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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029911
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車載装置及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220210BHJP
   G08G 1/00 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133511
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 克志
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181DD07
5H181FF10
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】煽り行為の発生前に、煽り行為を受ける可能性があることを運転者に通知することができる車載装置を提供する。
【解決手段】車載装置(100)は、自車両(5)の走行が、自車両(5)の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態にあるか否かを判定する状態検出部(133)と、特定の状態にあると判定された場合に、自車両(5)の周囲を撮影した発生時撮影画像を取得する画像取得部(135)と、自車両(5)、自車両(5)の周囲の他車両との距離を示す距離情報を取得する距離取得部(136)と、距離情報が示す距離が設定値以下の他車両が検出された場合に、他車両を発生時撮影画像から検出する対象車両検出部(137)と、対象車両検出部(137)により他車両が検出された場合に、自車両(5)に搭載された表示部80や音声出力部(90)に、第1報知動作を実行させる報知制御部と(138)、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載装置であって、
前記車両の走行状態を示す走行状態情報を取得する第1状態情報取得部と、
前記車両の運転者の状態を示す運転者状態情報を取得する第2状態情報取得部と、
前記第1状態情報取得部及び前記第2状態情報取得部が取得した情報に基づいて、前記車両の走行が、前記車両の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態にあるか否かを判定する状態判定部と、
前記状態判定部により前記特定の状態にあると判定された場合に、前記車両の周囲を撮影した発生時撮影画像を取得する画像取得部と、
前記車両と、前記車両の周囲の他車両との距離を示す距離情報を取得する距離取得部と、
前記距離情報が示す距離が設定値以下の他車両が検出された場合に、前記他車両を撮影した撮影画像と、前記発生時撮影画像とを比較して、前記他車両を前記発生時撮影画像から検出する検出部と、
前記検出部により前記他車両が検出された場合に、前記車両に搭載された報知部に、前記運転者に注意喚起を促す第1報知動作を実行させる報知制御部と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記第2状態情報取得部は、前記運転者の生体情報を取得し、取得した前記生体情報に基づき、前記運転者の感情を前記運転者状態情報として推定し、
前記状態判定部は、前記第2状態情報取得部が推定した前記運転者の感情に基づき、前記特定の状態を判定する、ことを特徴とする請求項1記載の車載装置。
【請求項3】
前記第2状態情報取得部は、前記車両の車室内を撮影した撮影画像を取得し、取得した前記撮影画像に基づいて前記運転者の動作を示す情報を前記運転者状態情報として取得し、
前記状態判定部は、前記第2状態情報取得部が推定した前記運転者の動作に基づき、前記特定の状態を判定する、ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記検出部が前記発生時撮影画像から前記他車両を検出することができなかった場合、前記第1報知動作よりも注意喚起のレベルが低い第2報知動作を実行させる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記状態判定部が、前記走行状態情報に基づいて前記特定の状態を検出した回数と、前記運転者状態情報に基づいて前記特定の状態を検出した回数とをそれぞれ計数し、計数した回数に基づいて前記運転者の運転傾向を判定する傾向判定部と、
前記傾向判定部が判定した前記運転傾向を表示部に表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車載装置。
【請求項6】
車両の走行状態を示す走行状態情報を取得するステップと、
