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特開2022-29823無人飛行体の制御システム、及び無人飛行体の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029823
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】無人飛行体の制御システム、及び無人飛行体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/02 20060101AFI20220210BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220210BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220210BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220210BHJP
   G05D 1/04 20060101ALI20220210BHJP
   G01C 5/06 20060101ALI20220210BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220210BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B64F3/02
B64D47/08
B64C39/02
B64C13/18 F
G05D1/04
G01C5/06
G01C15/00 102C
G01C5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133345
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 智義
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA04
5H301AA06
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC08
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD13
5H301DD15
5H301FF11
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】飛行体の高度を移動体に合わせて適切化できる制御システムを提供する。
【解決手段】制御システムは、移動体Bに搭載されるベース装置と、無人飛行体Aと、移動体Bから飛行体Aに電力を供給するための給電ケーブル31を含みベース装置と飛行体Aとを接続するケーブル31・32と、飛行体Aの飛行を制御する制御装置とを有している。制御装置は、移動体Bに対する無人飛行体Aの相対高度が目標相対高度に一致するように飛行体Aを制御する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体と、
移動体に搭載されるベース装置と、
前記移動体から前記無人飛行体に電力を供給するための給電ケーブルを含み、前記ベース装置と前記無人飛行体とを接続する少なくとも1本のケーブルと、
前記無人飛行体の飛行を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記移動体に対する前記無人飛行体の相対高度が目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御する
無人飛行体の制御システム。
【請求項2】
前記少なくとも1本のケーブルの角度を検知するセンサを有し、
前記制御装置は、前記少なくとも1本のケーブルの角度に基づいて前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度を算出する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項3】
前記少なくとも1本のケーブルの張力を検知するセンサを有し、
前記制御装置は、前記少なくとも1本のケーブルの張力が閾値より低い場合に、前記無人飛行体と前記ベース装置との距離が大きくなるように前記無人飛行体を制御する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記無人飛行体の前記相対高度を算出する相対高度算出部を含み、算出される前記相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項5】
前記移動体又は前記無人飛行体のうちの一方に搭載され、他方を撮影するためのカメラを有し、
前記制御装置は、前記カメラで取得する画像を利用して前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度を算出する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項6】
前記移動体に搭載される第1GPS受信機と、
前記無人飛行体に搭載される第2GPS受信機と
を有し、
前記制御装置は、前記第1GPS受信機の出力から得られる前記移動体の高度と、前記第2GPS受信機の出力から得られる前記無人飛行体の高度とを利用して、前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項7】
前記移動体に搭載される慣性計測装置を有し、
前記制御装置は、前記第1GPS受信機で取得する信号と前記慣性計測装置の出力とに基づいて前記移動体の高度を算出する
請求項6に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1GPS受信機で取得する第1の信号を取得する第1のタイミングと、前記第1の信号の次の信号である第2の信号を前記第1GPS受信機で取得する第2のタイミングとの期間における前記移動体の高度を前記慣性計測装置の出力に基づいて算出する
請求項7に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項9】
前記移動体に搭載される第1気圧高度センサと、
前記無人飛行体に搭載される第2気圧高度センサと、
前記制御装置は、前記第1気圧高度センサの出力から算出される前記移動体の高度と、前記第2気圧高度センサの出力から算出される前記無人飛行体の高度とを利用して、前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記移動体の現在の高度を算出する移動体高度算出部と、前記移動体の前記現在の位置と前記目標相対高度とに基づいて前記無人飛行体の目標高度を算出する飛行体目標高度算出部とを含み、前記無人飛行体の現在の高度が前記目標高度に一致するように前記無人飛行体を制御する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記少なくとも1本のケーブルに作用する張力が閾値より大きいか否か、及び/又は前記少なくとも1本のケーブルの角度が閾値より大きいか否かを判定するケーブル判定部を有し、
前記制御装置は、前記ケーブル判定部の判定結果に応じて前記無人飛行体の前記目標高度を補正する
請求項10に記載される無人飛行体の制御システム。
【請求項12】
移動体に搭載されるベース装置と、
無人飛行体と、
前記移動体から前記無人飛行体に電力を供給するための給電ケーブルを含み、前記ベース装置と前記無人飛行体とを接続する少なくとも1本のケーブルと、
前記無人飛行体の飛行を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記無人飛行体の目標高度を算出する飛行体目標高度算出部と、
前記少なくとも1本のケーブルに作用する張力が所定の条件に該当するか否か、及び/又は前記少なくとも1本のケーブルの角度が所定の条件に該当するか否かを判定するケーブル判定部と、
前記ケーブル判定部の判定結果に応じて前記無人飛行体の前記目標高度を補正する飛行体目標補正部と、を有している
無人飛行体の制御システム。
【請求項13】
給電ケーブルを含む少なくとも1本のケーブルを通して移動体に搭載されているベース装置に接続されている無人飛行体を制御する方法であって、
前記移動体に対する前記無人飛行体の目標相対高度を定めるステップと、
前記移動体に対する前記無人飛行体の相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御するステップと
を含む無人飛行体の制御方法。
【請求項14】
給電ケーブルを含む少なくとも1本のケーブルを通して移動体に搭載されているベース装置に接続されている無人飛行体を制御する方法であって、
前記無人飛行体の目標高度を算出するステップと、
前記少なくとも1本のケーブルに作用する張力が所定の条件に該当するか否か、及び/又は前記少なくとも1本のケーブルの角度が所定の条件に該当するか否かを判定するケーブル判定ステップと、
