(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029992
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】防鳥ネット取付具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20220210BHJP
【FI】
A01M29/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133658
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】520296598
【氏名又は名称】藤永 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】藤永 義一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB27
2B121BB32
2B121BB35
2B121EA21
2B121FA01
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】防鳥ネットの不慮の外れを防止し、掛止部の破損を抑制し、安全性、利便性に優れる防鳥ネット取付具の提供。
【解決手段】板片状のベース部と、第1の掛止部および第2の掛止部とを備え、第1の掛止部は、ベース部の上面から立設する第1の脚部と、その上端から第2の掛止部に向かう第1の腕部を有し、第1の腕部の先端部の下面に第1鉤部を有し、第2の掛止部は、ベース部の上面から立設する第2の脚部と、第2の脚部の上端から第1の掛止部に向かう第2の腕部とを有し、第1の腕部の上方に第2の腕部を配置し、その間にガイド通路を有し、第1の掛止部とベース部の上面との間に第1の掛止部内部領域を形成し、第2の掛止部とベース部の上面との間であって第1の掛止部内部領域以外の領域に第2の掛止部内部領域を形成し、第1の掛止部内部領域内に係止突起を設けた防鳥ネット取付具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板片状のベース部と、該ベース部の上面に設けられ相互に対向する、第1の掛止部および第2の掛止部と、を備える防鳥ネット取付具において、
前記第1の掛止部は、前記ベース部の上面から立設する第1の脚部と、該第1の脚部の上端から連続して前記第2の掛止部に向かう第1の腕部と、を有し、
前記第1の腕部の先端部の下面に第1鉤部を有し、
前記第2の掛止部は、前記ベース部の上面から立設する第2の脚部と、該第2の脚部の上端から連続して前記第1の掛止部に向かう第2の腕部と、を有し、
前記第1の腕部の上方に前記第2の腕部を配置し、前記第1の腕部と第2の腕部との間にガイド通路を有し、
前記第1の掛止部と前記ベース部の上面との間に第1の掛止部内部領域を形成し、
前記第2の掛止部と前記ベース部の上面との間であって第1の掛止部内部領域以外の領域に第2の掛止部内部領域を形成し、
前記第1の掛止部内部領域内に、防鳥ネットを係止するための係止突起を設けたことを特徴とする、防鳥ネット取付具。
【請求項2】
第1の腕部の先端部上面に第2鉤部を備え、第2の腕部の先端部下面に幅方向に連続する切欠部を備え、前記第2鉤部の上方に前記切欠部が配置されている請求項1に記載の防鳥ネット取付具。
【請求項3】
前記第1の脚部および前記第2の脚部は、ベース部上面中央に対する立設角度がいずれも鋭角を構成する請求項1又は2に記載の防鳥ネット取付具。
【請求項4】
前記第1の掛止部および前記第2の掛止部はいずれも可撓性を有し、
前記第1の掛止部の可撓性は、前記第2の掛止部の可撓性よりも大であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の防鳥ネット取付具。
【請求項5】
ベース部は、複数の接着剤浸透用角穴を隣接して配置している請求項1又は2に記載の防鳥ネット取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、建造物への鳥類の飛来や営巣を防止するための防鳥ネットを設置する際に使用される、防鳥ネット取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラス、鳩、雀等の鳥類が建造物へ飛来し、或いは営巣することにより、建造物への糞による汚染被害が多発している。
このような汚染被害を防止する手段として、良好な効果が得られているのが、防鳥ネットの設置である。
【0003】
防鳥ネットの設置に際しては、防鳥ネット取付具が使用される。例えばベランダの手摺、壁面、床面、桟部等といった設置面に複数の防鳥ネット取付具を固着し、防鳥ネット取付具に防鳥ネットの端部を掛け、防鳥ネットを張設する。防鳥ネット取付具の設置面への固着方法は、設置面が木製材料からなる場合にはビスを用いて行い、設置面がコンクリート等の硬質材料からなる場合には接着剤を用いて行う。
【0004】
