(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029754
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20220210BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L101:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133224
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】520036259
【氏名又は名称】マイスターズグリット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100220582
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 達也
(72)【発明者】
【氏名】松村 光真
(72)【発明者】
【氏名】笹井 浩太郎
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA05
4C058BB07
4C058DD03
4C058DD11
4C058EE03
4C058JJ07
4C058JJ24
(57)【要約】
【課題】対象物が濡れることを抑制しつつ当該対象物を除菌する。
【解決手段】除菌装置100は、金属を含む粒子を水に分散させた金属含有水を収容する収容部2と、収容部2に収容された金属含有水を噴霧する噴霧部4と、収容部2及び噴霧部4を搭載した基台1と、を備えている。粒子は、金属による除菌機能を有している。このように金属含有水の除菌機能は金属含有水に含まれる金属が有する機能であるため、少なくとも金属を対象物に到達させることができれば当該対象物を除菌することが可能であり、必ずしも金属含有水の液体部分である水を対象物に到達させる必要がない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む粒子を水に分散させた金属含有水を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記金属含有水を噴霧する噴霧部と、
前記収容部及び前記噴霧部を搭載した基台と、を備え、
前記粒子は、前記金属による除菌機能を有する、除菌装置。
【請求項2】
前記金属は、粒径が2nm以上3nm以下の銀を含む、請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記粒子は、前記金属を保持する担体を含む、請求項1又は2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記担体は、粒径が5nm以上15nm以下のシリカを含む、請求項3に記載の除菌装置。
【請求項5】
前記粒子は、シルバーシリカ複合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項6】
前記基台は、鉛直方向において互いに異なる高さに複数の前記噴霧部を搭載している、請求項1~5のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項7】
前記噴霧部から前記金属含有水が噴霧される方向において、前記噴霧部からの距離が予め設定された距離範囲内の領域である対象領域に対象物が存在することを検知する検知部と、
前記噴霧部による前記金属含有水の噴霧を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部により前記対象領域に前記対象物が存在することが検知された場合に、前記噴霧部により前記金属含有水を噴霧させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項8】
前記対象領域は、前記噴霧部から前記金属含有水が噴霧される方向において、前記金属含有水に含まれる前記水が気化する位置として予め設定された第1位置と、前記第1位置よりも前記噴霧部から遠い位置に予め設定された第2位置と、の間の領域を含む、請求項7に記載の除菌装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記検知部により前記対象領域に前記対象物が存在することが検知されない場合に、前記噴霧部により前記金属含有水を噴霧させない、請求項7又は8に記載の除菌装置。
