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特開2022-29654ウニ加工装置及びウニ加工品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029654
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ウニ加工装置及びウニ加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 29/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A22C29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133065
(22)【出願日】2020-08-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、農林水産省、異常発生したウニの効率的駆除及び有効利用に関する実証研究委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】509298012
【氏名又は名称】公立大学法人宮城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】西川 正純
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011MA03
(57)【要約】
【課題】可食部の損傷を小さくし、形状を十分に保ちつつ、不要贓物を十分に除去することができるウニ加工装置及びウニ加工品の製造方法を提供する。
【解決手段】ウニ加工装置10は、例えば、ウニMを搬送する搬送手段11と、ウニMの殻から口器を除去して開口を設ける開口手段12と、殻の内部に開口から水を注入する水注入手段13と、殻の内部の不要贓物を開口から吸引除去する吸引手段14と、水注入手段13により殻の内部に水を注入しつつ、吸引手段14により不要贓物を吸引除去するように制御する注入・吸引制御手段15とを備えている。このウニ加工装置10では、殻の内部に水を注入することにより、不要贓物を可食部から離間させることができるので、不要贓物を吸引除去しやすくなり、可食部の損傷を小さくし、かつ、不要贓物の除去率を高くすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウニの殻から口器を除去して開口を設ける開口手段と、
前記殻の内部に前記開口から水を注入する水注入手段と、
前記殻の内部の不要贓物を前記開口から吸引除去する吸引手段と、
前記水注入手段により前記殻の内部に水を注入しつつ、前記吸引手段により前記不要贓物を吸引除去するように制御する注入・吸引制御手段と
を備えたことを特徴とするウニ加工装置。
【請求項2】
水注入手段は、水を注入する注入ノズルと、水を注入する際に前記注入ノズルが前記開口に沿って相対的に移動するように前記注入ノズルと前記開口との位置を相対的に移動させる注入移動手段とを有し、
前記吸引手段は、不要贓物を吸引する吸引ノズルと、不要贓物を吸引する際に前記吸引ノズルが前記開口に沿って相対的に移動するように前記吸引ノズルと前記開口との位置を相対的に移動させる吸引移動手段とを有する
ことを特徴とする請求項1記載のウニ加工装置。
【請求項3】
前記開口手段は、電動鋸又はルーターを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のウニ加工装置。
【請求項4】
前記開口手段は、殻中心位置から、前記殻の半径の65%以上80%以下の範囲内を除去して開口を設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載のウニ加工装置。
【請求項5】
前記水注入手段により前記殻の内部に注入する水の注入量は、8000mL/min以上10000mL/min以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載のウニ加工装置。
【請求項6】
前記吸引手段の吸引真空度は、4000Pa以上6000Pa以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載のウニ加工装置。
【請求項7】
