(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029830
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】チェーン伸び検出装置
(51)【国際特許分類】
B66B 29/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
B66B29/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133354
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】司馬 寛之
(72)【発明者】
【氏名】荻村 佳男
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA02
3F321EA14
3F321EB02
3F321EB08
3F321EC07
(57)【要約】
【課題】チェーンの伸び等の経年劣化を現地に赴くことなくリアルタイムで確認することが可能なチェーン伸び検出装置を提供する。
【解決手段】実施形態のチェーン伸び検出装置は、スプロケット間に掛け渡されたチェーンに対し、互いに所定距離離間した状態でチェーンに噛合する複数の検出用スプロケットと、各々の検出用スプロケットの回転状態を検出した検出信号を出力する複数のセンサと、検出信号に対応する検出用スプロケットの回転タイミングのずれに基づいてチェーンの伸びを検出する信号処理装置と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケット間に掛け渡されたチェーンに対し、互いに所定距離離間した状態で前記チェーンに噛合する複数の検出用スプロケットと、
各々の検出用スプロケットの回転状態を検出した検出信号を出力する複数のセンサと、
前記検出信号に対応する前記検出用スプロケットの回転タイミングのずれに基づいて前記チェーンの伸びを検出する信号処理装置と、
を備えたチェーン伸び検出装置。
【請求項2】
スプロケット間に掛け渡されたチェーンに対し、互いに所定距離離間した状態で前記チェーンに噛合する複数の検出用スプロケットと、
各々の検出用スプロケットの回転状態を検出した検出信号を出力する複数のセンサと、を備え、
前記検出信号を、当該検出信号に対応する前記検出用スプロケットの回転タイミングのずれに基づいて前記チェーンの伸びを検出する信号処理装置に出力する、
チェーン伸び検出装置。
【請求項3】
前記信号処理装置は、前記検出用スプロケットの回転タイミングのずれ量を、所定の基準ずれ量と比較して前記チェーンの伸び量が基準伸び量を超えたか否かを判断する、
請求項1又は請求項2に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項4】
前記チェーン伸び検出装置は、揺動可能に支持された揺動アームの先端に設けられ、自重により前記チェーンに当接して前記複数の検出用スプロケットを噛合状態とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項5】
前記揺動アームは、チェーン切れを検出する検出用スイッチを押圧するチェーン切れ検出装置を構成している、
請求項4に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項6】
前記信号処理装置は、前記チェーンの伸び量が基準伸び量を超えた場合に外部に通知する、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項7】
前記センサは、前記検出用スプロケットの回転軸と一体となって回転する検出片の回転状態を検出用スプロケットの回転状態として検出する、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項8】
前記複数の検出用スプロケットは、同一形状とされている、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のチェーン伸び検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、チェーン伸び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チェーンとスプロケットを用いた動力伝達機構はシンプルで確実性が高く、古くからオートバイや自転車等の乗り物のほか、一般機械設備等、産業界で広く使用されている。
ここではチェーンとスプロケットを動力伝達として使用しているエスカレータや動く歩道等のいわゆる乗客コンベアを例にとって説明する。
【0003】