【請求項10】
前記噴霧部は、噴霧された前記金属含有水の粒径が1μm以上10μm以下となるように当該金属含有水を噴霧する、請求項1~9のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項11】
前記噴霧部は、前記収容部に収容された前記金属含有水と加圧された気体とを混合した混合流体をノズルの開口部から噴出させるスプレーガンを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば菌を減少させたりウイルスを不活化させたりする(以下、「除菌する」という)機能を備えた薬液が知られている。例えば特許文献1には、グレープフルーツ種子抽出液に添加物を加え、水及びアルコールにより希釈して生成されるウイルス不活化剤が開示されている。特許文献1によれば、このウイルス不活化剤をウイルスが含まれる液体に混合することにより、液体中のウイルスを不活化することができるとされている。
【0003】
また、一般に、例えばエタノール又は次亜塩素酸水といった薬液を衣服等に吹き掛けることにより衣服等を除菌することが行われている。この場合、エタノール又は次亜塩素酸水は、除菌機能を十分に発揮するためには、衣服等を十分に湿らせる程度に吹き掛けられる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した手段では、除菌したい対象物を薬液で濡れた状態にする必要がある。しかし、状況によっては、対象物を濡らすことが好ましくない場合もあり得る。例えば、人が着用している状態の衣服を除菌する際には、薬液によって衣服が湿ってしまうことを衣服の着用者が望まない場合もある。
【0006】
そこで、本開示に係る除菌装置は、対象物が濡れることを抑制しつつ当該対象物を除菌することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)は、金属(Cm)を含む粒子(C)を水に分散させた金属含有水を収容する収容部(2)と、収容部(2)に収容された金属含有水を噴霧する噴霧部(4)と、収容部(2)及び噴霧部(4)を搭載した基台(1)と、を備え、粒子(C)は、金属(Cm)による除菌機能を有している。
【0008】
この除菌装置(100)によれば、金属含有水を対象物に噴霧することにより、金属含有水の除菌機能によって対象物を除菌することができる。ここで、金属含有水の除菌機能は、金属含有水に含まれる金属(Cm)が有する機能である。このため、少なくとも金属(Cm)を対象物に到達させることができれば当該対象物を除菌することが可能であり、必ずしも金属含有水の液体部分である水を対象物に到達させる必要はない。したがって、噴霧部(4)により噴霧された金属含有水の水が気化している領域に対象物を配置することで、水が対象物に到達することを抑制しつつ金属(Cm)を当該対象物に到達させることが可能となる。また、この除菌装置(100)では、噴霧部(4)が基台(1)に搭載されているため、対象物が存在し得る位置に合わせて基台(1)を配置することで、噴霧部(4)により噴霧された金属含有水の水が気化している領域に対象物を位置させることが可能である。よって、この除菌装置(100)は、対象物が濡れることを抑制しつつ当該対象物を除菌することができる。
【0009】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、金属(Cm)は、粒径が2nm以上3nm以下の銀を含んでいてもよい。これによれば、いわゆるナノスケールの粒径を有する銀の除菌機能を発揮させることが可能であるため、特に効果的に対象物を除菌することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、粒子(C)は、金属(Cm)を保持する担体(Cc)を含んでいてもよい。これによれば、担体(Cc)が金属(Cm)を保持して金属(Cm)を適度な粒径に維持することができるとともに、金属(Cm)を好適に水に分散させることができる。
【0011】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、担体(Cc)は、粒径が5nm以上15nm以下のシリカを含んでいてもよい。これによれば、対象物に向けて金属含有水が噴霧された際に、粒子(C)をより確実に対象物に到達させることができる。また、担体(Cc)により保持される金属(Cm)の化学変化を抑制し、金属含有水の色が変化することを抑制することができる。