このような防鳥ネット取付具としては、例えば、本体の基盤下縁から上向きの櫛歯状フックが一体に形成され側面U字としてあり、基盤の背面は固着面としてあることを特徴とする防鳥ネット取付具が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、意匠の創作として開示されるものとして、対向する二つのフックからなるM字型のフックの上部(V字形空間)から防鳥ネットの外周を構成するひもを嵌め込む構成の防鳥ネット取付具(ひも取付具)が公知である(例えば、特許文献2参照。)当該防鳥ネット取付具の底板には接着剤の注入孔として4個の孔を備えている。
【0006】
また、例えば、防鳥ネットを被取付物の表面(設置面)に取り付けるネット取付具であって、上記表面に固定される板状の取付部と、この取付部に連結されて、上記取付部との間に防鳥ネットを保持する掛止空間が形成される掛止部とを備える、防鳥ネット取付具が公知である(例えば、特許文献3参照。)。また、特許文献3には、取付部を接着剤で取り付ける場合、接着剤を取付穴の用面側に膨出して固化させることにより、取付強度を確保する構成が開示されている。
【0007】
また、例えば、防鳥ネットを壁面等の被取付物に取り付けるための防鳥ネット取付具であって、前記被取付物に固定されるベース部と、該ベース部上に断面略L字状の防鳥ネット端部の差込み溝を形成すると共に、該溝内にネット端部の抜け止め用膨出部を設けたフック部とを一体成形してなることを特徴とする防鳥ネット取付具が公知である(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-210003
【非特許文献2】意匠登録第1180087号公報
【特許文献3】実用新案登録第3206204号公報
【特許文献4】特許第6086076号公報
【0009】
上記特許文献1に係る防鳥ネット取付具は、櫛歯状フックに、防鳥ネット外れ防止突起を備える構成を開示している。一方で、防鳥ネットのネット線材は例えば、直径0.5mm程度と細いこと、および、防鳥ネットは一定の保形性能を有しているため防鳥ネット取付具に嵌め込んでも復元するように作用することから、防鳥ネット外れ防止突起を備えていても、櫛歯状フックから外れやすい。また、櫛歯状フックの長手方向に対して垂直方向(防鳥ネット取付具における上方向とする。)に防鳥ネットを張設する場合には、防鳥ネットが防鳥ネット外れ防止突起を乗り越えやすくなり、更に外れやすくなる。また、防鳥ネットの張設による負荷のために、櫛歯状フックが破損する可能性がある。また、他の実施形態として、網抜け防止ストッパを設ける構成を開示するが、このような場合には構成が大型化し、取り扱い上不便であった。
【0010】
また、非特許文献2に係る防鳥ネット取付具は、対向する二つのフックからなるM字型のフックの上部(V字状空間)が常に開口している。このため、上方に向けて防鳥ネットを張設する場合には、V字形空間から防鳥ネットが外れやすい欠点があった。また、底板に設けられた接着剤の注入孔から接着剤を注入し固化した状態において、底板が接着剤から外れやすい欠点があった。
【0011】
また、特許文献3に係る防鳥ネット取付具は、複数部品(取付部と掛止部)で構成されており、取付部を一旦設置した上で、取付部に防鳥ネットを当接し、掛止部をその上から係着させる必要がある。このため、取り扱いが不便な上に、掛止部を誤って落下させやすく、安全性の観点からも問題であった。
また、接着剤を取付穴の用面側に膨出して固化させることにより、取付強度を確保するが、取付穴から膨出させる程度によっては、取付強度を十分に発揮できない場合がある。
【0012】
また、特許文献4に係る防鳥ネット取付具は、一部品で構成され、他部品を落下させることがない点で、安全性において優れる。また、ベース部上に断面略L字状の防鳥ネット端部の差込み溝を形成しているため、上方へネットを張設した場合には、ネットは比較的外れにくい。しかしながら、側方へネットを張設する場合には、L字状の差込み溝の半分は使用できず、抜け止め用膨出部があっても差込み溝は常時開口していることから、抜け止め用膨出部のみでは、ネットの外れを防止するには不十分であった。このため、安定して使用するためには、常に上方へネットを張設するように、防鳥ネット取付具を設置しなければならず、不便であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、より確実に防鳥ネットの不慮の外れを防止し、掛止部(先行文献におけるフック)の破損を抑制し、底板が接着剤から外れることがなく、他部品を落下させることがなく安全性において優れ、上方、側方のいずれにも防鳥ネットを張設できる防鳥ネット取付具の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
板片状のベース部と、該ベース部の上面に設けられ相互に対向する、第1の掛止部および第2の掛止部と、を備える防鳥ネット取付具において、
前記第1の掛止部は、前記ベース部の上面から立設する第1の脚部と、該第1の脚部の上端から連続して前記第2の掛止部に向かう第1の腕部と、を有し、