前記ケーブル判定ステップにおける判定結果に応じて前記無人飛行体の前記目標高度を補正するステップと
を含む無人飛行体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人飛行体の制御システム、及び無人飛行体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを搭載し、地上又は海上の映像を上空から撮影することが可能な無人飛行体が利用されている。特許文献1には、移動体(車両又は船舶)とケーブルを介して接続され、このケーブルを通して電力が供給される無人飛行体が開示されている。特許文献2には、ケーブルを介して無人車両と接続され、このケーブルを通して電力が供給される無人飛行体が開示されている。このような無人飛行体は、バッテリの容量に関わらず長時間に亘って飛行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-217942号公報
【特許文献2】特開2016-199144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体がボートである場合、移動体が波を受け、移動体の位置が上下動する。飛行体の位置はこの移動体の動きに合わせて上下動するのが望ましい場合がある。例えば、移動体と飛行体との相対高度を固定すると、飛行体のカメラを通して取得する映像を移動体の運転に利用することが容易となる。また、ケーブルから飛行体に過大な負荷が作用することを抑えるためには、飛行体の位置は移動体の動きに合わせて上下動することが求められる。このことは、移動体が陸上を走行する車両である場合も同様である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示で提案する無人飛行体の制御システムの一例は、移動体に搭載されるベース装置と、無人飛行体と、前記移動体から前記無人飛行体に電力を供給するための給電ケーブルを含み前記ベース装置と前記無人飛行体とを接続する少なくとも1本のケーブルと、前記無人飛行体の飛行を制御する制御装置とを有している。前記制御装置は、前記移動体に対する前記無人飛行体の相対高度が目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御する。この制御システムによれば、無人飛行体の高度を移動体に合わせて適切化できる。例えば、無人飛行体の高度を移動体の動きに合わせて上下動させることができる。
【0006】
(2)(1)に記載される制御システムは、前記少なくとも1本のケーブルの角度を検知するセンサを有してよい。前記制御装置は、前記少なくとも1本のケーブルの角度に基づいて前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度を算出してよい。
【0007】
(3)(1)に記載される制御システムは、前記少なくとも1本のケーブルの張力を検知するセンサを有してもよい。前記制御装置は、前記少なくとも1本のケーブルの張力が閾値より低い場合に、前記無人飛行体と前記ベース装置との距離が大きくなるように前記無人飛行体を制御してよい。このシステムによれば、ケーブルの撓みを低減でき、相対高度の算出精度を向上できる。
【0008】
(4)(1)に記載される制御システムにおいて、前記制御装置は、前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度を算出する相対高度算出部を含み、算出される前記相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御してよい。
【0009】
(5)(1)に記載される制御システムは、前記移動体又は前記無人飛行体のうちの一方に搭載され、他方を撮影するためのカメラを有してよい。前記制御装置は、前記カメラを通して取得する画像を利用して前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度を算出してよい。
【0010】
(6)(1)に記載される制御システムは、前記移動体に搭載される第1GPS受信機と、前記無人飛行体に搭載される第2GPS受信機とを有している。前記制御装置は、前記第1GPS受信機の出力から得られる前記移動体の高度と、前記第2GPS受信機の出力から得られる前記無人飛行体の高度とを利用して、前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御する。
【0011】
(7)(6)に記載される制御システムは、前記移動体に搭載される慣性計測装置を有してよい。前記制御装置は、前記第1GPS受信機で取得する信号と前記慣性計測装置の出力とに基づいて前記移動体の高度を算出してよい。これによれば、移動体の高度を高い精度で検知できるので、無人飛行体の制御の精度も向上できる。
【0012】
(8)(7)に記載される制御システムにおいて、前記制御装置は、前記第1GPS受信機で取得する第1の信号を取得する第1のタイミングと、前記第1の信号の次の信号である第2の信号を前記第1GPS受信機で取得する第2のタイミングとの期間における前記移動体の高度を前記慣性計測装置の出力に基づいて算出してよい。
【0013】
(9)(1)に記載される制御システムは、前記移動体に搭載される第1気圧高度センサと、前記無人飛行体に搭載される第2気圧高度センサとを有してよい。前記制御装置は、前記第1気圧高度センサの出力から算出される前記移動体の高度と、前記第2気圧高度センサの出力から算出される前記無人飛行体の高度とを利用して、前記移動体に対する前記無人飛行体の前記相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御してよい。これによれば、無人飛行体の制御の精度を向上できる。
【0014】
(10)(1)に記載される制御システムにおいて、前記制御装置は、前記移動体の現在の高度を算出する移動体高度算出部と、前記移動体の前記現在の位置と前記目標相対高度とに基づいて前記無人飛行体の目標高度を算出する飛行体目標高度算出部とを含み、前記無人飛行体の現在の高度が前記目標高度に一致するように前記無人飛行体を制御する
請求項1に記載される無人飛行体の制御システム。
【0015】
(11)(10)に記載される制御システムにおいて、前記制御装置は、前記少なくとも1本のケーブルに作用する張力が閾値より大きいか否か、及び/又は前記少なくとも1本のケーブルの角度が閾値より大きいか否かを判定するケーブル判定部を有し、前記制御装置は、前記ケーブル判定部の判定結果に応じて前記無人飛行体の前記目標高度を補正する。これによれば、無人飛行体の高度を移動体の動きに、より安定的に追従させることができる。
【0016】
(12)本開示で提案する無人飛行体の制御システムの別の例は、移動体に搭載されるベース装置と、無人飛行体と、前記移動体から前記無人飛行体に電力を供給するための給電ケーブルを含み、前記ベース装置と前記無人飛行体とを接続する少なくとも1本のケーブルと、前記無人飛行体の飛行を制御する制御装置とを有している。前記制御装置は、前記無人飛行体の目標高度を算出する飛行体目標高度算出部と、前記少なくとも1本のケーブルに作用する張力が所定の条件に該当するか否か、及び/又は前記少なくとも1本のケーブルの角度が所定の条件に該当するか否かを判定するケーブル判定部と、前記ケーブル判定部の判定結果に応じて前記無人飛行体の前記目標高度を補正する飛行体目標補正部と、を有している。この制御システムによれば、移動体と無人飛行体との相対高度を適正に保つことができる。
【0017】
(13)本開示で提案する無人飛行体の制御方法の一例は、給電ケーブルを含む少なくとも1本のケーブルを通して移動体に搭載されているベース装置に接続されている無人飛行体を制御する方法である。前記方法は、前記移動体に対する前記無人飛行体の目標相対高度を定めるステップと、前記移動体に対する前記無人飛行体の相対高度が前記目標相対高度に一致するように前記無人飛行体を制御するステップとを含む。この制御方法によれば、無人飛行体の高度を移動体に合わせて適切化できる。例えば、無人飛行体の高度を移動体の動きに合わせて上下動させることができる。
【0018】
(14)本開示で提案する無人飛行体の制御方法の別の例は、給電ケーブルを含む少なくとも1本のケーブルを通して移動体に搭載されているベース装置に接続されている無人飛行体を制御する方法である。前記方法は、前記無人飛行体の目標高度を算出するステップと、前記少なくとも1本のケーブルに作用する張力が所定の条件に該当するか否か、及び/又は前記少なくとも1本のケーブルの角度が所定の条件に該当するか否かを判定するケーブル判定ステップと、前記ケーブル判定ステップにおける判定結果に応じて前記無人飛行体の前記目標高度を補正するステップと含む。この制御方法によれば、移動体と無人飛行体との相対高度を適正に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本開示で提案する無人飛行体の制御システムの一例を示す概略図である。
