(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029964
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/50 20210101AFI20220210BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220210BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220210BHJP
H01M 50/572 20210101ALI20220210BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220210BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20220210BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20220210BHJP
【FI】
H01M2/20 A
H01M2/30 B
H01M2/10 M
H01M2/34 B
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/6561
H01M2/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133582
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄司
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA03
5H040AY10
5H040DD03
5H043AA19
5H043CA22
5H043FA04
5H043GA23
5H043GA30
5H043HA08D
5H043JA07F
5H043JA09D
5H043JA13F
(57)【要約】
【課題】従来の構成では、組電池の組み立てが難しい問題があった。
【解決手段】本発明の組電池は、電力体が収納される電池セル10と、電池セル10の蓋に取り付けられ、電池セル内の終電部品とカシメ固定される電極板11と、電極板11に溶接されるバスバー端子と、を有し、電極板11は、カシメ固定の位置から離れるに従って電池セルの蓋から離れるように形成される傾斜面を有し、バスバー端子は、カシメ固定の位置に向かって近づくに従って、電池セルの蓋に近づくような傾斜を有する接合面32aと、接合面32aの一端と連続して形成され、接合面32aに対して傾斜面に向かう方向の加重を伝達するベース部33a、33bと、を有し、電池セル10の蓋を構成する面を水平面としたとき、水平面と傾斜面とがなす角である第1の角度αは、水平面と接合面32aとがなす角である第2の角度βよりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力体が収納される電池セルと、
前記電池セルの蓋に取り付けられ、前記電池セル内の終電部品とカシメ固定される電極板と、
前記電極板に溶接されるバスバー端子と、を有し、
前記電極板は、前記カシメ固定の位置から離れるに従って前記電池セルの蓋から離れるように形成される傾斜面を有し、
前記バスバー端子は、
前記カシメ固定の位置に向かって近づくに従って、前記電池セルの蓋に近づくような傾斜を有する接合面と、
前記接合面の一端と連続して形成され、前記接合面に対して前記傾斜面に向かう方向の加重を伝達するベース部と、を有し、
前記電池セルの蓋を構成する面を水平面としたとき、前記水平面と前記傾斜面とがなす角である第1の角度は、前記水平面と前記接合面とがなす角である第2の角度よりも小さい組電池。
【請求項2】
前記傾斜面を構成する板の板厚は、前記接合面を構成する板の板厚よりも厚い請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記バスバー端子の周囲を固定するバスバー枠を有し、
前記ベース部は、前記バスバー枠を構成する枠体に沿ってL字型に形成される請求項1又は2に記載の組電池。
【請求項4】
前記ベース部に対して前記電池セル側に向かって加重を付与する加圧部品をさらに有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項5】
複数の前記電池セルの間に設けられるスペーサ枠をさらに有し、
前記スペーサ枠は、
前記電池セルの蓋が設けられる面を表面、前記上面に対向する面を底面とし、前記底面から前記表面に向かう方向を高さ方向、前記電池セルの一方の電極から他方の電極に向かう方向を幅方向、前記高さ方向及び前記幅方向に直交する方向を奥行き方向とした場合、
前記幅方向において対向する第1の側面及び第2の側面と、
前記高さ方向において対向する上面及び下面と、
前記第1の側面と前記第2の側面の少なくとも一方に設けられる第1の弾性部と、
前記下面に設けられる第2の弾性部と、
前記上面に設けられ、前記電極板に当接する支持面と、
を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項6】
前記第1の弾性部と前記第2の弾性部の前記奥行き方向の長さは、前記電池セルの前記底面の前記奥行き方向の長さの70%以上の長さを有し、
