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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029758
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220210BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220210BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220210BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133228
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】391011157
【氏名又は名称】株式会社トウペ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 道隆
(72)【発明者】
【氏名】高村 幸司
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA022
4J038CC021
4J038CG141
4J038HA266
4J038HA556
4J038MA05
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA27
4J038PB02
4J038PB05
4J038PC01
4J038PC06
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】環境への負荷が小さく、住居などの室内空間における種々の生活臭(特に壁面に吸着された生活臭)を、素早く消臭することのできる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】火山灰と、繊維長が異なる複数の植物性繊維と、顔料と、樹脂とを含み、複数の植物性繊維のうち少なくともいずれか1種は、セルロースナノファイバーである、水性塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山灰と、繊維長が異なる複数の植物性繊維と、顔料と、樹脂とを含み、
前記複数の植物性繊維のうち少なくともいずれか1種は、セルロースナノファイバーである、水性塗料組成物。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーは、粒子と複合化されており、
前記粒子は、無機粒子または有機粒子のうち少なくともいずれか一方を含む、請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーは、水系分散体である、請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子は、カルボキシル基、ヒドラジド基、ヒドラジン基および1級アミノ基のうち少なくともいずれか1種を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーの含有量(固形分換算)は、水性塗料組成物中、0.1質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関する。より詳細には、本発明は、環境への負荷が小さく、住居などの室内空間における種々の生活臭を、素早く消臭することのできる水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居などの室内空間では、食べ物、生活者、カビ、トイレ等に起因する生活臭が発生する。これらの生活臭は、不快に感じられることがある。そこで、特許文献1には、アクリル樹脂、層状ケイ酸塩、化石サンゴパウダー、多孔質中空バルーン、マグネシウム系無機塩、水系溶剤を含み、消臭機能を有する水性塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水性塗料は、消臭効果が充分でない場合がある。また、この水性塗料は、即効性が低い傾向にあり、より素早く生活臭を消臭することが求められていた。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、環境への負荷が小さく、住居などの室内空間における種々の生活臭(特に壁面に吸着された生活臭)を、素早く消臭することのできる水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の水性塗料組成物には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)火山灰と、繊維長が異なる複数の植物性繊維と、顔料と、樹脂とを含み、前記複数の植物性繊維のうち少なくともいずれか1種は、セルロースナノファイバーである、水性塗料組成物。
【0008】
このような構成によれば、水性塗料組成物は、火山灰やセルロースナノファイバー等の植物性繊維を主たる原料としており、環境負荷が小さい。また、水性塗料組成物は、住居などの室内空間における種々の生活臭(特に壁面に吸着された生活臭)を、素早く消臭することができる。
【0009】
(2)前記セルロースナノファイバーは、粒子と複合化されており、前記粒子は、無機粒子または有機粒子のうち少なくともいずれか一方を含む、(1)記載の水性塗料組成物。
【0010】