従来、乗客コンベアでは、複数の踏段が踏段チェーンで無端状に連結されている。そして、スプロケット、駆動チェーン及び減速機を介して連結されたモータの駆動によって、踏段チェーンが駆動され、踏段が周回(循環)移動される。また、移動手すりは手すりベルト駆動チェーンによって駆動される。これらの乗客コンベアに用いられているチェーンには、使用により伸びが生じ、チェーンの張力も変動することとなる。
この結果、振動や騒音の発生、伸びが大きくなるとスプロケットとの噛み合いができなくなり伝導不良が発生、さらに放置するとチェーンの破断といった不具合に繋がることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、所定の周期で保守員が現地に赴き、チェーンの伸びや張力の確認を、ノギスや測定治具によりチェーンのリンク間の寸法を測定することにより行っていた。
したがって、人間の作業に頼るので点検を忘れたり、測定ミスや判定ミスなどのヒューマンエラーなどによって異常を見逃す虞もあった。
また、稼働中に騒音や振動の発生、あるいはチェーンの破断による設備停止などが起きると、対応する調査や修理など復旧までのダウンタイムの発生があった。
チェーンの伸びの経年劣化を事前に知ることはできず、伸びが大きくないのに点検をする必要があるなどムダの発生もあった。
【0006】
本実施形態は、チェーンの伸び等の経年劣化を自動的に測定することが可能なチェーン伸び検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のチェーン伸び検出装置は、スプロケット間に掛け渡されたチェーンに対し、互いに所定距離離間した状態でチェーンに噛合する複数の検出用スプロケットと、各々の検出用スプロケットの回転状態を検出した検出信号を出力する複数のセンサと、検出信号に対応する検出用スプロケットの回転タイミングのずれに基づいてチェーンの伸びを検出する信号処理装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るチェーン伸び検出装置が適用されたエスカレータの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、チェーン伸び検出装置及びチェーン切れ検出装置の概要構成説明図である。
【
図3】
図3は、エスカレータの制御系の概要構成ブロック図である。
【
図4】
図4は、チェーン伸び検出装置の動作原理説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例の説明図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のチェーン伸び検出装置の一例の概要構成斜視図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態のチェーン伸び検出装置の一例の概要構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は例示であり、発明の範囲がそれらに限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、実施形態に係るチェーン伸び検出装置が適用されたエスカレータの概略構成例を示す図である。
本実施形態では、無端状に連結された複数の踏段を周回(循環)移動させて動作する乗客コンベアとして、エスカレータ100を一例に挙げて説明する。
【0011】
実施形態に係るエスカレータのチェーン伸び検出装置(以下、単に、チェーン伸び検出装置と記す)107は、
図1に示すように、エスカレータ100に設置される。
エスカレータ100は、建造物(建築物ともいう)に設置されて、この建造物の一の階(以下、下階と記す)と、この下階よりも上方の他の階(以下、上階と記す)とに亘って乗客等を運搬する。
【0012】
エスカレータ100は、トラス(構造フレーム)110と、複数の踏段120と、欄干130とを備えている。トラス110の内部には、フレーム(図示省略)や、エスカレータ100の駆動機構が配設されている。
【0013】
エスカレータ100の駆動機構は、駆動源としてのモータ105と、減速機106と、駆動小スプロケット111と、駆動チェーン(チェーン)112と、駆動大スプロケット113と、従動スプロケット114と、踏段チェーン(チェーン)115とを備えている。
【0014】
モータ105は、エスカレータ100の上階側に設けられている。モータ105の出力軸には、減速機106が取り付けられている。
【0015】
