(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029968
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】感染予防用の膝載せ座椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 3/16 20060101AFI20220210BHJP
A47C 9/00 20060101ALI20220210BHJP
A47C 4/04 20060101ALI20220210BHJP
A47G 5/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A47C3/16
A47C9/00 Z
A47C4/04 Z
A47G5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133594
(22)【出願日】2020-08-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000160810
【氏名又は名称】久野 浩光
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩光
【テーマコード(参考)】
3B091
3B095
【Fターム(参考)】
3B091CA14
3B095AA10
3B095AC10
3B095CA10
(57)【要約】
【課題】コロナ等の伝染病から感染を予防する為の座椅子である。キャバレー、クラブの接客でガイドラインの感染予防(マスク着用、座席間隔を広げる)を行うと、お客側としては接客サービス満足感が得られない。
【解決手段】ヒザ抱っこしつつ、遮蔽カバーで覆えるような座椅子を形成することを解決手段とする。つまり接客女性を横向きにして、お客の膝上へ座らせる形態をとりつつ、女性全体をカバーで覆って遮蔽する。カバー座椅子の作りは、上半身が入る方形箱の側面ひとつだけ取除き、右側面と天井面を180度折り曲げると再接触する辺を繋ぎ合せ、中央側面に透明窓を設けて、形成する。
使用時は、お客男性が座椅子を膝上に載せ、座面に接客女性が横座りするものである。呼気も接触も遮断され、感染予防できる。女性がやや横を向き、流し目すれば、窓を通してお客とアイコンタクト出来る。互いの距離が近いので、小さな声でも会話に支障ない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面と、背凭れ面と、左側面材からなる左用座椅子部品において、
座面と背凭れ面と左側面材は互いにほぼ直角に繋ぎ合せてなり、この座面はおよそ四角形とし、この左側面材の高さは想定使用者の座高程度の寸法とし、この背凭れ面は許容範囲内の形状寸法であるとし、その許容最小寸法は座面の後辺と左側面材の上端奥角を結んでなる三角形であり、その許容最大寸法は左側面材と同一高さと座面の後辺からなる長方形であるとし、これら座面と背凭れ面と左側面材は気密性の平面素材で形成すると共に、気密的に繋ぎ合せるものとし、
この左用座椅子部品の1個はその姿勢のまま維持させたうえで、左用座椅子部品を左右鏡像反映させてなる鏡像異性体(enantiomer)を右用座椅子部品とし、この右用座椅子部品を上下ひっくり返した姿勢の右側面材と、維持させていた左用座椅子部品の左側面材を重ね合わせて一体化して重合側面材とし、この重合側面材には透明窓を気密的に設けてなる、膝載せ用の座椅子。
【請求項2】
請求項1記載の膝載せ用の座椅子において、左用の背凭れ面と重合側面材と右用の背凭れ面の3面が屏風状に折畳めるように屈曲可能な接合材で繋ぎ合せ、左右の座面も折畳めるように屈曲可能な素材もしくは屈曲可能な接合材で繋ぎ合せて形成してなる、膝載せ用の座椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、座椅子と仮称する。本質的には、伝染病の感染を予防する為の防疫用の遮蔽板、カバー、ガード、パーテーションである。具体的に説明すると、キャバレー、クラブなどの接待飲食店用に、感染予防具として遮蔽カバー付きの座椅子を着想した。お客男性の膝上に接客女性が座るという接客形態を考えだし、膝上にこの座椅子を載せ、その座椅子に接客女性が座るという形態である。つまりヒザ抱っこである。従来物品との類似性は、遮蔽板よりも座椅子のほうが近いので、座椅子と記載する。