このような構成によれば、セルロースナノファイバーは、繊維間の凝集が生じにくい。その結果、このようなセルロースナノファイバーと粒子との複合体を含む水性塗料組成物は、凝集を生じにくく、取扱い性がよい。
【0011】
(3)前記セルロースナノファイバーは、水系分散体である、(1)記載の水性塗料組成物。
【0012】
このような構成によれば、水性塗料組成物は、製造工程を短縮しやすく、かつ、水性塗料組成物中のセルロースナノファイバーの配合量を容易に変更することができる。
【0013】
(4)前記セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子は、カルボキシル基、ヒドラジド基、ヒドラジン基および1級アミノ基のうち少なくともいずれか1種を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【0014】
このような構成によれば、得られる水性塗料組成物は、上記セルロース分子から構成されるセルロースナノファイバーが用いられていることにより、住居などの室内空間における生活臭に対して、より優れた消臭効果を示す。
【0015】
(5)前記セルロースナノファイバーの含有量(固形分換算)は、水性塗料組成物中、0.1質量%以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【0016】
このような構成によれば、水性塗料組成物は、短時間で生活臭を消臭することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環境への負荷が小さく、住居などの室内空間における種々の生活臭を、素早く消臭することのできる水性塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<水性塗料組成物>
本発明の一実施形態の水性塗料組成物は、火山灰と、繊維長が異なる複数の植物性繊維と、顔料と、樹脂とを含む。複数の植物性繊維のうち少なくともいずれか1種は、セルロースナノファイバーである。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
(火山灰)
火山灰は、水性塗料組成物に配合することにより、充填材の一種として作用する。また、火山灰は、塗装作業を容易にする働きをする。
【0020】
火山灰は特に限定されない。火山灰は、各地で採取される火山灰であってもよい。火山灰は、たとえば、鹿児島を中心としたシラス台地(火山ガラス質堆積物(二次堆積シラス))、関東平野一円に広がる関東ローム層、北海道の昭和新山等で採取される火山灰を使用し得る。
【0021】
火山灰は、特に処理をすることなく使用されてもよく、焼成した焼成火山灰であってもよい。焼成火山灰は、バルーン状であり、軽量であるため、取り扱いやすい。また、焼成火山灰は、水性塗料組成物の密度を低くすることができる。
【0022】
火山灰の粒度(平均粒子径)は特に限定されない。一例を挙げると、粒度は、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、粒度は、1.4mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。火山灰の粒度が上記範囲内であることにより、得られる水性塗料組成物を用いて壁面に塗工した際に、外観不良を生じにくい。なお、火山灰の粒度は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-910、(株)堀場製作所製)を用いて、測定することができる。
【0023】
火山灰のかさ比重は特に限定されない。一例を挙げると、かさ比重は、0.05g/cm3以上であることが好ましく、0.10g/cm3以上であることがより好ましい。また、かさ比重は、1.00g/cm3以下であることが好ましく、0.80g/cm3以下であることがより好ましい。火山灰のかさ比重が上記範囲内であることにより、水性塗料組成物は、塗装時の作業性が良い。なお、火山灰のかさ比重は、規格型カサ比重測定器を用いて、JISK5101-12に準拠して測定することができる。
【0024】
火山灰の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、火山灰の含有量(固形分換算)は、水性塗料組成物中、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、火山灰の含有量は、水性塗料組成物中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。火山灰の含有量が上記範囲内であることにより、水性塗料組成物を塗工した塗膜は、吸放湿性が優れ、住居などの室内空間における生活臭の消臭効果が向上する。また、水性塗料組成物は、塗装作業性が優れる。
【0025】
(繊維長が異なる複数の植物性繊維)
本実施形態の水性塗料組成物は、繊維長が異なる複数の植物性繊維を含む。複数の植物性繊維は、少なくともいずれか1種がセルロースナノファイバーである。植物性繊維は、水性塗料組成物を塗工して得られる塗膜の割れを防止したり、調湿性を付与したりするために配合される。
【0026】
・セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維をフィブリル化した微細繊維である。セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーの水系分散体として提供される。セルロースナノファイバーの原料は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースナノファイバーの原料は、木材等の植物性材料に由来するものであってもよく、ホヤなどの動物性材料やバクテリアなどの微生物に由来するものであってもよい。植物性材料は、たとえば、木材、藁、竹、バガス、笹、葦、籾殻等である。また、植物性材料の原料を用いるセルロースナノファイバーの作製方法は、たとえば、原料に化学的処理を施して解繊しやすい状態にした後に機械的なせん断力による物理的処理を施して原料を解繊し製造する化学解繊による方法や、高圧ホモジナイザー法、グラインダー摩砕法、凍結粉砕法、強剪断力混練法、ボールミル粉砕法など公知の機械的な高せん断力を用いた機械解繊による方法等である。
【0027】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースナノファイバーの平均繊維径は、2~1000nm程度であることが好ましく、5~300nm程度であることがより好ましい。このような平均繊維径のセルロースナノファイバーは、工業的に製造しやすい。なお、平均繊維径は、走査型電子顕微鏡を用いてセルロース繊維を観察することにより算出し得る。
【0028】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースナノファイバーの平均繊維長は、0.5~10000μm程度であることが好ましく、10~2000μm程度であることがより好ましい。このような平均繊維長のセルロースナノファイバーは、工業的に製造しやすい。なお、平均繊維長は、走査型電子顕微鏡を用いてセルロース繊維を観察することにより算出し得る。
【0029】
セルロースナノファイバーのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースナノファイバーのアスペクト比は、3~10000程度であることが好ましく、5~1000程度であることがより好ましい。このようなアスペクト比のセルロースナノファイバーは、工業的に製造しやすい。
【0030】
セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子は、カルボキシル基、ヒドラジド基、ヒドラジン基および1級アミノ基のうち少なくともいずれか1種を有することが好ましい。このようなセルロースナノファイバー(変性セルロースナノファイバー)が用いられることにより、得られる水性塗料組成物は、住居などの室内空間における生活臭に対して、優れた消臭効果を示す。
【0031】
カルボキシル基は、セルロース分子の構成単位であるグルコース単位のC6位の1級水酸基が酸化されたものであることが好ましい。グルコース単位のC6位の1級水酸基が酸化されたセルロース繊維は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)を用いることにより容易に合成し得る。セルロース分子とTEMPOとを反応させることにより、グルコース単位のC6位の1級水酸基を選択的に酸化させてカルボキシル基を導入し得る。
【0032】
このとき、セルロース分子におけるカルボキシル基の含有量は、セルロースナノファイバー1gあたり、0.1mmol以上であることが好ましく、0.5mmol以上であることがより好ましい。カルボキシル基の含有量が上記範囲内であることにより、得られるセルロースナノファイバーは、アンモニアまたはアミンに対して優れた吸着性能を示し得る。一方、カルボキシル基の含有量は、セルロースナノファイバー1gあたり、5mmol以下であることが好ましい。上記含有量は、滴定法により算出し得る。
【0033】
また、カルボキシル基は、アンモニアまたはアミンと容易に結合する。そのため、得られるセルロースナノファイバーを含む水性塗料組成物は、アンモニアやアミンの吸着材として好適である。
【0034】
ヒドラジド基、ヒドラジン基を有するセルロース分子を含むセルロースナノファイバーは、セルロース繊維と含窒素化合物とを混合して反応させて、セルロース分子と含窒素化合物とを結合させることで得ることができる。好適な製造方法は、平均繊維径が2~1000nm程度のセルロースナノファイバーと、ヒドラジド基またはヒドラジン基を有する含窒素化合物とを混合して反応させる方法である。
【0035】
含窒素化合物は、ヒドラジド基またはヒドラジン基を有するものであれば特に限定されない。ヒドラジド基を有する含窒素化合物は、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物などである。これらの中でも、分子中に2個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物が好適であり、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物がより好適である。
【0036】
ジヒドラジド化合物は特に限定されない。一例を挙げると、ジヒドラジド化合物は、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等である。これらの中でも、ジヒドラジド化合物は、アジピン酸ジヒドラジドであることが好ましい。
【0037】
ヒドラジン基を有する含窒素化合物は特に限定されない。一例を挙げると、ヒドラジン基を有する含窒素化合物は、分子中に1個のヒドラジン基を有するモノヒドラジン化合物、分子中に2個以上のヒドラジン基を有するポリヒドラジン化合物等である。これらの中でも、ヒドラジン基を有する含窒素化合物は、分子中に1個のヒドラジン基を有するモノヒドラジン化合物であることが好ましい。
【0038】