ウニの殻から口器を除去して開口を設け、前記殻の内部に前記開口から水を注入しつつ、前記殻の内部の不要贓物を前記開口から吸引除去し、殻の内部に可食部を残すことを特徴とすることを特徴とするウニ加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウニの殻(いわゆる骨格)の内部から不要贓物を除去するウニ加工装置及びウニ加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウニは、可食部である生殖巣を殻の内部に有している。ウニの殻は固く、殻の表面には棘も伸びていることから、可食部である生殖巣を殻の内部から取り出す作業は大変であり、かつ、生殖巣を綺麗な形状で歩留まりよく取り出すことが難しかった。例えば、従来は、手作業により殻を縦に2分割するか又は殻に穴をあけた後、ピンセットを用いて手作業により内臓を取り出していた。加工装置としては、例えば、殻を縦に2分割する装置が実用化されている。また、他にも、例えば、ウニの殻に開口を開け、吸引ノズルで内臓を吸引する装置(例えば、特許文献1参照)や、ウニの殻を割り、ドリルで内臓を引っかけて巻き上げて除去する装置(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3065429号公報
【特許文献2】特開2011-41502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウニの殻を縦に2分割して可食部を取り出す場合、ウニの可食部は5葉となっているので、少なくとも1葉が切断されてしまい、形状を保った状態で取り出すことができる可食部の歩留まりが低下してしまうという問題があった。また、特許文献1又は特許文献2に記載の装置では、不要贓物を十分に除去しようとすると吸引ノズル又はドリルカバーにより可食部を損傷しやすく、逆に、可食部の損傷を小さくしようとすると不要贓物の残存量が多くなってしまうという問題があった。そのため、これらの装置は実用化には至っておらず、新たな装置の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、可食部の損傷を小さくし、形状を十分に保ちつつ、不要贓物を十分に除去することができるウニ加工装置及びウニ加工品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウニ加工装置は、ウニの殻から口器を除去して開口を設ける開口手段と、殻の内部に開口から水を注入する水注入手段と、殻の内部の不要贓物を開口から吸引除去する吸引手段と、水注入手段により殻の内部に水を注入しつつ、吸引手段により不要贓物を吸引除去するように制御する注入・吸引制御手段とを備えたものである。
【0007】
本発明のウニ加工品の製造方法は、ウニの殻から口器を除去して開口を設け、前記殻の内部に前記開口から水を注入しつつ、前記殻の内部の不要贓物を前記開口から吸引除去し、殻の内部に可食部を残すものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、殻の内部に水を注入する水注入手段と、殻の内部の不要贓物を吸引除去する吸引手段とを備え、水注入手段により殻の内部に水を注入しつつ、吸引手段により不要贓物を吸引除去するようにしたので、水により不要贓物を可食部から離間させることができ、不要贓物を容易に除去することができる。よって、可食部の損傷を小さくし、形状を十分に保ちつつ、不要贓物を十分に除去することができる。
【0009】
特に、注入ノズルが開口に沿って相対的に移動するように注入ノズルと開口との位置を相対的に移動させながら水を注入し、吸引ノズルが開口に沿って相対的に移動するように吸引ノズルと開口との位置を相対的に移動させながら不要贓物を吸引するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0010】
また、開口手段により開ける開口の大きさを殻の中心から殻の半径の65%以上80%以下の範囲内とするようにすれば、又は、水注入手段により注入する水の注入量を8000mL/min以上10000mL/min以下とするようにすれば、又は、吸引手段の吸引真空度を4000Pa以上6000Pa以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るウニ加工装置の全体構成を表す図である。
図2図1に示したウニ加工装置の開口手段によりウニに設ける開口を説明するための図である。
図3図1に示したウニ加工装置を用いて不要贓物を除去する一工程を表す図である。
図4図3に続く工程を表す図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るウニ加工装置の全体構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るウニ加工装置10の全体構成を表すものである。図2は、ウニ加工装置10によりウニMに設ける開口M1を説明するためのものである。図3及び図4は、ウニ加工装置10により不要贓物を除去する工程を表すものである。このウニ加工装置10は、ウニMの殻M2(いわゆる骨格)の内部から不要贓物を吸引除去して、殻M2の内部に可食部である生殖巣を残すものである。