駆動チェーン112は、無端状に形成され、減速機106の駆動小スプロケット111と駆動大スプロケット113とに亘って掛けられている。駆動チェーン112は、減速機106を介して伝達されたモータ105の駆動力によって、駆動大スプロケット113と減速機106の駆動小スプロケット111との周りを循環走行することで、駆動大スプロケット113を回転させる。すなわち、駆動チェーン112は、減速機106を介して伝達されたモータ105の駆動力を従動スプロケット113に伝達している。
【0016】
この駆動チェーン112の上面側には、駆動チェーン112の伸びを検出して制御盤200に通知するチェーン伸び検出装置107が、駆動チェーン112が切れたことを検出するチェーン切れ検出装置108と一体に形成されている。
このチェーン伸び検出装置107及びチェーン切れ検出装置108の構成については、後に詳述するものとする。
【0017】
エスカレータ100は、駆動大スプロケット113を駆動することで、駆動大スプロケット113と従動スプロケット114との間に掛け渡された踏段チェーン115を駆動させ、無端状に連結された複数の踏段120を周回移動させて動作する。
【0018】
エスカレータ100が下降方向に稼動する場合、上方の乗り口(上階側乗降口101)において、複数の踏段120の中で進行方向に向けて隣接する踏段120同士が水平状でトラス110内から進出される。そして、上部遷移カーブにおいて、隣接する踏段120間の段差が拡大されて、複数の踏段120は階段状に遷移される。そして、中間傾倒部において、複数の踏段120は階段状となって下降される。
【0019】
そして、下部遷移カーブにおいて、隣接する踏段120間の段差が縮小されて、複数の踏段120は水平状に遷移される。そして、下方の降り口(下階側乗降口102)において、複数の踏段120は再び水平状となってトラス110内に進入する。そして、複数の踏段120は、トラス110内に進入された後に上方に反転され、帰路側を水平状で上昇される。そして、複数の踏段120は再度反転されて、上階側乗降口101において、トラス110内から進出される。
【0020】
エスカレータ100が上昇方向に稼動する場合は、上記の逆の動作となる。
このように、上階側乗降口101、下階側乗降口102において、踏段120は、利用者を乗せる上面の踏み面を水平状として、トラス110内から進出し、またはトラス110内へ進入する。
【0021】
エスカレータ100は、複数の踏段120の進行方向における両脇に一対の欄干130を備える。欄干130は、主として、スカートガードパネル(図示省略)と、内デッキ131と、ガラス132と、手すりベルト133と、から構成されている。
【0022】
スカートガードパネルは、複数の踏段120の走行方向(エスカレータ100が稼働する下降方向および上昇方向)に対して直交する方向(幅方向)の両側において近接して、かつ、上階側乗降口101と下階側乗降口102との間に亘って設けられている。
【0023】
スカートガードパネルの上側には、内デッキ131が取り付けられている。内デッキ131の上側には、ガラス132が取り付けられている。ガラス132の外周に取り付けられた手すりレール(図示省略)には、手すりベルト133が移動可能に嵌め込まれている。エスカレータ100は、複数の踏段120の進行および進行方向に合わせて、欄干130の手すりベルト133が手すりベルト駆動チェーン(図示省略)によって周回移動するよう構成されている。
【0024】
このように、エスカレータ100には、駆動チェーン112と、踏段チェーン115と、図示しない手すりベルト駆動チェーンの3つのチェーンが使用されている。駆動チェーン112、手すりベルト駆動チェーンは、中央部を撓ませたときに、振れ幅(変形量)が基準値Xmm(例えば、数十mm)以内であれば適正と判断するという基準がそれぞれ設けられている。
【0025】
換言すれば、振れ幅が基準値Xmmより大きくなると、駆動チェーン112、手すりベルト駆動チェーンは、伸びが生じており、要調整と判断される。
一方、踏段チェーン114は、従動輪114側で常に引っ張っており、その従動輪の位置の変化により伸び量がわかる。
そこで、本実施形態においては、チェーンの伸びを自動的に計測できるようにし、伸びが所定の伸び量に至った場合に報知するようにしている。
【0026】
以下の説明においては、駆動チェーン112の伸びを検出する場合を例として説明するが、踏段チェーン115あるいは手すりベルト駆動チェーンについても同様に適用が可能である。
【0027】
さて、エスカレータ100の動作は、トラス110内に設置される制御盤(制御装置)200によって、減速機106やモータ105を制御することで実現される。
制御盤200は、物理的には、例えば、CPU、RAM、ROM等を有するコンピュータとして構成されている。
【0028】
次に、チェーン伸び検出装置107及びチェーン切れ検出装置108について詳細に説明する。
【0029】
[1]第1実施形態