【0012】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、粒子(C)は、シルバーシリカ複合体であってもよい。これによれば、この除菌装置(100)の作用及び効果を好適に奏することができる。
【0013】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、基台(1)は、鉛直方向において互いに異なる高さに複数の噴霧部(4)を搭載していてもよい。これによれば、鉛直方向(高さ方向)に関して、より広い範囲に金属含有水を噴霧することができる。
【0014】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)は、噴霧部(4)から金属含有水が噴霧される方向において、噴霧部(4)からの距離が予め設定された距離範囲内の領域である対象領域(R)に対象物が存在することを検知する検知部(5)と、噴霧部(4)による金属含有水の噴霧を制御する制御部(6)と、を備え、制御部(6)は、検知部(5)により対象領域(R)に対象物が存在することが検知された場合に、噴霧部(4)により金属含有水を噴霧させてもよい。これによれば、噴霧部(4)から好適な距離範囲内の領域に対象物が存在するときに、自動的に、当該対象物に対して金属含有水を噴霧することができる。
【0015】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、対象領域(R)は、噴霧部(4)から金属含有水が噴霧される方向において、金属含有水に含まれる水が気化する位置として予め設定された第1位置(P1)と、第1位置(P1)よりも噴霧部(4)から遠い位置に予め設定された第2位置(P2)と、の間の領域を含んでいてもよい。これによれば、噴霧部(4)により噴霧された金属含有水の水が気化している領域に対象物が存在するときに、自動的に、当該対象物に対して金属含有水を噴霧することができる。
【0016】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、制御部(6)は、検知部(5)により対象領域(R)に対象物が存在することが検知されない場合に、噴霧部(4)により金属含有水を噴霧させなくてもよい。これによれば、除菌すべき対象物が存在しないときには金属含有水を噴霧しないため、金属含有水の消費を抑制することができる。
【0017】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、噴霧部(4)は、噴霧された金属含有水の粒径が1μm以上10μm以下となるように当該金属含有水を噴霧してもよい。これによれば、噴霧部(4)から噴霧された金属含有水が空気中に霧状に浮遊している間に、より確実に当該金属含有水に含まれる水を気化させることができる。
【0018】
本開示の一態様に係る除菌装置(100)では、噴霧部(4)は、収容部(2)に収容された金属含有水と加圧された気体とを混合した混合流体をノズル(46)の開口部(46a)から噴出させるスプレーガン(40)を有していてもよい。これによれば、噴霧部(4)から噴霧された金属含有水の粒径を小径化することができる。その結果、噴霧部(4)から噴霧された金属含有水が空気中に霧状に浮遊している間に、より確実に当該金属含有水に含まれる水を気化させることができる。また、収容部(2)に収容された金属含有水と加圧された気体とを混合して噴霧することにより、金属含有水及び気体の進行方向に存在する対象物の背後に回り込むような気流が生成されるため、金属含有水に含まれる粒子(C)を対象物の背面側まで到達させることができる。
【0019】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本開示の一例として示したものであって、本開示を実施形態の態様に限定するものではない。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示に係る除菌装置は、対象物が濡れることを抑制しつつ当該対象物を除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る除菌装置を示す図である。
【
図2】
図2は、金属含有水に含まれるシルバーシリカ複合体を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、除菌装置における金属含有水及び気体のそれぞれの流路を示す図である。
