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特開2022-29851モノリス基材、モノリス基材の製造方法、及びモノリス基材を用いた排ガス浄化触媒
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  • 特開-モノリス基材、モノリス基材の製造方法、及びモノリス基材を用いた排ガス浄化触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029851
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】モノリス基材、モノリス基材の製造方法、及びモノリス基材を用いた排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/119 20060101AFI20220210BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220210BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220210BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220210BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220210BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20220210BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220210BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C04B35/119
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J35/10 301J
B01J35/04 301M
B01J35/04 301P
B01J23/58 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133395
(22)【出願日】2020-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣花 大
(72)【発明者】
【氏名】砂田 智章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
(72)【発明者】
【氏名】今村 豪
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真之助
(72)【発明者】
【氏名】植村 公一
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB03
3G091BA01
3G091FA01
3G091FB02
3G091GA06
3G091GB04W
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB10W
3G091GB17X
4D148AA06
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4G169AA08
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4G169BC16B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC40B
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC69A
4G169BC71B
4G169BC72B
4G169CA02
4G169CA03
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4G169EA02X
4G169EA19
4G169EC02X
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4G169EC04X
4G169EC05X
4G169EC22X
4G169FA02
4G169FB04
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB66
4G169FC05
4G169FC08
4G169FC10
(57)【要約】
【課題】浄化性能を向上するための排ガス浄化触媒用モノリス基材、当該モノリス基材の製造方法、及び当該モノリス基材を用いた排ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物とアルミナとを含むモノリス基材、当該モノリス基材の製造方法、及び当該モノリス基材を用いた排ガス浄化触媒に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物とアルミナとを含むモノリス基材。
【請求項2】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量がモノリス基材全重量に対して8重量%~60重量%である、請求項1に記載のモノリス基材。
【請求項3】
アルミナの含有量がモノリス基材全重量に対して40重量%以上である、請求項1又は2に記載のモノリス基材。
【請求項4】
セリア-ジルコニア複合酸化物をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のモノリス基材。
【請求項5】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ))のアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ+CZ))に対する重量比(CeO(ACZ)/CeO(ACZ+CZ))が0.1以上である、請求項4に記載のモノリス基材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のモノリス基材の製造方法であって、
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子と、アルミナ粒子と、アルミナバインダーと、溶媒とを混合して混合物を調製するステップ、
調製した混合物を成形してモノリス基材成形体を調製するステップ、及び
調製したモノリス基材成形体を乾燥及び焼成してモノリス基材を製造するステップ
を含む方法。