図1B】本開示で提案する無人飛行体の制御システムの別の例を示す概略図である。
図2A】無人飛行体のハードウェアを示すブロック図である。
図2B】移動体に搭載されるベース装置のハードウェアを示すブロック図である。
図3A】ケーブル角度センサを説明するため図であり、移動体と無人飛行体とが側面視で示されている。
図3B】ケーブル角度センサを説明するため図であり、無人飛行体のケーブル連結器が側面視で示されている。
図4A】ケーブル角度センサを説明するため図であり、移動体と無人飛行体とが平面視で示されている。
図4B】ケーブル角度センサを説明するため図であり、無人飛行体のケーブル連結器が平面視で示されている。
図5】無人飛行体の制御装置とベース装置が有する制御装置の機能を示すブロック図である。
図6】無人飛行体の制御装置とベース装置が有する制御装置で実行される処理の流れを説明するフロー図である。
図7A】変形例による無人飛行体の制御装置とベース装置が有する制御装置の機能を示すブロック図である。ここでは、GPS信号を利用して無人飛行体の高度が制御される例が示されている。
図7B図7Aで示す制御装置で実行される処理の流れを示すフロー図である。
図8A】変形例による無人飛行体のハードウェアを示すブロック図である。ここでは、無人飛行体の相対高度を検知するためのカメラを搭載した無人飛行体が示されている。
図8B図8Aで示すカメラを有する制御システムにおいて、制御装置で実行される処理の流れを示すフロー図である。
図9A】変形例による無人飛行体の制御装置とベース装置が有する制御装置の機能を示すブロック図である。ここでは、係留ケーブルに作用する張力や係留ケーブルの角度を利用して無人飛行体の目標高度を補正する例が示されている。
図9B図9Aで示す制御装置で実行される処理の流れを示すフロー図である。
図10】変形例による無人飛行体とベース装置のハードウェアを示すブロック図である。ここでは、気圧高度センサが無人飛行体とベース装置とに設けられる例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態の一例である無人飛行体の制御システム1を示す概略図である。
【0021】
[システム概要]
図1Aで示すように、制御システム1は、無人飛行体Aと、移動体Bに搭載されるベース装置U(図2B参照)と、無人飛行体Aとベース装置Uとを繋ぐケーブル31・32を含んでいる。移動体Bの一例は船であるが、移動体Bは陸上を走行する車両であってもよい。ベース装置Uは、ケーブル31・32を巻き取るためのケーブル巻き取り装置21を有している。飛行体Aは、例えば、複数のロータを有するマルチコプター(例えば、クアッドコプターや、ヘキサコプター、オクトコプターなど)である。以下では、無人飛行体Aを単に飛行体と称する。
【0022】
制御システム1は、飛行体Aとベース装置Uとを繋ぐケーブルとして、移動体Bに搭載されているバッテリ24及び/又は発電装置29(図2B参照)から飛行体Aに電力を供給する給電ケーブル31を有している。また、制御システム1は、飛行体Aとベース装置Uとを繋ぐケーブルとして、電気的な接続には用いられず、飛行体Aの移動体Bからの離脱を防止するために用いられる係留ケーブル32を有している。制御システム1は、飛行体Aとベース装置Uとの間での通信を可能とするための通信ケーブルをさらに有してもよい。図1Aで示す例とは異なり、制御システム1は給電ケーブル31だけを有し、係留ケーブル32を有していなくてもよい。この場合、給電ケーブル31は、飛行体Aの移動体Bからの離脱を防止する機能を有するように補強されていてよい。言い換えれば、係留ケーブルが給電ケーブル31の内部に設けられてもよい。
【0023】
ケーブル巻き取り装置21は、例えば円筒状の回転部を有する。ケーブル31・32はこの回転部の周りに巻かれる。図1Aで示すように、巻き取り装置21は、給電ケーブル31と係留ケーブル32の双方を巻き取るように構成されてよい。この場合、巻き取り装置21は、回転部と、回転部を支持する部分との接続部として、電気的接続を確立するためのスナップリングを有してよい。これとは異なり、巻き取り装置21は、図1Bで示すように、係留ケーブル32だけを巻き取るように構成されてよい。この場合、移動体Bには、飛行体Aとベース装置Uとの電気的な接続を確立するケーブル(上述した給電ケーブル31や通信ケーブル)を収容する収容箱Cが搭載されていてよい。
【0024】
[無人飛行体]
飛行体Aのハードウェアを説明する。図2Aは飛行体Aのハードウェアを示すブロック図である。
【0025】
飛行体Aは制御装置11Aを有している。制御装置11Aは、メモリーと、メモリーに記録されているプログラムを実行するマイクロプロセッサとを有し、マイクロプロセッサがプログラムを実行することによって飛行体Aの運動及び姿勢を制御する。
【0026】
飛行体Aは、移動体Bの周辺を観察するための周辺観察装置を有している。周辺観察装置の一例はカメラ12Aである。カメラ12Aは、例えば、2つの画像センサを有するステレオカメラである。カメラ12Aは1つの画像センサで構成される単眼カメラであってもよい。飛行体Aは、カメラ12Aの向き(カメラ12Aのピッチ角)を操作する駆動装置を有してもよい。カメラ12Aで取得した画像は、ベース装置Uに送信されたり、飛行体Aが有している記憶装置に記録される。カメラ12Aで取得した画像は、移動体Bの自動操縦や、移動体Bの自動着岸、海上にある浮遊物の検知、遭難者の検知、鳥山・潮目の検知などに利用されてよい。飛行体Aは、周辺観察装置として、カメラ12Aに加えて或いはカメラ12Aに代えて、レーダー(電波探知機)や、LiDAR(Light Detection and Ranging)装置を有してよい。
【0027】
飛行体Aは、慣性計測装置(IMU)12Bを有している。IMU12Bは、例えば、3軸加速度センサと3軸角速度センサと地磁気センサとを有している。IMU12Bの信号は、制御装置11Aに入力される。
【0028】
飛行体Aは、GPS受信機12Cを有している。GPS受信機12Cとしては、例えば、4台以上のGPS衛星からGPS信号を1台のアンテナ(1台の受信機)で受信し、GPS衛星から受信機まで距離を算出する単独測位を行う受信機(一般的なGPS受信機)が利用されてよい。また、より高精度な測位が可能な受信機として、DGPS(ディファレンシャルGPS)により測位を行う受信機や、RTK-GPS(リアルタイムキネマティックGPS)により測位を行う受信機が、GPS受信機12Cとして搭載されてもよい。
【0029】
飛行体Aは複数のロータ13を有している。ロータ13の数は例えば4つや、6つであるが、その数はこれに限定されない。飛行体Aはバッテリ15と、ロータドライバ14とを有している。バッテリ15は給電ケーブル31を通して供給される電力によって充電される。ロータドライバ14は、バッテリ15から供給される電流、或いは給電ケーブル31から供給される電流を利用して、制御装置11Aからの信号(指令値)に応じた電流を複数のロータ13のそれぞれに供給する。
【0030】
飛行体Aは、飛行体Aとベース装置Uとの間での通信を可能とする通信部16を有している。通信部16によってなされる通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。通信部16は、カメラ12Aを通して取得した画像データをベース装置Uに送信したり、ベース装置Uから飛行体Aの目標相対高度を受信する。また、飛行体Aの制御装置11Aと、後述するベース装置Uの制御装置11Bとの間では、飛行体Aの制御に係る種々の情報(飛行体Aの現在の高度や、移動体Bの現在の高度など)が送受信されてよい。こうすることで、飛行体Aの制御に係る処理は、飛行体Aの制御装置11Aとベース装置Uの制御装置11Bのいずれにおいても実行され得る。
【0031】
図3A図4Bで示すように、飛行体Aは、係留ケーブル32の端部が接続されているケーブル連結器30を有している。ケーブル連結器30には、飛行体Aの垂直方向(Dz方向、図3A)に対して係留ケーブル32の傾斜を許容するように、係留ケーブル32の端部が連結されている。ケーブル連結器30は、係留ケーブル32の端部が接続され且つ係留ケーブル32の端部と一体的に動く(一体的に傾く)連結部30aを有している。ケーブル連結器30は、例えば直交する2つの支持軸30b・30cを有する。連結部30aはこの2つの支持軸30b・30cを中心にして回転できるように支持されていてよい。
【0032】
図2Aで示すように、飛行体Aは、係留ケーブル32の張力に応じた信号を出力する張力センサ12Dを有している。張力センサ12Dは、例えば連結部30aからケーブル連結器30に作用している力に応じた信号を出力する。張力センサ12Dは、飛行体Aではなく、ベース装置U(より具体的には、ケーブル巻き取り装置21)に設けられてもよい。