前記車両の運転者の状態を示す運転者状態情報を取得するステップと、
取得した前記走行状態情報及び運転者状態情報に基づいて、前記車両の走行が、前記車両の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態にあるか否かを判定するステップと、
前記特定の状態にあると判定された場合に、前記車両の周囲を撮影した発生時撮影画像を取得するステップと、
前記車両と、前記車両の周囲の他車両との距離を示す距離情報を取得するステップと、
前記距離情報が示す距離が設定値以下の他車両が検出された場合に、前記他車両を撮影した撮影画像と、前記発生時撮影画像とを比較して、前記他車両を前記発生時撮影画像から検出するステップと、
前記発生時撮影画像から前記他車両が検出された場合に、前記車両に搭載された報知部に、前記運転者に注意喚起を促す第1報知動作を実行させるステップと、
を有することを特徴とする運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、煽り運転を検出して後続車両との事故やトラブルを防止する技術が知られている。例えば、特許文献1は、自車両の周囲に存在する他車両の加減速の有無や量、操舵状態、灯火状態、障害の有無等の状態を判定し、判定した他車両の状態に基づいて、自車両に対する煽り行為の発生可能性を判定する煽り行為を判定し、判定結果に基づいて、自車両の運転者に対する通知制御及び/又は自車両の挙動制御を行う運転支援装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-205773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら他車両の状態に基づいて、自車両への煽り行為の発生可能性を判定する場合、判定に遅れが生じ、煽り行為の発生後に運転者に通知される懸念がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、煽り行為の発生前に、煽り行為を受ける可能性があることを車両の運転者に通知することができる車載装置及び運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の車載装置は、車両に搭載された車載装置であって、前記車両の走行状態を示す走行状態情報を取得する第1状態情報取得部と、前記車両の運転者の状態を示す運転者状態情報を取得する第2状態情報取得部と、前記第1状態情報取得部及び前記第2状態情報取得部が取得した情報に基づいて、前記車両の走行が、前記車両の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態にあるか否かを判定する状態判定部と、前記状態判定部により前記特定の状態にあると判定された場合に、前記車両の周囲を撮影した発生時撮影画像を取得する画像取得部と、前記車両と、前記車両の周囲の他車両との距離を示す距離情報を取得する距離取得部と、前記距離情報が示す距離が設定値以下の他車両が検出された場合に、前記他車両を撮影した撮影画像と、前記発生時撮影画像とを比較して、前記他車両を前記発生時撮影画像から検出する検出部と、前記検出部により前記他車両が検出された場合に、前記車両に搭載された報知部に、前記運転者に注意喚起を促す第1報知動作を実行させる報知制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、煽り行為の発生前に、煽り行為を受ける可能性があることを車両の運転者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】警告システムの構成を示すブロック図である。
図2】特定の状態を検出する手順を示すフローチャートである。
図3】警告時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、運転支援システム1の構成を示すブロック図である。以下、運転支援システム1を搭載した車両を、自車両5といい、自車両5以外の車両を他車両という。
運転支援システム1は、車外撮影部10、車室内撮影部20、ソナーユニット30、生体センサ40、車速センサ50、加速度センサ60、操作部70、表示部80、音声出力部90及び車載装置100を備える。
【0010】
車外撮影部10は、フロントカメラ11、リアカメラ13、左サイドカメラ15及び右サイドカメラ17の4台のカメラを備える。フロントカメラ11は、自車両5の前方を撮影する。リアカメラ13は、自車両5の後方を撮影する。左サイドカメラ15は、自車両5の左側方を撮影する。右サイドカメラ17は、自車両5の右側方を撮影する。本実施形態は、車外撮影部10が4台のカメラを備える場合について説明するが、車外を撮影するカメラの台数は任意である。
【0011】
