(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030024
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20220210BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220210BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220210BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220210BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20220210BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220210BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220210BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220210BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/44
A61K47/24
A61K47/36
A61K38/43
A61K45/00
A61P1/14
A61K31/496
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020133719
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】520296738
【氏名又は名称】バルベット ケーケア
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB01
4C076BB36
4C076CC16
4C076EE27G
4C076EE30G
4C076EE31G
4C076EE52
4C076EE53
4C076EE54
4C076FF52
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084DC01
4C084DC02
4C084DC22
4C084MA52
4C084NA09
4C084NA20
4C084ZC611
4C084ZC612
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA27
4C086MA52
4C086NA09
4C086NA20
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】 ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供する。
【解決手段】 植物性油に高濃度の粘度調節剤を含有させることにより、ペットの口蓋に付着するような程度の粘度を有するゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供し、前記組成物に、それぞれの処方により調剤された粉末薬剤を投入して混合すると、組成物と粉末薬剤との間の層分離を引き起こさずに混合され、指ですくったとき、流れ落ちることなく、混合物の全体がペットの口蓋に付着し、組成物成分が溶けるとき、薬剤が自然に吸収されるようにすることにより、ペットに調剤薬の投薬時、適正含量を投薬することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット対象の投薬用途に有用な、油成分が含有されたゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項2】
前記油成分に、シリコン系またはバイオガム系粘度調節剤がさらに含有されたことを特徴とする請求項1に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項3】
前記油成分に、酵素が含有されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項4】
前記酵素が、タンパク質分解酵素(Protease)、炭水化物分解酵素(Alpha Amylase)、食餌繊維のセルロース分解酵素(Cellulase)、脂肪分解酵素(Lipase)、及び多糖類のペクチン分解酵素(Pectinase)よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項3に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項5】
前記ペット投薬補助用のゲル組成物が、温度25℃で、回転式粘度計の回転数10rpmを測定基準として、9,500~100,000cPの粘度を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項6】
前記油成分が、植物性油または動物性油から選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項7】
前記植物性油が、キャノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、グレープシードオイル、及び玄米油よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項6に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項8】