【請求項7】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径が、30nm以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子のBET比表面積が、30m/g以上である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
アルミナ粒子のBET比表面積が、40m/g~200m/gである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載のモノリス基材と、貴金属粒子とを含む排ガス浄化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノリス基材、モノリス基材の製造方法、及びモノリス基材を用いた排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、未燃の炭化水素(HC)などの有害ガスが含まれている。そのような有害ガスを分解する排ガス浄化触媒は三元触媒とも称され、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス基材に触媒活性を有する貴金属粒子を含むスラリーをウォッシュコートして触媒層を設けたものが一般的である。そのような触媒の性能を向上させるための試みはこれまで種々行われてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、担体の表面に触媒成分を直接担持してなる触媒体であって、前記担体内の元素及び細孔のうちの少なくとも一方に対して前記触媒成分が直接担持されており、かつ密度汎関数法を用いたシミュレーションによる前記担体内の元素又は細孔と前記触媒成分の担持強度が5eVより大きいことを特徴とする触媒体が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ハニカム基材に触媒担体と触媒成分が担持されてなる排気ガス浄化用触媒であって、前記触媒担体と前記触媒成分のそれぞれ少なくとも90重量%が、前記ハニカム基材のセル壁の気孔内に配置されたことを特徴とする流通式の排気ガス浄化用触媒が記載されている。
【0005】
特許文献3には、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、主触媒成分及び助触媒成分を担持してなるセラミック触媒体であって、前記基材セラミックが多数の気孔を有する構造であり、これら気孔の内表面を含む前記基材セラミック表面に、前記主触媒成分及び前記助触媒成分が直接担持されていることを特徴とするセラミック触媒体が記載されている。
【0006】
特許文献4には、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子とθ相のアルミナ粒子とを含み、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子の含有量が全体重量に対して25重量%以上であるモノリス基材に貴金属粒子が担持された排ガス浄化触媒が記載されている。
【0007】
特許文献5には、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム構造体に貴金属が担持されてなるハニカム触媒の製造方法であって、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子、アルミナ粒子及び無機バインダーを混合して原料ペーストを調製する混合工程と、前記原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された押出成形体を得る押出成形工程と、前記押出成形体を焼成する焼成工程と、を含み、前記セリア-ジルコニア複合酸化物粒子のDCZ50が1.5~5.0μm、かつ、粒度分布の標準偏差σCZが2以下であり、前記アルミナ粒子のDAO50が1.5~5.0μm、かつ、粒度分布の標準偏差σAOが2以下であることを特徴とするハニカム触媒の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-236381号公報
【特許文献2】特開2003-170043号公報
【特許文献3】特開2004-066069号公報
【特許文献4】特開2015-085241号公報
【特許文献5】特開2019-063683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~5に記載されるような、ハニカム状のモノリス基材に貴金属粒子(場合により、貴金属粒子は担体に担持されている)を担持させた排ガス浄化触媒は、圧力損失を低く維持したまま暖機性能を高めることができるものの、その排ガスの浄化性能には改善の余地があった。
【0010】
以上の観点から、本発明は、浄化性能、特にHCの浄化性能を向上するための排ガス浄化触媒用モノリス基材、当該モノリス基材の製造方法、及び当該モノリス基材を用いた排ガス浄化触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特許文献1~5に記載されるような排ガス浄化触媒に用いられるモノリス基材には、酸素吸放出性能を有する材料としてセリア(CeO)-ジルコニア(ZrO)複合酸化物が使用され得る。
【0012】
そこで、本発明者らは、前記したような問題を検討した結果、モノリス基材の材料として、セリア-ジルコニア複合酸化物に代えて、セリア-ジルコニア複合酸化物より酸素吸放出速度が速いアルミナ(Al)-セリア(CeO)-ジルコニア(ZrO)複合酸化物を用いることにより、前記課題を解決したモノリス基材及び排ガス浄化触媒が提供可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物とアルミナとを含むモノリス基材。
(2)アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量がモノリス基材全重量に対して8重量%~60重量%である、(1)に記載のモノリス基材。
(3)アルミナの含有量がモノリス基材全重量に対して40重量%以上である、(1)又は(2)に記載のモノリス基材。
(4)セリア-ジルコニア複合酸化物をさらに含む、(1)~(3)のいずれか1つに記載のモノリス基材。
(5)アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ))のアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ+CZ))に対する重量比(CeO(ACZ)/CeO(ACZ+CZ))が0.1以上である、(4)に記載のモノリス基材。
(6)(1)~(5)のいずれか1つに記載のモノリス基材の製造方法であって、
