(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029644
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】植栽用容器ユニットおよびそれを用いた緑化工法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20220210BHJP
A01G 20/00 20180101ALI20220210BHJP
【FI】
A01G9/02 101J
A01G20/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133040
(22)【出願日】2020-08-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509165839
【氏名又は名称】有限会社フォーナイン企画
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 紳一
(72)【発明者】
【氏名】勝山 泰次朗
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022AB04
2B022AB06
2B327NC02
2B327NC24
2B327ND02
2B327NE12
2B327QB02
2B327QB03
2B327QB09
2B327QB11
2B327QC23
2B327QC28
2B327RA03
2B327RA14
2B327RA25
2B327RB07
2B327RB09
2B327TA04
2B327TA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】取扱いが簡易で、壁面等の緑化の施工も非常に容易且つ短期間に行うことができ、且つ植栽の交換が容易でメンテナンス性に優れる植栽用容器ユニットを提供する。
【解決手段】上面開口部と正面開口部とを有する外側容器100と、外側容器100の正面開口部に挿入されて掛止される内側容器200と、内側容器200を外側容器100に固定するための固定板300と、を有する植栽用容器ユニットであって、内側容器200は、土壌等の植栽基盤とポット苗植物とが収容可能で、ポット苗植物の植物体の部分を外部に裸出させ得る正面開口部を具備し、正面開口部とは別に植栽基盤およびポット苗植物を収容するための上面開口部を具備し、内側容器200は、正面開口部を有する正面に外側容器100の正面開口部周囲の壁部と掛合する正面鍔部213を有しており、内側容器200が外側容器100内に着脱可能に収容されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口部(111)と正面開口部(112)とを有する外側容器(100)と、
該外側容器の前記正面開口部(112)に挿入されて掛止される内側容器(200)と、
該内側容器を前記外側容器に固定するための固定板(300)と、を有する植栽用容器ユニットであって、
前記内側容器は、土壌等の植栽基盤(401)とポット苗植物(402)とが収容可能で、該ポット苗植物の植物体の部分を外部に裸出させ得る正面開口部(211)を具備し、該正面開口部(211)とは別に前記植栽基盤およびポット苗植物を収容するための上面開口部(212)を具備し、
前記内側容器は、前記正面開口部(211)を有する正面に前記外側容器の正面開口部周囲の壁部(113)と掛合する正面鍔部(213)を有しており、該正面鍔部と前記固定板とを組み合わせることで前記内側容器が前記外側容器の正面開口部(112)を閉塞した状態で前記外側容器内に着脱可能に収容されるように構成されていることを特徴とする植栽用容器ユニット。
【請求項2】
前記外側容器が、底部に溜水部(121)を有し、前記溜水部の溢水を下部に放出するための筒状貫通孔(122)を底部中央に有していることを特徴とする請求項1に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項3】
前記内側容器が、収容した前記植栽基盤およびポット苗植物を支持し、潅水を下部に導水するための格子状構造(231)を底部に有していることを特徴とする請求項1または2に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項4】
前記外側容器が、前記正面開口部(112)に形成された少なくとも一つの切り欠き(141)と、該正面開口部側の天部(140)に設けられた少なくとも一つの爪(142)とを有しており、
前記内側容器が、前記正面鍔部(213)に隣り合い前記外側容器の正面開口部(112)に挿入される側面の正面鍔部(213)近傍に設けられた爪(241)と、正面鍔部の両側辺の外側に固定板を挿入可能に設けられた鉤状突起(242)とを有しており、
前記固定板が、側面視でZ形断面を有し、