前記支持面の前記奥行き方向の長さは、前記電極板の前記奥行き方向の長さの70%以上の長さを有する請求項5に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の駆動用バッテリとして利用される組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、駆動用電力を供給するために、複数の電池を組み合わせた組電池が用いられる。組電池は、複数の電池セルを積層するように重ね、積層した電池を直列接続した電池スタックを少なくとも1つ含む。そして、電池スタックでは、電池セルを積層した状態で隣接する電池セルの上面の高さにばらつきが生じる。そこで、このような高さにばらつきがある電極同士を電気的に接続する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の組電池の製造方法は、バスバーを保持した複数の保持部を薄肉の連結部により連鎖的に連結したバスバーホルダを、電池セルの電極に近付けて、各電池セルの電極の高さのばらつきに合わせて各連結部の連結片を変形させる。また、各保持部のバスバーを、ガイドと位置決めピンとの隙間の範囲内で支持板に沿う方向に移動させ、さらに、支持板と係止突起との間で位置決めピンに沿う方向に移動させて、隣り合う2つの電池セルの電極に接点部が接触する姿勢の位置にバスバーを移動させる。すると、隣り合う2つの連結部の開口の内側に配置されたバスバーの接点部が、隣り合う2つの電池セルの電極にそれぞれ接触し密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、隣り合う電極を連結するバスバー(以下バスバー端子と称す)は、サイズが小さいという特徴がある。そして、隣接する電極間に高さの差があることがあるため、溶接する際には加重をかけて、高さの差に起因する溶接不良を防止する必要がある。そのため、バスバー端子を溶接する際には、加重をかける場所と溶接を行う箇所がほぼ同一の箇所となるため、加重をかける場所の位置精度が必要になる問題がある。しかしながら、この加重をかける場所の位置精度に関する問題について特許文献1ではなんら解決されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、組電池の組み立てを容易にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組電池の一態様は、電力体が収納される電池セルと、前記電池セルの蓋に取り付けられ、前記電池セル内の終電部品とカシメ固定される電極板と、前記電極板に溶接されるバスバー端子と、を有し、前記電極板は、前記カシメ固定の位置から離れるに従って前記電池セルの蓋から離れるように形成される傾斜面を有し、前記バスバー端子は、前記カシメ固定の位置に向かって近づくに従って、前記電池セルの蓋に近づくような傾斜を有する接合面と、前記接合面の一端と連続して形成され、前記接合面に対して前記傾斜面に向かう方向の加重を伝達するベース部と、を有し、前記電池セルの蓋を構成する面を水平面としたとき、前記水平面と前記傾斜面とがなす角である第1の角度は、前記水平面と前記接合面とがなす角である第2の角度よりも小さい。
【0008】
本発明の組電池は、溶接対象の場所とは異なるバスバー端子のベース部を介して溶接対象の接合面を傾斜面に押しつける加重を付与する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組電池によれば、組電池の組み立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる組電池の一部の斜視図である。
【
図2】実施の形態1にかかる組電池の一部の上面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる組電池のバスバー端子の斜視図である。
【
図4】実施の形態1にかかる組電池のバスバー端子の組み込み方法を説明する図である。
【
図5】実施の形態1にかかる組電池のバスバー端子によって電池セルの高さの差を吸収する様子を説明する図である。
【
図6】実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠の構造を説明する図である。
【
図7】実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠に電池セルを組み込んだ状態を説明する図である。
【
図8】実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠による公差管理の簡略化の効果を説明する模式図である。
【
図9】実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠による電池セルの傾き低減効果を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
以下で説明する組電池は、複数の電池セルが直列接続され1つの電池として機能する電池スタックの1つを説明するが、組電池は、複数の電池スタックが並列接続されていてもよい。また、以下では、実施の形態1にかかる組電池の特徴の1つである組電池の構造的な特徴について説明する。
