(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029874
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】収穫装置のエンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133432
(22)【出願日】2020-08-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】719002344
【氏名又は名称】萩原 康史
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康史
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JD08
2B075JD21
2B075JF05
2B075JF06
2B075JF08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な装置構成で、葉菜の茎または果菜の果柄、果樹の果柄を好適に切断することができるエンドエフェクタを提供する。
【解決手段】回転中央領域が中空で外周縁から中空部まで切欠が設けられた回転プレート3と、回転プレート3と隣接配置された、外周縁から回転プレート中空部の果柄を支持する位置まで切欠が設けられた固定プレート4と、刃部が回転軸垂直方向になる角度で回転プレート3上に固定された切断刃2と、固定プレート4と連結した、果柄の長手方向が切断刃2と垂直になるように果柄を支持する果柄支持部5と、回転プレート3の切欠と固定プレート4の切欠が揃っていないとき、果柄支持部5に果柄を押圧し把持する果柄押圧部と、を備えるエンドエフェクタ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉菜の茎または果菜の果柄、または果樹の果柄を切断する切断刃を備えたエンドエフェクタで
回転中央領域が中空で外周縁から中空部まで切欠が設けられた、モーターで回転駆動される回転プレートと、
回転プレートと隣接配置された、外周縁から回転プレート中空部の果柄を支持する位置まで切欠が設けられた固定プレートと、
刃部が回転軸垂直方向になる角度で、回転プレート上に固定された切断刃と、
固定プレートと連結した、果柄の長手方向が切断刃と垂直になるように果柄を支持する果柄支持部と、
回転プレートの切欠と固定プレートの切欠が揃っていないとき、果柄支持部に果柄を押圧し把持する果柄押圧部と、
を備えるエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記果柄支持部が、回転プレートの回転中心付近の切断刃が移動しない領域を通過して固定プレートと連結している請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータに装着するエンドエフェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、果菜や果樹や葉菜類を自動収穫する装置として、先端部にエンドエフェクタを備えたマニピュレータを移動及び旋回させて収穫アプローチを行い、先端のエンドエフェクタで果柄を切断して収穫する装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、左右の把持プレートにより把持した果菜類に対し果柄の切断を行う平面視U字形状の摘果プレートを前後方向にスライド駆動させるエンドエフェクタが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、採果ハサミを果柄に接近させて果柄を切断するとともに、採果ハサミの下側に取り付けた果柄挟持用下刃で果柄を把持するエンドエフェクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-215906号公報
【特許文献2】特開2004-180554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の果柄切断方法として、板状の刃物をスライド移動させて果柄を切断する方法があるが、切断時に切断する果柄が刃物に押圧されるため、果柄の位置の変位を抑制する把持手段が必要となり、また、把持手段と切断手段を連動させて制御する必要があるため、装置構成が複雑になるという問題があった。
【0007】
また、従来の果柄を切断方法として、採果ハサミで果柄を切断する方法があるが、切断時に回動する2枚1組の刃物によって切断する果柄が押圧され、回動軸の径方向外向きに果柄が押し出す力が加わるため、果柄の硬さによっては切断時に果柄の位置が変位することによって、良好な切断面にならない場合や、確実な切断が出来ない場合があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な装置構成で、切断時に葉菜の茎または果菜の果柄、果樹の果柄が切断刃に押圧されて変位することを抑制し、好適に切断することができるエンドエフェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
葉菜の茎または果菜の果柄、または果樹の果柄を切断する切断刃を備えたエンドエフェクタで
回転中央領域が中空で外周縁から中空部まで切欠が設けられた、モーターで回転駆動される回転プレートと、
回転プレートと隣接配置された、外周縁から回転プレート中空部の果柄を支持する位置まで切欠が設けられた固定プレートと、
刃部が回転軸垂直方向になる角度で、回転プレート上に固定された切断刃と、
固定プレートと連結した、果柄の長手方向が切断刃と垂直になるように果柄を支持する果柄支持部と、
回転プレートの切欠と固定プレートの切欠が揃っていないとき、果柄支持部に果柄を押圧し把持する果柄押圧部と、を備える。
【0010】