前記内側容器を前記外側容器の正面開口部(112)に挿入した際、前記爪(241)が前記切り欠き部(141)を通過可能に構成されており、前記爪(241)と前記正面鍔部(213)とによって、前記外側容器の前記切り欠き(141)の下部を構成する正面開口部の壁部(113)が挟持され、
前記固定板を前記内側容器の鉤状突起(242)に挿入した際、前記固定板の折り曲げ部(341)が前記内側容器の正面鍔部上辺に固定され、前記固定板の上辺が前記外側容器の天部爪(142)に掛止されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項5】
前記内側容器の正面鍔部(213)と固定板(300)とが、内側容器の開口部(211)を閉塞しないように組み合わされることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項6】
前記外側容器の底部の外周に底面に平行な底部鍔部(161)を有しており、
複数の容器ユニットを上下に配置した際に、上側容器ユニットの外側容器の底部が下側容器ユニットの外側容器の上面開口部(111)に挿入され、上側容器ユニットの外側容器の前記底部と前記底部鍔部(161)とによって、下側容器ユニットの外側容器の上面開口部(111)が閉塞されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項7】
前記外側容器が、容器ユニットを保持する壁面保持体(601)に掛止するための掛止部(171)を天部背面側に具備していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項8】
前記外側容器が、潅水を行うための潅水パイプが挿入される溝部(181)を、さらに具備しており、
該溝部は、一方の側面に張出部(182)を張り出して構成されており、他方の側面に該張出部を挿入可能な受け部(183)として溝部を構成していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項9】
複数の植栽用容器ユニットを上下に配置した際、最上部の植栽用容器ユニットが、さらに、蓋体(500)を具備することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項10】
前記外側容器、前記内側容器および前記固定板のうち少なくとも一つの全体が合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項11】
前記蓋体の全体が合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項9に記載の植栽用容器ユニット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の植栽用容器ユニット(1)を複数、少なくとも上下に配設して施工する緑化工法であって、前記外側容器(100)単独、および、内側容器(200)に植栽基盤(401)とポット苗植物(402)とを収容した植栽用容器ユニット(1)のうち少なくとも一つを選択して配設したことを特徴とする緑化工法。
【請求項13】
単独で配設された前記外側容器(100)に、植栽基盤およびポット苗植物を収容した内側容器(200)を挿入し、固定板(300)で固定することを特徴とする請求項12に記載の緑化工法。
【請求項14】
配設された、内側容器(200)に植栽基盤とポット苗植物とを収容した前記植栽用容器ユニットから、固定板を取り外し、前記内側容器を抜き取ることを特徴とする請求項12に記載の緑化工法。
【請求項15】
配設された、内側容器に植栽基盤とポット苗植物とを収容した前記植栽用容器ユニットから、固定板を取り外し、外側容器から前記内側容器を抜き取り、
植栽基盤およびポット苗植物が収容された、異なる内側容器を前記外側容器に挿入して、固定板で固定することを特徴とする請求項12に記載の緑化工法。
【請求項16】
複数の植栽用容器ユニットを、上下、左右に配設して施工するに際し、
上部の植栽用容器ユニットの外側容器の底部を下部の植栽用容器ユニットの外側容器の上面開口部を閉塞するように挿入し、
左右の植栽用容器ユニットの外側容器の一方の張出部(182)を他方の受け部(183)に嵌合して施工することを特徴とする請求項12~15のいずれか1項に記載の緑化工法。
【請求項17】
前記外側容器が、植栽用容器ユニットを保持する壁面保持体(601)に掛止するための掛止部(171)を天部背面側に具備しており、
該掛止部を前記壁面保持体に掛止させて、該壁面保持体に容器ユニットを保持させることを特徴とする請求項12~16のいずれか1項に記載の緑化工法。
【請求項18】
壁面(2)近傍の床(3)に排水兼用の床面保持体(602)を設置し、