本願は新型コロナ(COVID-19)予防を想定したものであるが、インフルエンザやその他の飛沫伝染病を予防するものである。
本願の膝載せ座椅子なる物品は、新しい物品である。膝載せ座椅子に類似する物は、従来物品の中に無い。それゆえ「膝載せ座椅子」なる名称や部材名や用語の表現は、適切か判断しかねるし、語句の変更もあり得る。
膝載せ人とは、風俗店におけるお客男性である。膝乗り人とは、風俗店従業員の接客女性である。男女双方の位置関係は、横向きヒザ抱っこ状態である(
図1)。
【背景技術】
【0002】
新型コロナが世界中に拡がり、パンデミックが起こった。感染予防の為に、いろいろな予防策がとられるようになった。マスク、フェイスマスク、遮蔽板衝立、天井吊りの遮蔽シート、他人と社会的距離を空ける事などである。
しかしながらスナック、バー、キャバクラなどの接待飲食店では、大打撃を受けている。マスクで顔半分を覆い、1m離れての接客である。顔の表情は半分見えず、声はマスクでくぐもって聞こえ難く、それで距離位置も離れていては、会話がはずまず、楽しくない。来店客は減る一方である。
非特許文献1のコロナ予防の為の「接客業のガイドライン」は、以下の4項目である。
・マスクを着用する。(フェイスシールド、マウスシールドでの代用可能)
・入店時の検温をする。
・パーテーションを用いた場合、ソーシャルディスタンスは不要。
・感染拡大国から入国後、14日未満のお客様の入店は規制する。
パーテーションという遮蔽物で仕切るならば、マスク着用もソーシャルディスタンスも不要になる、との説明である。それならば、お客男性の膝上に接客女性が座る状態であっても、両者を隔てる遮蔽物で仕切れば、ガイドライン規則に違反しないと考えた。そしてその様な座椅子をデザインした物品が、本願である。
「他人を膝上に座らせる」という行為は、奇異に思われがちである。だが「ヒザ抱っこ」はたいていの親子間で行われている行為であるし、それゆえ一般用語になっている訳である。また「大人を座らせるのは体重が重過ぎるのではないか」と不安に思われがちだが、それも杞憂である。お客男性は店舗椅子に座っているので、膝に他人の体重が掛かったとしても、その荷重は椅子座面や骨格が支えるだけであり、男性側の筋肉負荷は無く、長時間座られても鬱血せず、ほとんど負担無いのである。その証拠例としてバングラデシュの国内において、電車内に空席が無いけど座りたい人は、他人の膝上に座るのが常識となっている。
先願特許の調査を行ったが、類似先願特許は見当たらなかった。とりあえず「座椅子」「遮蔽」「病気」で検索ヒットした特許公報を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-208473号(背凭れ付きの単純形の座椅子)、A47C3/16
【特許文献2】特開2011-137588号、「飛沫物遮蔽用エアカーテン装置」、F24F9/00
【特許文献3】特開2011-85582号、「放射線遮蔽安全ガラス」、G21F1/06
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本水商売協会ホームページ、「接客業のガイドライン」、2020年8月掲載
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の課題は、ヒザ抱っこした当人と他者の呼気飛沫を、互いに遮蔽する事である。
副次的な課題は、積重ね可能とする事である。ヒザに載せた他者の全体を遮蔽物で覆うとすると、大容積な器具にならざるを得ない。大容積な器具は、積み重ね可能である事が求められる。その理由は、製造、運搬、販売、収納する場合に、積み重ね可能であると製造コストや作業効率や収納効率上の利点になるからである。ここでいう積重ね可能とは、物品を変形させないまま積重ね出来る構成だけでなく、物品を折畳んでから積重ねられる構成も含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
懸かる課題解決の為、お客の膝上に接客女性が座り、双方の間を遮蔽カバーで仕切る事を解決手段とする。カバー付き座椅子である。膝上に座るといっても、背を向けてではなく、横向きの座り方である。そうすれば接客女性が横を向けば、互いに顔を合せられる。