ヒドラジド基またはヒドラジン基は、アルデヒドと容易に結合する。そのため、得られるセルロースナノファイバーを含む水性塗料組成物は、アルデヒドの吸着材として好適である。
【0039】
1級アミノ基を有するセルロース分子を含むセルロースナノファイバーは、セルロース繊維と、複数の1級アミノ基を有する含窒素化合物とを混合して反応させる方法により調製し得る。
【0040】
含窒素化合物は特に限定されない。一例を挙げると、含窒素化合物は、複数の1級アミノ基を有する化合物であればよく、複数の1級アミノ基を有する脂肪族ポリアミン化合物が好ましく、分子中に1級アミノ基(-NH2)を2個以上有する脂肪族ポリアミン化合物がより好ましい。
【0041】
脂肪族ポリアミン化合物は、分子中に2級アミノ基(-NHR1)や3級アミノ基(-NR12)を有していてもよい。R1およびR2は、任意の一価の置換基である。R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよい。また、上記脂肪族ポリアミン化合物は、本実施形態のセルロースナノファイバーの効果を阻害しない範囲において、アミノ基以外の官能基を有していてもよい。このような官能基は、水酸基、ハロゲン基、エステル基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基等である。
【0042】
脂肪族ポリアミン化合物の炭素鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。ここで、脂肪族ポリアミン化合物は、1級アミノ基がメチレン基に結合した化合物(-CH2NH2)であることが好ましい。この場合、得られるセルロースナノファイバーは、-CH2NH2を含む。脂肪族ポリアミン化合物は、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンなどのジアミンおよびこれらの誘導体;トリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン(PEI)などのアミノ基を3つ以上有するポリアミンおよびこれらの誘導体が好適である。これらの中でも、脂肪族ポリアミン化合物は、アミノ基を3つ以上有するポリアミンが好適であり、TAEAまたはPEIがより好適である。
【0043】
ポリアミンの分子量は、100000以下であることが好ましい。ポリアミンの分子量は、脂肪酸の吸着性能が優れる点から、分子量は50000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましい。ポリアミンの分子量は、通常、50以上である。
【0044】
1級アミノ基は、カルボキシル基と容易に反応する。そのため、得られるセルロースナノファイバーを含む水性塗料組成物は、悪臭の原因となる脂肪酸に対して優れた吸着性能を示し得る。
【0045】
吸着される脂肪酸は、たとえば、炭素数8以下の短鎖脂肪酸であり、より具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ヘキセン酸(たとえば、(E)-3-メチル-2-ヘキセン酸)およびこれらの構造異性体である。これらの脂肪酸は、悪臭の原因物質として知られている。そのため、1級アミノ酸を含むセルロースナノファイバーを含む水性塗料組成物は、これら悪臭の原因となる物質を吸着しやすく、特にイソ吉草酸に対して優れた吸着性能を示す。
【0046】
セルロースナノファイバーの含有量(固形分)は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースナノファイバーの含有量は、水性塗料組成物中、0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、セルロースナノファイバーの含有量は、水性塗料組成物中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が上記範囲内であることにより、水性塗料組成物は、下限値以上であると塗装による室内空間の消臭性が優れ、上限値以下であるとコテ等での塗装作業性が優れる。
【0047】
本実施形態の水性塗料組成物において、セルロースナノファイバーは、粒子と複合化されていることが好ましい。この場合、粒子は、無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。
【0048】
粒子は、セルロースナノファイバーとともに複合化するために配合される。粒子が配合されることにより、セルロースナノファイバーは、繊維間の凝集が生じにくい。具体的には、セルロースナノファイバーの繊維に粒子が付着することにより、セルロースナノファイバーの個々の繊維同士が接触しにくくなる。これにより、水性塗料組成物の製造工程において、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を得る際に繊維同士の凝集が阻害される。なお、本実施形態において、「複合化」とは、セルロースナノファイバーの繊維に粒子が吸着し、一体化している状態をいう。また、粒子は、一次粒子であってもよく、2以上の粒子の集合体である二次粒子であってもよい。
【0049】
粒子は特に限定されない。一例を挙げると、粒子は、水性塗料組成物を製造する際に加えられる熱処理等に耐え得る無機粒子または有機粒子であればよい。
【0050】
無機粒子は、特に限定されない。一例を挙げると、無機粒子は、バリウムフェライトなどの金属粒子、酸化チタン、酸化銅、酸化ケイ素(シリカ)、酸化鉄などの金属酸化物粒子、シリカ(酸化ケイ素)、炭酸カルシウム、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カオリナイト、カーボンブラックなどの無機顔料等である。