【0014】
ウニ加工装置10は、例えば、ウニMを保持する保持手段11と、ウニMの殻M2から口器を除去して開口M1を設ける開口手段12と、殻M2の内部に開口M1から水を注入する水注入手段13と、殻M2の内部の不要贓物を開口M1から吸引除去する吸引手段14と、水注入手段13により殻M2の内部に水を注入しつつ、吸引手段14により不要贓物を吸引除去するように制御する注入・吸引制御手段15とを備えている。このウニ加工装置10では、殻M2の内部に水を注入することにより、不要贓物を可食部から離間させることができるので、不要贓物を吸引除去しやすくなり、可食部の損傷を小さくし、かつ、不要贓物の除去率を高くすることができるようになっている。
【0015】
保持手段11は、例えば、ウニMを載置する載置台11Aと、ウニMを側部から保持して載置台11Aの上に固定する固定手段11Bとを有している。ウニMは口器を上にして載置台11Aに載置されることが好ましい。開口手段12は、例えば、載置台11Aの載置されたウニMを撮像するカメラ等の撮像手段12Aと、ウニMの殻M2を切断する切断手段12Bと、切断手段12Bが切断位置に沿って相対的に移動するように切断手段12BとウニMの殻M2との位置を相対的に移動させる切断移動手段12Cと、ウニMの殻M2の切断箇所を除去する殻除去手段12Dと、切断手段12B、切断移動手段12C及び殻除去手段12Dの駆動を制御する切断制御手段12Fとを有していることが好ましい。
【0016】
撮像手段12Aは、例えば、載置台11Aの上方に配置され、ウニMを上方から撮像することが好ましい。切断手段12Bとしては、電動鋸又はルーターが好ましい。切断移動手段12Cは、例えば、産業用ロボットにより構成され、切断手段12BをウニMの殻M2に対して移動させるように構成されている。殻除去手段12Dは、例えば、ピンセット形状とされており、ウニMの殻M2の切断箇所を挟んで除去することができるように構成されていることが好ましい。殻除去手段12Dは、例えば、切断移動手段12Cに配設され、切断移動手段12Cにより移動可能とされていることが好ましい。
【0017】
切断制御手段12Fは、例えば、コンピュータにより構成されており、撮像手段12Aにより撮像した映像から、画像処理により、ウニMの大きさ(例えば、上から見た殻M2の直径)及び殻中心位置M3を検出し、殻中心位置M3から所定の距離の位置を切断して口器の周りを切断するように、切断手段12B及び切断移動手段12Cを制御するように構成されていることが好ましい。切断の位置は、例えば、殻中心位置M3から、殻M2の半径の65%以上80%以下の範囲内とすることが好ましく、65%以上75%以下の範囲内とすればより好ましい(図2参照)。ウニMの口器の大きさは殻M2の直径の65%程度であるので、切断位置を殻中心位置M3から殻M2の半径の65%以上とすることにより口器の周りを切断して容易に開口M1を開けることができるからである。一方、開口M1を大きくし過ぎると可食部の損傷が大きくなり好ましくないからである。
【0018】
水注入手段13は、例えば、水を注入する注入ノズル13Aと、水を注入する際に注入ノズル13Aが開口手段12によりウニMに設けた開口M1に沿って相対的に移動するように注入ノズル13Aと開口M1との位置を相対的に移動させる注入移動手段13Bと、注入ノズル13Aに連結された給水ポンプ13Cとを有している。注入移動手段13Bは、例えば、産業用ロボットにより構成され、注入ノズル13Aを開口M1に沿って移動させるように構成されている。給水ポンプ13Cは、例えば、給水管13Dにより注入ノズル13Aと連結されている。水注入手段13により殻M2の内部に注入する水の注入量は、8000mL/min以上10000mL/min以下とすることが好ましい。この範囲内において、不要贓物をより容易に除去できるからである。
【0019】
吸引手段14は、例えば、不要贓物を吸引する吸引ノズル14Aと、不要贓物を吸引する際に吸引ノズル14Aが開口手段12によりウニMに設けた開口M1に沿って相対的に移動するように吸引ノズル14Aと開口M1との位置を相対的に移動させる吸引移動手段14Bと、吸引ノズル14Aに連結された吸引ポンプ14Cとを有している。吸引移動手段14Bは、例えば、産業用ロボットにより構成され、吸引ノズル14Aを開口M1に沿って移動させるように構成されている。吸引ポンプ14Cは、例えば、吸引管14Dにより吸引ノズル14Aと連結されている。吸引ポンプ14Cと吸引ノズル14Aとの間には、例えば、吸引ノズル14Aにより吸引した水とウニMの不要贓物とを分離する分離器14Eが連結されており、吸引したウニMの不要贓物を分離・回収することができるようになっている。吸引手段14の吸引真空度は、4000Pa以上6000Pa以下とすることが好ましい。この範囲内において、不要贓物をより容易に除去できるからである。