座椅子の構成を具体的に説明すると、座面と背凭れ面と左側面材とで左用座椅子部品を形成する。座面と背凭れ面と左側面材は互いにほぼ直角に繋ぎ合せる。座面はおよそ四角形とする。左側面材の高さは想定使用者の座高程度の寸法とする。背凭れ面は許容範囲内の形状寸法であるとし、その許容最小寸法は座面の後辺と左側面材の上端奥角を結んでなる三角形であり、その許容最大寸法は座面の後辺と左側面材の縦辺からなる長方形であるとする。これら座面と背凭れ面と左側面材は気密性の平面素材で形成すると共に、気密的に繋ぎ合せるものとする。
つぎに上記の左用座椅子部品の1個はその姿勢のまま維持させたうえで、左用座椅子部品を左右鏡像反映させてなる鏡像異性体(enantiomer)を右用座椅子部品とし、この右用座椅子部品を上下ひっくり返した姿勢の右側面材と、維持させていた左用座椅子部品の左側面材を重ね合わせて一体化して重合側面材とし、この重合側面材には透明窓を気密的に設け、膝載せ用の座椅子を形成するものである。
【0007】
さらに望ましい構成としては、膝載せ用の座椅子の、左用の背凭れ面と重合側面材と右用の背凭れ面の3面が屏風状に折畳めるように屈曲可能な接合材で繋ぎ合せ、左右の座面も折畳めるように屈曲可能な素材もしくは屈曲可能な接合材で繋ぎ合せて構成するものである。
ここでいう「ほぼ直角」とは、微細な許容角を含む直角である。幾何学的に狭義な直角ではない。
ここでいう「およそ四角形」も、微細な変形を含む四角形である。幾何学的に狭義な四角形ではない。角部分に面取りやアール曲線をつけた形状も含めての四角形である。
ここでいう想定使用者とは、一般的には膝載せ人となるお客男性である。想定使用者の座高程度とは、成人男性の平均座高統計値ということになる。細かな事情をいえば、男性の頭髪が反転側の座面に触れずに済む条件は、以下の式になる。
(側面材の高さ)≧(男性の平均座高-男性の平均大腿部厚さ+男性の髪形厚さ)
しかしながら来店するお客の身長や髪形はさまざまである。それゆえ「座高」ではなく、許容誤差を含めた「座高程度」と記載している。本願が外国出願される場合には、当該国の成人男性の平均座高程度となる。
ここでいう窓の透明素材とは、対面する相手が見える程度の透明さがあれば充分である。色付きの透明板や半透明やハーフミラーでもよい。窓素材は、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロンシートが有力候補であるが、強化ガラスや他素材でも構わない。
ここでいう気密性とは、一般社会生活で認められている程度の、ゆるい気密性である。近距離からクシャミしても飛沫が漏出しない程度の気密性で充分である。厚手ジーンズ生地や絨毯生地でもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願の膝載せ座椅子は、3つの作用の重ね合せによって、飛沫感染予防効果が高い。
第一作用は、遮蔽板の作用である。載せ人(お客男性)と乗り人(接客女性)の間は、気密性の平面素材を気密的に繋ぎ合せた重合側面材と窓と背凭れ面で仕切られるので、男性が息吹き飛沫(咳クシャミ、大声)を飛ばしても遮断される。
第二作用は、男性の姿勢向きを基準にして、女性の姿勢は90度横向きなので、女性の息吹き飛沫は横方向へ拡散し、男性側に届き難くなる。
第三作用は、擬似エントツ作用によって、双方の吐息飛沫は上昇するので、互いの吸気に混入し難くなる。男女両者とも膝載せ座椅子と密接するので、隙間空気は体温で温められて上昇する。擬似エントツ作用とは、垂直で高低差があり、なおかつ平滑な空間と、その空間全体を温める熱源という4条件が揃ってこそ生じる、空気上昇作用である。上昇した空気量を補うべく、部屋の中下層から新鮮な空気が供給されるという空気循環となるので、互いの呼気は相手側の吸気には混入し難くなる。
本願の膝載せ座椅子は、接触感染予防効果がある。お客男性は、接客女性を膝に座らせ、飲酒で自制心が緩んでくれば、触れたい欲求に駆られがちである。しかしお客男性は重合側面材、座面、背凭れ面で仕切られるので、手が届かず、接触は遮断される。背凭れ面は、最小面積でも
図8に示すように、座面の後辺と重合側面材の端角を結んでなる三角形なので、接触遮断する作用を果たしている。また女性の体重で押えつけられているので、座椅子は動かせないし、男性も身動きできず、手を伸ばす事は出来ない。
【0009】