【0033】
また、飛行体Aは、係留ケーブル32の角度を検知するためのケーブル角度センサ12Eを有している。ケーブル角度センサ12Eは、例えば、飛行体Aの垂直方向(Dz方向、図3B)に対する係留ケーブル32の角度θ1(図3B参照)に応じた信号を出力するセンサを含む。このようなセンサは、例えば連結部30aを支持している支持軸30b・30cの回転角に応じた信号を出力する回転センサであってよい。これとは異なり、ケーブル角度センサ12Eは、鉛直方向(重力方向、図3AにおいてDv方向)に対する係留ケーブル32の角度θ(図3A参照)に応じた信号を出力するセンサを含んでもよい。この場合、連結部30aの姿勢に応じた信号を出力する加速度センサであってもよい。ケーブル角度センサ12Eも、飛行体Aではなく、ベース装置U(より具体的には、巻き取り装置21)に設けられてもよい。後述するように、制御システム1の一例では、係留ケーブル32の角度を利用して、移動体Bに対する飛行体Aの相対高度が算出される。
【0034】
ケーブル角度センサ12Eは、飛行体Aの水平面に沿った基準方向(Dh方向、図4B)に対する係留ケーブル32の角度φ1(図4B参照)に応じた信号を出力するセンサを含んでもよい。図4Bにおいて、基準方向Dhは飛行体Aの前後方向であるが、左右方向であってもよい。センサは、例えば連結部30aを支持している支持軸30b・30cの回転角に応じた信号を出力する回転センサであってよい。これとは異なり、ケーブル角度センサ12Eは、連結部30aの姿勢に応じた信号を出力する加速度センサであってもよい。
【0035】
ベース装置Uのハードウェアを説明する。図2Bはベース装置Uのハードウェアを示すブロック図である。
【0036】
ベース装置Uは制御装置11Bを有している。制御装置11Bは、メモリーと、メモリーに記録されているプログラムを実行するマイクロプロセッサとを有し、マイクロプロセッサがプログラムを実行することによって飛行体Aに関する種々の処理を実行する。一例では、制御装置11Bはケーブル巻き取り装置21を駆動し、飛行体Aの高度(後述する目標相対高度)に応じた長さだけ係留ケーブル32を送り出す。なお、制御装置11Bは複数の装置によって構成されてもよい。例えば、制御装置11Bは、パーソナルコンピュータに実装されているCPUとメモリとで構成される制御装置と、移動体Bの駆動源(例えば、エンジン)を制御するための制御装置とで構成されてもよい。
【0037】
ベース装置UはGPS受信機22Aを有している。GPS受信機22Aは、飛行体Aに搭載されているGPS受信機12Cと同様、例えば単独測位を行う受信機である。また、より高精度な測位が可能な受信機として、DGPS(ディファレンシャルGPS)により測位を行う受信機や、RTK-GPS(リアルタイムキネマティックGPS)により測位を行う受信機が、GPS受信機22Aとしてベース装置Uに搭載されてもよい。
【0038】
ベース装置Uは、慣性計測装置(IMU)22Bを有してもよい。IMU22Bは、例えば、3軸加速度センサと3軸角速度センサと地磁気センサとを有している。IMU22Bの信号は、制御装置11Bに入力される。
【0039】
入力部25は、例えば、操縦者が飛行体Aを操縦するための装置である。制御システム1において、操縦者は入力部25を通して、移動体Bに対する飛行体Aの目標相対高度を入力できる。入力部25は、ダイヤルや、ジョイスティック、タッチパネルなどを有してもよい。また、入力部25はキーボードであってもよい。入力部25を通して入力された情報は制御装置11Bに入力されたり、通信部23を通して飛行体Aに送信される。
【0040】
表示部26はモニターであり、例えば飛行体Aのカメラ12Aで取得した画像を表示する。
【0041】
ベース装置Uは、バッテリ24を有している。バッテリ24は、飛行体Aに搭載されているバッテリ15よりも大きな電気容量を有するバッテリである。ベース装置Uは、給電ケーブル31を通してバッテリ24の電力を飛行体Aに供給する。ベース装置Uは、制御装置11Bによって制御されバッテリ24と給電ケーブル31との導通を制御するリレーを有してもよい。
【0042】
また、ベース装置Uは、発電装置29を有してもよい。発電装置29は移動体Bの駆動源であるエンジンから動力を受けて発電してよい。バッテリ24は発電装置29によって得られた電力によって充電されてよい。
【0043】
[制御装置で実行される処理]
制御装置11A・11Bが実行する処理について説明する。図5は、制御装置11A・11Bの機能を示すブロック図である。同図で示す各機能の一部は、飛行体Aに搭載されている制御装置11Aで実行され、残りの一部はベース装置Uに搭載されている制御装置11Bで実行される。例えば、相対高度算出部11b、水平相対位置算出部11d、張力判定部11e、及び飛行体制御部11fは、飛行体Aに搭載されている制御装置11Aで実行され、目標相対高度設定部11a、目標水平相対位置設定部11c、及び巻き取り装置制御部11gは、ベース装置Uに搭載されている制御装置11Bで実行されてよい。
【0044】
目標相対高度設定部11aは、移動体Bに対する飛行体Aの目標とする相対高度を設定する。相対高度は、例えば、ベース装置Uを構成する入力部25を通して操縦者によって指定される。相対高度は、例えば数メートルから数十メートルであってよい。
【0045】
相対高度算出部11bは、移動体Bに対する飛行体Aの現在の相対高度を算出する。相対高度算出部11bは、例えば、ケーブル角度センサ12Eの出力に基づいて現在の相対高度を算出する。ケーブル角度センサ12Eが、飛行体Aの垂直方向(Dz方向)に対する係留ケーブル32の角度θ1(図3B参照)に応じた信号を出力するセンサである場合、相対高度算出部11bは角度θ1を取得するとともに、IMU12Bによって検知される飛行体Aの姿勢(ピッチ角、ロール角、ヨー角)を取得する。そして、相対高度算出部11bは、角度θ1と飛行体Aの姿勢とに基づいて、鉛直方向(重力方向、図3AにおいてDv方向)と係留ケーブル32との角度θを算出する。相対高度算出部11bは、角度θと現在の係留ケーブル32の長さL(巻き取り装置21から送り出されている係留ケーブル32の長さ)とに基づいて、飛行体Aの現在の相対高度Hを算出する。
【0046】
ケーブル角度センサ12Eが係留ケーブル32の端部に取り付けられている加速度センサである場合、ケーブル角度センサ12Eは、鉛直方向(重力方向、図3AにおいてDv方向)と係留ケーブル32との角度θに応じた信号を出力する。そのため、この場合は、相対高度算出部11bは飛行体Aの姿勢を利用することなく、角度θと係留ケーブル32の長さLとに基づいて、飛行体Aの現在の相対高度Hを算出してよい。係留ケーブル32の長さLは、ケーブル巻き取り装置21の回転部の回転角に基づいて算出され得る。
【0047】
目標水平相対位置設定部11cは、移動体Bに対する飛行体Aの目標とする水平相対位置を設定する。ここで、水平相対位置とは、移動体Bと飛行体Aとを上空から見たときのそれらの相対位置である。水平相対位置は、例えば移動体Bの直上であるが、移動体Bから前方、後方、右方、又は左方にずれた位置が設定されてもよい。水平相対位置は、操縦者によって変更することができてもよいし、予め規定されていてもよい。水平相対位置が操縦者によって変更することができる場合、水平相対位置は、例えば、ベース装置Uを構成する入力部25を通して操縦者によって指定されてよい。水平相対位置が予め定められている場合、例えば水平相対位置がケーブル巻き取り装置21の直上に規定されている場合、制御装置11A・11Bは目標水平相対位置設定部11cを有していなくてもよい。移動体Bは赤外線の発光装置を有していてもよい。この場合、水平相対位置は赤外線の発光装置の直上に規定されていてもよい。
【0048】
水平相対位置算出部11dは、移動体Bに対する飛行体Aの現在の水平相対位置を算出する。水平相対位置の算出は種々の方法により行うことができる。
【0049】
水平相対位置は、例えば、図4Aで示すX-Y座標で表すことができる。図4A及び図4Bを参照しながら説明したように、ケーブル角度センサ12Eが、飛行体Aの水平面に沿った基準方向に対する係留ケーブル32の角度φ1(図4B参照)に応じた信号を出力するセンサを含んでいる場合、水平相対位置算出部11dは、角度φ1を利用して水平相対位置を算出できる。例えば、水平相対位置算出部11dは、角度φ1と、飛行体Aの向きを表す角度φ2(図4A参照)と、鉛直方向と係留ケーブル32との角度θ(図3A参照)と、IMU12Bによって検知される飛行体Aの姿勢(ピッチ角、ロール角、ヨー角)とに基づいて、移動体Bに対する係留ケーブル32の角度φ(図4A参照)を算出できる。水平相対位置算出部11dは、係留ケーブル32の角度φと係留ケーブル32の長さLとに基づいて、移動体Bに対する飛行体Aの、水平面における現在の相対位置を算出できる。
【0050】