図2は、チェーン伸び検出装置及びチェーン切れ検出装置の概要構成説明図である。
本第1実施形態においては、チェーン伸び検出装置107は、チェーン切れ検出装置108と、兼用で構成されている。
チェーン伸び検出装置107は、第1検出用スプロケット151と、第2検出用スプロケット152と、連結部153が設けられ、チェーン伸び検出装置107の要部を防水、防塵状態で保護するケーシング154と、を備えている。
【0030】
チェーン切れ検出装置108は、連結部153を介して、ケーシング154を揺動可能に支持する揺動アーム161と、揺動アーム161を回動可能に支持する取付部162と、駆動チェーン112が切れた場合に、回動した揺動アーム161により押圧されて駆動チェーン112が切れたことを検出する検出スイッチ163と、を備えている。
上記構成において、チェーン切れ検出装置108の取付部162は、トラス110のいずれかに固定されている。
【0031】
チェーン伸び検出装置107は、
図2に示すように、近接センサあるいは光センサ(透過型あるいは反射型)として構成され、第1検出用スプロケット151(の歯)の回転状態を検出して第1回転検出信号SS1を出力する第1センサ178と、近接センサあるいは光センサとして構成され、第2検出用スプロケット152(の歯)の回転状態を検出して第2回転検出信号SS2を出力する第2回転検出センサ179と、第1回転検出信号SS1及び第2回転検出信号SS2が入力され、第1回転パルス信号SG1及び第2回転パルス信号SG2を生成し、これらに基づいて駆動チェーン112の伸びを検出して、制御盤200に通知する信号処理装置180(
図3参照)と、を備えている。
【0032】
上記構成において、チェーン伸び検出装置107の検出信号及び検出スイッチ163の検出信号は、例えば、取付部162を介して制御盤200に出力される。
チェーン伸び検出装置は、揺動アーム161の揺動中心CCを中心として自重により、駆動チェーン112に押圧される。
【0033】
これにより、第1検出用スプロケット151は、駆動小スプロケット111と駆動大スプロケット113との間に架け渡された駆動チェーン112の第1検出位置P1において駆動チェーン112と噛合し、駆動チェーン112の動きに伴って回転される。
また、第2検出用スプロケット152は、第2検出位置P2において駆動チェーン112と噛合し、駆動チェーン112の動きに伴って回転される。
【0034】
この場合において、第1検出用スプロケット151と、第2検出用スプロケット152は、演算処理の簡略化のため、同一形状(寸法及び歯数)とされているが、これに限るものではない。
また、揺動アーム161の近傍には、チェーン切れを検出する検出スイッチ163が設けられている。したがって、万が一、駆動チェーン112が切れた場合には、チェーン伸び検出装置107がチェーン伸び検出時において駆動チェーン112に第1検出用スプロケット151及び第2検出用スプロケット152が噛合している状態よりも大きく回動(
図2の例の場合、時計回り方向に回動)することにより、検出スイッチ163がオン状態となって駆動チェーン112が切れたことを制御盤200に通知することとなる。
【0035】
図3は、エスカレータの制御系の概要構成ブロック図である。
エスカレータ100の制御盤200は、
図4に示すように、チェーン伸び検出装置107及びエスカレータ100と監視センタ300と、相互に通信により接続されている。
【0036】
そして、制御盤200は、チェーン伸び検出装置107の検出信号や駆動信号、制御信号を監視センタ300に送信する。
【0037】
制御盤200は、踏段120の移動開始、移動停止、移動速度等を制御することでエスカレータ100を駆動制御する。
制御盤200は、制御部201と、制御用記憶部202と、通信部203とを有している。
【0038】
制御部201は、チェーン伸び検出装置107の信号処理装置180から第1センサ178が出力した第1回転検出信号SS1及び第2センサ179が出力した第2回転検出信号SS2に対応する駆動チェーン112の伸びに関する検出信号を受信した場合は、制御用記憶部202にチェーン伸びに関する検出の履歴情報を記憶させる。
さらに通信部203は、監視センタ300の制御下にあり、監視センタ300は定期的に通信部203,303により制御記憶部202に保存されているデータを吸い上げる。
監視センタ300は、
図2に示すように、制御部301と、監視用記憶部302と、通信部303と、警報ユニット304と、を有している。
【0039】
制御部301は、制御盤200から受信したチェーン伸び検出装置107の検出状態に基づいて、警報ユニット304から駆動チェーン112に伸びが生じていることを報知させる制御を行ったり、監視用記憶部302にチェーン伸び検出装置107による検出履歴情報を記憶させたりする制御を行ったりする。
