(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029626
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】テープ及びエアコン配管
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20220210BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20220210BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20220210BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20220210BHJP
C08K 5/134 20060101ALI20220210BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20220210BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220210BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/101
C08K5/521
C08K5/524
C08K5/134
C09J7/24
C09J7/38
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133005
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】光永 敏勝
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AH02A
4F100AH08A
4F100AK15A
4F100AK25B
4F100AK73B
4F100AN02B
4F100BA02
4F100CA04A
4F100CA06A
4F100CB05B
4F100JL09
4J002BD031
4J002EG049
4J002EH146
4J002EJ069
4J002EW047
4J002EW068
4J002FD026
4J002FD027
4J002FD079
4J002FD087
4J002FD088
4J002GF00
4J002GJ00
4J002GQ00
4J002HA09
4J004AA05
4J004AB01
4J004CA05
4J004CB03
4J004EA06
4J004FA10
(57)【要約】
【課題】優れた耐候性を有するテープを提供する。
【解決手段】50~80質量部の塩化ビニル系樹脂と、20~50質量部の可塑剤と(塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計は100質量部)、0.1~2質量部のリン酸エステルと、0.1~2質量部の、分子量が1000以上の亜リン酸エステルと、0.1~2質量部のフェノール系酸化防止剤と、亜鉛系耐熱安定剤と、を含む基材層を含むテープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50~80質量部の塩化ビニル系樹脂と、
20~50質量部の可塑剤と(塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計は100質量部)、
0.1~2質量部のリン酸エステルと、
0.1~2質量部の、分子量が1000以上の亜リン酸エステルと、
0.1~2質量部のフェノール系酸化防止剤と、
亜鉛系耐熱安定剤と、
を含む基材層を含むテープ。
【請求項2】
前記リン酸エステルが、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート、下記式(I)で示される化合物、及び下記式(II)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である請求項1に記載のテープ。
【化1】
(式(I)中、R
1~R
4はそれぞれ独立して、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基を表す。)
【化2】
(式(II)中、R
5~R
8はそれぞれ独立して、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基を表す。)
【請求項3】
前記リン酸エステルが下記式(i)で示される化合物である請求項1又は2に記載のテープ。
【化3】
【請求項4】
前記亜リン酸エステルが下記式(III)で示される化合物である請求項1から3のいずれか一項に記載のテープ。
【化4】
(式(III)中、R
9~R
12はそれぞれ独立して、炭素数12~24のアルキル基を表す。R
13及びR
14はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基を表す。R
15及びR
16はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基を表す。m、nはそれぞれ0~4の整数を表す。)
【請求項5】
前記テープが粘着層をさらに含む請求項1から4のいずれか一項に記載のテープ。
【請求項6】
前記テープが粘着層を含まない請求項1から4のいずれか一項に記載のテープ。
【請求項7】
エアコン配管用テープである請求項1から6のいずれか一項に記載のテープ。
【請求項8】
請求項7に記載のテープを用いて結束されたエアコン配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープ及びエアコン配管に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンの配管は、耐久性向上の観点からその外周を塩化ビニル系樹脂製の保護テープで巻かれている。該配管は主に屋外に配置されているため、該保護テープは日光や雨の暴露を受ける。その結果、経時と共に該保護テープには着色や硬化等が発生し、耐候性の向上が望まれている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂を含む組成物の耐候性を向上する方法として、例えば特許文献1~4には、該組成物にリン酸エステルを添加する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-214018号公報
【特許文献2】特開2001-226551号公報
【特許文献3】特開2004-154116号公報
【特許文献4】特開2002-265725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記方法では十分な耐候性が得られず、更なる耐候性の向上が望まれている。本発明は、優れた耐候性を有するテープ及び該テープを用いたエアコン配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