前記シリコン系粘度調節剤が、シリコアルミン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項9】
前記バイオガム系粘度調節剤が、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、デュータンガム、セルロースガム、及びジェランガムよりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に、処方による調剤粉末薬剤が、ペットの体重当たり1日標準餌摂取量の5~10重量%で含有されて包装されたペット投薬補助用のゲル剤形製品。
【請求項11】
前記ゲル剤形が、水相では難溶解性であり、油相では溶解性であることを特徴とする請求項10に記載のペット投薬補助用のゲル剤形製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に係り、さらに詳しくは、油成分単独または前記油成分に高濃度の粘度調節剤を含有することにより、ペットの口蓋に付着するような程度の粘度を有するゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供し、前記組成物に、それぞれの処方により調剤された粉末薬剤を混合すると、指ですくったとき、流れ落ちることなく、混合物の全体がペットの口蓋に付着し、組成物成分が溶けるとき、薬剤が自然に吸収されるようにした、ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会で、ペットとは、人と一緒に暮らすコンパニオンアニマルであって、犬と猫が代表的であり、人の周辺で密接な関係を維持し、人から動物以上の関心と世話を受けて育つようになる。
【0003】
そのため、コンパニオンアニマルであるペットの健康に異常が生じ、痛いときは、動物病院に行って診断を受け、薬物を服用させるようになるが、これらの薬物は、大部分粉末または錠剤からなり、経口で投与することになるが、このとき、嗅覚が発達しているペットは、薬の臭いのため、薬物の服用を拒否することが頻繁に発生し、経口からの薬物の投与が不便であり、投与含量に至らないことがあり、改善が要求される。
【0004】
このための努力の一環として、液体状態の薬剤や栄養剤等をさらに簡便にペットに飲ませるために、ペット用の薬液経口投入容器(特許文献1)が考案されているが、これは、薬を粉にして水に混ぜ、液体化してから、薬注入用スプーンまたは注射器を用いてペットの口に強制的に投与する方法である。
【0005】
しかしながら、ペットは、経口投与される薬物の臭いや苦味のため、飲み難く、投与される薬物を飲んでも再び吐き出してしまい、事実上の薬物治療が困難であり、特に、注射器で投薬するとき、犬や猫が苦いと分かると、その後は、注射器を手に取るだけで避けることになるという問題があった。
【0006】
その他の試みでは、ペット用飼料の内部に収納空間部が形成され、固形、カプセルまたは粉末状の薬物を収納して、ペットが飼料を食べると、それと同時に飼料中に収納された薬物を飲むことになり、ペットに拒否感なく薬物を服用させる方法(特許文献2)があり、あるいは、薬物をジャムや蜂蜜に混ぜて投与する方法が用いられているが、この場合は、糖度があまりにも高く、体に有害であるというまた他の問題が生じた。
【0007】
これ以外にも、中空空間に薬物を投与したカプセル剤を凍結させ、ペットに経口投与することが提案されたことがある(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、未だ、ペットへの調剤薬の投薬時、薬を嫌がるという問題を解消するに足りなく、適正含量の投薬に困難があった。
【0009】
ここに、本発明者は、従来の問題点を解消するために努力した結果、油成分単独または前記油成分への高濃度の粘度調節剤の添加により、粘度を調節し、ペットの口蓋に付着するような程度の粘度を有するゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供し、前記ゲル状組成物に、それぞれの処方により調剤された粉末薬剤を投入して混合すると、指ですくったとき、流れ落ちることなく、混合物の全体がペットの口蓋に付着し、組成物成分が溶けるとき、薬剤が自然に吸収されるようにすることで、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録実用新案第0329124号公報(2003.09.26)
【特許文献2】韓国公開実用新案第2017-0000112号公報(2017.01.09)
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0321703号明細書(2012.12.20)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に調剤粉末薬剤が含有されたゲル剤形製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明は、油成分単独または前記油成分に、シリコン系またはバイオガム系粘度調節剤が含有されたゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供する。
【0014】
本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、油成分に酵素を含有してもよい。
【0015】
前記酵素として、好ましくは、タンパク質分解酵素(Protease)、炭水化物分解酵素(Alpha Amylase)、食餌繊維のセルロース分解酵素(Cellulase)、脂肪分解酵素(Lipase)、及び多糖類のペクチン分解酵素(Pectinase)よりなる群から選ばれたいずれか一つを含有してもよい。