前記第1の腕部の先端部の下面に第1鉤部を有し、
前記第2の掛止部は、前記ベース部の上面から立設する第2の脚部と、該第2の脚部の上端から連続して前記第1の掛止部に向かう第2の腕部と、を有し、
前記第1の腕部の上方に前記第2の腕部を配置し、前記第1の腕部と第2の腕部との間にガイド通路を有し、
前記第1の掛止部と前記ベース部の上面との間に第1の掛止部内部領域を形成し、
前記第2の掛止部と前記ベース部の上面との間であって第1の掛止部内部領域以外の領域に第2の掛止部内部領域を形成し、
前記第1の掛止部内部領域内に、防鳥ネットを係止するための係止突起を設けたことを特徴とする、防鳥ネット取付具を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る防鳥ネット取付具によれば、防鳥ネットを上方に向けて張設する場合でも、防鳥ネットを側方に向けて張設する場合でも、より確実に防鳥ネットの不慮の外れを防止し、掛止部の破損を抑制し、安全性において優れ、上方、側方のいずれにも防鳥ネットを張設できるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具の平面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具の底面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具の正面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具の
図1におけるA-A断面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る防鳥ネットを設置した状態を示すものであり(a)は平面図,(b)は(a)におけるB-B断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具に防鳥ネットを張設した状態を示す正面図であって(a)は上方向に張設した場合、(b)は側方向に張設した場合を示す正面図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係る防鳥ネット取付具であって、(a)は1本の針状の係止突起を備えた防鳥ネット取付具、(b)は1本の針状の係止突起と2本の柱状の係止突起を備えた防鳥ネット取付具である。
【
図8】本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具に防鳥ネットを張設した状態を示す説明図であって(a)は上方向に張設した場合、(b)は側方向に張設した場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1実施形態に係る防鳥ネット取付具は、板片状のベース部と、該ベース部の上面に設けられ相互に対向する、第1の掛止部および第2の掛止部と、を備える防鳥ネット取付具において、
前記第1の掛止部は、前記ベース部の上面から立設する第1の脚部と、該第1の脚部の上端から連続して前記第2の掛止部に向かう第1の腕部と、を有し、
前記第1の腕部の先端部の下面に第1鉤部を有し、
前記第2の掛止部は、前記ベース部の上面から立設する第2の脚部と、該第2の脚部の上端から連続して前記第1の掛止部に向かう第2の腕部と、を有し、
前記第1の腕部の上方に前記第2の腕部を配置し、前記第1の腕部と第2の腕部との間にガイド通路を有し、
前記第1の掛止部と前記ベース部の上面との間に第1の掛止部内部領域を形成し、
前記第2の掛止部と前記ベース部の上面との間であって第1の掛止部内部領域以外の領域に第2の掛止部内部領域を形成し、
前記第1の掛止部内部領域内に、防鳥ネットを係止するための係止突起を設けたことを特徴とする、防鳥ネット取付具である(第1の構成)。
【0018】
上記第1の構成によれば、第1の腕部と第2の腕部との間に形成されたガイド通路から防鳥ネットのネット線材を通し、第2の掛止部内部領域を経て、第1の掛止部内部領域に前記ネット線材を配置することで、係止突起によって、ネット線材が係止される。上方に防鳥ネットを張設すると、第1の掛止部の上面と第2の掛止部の下面が当接し、ガイド通路は閉塞し、第1の掛止部と第2の掛止部の双方で荷重を支える。このため、防鳥ネットが防鳥ネット取付具から外れることが阻止される。また、第1の掛止部と第2の掛止部の双方で荷重を支えることから、第1の掛止部の破損を抑制することができる。また側方に防鳥ネットを張設すると、第1の掛止部内部領域で、ネット線材が係止突起によって係止される。万一、第1鉤部と係止突起によって十分にネット線材の抜け止めができなかった場合であってもネット線材は第2の掛止部内部領域にとどまり、不用意に防鳥ネットが防鳥ネット取付具から外れることは抑止される。また、一部品で構成されることから、他部品を落下させることがない点で、安全性において優れる。
【0019】
上記第1の構成において、第1の腕部の先端部上面に第2鉤部を備え、第2の腕部の先端部下面に幅方向に連続する切欠部を備え、前記第2鉤部の上方に前記切欠部が配置されていてもよい(第2の構成)。