複数の植栽用容器ユニットを上下に配置した際、最下部の植栽用容器ユニットが排水兼用の床面保持体に支持されているものであることを特徴とする請求項17に記載の緑化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽用容器ユニットと、その容器ユニットを用いた緑化工法、さらに詳しくは、建築、構築物の壁面等の前面部側に設置することによって、その壁面等の前面部側を緑化する植栽用容器ユニットと、その容器ユニットを設置して壁面等を緑化する緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道等の場所で人為的に樹木を植設する等によって緑化が行われている。特に建築物、構築物等が立ち並ぶような場所では、自然木等が少ないので、そのような建築物、構築物等の壁面の緑化を行うことが盛んに試みられており、その緑化の工法として種々の方法がある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、取扱いが簡易で、壁面等の緑化の施工も非常に容易且つ短期間に行うことができ、且つ製造コストも安価である緑化用の容器ユニットと、緑化工法を提供する目的で、土壌等の植栽基盤とポット苗植物とが収容可能な容器ユニット本体の一面側に、該容器ユニット本体内に収容されるポット苗植物の植物体の部分を外部に裸出させうる開口部が形成されていることを特徴とする緑化用の容器ユニットが開示されている。
【0004】
この特許文献1の容器ユニットは、本体に直接植栽基盤と植物体を換装するものであり、植物が枯死したり、別の植物に交換したりするには、容器ユニット本体を取り外す必要があり、メンテナンス性に問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、押え桟によって仕切られた開放窓を有する押え蓋と、該押え蓋の開口側を支持すると共に前記押え蓋内に充填した培土を受ける受皿とを有し、前記押え蓋内に収容した状態で前記開放窓側に露呈する植栽ポットを備える植栽ポットトレーを設けた多目的植栽基盤にかかるものが開示されている。
【0006】
この特許文献2の多目的植栽基盤は、当該特許文献2の
図10、
図11にも記載されているように、壁面緑化用にも使用できるものであるが、芝生シートとも併用することもでき、多目的に使用できる故に、全体の構造も複雑で、押え蓋、受皿、植栽ポットトレー、その他の構成部材を必要とする等、部品点数も増大するものとなっている。従って、このように構造が複雑で部品点数が多いことで、製造コストも増大することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-171953号公報
【特許文献2】特開2005-333976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、容器ユニット本体に直接植栽基盤と植物体を換装するものであり、植栽を交換するには容器ユニット全体を交換しなければならず、メンテナンスが容易でない問題があった。さらに、複数の容器ユニットを配置するにあたり、上の容器ユニットは下の容器ユニットの蓋部に載置するだけであり、左右の容器ユニットの固定は考慮されていないので、保護体なくしては容器ユニットが自立しないという問題があった。また、特許文献2に開示の技術は、構造が複雑で、部品点数が増大し、製造コストや施工コストがかさむという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、取扱いが簡易で、壁面等の緑化の施工も非常に容易且つ短期間に行うことができ、且つ植栽の交換が容易でメンテナンス性に優れる植栽用容器ユニットを提供し、その植栽用容器ユニットを用いた緑化工法を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは鋭意検討の結果、植栽用容器ユニットを2重構造の容器とし、内側容器を前面から抜き差しし、交換可能に固定することで簡便な施工と、植栽の交換やメンテナンス性が向上することを見出し、本発明を開発した。
上記課題を有利に解決する本発明の植栽用容器ユニットは、上面開口部(111)と正面開口部(112)とを有する外側容器(100)と、該外側容器の前記正面開口部(112)に挿入されて掛止される内側容器(200)と、該内側容器を前記外側容器に固定するための固定板(300)と、を有する植栽用容器ユニットであって、前記内側容器は、土壌等の植栽基盤(401)とポット苗植物(402)とが収容可能で、該ポット苗植物の植物体の部分を外部に裸出させ得る正面開口部(211)を具備し、該正面開口部(211)とは別に前記植栽基盤およびポット苗植物を収容するための上面開口部(212)を具備し、前記内側容器は、前記正面開口部(211)を有する正面に前記外側容器の正面開口部周囲の壁部(113)と掛合する正面鍔部(213)を有しており、該正面鍔部と前記固定板とを組み合わせることで前記内側容器が前記外側容器の正面開口部(112)を閉塞した状態で前記外側容器内に着脱可能に収容されるように構成されていることを特徴としている。