[1]50~80質量部の塩化ビニル系樹脂と、
20~50質量部の可塑剤と(塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計は100質量部)、
0.1~2質量部のリン酸エステルと、
0.1~2質量部の、分子量が1000以上の亜リン酸エステルと、
0.1~2質量部のフェノール系酸化防止剤と、
亜鉛系耐熱安定剤と、
を含む基材層を含むテープ。
【0007】
[2]前記リン酸エステルが、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート、下記式(I)で示される化合物、及び下記式(II)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である[1]に記載のテープ。
【0008】
【0009】
(式(I)中、R1~R4はそれぞれ独立して、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基を表す。)
【0010】
【0011】
(式(II)中、R5~R8はそれぞれ独立して、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基を表す。)
【0012】
[3]前記リン酸エステルが下記式(i)で示される化合物である[1]又は[2]に記載のテープ。
【0013】
【0014】
[4]前記亜リン酸エステルが下記式(III)で示される化合物である[1]から[3]のいずれかに記載のテープ。
【0015】
【0016】
(式(III)中、R9~R12はそれぞれ独立して、炭素数12~24のアルキル基を表す。R13及びR14はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基を表す。R15及びR16はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基を表す。m、nはそれぞれ0~4の整数を表す。)
【0017】
[5]前記テープが粘着層をさらに含む[1]から[4]のいずれかに記載のテープ。
【0018】
[6]前記テープが粘着層を含まない[1]から[4]のいずれかに記載のテープ。
【0019】
[7]エアコン配管用テープである[1]から[6]のいずれかに記載のテープ。
【0020】
[8][7]に記載のテープを用いて結束されたエアコン配管。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、優れた耐候性を有するテープ及び該テープを用いたエアコン配管を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るテープは基材層を含む。該基材層は、50~80質量部の塩化ビニル系樹脂と、20~50質量部の可塑剤と、0.1~2質量部のリン酸エステルと、0.1~2質量部の、分子量が1000以上の亜リン酸エステルと、0.1~2質量部のフェノール系酸化防止剤と、亜鉛系耐熱安定剤と、を含む。なお、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計は100質量部である。
【0023】
本発明者らは、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含む基材層を有するテープにおいて、該基材層にリン酸エステル、分子量が1000以上の亜リン酸エステル、及びフェノール系酸化防止剤を所定の割合で添加することで、着色や硬化が低減され、十分な耐候性が得られることを見出した。十分な耐候性が得られるメカニズムの詳細は明らかではないが、リン酸エステルが塩化ビニル系樹脂中の可塑剤のエステル部位とエステル交換し、可塑剤の光分解を抑制すると推測される。さらに、分子量が1000以上の亜リン酸エステル、及びフェノール系酸化防止剤は分子量が高いため揮発や分解が遅く、該リン酸エステルの酸化分解を相乗的に抑制することで、全体としてテープの着色や硬化が十分に低減されると推測される。
【0024】
本発明に係るテープは、基材層以外に他の層を含んでもよい。他の層としては、例えば粘着層、下塗り層等が挙げられる。テープの厚みは特に限定されないが、例えば100~400μmであることができる。以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0025】
[基材層]
本発明に係る基材層は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びフェノール系酸化防止剤を所定量含み、さらに亜鉛系耐熱安定剤を含む。前記基材層はこれらの成分以外にも、必要に応じて、防滴剤、含フッ素化合物、滑剤又は粘着防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機質充填剤、顔料等を含むことができる。前記基材層の厚みは特に限定されないが、例えば70~300μmであることができる。
【0026】
(塩化ビニル系樹脂)
本発明に係る基材層は、塩化ビニル系樹脂を含む。塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル(塩化ビニルホモポリマー)のほか、塩化ビニルと他のモノマー、例えばエチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、フマル酸、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテル等との共重合体、又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0027】
基材層に含まれる塩化ビニル系樹脂の量は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、50~80質量部であり、50~78質量部であることが好ましく、60~76質量部であることがより好ましく、65~75質量部であることがさらに好ましい。塩化ビニル系樹脂の含有量が50質量部以上であることにより、テープとして必要なフィルム強度を保つことができる。塩化ビニル系樹脂の含有量が80質量部以下であることにより、適度な曲面追従性と伸びを持ったフィルムとすることができる。なお、基材層100質量%に含まれる、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計の含有割合は80質量%以上であることができ、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、該含有割合は97質量%以下であることができる。
【0028】