【0040】
監視用記憶部302は、記憶装置であり、制御部301から受信したチェーン伸び検出装置107による検出履歴情報を記憶する。
【0041】
警報ユニット304は、例えば、スピーカ、警報器、警報灯、電話やFAX、電子メールを含む通信機器などで構成される。
警報ユニット304は、監視者に、駆動チェーン112に伸びが生じていることを報知する。警報ユニット304は、制御部301からの制御信号に基づいて、例えば、スピーカや警報器から音声を出力したり、警報灯を点灯したり、通信機器を介して予め記憶されている監視者連絡先情報に基づいて報知したりする。
【0042】
上述したようにチェーン伸び検出装置107は、エスカレータ100のチェーン、上述の例では、駆動チェーン112の伸びを検出する。
図4は、チェーン伸び検出装置の動作原理説明図である。
第1検出用スプロケット151及び第2検出用スプロケット152は、駆動チェーン112に噛合しているため、第1検出用スプロケット151に対応する検出片173及び第2検出用スプロケット152に対応する検出片176も、駆動チェーン112の駆動状態に応じて回転する。
このとき、第1センサ178から出力される第1回転パルス信号SG1及び第2回転パルス信号SG2は、例えば、
図5に示すようなものとなっている。
【0043】
さて、エスカレータ100が起動され、モータ105が始動されると、モータ105の駆動力によって、駆動チェーン112が、駆動大スプロケット113と減速機106の駆動小スプロケット111との周りを循環走行を開始する。
このとき、第1検出用スプロケット151の回転は、回転軸171を介して、検出片173に伝達され、検出片173が回転駆動される。
【0044】
これにより、第1センサ178は、検出片173の回転を検出して、第1回転検出信号SS1を信号処理装置180に出力する。
【0045】
同様に第2検出用スプロケット152の回転は、回転軸174を介して、検出片176に伝達され、検出片176が回転駆動される。
これにより、第2センサ179は、検出片176の回転を検出して、第2回転検出信号SS2を信号処理装置180に出力する。
【0046】
これらの結果、信号処理装置180は、第1回転検出信号SS1に基づいて、
図5に示す第1回転パルス信号SG1を生成する。
同様に信号処理装置180は、第2回転検出信号SS2に基づいて、
図5に示す第2回転パルス信号SG2を生成する。
【0047】
これらの結果、信号処理装置180は、第1回転パルス信号SG1のパルスの立ち上がりタイミングである時刻t1と、第2回転パルス信号SG2のパルスの立ち上がりタイミングである時刻t2との時間差Δθを算出し、検出することとなる。
【0048】
ところで、第1回転パルス信号SG1におけるパルスの立ち上がりタイミングと、第2回転パルス信号SG2におけるパルスの立ち上がりタイミングとは、駆動チェーン112の伸びが大きくなるにつれて波形の立ち上がりのずれが大きくなる。
【0049】
すなわち、第1回転パルス信号SG1におけるパルスの立ち上がりタイミングと、第2回転パルス信号SG2におけるパルスの立ち上がりタイミングと、の差が所定基準時間以上となった場合には、信号処理装置180は、第1検出用スプロケット151と第2検出用スプロケット152との間に掛け渡された駆動チェーン112に、所定の基準量以上の伸びが発生していると判断することとなる。
したがって、信号処理装置は、所定基準時間に相当する時間差Δθrと、時間差Δθと、を比較することとなる。
【0050】
この比較において、時間差Δθ<時間差Δθrである場合には、信号処理装置180は、第1検出用スプロケット151と第2検出用スプロケット152との間に掛け渡された駆動チェーン112に、所定の基準量以上の伸びは発生していないと判断し、その旨を制御盤200に通知することとなる。
【0051】
これに対し、時間差Δθ≧時間差Δθrである場合には、信号処理装置180は、第1検出用スプロケット151と第2検出用スプロケット152との間に掛け渡された駆動チェーン112に、所定の基準量以上の伸びが発生していると判断し、その旨を制御盤200に通知することとなる。
【0052】
図5は、伸び検出状態の説明図である。
図5に示すように、第1検出用スプロケット151と第2検出用スプロケット152との間の距離がLであり、駆動チェーン112の伸び率がY%だとすると、第1検出用スプロケット151の駆動チェーン112に対する噛合位置と、第2検出用スプロケット152の駆動チェーン112に対する噛合位置と、のずれは、L×Yとなる。
したがって、例えば、L=400mm、Y=1%であるとすると、4mmの伸びが発生することとなる。すなわち、第1検出位置P1と第2検出位置P2が実効的に4mmずれたことを検出することなる。