【0020】
注入・吸引制御手段15は、例えば、コンピュータにより構成されている。注入・吸引制御手段15は、また、水を注入する際に、注入移動手段13Bにより注入ノズル13Aと開口M1との位置を相対的に移動させて注入ノズル13Aが開口M1に沿って相対的に移動するように制御し、不要贓物を吸引する際に、吸引移動手段14Bにより吸引ノズル14Aと開口M1との位置を相対的に移動させて吸引ノズル14Aが開口M1に沿って相対的に移動するように制御するように構成されていることが好ましい。これにより、可食部の損傷を小さくしつつ、不要贓物の除去率を高くすることができるからである。注入ノズル13A及び吸引ノズル14Aの移動方向は同一とすることが好ましい。なお、注入移動手段13Bと吸引移動手段14Bとは、別々に移動するように構成されていてもよいが、一体として移動するように構成されていることが好ましい。
【0021】
このウニ加工装置10は、例えば、ウニMの殻M2の内部から不要贓物を除去し、殻M2の内部に可食部である生殖巣を残したウニ加工品を製造する際に、次のようにして用いられる。
【0022】
まず、例えば、図1に示したように、載置台11Aの上に生の未加工のウニMを載置し、固定手段11Bで固定する。その際、ウニMは口器を上にして載置台11Aに載置することが好ましい。次いで、ウニMを撮像手段12Aにより撮像する。切断制御手段12Fは、例えば、撮像手段12Aにより撮像した映像から、画像処理により、殻M2を切断する位置を決める。具体的には、画像処理により、ウニMの大きさ(例えば、上から見た殻M2の直径)及び殻中心位置M3を検出し、殻中心位置M3から殻M2の半径の65%以上80%以下の範囲内の位置を切断するように切断手段12B及び切断移動手段12Cを制御する。これにより、例えば、図3に示したように、切断制御手段12Fからの制御に基づき、切断移動手段12Cは切断手段12Bを移動させて、切断手段12Bは殻中心位置M3から殻M2の半径の65%以上80%以下の範囲内の位置を例えば円形に切断し、口器の周りを切断する。続いて、例えば、殻除去手段12Dにより殻M2の切断した部分(口器)を除去ずる。
【0023】
次に、例えば、図4に示したように、注入・吸引制御手段15により水注入手段13及び吸引手段14を制御し、水注入手段13により殻M2の内部に開口M1から水を注入しつつ、吸引手段14により不要贓物を開口M1から吸引除去する。その際、注入ノズル13Aを注入移動手段13BによりウニMに設けられた開口M1に沿って移動させると共に、吸引ノズル14Aを吸引移動手段14BによりウニMに設けられた開口M1に沿って移動させるように制御することが好ましい。吸引ノズル14Aから水と共に吸引された不要贓物は、例えば、分離器14Eにおいて水と分離されて回収される。これにより、殻M2の内部から不要贓物を除去し、可食部である生殖巣を残したウニ加工品が得られる。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、殻M2の内部に水を注入する水注入手段13と、殻M2の内部の不要贓物を吸引除去する吸引手段14とを備え、水注入手段13により殻M2の内部に水を注入しつつ、吸引手段14により不要贓物を吸引除去するようにしたので、水により不要贓物を可食部から離間させることができ、不要贓物を容易に除去することができる。よって、可食部の損傷を小さくし、形状を十分に保ちつつ、不要贓物を十分に除去することができる。
【0025】
特に、注入ノズル13Aが開口M1に沿って相対的に移動するように注入ノズル13Aと開口M1との位置を相対的に移動させながら水を注入し、吸引ノズル14Aが開口M1に沿って相対的に移動するように吸引ノズル14Aと開口M1との位置を相対的に移動させながら不要贓物を吸引するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0026】