フロントカメラ11、リアカメラ13、左サイドカメラ15及び右サイドカメラ17は、それぞれCCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等のイメージセンサと、イメージセンサの受光状態から画像を生成するデータ処理回路とを備える。
【0012】
フロントカメラ11、リアカメラ13、左サイドカメラ15及び右サイドカメラ17は、自車両5を中心に360°の範囲を撮影可能となるように画角が調整されている。フロントカメラ11、リアカメラ13、左サイドカメラ15及び右サイドカメラ17は、各々の撮影範囲を所定のフレームレートで撮影して撮影画像を生成する。車外撮影部10の撮影画像を、以下では、車外撮影画像という。フロントカメラ11、リアカメラ13、左サイドカメラ15及び右サイドカメラ17の各々が生成した車外撮影画像は、車載装置100に出力される。車載装置100は、車外撮影部10から入力された車外撮影画像を、車載装置100が備える記憶部110に一時的に記憶させる。
【0013】
車室内撮影部20は、自車両5の車室内を撮影するカメラ25を備える。このカメラ25もCCDやCMOS等のイメージセンサと、イメージセンサの受光状態から画像を生成するデータ処理回路とを備える。カメラ25は、例えば、ダッシュボード、ルームミラー、天井等に設置され、運転席に着座した運転者を撮影可能なように向き、画角、設置位置等が設定されている。カメラ25は、所定のフレームレートで車室内を撮影して撮影画像を生成する。車室内撮影部20が撮影した撮影画像を、以下では室内撮影画像という。車室内撮影部20は、生成した室内撮影画像を車載装置100に出力する。車載装置100は、車室内撮影部20から入力された室内撮影画像を記憶部110に一時的に記憶させる。
【0014】
ソナーユニット30は、自車両5の前方、後方、左側方及び右側方等の複数箇所に搭載され、超音波を用いて自車両5の周囲に存在する他車両、歩行者、構造物等の障害物の方位や距離を検出する。ソナーユニット30は、障害物の方位や距離を示すソナー情報を車載装置100に出力する。車載装置100は、ソナーユニット30から入力されたソナー情報を記憶部110に一時的に記憶させる。
【0015】
生体センサ40は、運転席に着座した運転者の生体情報を検出するセンサである。生体情報とは、心拍、呼吸、脳波、脈拍、血圧、発汗、体温などの生体現象の状態を表す情報である。本実施形態では、生体センサ40が、座席のシートベルトに設けられた心拍センサであり、生体情報が運転者の心拍数を表す情報である場合について説明するが、生体センサ40は、呼吸、脳波、脈拍、血圧、発汗、体温等の他の生体情報を検出する構成であってもよい。生体センサ40は、検出した各乗員の生体情報を車載装置100に出力する。車載装置100は、生体センサ40から入力された生体情報を記憶部110に一時的に記憶させる。
【0016】
車速センサ50は、自車両5の車速を検出するセンサである。車速センサ50は、検出した自車両5の車速を示す車速情報を車載装置100に出力する。
加速度センサ60は、自車両5の加速度を検出するセンサである。加速度センサ60は、検出した自車両5の加速度を示す加速度情報を車載装置100に出力する。
車載装置100は、入力された車速情報や加速度情報を記憶部110に一時的に記憶させる。
【0017】
操作部70は、乗員の操作を受け付ける受付部として機能する。操作部70は、スイッチやボタン等のハードウェアを備え、操作を受け付けたハードウェアに対応した操作信号を車載装置100に出力する。
【0018】
表示部80は、タッチパネル85を備える。タッチパネル85は、液晶パネルや、有機ELパネル等の表示パネルと、表示パネルに対するタッチ操作を検出するタッチセンサとを備える。表示パネルには、車載装置100の制御により表示画像が表示される。タッチセンサは、自車両5の乗員によりタッチされた表示パネルの位置を検出し、検出した位置を示す座標情報を車載装置100に出力する。
【0019】
音声出力部90は、音声処理部91及びスピーカ93を備える。
音声処理部91は、D/Aコンバータや、ボリューム回路、アンプ回路等を備え、車載装置100から入力された音声データをD/Aコンバータによりデジタル/アナログ変換し、ボリューム回路により音量レベルを調整し、アンプ回路により増幅して、スピーカ93から音声として出力する。
【0020】
車載装置100は、記憶部110及びプロセッサ130を備えるコンピュータ装置である。車載装置100は、自車両5が、自車両5の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある状態である「特定の状態」を検出した場合に、この特定の状態を検出したときに自車両5の周囲を走行する他車両を撮影し、自車両5との車間距離が予め設定された設定距離以下の他車両が検出された場合に、この他車両が、「特定の状態」を検出したときに、自車両5の周囲を走行していたか否かを判定する。そして、車載装置100は、他車両が、「特定の状態」を検出したときに、自車両5の周囲を走行していた場合に、運転者に注意喚起を促す報知動作を実行することで、運転者の運転操作を支援する。