水平相対位置の算出の他の例として、水平相対位置算出部11dは、飛行体Aに搭載されたGPS受信機12Cによって飛行体Aの水平位置(海面に沿った水平面上における飛行体Aの位置)を算出し、ベース装置Uが有しているGPS受信機22Aによって移動体Bの水平位置(海面に沿った水平面上における移動体Bの位置)を算出し、それらの差から水平相対位置を算出してもよい。さらに他の例として、移動体Bに赤外線の発光装置が搭載されている場合、飛行体Aは赤外線カメラを搭載していてよい。水平相対位置算出部11dは赤外線画像における発光装置の位置に基づいて、移動体Bに対する飛行体Aの水平相対位置を算出してもよい。
【0051】
張力判定部11eは、張力センサ12Dの出力に基づいて係留ケーブル32の張力を検知し、この張力が係留ケーブル32の張力が予め定めた閾値(上限値)より小さいか否かを判断する。張力がこの閾値(上限値)よりも大きい場合、例えば飛行体制御部11fによって飛行体Aと移動体Bとの距離を小さくする制御がなされる。また、張力判定部11eは、係留ケーブル32の張力が予め定めた閾値(下限値)より大きいか否かを判断してもよい。張力がこの閾値(下限値)よりも小さい場合、飛行体制御部11fによって、例えば飛行体Aと移動体Bとの距離を大きくする制御がなされてよい。
【0052】
飛行体制御部11fは、移動体Bに対する飛行体Aの現在の相対高度と目標相対高度の差、及び現在の水平相対位置と目標水平相対位置との差に基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出し、その指令値をロータドライバ14に出力する。ロータドライバ14から各ロータ13に指令値に応じた電流が供給される。飛行体制御部11fは、これらの差に基づいて、例えば、飛行体Aの目標ロール角、目標ピッチ角、及び目標ヨー角を算出する。そして、飛行体制御部11fは、目標ロール角、目標ピッチ角、及び目標ヨー角に基づいて上述した指令値を算出する。飛行体制御部11fは、飛行体Aのロール角、ピッチ角、及びヨー角についてPID制御を実行してよい。飛行体制御部11fのこの処理により、飛行体Aの相対高度と水平相対位置は、目標相対高度と目標水平相対位置に向けてそれぞれ変化する。
【0053】
飛行体制御部11fは、係留ケーブル32の張力が予め定めた範囲(上述した上限値と下限値とで規定される範囲)を超える場合、張力が予め定めた範囲に収まるように、飛行体Aを上昇させたり、飛行体Aを下降させたりしてよい。
【0054】
飛行体AのIMU12Bと、ベース装置UのIMU22Bは、地磁気センサを有している。飛行体制御部11fは、飛行体Aの向きが移動体Bの向き(進行方向)と一致するように、これら2つの地磁気センサの出力を利用して飛行体Aの向きを制御してよい。
【0055】
巻き取り装置制御部11gは、ケーブル巻き取り装置21を駆動することで、巻き取り装置21から送り出されている係留ケーブル32の長さLを制御する。巻き取り装置制御部11gは、飛行体Aの目標相対高度に応じた長さに係留ケーブル32の長さLを設定する。飛行体Aが移動体Bから目標相対高度に向けて上昇するとき、巻き取り装置制御部11gは、飛行体Aの現在の相対高度及び/又は係留ケーブル32の張力に応じた速度で、係留ケーブル32の長さLの長さを増してもよい。
【0056】
制御装置11A・11Bが飛行体Aの制御のために実行する処理の流れについて説明する。図6は処理の例を示すフロー図である。
【0057】
まず、目標相対高度設定部11aにおいて目標相対高度が設定される(S101)。操縦者が目標相対高度だけでなく、目標水平相対位置を調整できる制御システムには、このS101において目標水平相対位置も設定されてよい。
【0058】
次に、係留ケーブル32の張力が検知される(S102)。張力判定部11eは、検知した係留ケーブル32の張力が予め定めた下限値と上限値との間にあるか否かを判断する(S103)。係留ケーブル32の張力が下限値よりも小さい場合、飛行体制御部11fは、飛行体Aを上昇させる(S104)。また、係留ケーブル32の張力が上限値よりも大きい場合、飛行体制御部11fは、飛行体Aを下降させる(S104)。そして、制御装置11A・11Bの処理は、S109に移行する。
【0059】
係留ケーブル32の張力が予め定めた下限値と上限値との間にある場合、相対高度算出部11bは、移動体Bに対する飛行体Aの現在の相対高度を算出する(S105)。具体的には、相対高度算出部11bは、ケーブル角度センサ12Eの出力に基づいて、鉛直方向に対する係留ケーブル32の角度θ(図3A参照)を算出し、現在の係留ケーブル32の長さLと角度θとに基づいて相対高度H(図3A参照)を算出する。
【0060】
また、水平相対位置算出部11dは、移動体Bに対する飛行体Aの現在の水平相対位置を算出する(S106)。この算出には、上述したように、ケーブル角度センサ12Eの出力(角度φ1)を利用したり、GPS受信機12C・22Aを通して得られる移動体Bと飛行体Aの水平位置を利用したり、赤外線画像を利用できる。
【0061】
飛行体制御部11fは、移動体Bに対する飛行体Aの現在相対高度と目標高度の差、及び現在の水平相対位置と目標水平相対位置との差とに基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出し、指令値をロータドライバ14に出力する(S107、S108)。
【0062】
制御装置11A・11Bは、移動体Bへの飛行体Aの追従制御の終了条件が成立したか否かを判断し(S109)、終了条件が成立していなければ、S102の処理に戻る。終了条件が成立している場合、制御装置11A・11Bは追従制御(S102~S108によって行われる処理)を終了する。終了条件は、例えば、入力部25への操縦者による終了指示の入力である。追従制御が終了すると、制御装置11Bはケーブル巻き取り装置21を駆動し、係留ケーブル32を徐々に回収してもよい。
【0063】
[GPSで相対高度を制御する例]
制御装置11A・11Bは、GPS受信機12C・22Aによって検知する移動体Bと飛行体Aの位置情報(高度を含む)を利用して、飛行体Aの相対高度を制御してもよい。この場合、GPS受信機12C・22Aは、好ましくは、飛行体A及び移動体Bの高度を高い精度で検知できる受信機である。例えば、GPS受信機12C・22Aは、RTK-GPS(リアルタイムキネマティックGPS)により測位を行う受信機である。ベース装置U及び飛行体AがこのようなGPS受信機を有している場合、制御システム1は上述した張力センサ12Dとケーブル角度センサ12Eとを有していなくてもよい。他のハードウェアは、図2A及び図2Bを参照しながら説明したものと同じであってよい。
【0064】
図7Aは、このような形態における制御装置11A・11Bが実行する処理を示すブロック図である。
【0065】
移動体高度算出部11iは、GPS受信機22Aで受信したGPS信号から移動体Bの現在の高度を算出する。移動体高度算出部11iは、IMU22Bの出力を利用してもよい。例えば、GPS信号に基づく位置情報の取得頻度が飛行体Aの制御で求められる頻度よりも低い場合、移動体高度算出部11iは、GPS信号から算出した最新の高度と、IMU22Bの出力とに基づいて、移動体Bの現在の高度を算出(推定)してよい。すなわち、移動体高度算出部11iは、IMU22Bの出力を利用して、GPS信号を受信していない期間の高度を補完してよい。
【0066】
移動体位置算出部11jは、GPS受信機22Aで受信したGPS信号から移動体Bの現在の水平位置(すなわち、緯度及び経度)を算出する。移動体位置算出部11jは、IMU22Bの出力を利用してもよい。例えば、GPS信号に基づく位置情報の取得頻度が飛行体Aの制御で求められる頻度よりも低い場合、移動体位置算出部11jは、GPS信号から算出した最新の水平位置と、IMU22Bの出力とに基づいて、移動体Bの現在の水平位置を算出(推定)してよい。すなわち、移動体位置算出部11jは、IMU22Bの出力を利用して、GPS信号を受信していない期間の水平位置を補完してよい。
【0067】
飛行体目標高度算出部11kは、算出された移動体Bの現在の高度と飛行体Aの目標相対高度とに基づいて、飛行体Aの目標高度を算出する。具体的には、飛行体目標高度算出部11kは、算出された移動体Bの現在の高度に目標相対高度を加算し、得られた値を飛行体Aの目標高度としてよい。
【0068】
飛行体目標位置算出部11mは、算出された移動体Bの現在の水平位置(緯度及び経度)と、目標水平相対位置とに基づいて、飛行体Aの目標水平位置(目標緯度及び目標経度)を算出する。例えば、飛行体目標位置算出部11mは、算出された移動体Bの現在の水平位置に目標水平相対位置を加算し、得られた値を飛行体Aの目標水平位置とする。水平相対位置が移動体Bの直上に設定されている制御システムにおいては、算出された移動体Bの現在の水平位置は、飛行体Aの目標水平位置として設定されてよい。
【0069】