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子と、アルミナ粒子と、アルミナバインダーと、溶媒とを混合して混合物を調製するステップ、
調製した混合物を成形してモノリス基材成形体を調製するステップ、及び
調製したモノリス基材成形体を乾燥及び焼成してモノリス基材を製造するステップ
を含む方法。
(7)アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径が、30nm以下である、(6)に記載の方法。
(8)アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物粒子のBET比表面積が、30m/g以上である、(6)又は(7)に記載の方法。
(9)アルミナ粒子のBET比表面積が、40m/g~200m/gである、(6)~(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10)(1)~(5)のいずれか1つに記載のモノリス基材と、貴金属粒子とを含む排ガス浄化触媒。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浄化性能、特にHCの浄化性能を向上するための排ガス浄化触媒用モノリス基材、当該モノリス基材の製造方法、及び当該モノリス基材を用いた排ガス浄化触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】比較例1及び実施例1~4の排ガス浄化触媒における、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ))のアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ+CZ))に対する重量比(CeO(ACZ)/CeO(ACZ+CZ))と出ガスHC規格化濃度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明のモノリス基材、当該モノリス基材の製造方法、及び当該モノリス基材を用いた排ガス浄化触媒は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
【0017】
本発明は、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物とアルミナとを含むモノリス基材、当該モノリス基材の製造方法、及び当該モノリス基材を用いた排ガス浄化触媒に関する。
【0018】
ここで、モノリス基材は、例えば、公知のハニカム形状を有するモノリス基材(例えば、ハニカム構造体、ハニカムフィルタ、高密度ハニカムなど)である。
【0019】
本発明のモノリス基材は、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を含む。
【0020】
自動車などの内燃機関では、空気と燃料との混合の比率である空燃比(A/F)は、運転状況に応じて変動し得る。例えば、自動車は、燃費を向上させ、有害ガスを少なくしたいときには、空気の比率を大きくした空燃比、すなわちリーンの状態において運転され、大きな出力を必要とするとき、例えば発進時や加速時には、燃料の比率を大きくした空燃比、すなわちリッチの状態で運転される。
【0021】
このように空燃比が変動する内燃機関では、そこから排出される排ガスの組成もまた変動し得る。したがって、組成が変動し得る排ガスであっても、十分に浄化することができる排ガス浄化触媒が望まれる。
【0022】
モノリス基材が、セリア-ジルコニア複合酸化物に代えて、セリア-ジルコニア複合酸化物より酸素吸放出速度が速いアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を含むことで、モノリス基材は、空燃比が変動する条件(A/F過渡条件)、特に空燃比が小さい変動幅で変動する条件、すなわち排ガスの濃度変化が小さい条件であっても、酸素吸放出を迅速に行って酸素濃度を一定に保つことができ、したがって、モノリス基材に貴金属粒子を担持させることで製造された排ガス浄化触媒は、高いストイキ保持能力を有し、高い排ガス浄化性能、特にHCの浄化性能を有することができる。
【0023】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子からなる。
【0024】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物では、アルミナ中にセリア及びジルコニアが分散しており、セリア及びジルコニアの一部は、セリア-ジルコニア固溶体を形成している。なお、セリア及びジルコニアがセリア-ジルコニア固溶体を形成していることは、例えば粉末X線回折(XRD)により確認することができる。
【0025】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成は、モル比で、通常Ce:Zr=1:5~3:1であり、通常Al:(Ce+Zr)=1:1~1:10である。なお、本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成は、モノリス基材製造時の材料としてのアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成に依存する。
【0026】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の組成を前記範囲にすることで、アルミナによる粒子成長の抑制(耐熱性向上、比表面積の確保)、セリアによる酸素吸放出性能(OSC)の確保、ジルコニアによるセリアの安定化作用の確保の効果を十分に得ることができる。
【0027】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素から選択される1種以上の元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが挙げられる。希土類元素としては、Y及びLaが好ましい。希土類元素の含有量は、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物全重量に対して、酸化物として、通常1重量%~20重量%である。
【0028】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物が希土類元素を含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の耐熱性を向上させたり、OSCを向上させたりすることができる。