【0016】
上述した本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、温度25℃で、回転式粘度計の回転数10rpmを測定基準として、9,500~100,000cPの粘度を有することを特徴とする。
【0017】
このとき、本発明に係る油成分は、植物性油または動物性油を含み、前記植物性油は、キャノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、グレープシードオイル、及び玄米油よりなる群から選ばれたいずれか一つを用いることである。
【0018】
また、前記シリコン系粘度調節剤が、シリコアルミン酸ナトリウムであることが好ましく、前記バイオガム系粘度調節剤が、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、デュータンガム、セルロースガム、及びジェランガムよりなる群から選ばれたいずれか一つを用いることである。
【0019】
本発明は、前記ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に、処方による調剤粉末薬剤が、ペットの体重当たり1日標準餌摂取量の5~10重量%で含有されて包装されたペット投薬補助用のゲル剤形製品を提供する。
【0020】
前記ゲル剤形製品は、水相では難溶解性であり、油相では溶解性である特徴を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、油成分単独または前記油成分に高濃度の粘度調節剤を含有することにより、ペットの口蓋に付着するような程度の粘度を提供することができる。
【0022】
本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、それぞれの処方により調剤された粉末薬剤をさらに含有してもよく、指ですくったとき、流れ落ちることなく、混合物の全体がペットの口蓋に付着し、組成物成分が溶けるとき、薬剤が自然に吸収されるようにすることにより、ペットに調剤薬の投薬時、適正含量を投薬することができる。
【0023】
したがって、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、ペットが好む味を加え、または酵素を加えて、消化吸収を高め、動物病院で製造された定量の粉末薬剤と簡単に混合する手法により所望の粘度を有するカスタマイズされた剤形を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に粉末薬剤が投入されたゲル剤形を示す写真である。
【
図2】本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物と粉末薬剤との間の水相における溶解挙動を示す写真である。
【
図3】本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に処方による粉末薬剤を混合し、試験動物に、エンロフロキサシン(Enrofloxacin)(5mg/kg)の薬物投与後、経時的な薬物の体内動態(AUC結果)を示すグラフである。
【
図4】本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に、処方による粉末薬剤を剤形別に調剤して投与した後、経時的な薬物血中濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳述する。
【0026】
本発明は、油成分単独または前記油成分に粘度調節剤が含有されたゲル誘導型のペット投薬補助用組成物を提供する。
【0027】
本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物の第1実施形態としては、油成分単独で含有されたものであって、前記油成分は、植物性油または動物性油を含み、植物性油の好適な一例としては、キャノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、グレープシードオイル、及び玄米油よりなる群から選ばれたいずれか一つを用いるものである。
【0028】
また、動物性油は、常温で液状を維持するものであれば、いずれも使用可能であり、馬油、スクアレン、ラノリン等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物の第2実施形態としては、前記油成分にシリコン系またはバイオガム系粘度調節剤がさらに含有されたものである。このとき、前記油成分は、植物性油の使用がさらに好ましい。
【0030】
本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物における植物性油は、キャノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、グレープシードオイル、及び玄米油よりなる群から選ばれたいずれか一つが用いられ、前記油成分は、組成物成分間の相溶性及び混和性を考慮して選ばれ得る。
【0031】
また、本発明の第1、2実施形態に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、指ですくったとき、流れ落ちることなく、容器に残留物が残らず、混合物の全体が持ち出される程度の粘度を有するように設計される。
【0032】
