧印加等の帯電処理が必要である。そのため、集積化MEMS素子10にエレクトレットを形成しようとすると、半導体集積回路3や、MEMS構造体4を破壊しまう可能性があるという問題があった。それゆえ、集積化MEMS素子10にエレクトレットを形成することができないという問題があった。
【0021】
そこで、本実施形態においては、上記のような集積化MEMS素子10に、自己組織化エレクトレット11を用いて、エレクトレットを形成するようにしている。すなわち、この自己組織化エレクトレット11は、本発明者の一人である田中有弥が発明したもので、帯電処理不要なものであり、真空蒸着可能なものである。なお、この自己組織化エレクトレット11については、詳しくは、国立研究開発法人科学技術振興機構と、国立大学法人千葉大学とが令和2年4月20日に共同で発表した内容に詳しい記載がある(https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200420/index.html)。そのため、ここでの詳細な説明は省略することとする。
【0022】
以下、上記のような集積化MEMS素子10に、自己組織化エレクトレット11を用いて、エレクトレットを形成する方法を詳しく説明する。
【0023】
まず、
図2(a)に示すように、基板2上に形成された半導体集積回路3上に、例えば、蒸着法により密着層となる薄厚のTi層40aを形成し、引き続き、シード層となる薄厚のAu層40bを形成する。
【0024】
次いで、
図2(b)に示すように、第1層配線M1を形成する。より詳しく説明すると、公知のフォトリソグラフィ技術により、各パターンとなる箇所に開口を有するマスクパターンPを形成し、電解めっき法により、開口に露出するシード層よりAu層40bの厚みを厚くする(Au層40bを成長させる)。そして、このマスクパターンPを埋め込むように犠牲層Gを形成する。しかして、このようにして、
図2(b)に示すように、第1層配線M1が形成されることとなる。なお、この犠牲層Gは、感光性ポリイミドを塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜をフォトリソグラフィ技術によりパターニングすることで、形成したものである。
【0025】
次いで、第1層配線M1上に、上記
図2(a),(b)の処理を繰り返し、
図2(c)に示すように、第2層配線M2,第3層配線M3,第4層配線M4を形成する。そしてさらに、第4層配線M4上に、上記
図2(a),(b)の処理を繰り返し、
図3(a)に示すように、第5層配線M5,第6層配線M6,第7層配線M7を形成する。
【0026】
ところで、第2層配線M2~第7層配線M7を形成するにあたっては、
図1に示すような微細孔4aであるリリースホールが形成されるように、
図3(a)に示すように、形成されている。なお、第7層配線M7を形成するにあたっては、犠牲層Gは形成されない。
【0027】
次いで、
図3(b)に示すように、犠牲層Gを除去する。これにより、第1層配線M1が固定電極部40となり、第2層配線M2~第7層配線M7が可動電極部41となるMEMS構造体4が、半導体集積回路3上に形成されることとなる。しかして、このようにして、集積化MEMS素子10が形成されることとなる。なお、犠牲層Gを除去するにあたっては、例えば、酸素ガスを用いたドライエッチングプロセスにより、有機材料を選択的にエッチングすることで除去するようにすれば良い。
【0028】
次いで、
図3(c)に示すように、真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4の上面に自己組織化エレクトレット11を配置する。そしてさらに、可動電極部41には、微細孔4aが形成されているから、この微細孔4aに、自己組織化エレクトレット11を通過させるようにすれば、MEMS構造体4内に、自己組織化エレクトレット11が配置されることとなる。
【0029】
かくして、このようにして、集積化MEMS素子10に、自己組織化エレクトレット11を用いて、エレクトレットを形成することができることとなる。
【0030】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着による低温プロセス(室温程度)のみによって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するようにしているから、半導体集積回路3や、MEMS構造体4を破壊しまう事態を防止することができ、もって、集積化MEMS素子10にエレクトレットを形成することができる。これにより、エレクトレットの自己バイアス効果により集積化MEMS素子10の性能が向上することとなる。例えば、物理・化学センサの感度向上、静電アクチュエータの低消費電力化が実現可能となる。また、集積化MEMS素子10に新しい機能を付加することもできる。例えば、エナジーハーベスティング機能として、集積化MEMS素子による環境振動発電が実現可能となる。
【0031】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、犠牲層Gを除去した後、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するようにしたが、それに限らず、自己組織化エレクトレット11を真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4に自己組織化エレクトレット11を配置するようにした後、犠牲層Gを除去するようにしても良い。しかしながら、このような方法では、犠牲層Gを除去した際、エレクトレットの機能を低下させてしまう危険性がある。そのため、本実施形態のように、犠牲層Gを除去した後、真空蒸着による低温プロセス(室温程度)によって、MEMS構造体4の上面に自己組織化エレクトレット11を配置するようにすれば、エレクトレットの機能が低下してしまう事態を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態においては、エレクトレットを形成するにあたって、自己組織化エレクトレット11を用いて形成するようにしたが、それに限らず、帯電処理不要なもので、真空蒸着可能なものであれば、どのようなエレクトレットを用いても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 微細素子
2 基板
3 半導体集積回路
4 MEMS構造体
4a 微細孔
10 集積化MEMS素子
11 自己組織化エレクトレット(エレクトレット)
G 犠牲層