【0021】
記憶部110は、例えば、フラッシュメモリや、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性のメモリを備える。また、記憶部110は、不揮発性のメモリに加え、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリを備える構成であってもよい。
記憶部110は、プロセッサ130が実行する制御プログラムを記憶する。また、記憶部110は、車外撮影画像や、室内撮影画像、生体情報、車速情報、加速度情報を一時的に記憶する。
【0022】
プロセッサ130は、CPU(Central Processing Unit)や、CPUを搭載したMCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等のマイコンにより構成される。また、車載装置100を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現してもよい。
【0023】
車載装置100は、第1状態情報取得部131、第2状態情報取得部132、状態検出部133、運転傾向判定部134、画像取得部135、距離取得部136、対象車両検出部137及び報知制御部138を備える。これらの機能ブロックは、記憶部110に記憶された制御プログラムをプロセッサ130が実行することで実現される車載装置100の機能を示すものである。
【0024】
第1状態情報取得部131は、自車両5の走行状態を示す走行状態情報を取得する。第1状態情報取得部131は、走行状態情報として、車外撮影画像と、車速情報と、加速度情報とを記憶部110から取得する。第1状態情報取得部131は、取得した車外撮影画像、車速情報及び加速度情報を状態検出部133に出力する。
【0025】
第2状態情報取得部132は、自車両5の運転者の状態を示す運転者状態情報を取得する。第2状態情報取得部132は、運転者状態情報として、室内撮影画像や、生体情報を記憶部110から取得する。第2状態情報取得部132は、取得した室内撮影画像や、生体情報を状態検出部133に出力する。
【0026】
状態検出部133には、第1状態情報取得部131から車外撮影画像や、車速情報、加速度情報が入力され、第2状態情報取得部132から室内撮影画像や、生体情報が入力される。状態検出部133は、入力されたこれらの情報に基づいて、自車両5が他車両の走行に悪影響を及ぼし得る状態である特定の状態を検出する。
【0027】
状態検出部133は、本発明の状態判定部に相当し、自車両5の走行状態や、運転者の特定の感情、特定の動作に基づいて特定の状態を判定する。すなわち、状態検出部133は、自車両5の走行状態や、運転者の特定の感情、特定の動作を検出した場合に、自車両5の走行が、自車両5の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態にあると判定する。自車両5の走行状態には、割り込み運転や、急加速や急減速、低速走行が含まれる。また、運転者の特定の動作には、前のめり姿勢や、ステアリングやインパネ等を叩く仕草等が含まれる。また、運転者の特定の感情には、焦り、苛立ち、緊張等の安全運転に悪影響を及ぼす感情が含まれる。
【0028】
状態検出部133は、車外撮影画像に基づき、自車両5の割り込み運転を検出する。自車両5の割り込み運転とは、自車両5が、走行中の他車両の、進路上の前方に進路変更することをいう。例えば、状態検出部133は、路面を撮影した車外撮影画像に基づいて車線変更を検出し、車線変更を検出したときに自車両5の周囲を走行する他車両との距離に基づいて割り込み運転を検出する。
【0029】
また、状態検出部133は、加速度情報が示す加速度と、予め設定されたしきい値と比較して、自車両5の急加速又は急減速を検出し、車速情報が示す車速と、予め設定されたしきい値とを比較して、自車両5の低速走行を検出する。
【0030】
さらに、状態検出部133は、車室内撮影部20の撮影画像から運転者の姿勢や、仕種を検出して特定の状態を検出する。状態検出部133が検出する姿勢には、前のめり姿勢が含まれ、仕種にはステアリングや、インパネ等を叩く行為が含まれる。
【0031】
また、状態検出部133は、車室内撮影部20の撮影画像から運転者の顔画像を検出し、検出した顔画像に基づいて運転者の特定の感情を検出する。特定の感情とは、焦り、苛立ち、緊張等の運転に悪影響を及ぼす感情である。
例えば、状態検出部133は、記憶部110に記憶させたマスタ画像に基づいて運転者の特定の感情を検出する。このマスタ画像は、事前に撮影された運転者の顔画像であって、焦りや、苛立ち、緊張等の特定の感情ごとに撮影された画像である。状態検出部133は、車室内撮影部20の撮影画像に撮影された顔画像と、マスタ画像とを比較して、運転者の特定の感情を検出する。