好適な粘度は、温度25℃で、回転式粘度計の回転数10rpmを測定基準として、9,500~100,000cPであり、前記粘度を有する組成物であれば、ペットの口蓋に付着されるので好ましい。このとき、前記粘度が9,500cP未満であれば、組成物が流れ落ち過ぎ、指で全体がすくい上げられず、適正な調剤薬の投与が難しく、100,000cPを超過すれば、組成物があまりにもぱさぱさして、調剤薬が混ざらず、投薬が難しいので好ましくない。
【0033】
図1は、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に粉末薬剤が投入されたゲル剤形を示す写真であって、指ですくったとき、流れ落ちることなく、混合物の全体がペットの口蓋に付着し、組成物成分が溶けるとき、薬剤が自然に吸収されるようにすることにより、ペットへの調剤薬の投薬時、適正含量を投薬することができる。
【0034】
さらに好ましくは、本発明の第2実施形態に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、油成分へのシリコン系またはバイオガム系粘度調節剤の含量に応じて粘度が調節されるが、本発明の実施例では、植物性油100重量部に対して、シリコン系粘度調節剤として用いられたシリコアルミン酸ナトリウムが20~45重量部で含有されるとき、前記粘度を満たす。このとき、前記範囲を外れると、目的とする粘度を達成することができない。すなわち、指ですくったとき、流れ落ちることなく、容器に残留物が残らず、混合物の全体が持ち出される程度の粘度を達成することができない。
【0035】
また、本発明の実施例において、バイオガム系粘度調節剤としてキサンタンガムを用いる場合、植物性油100重量部に対して、キサンタンガムが110~160重量部で含有されると、目的とする粘度を満たす。
【0036】
本発明の実施例では、キャノーラ油を挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明で用いられるシリコン系粘度調節剤は、Na2O:Al2O3:SiO2が1:1:13モルの割合で含有されたシリコアルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0038】
前記シリコアルミン酸ナトリウムは、白色の微細な無定形粉末または中身であり、105℃で2時間乾燥するときに減量するが、このとき、減量は、8.0重量%以下でなければならない。ここで、105℃で2時間乾燥してから定量するとき、酸化シリコン(SiO2)として6.0~76.0重量%、酸化アルミニウム(Al2O)として9.0~13.0重量%、酸化ナトリウム(Na2O)として4.0~7.0重量%を含有する。
【0039】
また、150℃で2時間乾燥してから、約5gを精密に量って90℃で含量になるまで加熱したとき、その減量は、8.0~13.0重量%の要件を満たさなければならない。
【0040】
また、本発明で用いられるバイオガム系粘度調節剤は、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、デュータンガム、セルロースガム、及びジェランガムよりなる群から選ばれたいずれか一つが用いられ、本発明の実施例では、キサンタンガムを用いているが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明の第1、2実施形態に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物には、酵素混合製剤がさらに含有されてもよい。
【0042】
前記酵素は、動物の消化管内で、食べ物を高分子有機化合物から低分子有機化合物へ加水分解させて、エネルギーを得ることを助けるタンパク質であって、タンパク質分解酵素(Protease)、炭水化物分解酵素(Alpha Amylase)、食餌繊維のセルロース分解酵素(Cellulase)、脂肪分解酵素(Lipase)、及び多糖類のペクチン分解酵素(Pectinase)よりなる群から選ばれて含有されてもよい。
【0043】
また、前記酵素と複合乳酸菌を一緒に含有することにより、生体内分解、消化及び毒素排出間の均衡を提供し、特に、便がゆるく、または下痢をする犬や猫、腸炎の予防、腸が弱い老犬、免疫が低下した犬や猫に投与することができる。
【0044】
また、鶏レバーパウダー(chicken liver powder)及び通常の添加剤として糖(Dextrose monohydrate)、乳化剤、保存剤等が含有されてもよい。
【0045】
前記鶏レバーパウダーは、タンパク質の優れた供給源であって、ビタミンA、ビタミンB、特に、ビタミンB12に富み、鉄、銅、亜鉛、クロム等の微量元素を含有しており、噴霧乾燥のパウダータイプであって、長期間保管が可能であり、季節を問わず使用できる。
【0046】
また、本発明は、上記した第1、2実施形態に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物は、処方による調剤粉末薬剤を含有するが、前記粉末薬剤が、ペットの体重当たり1日標準餌摂取量の5~10重量%で包装された投薬補助用ゲル剤形製品を提供する。
【0047】
前記それぞれの処方による調剤粉末薬剤の種類は、特に限定されないが、好適な一例としては、目、関節、肌、肝、腎臓、心臓、歯の病気の予防または治療用途の粉末薬剤を含有する。
【0048】
前記目に良い薬剤としては、ルテイン、アスタキサンチンを含有し、関節に良い薬剤としては、緑イ貝、グルコサミンを含有し、肌に良い薬剤としては、アロエ、システイン、L-メチオニンを含有し、肝に良い薬剤としては、ミルクシスル、L-カルニチン、オメガ3脂肪酸、及び伸張に良い薬剤としては、オメガ3脂肪酸、ビタミンB群、抗酸化剤を含有してもよい。また、心臓に良い薬剤としては、L-カルニチン、タウリン、緑茶抽出物(ポリフェノール)、ローズマリー抽出物(ポリフェノール)が含有されてもよく、犬猫の口腔炎、歯肉炎の予防薬剤としては、ミュータン分解酵素(Mutanase、歯石除去酵素)、セロリーオイルが用いられる。