【0053】
これにより制御盤200の制御部201は、チェーン伸び検出装置107からチェーン伸びに関する検出信号を受信した場合は、制御用記憶部202にチェーン伸びに関する検出の履歴情報を記憶させる制御を行う。また、制御部201は、検出信号を受信した場合は、監視センタ300に対して、チェーン伸びに関する検出状態の通知データを送信する。
【0054】
また、制御用記憶部202は、制御部201から受信したチェーン伸びに関する検出信号の検出状態を記憶する。
【0055】
以上の説明のように、第1実施形態によれば、チェーンの伸び等の経年劣化を現地に赴くことなく自動的に計測することができる。
これによりチェーンの伸びの状態を人間の作業に頼らずに正確にタイムリーに知ることができ、確実かつ省力での予防保全が可能となり、エスカレータのメンテナンス性を向上させ、メンテナンス費用の削減、信頼性の向上、ダウンタイムの削減等を図ることが可能となる。
【0056】
図6は、第1実施形態の変形例の説明図である。
以上の説明においては、チェーンの伸びを検出するために第1検出用スプロケット151と第2検出用スプロケット152を専用に設けた例を説明したが、
図7に示すようにチェーンを駆動もしくは案内するスプロケットのうちの複数のスプロケットを検出用として兼用しても、同様の効果が得られる。
【0057】
具体的には、
図6の変形例のチェーン伸び検出装置では、駆動大スプロケット113と一体に駆動される手すり駆動スプロケット401と、手すり駆動スプロケット401が駆動されることにより、手すり駆動チェーン402及び手すり従動スプロケット404を介して駆動される手すりベルト駆動ユニット403と、を備えている。
【0058】
さらに検出片としての手すり従動スプロケット404の回転状態を検出して第1回転検出信号SS1を出力する第1センサ178aと、検出片としての手すり駆動スプロケット401の回転状態を検出して第2回転検出信号SS2を出力する第2センサ179bと、を備えている。
【0059】
この第1実施形態の変形例によっても、第1実施形態と同様にチェーンの伸び等の経年劣化を現地に赴くことなく自動的に計測することができ、チェーンの伸びの状態を人間の作業に頼らずに正確にタイムリーに知ることができ、確実かつ省力での予防保全が可能となり、エスカレータのメンテナンス性を向上させ、メンテナンス費用の削減、信頼性の向上、ダウンタイムの削減等を図ることが可能となる。
【0060】
[2]第2実施形態
図7は、第2実施形態のチェーン伸び検出装置の一例の概要構成斜視図である。
チェーン伸び検出装置107は、ケーシング154に設けられた孔に嵌め込まれてシーリング状態で第1検出用スプロケット151の回転軸171を摺動可能に接触して第1検出用スプロケット151を支持する第1接触シールベアリング172と、第1検出用スプロケット151の回転軸171の一端に設けられた回転検出用の検出片173と、近接センサあるいは光センサ(透過型あるいは反射型)として構成され、検出片173の回転状態を検出して第1回転検出信号SS1を出力する第1センサ178と、を備えている。
【0061】
また、チェーン伸び検出装置107は、ケーシング154に設けられた孔に嵌め込まれてシーリング状態で第2検出用スプロケット152の回転軸174に接触して第2検出用スプロケット152を支持する第2接触シールベアリング175と、第2検出用スプロケット152の回転軸174の一端に設けられた回転検出用の検出片176と、近接センサあるいは光センサとして構成され、検出片176の回転状態を検出して第2回転検出信号SS2を出力する第2回転検出センサ179と、第1回転検出信号SS1及び第2回転検出信号SS2が入力され、第1回転パルス信号SG1及び第2回転パルス信号SG2を生成し、これらに基づいて駆動チェーン112の伸びを検出して、制御盤200に通知する信号処理装置180と、を備えている。
【0062】
上述したようにチェーン伸び検出装置107は、エスカレータ100のチェーン、上述の例では、駆動チェーン112の伸びを検出する。
ここで、再び
図4を参照して第2実施形態の動作を説明する。
第1検出用スプロケット151及び第2検出用スプロケット152は、駆動チェーン112に噛合しているため、第1検出用スプロケット151に対応する検出片173及び第2検出用スプロケット152に対応する検出片176も、駆動チェーン112の駆動状態に応じて回転する。
このとき、第1センサ178から出力される第1回転パルス信号SG1及び第2回転パルス信号SG2は、例えば、
図4に示したようなものとなっている。
【0063】