【0011】
なお、本発明の植栽用容器ユニットは、
(a)前記外側容器が、底部に溜水部(121)を有し、前記溜水部の溢水を下部に放出するための筒状貫通孔(122)を底部中央に有していること、
(b)前記内側容器が、収容した前記植栽基盤およびポット苗植物を支持し、潅水を下部に導水するための格子状構造(231)を底部に有していること、
(c)前記外側容器が、前記正面開口部(112)に形成された少なくとも一つの切り欠き(141)と、該正面開口部側の天部(140)に設けられた少なくとも一つの爪(142)とを有しており、前記内側容器が、前記正面鍔部(213)に隣り合い前記外側容器の正面開口部(112)に挿入される側面の、正面鍔部(213)近傍に設けられた爪(241)と、正面鍔部の両側辺の外側に固定板を挿入可能に設けられた鉤状突起(242)とを有しており、前記固定板が、側面視でZ形断面を有し、前記内側容器を前記外側容器の正面開口部(112)に挿入した際、前記爪(241)が前記切り欠き部(141)を通過可能に構成されており、前記爪(241)と前記正面鍔部(213)とによって、前記外側容器の前記切り欠き(141)の下部を構成する正面開口部の壁部(113)が挟持され、前記固定板を前記内側容器の鉤状突起(242)に挿入した際、前記固定板の折り曲げ部(341)が前記内側容器の正面鍔部上辺に固定され、前記固定板の上辺が前記外側容器の天部爪(142)に掛止されること、
(d)前記内側容器の正面鍔部(213)と固定板(300)とが、内側容器の開口部(211)を閉塞しないように組み合わされること、
(e)前記外側容器の底部の外周に底面に平行な底部鍔部(161)を有しており、複数の容器ユニットを上下に配置した際に、上側容器ユニットの外側容器の底部が下側容器ユニットの外側容器の上面開口部(111)に挿入され、上側容器ユニットの外側容器の前記底部と前記底部鍔部(161)とによって、下側容器ユニットの外側容器の上面開口部(111)が閉塞されること、
(f)前記外側容器が、容器ユニットを保持する壁面保持体(601)に掛止するための掛止部(171)を天部背面側に具備していること、
(g)前記外側容器が、潅水を行うための潅水パイプが挿入される溝部(181)を、さらに具備しており、該溝部は、一方の側面に張出部(182)を張り出して構成されており、他方の側面に該張出部を挿入可能な受け部(183)として溝部を構成していること、
(h)複数の植栽用容器ユニットを上下に配置した際、最上部の植栽用容器ユニットが、さらに、蓋体(500)を具備すること、
(i)前記外側容器、前記内側容器および前記固定板のうち少なくとも一つの全体が合成樹脂で構成されていること、
(j)前記蓋体の全体が合成樹脂で構成されていること、
が好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明の緑化工法は、
上記いずれかの植栽用容器ユニット(1)を複数、少なくとも上下に配設して施工する緑化工法であって、前記外側容器(100)単独、および、内側容器(200)に植栽基盤(401)とポット苗植物(402)とを収容した植栽用容器ユニット(1)のうち少なくとも一つを選択して配設したことを特徴としている。
【0013】
なお、本発明の緑化工法は、
(k)単独で配設された前記外側容器(100)に、植栽基盤およびポット苗植物を収容した内側容器(200)を挿入し、固定板(300)で固定すること、
(l)配設された、内側容器(200)に植栽基盤とポット苗植物とを収容した前記植栽用容器ユニットから、固定板を取り外し、前記内側容器を抜き取ること、
(m)配設された、内側容器に植栽基盤とポット苗植物とを収容した前記植栽用容器ユニットから、固定板を取り外し、外側容器から前記内側容器を抜き取り、植栽基盤およびポット苗植物が収容された、異なる内側容器を前記外側容器に挿入して、固定板で固定すること、
(n)複数の植栽用容器ユニットを、上下、左右に配設して施工するに際し、上部の植栽用容器ユニットの外側容器の底部を下部の植栽用容器ユニットの外側容器の上面開口部を閉塞するように挿入し、左右の植栽用容器ユニットの外側容器の一方の張出部(182)を他方の受け部(183)に嵌合して施工すること、
(o)前記外側容器が、植栽用容器ユニットを保持する壁面保持体(601)に掛止するための掛止部(171)を天部背面側に具備しており、該掛止部を前記壁面保持体に掛止させて、該壁面保持体に容器ユニットを保持させること、
(p)壁面(2)近傍の床(3)に排水兼用の床面保持体(602)を設置し、複数の植栽用容器ユニットを上下に配置した際、最下部の植栽用容器ユニットが排水兼用の床面保持体に支持されているものであること、