【0013】
図1に実施の形態1にかかる組電池の一部の斜視図を示す。
図1では、電池スタックを構成する電池セルのうち7つ分を抜き出したものである。
図1に示すように、電池スタックは、電池セル10をスペーサ枠20を介して積層するように重ねたものである。
図1では、複数の電池セル10うち元も右側に位置する電池セル10のみが見える状態となっており、他の電池セル10は、スペーサ枠20により隠れた状態となっている。
図1において見える電池セル10にあるように、電池セル10は、電極となる電極板11を有する。
【0014】
また、実施の形態1にかかる組電池1では重ね合わせた電池の上部にバスバー枠30を設け、バスバー枠30内に配置するバスバー端子により隣接する2つの電池セル10の電極を電気的に接続する。以下では、このバスバー端子及びバスバー端子が接続される電極板11の詳細な構成について説明する。
【0015】
なお、
図1では、バスバーカバー40を示した。バスバーカバー40は、電池セル10の2つの電極のそれぞれに対して設けられるバスバー枠30の端部付近をつなぐように積層された電池セル10及びスペーサ枠20の上部にはめ込まれる。詳しくは後述するが、このバスバーカバー40は、バスバー端子に対して加重を付与する加圧部品としても機能する。
【0016】
図2を参照してバスバー端子について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる組電池の一部の上面図である。なお、
図2では、バスバー端子31の全体を示すためにバスバーカバー40が取り付けられていない状態を示した。
図2に示すように、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバー端子31がバスバー枠30の枠内に配置される。また、バスバー端子31は、隣り合う2つの電池セル10の電極板11を接続するようにU字形状を有する。
【0017】
続いて、バスバー端子31の単体の構成について説明する。
図3に実施の形態1にかかる組電池のバスバー端子31の斜視図を示す。
図3に示すように、バスバー端子31は、U字形状を有する。そして、一方の端部に互いに隣接する電池セル10のうちの一方の電池セル10の電極板11(以下、電極板11aとも称す)に接合される接合面32aが設けられ、他方の端部に互いに隣接する電池セル10うちの他方の電池セル10の電極板11(以下、電極板11bとも称す)に接合される接合面32bが設けられる。そして、接合面32aと接合面32bとの一端を接続するようにベース部33が設けられる。ベース部33は、側面視ではL字形状を有し、L字形状の一端において接合面32a及び接合面32bと接続される。
【0018】
また、詳しくは、後述するが、バスバー端子31を構成する板の板厚は、電極板11を構成する板の板厚よりも薄く形成される。特に、バスバー端子31の接合面32a及び接合面32bの板厚は、電極板11を構成する板の板厚よりも薄く形成される。また、接合面32a及び接合面32bは、電池セル10の蓋を構成する面を水平面としたとき、バスバー枠30内に収まった状態で、解放端となる他端側が当該水平面に対して電池セル10側に近づくような傾斜を有する。
【0019】
続いて、バスバー端子31の組み込み方法について説明する。
図4に実施の形態1にかかる組電池のバスバー端子の組み込み方法を説明する図を示す。
図4は、接合面32と電極板11との接合部分がわかる組電池1の断面図である。
【0020】
図4に示すように、実施の形態1にかかる組電池1では、電極板11が電池セル10の蓋に取り付けられ、電池セル10内の終電部品とカシメ固定される。そして、電極板11は、カシメ固定の位置から離れるに従って電池セル10の蓋から離れるように形成される傾斜面を有する。この傾斜面は、電池セル10の蓋を水平面とした場合、当該水平面とのなす角が第1の角度αとなるように形成される。
【0021】
また、
図4では、バスバー端子31のベース部33を構成する面を平行面33aと垂直面33bとにより構成する物とした。平行面33aと垂直面33bは、バスバー枠30を構成する枠体に沿ってL字形状となるように形成される。そして、垂直面33bの一端に連続して形成されるように接合面32aが設けられる。そして、接合面32aは、電池セル10の蓋を水平面とした場合、当該水平面とのなす角が第2の角度βとなるように形成される。また、接合面32aは、電極板11のカシメ固定の位置に向かって近づくに従って電池セル10の蓋に近づく傾斜を有する。
【0022】
そして、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバーカバー40をベース部33の平行面33aに押し当て、バスバーカバー40を介して平行面33aに加重を付加する。これにより、接合面32aが電極板11に押し当てられる。このとき、ベース部33をL字形状としていることで、接合面32aを電極板11に押し当てた際に接合面32aに変位を生じさせやすくなる。また、実施の形態1にかかる組電池1では、第1の角度αを第2の角度βよりも小さくする。これにより、バスバー端子31を電極板11に押し当てた際に接合面32aに変位を生じさせ、後述する電池セル10の高さの差を吸収することができる。
【0023】