【
図4】
図4は、スプレーガンの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して例示的な実施形態について説明する。なお、各図における同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
[除菌装置の構成]
図1は、本実施形態に係る除菌装置100を示す図である。
図2は、金属含有水に含まれるシルバーシリカ複合体を模式的に示す図である。
図1及び
図2に示されるように、除菌装置100は、除菌機能を有する薬液である金属含有水を噴霧する装置である。以下の説明において、「菌」には、菌に加えてウイルスも含まれる場合がある。「除菌」とは、例えば菌を減少させたり、ウイルスの少なくとも一部を不活化させたりすることを意味している。また、除菌には、菌又はウイルスの増殖を抑制すること(すなわち、抗菌)が含まれていてもよいものとする。
【0024】
「金属含有水」は、金属Cmを含む粒子Cを水に分散させた薬液(特定の機能を有する液体)であり、対象物を除菌する機能を有している。ここでは、金属含有水は、シルバーシリカ複合体を水に分散させた薬液である。金属含有水は、例えば、水(蒸留水)100質量部に対して、シルバーシリカ複合体0.04~0.6質量部を含有している。なお、金属含有水は、水100質量部に対して、ジプロピレングリコール0.7~0.8質量部を含有していてもよく、アルギン酸ナトリウム0.01~0.1質量部を含有していてもよい。
【0025】
金属含有水に含まれる粒子Cは、シルバーシリカ複合体であり、金属Cm及び担体Ccを含んでいる。金属Cmは、例えば銀を含んでいる。具体的には、金属Cmは、粒径が1nm以上10nm以下の粒状(例えば、球状)を呈していてもよく、粒径が1.5nm以上6nm以下の粒状を呈していてもよい。ここでは、金属Cmは、2nm以上3nm以下の粒状を呈している。担体Ccは、金属Cmを保持(担持)しており、例えばシリカ(アモルファスシリカ)を含んでいる。ここでは、担体Ccは、粒径が5nm以上15nm以下の粒状(例えば球状)を呈している。
【0026】
上述したような粒径(すなわち、いわゆるナノスケールの粒径)を有する銀(ナノシルバー)は、多種の菌及びウイルスに対する除菌機能を有することが知られている。ナノスケールの粒径を有する銀が除菌機能を発揮するメカニズムとして、例えば、銀が電子の放出・再取得を短時間のうちに繰り返し、その際に発生する電気的エネルギーが菌又はウイルスを破壊するものと考えられている。シルバーシリカ複合体は、このようなナノスケールの粒径を有する銀を含んでいることから、当該銀による除菌機能を有している。
【0027】
図3は、除菌装置100における金属含有水及び気体のそれぞれの流路21,31を示す図である。
図1及び
図3に示されるように、除菌装置100は、基台1、収容部2、気体加圧部3、噴霧部4、検知部5、及び制御部6を備えている。
【0028】
基台1は、収容部2、気体加圧部3、噴霧部4、検知部5、及び制御部6を搭載した台車である。基台1は、台座10、キャスター11、及びタワー12を有している。台座10には、収容部2、気体加圧部3、及び制御部6が載置されている。また、台座10の前面には検知部5が設置されている。台座10は、例えば箱状を呈し、床面付近に配置されている。キャスター11は、台座10の下面側に例えば4個設けられており、台座10を水平移動可能としている。
【0029】
タワー12は、噴霧部4を所定の位置に保持するための構造体である。タワー12は、台座10の上面側から鉛直方向における上方に向かって柱状に立設されている。タワー12は複数個(より具体的には3個)の噴霧部4を保持しており、これら複数個の噴霧部4は互いに異なる高さに保持されている。換言すると、タワー12は、鉛直方向において互いに異なる高さに複数の噴霧部4を搭載している。
【0030】
収容部2は、タンク20及び流路21を有している。タンク20は、金属含有水を収容するための容器である。タンク20は、基台1の台座10に載置されている。流路21は、タンク20と噴霧部4とを接続し、タンク20に収容されている金属含有水を噴霧部4に送るための配管である。流路21は、主に基台1のタワー12に沿って延在している。流路21は、タンク20に直接接続された1本の基端流路21a、及び、基端流路21aから噴霧部4の個数に対応した本数に分岐し、各噴霧部4に直接接続された複数本の末端流路21bを含んでいる。タンク20から送出された金属含有水は、基端流路21aを通過した後に各末端流路21bに分流され、各噴霧部4に送入される。