さて、エスカレータ100が起動され、モータ105が始動されると、モータ105の駆動力によって、駆動チェーン112が、駆動大スプロケット113と減速機106の駆動小スプロケット111との周りを循環走行を開始する。
このとき、第1検出用スプロケット151の回転は、回転軸171を介して、検出片173に伝達され、検出片173が回転駆動される。
【0064】
これにより、第1センサ178は、検出片173の回転を検出して、第1回転検出信号SS1を信号処理装置180に出力する。
【0065】
同様に第2検出用スプロケット152の回転は、回転軸174を介して、検出片176に伝達され、検出片176が回転駆動される。
これにより、第2センサ179は、検出片176の回転を検出して、第2回転検出信号SS2を信号処理装置180に出力する。
【0066】
これらの結果、信号処理装置180は、第1回転検出信号SS1に基づいて、
図5に示す第1回転パルス信号SG1を生成する。
同様に信号処理装置180は、第2回転検出信号SS2に基づいて、
図5に示す第2回転パルス信号SG2を生成する。
【0067】
これらの結果、信号処理装置180は、第1回転パルス信号SG1のパルスの立ち上がりタイミングである時刻t1と、第2回転パルス信号SG2のパルスの立ち上がりタイミングである時刻t2との時間差Δθを算出し、検出することとなる。
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、スプロケットと連動し回転する検出片の歯を読み取るようにしてスプロケットの歯につく汚れや油などの影響を受けずにチェーンの伸び等の経年劣化を現地に赴くことなく自動的に計測することができる。
したがって、さらにエスカレータのメンテナンス性を向上させ、メンテナンス費用の削減、信頼性の向上、ダウンタイムの削減等を図ることが可能となる。
【0068】
[3]第3実施形態
図8は、第3実施形態のチェーン伸び検出装置の一例の概要構成斜視図である。
図8において、
図7の第2実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
図8の第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、ケーシング154に代えて、第1検出用スプロケット151及び第2検出用スプロケット152を保護するためのプロテクトカバー159を設けた点と、第1検出用スプロケット151の回転軸171及び検出片173を防水、防塵状態で保護する防水ボックス185-1並びに第2検出用スプロケット152の回転軸174及び検出片176を防水、防塵状態で保護する防水ボックス185-2を設けた点と、信号処理装置180Aを別途設け、他のチェーン(例えば、踏み段チェーン、手すりチェーン等)に設けたセンサ181-1、181-2の出力信号についてもまとめて処理するようにした点である。
【0069】
第3実施形態のチェーン伸び検出装置107によれば、第1実施形態と同様の効果を得られるとともに、第1検出用スプロケット151及び第2検出用スプロケット152を保護しつつ、複数のセンサ(第1センサ178、第2センサ179、センサ181-1、センサ181-2)の処理を一つの信号処理装置180Aによって処理することが可能となり、メンテナンス性を向上させつつ、容易にシステム拡張が可能となる。
【0070】
[4]第4実施形態
【0071】
図9は、第4実施形態の説明図である。
図9において、
図7の第2実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
図9(A)は、伸び検出装置の正面図、
図9(B)は、伸び検出装置の側面図である。
図9の第4実施形態が第2実施形態と異なる点は、第1検出用スプロケット151と第2検出用スプロケット152とに対し、対向する位置、かつ、駆動チェーン112に当接する位置に、バウンド/たるみ防止板190を設けた点である。
このバウンド/たるみ防止板190によれば、振動等によりチェーン伸び検出装置107がバウンドし、駆動チェーン112に対する第1検出用スプロケット151及び第2検出用スプロケット152の噛合状態が解除されてチェーン伸びの状態を検出できなくなったり、駆動チェーン112がたるんで正しい計測が行えなくなるのを防止したりすることができる。
【0072】
すなわち、本第4実施形態によれば、一時的な外力(例えば、振動)による影響や、経年劣化(例えば、駆動チェーンのたるみ)による影響を排除して、より長期にわたって、正確にチェーン伸びを検出することが可能となる。
【0073】
[4]実施形態の変形例
上記実施形態においては、駆動チェーン112の伸びを検出する場合について説明したが、チェーン伸び検出装置107は、踏段チェーン115や手すりベルト駆動チェーンの伸びを検出することも可能である。これにより、チェーン伸び検出装置107によって、エスカレータ100に配設されている各種チェーンの伸びを正確に検出することができる。