【0049】
このとき、包装の剤形は、特に限定されないが、好ましくは、ペーストゲル剤形として、使い捨てスティック包装、歯磨き粉包装等として提供され得る。
【0050】
また、本発明は、前記ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物及びそれぞれの処方により調剤された粉末薬剤を投入後、混合してゲルを形成させ、前記ゲルを指ですくってペットの口蓋に付着させることにより、ペットに調剤薬を適正含量で投薬することができる。
【0051】
すなわち、本発明は、それぞれの成分間の混合時、ぱさぱさしたり流れ落ちたりしない最適の粘度が予め決まって用意されたゲル誘導型のペット投薬補助用組成物により、追ってそれぞれの処方により調剤された薬剤が粉末である場合、簡単な混合手段でもゲルタイプの剤形で提供することができる。
【0052】
図2は、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物と粉末薬剤との間の水相における溶解挙動を示す写真であって、水相では、全く溶解されない結果が確認される。
【0053】
したがって、本発明に係る組成物が油成分を主成分として含有しており、粉末薬剤と混合する場合、全体が油成分でコートされ、水に溶かしても溶けず、粉末薬剤を胃酸との接触を遮断して、腸に無事に届いて吸収されるようにする剤形が期待される。ここに、本発明に係る組成物は、同じ性分及び量の薬を他の方法で投薬するよりも、薬物が高い血中濃度で提供され得る。
【0054】
図3は、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に処方による粉末薬剤を混合し、試験動物にエンロフロキサシン(5mg/kg)薬物の投与後、経時的な薬物の体内動態パラメータのうち、AUC
t(n=4、mean+/- s.d.)の結果を示したグラフである。
【0055】
このとき、抗生剤成分のエンロフロキサシン粉末薬剤を、実施例2及び実施例11で製造された組成物に混合し、試験動物に投薬した結果(B、C)、滅菌蒸留水に混合した対照群(A)の場合よりも、血中薬剤成分の初期濃度が相対的に高く発現され、その濃度の持続性が確認された。
【0056】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳述する。
【0057】
本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
表1に示す成分のうち、シリコアルミン酸ナトリウムを除いた残りの成分を、それぞれの含量により、容器に投入し、20℃で60分間混合した。以後、熟成段階を経てから、シリコアルミン酸ナトリウム(乾燥含量6重量%、平均粒径8μm、pH10)をゆっくり添加して混合しながら、組成物を製造した。
【0059】
【0060】
<実施例3>
下記の表2に示すように、キャノーラ油100重量部に対して、シリコアルミン酸ナトリウムの含量を変えて添加することを除いては、上記した実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0061】
<比較例3>
下記の表2に示すように、キャノーラ油100重量部に対して、シリコアルミン酸ナトリウムの含量を変えて添加することを除いては、上記した実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0062】
<実施例5~10>
上記した表1の組成物成分のうち、植物性油成分のキャノーラ油100重量部に対して、粘度調節剤としてキサンタンガムを含有し、表4に示すようにその含量を変えて混合したことを除いては、上記した実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0063】
<比較例3~5>
下記の表3に示すように、キャノーラ油100重量部に対して、キサンタンガムの含量を変えて添加することを除いては、上記した実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0064】
<実施例11>
下記した表2の組成物成分をそれぞれの含量により、容器に投入し、20℃で60分間混合した。以後、熟成段階を経て組成物を製造した。
【0065】
【0066】
<実験例1>粘度の測定
上記した実施例及び比較例で製造された組成物について、回転式粘度計(BROOKFIELD(米国)、モデル番号:RVT)を用いて粘度を測定した。
【0067】
それぞれの測定しようとする組成物に、スピンドル(Spindle)を入れ、スピンドルの表示された部分まで漬かるようにした。スピンドルが沈むときは、少し斜めにして気泡が発生しないようにし、温度により粘度が大きく変わることが一般的であるので、温度安定化後、下記の条件により粘度を測定した。
【0068】
適切なスピンドルと速度(rpm)を選択した後、モーターオン/オフ(Motor on/off)キーを押して測定を開始し、安定した値に到達するまで待ち、その数値を記録した。モーターオン/オフキーを押して作動を停止し、サンプルを入れ替えた。
【0069】
1)Spindle No.:No.RV/HA/HB-6
2)回転速度(rpm):10
3)試料の温度:25℃
その結果を表3及び表4に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