【0031】
気体加圧部3は、コンプレッサ30及び流路31を有している。コンプレッサ30は、例えば空気等の気体を加圧して送出する装置である。コンプレッサ30は、基台1の台座10に載置されている。流路31は、コンプレッサ30と噴霧部4とを接続し、コンプレッサ30から送出された気体を噴霧部4に送るための配管である。流路31は、主に基台1のタワー12に沿って延在している。流路31は、コンプレッサ30に直接接続された1本の基端流路31a、基端流路31aから噴霧部4の個数に対応した本数に分岐した中間流路31b、各中間流路31bのそれぞれから2本に分岐し、各噴霧部4に直接接続された末端流路31c、及び各中間流路31bに設けられた複数個(より具体的には3個)の電磁弁31dを含んでいる。コンプレッサ30から送出された気体は、基端流路31aを通過した後に各中間流路31bに分流される。各中間流路31bの中途位置に設けられた電磁弁31dが開の状態においては、当該中間流路31bを通過した気体は末端流路31cに進行し、各噴霧部4に送入される。一方、各中間流路31bの中途位置に設けられた電磁弁31dが閉の状態においては、当該中間流路31bを通過した気体は進行を停止する。この場合において、当該電磁弁31dよりも下流側(すなわち、噴霧部4側)の中間流路31b及び末端流路31cでは各流路内の気体の圧力が維持される。
【0032】
図4は、スプレーガン40の構造を示す断面図である。
図4に示されるように、噴霧部4は、スプレーガン40であり、収容部2に収容された金属含有水を噴霧する。噴霧部4は、基台1のタワー12に複数個(より具体的には3個)保持されている。各噴霧部4には、収容部2のタンク20に収容されている金属含有水が流路21を介して流入する。また、各噴霧部4には、気体加圧部3のコンプレッサ30から送出された気体(加圧気体)が流路31を介して2系統で送入される。
【0033】
スプレーガン40は、ボディ41、ニードル42、フッ素樹脂シート43、スプリング44、金属含有水送入口45、第1気体送入口(不図示)、第2気体送入口(不図示)、及びノズル46を有している。ボディ41は、スプレーガン40の筐体である。ニードル42は、棒状を呈し且つ先端部分が先細り形状を呈する部材であり、フッ素樹脂シート43は、ニードル42と同心軸上に設けられた筒状の部材である。ニードル42は、軸方向に進退し、その先端部分がフッ素樹脂シート43の一方の開口端を開閉する。スプリング44は、ニードル42をフッ素樹脂シート43側に向かって付勢している。これにより、ニードル42は、通常時にはフッ素樹脂シート43の一方の開口端を閉じた状態となっている。
【0034】
金属含有水送入口45は、流路21の末端流路21bと接続されており、タンク20から金属含有水が送入される開口である。金属含有水送入口45は、フッ素樹脂シート43のニードル42とは反対側である他方の開口端を介し、フッ素樹脂シート43の筒内と連通している。したがって、金属含有水送入口45に送入された金属含有水は、フッ素樹脂シート43の筒内を通過してニードル42の先端部分に到達する。
【0035】
第1気体送入口は、流路31の末端流路31cと接続されており、コンプレッサ30から加圧気体が送入される開口である。第1気体送入口は、ボディ41におけるニードル42及びフッ素樹脂シート43の側方に形成されており、フッ素樹脂シート43の筒内と連通している。したがって、第1気体送入口に送入された加圧気体は、ニードル42の先端部分に到達する。
【0036】
第2気体送入口は、流路31の末端流路31cと接続されており、コンプレッサ30から加圧気体が送入される開口である。第2気体送入口に加圧気体が送入されると、当該加圧気体の圧力は、スプリング44からニードル42に作用する付勢力に抗してニードル42をフッ素樹脂シート43とは反対側に向かって退避させる。その結果、ニードル42によりフッ素樹脂シート43の一方の開口端が閉じられた状態から、当該一方の開口端が開いた状態とされる。このとき、ニードル42の先端部分には、金属含有水送入口45から送入された金属含有水と第1気体送入口から送入された加圧気体とが到達しているため、第1気体送入口から送入された加圧気体の圧力によって金属含有水がノズル46側に向かって高速で推進される。
【0037】