本願の膝載せ座椅子は、店舗収容客数を維持もしくは高める効果がある。接客業では、座席数を一つでも多くする事が利益に直結する。現状ではコロナ予防のソーシャルディスタンスで、お客と接客女性が距離を空けるので、収容来客数は半分以下になってしまっていた。「膝載せ座椅子での接客形式」を採用すれば、ソーシャルディスタンス不要になるので、収容来客数は従来通りか、従来より増やせる。非特許文献1の「接客業のガイドライン」にて、遮蔽板(パーテーション)が有る場合の接客では、マスクもソーシャルディスタンスも不要である旨が記載されている。
本願の膝載せ座椅子は、利き手左右対応効果がある。「膝載せ座椅子での接客形式」では、お客男性が片手でグラスを持つ為に、利き手側スペースが広い事が望ましい。膝載せ座椅子は、鏡面異性体を合せた構成なので、上下反転させて対処できる。利き手が左利きのお客さまの場合には、実施例1の膝載せ座椅子を上下反転させればよい。
図1Aを左右反転させた図のごとくになる。
本願の膝載せ座椅子は、擬似的なスキンシップ効果がある。スキンシップ効果とは、触合いによって癒され、血圧低下やストレスが解消される効果である。本願構成は、あくまで座椅子が介在しているが、膝上に体重が掛かり、相手の動きも体重移動として伝わるので、スキンシップ効果を擬似的に得られる。
ちなみに「背凭れ面の許容最大寸法の長方形」という構成要件は、余計に嵩張らないという作用を果たしている。
図1のような使用中でも、
図9のような折畳み状態でも、背凭れ面が許容寸法内であれば嵩張らずに済む。「背凭れ面の許容最小寸法の三角形」という構成要件は、接触遮断作用のみならず、重合側面材と座面の形状や強度を最低限維持する作用を保障している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の座椅子の使用状態(接客中)を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の座椅子の使用状態(女性待ち)を示す斜視図である。
【
図3】実施例1の座椅子を使用する直前状態を示す斜視図である。
【
図7】実施例2の座椅子をゆるく重ねた状態の斜視図である。
【
図9】実施例3の座椅子を折畳んだ状態の側面図である。図解し易いようにゴム素材は点線模様で図示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願の膝載せ座椅子は、平面素材の種類や、全体形状デザインによって、さまざまに構成し得る。まずは図解理解し易い構成として、実施例1を説明する。つぎに大量生産向きな構成を、実施例2で説明する。軽薄短小化した構成を実施例3で説明する。
【実施例0012】
図1~5を参照として実施例1を説明する。実施例1は、図面に表現し易く、公報閲覧者に理解し易い構成である。
プラスチック製の段ボール板2を
図4のように切りだす。一重破線は、谷折り線であり、二重破線は山折り線である。中央の3枚の長方形部は、すべて同寸法であり、縦は男性平均座高寸法で、横幅は男性平均胴体幅寸法とする。左の長方形部が左用背凭れ面3であり、下辺に左座面後部5を連続させる。また左用背凭れ面3の左上には円環状の握り手12を連続させる。
中心の長方形部は重合側面材9であり、透明アクリル板10を嵌め込む。重合側面材9の下辺には左座面前部4を連続させ、この左座面前部4の長辺には糊代片11を連続させる。重合側面材9の上辺には右座面後部8を連続させる。
右の長方形部が右用背凭れ面6であり、上辺に右座面前部7を連続させる。この右座面前部7の長辺にも糊代片11を連続させる。また右用背凭れ面6の右下には円環状の握り手12を連続させる。
この段ボール板2を、折り線の通りに折り曲げ、糊代片11で接着すれば、
図1に示すような座椅子1ができる。運搬や収納時には、屏風状に折畳めて、
図5のようになる。
お店で座椅子1を使用する方法を説明する。お客男性が座った状態(
図3)から、膝の上に座椅子1を載せ(
図2)、握り手12を持ち支える。そして座面に接客女性が座るのである(
図1)。座椅子1という遮蔽物があるので、マスクは不要となる。透明アクリル板10を通して、互いの顔表情を間近に見ながら会話を楽しむ事ができる。互いに密着しつつも、呼気は遮蔽され、接触も不可となるので、感染予防される。男性の右手側は広い空間が空いているので、グラスを持って飲んだり出来る。男性の手が左利きの場合には、座椅子1を上下反転させれば、左右鏡像反映させた形状となり、男性左手側が広く空くようになり、支障ない。お客男性がお帰りになったら、座椅子1は店舗ホールの片隅か店奥へ運び、消毒拭きしてから、屏風のように折畳み、収納スペースへ片づける。