【0029】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、モノリス基材全重量に対して、通常8重量%~60重量%、好ましくは20重量%~50重量%である。なお、本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、モノリス基材製造時の材料としてのアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の添加量に依存する。
【0030】
モノリス基材におけるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量が前記範囲になることで、モノリス基材は、空燃比が変動する条件、特に空燃比が小さい変動幅で変動する条件、すなわち、排ガスの濃度変化が小さい条件であっても、酸素吸放出を迅速に行って酸素濃度を一定に保つことができ、したがって、モノリス基材に貴金属粒子を担持させることで製造された排ガス浄化触媒は、より高いストイキ保持能力を有し、より高い排ガス浄化性能、特にHCの浄化性能を有することができる。
【0031】
本発明のモノリス基材は、アルミナを含む。
【0032】
ここで、本発明のモノリス基材に含まれるアルミナは、アルミナの粒子を含む。
【0033】
モノリス基材がアルミナの粒子を含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物よりも耐熱性が高いアルミナの粒子が貴金属の担持場としての機能を果たし、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0034】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナは、アルミナの粒子の他に、モノリス基材製造時に添加され得るアルミナバインダー及び/又はアルミナ-ファイバー由来のアルミナのアモルファス(無定形物)及び/又は繊維を含んでもよい。
【0035】
モノリス基材がアルミナのアモルファス及び/又は繊維を含むことで、アルミナが酸化物粒子同士の結合剤及び/又はモノリス基材のモノリス構造の補強材としての役割を果たし、触媒の物理的安定性を向上させることができる。
【0036】
本発明のモノリス基材に含まれるアルミナの含有量は、モノリス基材全重量に対して、通常40重量%以上、好ましくは45重量%~60重量%である。なお、本発明のモノリス基材に含まれるアルミナの含有量は、モノリス基材製造時の材料としてのアルミナの粒子、アルミナバインダー及びアルミナファイバーの添加量に依存する。
【0037】
モノリス基材におけるアルミナの含有量が前記範囲になることで、前記に示すように、アルミナが貴金属の担持場を十分確保することで十分な耐久性を確保できる。
【0038】
本発明のモノリス基材は、セリア-ジルコニア複合酸化物をさらに含んでもよい。
【0039】
本発明のモノリス基材に含まれ得るセリア-ジルコニア複合酸化物は、セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子からなる。
【0040】
モノリス基材がセリア-ジルコニア複合酸化物を含むことで、十分なOSCを確保することができる。
【0041】
本発明のモノリス基材に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物は、セリアを15重量%以上、特に20重量%以上の量で含むことが好ましく、さらに70重量%以下、特に60重量%以下の量で含むことが好ましい。また、セリア-ジルコニア複合酸化物は、ジルコニアを80重量%以下、特に70重量%以下の量で含むことが好ましい。そのようなセリア-ジルコニア複合酸化物は熱容量が小さいため、モノリス基材の温度を上昇しやすくし、以って触媒の暖機性能を向上させることができる。なお、本発明のモノリス基材に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物の組成は、モノリス基材製造時の材料としてのセリア-ジルコニア複合酸化物の組成に依存する。
【0042】
本発明のモノリス基材に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素から選択される1種以上の元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが挙げられる。希土類元素としては、Y及びLaが好ましい。希土類元素の含有量は、セリア-ジルコニア複合酸化物全重量に対して、酸化物として、通常5重量%~25重量%である。
【0043】
セリア-ジルコニア複合酸化物が希土類元素を含むことにより、セリア-ジルコニア複合酸化物の耐熱性を向上させたり、OSCを向上させたりすることができる。
【0044】
本発明のモノリス基材に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、存在する場合、モノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ))のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア(CeO(ACZ+CZ))に対する重量比(CeO(ACZ)/CeO(ACZ+CZ))が、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.5以上になるように調整される。なお、当該重量比の上限値は、本発明のモノリス基材がセリア-ジルコニア複合酸化物を含まなくてもよいため限定されない。なお、本発明のモノリス基材に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物の含有量は、モノリス基材製造時の材料としてのセリア-ジルコニア複合酸化物の添加量に依存する。
【0045】
セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量をアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の含有量に基づいて前記範囲に設定することで、モノリス基材は、空燃比が変動する条件、特に空燃比が小さい変動幅で変動する条件、すなわち、排ガスの濃度変化が小さい条件であっても、酸素吸放出を迅速に行って酸素濃度を一定に保つことができ、したがって、モノリス基材に貴金属粒子を担持させることで製造された排ガス浄化触媒は、より高いストイキ保持能力を有し、より高い排ガス浄化性能、特にHCの浄化性能を有することができる。
【0046】