ノズル46は、第1気体送入口から送入された加圧気体の圧力によって推進された金属含有水を噴出させる噴出機構である。ノズル46の先端には開口部46aが形成されており、金属含有水は開口部46aから霧化されつつ噴出する(すなわち、噴霧される。)。換言すると、噴霧部4としてのスプレーガン40は、収容部2に収容された金属含有水と加圧された気体とを混合した混合流体をノズル46の開口部46aから噴出させる。
【0038】
ノズル46の開口部46aから混合流体が噴出する方向は、任意に変更可能である。例えば、基台1のタワー12に対するスプレーガン40の取付角度が可変とされており、スプレーガン40の取付角度を変えることによって、混合流体が噴出する方向が変更される。これにより、例えば混合気体を斜め下方に向けて噴霧することも可能であり、或いは、混合気体を周囲の空間全体に向けて噴霧することも可能である。
【0039】
噴霧部4としてのスプレーガン40は、噴霧された金属含有水の粒径が1μm以上10μm以下となるように当該金属含有水を噴霧する。このような条件を満たすために、例えばノズル46の開口部46aの内径が通常のスプレーガンと比較して小さく形成されていてもよい。
【0040】
検知部5は、噴霧部4から金属含有水が噴霧される方向において、噴霧部4からの距離が予め設定された距離範囲内の領域である対象領域Rに対象物が存在することを検知するセンサである。検知部5は、例えば赤外線センサであってもよい。ここで、「噴霧部4から金属含有水が噴霧される方向」とは、噴霧部4のノズル46の前方を意味しており、具体的にはノズル46の開口部46aから混合流体が噴出する方向である。「対象物」とは、金属含有水によって除菌すべき対象を意味しており、物体であっても生物(人を含む)であってもよい。検知部5による検知結果の情報は、制御部6に出力される。
【0041】
ここで、「対象領域」とは、噴霧部4からの距離が予め設定された距離範囲内の領域であり、対象物を除菌すべき領域である。ここでは、対象領域Rは、噴霧部4から金属含有水が噴霧される方向において、金属含有水に含まれる水が気化する位置として予め設定された第1位置P1と、第1位置P1よりも噴霧部4から遠い位置に予め設定された第2位置P2と、の間の領域を含んでいる。なお、対象領域Rは、第1位置P1と第2位置P2との間に含まれる領域であってもよい。
【0042】
図1においては、各噴霧部4から噴霧された金属含有水について、水が気化する前の状態の金属含有水が飛散する概略方向が実線矢印で示され、水が気化した後に粒子Cであるシルバーシリカ複合体が飛散する概略方向が破線矢印で示されている。この状況においては、第1位置P1は、実線矢印と破線矢印との境界位置(すなわち、金属含有水に含まれる水が気化する位置)又はその近傍に設定されている。また、第2位置は、破線矢印の末端位置(すなわち、金属含有水に含まれる水が気化した後に粒子Cが最終的に到達する位置)又はその近傍に設定されている。なお、「粒子Cが最終的に到達する位置」とは、十分な除菌機能を発揮し得る程度の量の粒子Cが到達し得る最遠の位置を意味していてもよい。また、第2位置P2は、第1位置P1から予め設定された距離(例えば、0.5m、1m、2m等)だけ離間した位置に設定されてもよい。
【0043】
制御部6は、噴霧部4による金属含有水の噴霧を制御するコントローラである。制御部6は、例えば気体加圧部3の流路31に含まれる各電磁弁31dを開閉させる開閉指令を当該電磁弁31dに送信することにより、当該電磁弁31dを開又は閉の状態とさせる。制御部6は、複数の電磁弁31dのうち、任意の1又は複数個の電磁弁31dに対して選択的に開閉指令を送信可能であってもよい。例えば、制御部6は、任意のセンサにより取得された対象物の高さに関する情報に基づいて、当該対象物の高さに応じた高さに配置された噴霧部4に係る電磁弁31dに対してのみ、開閉指令を送信してもよい。
【0044】
電磁弁31dが開の状態とされると、当該電磁弁31dが設けられた中間流路31bを通過した加圧気体が噴霧部4としてのスプレーガン40に設けられた第2気体送入口に送入される。その結果、スプレーガン40が作動して金属含有水と加圧気体との混合流体がノズル46の開口部46aから噴出する。
【0045】