が好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述のように、上面開口部(111)と正面開口部(112)とを有する外側容器(100)と、該外側容器の前記正面開口部(112)に挿入されて掛止される内側容器(200)と、該内側容器を前記外側容器に固定するための固定板(300)と、を有する植栽用容器ユニットであって、前記内側容器は、土壌等の植栽基盤(401)とポット苗植物(402)とが収容可能で、該ポット苗植物の植物体の部分を外部に裸出させ得る正面開口部(211)を具備し、該正面開口部(211)とは別に前記植栽基盤およびポット苗植物を収容するための上面開口部(212)を具備し、前記内側容器は、前記正面開口部(211)を有する正面に前記外側容器の正面開口部周囲の壁部(113)と掛合する正面鍔部(213)を有しており、該正面鍔部と前記固定板とを組み合わせることで前記内側容器が前記外側容器の正面開口部(112)を閉塞した状態で前記外側容器内に着脱可能に収容されるように構成されているものであるため、このような容器ユニットの内側容器に土壌等の植栽基盤を収容するとともにポット苗植物を収容し、そのポット苗側物の植物部分を容器ユニットの正面側開口部から外部に裸出させ、その容器ユニットを多数壁面等の前面側に配置することで、全体として非常に簡易な作業で壁面等の緑化を行うことができるという効果がある。
【0015】
この結果、施工期間も短縮化され、また施工のための用具の製造コストも低廉化でき、簡易に壁面緑化を行ういわゆる早期型壁面緑化の従来のものに比べて、コストを大幅に低減することができるという効果がある。
【0016】
また、内側容器は、固定板の着脱で外側容器に対し、簡単に取り付け、取り外すことができ、外側容器単独で施工して、後付けで、植栽を収容した内側容器を施工したり、デザイン性やメンテナンスを考慮して、容易に植栽が交換したりすることができる効果が得られる。
【0017】
また、通常のポット植物をそのまま植え付けることができるので、特別な養生が不要となる効果がある。さらに、ポット植物の生育状態が悪い内側容器を部分的に取り替える等の作業も容易に行えるという効果がある。また、花色の異なるポット苗によって、壁面に国旗や絵柄をデザインするなどが簡単に行えるという効果が得られる。
【0018】
容器ユニットを上下に重ねたとき、上側容器ユニットの底部がそのまま下側ユニットの蓋部として機能するので、部品点数を増やすことなく施工でき、経済的であると共に施工性に優れている。
【0019】
固定板は、植物体の部分を外部に裸出させうる開口部を制限し、裸出した植物にかかる風圧を軽減する効果も得られる。
【0020】
さらに、複数の容器ユニットを上下に配置した際に、外側容器の底部に溜水部を設け、溜水部の溢水を下部に放出するための筒状貫通孔を底部中央に有していることにより、潅水等によって上側容器ユニットに導入された水が筒状貫通孔を通じて下側容器ユニットにも導入されることになり、上下に配設された複数の容器ユニット相互間における水の流通が非常に良好になるという効果がある。
【0021】
特に、底部に格子状構造を有する内側容器に植栽基盤やポット苗植物を収容して挿入固定して施工した場合には、潅水等によって上側容器ユニットに導入された水が、該上側容器ユニットの内側容器に収容された植栽基盤等を通過し、または、内側容器と外側容器との間のすき間を通過して、上側容器ユニットの外側容器の溜水部に好適に集水され、その中央に設置された筒状貫通孔から溢水となって、下側容器ユニット内に好適に導水されることになる。
【0022】
さらに、灌水を行うための灌水パイプを挿入させる溝部を外側容器に形成した場合には、上記のような植栽用容器ユニットの内側容器に植栽基盤とポット苗植物を収容して多数壁面等の前面側に設置する場合に、設置された内側容器内の植栽基盤とポット苗植物に対する灌水を好適に且つ容易に行うことができるという効果がある。また、上記のような灌水パイプを挿入させる溝部を、上下に設置した最上部の容器ユニットの外側容器に形成し、蓋体によって覆うようにした場合には、上述のように、上側の容器ユニットに導入された水が、連通状態となった筒状貫通孔を介して下側の容器ユニットに導入され、上下に配設された複数の容器ユニット相互間における水の流通が良好になるという効果を、確実に奏させることができる。
【0023】
また、一方の溝部に張出部を設け、他方の溝部にその張出部を挿入可能な受け部を設けることにより、植栽用容器ユニットを上下左右に配置したとき、左右の容器ユニットがしっかりと嵌合できるので、壁面緑化用ユニットを構造的にもしっかりと構成できる。
【0024】
さらに、外側容器、内側容器および固定板のうち少なくとも一つの全体、若しくは蓋体の全体を合成樹脂で構成した場合には、容器ユニットが軽量化され、容器ユニットの取り扱いや作業性、ひいては緑化の施工の作業性がより良好となる。そして、このように全体が軽量となることで、容器ユニットの大きさをコンパクトにすれば、植物や植栽基盤を植え付けた状態でも、片手で取り扱うことができ、その結果、設置作業を非常に容易に行うことができる。