【0020】
上記第2の構成によれば、第2鉤部と切欠部の組合せによって、ガイド通路を確保した上で、第2鉤部によって、防鳥ネットの不慮の外れを防止できる。
【0021】
上記第1の構成もしくは第2の構成において、前記第1の脚部および前記第2の脚部は、ベース部上面中央に対する立設角度(第1の脚部の立設角度α、第2の脚部の立設角度β)がいずれも鋭角を構成するものであってもよい(第3の構成)。
【0022】
上記第3の構成によれば、上記いずれかの構成の作用効果を奏する上に、防鳥ネットが不用意に第1の掛止部および第2の掛止部に引っ掛かることを抑制できる。
【0023】
上記第1の構成から第3の構成のいずれかの構成において、前記第1の掛止部および前記第2の掛止部はいずれも可撓性を有し、前記第1の掛止部の可撓性は、前記第2の掛止部の可撓性よりも大であるものであってもよい(第4の構成)。
【0024】
上記第4の構成によれば、上記いずれかの構成の作用効果を奏する上に、防鳥ネットを上方に向けて張設した場合に、容易にガイド通路を閉塞させることができる。
また、防鳥ネットの取り外し時において、ネット線材を第2の掛止部内部領域から第2の掛止部に沿ってネット線材を摺動させ上方に負荷をかけることで、第2の掛止部の僅かな可撓性によりガイド通路を確保させ、防鳥ネットを容易に取り外すことができる。
【0025】
上記第1の構成から第4の構成のいずれかの構成において、前記ベース部は、複数の接着剤浸透用角穴を隣接して配置していてもよい(第5の構成)。
【0026】
上記第5の構成によれば、上記いずれかの構成の作用効果を奏する上に、ベース部の下面に接着剤を塗布することによって、前記複数の接着剤浸透用角穴からベース部の上面に接着剤が角穴の角部から溢出し、隣接して溢出した複数の接着剤相互が繋がることで、接着剤の上部が拡大し、強固に防鳥ネット取付具を設置することができる。
【実施例0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施例1に係る防鳥ネット取付具100を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成が省略されたりしている。また、各部に示された構成の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0028】
本発明の実施例に係る防鳥ネット取付具100は、
図1に示すように、平面視において、長方形輪郭を有する板片状のベース部3の上面に、第1の掛止部1および第2の掛止部2を設けた構成である。本実施例に係る防鳥ネット取付具100は、ベース部3、第1の掛止部1および第2の掛止部2を硬質合成樹脂(ポリカーボネート)により一体に形成されている。ここで
図1における第1の掛止部1の基端が設けられる側を右側、第2の掛止部2の基端が設けられる側を左側、
図1における上方を後側、下方を前側として説明する。
【0029】
図1に示すように、第1の掛止部1の基端側に隣接する右端に沿って、3つの接着剤浸透用角穴3A、3B、3Cが設けられている。また第2の掛止部2の基端側に隣接する左端に沿って、3つの接着剤浸透用角穴3D、3E、3Fが設けられている。
【0030】
各接着剤浸透用角穴3A~3Fは、ベース部3の底面側から上面側へ貫通して設けられている。隣接する3つの接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)のうち、中央の接着剤浸透用角穴3B(3E)は、平面視長方形状である。該中央の接着剤浸透用角穴3B(3E)を挟んで形成される他の二つの接着剤浸透用角穴3A、3C(3D、3F)は平面視略五角形状である。中央の接着剤浸透用角穴3B(3E)は、第1の掛止部1(若しくは第2の掛止部2)への干渉を避けるために平面視長方形状としてある。他の二つの接着剤浸透用角穴3A、3C(3D、3F)は、各角部から接着剤5が放射状に溢出しやすいように略五角形状としてある。
【0031】
隣接する各接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)は2mm程度の間隔で配置されている。隣接する各接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)の間隔は、各接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)から溢出した接着剤5相互がベース部3の上面32で接触可能となるように構成している。
【0032】
また、ベース部3の上面中央前側および上面中央後側位置には、ビス用穴3G、3Hが貫通形成されている。設置場所が接着剤5による接着に不向きである場合に、ベース部3がビス用穴3G、3Hを利用してビスで固定できるように構成してある。
【0033】