【0032】
また、状態検出部133は、車室内撮影部20の撮影画像に加えて、生体センサ40の生体情報を用いて運転者の特定の感情を検出してもよい。例えば、状態検出部133は、車室内撮影部20の撮影画像により特定の感情として怒りの感情が検出され、さらに生体センサ40の生体情報が示す心拍数が予め設定された値以上である場合に、運転者に怒りの感情が生じていると判定してもよい。
【0033】
運転傾向判定部134は、割り込み運転、急加速、急減速、低速走行、特定の感情、特定の動作等の状態検出部133が特定の状態として検出する検出項目ごとに、検出回数をカウントする。記憶部110は、検出項目ごと、カウンタのカウント値を記憶する。運転傾向判定部134は、状態検出部133が特定の状態を検出するごとに、対応する検出項目のカウンタのカウント値を1加算する。
【0034】
運転傾向判定部134は、記憶部110に記憶させた各検出項目のカウント値に基づいて、運転者の運転傾向を判定する。例えば、運転傾向判定部134は、各検出項目のカウント値と、検出項目ごとに設定されたしきい値と、を比較して、カウント値がしきい値以上となった検出項目を検出する。運転傾向判定部134は、検出した検出項目に基づいて、運転者の運転傾向を判定する。
【0035】
画像取得部135は、状態検出部133が特定の状態を検出した場合に、車外撮影部10に撮影を実行させる。車外撮影部10は、予め設定された設定時間の間、車外を撮影して外部撮影画像を生成する。車外撮影部10が撮影する外部撮影画像には、特定の状態が生じた際に、自車両5の周囲に存在した他車両が撮影される。画像取得部135は、車外撮影部10から入力された車外撮影画像を、記憶部110に記憶させる。状態検出部133が特定の状態を検出したときに車外撮影部10により撮影された外部撮影画像を、発生時撮影画像という。
【0036】
距離取得部136は、自車両5と、自車両5の周囲に存在する他車両との距離を示す距離情報を取得する。距離取得部136は、ソナーユニット30のソナー情報を距離情報として記憶部110から取得する。距離取得部136は、取得したソナー情報を対象車両検出部137に出力する。
また、距離取得部136は、画像取得部135が取得した撮影画像に基づいて他車両との距離を検出し、距離情報を生成してもよい。例えば、車外撮影部10が備えるカメラをステレオカメラにより構成し、このステレオカメラの撮影画像に基づいて自車両5から他車両までの距離を検出してもよい。
【0037】
対象車両検出部137は、本発明の検出部に相当する。対象車両検出部137には、距離取得部136が取得した距離情報が入力される。対象車両検出部137は、入力された距離情報が示す距離に基づいて、自車両5との距離が設定距離以下の他車両を検出する。以下、検出された他車両を対象車両という。対象車両検出部137は、対象車両が検出されると、検出された対象車両の方位等の情報を画像取得部135に出力し、対象車両の撮影を指示する。画像取得部135は、対象車両検出部137の指示に従って車外撮影部10に撮影を実行させ、撮影された車外撮影画像を対象車両検出部137に出力する。
【0038】
対象車両検出部137は、画像取得部135から対象車両を撮影した車外撮影画像が入力されると、入力された対象車両の外部撮影画像と、発生時撮影画像とを比較して、検出用画像に対象車両が撮影されているか否かを判定する。すなわち、特定の状態を検出したときに、対象車両が自車両5の周囲を走行していたか否かを判定する。
対象車両検出部137は、検出用画像に対象車両が撮影されていた場合、第1通知を報知制御部138に出力する。第1通知は、自車両5との距離が設定距離以下の車両であって、特定の状態を検出したときに、自車両5の周囲を走行していた車両が検出されたことを示す通知である。
また、対象車両検出部137は、発生時撮影画像に対象車両が撮影されていなかった場合、第2通知を報知制御部138に出力する。第2通知は、自車両5との距離が設定距離以下の車両が検出されたことを示す通知である。
【0039】
報知制御部138は、報知部である表示部80や音声出力部90の動作を制御する。報知制御部138は、本発明の報知制御部及び表示制御部に相当する。報知制御部138は、対象車両検出部137から第1通知が入力されると、表示部80や音声出力部90を制御して第1報知動作を実行させる。報知制御部138は、第1報知動作として、表示部80に警告画像を表示させ、音声出力部90から所定の警告音を出力させる。警告画像には、例えば、車間距離が設定距離以下の他車両が検出されたこと、検出された他車両は、特定の状態が検出されたときに自車両5の周囲を走行していた車両であること、等が表示される。
【0040】