(可塑剤)
本発明に係る基材層は、可塑剤を含む。可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂を可塑化できるものであれば特に限定されないが、例えばジ-n-オクチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジラウリルフタレート、ジデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジトリノニルアジペート、ジイソデシルアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;セバシン酸エステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤が好ましく、ジイソノニルフタレート(DINP)がより好ましい。なお、本発明において可塑剤にはリン酸エステルは含まれない。
【0029】
基材層に含まれる可塑剤の量は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、20~50質量部であり、22~50質量部であることが好ましく、24~40質量部であることがより好ましく、25~35質量部であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量が20質量部以上であることにより、適度な曲面追従性と伸びをフィルムに付与することができる。可塑剤の含有量が50質量部以下であることにより、テープとして好ましいフィルム強度を保つことができる。
【0030】
(リン酸エステル)
本発明に係る基材層は、リン酸エステルを含む。リン酸エステルとしては特に限定されないが、例えばトリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート、下記式(I)で示される化合物、下記式(II)で示される化合物等が好ましい。
【0031】
【0032】
(式(I)中、R1~R4はそれぞれ独立して、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基を表す。)
【0033】
【0034】
(式(II)中、R5~R8はそれぞれ独立して、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基又はアルキル置換アリール基を表す。)
【0035】
前記式(I)のR1~R4において、炭素数6~18のアルキル基としては、例えばヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アリール置換アルキル基としては、例えばベンジル基等が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アルキル置換アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基等が挙げられる。前記式(I)で示される化合物としては、具体的には、下記式(i)で示される化合物等が挙げられる。
【0036】
【0037】
前記式(II)のR5~R8において、炭素数6~18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基及びアルキル置換アリール基としては、前記式(I)のR1~R4と同様であることができる。前記式(II)で示される化合物としては、具体的には、R5~R8がフェニル基である化合物等が挙げられる。
【0038】
これらのリン酸エステルは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でもリン酸エステルとしては、より高い耐候性を示す観点から、前記式(I)で示される化合物が好ましく、前記式(i)で示される化合物がより好ましい。
【0039】
基材層に含まれるリン酸エステルの量は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、0.1~2質量部であり、0.2~1.9質量部であることが好ましく、0.3~1.8質量部であることがより好ましく、0.5~1.7質量部であることがさらに好ましい。リン酸エステルの含有量が0.1質量部以上であることにより、着色や硬化が抑制される。リン酸エステルの含有量が2質量部以下であることにより、リン酸エステルの分解に由来する着色を抑えることができる。
【0040】
(亜リン酸エステル)
本発明に係る基材層は、分子量が1000以上の亜リン酸エステルを含む。該亜リン酸エステルとしては、耐候性向上の観点から、下記式(III)で示される化合物が好ましい。
【0041】
【0042】
(式(III)中、R9~R12はそれぞれ独立して、炭素数12~24のアルキル基を表す。R13及びR14はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基を表す。R15及びR16はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基を表す。m、nはそれぞれ0~4の整数を表す。)
【0043】
式(III)において、R9~R12の炭素数12~24のアルキル基は、炭素数12~20のアルキル基が好ましく、炭素数12~16のアルキル基がより好ましい。R13及びR14の炭素数1~10のアルキル基は、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル、t-ブチル基等が挙げられる。R15及びR16の炭素数1~10のアルキル基は、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル、t-ブチル基等が挙げられる。m、nはそれぞれ0~2の整数が好ましい。なお、式(III)で示される化合物の分子量は1000以上である。
【0044】
前記式(III)で示される化合物としては、例えば下記式(ii)で示されるテトラ(C12~C15アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(分子量:1028~1196)、下記式(iii)で示される4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルホスファイト)(分子量:1108)等が挙げられる。これらの亜リン酸エステルは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、亜リン酸エステルの分子量の上限は例えば10000以下であることができ、3000以下であることもできる。
【0045】
【0046】
(式(ii)中、R17~R20はそれぞれ独立して、炭素数12~15のアルキル基である。)
【0047】
【0048】