また、開口手段12により開ける開口M1の大きさを殻中心位置M3から殻M2の半径の65%以上80%以下の範囲内とするようにすれば、又は、水注入手段13により注入する水の注入量を8000mL/min以上10000mL/min以下とするようにすれば、又は、吸引手段14の吸引真空度を4000Pa以上6000Pa以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るウニ加工装置20の全体構成を表すものである。第1の実施の形態では、保持手段11を固定し、切断手段12B、注入ノズル13A、又は、吸引ノズル14Aを移動させて、保持手段11に保持したウニMを加工する場合について説明したが、第2の実施の形態に係るウニ加工装置20は、保持手段21を移動可能とし、切断手段12B、注入ノズル13A、及び、吸引ノズル14Aを固定して、保持手段21により保持したウニMを移動させて加工するようにしたものである。すなわち、保持手段21が第1の実施の形態で説明した切断移動手段12C、注入移動手段13B、及び、吸引移動手段14Bとしての機能も有するように構成したものである。よって、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一部分についての詳細な説明は省略する。
【0028】
保持手段21は、例えば、産業用ロボットにより構成され、アーム21Aの先端に設けられた把持部21BによりウニMを把持し、ウニMを任意の位置に移動させることができるようになっている。保持手段21は、ウニMの口器を先端側にして、把持部21BによりウニMの側部を把持することが好ましい。保持手段21は、また、例えば、アーム21A及び把持部21Bを駆動する駆動部21Cを有している。駆動部21Cは、例えば、切断制御手段12F及び注入・吸引制御手段15と接続されており、切断制御手段12F又は注入・吸引制御手段15の制御に基づいて保持手段21の動作させることができるように構成されている。
【0029】
このウニ加工装置20では、例えば、保持手段21によりウニMを移動させて、第1の実施の形態と同様にしてウニ加工品を製造する。例えば、ウニMの殻M2に開口M1を設ける際には、保持手段21を切断移動手段12Cとして機能させ、切断手段12Bが切断位置に沿って相対的に移動するように、保持手段21により殻M2を切断手段12Bに対して移動させる。また、例えば、殻M2の内部に水を注入する際には、保持手段21を注入移動手段13Bとして機能させ、注入ノズル13Aが開口M1に沿って相対的に移動するように、保持手段21により殻M2を注入ノズル13Aに対して移動させて、注入ノズル13Aと開口M1との位置を相対的に移動させる。更に、例えば、殻M2の内部の不要贓物を吸引する際には、保持手段21を吸引移動手段14Bとして機能させ、吸引ノズル14Aが開口M1に沿って相対的に移動するように、保持手段21により殻M2を吸引ノズル14Aに対して移動させて、吸引ノズル14Aと開口M1との位置を相対的に移動させる。
【0030】
このように、第2の実施の形態に係るウニ加工装置20においても、第1の実施の形態と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【実施例0031】
(実施例1-1~1-4、比較例1-1)
実施例1-1~1-4として、ウニMの口器側において、殻中心位置M3から所定の距離離れた位置を切断して開口M1を開け、口器を除去して、開口M1から可食部の形状を観察し、可食部の損傷率を目視により調べた。殻M2の切断位置は、実施例1-1は殻中心位置M3から殻M2の半径の65%の位置とし、実施例1-2は殻中心位置M3から殻M2の半径の70%の位置とし、実施例1-3は殻中心位置M3から殻M2の半径の75%の位置とし、実施例1-4は殻中心位置M3から殻M2の半径の80%の位置とした。また、本実施例に対する比較例1-1として、ウニMを縦の2つ割りとし、可食部の形状を観察し、可食部の損傷率を調べた。なお、可食部の損傷率は、各実施例及び比較例において、それぞれ5個のウニMについて加工を行い、その平均値を求めた。得られた結果を表1に示す
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示したように、本実施例によれば、比較例に比べて、可食部の損傷率を大幅に小さくすることができた。特に、実施例1-1から実施例1-3によれば、損傷率をより小さくするこができた。すなわち、殻中心位置M3から殻M2の半径の65%以上80%以下の範囲内において開口M1を設けるようにすれば、可食部の損傷率を小さくするこができ、殻M2の半径の65%以上75%以下の範囲内とすればより高い効果を得られることが分かった。
【0034】
(実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-8)
実施例2-1~2-4として、実施例1-1~1-4と同様にして殻M2を切断し、殻M2から口器を除去して開口M1を開け、注入ノズル13Aにより殻M2の内部に開口M1から水を注入しつつ、吸引ノズル14Aにより殻M2の内部の不要贓物を開口M1から吸引除去した。そののち、開口M1から殻M2の内部を観察し、不要贓物の残存率と可食部の損傷率を調べた。その際、殻M2の切断位置は、実施例2-1は殻中心位置M3から殻M2の半径の65%の位置とし、実施例2-2は殻中心位置M3から殻M2の半径の70%の位置とし、実施例2-3は殻中心位置M3から殻M2の半径の75%の位置とし、実施例2-4は殻中心位置M3から殻M2の半径の80%の位置とした。