回転プレートの回転中心付近の切断刃が移動しない領域を通過して固定プレートと連結した果柄支持部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡易な装置構成で、葉菜の茎または果菜の果柄、果樹の果柄を好適に切断することができる果柄切断手段を備えたエンドエフェクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係るエンドエフェクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1とは異なる方向から見たエンドエフェクタの概略図である。
【
図3】
図3(a)は、切断動作前の状態を示す概略図である。
図3(b)は、切断刃が果柄を切断する動作を示す概略図である。
図3(c)は、切断刃が動作前の位置まで移動する動作を示す概略図である。
【
図4】
図4は、回転プレート中空部で、切断刃の刃部が移動する範囲を示す概略図である。
【
図5】
図5は、果柄切断時の動作を示す概略図である。
【
図6】
図6は、切断した果柄を把持して果実を運搬するときの状態を示す概略図である。
【
図7】
図7は、切断した果柄の把持を解除したときの状態を示す概略図である。
【
図8】
図8は、第二切断刃を備えたエンドエフェクタの概略図である。
【
図9】
図9は、第二切断刃を備えたエンドエフェクタの切断刃の位置を示す概略図である。
【
図10】
図10は、第二切断刃を備えたエンドエフェクタの切断刃と果柄支持部を示す概略図である。
【
図11】
図11は、回動して果柄を押圧する果柄押圧部を備えたエンドエフェクタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
葉菜の茎または果菜の果柄、果樹の果柄を切断する切断刃2を、果柄長手方向と直交する面内で回転させて移動するための旋回手段として、固定プレート4と、固定プレート4と隣接配置された回転中央領域が中空となっている回転プレート3とを備え、回転プレート3はモーター7を用いて回転駆動される。
【0014】
切断刃2は薄い板状の刃物で、回転プレート3上に切断刃2の刃部が回転軸垂直方向になる角度で固定されている。
【0015】
回転プレート3には、外周縁から中央領域の中空部まで、果柄1を挿抜するための切欠が設けられている。また、回転プレート3と隣接配置された固定プレート4には、外周縁から回転プレート中空部の切断刃部の移動領域9内に果柄を挿抜するための切欠が設けられており、固定プレート4の切欠と、回転プレート3の切欠が揃った状態で、果柄1が回転プレート3の中空部の切断刃の刃部が移動する領域9内に挿抜される。切断刃2は、固定プレート4の切欠と、回転プレート3の切欠が揃った状態で果柄1を挿抜するとき、果柄を挿抜するのに邪魔にならない位置で回転プレート3に固定されている。
【0016】
果柄支持部5は、固定プレート4と連結して備えらえており、果柄を果柄長手方向が切断刃2と垂直になるように支持するように設けられている。果柄支持部5は、果柄軸が回転プレート3の回転中心軸と平行となるように、果柄1を回転プレート中空部の切断刃部の移動領域9内に支持するU字形の凹部を備える。果柄支持部5は、切断刃2が果柄1を押し切るとき、切断刃2の回転移動面と近接した位置で、果柄1を支持するように設けられている。
【0017】
果柄押圧部10は、固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃っていない状態の時、収穫する果実の果柄を果柄支持部5上に押圧し保持されるように備えられている。また、果柄押圧部10は、固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った状態の時、果柄を押圧しないように設けられている。
【0018】
回転プレート3は、収穫装置からの信号を受けてモーターによって回転駆動される。
【実施例0019】
図1、
図2を参照して、本発明に係るエンドエフェクタの動作について説明する。
【0020】
図1に示す果柄切断手段と果柄把持手段とを備えた、収穫装置のマニピュレータの先端に装着するエンドエフェクタで、固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った状態で、マニピュレータを移動及び旋回させて、切断刃2の切断位置より果柄支持部5が果実側になるように、果柄1を外周縁の切欠から回転プレート中空部の切断刃部の移動領域9内に向けて挿入し、果柄長手方向が切断刃2と垂直となり、果柄1を切断する位置が切断刃2の回転移動面になるように、果柄支持部5に果柄を保持する。
【0021】
図2に示すように、収穫装置からの信号を受けて、モーター7の駆動力によって、ベルト6で回転プレート3を駆動し回転プレート3を回転させる。回転プレート3を回転させることで、果柄押圧部10が果柄支持部5に果柄を押圧し把持しつつ、回転プレート3に備えられた切断刃2が果柄1を切断する。果柄押圧部10が果柄を押圧し把持した状態を保ったまま回転プレート3の回転を停止し、マニピュレータによってエンドエフェクタを移動及び旋回させて、果実を離す収穫籠の上方位置まで収穫した果実を搬送した後、回転プレート3を動作開始前と同じ位置である固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った位置まで回転させて停止し、果柄を離し果実を落下させて収穫する。
【0022】
上述のように、果柄1を固定プレート3の外周縁の切欠から回転プレート中空部の切断刃部の移動領域9に向けて挿入し、果柄支持部5上に果柄1を保持し、収穫装置からの信号を受けて、回転プレート3を回転させることで切断刃2が果柄を切断して果実の果柄を把持し、回転を停止し把持した状態のまま収穫籠まで搬送し、固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った状態まで回転することで果柄の押圧を解除し果実を離して収穫する。この果柄を把持して運搬する収穫方法では、採果から収穫籠への搬送までの工程において果実に接触しないため果実品質の向上が見込める。