基材層に含まれる亜リン酸エステルの量は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、0.1~2質量部であり、0.2~1.9質量部であることが好ましく、0.3~1.8質量部であることがより好ましく、0.5~1.7質量部であることがさらに好ましい。亜リン酸エステルの含有量が2質量部以下であることにより、亜リン酸エステル分解物由来の着色を抑えることができる。
【0049】
(フェノール系酸化防止剤)
本発明に係る基材層は、フェノール系酸化防止剤を含む。フェノール系酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール等が挙げられる。これらの中でも、耐候性向上の観点から、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾールが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、市販品では、例えばIrganox 1010(商品名、BASFジャパン(株)製)、アデカスタブ AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-50T、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330(いずれも商品名、(株)ADEKA製)等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0050】
基材層に含まれるフェノール系酸化防止剤の量は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、0.1~2質量部であり、0.2~1.9質量部であることが好ましく、0.3~1.8質量部であることがより好ましく、0.5~1.7質量部であることがさらに好ましい。フェノール系酸化防止剤の含有量が0.1質量部以上であることにより、着色や硬化を防止することができる。フェノール系酸化防止剤の含有量が2質量部以下であることにより、酸化防止剤由来の着色を防止することができる。
【0051】
(亜鉛系耐熱安定剤)
本発明に係る基材層は、耐熱性向上の観点から亜鉛系耐熱安定剤を含む。亜鉛系耐熱安定剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛等が挙げられる。これらの亜鉛系耐熱安定剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、亜鉛系耐熱安定剤に加えて、他の耐熱安定剤を併用してもよい。他の耐熱安定剤としては、例えばステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。これらの他の耐熱安定剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0052】
基材層に含まれる亜鉛系耐熱安定剤の量は特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、0.1~2質量部であることが好ましく、0.15~1質量部であることがより好ましく、0.2~0.5質量部であることがさらに好ましい。亜鉛系耐熱安定剤の含有量が0.1~2質量部であることにより、十分なテープの耐熱性が得られる。
【0053】
(滑剤又は粘着防止剤)
本発明に係る基材層は、必要に応じて滑剤又は粘着防止剤を含むことができる。滑剤又は粘着防止剤としては特に限定されないが、例えばステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド系滑剤;ブチルパルミテート、ブチルステアレート等のエステル系滑剤;ポリエチレンワックス;流動パラフィン等が挙げられる。
【0054】
これらの滑剤又は粘着防止剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。基材層が滑剤又は粘着防止剤を含む場合、基材層に含まれる滑剤及び粘着防止剤の量は特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、例えば0.1~0.4質量部であることができる。
【0055】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る基材層は、耐候性向上の観点から、必要に応じて紫外線吸収剤を含むことができる。紫外線吸収剤としては特に限定されないが、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。基材層が紫外線吸収剤を含む場合、基材層に含まれる紫外線吸収剤の量は特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、例えば0.1~0.4質量部であることができる。
【0056】
(光安定剤)
本発明に係る基材層は、耐候性向上の観点から、必要に応じて光安定剤を含むことができる。光安定剤としては特に限定されないが、例えばヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。基材層が光安定剤を含む場合、基材層に含まれる光安定剤の量は特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、例えば0.1~0.4質量部であることができる。
【0057】
(無機質充填剤)
本発明に係る基材層は、強度の観点から、必要に応じて無機質充填剤を含むことができる。無機質充填剤としては特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウム珪酸塩、酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト類等が挙げられる。これらの無機質充填剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。基材層が無機質充填剤を含む場合、基材層に含まれる無機質充填剤の量は特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対して、例えば5~20質量部であることができる。
【0058】
[粘着層]
本発明に係るテープは、テープを巻く対象物との接着性の観点から、基材層に加えて粘着層をさらに含むことができる。粘着層は基材層上に配置されることができ、基材層と直接接していてもよい。また、粘着層は最外層であることができる。粘着層に含まれる粘着剤としては、例えば天然ゴムやSBRなどの合成ゴムにC5石油樹脂やC9級石油樹脂を混合した粘着剤等が挙げられる。粘着層は、前記粘着剤以外にも、例えばリン系難燃剤等を含むことができる。粘着層の厚みは特に限定されないが、例えば15~50μmであることができる。なお、本発明に係るテープは粘着層を含まなくてもよい。