飛行体制御部11fは、飛行体目標高度算出部11kにおいて算出された目標高度と飛行体Aの現在の高度との差、及び飛行体目標位置算出部11mにおいて算出された目標水平位置と飛行体Aの現在の水平位置との差に基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出し、この指令値をロータドライバ14に出力する。飛行体制御部11fのこの処理により、飛行体Aの高度と水平位置は、目標高度と目標水平位置にそれぞれ近づく。
【0070】
GPS受信機を利用して相対高度を算出する制御装置11A・11B実行する処理の流れについて説明する。図7Bは処理の例を示すフロー図である。
【0071】
まず、目標相対高度設定部11a(図7A参照)において目標相対高度が設定される(S201)。操縦者が目標相対高度だけでなく、目標水平相対位置を調整できる制御システムには、このS201において目標水平相対位置も設定されてよい。
【0072】
次に、移動体高度算出部11iは、GPS受信機22Aで受信したGPS信号に基づいて移動体Bの現在の高度を算出する(S202)。移動体高度算出部11iは、IMU22Bの出力を利用して、GPS信号を受信していない期間の高度を補完してよい。また、移動体位置算出部11jは、GPS受信機22Aで受信したGPS信号に基づいて移動体Bの現在の水平位置(すなわち、緯度及び経度)を算出する(S203)。移動体位置算出部11jは、IMU22Bの出力を利用して、GPS信号を受信していない期間の位置を補完してよい。
【0073】
飛行体目標高度算出部11kは、S202において算出された移動体Bの現在高度と、S201で設定された目標相対高度とに基づいて、飛行体Aの目標高度を算出する(S204)。上述したように、飛行体目標高度算出部11kは、例えば、算出された移動体Bの現在高度に目標相対高度を加算し、得られた値を飛行体Aの目標高度とする。また、飛行体目標位置算出部11mは、算出された移動体Bの現在の水平位置(緯度及び経度)と、目標水平相対位置とに基づいて飛行体Aの目標水平位置(目標緯度及び目標経度)を算出する(S205)。上述したように、飛行体Aが移動体Bの真上に位置していることが求められる制御システムにおいては、算出(推定)された移動体Bの現在の水平位置が、飛行体Aの目標水平位置として設定されてよい。
【0074】
飛行体制御部11fは、S204で算出された目標高度と飛行体Aの現在の高度との差、及びS205で算出された目標水平位置と飛行体Aの現在の水平位置との差に基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出し、指令値をロータドライバ14に出力する(S206、S207)。
【0075】
制御装置11A・11Bは、移動体Bへの飛行体Aの追従制御の終了条件が成立したか否かを判断し(S208)、終了条件が成立していなければ、S202の処理に戻る。終了条件が成立している場合、制御装置11A・11Bは追従制御(S202~S208によって行われる処理)を終了する。終了条件は、例えば、入力部25への操縦者による終了指示の入力である。
【0076】
[カメラ画像で相対高度を制御する例]
飛行体A及びベース装置Uのうちの一方は、飛行体Aの相対高度を検知するためのカメラを有してもよい。図8Aはこのようなカメラを有している飛行体Aの例を示すブロック図である。この図に示す飛行体Aは、移動体Bの周辺を撮影するためのカメラ12Aに加えて、相対高度を検知するためのカメラ12Fを有している。カメラ12Fは移動体Bに向くように飛行体Aに設置される。例えば、水平相対位置が移動体Bの直上である場合、カメラ12Fは飛行体Aに真下に向くように設置さえてよい。カメラ12Fは、例えば可視光カメラであってよい。また、カメラ12Fは単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。相対高度算出用のカメラはベース装置Uに搭載されてもよい。この場合、カメラは飛行体Aに向くように移動体Bに設置されてよい。このようなカメラがベース装置U又は飛行体Aに搭載されている場合、図8Aで示すように、制御システム1は上述した張力センサ12Dとケーブル角度センサ12Eを有していなくてもよい。他のハードウェアは、図2A及び図2Bを参照しながら説明したものと同じであってよい。
【0077】
飛行体Aにカメラ12Fが設置される場合、相対高度算出部11b(図5参照)は、カメラ12Fで取得した画像について画像認識処理を行い、飛行体Aの相対高度を算出する。例えば、移動体Bに予め目印が設けられていてよい。相対高度算出部11bは、例えば、画像に表れている目印のサイズに基づいて、飛行体Aの相対高度を算出してよい。飛行体Aの高度が高くなるほど、画像に表れる目印のサイズが小さくなる。そのため、目印のサイズから飛行体Aの相対高度が算出され得る。目印として移動体B自体が利用されてもよい。すなわち、相対高度算出部11bは、画像に表れている移動体Bのサイズに基づいて、飛行体Aの相対高度を算出してよい。なお、カメラ12Fがベース装置Uに設けられている場合、相対高度算出部11bは、画像に表示されている飛行体Aのサイズに基づいて、飛行体Aの相対高度を算出してよい。
【0078】
水平相対位置算出部11d(図5参照)は、カメラ12Fで取得した画像を利用して、飛行体Aの水平相対位置を算出してもよい。水平相対位置算出部11dは、画像における目印の位置に基づいて、移動体Bに対する飛行体Aの水平相対位置を算出してよい。例えば、飛行体Aが移動体B(目印)の直上に位置している場合、目印は画像に中心に表れる。飛行体Aが移動体B(目印)の位置から外れると、画像に表れる目印の位置も画像の中心から外れる。これとは異なり、水平相対位置算出部11dは、カメラ12Fではなく、GPS受信機12C・22Aの出力を利用して、飛行体Aの水平相対位置を算出してもよい。
【0079】
カメラ12Fを利用して相対高度を算出する制御装置11A・11Bが実行する処理の流れについて説明する。図8Bは処理の例を示すフロー図である。
【0080】
まず、目標相対高度設定部11a(図5参照)において目標相対高度が設定される(S301)。操縦者が目標相対高度だけでなく、目標水平相対位置を調整できる制御システムには、このS301において目標水平相対位置も設定されてよい。
【0081】
相対高度算出部11bは、カメラ12Fで取得した画像について画像認識処理を行い、飛行体Aの相対高度を算出する(S302)。
【0082】
水平相対位置算出部11dは、カメラ12Fで取得した画像について画像認識処理を行い、飛行体Aの現在の水平相対位置を算出する(S303)。水平相対位置算出部11dは、S303において、GPS受信機12Cの出力から飛行体Aの水平位置を算出し、GPS受信機22Aの出力から移動体Bの水平位置を取得してもよい。そして、水平相対位置算出部11dは、移動体Bの水平位置と飛行体Aの水平位置との差から水平相対位置を算出してもよい。
【0083】
飛行体制御部11f(図5参照)は、移動体Bに対する飛行体Aの現在の相対高度(S302で算出された相対高度)と目標相対高度との差、及び現在の水平相対位置(S303で算出された水平相対位置)と目標水平相対位置との差に基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出し、指令値をロータドライバ14に出力する(S304、S305)。
【0084】
制御装置11A・11Bは、移動体Bへの飛行体Aの追従制御の終了条件が成立したか否かを判断し(S306)、終了条件が成立していなければ、S302の処理に戻る。終了条件が成立している場合、制御装置11A・11Bは追従制御(S302~S305によって行われる処理)を終了する。終了条件は、例えば、入力部25への操縦者による終了指示の入力である。
【0085】
[ケーブル張力・角度に応じて目標を補正する例]
図7A及び図7Bを参照しながら説明したように、GPS信号に基づく位置情報の取得頻度が飛行体Aの制御で求められる頻度よりも低い場合、移動体高度算出部11i及び移動体位置算出部11jは、GPS信号から算出した最新の高度及び水平位置と、IMU22Bの出力とに基づいて、移動体Bの現在の高度及び水平位置を算出(推定)する。ところが、移動体Bにあたる風や、移動体Bのアクセル操作の変化、移動体Bの方向転換などの影響、及び、GPS信号から算出される位置の精度の低さに起因して、GPS信号とIMU22Bの出力とから算出(推定)された移動体Bの現在の高度が、実際の高度からずれることがある。また、同じ理由で、GPS信号とIMU22Bの出力とから算出(推定)された移動体Bの現在の水平位置(緯度及び経度)が、実際の水平位置からずれることがある。このようなずれが生じると、飛行体Aの目標高度及び目標水平位置が正しく設定されない。
【0086】