【0025】
さらに、容器ユニットを施工する際、まず、外側容器単独で、施工し、後から植栽基盤とポット苗植物とを収容した内側容器を挿入し、固定板で固定するようにすれば、施主の要望に応じた、または、イベントに即したデザインを壁面緑化として構成することができる。また、すでに植栽基盤等を収容して施工された容器ユニットの植物が枯死した場合などには、その容器ユニットの固定板を外し、内側容器を抜き取ることができ、空いた外側容器には新たな植栽等を収容した別の内側容器を挿入し、固定板で固定して簡便に交換できるので、全体の構造に影響を与えることなく簡便にメンテナンスすることができる。
【0026】
さらに、植栽基盤とポット苗植物とを収容した複数の容器ユニットの外側容器の掛止部を壁面保持体に掛止させて、該壁面保持体に容器ユニットを保持させる場合には、外側容器の掛止部を壁面保持体に掛止させることによって、複数の容器ユニットを上下或いは左右に配設する作業を、そのような壁面保持体を利用することで、より容易且つ迅速に行うことができ、ひいては緑化の施工の作業性が一層向上することとなる。
【0027】
特に、外側容器の掛止部を壁面保持体に掛止して保持するので、安全で簡易な施工を実現することができる。さらに、最下段の容器ユニットを排水兼用の床面保持体で支持するようにすれば、容器ユニット群の位置決めと排水を両立させることができ便利である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る植栽用容器ユニットの組み上がり状態を示す正面図である。
【
図2】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの組み上がり状態を示す平面図である。
【
図3】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの組み上がり状態を示す底面図である。
【
図4】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの組み上がり状態を示す背面図である。
【
図5】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの組み上がり状態を示す右側面図である。
【
図6】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの縦断面図であって、(a)
図1のA-A視断面図、(b)
図2のB-B視断面図である。
【
図7】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの外側容器の正面図である。
【
図8】上記実施形態に係る植栽用容器ユニットの内側容器の三面図であって、(a)正面図、(b)平面図および(c)側面図である。
【
図9】上記内側容器の空間部内に所定の高さまで土壌を収容した状態を示す断面図である。
【
図10】上記内側容器の空間部内にポット苗植物を収容した状態の断面図である。
【
図11】植栽を施した上記植栽用容器ユニットの納まりを示す断面図である。
【
図12】施工後の上記植栽用容器ユニットから内側容器を抜き差しする様子を示す概念図である。
【
図13】多数の植栽用容器ユニットを壁面保持体に保持させた状態の概略三面図であって、(a)植栽を施した正面図、(b)植栽を施す前の平面図および(c)植栽を施した側面図である。
【
図14】他実施形態の植栽用容器ユニットの配置態様を示す概略側面図である。
【
図15】上記他実施形態の植栽用容器ユニットの配置態様を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の植栽用容器ユニットを用いた緑化システムは、
図1~6に示すような容器ユニット1と
図11~14に示すような支持部材とからなる。
図1~6に本発明の一実施形態に係る植栽用容器ユニット1の組み上がり状態を示す。
図1は正面図であり、
図2は平面図であり、
図3は底面図であり、
図4は背面図であり、
図5は右側面図である。左側面図は、右側面図と対称に示される。
図6は縦断面図であって、(a)左半分は
図1のA-A視断面図であり、(b)右半分は
図2のB-B視断面図である。
図7は上記実施形態における外側容器100の正面図を示す。
図8は上記実施形態の内側容器の三面図であって、(a)は正面図であり、(b)は平面図であり、(c)は右側面図である。
【0030】
本発明の植栽用容器ユニット1は、外側容器100と、内側容器200と、固定板300とを組み合わせることで構成されている。
図1~6および
図7に示すように、外側容器100は上面開口部111と正面開口部112を有している。