図2に示すように、ベース部3の下面には、左右の二箇所に薄肉部30を形成している。薄肉部30の底面視輪郭は、ベース部3の中央近傍から左右の接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)へ向かうように、台形状としてある。薄肉部30の形成に伴い、ベース部3には凹状の接着剤ガイド空間33が形成されている。接着剤ガイド空間33は、各接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)と繋がっている。換言すれば、各接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)は薄肉部30に形成されている(
図4参照。)。接着剤ガイド空間33は、底面に接着剤5を塗布して設置面7に接着する際に、設置面7に挟まれる接着剤5を各接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)へ案内するための空間である。
【0034】
またベース部3の下面のうち中央前方から後方にかけて、両面テープ4を貼着してある。両面テープ4は、防鳥ネット取付具100を設置面7へ仮止めするために使用するものである。ビス用穴3G、3Hは両面テープ4によって閉塞されるが、ビス用穴3G、3Hを使用する際は、仮止めに使用した両面テープ4をビスで貫通することとなる。
【0035】
図3に示すように、正面図において、板片状のベース部3の上面に、第1の掛止部1および第2の掛止部2が対向して一体に設けられている。
【0036】
第1の掛止部1は、第1の脚部10および第1の腕部11を備えている。第1の脚部10はベース部上面中央に対する立設角度αが70°程度としてある。
第1の腕部11は、第1の脚部10の上端から連続して、対向する第2の掛止部2に向かうように配置されている。第1の掛止部1の第1の腕部11は厚さが5mm程度である。第1の掛止部の第1の脚部10から第1の腕部11に至る外面は、湾曲した形状(R面)となっている。
【0037】
第1の腕部11の先端部の下面には、第1鉤部12を有している。また、第1の腕部11の先端部の上面には、第2鉤部13を有している。第1の脚部10、第1の腕部11、第1鉤部12、およびベース部3の上面32に囲まれる空間の領域を、第1の掛止部内部領域1Aとする。
【0038】
本実施例においては、第1の腕部11の下面に、柱状の第1係止突起14Aを備えている。
また第1の腕部11の下面に連続する第1の脚部10の側面に、柱状の第2係止突起14Bを備えている。換言すれば、第1の掛止部内部領域1Aに、柱状の第1係止突起14Aおよび第2係止突起14Bを備えている。
【0039】
第2の掛止部2は、第2の脚部20および第2の腕部21を備えている。第2の脚部20はベース部上面中央に対する立設角度βが70°程度としてある。
第2の腕部21は、第2の脚部20の上端から連続して、対向する第1の掛止部1に向かうように配置されている。第2の掛止部2の第2の腕部21は厚さが6mm程度であり、第1の腕部11よりも厚く形成されている。このため、第2の掛止部2は、第1の掛止部1と比べて可撓性が低くなっている。
第2の掛止部2の第2の脚部20から第2の腕部21に至る外面は、湾曲した形状(R面)となっている。
【0040】
第2の腕部21の先端側の下面には、第2の腕部21の幅方向に連続する切欠部22を有する。
第2の脚部20、第2の腕部21、およびベース部3の上面に囲まれる空間の領域であって、第1の掛止部内部領域1Aを除く空間の領域を、第2の掛止部内部領域2Aとする。
【0041】
第1の腕部11の上方に第2の腕部21が配置され、前記第1の腕部11と第2の腕部21との間にはガイド通路31が形成される。ガイド通路31の高さ寸法(即ち、第1の腕部、第2の腕部間の距離)は0.5mm未満としてある。このため、直径0.5mmのネット線材60が通過できない寸法としてある。第2鉤部13の上方に切欠部22が配置されている。このためガイド通路31は正面視において直線状にはならず、屈曲した空間からなる通路となっている。第2鉤部13は、防鳥ネット6の不用意な外れを防止するように配置されている。
【0042】
設置面7に設置する際には、接着剤5による接着、ビスによる固着を選択できる。
接着剤5による接着を行う場合には、底面の両面テープ4の剥離紙を剥離した上で、底面に接着剤5を塗布する。設置面7に対して防鳥ネット取付具100を押し付けると、
図5(a)(b)に示すように、両面テープ4による仮止めがされるとともに、接着剤5が接着剤ガイド空間33を通して接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)へ流入する。
【0043】
底面側から接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)に流入した接着剤5は、接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)の上面側から溢出し、
図5(a)に示すように、隣接する接着剤浸透用角穴から溢出した接着剤5と結合される。
左右それぞれ3箇所の接着剤浸透用角穴3A、3B、3C(3D、3E、3F)で溢出した接着剤5相互が結合される。