そこで、制御装置11A・11Bは、係留ケーブル32の張力及び/又は係留ケーブル32の角度を利用して、飛行体Aの目標高度及び目標水平位置を補正してもよい。こうすることで、IMU22Bを利用して算出される高度の精度の低さ、及び水平位置の精度の低さを、係留ケーブル32で補うことができる。なお、このようなシステムにおいて利用されるGPS受信機12C・22Aは、上述したRTK-GPSにより測位を行う受信機でなく、4台以上のGPS衛星からGPS信号を利用して、GPS衛星から受信機までの距離を算出する単独測位を行う受信機(一般的なGPS受信機)であってよい。
【0087】
図9Aはこのような処理を実行する制御装置11A・11Bが有する機能を示すブロック図である。この制御装置11A・11Bは、図7Aを参照しながら説明した例と同様、目標相対高度設定部11a、移動体高度算出部11i、移動体位置算出部11j、飛行体目標高度算出部11k、及び飛行体目標位置算出部11mを有している。図9で示す制御システムにおいて、制御装置11A・11Bは、ケーブル判定部11nと、飛行体目標補正部11pとをさらに有している。
【0088】
ケーブル判定部11nは、例えば、図5を参照しながら説明した張力判定部11eと同様、張力センサ12Dの出力に基づいて係留ケーブル32の張力を検知する。そして、ケーブル判定部11nは、この張力が所定の条件に該当するか否かを判断する。例えば、ケーブル判定部11nは、この張力が予め定めた閾値(上限値)より小さいか否かを判定する。また、ケーブル判定部11nは、係留ケーブル32の張力が予め定めた閾値(下限値)より大きいか否かも判定する。
【0089】
また、ケーブル判定部11nは、ケーブル角度センサ12Eの出力を利用して係留ケーブル32の角度を算出する。ケーブル判定部11nは、この角度が所定の条件に該当するか否かを判定する。例えば、ケーブル判定部11nは、この角度が予め定めた閾値(上限値)より小さいか否かを判定する。ここで、係留ケーブル32の角度は、例えば鉛直方向に対する係留ケーブル32の角度θ(図3A参照)である。
【0090】
飛行体目標補正部11pは、ケーブル判定部11nの判定結果に応じて、飛行体目標高度算出部11kにおいて算出された目標高度を補正する。具体的には、係留ケーブル32の張力及び/又は角度が所定の条件に該当しない場合に(或いは、これらが所定の条件に該当する場合に)、飛行体目標補正部11pは、算出された目標高度を補正する。目標高度の補正は、係留ケーブル32の張力及び/又は角度に基づいて実行されてよい。
【0091】
例えば、係留ケーブル32の張力が予め定めた閾値(上限値)より大きい場合、飛行体目標補正部11pは飛行体Aの目標高度を下げてよい。こうすることで、係留ケーブル32の張力が緩和される。このとき、目標高度の補正量(下降量)は、係留ケーブル32の張力に応じて決められてよい。例えば、張力が大きくなるほど、補正量(下降量)は大きくてよい。反対に、係留ケーブル32の張力が予め定めた閾値(下限値)より小さい場合、飛行体目標補正部11pは飛行体Aの目標高度を上げてよい。このとき、目標高度の補正量(上昇量)は、係留ケーブル32の張力に応じて決められてよい。
【0092】
飛行体目標補正部11pは、ケーブル判定部11nの判定結果に応じて、飛行体目標位置算出部11mにおいて算出された目標水平位置を補正してもよい。例えば、係留ケーブル32の角度が予め定めた閾値(上限値)より大きい場合、飛行体目標補正部11pは、飛行体Aの目標水平位置を係留ケーブル32が傾斜している方向にずらしてもよい。図4A及び図4Bで示すように係留ケーブル32が飛行体Aから斜め左前方に延びている場合、飛行体目標補正部11pは、飛行体Aの目標水平位置を斜め左前方にずらしてもよい。こうすることで、係留ケーブル32の傾斜が緩和される。
【0093】
ケーブル判定部11nの判定結果に応じて飛行体Aの目標を補正する制御装置11A・11Bが実行する処理の流れについて説明する。図9Bは処理の例を示すフロー図である。
【0094】
まず、目標相対高度設定部11aにおいて目標相対高度が設定される(S401)。操縦者が目標相対高度だけでなく、目標水平相対位置を調整できる制御システムには、このS401において目標水平相対位置も設定されてよい。
【0095】
次に、移動体高度算出部11iは、GPS受信機22Aで受信したGPS信号に基づいて移動体Bの高度を算出し、GPS信号に基づく位置情報を取得していない期間の高度を、IMU22Bの出力を利用して算出する(S402)。また、移動体位置算出部11jは、GPS受信機22Aで受信したGPS信号に基づいて移動体Bの水平位置(すなわち、緯度及び経度)を算出し、GPS信号に基づく位置情報を取得していない期間の水平位置をIMU22Bの出力を利用して算出する(S403)。
【0096】
飛行体目標高度算出部11kは、S402において算出された移動体Bの現在の高度と、S401で設定された目標相対高度とに基づいて、飛行体Aの目標高度を算出する(S404)。具体的には、飛行体目標高度算出部11kは、算出された移動体Bの現在の高度に目標相対高度を加算し、得られた値を飛行体Aの目標高度としてよい。また、飛行体目標位置算出部11mは、算出された移動体Bの現在の水平位置と、目標水平相対位置とに基づいて飛行体Aの目標水平位置(すなわち、目標緯度及び目標経度)を算出する(S405)。飛行体Aが移動体Bの真上に位置していることが求められる制御システムにおいては、算出された移動体Bの現在の水平位置が、飛行体Aの目標水平位置として設定されてよい。
【0097】
ケーブル判定部11nは、張力センサ12Dの出力に基づいて係留ケーブル32の張力を検知し、この張力が予め定めた閾値(上限値)より小さいか否か判定する(S406)。また、ケーブル判定部11nは、係留ケーブル32の張力が予め定めた閾値(下限値)より大きいか否か判定する(S406)。S406において、係留ケーブル32の張力が上限値より大きい場合、或いは下限値より小さい場合、飛行体目標補正部11pは、S404で算出された飛行体Aの目標高度を補正する(S407)。具体的には、係留ケーブル32の張力が上限値より大きい場合、飛行体目標補正部11pは、例えば、S404で算出された飛行体Aの目標高度を下げてよい。また、係留ケーブル32の張力が下限値より小さい場合、飛行体目標補正部11pは、例えば、S404で算出された飛行体Aの目標高度を上げてよい。
【0098】
なお、S406において、ケーブル判定部11nは、ケーブル角度センサ12Eの出力を利用して係留ケーブル32の角度を算出し、この角度が予め定めた閾値(上限値)より小さいか否か判断してもよい。(ここでの係留ケーブル32の角度は、例えば図3Aで示す角度θである。)係留ケーブル32の角度が閾値(上限値)より大きい場合には、S407において飛行体目標補正部11pは、S405において算出された目標位置を係留ケーブル32が傾斜している方向にずらしてもよい。
【0099】
飛行体制御部11fは、飛行体Aの現在の高度と目標高度との差、及び飛行体Aの現在の水平位置と目標水平位置との差に基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出し、指令値をロータドライバ14に出力する(S408、S409)。なお、S407において目標高度が補正されている場合、S408においてはその補正後の目標高度が利用される。同様に、S407において目標水平位置が補正されている場合、S408においてはその補正後の目標水平位置が利用される。
【0100】
制御装置11A・11Bは、移動体Bへの飛行体Aの追従制御の終了条件が成立したか否かを判断し(S410)、終了条件が成立していなければ、S402の処理に戻る。終了条件が成立している場合、制御装置11A・11Bは追従制御(S402~S409によって行われる処理)を終了する。終了条件は、例えば、入力部25への操縦者による終了指示の入力である。
【0101】
[気圧高度センサを用いる例]
一般に、気圧高度センサによって検知される高度は、GPS信号から算出される高度よりも高い精度を有する。そこで、飛行体Aの高度は気圧高度センサを利用して制御されてもよい。
【0102】
図10Aは、このような気圧高度センサを有している飛行体Aとベース装置Uの例を示すブロック図である。この図に示す飛行体Aとベース装置Uは気圧高度センサ12G・22Dをそれぞれ有している。この図に示す例では、上述した張力センサ12Dとケーブル角度センサ12Eが飛行体Aに設けられていないが、これらのセンサ12D・12Eは飛行体Aに設けられていてもよい。気圧高度センサ12G・22Dが飛行体A及び移動体Bに設けられている場合、GPS受信機12C・22Aは、上述したRTK-GPSにより測位を行う受信機でなく、4台以上のGPS衛星からのGPS信号を利用して、GPS衛星から受信機まで距離を算出する単独測位を行う受信機であってよい。
【0103】
気圧高度センサが飛行体A及びベース装置Uに設けられている場合、制御装置11A・11Bの移動体高度算出部11i(図7A図9A参照)は、ベース装置Uに搭載されている気圧高度センサ22Dの出力から移動体Bの現在の高度を算出する。例えば、移動体高度算出部11iは、図7BのS202において、GPS受信機22Aの出力及びIMU22Bの出力に代えて、気圧高度センサ22Dの出力から移動体Bの現在の高度を算出する。また、移動体高度算出部11iは、図9BのS402において、GPS受信機22Aの出力及びIMU22Bの出力に代えて、気圧高度センサ22Dの出力から移動体Bの現在の高度を算出してもよい。