図1、2、6および8に示すように、内側容器200は、外側容器100の正面開口部112に挿入されて掛止されており、内側容器200も外側容器と同様、正面開口部211と上面開口部212とを有している。内側容器200は、固定板300によって、外側容器100の正面側で固定されている。
図9および10に示すように、内側容器200には、土壌等の植栽基盤401とポット苗植物402とが上面開口部212から収容可能であり、一方、正面開口部211からそのポット苗植物の植物体の部分を外部に裸出させ得るようになっている。
図1の正面図や
図5の側面図、
図6の断面図に示すように、内側容器200には、正面開口部を有する正面に外側容器の正面開口部周囲の壁部と掛合する正面鍔部213を有しており、その正面鍔部213と固定板300とを組み合わせることで内側容器が外側容器の正面開口部112を閉塞した状態で外側容器内に着脱可能に収容されるように構成されているものである。このように構成することで、植栽基盤およびポット苗植物の容器ユニットへの出し入れを容易に行うことができ、植物体を容器ユニットの正面から裸出できるので壁面緑化に有効である。
【0031】
図6に示すように外側容器100の底部に溜水部121を形成し、溜水部の溢水を下部に放出するための筒状貫通孔122を底部中央に有していることが好ましい。また、
図2および
図8(b)に示すように内側容器200の底面を格子状構造231とし、収容した植栽基盤およびポット苗植物を支持するとともに、潅水等を下部に導水できるようにすることが好ましい。こうすることで、潅水等によって導入された水が、内側容器に収容された植栽基盤等を通過し、または、内側容器と外側容器との間のすき間を通過して、外側容器の溜水部121に好適に集水される効果が得られる。また、
図6の例では、筒状貫通孔の上辺に切り欠きを有しており、溜水部の溢水を効率よく下部に流せるようにしている。
【0032】
内側容器の外側容器への固定機構として、
図7に示すように、外側容器100には、その正面開口部112の周囲に少なくとも一つの切り欠き141を形成し、その正面開口部側の天部140に少なくとも一つの爪142を形成することが好ましい。内側容器200には、
図8に示すようにその正面鍔部213に隣り合い、外側容器の正面開口部に挿入される側面の、正面鍔部近傍の位置に爪241を設け、正面鍔部213の両側辺の外側に固定板300を挿入可能な鉤状突起242を設けることが好ましい。また、
図6に示すように固定板300が、側面視でZ形断面を有していることが好ましい。内側容器200を外側容器100の正面開口部112に挿入した際、内側容器側面の爪241が外側容器の正面開口部の切り欠き141を通過可能に構成されており、その爪241と内側容器の正面鍔部213とによって、外側容器の切り欠きの下部を構成する正面開口部の壁部113が挟持されるように構成されることが好ましい。
図5に示すように固定板300を内側容器の鉤状突起242に挿入した際、固定板の折り曲げ部341が内側容器の正面鍔部上辺に固定され、固定板の上辺が外側容器の天部の爪142に掛止されることが好ましい。この固定機構により、容器ユニットを簡便に組み立てることができ、内側容器を外側容器に容易に抜き差し、固定することができる。
【0033】
図1に示すように内側容器200を外側容器100に固定する際、内側容器と固定板とが、内側容器の正面開口部211を閉塞しないように、収容したポット苗植物の植物体を裸出できるだけの広さの開口部とすることが好ましい。この固定板によって、内側容器の正面開口部の開きを制限することにより、開口部からの植栽土壌の散逸防止や開口部から裸出される植物体に対する風圧を軽減する効果が得られる。
【0034】
外側容器の底部の外周に底面に平行な底部鍔部161を有しており、
図11に示すように複数の容器ユニットを上下に配置した際に、上側容器ユニットの外側容器の底部が下側容器ユニットの外側容器の上面開口部111に挿入され、上側容器ユニットの外側容器の底部と底部鍔部161とによって、下側容器ユニットの外側容器の上面開口部111が閉塞されることが好ましい。つまり、上側容器ユニットの外側容器の底部が下側容器ユニットの外側容器の蓋部として機能し、密閉することで、潅水等や植栽基盤が容器ユニットの上面開口部から散逸するのを防ぐことができる。また、緑化システムとして、複数の容器ユニットの構造体を強固に構成することができる。
【0035】
さらに、
図4や
図5に示すように、外側容器の天部背面側には、掛止部171を具備することが好ましい。
図11などに示すように、容器ユニットを保持する壁面保持体601に掛止することができる。また、外側容器には、灌水を行うための灌水パイプを挿入させる溝部181を形成することも可能である。また、最上部の容器ユニットには、蓋体500を付加することも可能である。
【0036】
外側容器、内側容器および固定板のうち少なくとも一つの全体、若しくは蓋体の全体は、たとえば、合成樹脂で構成される。合成樹脂の種類は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステルなどの汎用性の合成樹脂を好適に用いることができる。特に、耐候性のポリプロピレンを用いるのが望ましい。