例えば、制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知された場合(すなわち、検知部5から制御部6に入力された検知結果の情報が、対象領域Rに対象物が存在するとの内容の情報であった場合)に、各電磁弁31dを開の状態とさせる指令を各電磁弁31dに送信することで、噴霧部4により金属含有水を噴霧させる。換言すると、制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知された場合に、噴霧部4が金属含有水を噴霧することを許可する。制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知された場合、予め設定された期間(例えば、3秒、5秒、10秒等)にわたって噴霧部4により金属含有水を噴霧させてもよい。
【0046】
一方、電磁弁31dが閉の状態とされると、当該電磁弁31dが設けられた中間流路31bを加圧気体が通過しなくなり、噴霧部4としてのスプレーガン40に設けられた第2気体送入口に加圧気体が送入されなくなる。その結果、スプレーガン40は作動せず、金属含有水と加圧気体との混合流体はノズル46の開口部46aから噴出しない。
【0047】
例えば、制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知されない場合(すなわち、検知部5から制御部6に入力された検知結果の情報が、対象領域Rに対象物が存在しないとの内容の情報であった場合、又は、検知部5から制御部6に検知結果の情報が入力されない場合)に、各電磁弁31dを閉の状態とさせる指令を各電磁弁31dに送信することで、噴霧部4により金属含有水を噴霧させない。換言すると、制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知されない場合に、噴霧部4が金属含有水を噴霧することを禁止する。
【0048】
[作用及び効果]
以上説明したように、除菌装置100は、金属Cmを含む粒子Cを水に分散させた金属含有水を収容する収容部2と、収容部2に収容された金属含有水を噴霧する噴霧部4と、収容部2及び噴霧部4を搭載した基台1と、を備え、粒子Cは、金属Cmによる除菌機能を有している。
【0049】
除菌装置100によれば、金属含有水を対象物に噴霧することにより、金属含有水の除菌機能によって対象物を除菌することができる。ここで、金属含有水の除菌機能は、金属含有水に含まれる金属Cmが有する機能である。このため、少なくとも金属Cmを対象物に到達させることができれば当該対象物を除菌することが可能であり、必ずしも金属含有水の液体部分である水を対象物に到達させる必要はない。したがって、噴霧部4により噴霧された金属含有水の水が気化している領域に対象物を配置することで、水が対象物に到達することを抑制しつつ金属Cmを当該対象物に到達させることが可能となる。また、この除菌装置100では、噴霧部4が基台1に搭載されているため、対象物が存在し得る位置に合わせて基台1を配置することで、噴霧部4により噴霧された金属含有水の水が気化している領域に対象物を位置させることが可能である。よって、この除菌装置100は、対象物が濡れることを抑制しつつ当該対象物を除菌することができる。
【0050】
除菌装置100では、金属Cmは、粒径が2nm以上3nm以下の銀を含んでいる。これにより、いわゆるナノスケールの粒径を有する銀の除菌機能を発揮させることが可能であるため、特に効果的に対象物を除菌することができる。
【0051】
除菌装置100では、粒子Cは、金属Cmを保持する担体Ccを含んでいる。これにより、担体Ccが金属Cmを保持して金属Cmを適度な粒径に維持することができるとともに、金属Cmを好適に水に分散させることができる。
【0052】
除菌装置100では、担体Ccは、粒径が5nm以上15nm以下のシリカを含んでいる。これにより、対象物に向けて金属含有水が噴霧された際に、粒子Cをより確実に対象物に到達させることができる。
【0053】
除菌装置100では、粒子Cは、シルバーシリカ複合体である。これにより、この除菌装置100の作用及び効果を好適に奏することができる。
【0054】
除菌装置100では、基台1は、鉛直方向において互いに異なる高さに複数の噴霧部4を搭載している。これにより、鉛直方向高さ方向に関して、より広い範囲に金属含有水を噴霧することができる。
【0055】
除菌装置100は、噴霧部4から金属含有水が噴霧される方向において、噴霧部4からの距離が予め設定された距離範囲内の領域である対象領域Rに対象物が存在することを検知する検知部5と、噴霧部4による金属含有水の噴霧を制御する制御部6と、を備え、制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知された場合に、噴霧部4により金属含有水を噴霧させる。これにより、噴霧部4から好適な距離範囲内の領域に対象物が存在するときに、自動的に、当該対象物に対して金属含有水を噴霧することができる。