また、報知制御部138は、対象車両検出部137から第2通知が入力されると、表示部80を制御して第2報知動作を実行させる。第2報知動作は、第1報知動作よりも注意喚起のレベルが低く設定されている。このため、報知制御部138は、対象車両検出部137から第2通知が入力された場合、音声出力部90から警告音を出力させることなく、表示部80に警告画像を表示させる。警告画像には、例えば、車間距離が設定距離以下の他車両が検出されたことが表示される。
【0041】
さらに、報知制御部138は、運転傾向判定部134が判定した運転傾向を表示部80に表示させる。例えば、報知制御部138は、運転者の運転傾向が急加速の頻度が高い傾向にあると運転傾向判定部134により判定されると、急加速の頻度が高い傾向にあることを通知する案内を表示部80に表示させる。また、報知制御部138は、運転者が運転中に怒りの感情を表す行動を起こす頻度が高い傾向にあると運転傾向判定部134により判定されると、怒りの感情を表す行動を起こす頻度が高いことを通知する案内を表示部80に表示させる。
【0042】
次に、図2及び図3に示すフローチャートを参照しながら車載装置100の動作について説明する。
まず、車載装置100は、自車両5が走行中であるか否かを判定する(ステップS1)。車載装置100は、車速情報に基づいて自車両5が走行中であるか否かを判定する。車載装置100は、自車両5が走行中ではない場合(ステップS1/NO)、自車両5が走行を開始するまで待機する。
【0043】
車載装置100は、自車両5が走行中である場合(ステップS1/YES)、車外撮影画像を取得する(ステップS2)。車載装置100は、取得した車外撮影画像に基づいて割り込み運転を検出する(ステップS3)。また、車載装置100は、自車両5の加速度情報も参照して割り込み運転を検出してもよい。車載装置100は、割り込み運転が検出された場合(ステップS3/YES)、特定の状態が検出されたと判定し、車外撮影部10に撮影を実行させて発生時撮影画像を取得する(ステップS4)。
【0044】
次に、車載装置100は、特定の状態を検出した検出時刻と、発生時撮影画像とを対応づけて記憶部110に記憶させる(ステップS5)。また、車載装置100は、割り込み運転の検出回数をカウントするカウンタのカウント値を1インクリメントする(ステップS6)。
【0045】
また、車載装置100は、ステップS3の判定が否定判定の場合(ステップS3/NO)、又はステップS6の処理後、車速センサ50により検出された車速情報を取得する(ステップS7)。車載装置100は、取得した車速情報と、予め設定されたしきい値とを比較して、自車両5が低速走行の状態にあり、この低速走行の状態が設定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS8)。車載装置100は、低速走行の状態が設定時間以上継続していると判定した場合(ステップS8/YES)、特定の状態が検出されたと判定し、車外撮影部10に撮影を実行させて発生時撮影画像を取得する(ステップS9)。
【0046】
次に、車載装置100は、特定の状態を検出した検出時刻と、発生時撮影画像とを対応づけて記憶部110に記憶させる(ステップS10)。また、車載装置100は、低速運転の検出回数をカウントするカウンタのカウント値を1インクリメントする(ステップS11)。
【0047】
また、車載装置100は、ステップS8の判定が否定判定の場合(ステップS8/NO)、又はステップS11の処理後、加速度センサ60により検出された加速度情報を取得する(ステップS12)。車載装置100は、取得した加速度情報と、予め設定されたしきい値とを比較して、自車両5の急加速又は急減速を検出する(ステップS13)。
【0048】
車載装置100は、自車両5の急加速又は急減速を検出した場合(ステップS13/YES)、特定の状態が検出されたと判定し、車外撮影部10に撮影を実行させて発生時撮影画像を取得する(ステップS14)。
【0049】
次に、車載装置100は、特定の状態を検出した検出時刻と、発生時撮影画像とを対応づけて記憶部110に記憶させる(ステップS15)。また、車載装置100は、急加速又は急減速の検出回数をカウントするカウンタのカウント値を1インクリメントする(ステップS16)。
【0050】
また、車載装置100は、ステップS13の判定が否定判定の場合(ステップS13/NO)、又はステップS16の処理後、車室内撮影部20の室内撮影画像、及び生体情報を取得する(ステップS17)。車載装置100は、取得した室内撮影画像や、生体情報に基づいて、運転者の特定の動作や、特定の感情を検出する(ステップS18)。車載装置100は、運転者の前のめり姿勢や、ステアリングやインパネ等を叩く仕草を検出した場合、特定の動作が検出されたと判定する。また、車載装置100は、推定した感情が、焦り、苛立ち、緊張等の感情であった場合、特定の感情が検出されたと判定する。
【0051】