【0051】
有機粒子は、特に限定されない。一例を挙げると、有機粒子は、有機フィラーとして有用な、合成樹脂粒子、天然高分子粒子等、有機顔料等である。有機粒子は、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の樹脂の粒子等である。有機顔料は、フタロシアニン顔料、ピロロピロール顔料、キナクリドン顔料等である。
【0052】
本実施形態のセルロースナノファイバーは、上記粒子の中でも、無機粒子を含むことが好ましく、炭酸カルシウムまたは酸化チタンのうち少なくともいずれか一方を含むことがより好ましい。これらは白色の顔料であるため、他の着色顔料や染料と併用することで、任意の色の塗料とすることが可能である。
【0053】
粒子の体積平均粒子径は、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましい。また、粒子の体積平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。粒子の体積平均粒子径が上記範囲内であることにより、セルロースナノファイバーは、繊維間の凝集がより生じにくく、取扱い性がよい。なお、体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱法により算出され得る。体積平均粒子径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-910、(株)堀場製作所製)を用いて算出され得る。
【0054】
・他の植物性繊維
本実施形態の複数の植物性繊維のうち、セルロースナノファイバー以外の植物性繊維(他の植物性繊維)は特に限定されない。一例を挙げると、他の植物性繊維は、各種針葉樹、広葉樹、唐松、コウゾ、三つ又などから製造した天然パルプ、または、麻や綿、ワラ繊維等である。
【0055】
他の植物性繊維の平均繊維長は特に限定されない。一例を挙げると、他の植物性繊維の平均繊維長は、0.02mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、他の植物性繊維の平均繊維長は、30.0mm以下であることが好ましく、10.0mm以下であることがより好ましい。他の植物性繊維の平均繊維長が上記範囲であることにより、得られる水性塗料組成物を塗工して得られる塗膜は、割れを生じにくく、かつ、外観が優れる。
【0056】
他の植物性繊維の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、他の植物性繊維の含有量は、水性塗料組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、他の植物性繊維の含有量は、水性塗料組成物中、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。他の植物性繊維の含有量が上記範囲内であることにより、得られる水性塗料組成物を塗工して得られる塗膜は、割れを生じにくく、かつ、外観が優れる。
【0057】
本実施形態の水性塗料組成物は、このように、繊維長が異なる複数の植物性繊維を含む。これにより、水性塗料組成物は、コテ等での塗装作業性が良好になり、外観不良を生じにくい。
【0058】
(顔料)
顔料は、塗料組成物において一般的に使用される顔料であればよい。一例を挙げると、顔料は、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、シリカ粉、石英系粉、珪藻土、酸化亜鉛、タルク、塩基性炭酸マグネシウムおよびアルミナ等の無機顔料や、内部構造が多孔質、中空構造または架橋タイプ等の樹脂ビーズを代表とするプラスチック顔料等である。また、着色を目的とする場合、着色顔料が配合されてもよい。着色顔料は、たとえば、酸化チタン、黄色酸化鉄、チタン黄、ベンガラ、リトポンおよび酸化アンチモン等の無機系顔料や、ハンザイエロー5G、パーマネントエローFGL、シアニンブルー、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーRS、パーマネントレッドF5RK、ブリリアントファーストスカーレットG、シアニングリーン、カルバゾール、キナクリドンレッドおよびカーボンブラック等の有機顔料等である。これらの中でも、顔料は、白色の顔料であると、他の着色顔料や染料と併用することで、任意の色の塗料とすることが可能である点から、炭酸カルシウム、酸化チタンであることが好ましく、炭酸カルシウムであることがより好ましい。
【0059】
顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、顔料の含有量は、水性塗料組成物中、5.0質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、顔料の含有量は、水性塗料組成物中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有量が上記範囲内であることにより、水性塗料組成物は、塗装作業性が良い。なお、本実施形態において、顔料(たとえば炭酸カルシウム)は、顔料として用いられてもよく、上記のとおりセルロースナノファイバーと複合化される粒子として用いられてもよい。この場合、顔料の含有量は、上記した粒子の含有量を含む。
【0060】
(樹脂)