本発明のモノリス基材は、材料として下記で説明するアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物、アルミナ、及び場合によりセリア-ジルコニア複合酸化物を使用する点は異なるものの、従来のコージェライト基材と同様の手順により製造することができる。例えば、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子とアルミナの粒子の混合物に溶媒としての水とバインダー、例えばアルミナバインダー及び/又はアルミナファイバーを加え、混錬した後に押し出し機などにより成形し、例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機などを用いて乾燥後、例えば通常900℃~1200℃で通常1時間~24時間焼成することにより製造することができる。
【0047】
本発明のモノリス基材の製造に使用する材料において、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物としては、当該技術分野において公知のもの、例えば、特開平10-202102号公報、特開2001-232199号公報に記載されているものであってよい。
【0048】
例えば、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、アルコキシド法又は共沈法によって調製することができる。アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物をアルコキシド法又は共沈法で調製することにより、均一で微細な一次粒子からなる複合酸化物を調製することができ、かつセリア-ジルコニア固溶体を含む複合酸化物を容易に調製することができる。
【0049】
アルコキシド法では、例えばアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素のすべての金属アルコキシドを混合し、加水分解後に焼成することによりアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を調製することができる。またアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素の全部を金属アルコキシドとして用いなくても、その少なくとも一種を金属アルコキシドとして用いれば、残りの金属は硝酸塩やアセチルアセテート塩などの溶液として用いることもできる。
【0050】
この金属アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、ブトキシドなどのいずれでもよいが、溶媒であるアルコールに対する溶解度が高いものが好ましい。なお、溶媒であるアルコールに関しても任意のものを使用できる。
【0051】
共沈法では、例えばアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素のすべての金属の硝酸塩などの水溶性の塩を混合し、アンモニア水などで水酸化物として共沈させ、それを焼成することによりアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を調製することができる。またアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素の全部を水溶性の塩として用いずとも、その少なくとも一種を水溶性の塩として用いれば、残りの金属を金属粉末又は酸化物粉末などの固体として用いることもできる。
【0052】
このようにして得られたアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、予め通常500℃~900℃で熱処理することが好ましい。アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物を予め熱処理することにより、粒子の過度の結晶成長を抑えつつ、耐久後のOSCの低下を一層抑制することができる。
【0053】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子は、微細であることが好ましく、その結晶子径は、通常30nm以下、好ましくは5nm~20nmである。なお、セリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径は、例えば、XRDの半価幅で測定することができる。
【0054】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の結晶子径を前記範囲にすることで、セリアによるOSCの確保の効果を十分に得ることができる。
【0055】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物のBET比表面積は、通常30m/g以上、好ましくは40m/g~80m/gである。
【0056】
アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物のBET比表面積を前記範囲にすることで、セリアによるOSCの確保の効果を十分に得ることができる。
【0057】
本発明のモノリス基材の製造に使用する材料において、アルミナとしては、アルミナの粒子、アルミナバインダー、アルミナファイバーなどを使用することができる。
【0058】
アルミナの粒子は、当該技術分野において一般に触媒担体として市販されているものを使用することができる。
【0059】
アルミナとしてアルミナの粒子を使用することで、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物よりも耐熱性が高いアルミナの粒子が、貴金属の担持場としての機能を果たし、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0060】
アルミナの粒子は、限定されないが、α相のアルミナ粒子、θ相のアルミナ粒子、δ相のアルミナ粒子などを含む。アルミナの粒子は、θ相のアルミナ粒子やδ相のアルミナ粒子が好ましい。なお、アルミナの粒子の結晶構造は、例えば粉末X線回折(XRD)により確認することができる。
【0061】
アルミナの粒子が一般に表面積が高いθ相のアルミナ粒子やδ相のアルミナ粒子であることで、本発明のモノリス基材に配合された後でも表面積を高く維持することができ、貴金属の劣化を抑制することができる。
【0062】
アルミナの粒子のBET比表面積は、通常40m/g~200m/g、好ましくは50m/g~150m/gである。
【0063】
アルミナの粒子のBET比表面積を前記範囲にすることで、アルミナの粒子が金属の担持場としての機能を果たし、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0064】
アルミナバインダー及びアルミナファイバーは、当該技術分野において一般に市販されているものを使用することができる。
【0065】