【0059】
[テープの耐候性能]
(着色開始時間)
本発明に係るテープは、耐候性向上(着色抑制)の観点から、下記方法で測定される着色開始時間が150時間以上であることが好ましく、200時間以上であることがより好ましく、300時間以上であることがさらに好ましく、350時間以上であることが特に好ましい。
【0060】
<着色開始時間の測定方法>
テープに対して、超促進耐候性試験機(アイスーパーUVテスター)を用いて紫外線強度90mW/cm2、ブラックパネル温度50℃で連続的にUVを照射した(以下、「耐候試験」ともいう。)。耐候試験前後のテープを分光測色計CM-25cGを用いて測定を行った。初期からの色差(ΔE)が20を超えた時点を着色開始時間とした。
【0061】
(引張伸び)
本発明に係るテープは、耐候性向上(硬化抑制)の観点から、前記耐候試験200時間後に下記方法で測定される引張伸びが100%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。また、耐候試験前の引張伸びに対する耐候試験200時間後の引張伸びの割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0062】
<引張伸びの測定方法>
テープを20mm×200mmの短冊状に切り出し、23℃、相対湿度50%の環境下、テンシロン万能材料試験機を用いて、チャックのつかみ間を100mm、速度を5mm/sで引張り、破断時の伸び(%)を測定した。
【0063】
[テープの製造方法]
本発明に係るテープの製造方法は特に限定されず、例えばカレンダー法、押出法、インフレーション法等の公知の方法を用いることができる。また、テープ製造時の製造条件についても特に限定されない。
【0064】
[用途]
本発明に係るテープの用途は、耐候性が求められる用途であれば特に限定されないが、例えばエアコンの配管等が挙げられる。すなわち、本発明に係るテープはエアコン配管用テープであることができる。粘着層を含むテープは、例えば冷媒管にそのまま巻き付けて使用することができる。また、粘着層を含まないテープは、例えば冷媒管に巻き付けた後、両端を粘着層を含むテープで止めて使用することができる。本発明に係るエアコン配管は、本発明に係るテープを用いて冷媒管等が結束されている。
【実施例0065】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
塩化ビニルホモポリマー(商品名:TH1000、大洋塩ビ(株)製)70質量部と、ジイソノニルフタレート(DINP)30質量部と、前記式(i)で示されるリン酸エステル(〔4-〔2-〔4-ビス(2-メチルフェノキシ)ホスホリルオキシフェニル〕プロパン2イル〕フェニル〕ビス(2-メチルフェニル)フォスフェート)0.3質量部と、前記式(iii)で示される亜リン酸エステル(4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルホスファイト))0.9質量部と、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール(商品名:アデカスタブ AO-40、(株)ADEKA製)0.3質量部と、ステアリン酸亜鉛0.3質量部と、ステアリン酸バリウム0.2質量部と、顔料マスターバッチ(アイボリー)2.4質量部とを、カレンダーロールを用いて165℃で混錬し、膜厚150μmのフィルム状に成膜した。
なお、顔料マスターバッチ(アイボリー)は、黒色系顔料(商品名:P4710、大日精化工業(株)製)0.04質量部と、黄色系顔料(商品名:P4490、大日精化工業(株)製)2.9質量部と、橙色系顔料(商品名:P4377、大日精化工業(株)製)0.05質量部と、滑剤としての二塩基性ステアリン酸鉛(DSL)(堺化学工業(株)製)0.3質量部と、をヘンシェルミキサーで混合することで調製した。
得られたテープの引張伸び及び着色開始時間を、前述した方法により測定した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2~9、比較例1~3]
各成分の種類及び配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にテープを作製し、引張伸び及び着色開始時間を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例10、比較例4]
実施例9、比較例3において作製したテープに対して以下の粘着剤を、コンマコーターを用いてそれぞれ塗工し、厚み25μmの粘着層を有するテープを作製した。粘着剤としては、アクリル変性天然ゴム系ラテックス(MMA/NR共重合体ラテックス(MMA/NR組成比=30/70)、(株)レヂテックス製、商品名:MG-40S)40質量部、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(スチレン/ブタジエン組成比=25/75、JSR(株)製、商品名:T-093A)60質量部、粘着付与樹脂エマルジョン(C5石油樹脂エマルション、荒川化学(株)製、商品名:AP2100NT)120質量部を混合したものを用いた。
【0069】
【0070】
表1における各化合物は以下の通りである。
リン酸エステル(A):前記式(i)で示される化合物(〔4-〔2-〔4-ビス(2-メチルフェノキシ)ホスホリルオキシフェニル〕プロパン2イル〕フェニル〕ビス(2-メチルフェニル)フォスフェート)
リン酸エステル(B):トリクレジルホスフェート(商品名:サンソサイザーTCP、新日本理化(株)製)
亜リン酸エステル(A):前記式(iii)で示される化合物(4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルホスファイト)(分子量:1108))
フェノール系酸化防止剤(A):6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール(商品名:アデカスタブ AO-40、(株)ADEKA製)
フェノール系酸化防止剤(B):ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:Irganox1010 BASFジャパン株式会社製)
【0071】
表1に示されるように、実施例1~10で製造したテープは引張伸びが高く、耐候試験前後で引張伸びの低減が抑制され、硬化が抑制されていた。また、着色開始時間が長く、優れた耐候性を有していた。一方、フェノール系酸化防止剤を含まない比較例1のテープ、リン酸エステルを含まない比較例2のテープ、及び塩化ビニル系樹脂と可塑剤の合計100質量部に対してリン酸エステルを2質量部を超えて含む比較例3及び4のテープは、いずれも実施例1~10のテープと比較して引張伸びが低くかつ着色開示時間が短く、耐候性が低かった。