【0074】
また、上記実施形態おいては、チェーン伸び検出装置は、検出対象のチェーン(上述の例では、駆動チェーン112)に噛合する一対の検出用スプロケットを設ける場合について説明したが、3個以上の検出用スプロケットを設けるように構成することも可能である。
この結果、チェーン伸び検出装置の冗長性を確保し、検出の信頼性の向上を図ることができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、無端状に連結された複数の踏段120が周回移動するよう動作する乗客コンベアの一例としてエスカレータ100を挙げて説明したが、本実施形態は、エスカレータ100に限らず、動く歩道など他のタイプの乗客コンベアや、チェーンを使用する産業用設備、機器等にも広く適用することができる。
【0076】
上記実施形態や変形例は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、組み合わせが可能である。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態や変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
100…エスカレータ、107…チェーン伸び検出装置、108…チェーン切れ検出装置、110…トラス、111…駆動小スプロケット、112…駆動チェーン、113…駆動大スプロケット、115…踏段チェーン、120…踏段、151…第1検出用スプロケット、152…第2検出用スプロケット、153…連結部、154…ケーシング、159…プロテクトカバー、161…揺動アーム、162…ベース部、163…検出スイッチ、171…回転軸、172…第1接触シールベアリング、173…検出片、174…回転軸、175…第2接触シールベアリング、176…検出片、178…第1センサ、179…第2回転検出センサ、179…第2センサ、180、180A…信号処理装置、181…センサ、185…防水ボックス、190…防止板、200…制御盤、CC…揺動中心、P1…第1検出位置、P2…第2検出位置、SG1…第1回転パルス信号、SG2…第2回転パルス信号、SS1…第1回転検出信号、SS2…第2回転検出信号。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケット間に掛け渡されたチェーンに対し、互いに所定距離離間した状態で前記チェーンに噛合する複数の検出用スプロケットと、
各々の検出用スプロケットの回転状態を検出した検出信号を出力する複数のセンサと、
前記検出信号に対応する前記検出用スプロケットの回転タイミングのずれに基づいて前記チェーンの伸びを検出する信号処理装置と、を備え、
当該チェーン伸び検出装置は、揺動可能に支持された揺動アームの先端に設けられ、自重により前記チェーンに当接して前記複数の検出用スプロケットを噛合状態とする、
チェーン伸び検出装置。
【請求項2】
前記揺動アームは、チェーン切れを検出する検出用スイッチを押圧するチェーン切れ検出装置を構成している、
請求項1に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項3】
前記信号処理装置は、前記チェーンの伸び量が基準伸び量を超えた場合に外部に通知する、
請求項1又は請求項2に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項4】
前記センサは、前記検出用スプロケットの回転軸と一体となって回転する検出片の回転状態を検出用スプロケットの回転状態として検出する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のチェーン伸び検出装置。
【請求項5】
前記複数の検出用スプロケットは、同一形状とされている、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のチェーン伸び検出装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
実施形態のチェーン伸び検出装置は、スプロケット間に掛け渡されたチェーンに対し、互いに所定距離離間した状態でチェーンに噛合する複数の検出用スプロケットと、各々の検出用スプロケットの回転状態を検出した検出信号を出力する複数のセンサと、検出信号に対応する検出用スプロケットの回転タイミングのずれに基づいてチェーンの伸びを検出する信号処理装置と、を備え、当該チェーン伸び検出装置は、揺動可能に支持された揺動アームの先端に設けられ、自重によりチェーンに当接して複数の検出用スプロケットを噛合状態とする。