【0035】
また、注入ノズル13A及び吸引ノズル14Aは、それぞれ、開口M1に沿って円形に移動させた。注入ノズル13Aから注入する水の注入量は8000mL/min以上10000mL/min以下とし、吸引ノズル14Aにより吸引する吸引真空度は4000Pa以上6000Pa以下とした。なお、不要贓物の残存率及び可食部の損傷率は、各実施例において、それぞれ5個のウニMについて加工を行い、その平均値を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0036】
本実施例に対する比較例2-1~2-4として、吸引ノズル14Aにより吸引せず、注入ノズル13Aにより殻M2の内部に水を注入し、水流により不要贓物を殻M2の内部から流出させるようにしたことを除き、他は実施例2-1~2-4と同様にして不要贓物を除去した。殻M2の切断位置は、比較例2-1は殻中心位置M3から殻M2の半径の65%の位置とし、比較例2-2は殻中心位置M3から殻M2の半径の70%の位置とし、比較例2-3は殻中心位置M3から殻M2の半径の75%の位置とし、比較例2-4は殻中心位置M3から殻M2の半径の80%の位置とした。比較例2-1~2-4についても、実施例2-1~2-4と同様にして、開口M1から殻M2の内部を観察し、不要贓物の残存率と可食部の損傷率を調べた。いずれも、5個のウニMについて加工を行った平均値である。得られた結果を表3に示す。
【0037】
また、本実施例に対する比較例2-5~2-8として、注入ノズル13Aにより水を注入せず、吸引ノズル14Aにより殻M2の内部の不要贓物を吸引したことを除き、他は実施例2-1~2-4と同様にして不要贓物を除去した。殻M2の切断位置は、比較例2-5は殻中心位置M3から殻M2の半径の65%の位置とし、比較例2-6は殻中心位置M3から殻M2の半径の70%の位置とし、比較例2-7は殻中心位置M3から殻M2の半径の75%の位置とし、比較例2-8は殻中心位置M3から殻M2の半径の80%の位置とした。比較例2-1~2-8についても、実施例2-1~2-4と同様にして、開口M1から殻M2の内部を観察し、不要贓物の残存率と可食部の損傷率を調べた。いずれも、5個のウニMについて加工を行った平均値である。得られた結果を表4に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
表2~4に示したように、水の注入のみにより不要贓物を除去した比較例2-1~2-4では、不要贓物の残存率を10%程度とするのが限度であった。また、吸引のみにより不要贓物を除去した比較例2-5~2-8では、不要贓物の残存率を7%程度とするのが限度であった。これに対して、水を注入しつつ吸引を行った実施例2-1~2-4によれば、不要贓物の残存率を1.8%程度まで低下させることができた。一方、可食部の損傷率については、水の注入のみにより不要贓物を除去した比較例2-1~2-4に比べて、吸引のみにより不要贓物を除去した比較例2-5~2-8、及び、水を注入しつつ吸引を行った実施例2-1から2-4によれば、半分程度と小さかった。
【0042】
すなわち、水を注入しつつ吸引するようにすれば、可食部の損傷を小さくし、形状を十分に保ちつつ、不要贓物の残存率を十分に小さくすることができることが分かった。
【0043】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。また、各構成要素の具体的な構成は一例を示したものであり、異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
ウニの加工に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…ウニ加工装置、11…保持手段、11A…載置台、11B…固定手段、12…開口手段、12A…撮像手段、12B…切断手段、12C…切断移動手段、12D…殻除去手段、12F…切断制御手段、13…水注入手段、13A…注入ノズル、13B…注入移動手段、13C…給水ポンプ、13D…給水管、14…吸引手段、14A…吸引ノズル、14B…吸引移動手段、14C…吸引ポンプ、14D…吸引管、14E…分離器、15…注入・吸引制御手段、20…ウニ加工装置、21…保持手段、21A…アーム、21B…把持部、21C…駆動部、M…ウニ、M1…開口、M2…殻、M3…殻中心位置
図1
図2
図3
図4
図5