【0037】
図9には、内側容器200の空間部内に所定の高さまで植栽基盤401を収容した状態を断面図で示す。
図10には、内側容器200の空間部内にポット苗植物402を収容した状態を断面図で示す。
【0038】
つぎに、本発明の緑化工法について、説明する。
図11は、植栽を施した植栽用容器ユニットの納まりを示す断面図である。本発明の緑化工法は、上記本発明の植栽用容器ユニット1の外側容器100を複数、または、内側容器200に植栽基盤401とポット苗植物402とを収容し、外側容器に固定した容器ユニット1を複数、もしくは、それらを混在して複数用意し、外側容器100または容器ユニット1の開口部を正面として、少なくとも上下に施工するものである。
図11の例では、壁面2に沿って、床面3上に植栽を施した容器ユニットを2段上下に組み合わせて構成している。
【0039】
図12には、施工後の植栽用容器ユニットから内側容器を抜き差しする様子を概念図で示す。単独で施工された外側容器(
図12では上側の容器ユニット)には、植栽基盤およびポット苗植物を収容した内側容器を挿入して、固定板で固定して施工することができる。また、配設された、内側容器に植栽基盤とポット苗植物とを収容した容器ユニットから、固定板300を取り外し、内側容器を抜き取ることができ、空いた外側容器に、植栽基盤およびポット苗植物が収容された、異なる内側容器を前記外側容器に挿入して、固定板で固定する施工も可能である。このように本発明の容器ユニットを組み合わせることで、デザイン性やメンテナンス性に優れた施工を行うことができる。
【0040】
図13に示すように複数の容器ユニットは、上下のみならず、左右にも配設することが可能である。また、外側容器の掛止部171を壁面保持体601に掛止して、該壁面保持体に容器ユニットを保持させることが可能である。壁面保持体601としては、たとえばリップ付溝形状の金物を壁面に配設することが好ましい。この壁面保持体は2段、3段飛ばしに設置することも可能である。また最下部の植栽用容器ユニットを排水兼用の床面保持体602に支持させることも可能である。さらに、本発明の植栽用容器ユニットの溝部に有する張出部182を隣り合う植栽用容器ユニットの溝部に有する受け部183に嵌合させることで上下左右に構成された容器ユニットを構造的に強固に組み合わせることができる。
【0041】
この壁面保持体601や床面保持体602としては、たとえば鋼材で構成されたものが、用いられ、また合成樹脂や木材等で構成することも可能である。
【0042】
植栽基盤401としては、たとえば土壌が用いられ、その土壌としては、人工土壌と天然土壌のいずれを用いることも可能である。また植栽基盤の素材は、要は植物が生育できるものであれば土壌に限定されるものではなく、たとえば合成樹脂製フォーム、繊維材、マット材等も使用することができる。
【0043】
図14には、他の実施形態として、容器ユニットを15段積み重ねた例の側面図を示す。床面3に排水兼用床面保持体を設置し、最下段の容器ユニットの底部を支持するとともに、壁面保持体601を1段目、6段目、12段目および最上段の容器ユニットの掛止部を掛止するように設置している。
【0044】
図15には、他の実施形態の植栽用容器ユニットの配置態様を概略正面図で示す。下から2段目は、メンテナンスのために3列分の内側容器を抜き取った様子を示す。上から2段目、左から2~4列の植栽を他と異なる植栽に交換した例を示す。このような作業を、緑化構造を壊すことなく簡便に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る植栽用容器ユニットは、上述のように壁面の前面側の縦横に多数設置して壁面緑化用として使用することを主眼とするものではあるが、その用途は壁面緑化用に限定されるものではなく、室内緑化用等、他の緑化用の用途に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 植栽用容器ユニット
2 壁面
3 床面
100 植栽用容器ユニットの外側容器
111 外側容器の上面開口部
112 外側容器の正面開口部
113 外側容器の正面開口部の壁部
121 溜水部
122 筒状貫通孔
140 外側容器の天部
141 切り欠き
142 外側容器の天部の爪
161 外側容器の底部鍔部
171 掛止部
181 潅水パイプ用溝部
182 張出部
183 受け部
200 植栽用容器ユニットの内側容器
211 内側容器の正面開口部
212 内側容器の上面開口部
213 内側容器の正面鍔部
231 格子状構造
241 内側容器の側面の爪
242 鉤状突起
300 植栽用容器ユニットの固定板
341 折り曲げ部
401 植栽基盤
402 ポット苗植物
500 蓋体
601 壁面保持体
602 床面保持体