車載装置100は、特定の動作、又は特定の感情が検出された場合(ステップS18/YES)、車外撮影部10に撮影を実行させて発生時撮影画像を取得する(ステップS19)。車載装置100は、特定の動作、又は特定の感情が検出された検出時刻と、発生時撮影画像とを対応づけて記憶部110に記憶させる(ステップS20)。また、車載装置100は、検出した特定の状態の対応したカウンタのカウント値を1インクリメントする(ステップS21)。
【0052】
車載装置100は、ステップS18の判定が否定判定であった場合(ステップS18/NO)、又はステップS21の処理を実行後、カウント値がしきい値以上のカウンタがあるか否かを判定する(ステップS22)。車載装置100は、カウント値がしきい値以上のカウンタがない場合(ステップS22/NO)、ステップS1の判定に戻る。また、車載装置100は、カウント値がしきい値以上のカウンタがある場合(ステップS22/YES)、このカウンタに対応づけられた特定の状態に基づいて運転者の運転傾向を判定し、判定した運転傾向を表示部80に表示させる(ステップS23)。
【0053】
次に、特定の状態を検出してから報知動作を行うまでの車載装置100の動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、車載装置100は、特定の状態が検出されたか否かを判定する(ステップS31)。車載装置100は、特定の状態が検出された場合(ステップS31/YES)、ソナーユニット30のソナー情報を取得する(ステップS32)。
【0054】
車載装置100は、取得したソナー情報に基づき、自車両5との距離が設定距離以下の他車両を検出する(ステップS33)。車載装置100は、設定距離以下の他車両が検出されなかった場合(ステップS33/NO)、ステップS31の判定に戻る。
【0055】
また、車載装置100は、設定距離以下の他車両が検出された場合(ステップS33/YES)、信号待ち等により車間距離が短くなった場合を排除するため、自車両5が走行中であるか否かを判定する(ステップS34)。車載装置100は、自車両5が走行中ではない場合(ステップS34/NO)、ステップS31の判定に戻る。
【0056】
また、車載装置100は、自車両5が走行中である場合(ステップS34/YES)、ステップS33で検出した他車両を対象車両として、この対象車両の撮影を車外撮影部10に指示し(ステップS35)、対象車両が撮影された外部撮影画像を取得する。
【0057】
次に、車載装置100は、記憶部110から発生時撮影画像を読み出す。車載装置100は、発生時撮影画像に対応づけて記憶させた検出時刻を参照して、検出時刻から現在時刻までの経過時間が、所定時間以内の発生時撮影画像を読み出す。車載装置100は、読み出した発生時撮影画像と、対象車両が撮影された外部撮影画像とを比較して、発生時撮影画像に対象車両が撮影されているか否かを判定する(ステップS36)。車載装置100は、発生時撮影画像に対象車両が撮影されていた場合(ステップS36/YES)、第1報知動作を実行させる(ステップS37)。報知制御部138は、第1報知動作として、表示部80に警告画像を表示させ、音声出力部90から所定の警告音を出力させる。
また、車載装置100は、発生時撮影画像に対象車両が撮影されていなかった場合(ステップS36/NO)、第2報知動作を実行させる(ステップS38)。報知制御部138は、第2報知動作として、表示部80に警告画像を表示させる。
【0058】
以上説明したように本実施形態の車載装置100は、第1状態情報取得部131、第2状態情報取得部132、状態検出部133、画像取得部135、距離取得部136、対象車両検出部137及び報知制御部138を備える。
【0059】
第1状態情報取得部131は、自車両5の走行状態を示す走行状態情報を取得する。
第2状態情報取得部132は、自車両5の運転者の状態を示す運転者状態情報を取得する。
状態検出部133は、第1状態情報取得部131及び第2状態情報取得部132が取得した情報に基づいて、自車両5の走行が、自車両5の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態にあるか否かを判定する。
画像取得部135は、状態検出部133により特定の状態にあると判定された場合に、自車両5の周囲を撮影した発生時撮影画像を取得する。
距離取得部136は、自車両5と、自車両5の周囲の他車両との距離を示す距離情報を取得する。
対象車両検出部137は、距離情報が示す距離が設定値以下の他車両が検出された場合に、他車両を撮影した撮影画像と、発生時撮影画像とを比較して、他車両を発生時撮影画像から検出する。
報知制御部138は、対象車両検出部137により他車両が検出された場合に、自車両5に搭載された表示部80や音声出力部90に、運転者に注意喚起を促す第1報知動作を実行させる。
従って、車載装置100は、自車両5が、自車両5の周囲の他車両に危険を及ぼすおそれのある特定の状態を検出した場合に、特定の状態の検出時に自車両5の周囲に存在した他車両と、自車両5との距離を検出し、検出した距離が設定値以下の場合に、運転者に注意喚起を促す第1報知動作が実行される。このため、煽り行為の発生前に、煽り行為を受ける可能性があることを車両の運転者に通知することができる。