【0023】
図3を参照して、果柄切断の動作を説明する。
図3(a)に果柄切断動作前の切断刃の状態を示す。固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った状態で、果柄1はマニピュレータによって果柄支持部5上に保持されている。
【0024】
図3(b)に、切断刃で果柄を切断し把持する動作を示す。回転プレート3が回転方向8の方向に回転し、果柄1を切断する。この時、回転プレート3上に備えられた切断刃2を回転させつつ、果柄支持部5に支持された果柄1を切断刃2で斜めに押し切ることで、従来のように切断刃をスライド移動させて果柄を押し切る方法と比較して、果柄の位置の変位が抑制され、小さな力で果柄を好適に切断することができる。また、回転プレート3の切欠と固定プレートの切欠が揃う位置まで回転させずに回転を停止したとき、回転プレート3に設けられた果柄押圧部と、果柄支持部5とによって、果実側の果柄1を押圧していることで果柄を切断後もエンドエフェクタで収穫した果実を把持する。
【0025】
図3(c)に、切断刃が切断動作開始前の位置まで戻る動作を示す。果柄1を切断した切断刃2は、回転プレート3が回転方向8の方向に回転することで移動し、
図3(a)に示した回転を開始する前の位置まで移動し、停止する。この時、果柄押圧部10による果柄への押圧力が解除され、果実がエンドエフェクタから離されて収穫される。
【0026】
このように回転プレート3が約半回転して停止することで、果柄を把持しつつ果柄の切断する動作が行われ、その位置から動作前の位置である固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った位置まで回転して収穫が行われる。これにより、従来の方法で果柄を切断する場合と比較して、簡易な機構で切断時の果柄の変位を抑制し、良好な切断面で果柄を切断し収穫を行うことが出来る。
【0027】
図4は、回転プレート3の中空部の切断刃部の移動領域9を示している。回転プレート3の中空部の切断刃部の移動領域9は、回転プレート3の中空部領域から、回転プレート3の回転中心から切断刃部までの最短長さを半径とした円形領域を除いたものである。切断刃2は、回転しつつ、果柄を斜めに押し切るように、回転プレート上に備えられており、回転プレートの回転中心軸を含む中央領域には、切断刃が移動しない範囲が生じる場合がある。そのため、果柄支持部5は、
図5に示す、回転プレート3の中空部の切断刃部の移動領域9に果柄1が支持されるように備えられている。
【0028】
図5は、回転プレート3が回転方向8の方向に回転し、果柄1を切断する動作を示している。この時、果柄1は果柄押圧部10によって果柄支持部5上に押圧されて把持されている。
【0029】
図6は、果柄1が切断され、果実の果柄1が果柄支持部5と果柄押圧部10によって把持された状態で回転プレートが停止し、マニピュレータで収穫籠まで搬送するときの状態を示している。
【0030】
図7は、収穫籠の上で固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った状態になるまで回転プレート3が回転して停止し、果柄1への押圧が解除され果実が落下する状態を示している。
【0031】
図8、
図9、
図10は、第二切断刃を備えたエンドエフェクタを示している。切断刃2と第二切断刃11とを、
図4に示すように回転プレートの中心付近に切断刃が移動しない領域をつくるように設置し、この切断刃が通過しない領域内を通過する形で固定プレートと連結した果柄支持部を設けることで、果柄支持部5を挟んだ両側で切断刃を回転させ、切断刃2と第二切断刃11とを位置と角度が異なるように設けることで、果柄支持部5を挟んだ両側で、異なる回転角度で果柄を切断することが出来る。
【0032】
上記の機構により、切断刃2で果柄を切断して停止し、収穫籠の上まで搬送した後、回転プレート3を回転させて第二切断刃11によって果柄支持部5より果実側の位置で果柄を切断し、果実を落下させて収穫することが出来る。収穫する果実の果柄を短くすることで、収穫した果実が果柄によって傷つけられることが抑制され、果実の商品価値を高く保つことができる。
【0033】
図11は、果柄支持部5上に果柄を押圧する方向に回動する押圧部を回転プレート3によって押圧することで、果柄を把持する機構を示す概略図である。果柄を押圧する方法は、回転プレートによって動作する果柄押圧部を備えていれば任意であり限定されない。例えば、弾性体によって果柄を押圧するように付勢した果柄押圧部を設け、回転プレートに備えられたカムによって、固定プレート4の切欠と回転プレート3の切欠が揃った状態の時に果柄への押圧を解除するようにしても良い。
【0034】
なお本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、配置箇所などは本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0035】
また、駆動力の伝達方法はベルトに限らず、回転プレートを回転駆動し、停止させることのできる方法であれば任意である。例えば、複数の歯車を用いた方法である。
【0036】
また、回転プレートの回転方向は限定されない。同一方向に1回転して動作開始前の回転プレートと固定プレートの切欠が揃った位置まで移動し1回の収穫を行うことも出来るし、果柄を切断し果実を搬送した後、逆方向に回転し動作開始前の回転プレートと固定プレートの切欠が揃った位置まで移動し、1回の収穫を行うことも出来る。
【0037】
また、果柄支持部の形状は、U字形に限定されるものではなく、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、角形や扁平した形状である。