樹脂は、火山灰と、繊維長が異なる複数の植物性繊維と、顔料とを結合するために配合される。得られる水性塗料組成物は、樹脂を含んでいることにより、塗工されると塗膜を形成する。
【0061】
樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂は、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等である。これらの中でも、粉状で、水性塗料へ配合しやすい点から、樹脂は、アクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0062】
アクリル樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸およびそのエステル、アミドおよびニトリル等から選択されるアクリル成分を重合して得られる重合体等である。アクリル成分は、たとえば、以下の(a)~(h)に示されるような化合物である。また、アクリル樹脂は、アクリル成分と、スチレン等の他のモノマーとを重合させて得られる重合体であってもよい。
【0063】
(a):(メタ)アクリル酸と炭素数1~24のアルコールとのエステル
(メタ)アクリル酸と炭素数1~24のアルコールとのエステルは、たとえば、メチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等である。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を表す。
【0064】
(b):多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物は、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
(c):カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等である。
【0066】
(d):エポキシ基含有重合性不飽和モノマー
エポキシ基含有重合性不飽和モノマーは、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等である。
【0067】
(e):アミノアルキル(メタ)アクリレート
アミノアルキル(メタ)アクリレートは、たとえば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等である。
【0068】
(f):(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体
(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体は、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N-メチロールアクリルアミドブチルエーテル等である。
【0069】
(g):(メタ)アクリロニトリルまたはその誘導体
(メタ)アクリロニトリルまたはその誘導体は、たとえば、(メタ)アクリロニトリル、3-アミノ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0070】
(h):アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体は、たとえば、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等である。
【0071】
樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂の含有量は、水性塗料組成物中、5.0質量%以上であることが好ましく、8.0質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂の含有量は、水性塗料組成物中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、水性塗料組成物は、塗装作業性が良い。
【0072】
本実施形態の水性塗料組成物の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、水性塗料組成物は、たとえば、
(i)セルロースナノファイバーと粒子とを複合化し、粉状乾燥固形物を得る工程、
(ii)得られた粉状乾燥固形物と、火山灰、繊維長の異なる複数の植物性繊維と、顔料と、樹脂と、任意成分とを混合し、粉末混合物を得る工程、
(iii)得られた粉末混合物に、水を添加し、水性塗料組成物を得る工程、
により、製造され得る。
【0073】
(i)乾燥固形物を得る工程
乾燥固形物を得る方法は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥固形物は、セルロースナノファイバーと粒子とを混合し、複合化することにより作製され得る。この際、セルロースナノファイバーは、粒子と混合するために、水系分散体であることが好ましい。水系分散体であるセルロースナノファイバーが使用されることにより、セルロースナノファイバーは、繊維間の凝集が生じにくい。
【0074】
水系分散体におけるセルロースナノファイバーの含有量(固形分換算)は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースナノファイバーの含有量は、水系分散体中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、セルロースナノファイバーの含有量は、水系分散体中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。水系分散体におけるセルロースナノファイバーの含有量が上記範囲内であることにより、後述するドラム乾燥機による乾燥を行う際に、セルロースナノファイバーの水系分散体と粒子との混合液を、蒸発乾燥しやすく、製造効率が優れる。