【0044】
設置面7が木材等のように接着剤5による接着に適さない場合には、ビスによる固着を行うことができる。ビスによる固着を行う場合には、底面の両面テープ4の剥離紙を剥離し、設置面7に対して防鳥ネット取付具100を押し付け、ベース部の中央前側および中央後側位置に設けたビス用穴3G、3Hからビスを取付けることによって、行うことができる。
【0045】
本実施例に係る防鳥ネット取付具100は、
図6に示すように、正面に対して、上方向への防鳥ネット6の張設(
図6(a)、
図8(a)参照。)と、側方向への防鳥ネット6の張設(
図6(b),
図8(b)参照。)を選択することができる。
いずれの場合も、防鳥ネット6の端部から平行する複数本のネット線材60を束とし、ガイド通路から束とした複数本のネット線材60を挿し込み、第2の掛止部内部領域2Aに落とし込み、次いで、第1鉤部12とベース部3の上面32との間を潜らせて、第1の掛止部内部領域1Aに移動させる。第1の掛止部内部領域で、束とした複数のネット線材60を係止突起14A(14B)と係止させる。
ガイド通路31からのネット線材60の差込は、第1の腕部11が可撓性を有しているため、ガイド通路31の高さ寸法は拡大し、容易に第2の掛止部内部領域2Aへ落とし込むことができる。
【0046】
図6(a)に示すように、上方に向けて防鳥ネット6を張設した場合には、第1の掛止部1は上方へ撓み、第2の掛止部2と当接する。第2の掛止部2は、第1の掛止部1よりも可撓性が低いので、第2の掛止部が、第1の掛止部1を受け止めるように作用する。このため、ガイド通路31は閉塞され、防鳥ネット6は不用意に外れないこととなる。
【0047】
また、第1の掛止部1と第2の掛止部2とが当接することで、掛止部としての強度が向上し、第1の掛止部1の破損の虞を低減させることができる。
【0048】
図6(b)に示すように、側方(第1の掛止部1で支持する方向)に向けて防鳥ネット6を張設した場合には、側方への引張力の分力が、傾斜した第1の脚部を引き起こすように作用する。その結果、第1の腕部11が第2の腕部21に近づき、ガイド通路31を閉塞するように作用させることができる。この作用によって、防鳥ネット6がより不用意に外れないものとすることができる。
【0049】
一方、防鳥ネット6を取り外す際には、係止突起(第1係止突起14A、第2係止突起14B)に係止されたネット線材60を外し、第1鉤部12とベース部3の上面32との間を潜らせて、第2の掛止部内部領域2Aへネット線材60を移動させる。次いで、第2の掛止部2に沿わせながらガイド通路31を通すことによって、ネット線材60を防鳥ネット取付具100から容易に取り外すことができる。
【0050】
また上記実施例に係る防鳥ネット取付具100は、上述の通り、第1の掛止部1の第1の脚部10は、ベース部上面中央に対する立設角度αが70°程度で、且つ、第1の掛止部1の第1の脚部10から第1の腕部11に至る外面は、湾曲した形状(R面)となっている。また、第2の掛止部2の第2の脚部20は、ベース部上面中央に対する立設角度βが70°程度で、且つ、第2の掛止部2の第2の脚部2-から第2の腕部21に至る外面は、湾曲した形状(R面)となっている。このため、防鳥ネット取付具100自体が、ネット線材60に引っ掛かりにくい形状となっている。防鳥ネット6の張設の際に、不用意にネット線材60に引っ掛かることが抑制される。
【0051】
上記実施例においては、係止突起は2本(第1の係止突起14Aおよび第2の係止突起14B)設けた構成としているが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、
図7(a)に示すように、係止突起は少なくとも1本あればよく、また、
図7(b)に示すように、3本以上設けた構成とすることも可能である。また係止突起の設置位置は、第1の掛止部内部領域1Aであればよく、例えば、ベース部30の上面32から立設するものであってもよい。
また係止突起の形状は、限定されるものではなく、針状、柱状、鉤状等、種々の形状を採用することが可能である。
【0052】
上記実施例においては、第1の脚部10はベース部上面中央に対する立設角度αが70°程度としてある。また第2の脚部20のベース部上面中央に対する立設角度βが70°程度としてある。しかしながら本発明は上記各立設角度に限定されるものではなく、鋭角であればよい趣旨である。
【0053】
また上記実施例においては、防鳥ネット取付具100の形成材料をポリカーボネートとしたが、本発明は当該ポリカーボネートに限定されるものではなく、他の硬質合成樹脂等により形成することもできる。
【0054】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述した実施例は本発明を実施するための例示にすぎない。よって、本発明は、上述した実施例に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施例を適宜変更して実施することが可能である。