【0104】
飛行体目標高度算出部11k(図7A図9A参照)は、図7BのS204において、気圧高度センサ22Dの出力から算出された移動体Bの現在の高度と、目標相対高度とに基づいて、飛行体Aの目標高度を算出する。また、飛行体目標高度算出部11kは、図9BのS404において、気圧高度センサ22Dの出力から算出された移動体Bの現在の高度と、目標相対高度とに基づいて、飛行体Aの目標高度を算出する。
【0105】
飛行体制御部11f(図7A図9A参照)は、まず飛行体Aに搭載されている気圧高度センサ12Gの出力から飛行体Aの現在の高度を算出する。そして、飛行体制御部11fは、図7BのS206又は図9BのS408において、飛行体Aの現在の高度と目標高度との差、及び、飛行体Aの現在の水平位置と目標水平位置との差に基づいて、各ロータ13の角速度に応じた指令値を算出する。
【0106】
[まとめ]
(1)本開示で提案する制御システム1は、移動体Bに搭載されるベース装置Uと、無人飛行体Aと、移動体Bから飛行体Aに電力を供給するための給電ケーブル31を含みベース装置Uと飛行体Aとを接続するケーブル31・32と、飛行体Aの飛行を制御する制御装置11A・11Bとを有している。制御装置11A・11Bは、移動体Bに対する無人飛行体Aの相対高度が目標相対高度に一致するように飛行体Aを制御する。この制御システム1によれば、飛行体Aの高度を移動体Bに合わせて適切化できる。例えば、飛行体Aの高度を移動体Bの動きに合わせて上下動させることができる。
【0107】
(2)図2Aで示すように、制御システム1の一例では、飛行体Aは、係留ケーブル32の角度を検知するセンサ12Eを有している。制御装置11A・11Bは、係留ケーブル32の角度に基づいて移動体Bに対する飛行体Aの相対高度を算出している。
【0108】
(3)図2Aで示すように、制御システム1の一例では、飛行体Aは、係留ケーブル32の張力を検知するセンサ12Eを有している。制御装置11A・11Bは、係留ケーブル32の張力が閾値より低い場合に、飛行機Aとベース装置Uとの距離が大きくなるように飛行機Aを制御する。このシステムによれば、係留ケーブル32の撓みを低減でき、相対高度の算出精度を向上できる。
【0109】
(4)図5で示すように、制御システム1の一例では、制御装置11A・11Bは、移動体Bに対する飛行体Aの相対高度を算出する相対高度算出部11bを含み、算出される相対高度が目標相対高度に一致するように無人飛行体を制御している。
【0110】
(5)図8Aで示すように、制御システム1の一例では、飛行体Aは、移動体Bを撮影するためのカメラ12Fを有している。制御装置11A・11Bは、カメラ12Fを通して取得する画像を利用して移動体Bに対する飛行体あの相対高度を算出している。
【0111】
(6)制御システム1は、移動体Bに搭載されるGPS受信機22A(図2B参照)と、飛行体Aに搭載されるGPS受信機12C(図2A参照)とを有している。図7A及び図7Bで示す例では、制御装置11A・11Bは、GPS受信機22Aの出力から得られる移動体Bの高度と、GPS受信機12Cの出力から得られる飛行体Aの高度とを利用して、移動体Bに対する飛行体Aの相対高度が目標相対高度に一致するように飛行体Aを制御している。
【0112】
(7)ベース装置Uは移動体Bに搭載される慣性計測装置22Bを有している。図7A及び図7Bで示す例、並びに図9A及び図9Bで示す例では、制御装置11A・11Bは、GPS受信機22Aで取得する信号と慣性計測装置22Bの出力とに基づいて移動体Bの高度を算出してよい。これによれば、移動体Bの高度を高い精度で検知できるので、飛行体Aの制御の精度も向上できる。
【0113】
(8)図7A及び図7Bで示す例、並びに図9A及び図9Bで示す例では、制御装置11A・11Bは、GPS受信機22Aで信号を受信しない期間の高度を、慣性計測装置22Bの出力に基づいて補完している。すなわち、制御装置11A・11Bは、GPS受信機22Aで取得する第1の信号を取得する第1のタイミングと、第1の信号の次の信号である第2の信号をGPS受信機22Aで取得する第2のタイミングとの期間における移動体Bの高度を慣性計測装置22Bの出力に基づいて算出している。
【0114】
(9)図10で示す例では、移動体Bに気圧高度センサ22Dが搭載され、飛行体Aに気圧高度センサ12Gが搭載されている。制御装置11A・11Bは、移動体Bの気圧高度センサ22Dの出力から算出される移動体Bの高度と、気圧高度センサ12Gの出力から算出される飛行体Aの高度とを利用して、移動体Bに対する飛行体Aの相対高度が目標相対高度に一致するように飛行体Aを制御する。これによれば、飛行体Aの制御の精度を向上できる。
【0115】
(10)図7A及び図7Bで示す例、並びに図9A及び図9Bで示す例において、制御装置11A・11Bは、移動体Bの現在の高度を算出する移動体高度算出部11iと、移動体Bの現在の位置と目標相対高度とに基づいて飛行体Aの目標高度を算出する飛行体目標高度算出部11kとを含み、飛行体Aの現在の高度が目標高度に一致するように飛行体Aを制御する。
【0116】
(11)図9A及び図9Bで示す例において、制御装置11A・11Bは、係留ケーブル32に作用する張力が所定の条件に該当するか否か、及び/又は、係留ケーブル32の角度が所定の条件に該当するか否かを判定するケーブル判定部11nを有している。制御装置11A・11Bは、ケーブル判定部11nの判定結果に応じて飛行体Aの目標高度を補正する。これによれば、飛行体Aの高度を移動体Bの動きに、より安定的に追従させることができる。
【0117】
(12)図9A及び図9Bで示す例において、制御装置11A・11Bは、飛行体Aの目標高度を算出する飛行体目標高度算出部11kと、係留ケーブル32に作用する張力が所定の下限値より大きく、所定の上限値より小さいか否か、及び/又は係留ケーブル32の角度が所定の上限値より小さいか否かを判定するケーブル判定部11nと、ケーブル判定部11nの判定結果に応じて飛行体Aの目標高度を補正する飛行体目標補正部11pと、を有している。この例によれば、移動体Bと飛行体Aとの相対高度を適正に保つことができる。
【0118】
(13)本開示で提案する制御方法では、移動体Bに対する飛行体Aの目標相対高度が定められ、移動体Bに対する飛行体Aの相対高度が目標相対高度に一致するように飛行体Aが制御される。この制御方法によれば、飛行体Aの高度を移動体Bに合わせて適切化できる。例えば、飛行体Aの高度を移動体Bの動きに合わせて上下動させることができる。
【0119】
(14)本開示で提案する制御方法では、図9A及び図9Bで説明したように、飛行体Aの目標高度が算出され、係留ケーブル32に作用する張力が所定の条件に該当するか否か、及び/又は係留ケーブル32の角度が所定の条件に該当するか否かが判定される。そして、その判定結果に応じて、飛行体Aの目標高度が補正される。この制御方法によれば、移動体Bと飛行体Aとの相対高度を適正に保つことができる。
【0120】
なお、本開示で提案する制御システムは、上述した例に限られない。例えば、1つの例で説明した特徴的事項は、他の例において適用されてもよい。例えば、ケーブル判定部11nと飛行体目標補正部11pは、図9A及び図9Bで例示した制御システムだけでなく、図10を参照しながら説明した気圧高度センサを利用するシステムや、図8A及び図8Bを参照しながら説明したカメラ12Fを利用するシステムにおいても、用いられてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 制御システム、11A・11B 制御装置、11a 目標相対高度設定部、11b 相対高度算出部、11c 目標水平相対位置設定部、11d 水平相対位置算出部、11e 張力判定部、11f 飛行体制御部、11g 巻き取り装置制御部、11i 移動体高度算出部、11j 移動体位置算出部、11k 飛行体目標高度算出部、11m 飛行体目標位置算出部、11n ケーブル判定部、11p 飛行体目標補正部、12A カメラ、12C GPS受信機、12D 張力センサ、12E ケーブル角度センサ、12F カメラ(相対高度算出用)、12G 気圧高度センサ、13 ロータ、14 ロータドライバ、15 バッテリ、16 通信部、21 ケーブル巻き取り装置、22A GPS受信機、22B 慣性計測装置(IMU)、22D 気圧高度センサ、23 通信部、24 バッテリ、25 入力部、26 表示部、29 発電装置、30 ケーブル連結器、30a 連結部、30b・30c 支持軸、31 給電ケーブル、32 係留ケーブル、A 無人飛行体、B 移動体、C 収容箱、U ベース装置。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10