【0075】
水系分散体を構成する溶媒は、水や水と有機溶媒の混合溶媒が好ましい。有機溶媒は、水と混和するものであれば特に限定されない。有機溶媒は、アルコール類が好ましく、エタノールがより好ましい。
【0076】
セルロースナノファイバーの水系分散体と粒子とを分散させて混合液を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、混合液は、セルロースナノファイバーを含む水系分散体に、粒子を混合し、ディスパーによって攪拌することにより調製され得る。
【0077】
得られた混合液は、次いで、乾燥および粉砕される。混合液を乾燥および粉砕する方法は特に限定されない。一例を挙げると、混合液は、市販の乾燥機(たとえば電導加熱型のドラム乾燥機(D-0405、カツラギ工業(株)製))を用いることにより、乾燥および粉砕され得る。このようなドラム乾燥機によれば、混合液は、蒸気等の熱媒体によって蒸発乾燥され、薄膜状乾燥固形物となる。次いで、薄膜状乾燥固形物は、粉状に粉砕される。これにより、おがくず状、球状、ペレット状等の粉状の乾燥固形物が得られる。
【0078】
(ii)粉末混合物を得る工程
得られた粉状乾燥固形物は、火山灰、繊維長の異なる複数の植物性繊維、顔料、樹脂および任意成分(たとえば消泡剤など)と混合され、ディスパー等によって攪拌される。これにより、粉末混合物が調製される。
【0079】
(iii)水性塗料組成物を得る工程
得られた粉末混合物は、水が添加される。これにより、水性塗料組成物が製造され得る。
【0080】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、水性塗料組成物中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、水性塗料組成物中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、水性塗料組成物は、ペースト状の性状となり得る。これにより、水性塗料組成物は、適度な粘度を保つことで塗装時の可使時間が長くなるため、塗装時間を気にすることなく塗装できる。
【0081】
ほかにも、本実施形態の水性塗料組成物の製造方法は、
(i)火山灰、繊維長の異なる複数の植物性繊維と、顔料と、樹脂と、任意成分とを混合し、粉末混合物を得る工程、
(ii)得られた粉末混合物に、水と、水系分散体のセルロースナノファイバーを添加し、水性塗料組成物を得る工程、
により、製造され得る。このような製造方法によれば、複合化した粉末のセルロースナノファイバーを配合することなく、セルロースナノファイバーの水分散体を用いることにより、水性塗料組成物を製造し得る。
【0082】
得られた水性塗料組成物を塗装する方法は特に限定されない。一例を挙げると、塗装方法は、はけ、ローラー、コテなどで塗布する方法、圧送式スプレー法、エアレススプレー法などのスプレー法などによって塗装する方法等である。なかでも、本実施形態の水性塗料組成物は、高粘度で粒度が粗いため、コテで塗布する方法やスプレー法が好ましい。得られた水性塗料組成物は、コンクリート、モルタル、PC板、ALC、工場成型板、フレキシブルボード、漆喰、石膏ボード、壁紙、ベニヤ板などの塗装に用いることができる。なかでも、本実施形態の水性塗料組成物は、屋内用として最適な塗材であるので、石膏ボード、壁紙やベニヤ板に塗装することが好ましい。
【0083】
以上、本実施形態の水性塗料組成物は、火山灰やセルロースナノファイバー等の植物性繊維を主たる原料としており、環境負荷が小さい。また、水性塗料組成物は、住居などの室内空間における種々の生活臭(特に壁面に吸着された生活臭)を、素早く消臭することができる。そのため、水性塗料組成物は、たとえば住居(特にトイレなど)、化学工場、清掃工場、下水処理場、病院、介護施設、農産物加工場、畜産加工場などの室内空間の壁面や天井の塗材として好適に使用される。
【実施例0084】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0085】
使用した原料を以下に示す。
<セルロースナノファイバー>
セルロースナノファイバー1:AAn-CAT、真庭バイオケミカル(株)製、アジピン酸ジヒドラジドが結合したセルロースナノファイバー、平均繊維径20~200nm、平均繊維長500μm
セルロースナノファイバー2:i-CAT、真庭バイオケミカル(株)製、1級アミノ基が結合したセルロースナノファイバー、平均繊維径5~300nm、平均繊維長500μm
セルロースナノファイバー3:CNF混合物、真庭バイオケミカル(株)製、セルロースナノファイバー1、2および4の等量混合物、平均繊維径20~200nm、平均繊維長500μm
セルロースナノファイバー4:セルフィム(CNF)C-100、モリマシナリー(株)製、平均繊維径5~200nm、平均繊維長500μm、機械解繊
セルロースナノファイバー5:レオクリスタ、第一工業製薬(株)製、平均繊維径3nm、平均繊維長150~3000nm、化学解繊
なお、表1中の含有量は、いずれも、これらセルロースナノファイバーを固形分が1質量%となるよう分散した水系分散体(溶媒:水)である。
<粒子>
粒子1:サンライトSL-300、竹原化学工業(株)製、重炭酸カルシウム、体積平均粒子径5μm