【0060】
また、第2状態情報取得部132は、運転者の生体情報を取得し、取得した生体情報に基づき、運転者の感情を運転者状態情報として推定する。
状態検出部133は、第2状態情報取得部132が推定した運転者の感情に基づき、特定の状態を判定する。
従って、運転者の感情の推定精度を高め、特定の状態の検出精度を高めることができる。
【0061】
第2状態情報取得部132は、自車両5の車室内を撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づいて運転者の動作を示す情報を運転者状態情報として取得する。
状態検出部133は、第2状態情報取得部132が推定した運転者の動作に基づき、特定の状態を判定する。
例えば、運転者の動作として、前のめり姿勢や、ステアリングやインパネ等を叩く行為を検出することで運転者の感情を推定し、推定した運転者の感情に基づいて特定の状態を検出するため、特定の状態の検出精度を高めることができる。
【0062】
報知制御部138は、対象車両検出部137が発生時撮影画像から他車両を検出することができなかった場合、第1報知動作よりも注意喚起のレベルが低い第2報知動作を実行させる。
従って、特定の状態の検出時に自車両5の周囲に存在しなかった他車両であっても、自車両5との距離が設定値以下の場合に、運転者に注意喚起を促すことができる。
【0063】
また、車載装置100は、状態検出部133が、走行状態情報に基づいて特定の状態を検出した回数と、運転者状態情報に基づいて特定の状態を検出した回数とをそれぞれ計数し、計数した回数に基づいて運転者の運転傾向を判定する運転傾向判定部134を備える。
報知制御部138は、運転傾向判定部134が判定した運転傾向を表示部80に表示させる。
従って、特定の状態の検出回数に基づいて運転者の運転傾向を判定し、判定した運転傾向を運転者に通知することができる。
【0064】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、図1に示す車載装置100の構成は、車載装置100が備える機能を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、車載装置100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くのブロックに分割することもできる。また、この機能ブロックは、図1に示す1つのブロックによりさらに多くの処理を実行するように構成しても良い。また、各ブロックの処理は、1つのハードウェアで実行してもよいし、複数のハードウェアで実行してもよい。また、各ブロックの処理は、1つのプログラムで実現してもよいし、複数のプログラムで実現してもよい。
【0065】
また、図2及び図3に示すフローチャートの処理単位は、車載装置100の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって本発明が制限されることはない。また、車載装置100の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0066】
また、本発明の運転支援方法をコンピュータにより実現する場合、このコンピュータに実行させるプログラムを記録媒体、又はプログラムを伝送する伝送媒体の態様で構成することも可能である。記録媒体には、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリーデバイスを用いることができる。具体的には、記録媒体には、フレキシブルディスク、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスクが挙げられる。また、記録媒体として、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体を挙げることもできる。また、上記記録媒体は、表示装置が備える内部記憶装置であるRAM、ROM、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 運転支援システム
5 車両
10 車外撮影部
11 フロントカメラ
13 リアカメラ
15 左サイドカメラ
17 右サイドカメラ
20 車室内撮影部
25 カメラ
30 ソナーユニット
40 生体センサ
50 車速センサ
60 加速度センサ
70 操作部
85 タッチパネル
90 音声出力部
91 音声処理部
93 スピーカ
100 車載装置
110 記憶部
130 プロセッサ
131 第1状態情報取得部
132 第2状態情報取得部
133 状態検出部
134 運転傾向判定部
135 画像取得部
136 距離取得部
137 対象車両検出部
138 報知制御部
図1
図2
図3