なお、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバー端子31の板厚を電極板11の板厚よりも薄くする。特に、バスバー端子31の接合面の板厚を電極板11の板厚よりも薄くすると好適である。これにより、電極板11に接合面を押し当てた際に接合面32に変位を生じやすくさせることができる。
【0024】
続いて、実施の形態1にかかる組電池1において、隣接する電池セル10に対してバスバー端子31を組み付けた状態について説明する。そこで、
図5に実施の形態1にかかる組電池のバスバー端子によって電池セルの高さの差を吸収する様子を説明する図を示す。
図5は、
図4のV-V線に沿った組電池1の断面図であって、2つの電池セル10を含む部分を示したものである。
【0025】
図5に示す例では、電池セル10aと電池セル10aに隣接する電池セル10bを示した。また、
図5では、電池セル10aに対して電池セル10bが高さH分だけ高い位置で組み付けられた状態を示した。
【0026】
このような場合、電池セル10aの電極板11aと接合面32aとの接合状態を示すA-A線に沿った断面をみると、電極板11aの傾斜面と接合面32aは点aで接する。このとき、電極板11aの傾斜面が接合面32a側に近づくような傾斜を有しているため、電極板11aの傾斜面と接合面32aとの距離は接合面32aと電池セル10aの蓋との距離ほどは離れない。
【0027】
また、電池セル10bの電極板11bと接合面32bとの接合状態を示すB-B線に沿った断面をみると、電極板11bの傾斜面と接合面32bとは面全体が接する。この電池セル10b側では、バスバー端子31を電極板11に押し当てた際に接合面32bが高さH分だけ変位して、電極板11bの傾斜面と接合面32bとは面全体が接する状態となる。
【0028】
上記説明より、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバー端子31の接合面について、接合面の開放端が電池セル10の蓋に近づくような傾斜を持たせ、バスバー端子31のベース部33に加重を付与することで、接合面を電極板11に押し当てた際に隣り合う電池セル10の組み付けにおいて生じた高さを吸収する変位を接合面に生じさせる。これにより、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバー端子31の溶接箇所を押さえつけることなくバスバー端子31の溶接箇所に加重を付与しながらバスバー端子31と電極板11とを溶接することができる。つまり、実施の形態1にかかる組電池1では、組電池の組み立てを容易化することができる。
【0029】
また、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバー端子31に加重を付与する治具がバスバー端子31と電極板11とを溶接する箇所から離れているため、治具にスパッタによる汚れを防止する対策をする必要がない。
【0030】
また、実施の形態1にかかる組電池1では、第1の角度αを第2の角度βよりも小さくする。これにより、実施の形態1にかかる組電池1では、バスバー端子31により電極板11が電気的に接続される2つの電池セル10の組み付け高さに差が生じても、当該高さの差を接合面の変位により吸収することができる。このとき、バスバー端子31の板厚を電極板11の板厚よりも薄くすることで、この変位をさらに容易にすることができる。
【0031】
実施の形態2
実施の形態2では、組電池1で用いられるスペーサ枠20について詳細に説明する。実施の形態2では、電池セル10の蓋が設けられる面を表面、上面に対向する面を底面とし、底面から表面に向かう方向を高さ方向(例えば、Y方向)、電池セル10の一方の電極から他方の電極に向かう方向を幅方向(例えば、X方向)、高さ方向及び幅方向に直交する方向を奥行き方向(例えば、Z方向)とする。
【0032】
図6に実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠20の構造を説明する図を示す。
図6では、X方向から見たスペーサ枠20の側面図(例えば右側面図)を図面中段に示し、右側面図の左方向から見た第1面の側面図を図面上段に示し、左側面図の右方向から見た第2面の側面図を図面下段に示した。
【0033】
図6に示すように、スペーサ枠20は、第1面側のスペーサ枠20の外周を囲む枠を有する。そして、枠に囲まれる領域の平坦面にX基準面を形成する。このX基準面は、電池セル10の側面のうちX方向に延在する面が接する。また、枠を構成する面のうちX方向に対向する第1の側面と第2の側面の一方にY基準面を形成する。また、Y基準面に対向する面に弾性部22を形成する。なお、Y基準面に弾性部22を形成することもできる。Y基準面には、電池セル10においてX方向で対向する側面の一方が当接する。
【0034】
スペーサ枠20は、枠を構成する面のうちY方向に対向する上面と下面のうち下面に弾性部23を形成する。また、上面には支持面(例えば、Z基準面)を形成する。詳しくは後述するが、Z基準面には電池セル10の電極板11が当接する。また、Z基準面が形成される側には、スペーサ枠20にバスバー枠30を固定するスペーサ枠固定爪21が形成される。
【0035】
また、