<顔料>
顔料1:サンライトSL-300、竹原化学工業(株)製、重炭酸カルシウム、体積平均粒子径5μm
<火山灰>
火山灰1:シラスバルーン、豊和直(株)製、平均粒子径180μm、かさ比重0.18~0.20
<植物性繊維(セルロースナノファイバー以外)>
植物性繊維1:PKパルプ1mm、(株)北辰製、1mmメッシュパス80%
植物性繊維2:PKパルプ2mm、(株)北辰製、2mmメッシュパス80%
<樹脂>
樹脂1:ELOTEXBN0107、ヌーリオン・ジャパン(株)製、スチレンアクリル系樹脂
<その他>
消泡剤1:SNデフォーマー、サンノプコ(株)製、ポリエーテル系消泡剤
【0086】
<粉状乾燥固形物の製造例>
(製造例1-1)
100質量部の粒子1と、700質量部のセルロースナノファイバー1の水系分散体(固形分1質量%)とを混合し、ディスパーで攪拌して混合液を作製した。得られた混合液を蒸気圧0.3MPa・G、ドラム回転数2rpmの条件で、ドラム乾燥機(D-0405型、カツラギ工業(株)製、熱媒体:水蒸気)を用いて蒸発乾燥させて、おがくず状の乾燥固形物A-1(粒度10メッシュ以下、目開き1.70mm)を得た。
【0087】
(製造例1-2~1-10)
以下の表1に記載の処方(質量部)に変更した以外は、製造例1-1と同様の方法により、乾燥固形物A-2~A-10を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
<粉末混合物の製造例>
(製造例2-1)
1.0質量部の乾燥固形物A-1と、29.0質量部の顔料1と、45.0質量部の火山灰1と、4.5質量部の植物性繊維2とを混合し、ディスパーで強攪拌した。次いで、20.0質量部の樹脂1と、0.5質量部の消泡剤1を加え、ディスパーで弱攪拌し、粉末混合物B-1を作製した。
【0090】
(製造例2-2~2-16)
以下の表2に記載の処方(質量部)に変更した以外は、製造例2-1と同様の方法により、粉末混合物B-2~B-16を得た。
【0091】
【表2】
【0092】
<水性塗料組成物の実施例>
(実施例1)
100.0質量部の粉末混合物B-1と、110.0質量部の精製水とを混合し、実施例1の水性塗料組成物を得た。
【0093】
(実施例2~15)
以下の表3に記載の処方(質量部)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、水性塗料組成物を得た。
【0094】
【表3】
【0095】
(実施例16)
99.9質量部の粉末混合物B-16と、100.0質量部の精製水と、10.0質量部のセルロースナノファーバー1とを混合し、実施例16の水性塗料組成物を得た。
【0096】
(実施例17~19)
以下の表4に記載の処方(質量部)に変更した以外は、実施例16と同様の方法により、水性塗料組成物を得た。
【0097】
(比較例1)
99.9質量部の粉末混合物と、100.0質量部の精製水とを混合し、比較例1の水性塗料組成物を得た。
【0098】
【表4】
【0099】
得られた水性塗料組成物について、以下の評価方法により、アンモニア、酢酸およびホルムアルデヒドに対する消臭効果、および、臭気ガスに対する即効性を測定した。
【0100】
(アンモニアに対する消臭試験方法)
水性塗料組成物を、100cm2のブリキ板の表面に塗布し、23℃で1週間養生し、厚さ約3mmの試験片を作製した。試験片を用いて、「JEC301 SEKマーク繊維製品認証基準 190401第6章-4 消臭性試験」に準じて、5Lサンプリングバッグに初発濃度100ppmのアンモニアの臭気ガス3Lを充填し、(株)ガステック製検知管を使用し、検知管法にて、測定開始直後と測定開始から2時間後におけるアンモニア濃度測定し、アンモニア濃度の減少率を算出した。
【0101】
(酢酸に対する消臭試験方法)
水性塗料組成物を、25cm2のブリキ板の表面に塗布し、23℃で1週間養生し、厚さ約3mmの試験片を作製した。試験片を用いて、臭気ガスを酢酸に変更した以外は上記したアンモニアに対する消臭試験方法と同様の方法により、酢酸濃度の減少率を算出した。
【0102】
(ホルムアルデヒドに対する消臭試験方法)
臭気ガスをホルムアルデヒドに変更した以外は上記した酢酸に対する消臭試験方法と同様の方法により、酢酸濃度の減少率を算出した。
【0103】
表3および表4に示されるように、本発明の実施例1~19の水性塗料組成物は、複数の臭気(アンモニア、酢酸またはホルムアルデヒド)の低減率が大きく、優れた消臭効果を示すことがわかった。
【0104】
一方、表4に示されるように、比較例1の水性塗料組成物は、アンモニア、酢酸およびホルムアルデヒドの低減率が、いずれも優れないか、または、小さく、消臭効果が劣った。
【0105】
(臭気ガス(アンモニア)に対する即効性試験方法)
実施例2の水性塗料組成物を、100cm2のブリキ板の表面に塗布し、23℃で1週間養生し、厚さ約3mmの試験片を作製した。試験片を用いて、「JEC301 SEKマーク繊維製品認証基準 190401第6章-4 消臭性試験」に準じて、5Lサンプリングバッグに初発濃度100ppmのアンモニアの臭気ガス3Lを充填し、(株)ガステック製検知管を使用し、検知管法にて、測定開始直後、測定開始から30分後、1時間後および2時間後におけるアンモニア濃度測定し、アンモニア濃度の減少率を算出した。
【0106】
【表5】
【0107】
表5に示されるように、本発明の実施例2の水性塗料組成物は、わずか30分曝露した場合であっても、アンモニア濃度を85%以上低減させることができ、即効性を示すことがわかった。