アルミナとしてアルミナバインダーを使用することで、アルミナバインダーが酸化物粒子同士の結合剤としての役割を果たし、モノリス基材の物理的安定性を向上させることができる。さらに、アルミナとしてアルミナファイバーを使用することで、アルミナファイバーがモノリス基材のモノリス構造の補強材としての役割を果たし、モノリス基材の物理的安定性を向上させることができる。
【0066】
本発明のモノリス基材の製造に使用する材料において、セリア-ジルコニア複合酸化物は、従来排ガス浄化触媒において助触媒(酸素貯蔵材)として用いられている材料であり、その詳細は当業者には公知である。セリア-ジルコニア複合酸化物は、好ましくはセリアとジルコニアが固溶体を形成している。セリア-ジルコニア複合酸化物は、アルコキシド法又は共沈法で調製することができ、共沈法であれば、例えばセリウム塩(硝酸セリウムなど)とジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウムなど)を溶解させた水溶液に、アンモニア水を加えて共沈殿を生成させ、得られた沈殿物を乾燥させた後に通常400℃~500℃で通常5時間程度焼成することにより調製することができる。
【0067】
なお、アルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物は、セリア-ジルコニア複合酸化物と比較して、モノリス基材の焼成温度のような高い温度の環境下でも、粒子(結晶)成長しにくい。したがって、製造後のモノリス基材のアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子は、モノリス基材の製造時における焼成による粒子(結晶)成長を考慮したとしても、モノリス基材の材料として使用されたアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子の粒径と同等から少し大きい粒径を有する。したがって、このようにして得られた本発明のモノリス基材に含まれるアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子は、製造後であっても小さな粒径、すなわち大きな比表面積を有し、高いOSCを有することができる。
【0068】
本発明のモノリス基材を用いて製造される排ガス浄化触媒は、本発明のモノリス基材に貴金属粒子が担持されている構造を有する。貴金属粒子は、好ましくは白金族金属、特にPt、Rh及びPdから選択される1種以上の金属である。貴金属粒子のモノリス基材への担持は、従来のように助触媒(酸素貯蔵材)や担体、バインダーなどと共に混合してスラリーを調製し、それをモノリス基材にウォッシュコートすることにより行ってもよいが、本発明のモノリス基材はそれ自体が助触媒や担体の機能を有するため、貴金属粒子を直接担持させても高い浄化性能が期待できる。特にCold-HC低減には三元触媒の低熱容量化が効果的であるため、ウォッシュコートを無くすことにより触媒を低熱容量化することができ、より高いHC浄化性能が望める。なお、貴金属は、硝酸パラジウムや塩化ロジウムなどの一般的な試薬を用いて担持することができる。
【0069】
本発明の排ガス浄化触媒は、空燃比が変動する条件、特に空燃比が小さい変動幅で変動する条件、例えば空燃比が14.6±0.2(14.4~14.8)の間で変動する条件であっても、排ガス浄化触媒に含まれるモノリス基材が酸素吸放出を迅速に行って酸素濃度を一定に保つため、より高いストイキ保持能力を有し、より高い排ガス浄化性能、特にHCの浄化性能を有することができる。
【実施例0070】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
1.三元触媒の作製
表1に示した組成を有するAl-CeO-ZrO複合酸化物粒子(ACZ)及びCeO-ZrO複合酸化物粒子(CZ)を用いて、表2及び3に示した仕様に従って比較例1及び実施例1~4の排ガス浄化触媒を作製した。
【0072】
比較例1の排ガス浄化触媒は、CeO-ZrO複合酸化物粒子とAl粒子と希土類元素としてのLa粒子及びY粒子とAlバインダーとAlファイバーとを用いて、1150℃で焼成することで製造されたモノリス基材を用いて作製した。なお、このモノリス基材は自らが貴金属粒子(触媒)担体機能及び助触媒機能を有すると考えられるため、ウォッシュコートは行わず、所定量の貴金属を直接基材に担持させた。具体的には、硝酸パラジウムと塩化ロジウムを必要量分散させた水溶液中に基材を浸漬させて一定時間放置することにより基材上に貴金属を担持させた。比較例1の排ガス浄化触媒の基材容量は0.9Lとした。
【0073】
実施例1~4の排ガス浄化触媒は、Al-CeO-ZrO複合酸化物粒子とAl粒子と希土類元素としてのLa粒子及びY粒子とAlバインダーとAlファイバーと場合によりCeO-ZrO複合酸化物粒子とを用いて、1150℃で焼成することで製造されたモノリス基材を用いて作製した。なお、このモノリス基材は自らが触媒担体機能及び助触媒機能を有すると考えられるため、ウォッシュコートは行わず、所定量の貴金属を直接基材に担持させた。具体的には、硝酸パラジウムと塩化ロジウムを必要量分散させた水溶液中に基材を浸漬させて一定時間放置することにより基材上に貴金属を担持させた。実施例1~4の排ガス浄化触媒の基材容量はいずれも0.9Lとした。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
2.耐久試験
V8 4.6Lエンジン直下に、作製した比較例1及び実施例1~4の排ガス浄化触媒をセットした。A/Fはサイクリックに変化する複合パターンとし、床温950℃で50時間の耐久試験を行った。
【0078】
3.排ガス浄化触媒評価
直列4気筒2.5Lエンジンに、前記2.耐久試験を終えた各排ガス浄化触媒をセットし、入りガス温度550℃でリッチ(空燃比:14.4)/リーン(空燃比:14.8)を繰り返す条件下で、排ガス浄化触媒の出ガスHC濃度を測定した。
【0079】
次に、比較例1及び実施例1~4の排ガス浄化触媒の出ガスHC濃度をそれぞれ実施例4の排ガス浄化触媒の出ガスHC濃度で除することによって、比較例1及び実施例1~4の排ガス浄化触媒の出ガスHC規格化濃度を算出した。
【0080】
図1に、比較例1及び実施例1~4の排ガス浄化触媒における、Al-CeO-ZrO複合酸化物中のCeO(CeO(ACZ))のAl-CeO-ZrO複合酸化物中のCeO及びCeO-ZrO複合酸化物中のCeO(CeO(ACZ+CZ))に対する重量比(CeO(ACZ)/CeO(ACZ+CZ))と出ガスHC規格化濃度の関係を示す。
【0081】
図1より、排ガス浄化触媒のモノリス基材におけるCeO(ACZ)/CeO(ACZ+CZ)が0.1以上、好ましくは0.2以上になることにより、高いHC浄化性能を実現できることがわかった。
図1