図6の下段に示すように、第2面には櫛歯構造24が形成される。この櫛歯構造24は電池セル10を冷却するための冷却風の流路を構成するものである。
【0036】
続いて、
図6の第1面側に電池セル10を組み込んだ状態について説明する。そこで、
図7に実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠に電池セルを組み込んだ状態を説明する図を示す。
図7に示すように、実施の形態2にかかる組電池1では、弾性部22によりスペーサ枠20に組み込まれた電池セル10は、Z方向の側面がY基準面に押し当てられる。また、実施の形態2にかかる組電池1では、弾性部23によりスペーサ枠20に組み込まれた電池セル10は、電極板11がZ基準面に押し当てられる。
【0037】
このとき、スペーサ枠20では、Z基準面に電極板11を押し当てる構成とすることで、公差管理を簡略化する。また、スペーサ枠20では、Z基準面の幅と弾性部23の幅を適切に設定することで電池セル10の製造工程で生じた電池セル10のケース膨張による電池セル10の傾きを低減する。
【0038】
そこで、模式図を用いて公差管理の簡略化と、電池セル10の傾き防止の効果について
図7及び
図8を参照して説明する。なお、
図7及び
図8では、スペーサ枠20の効果を説明するために比較例としてスペーサ枠200を示す。また、
図7及び
図8では、スペーサ枠20に実施の形態1で説明した電池セル10を組み込み、比較例となるスペーサ枠200には電極の形状が電池セル10とは異なる電池セル100を組み込む。
【0039】
まず、
図8に実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠20による公差管理の簡略化の効果を説明する模式図を示す。
図8では、上段にスペーサ枠200に電池セル100を組み込んだ比較例を示し、下段に実施の形態2にかかるスペーサ枠20に電池セル10を組み込んだものを示した。なお、スペーサ枠200とスペーサ枠20とではZ基準面が当接する部分が異なる。また、スペーサ枠200は、弾性部22及び弾性部23に相当する弾性部220及び弾性部230を有する。
【0040】
図8に示すように、比較例では、スペーサ枠200のZ基準面が電池セル100の蓋に当接する。この場合、スペーサ枠200の底面(例えば、溶接基準面)から電池セル100の蓋の表面までの長さL10の公差と、溶接の対象となる電極板110の厚さL20の公差の2つの公差を管理しなければならない。
【0041】
一方、実施の形態2にかかるスペーサ枠20では、Z基準面が電池セル10の電極板11に当接する。そのため、実施の形態2にかかるスペーサ枠20では、スペーサ枠200の底面(例えば、溶接基準面)から電池セル10の電極板11の表面までの長さL1の公差のみを管理すれば、溶接対象の電極板11の高さ管理が可能である。
【0042】
続いて、
図9に実施の形態2にかかる組電池のスペーサ枠による電池セルの傾き低減効果を説明する模式図を示す。
図9では、Z基準面を含むスペーサ枠及び電池セルの断面を示した。また、
図9においても、上段にスペーサ枠200に電池セル100を組み込んだ比較例を示し、下段に実施の形態2にかかるスペーサ枠20に電池セル10を組み込んだものを示した。
【0043】
図9に示すように、比較例にかかるスペーサ枠200は、Z基準面のZ方向の長さである幅W120と電極板110の幅W2との差が、スペーサ枠20のZ基準面の幅W12と電極板11の幅W2との差よりも大きくなる。また、比較例にかかるスペーサ枠200は、弾性部230のZ方向の長さである幅W110と電池セル10の底面の幅W1との差が、スペーサ枠20の弾性部23の幅W11と電池セル10の底面の幅W1との差よりも大きくなる。
【0044】
ここで、比較例にかかるスペーサ枠200では、実施の形態2にかかるスペーサ枠20よりも電池セル10と当接する部分の長さ(或いは幅)が小さくなる。そのため、電池セル100の製造工程で電池セル100に膨らみが生じると、電池セル100が傾いてスペーサ枠200に固定されてしまうはめ込み不良が生じるおそれがある。しかしながら、実施の形態2にかかるスペーサ枠20では、電池セル10と当接する部分の長さ(或いは幅)がスペーサ枠200よりも大きいため膨らみが生じても電池セル10が傾くことなくスペーサ枠20をはめ込むことができる。
【0045】
上記説明より、実施の形態2にかかるスペーサ枠20によれば、電池セル10に製造工程上でケースの膨張が生じても電池セル10を傾けることなくスペーサ枠20にはめ込むことができる。スペーサ枠20への電池セル10のはめ込みにおいて電池セル10に傾きが生じるとバスバー端子31を電極板11に溶接する際に溶接不良が生じる可能性が高くなる。しかし、実施の形態2にかかるスペーサ枠20を用いることで電池セル10のケース膨張によらず電池セル10の傾きを防止することができるため、バスバー端子31と電極板11の溶接の信頼性を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 組電池
10 電池セル
11 電極板
20 スペーサ枠
21 スペーサ枠固定爪
22 弾性部
23 弾性部
24 櫛歯構造
30 バスバー枠
31 バスバー端子
32 接合面
33 ベース部
40 バスバーカバー