【0056】
除菌装置100では、対象領域Rは、噴霧部4から金属含有水が噴霧される方向において、金属含有水に含まれる水が気化する位置として予め設定された第1位置P1と、第1位置P1よりも噴霧部4から遠い位置に予め設定された第2位置P2と、の間の領域を含んでいる。これにより、噴霧部4により噴霧された金属含有水の水が気化している領域に対象物が存在するときに、自動的に、当該対象物に対して金属含有水を噴霧することができる。
【0057】
除菌装置100では、制御部6は、検知部5により対象領域Rに対象物が存在することが検知されない場合に、噴霧部4により金属含有水を噴霧させない。これにより、除菌すべき対象物が存在しないときには金属含有水を噴霧しないため、金属含有水の消費を抑制することができる。
【0058】
除菌装置100では、噴霧部4は、噴霧された金属含有水の粒径が1μm以上10μm以下となるように当該金属含有水を噴霧する。これにより、噴霧部4から噴霧された金属含有水が空気中に霧状に浮遊している間に、より確実に当該金属含有水に含まれる水を気化させることができる。
【0059】
除菌装置100では、噴霧部4は、収容部2に収容された金属含有水と加圧された気体とを混合した混合流体をノズル46の開口部46aから噴出させるスプレーガン40を有している。これにより、噴霧部4から噴霧された金属含有水の粒径を小径化することができる。その結果、噴霧部4から噴霧された金属含有水が空気中に霧状に浮遊している間に、より確実に当該金属含有水に含まれる水を気化させることができる。また、収容部2に収容された金属含有水と加圧された気体とを混合して噴霧することにより、金属含有水及び気体の進行方向に存在する対象物の背後に回り込むような気流が生成されるため、金属含有水に含まれる粒子Cを対象物の背面側まで到達させることができる。
【0060】
[変形例]
上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて変更又は改良が施された様々な形態により実施可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、金属含有水に含まれる粒子Cは、金属Cmとしてナノスケールの銀を含んでいる。しかし、金属含有水に含まれる粒子Cは、金属Cmとして除菌機能を有する他の物質を含んでいてもよく、例えば、ナノスケールのチタンを含んでいてもよい。この場合でも、除菌装置は上記実施形態に係る除菌装置100と同様の作用及び効果を奏する。
【0062】
また、上記実施形態においては、除菌装置100は3個の噴霧部4を備えており、これら3個の噴霧部4は1個のタワー12に搭載されている。しかし、除菌装置100は、1個のみの噴霧部4を備えていてもよく、3個以外の複数個の噴霧部4を備えていてもよい。また、除菌装置100が複数個の噴霧部4を備えている場合には、これら複数個の噴霧部4は、複数個のタワー12に搭載されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、噴霧部4はスプレーガンである。しかし、噴霧部4は、収容部2に収容された金属含有水を噴霧することができる機構であれば、スプレーガンに限定されず、任意の機構が採用され得る。
【0064】
[実施例]
除菌装置の実施例について説明する。ただし、本開示に係る除菌装置は以下の実施例に限定されるものではない。実施例において、噴霧部は1個の2流体ノズル(スプレーイングシステムスジャパン合同会社製)、使用エアー圧は0.07~0.35MPa、使用エアー流量は3~15L(normal)/min、使用液流量は1.0~30mL/min、スプレー角度は0~90度、使用液の粘度は0.5~30000mPa・sとした。その結果、噴霧された液滴の粒径が1~10μm程度となることが確認された。また、噴霧された金属含有水が空気中に霧状に浮遊している間に、金属含有水に含まれる水が気化することが確認された。
【符号の説明】
【0065】
1 基台
2 収容部
3 気体加圧部
4 噴霧部
5 検知部
6 制御部
40 スプレーガン
46 ノズル
46a 開口部
100 除菌装置
C 粒子
Cc 担体
Cm 金属
P1 第1位置
P2 第2位置
R 対象領域