上記した表3及び表4の結果から、温度25℃で、回転式粘度計の回転数10rpmの条件を基準として、9,500~100,000cP(centi Poise、センチポイズ)の粘度を満たす範囲を基づき、植物性油に粘度調節剤の種類及び含量を選定した。具体的に、実施例1乃至4の組成物は、キャノーラ油100重量部に対して、シリコアルミン酸ナトリウム20~45重量部で含有されるとき、前記粘度を満たし、実施例5乃至10の組成物の場合、キャノーラ油100重量部に対して、キサンタンガム110~160重量部で含有されるとき、目的とする粘度を満たした。
【0073】
前記粘度の範囲を有する組成物の場合、指ですくったとき、流れ落ちることなく、容器に残留物が残らず、混合物の全体が持ち出される程度であることが確認された。
【0074】
<実験例2>剤形安定性の評価
通常、食べ物が胃内に入ると、胃内で、液体は2時間、固形物は4時間停滞して、胃の運動により食べ物を細かくこなし、水分である粘液が出て、お粥みたいに柔らかくなり、長時間の胃内停滞時間中、胃から胃酸(pH=2塩酸)が分泌して、食べ物の消毒を行うようになる。
【0075】
このような関係により、ペット対象の投薬時、特に粉末薬剤の場合、従来、ウェット缶詰飼料、蜂蜜、ジャム、水、ドライ飼料、液状栄養剤、おやつ等に混ぜて食べさせてきたが、このような剤形と粉末薬剤を混合して投薬した場合、果たして薬効が維持するかについては、疑問が残る。
【0076】
図2は、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物と粉末薬剤との間の水相における溶解挙動を示す写真である。
【0077】
(a)は、ビタミン及び必須アミノ酸を有効性分として含有したペットの液状栄養剤用の商用製品、(b)は、実施例2の組成物、(c)は、マグロまたは鶏肉抽出物を含有したペット用おやつの商用製品、(d)は、鶏ささみと豚レバーが含有されたペット用おやつの商用製品を使ったものであって、これらに同一性分の粉末薬剤を混ぜて、38℃の水に5分間混合し、5分放置した結果である。
【0078】
その結果、公知の商用製品は、水に一部溶解しまたはエマルジョンとして浮遊状態であることが確認される。このような結果から、粉末薬剤成分が粘液(水分)条件の胃酸に露出して、粉末薬剤成分が相当部分破壊すると予想される。
【0079】
これに対して、実施例2の組成物は、水に全く溶解しなかったことが確認される。
【0080】
このような結果により、本発明に係る組成物が油成分を主成分として含有しており、粉末薬剤と混合する場合、全体が油成分でコートされ、水に溶かしても溶けないだけでなく、粘液(水分)環境の胃腸で難溶性に維持され、粉末薬剤を胃酸との接触を遮断して、腸に無事に届いて腸で吸収されると予想される。
【0081】
したがって、本発明に係る組成物は、同じ性分及び量の薬を他の方法で投薬するよりも、薬物が高い血中濃度で提供される剤形である。
【0082】
<実験例3>薬動学の分析
犬猫等のコンパニオンアニマルを対象として、前記エンロフロキサシンを経口投与すると、少ない体重のため、粉末に粉砕した後、分注して処方するしかないが、コンパニオンアニマルが飲み薬の給与を拒否し、この過程で薬物が消失することが頻繁に発生した。また、投与されたとしても、薬物の血中濃度及び効果にどのような影響を及ぼすのかについての実験結果は、有意味である。
【0083】
試験動物として、身体検査において臨床的に健康な雄ビーグル犬9頭を、この臨床実験に供試した。最近1か月間、抗生剤を適用した履歴のある動物は、実験対象に含めず、試験群は、3群に分類し、1群当たり3頭ずつ無作為で配置した。前記試験群は、粉末形態の抗生剤(エンロフロキサシン、5mg/kg)を、実施例2の組成物、実施例11の組成物、及び対照群として前記組成物の代わりに滅菌蒸溜水に抗生剤を混合して、試験群毎に製造し、試験動物に1回経口投与した。体重にかかわらず2.4mlずつ投与した。
【0084】
このとき、抗生剤及び試験製品の経口投与後、それぞれ0、15、30、45、60、90、120、180、300、420、960分に、経静脈から血液サンプルを採取し、試験管(ヘパリンチューブ)に入れ、1500rpmで5分間遠心分離した。分離した血漿は、E-チューブ(E-tube)に移し、-80℃で分析時点まで冷凍保管した。
【0085】
血中抗生剤濃度の測定は、HPLC-MS/MS(API 4000 LC-MS/MS system)を用いて、血漿中のエンロフロキサシンの経時的濃度を測定した[大韓民国慶北大学校獣医科大学の実施委託研究結果報告書2019.04]。
【0086】
薬動学的パラメータは、分析(model-independent analysis)方法を用いて算出した。最高血中濃度(Cmax)と最高血中濃度到達時間(Tmax)は、それぞれの個体の経時的な血中濃度曲線から直ちに求めた。消失速度定数(k)は、消失期の対数変換血中濃度を最小二乗して求め、半減期(t1/2)は、0.693/kから計算した。
【0087】
台形法により、血中濃度-時間曲線下面積(AUC
t)を求め、最終測定された濃度をkで除算した値を足し、無限時間までのAUC(Area Under the Curve、AUC
inf)を得た。AUC
infを投与用量で除算して総清掃率(clearance、Cl)を算出した。薬動学的パラメータは、それぞれの個体から得られた資料の平均と標準偏差で表示した。その結果を表6及び
図3に示した。
【0088】
【0089】
【0090】
図3は、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に処方による粉末薬剤を混合し、試験動物に、エンロフロキサシン(5mg/kg)薬物を投与した後、経時的な薬物の体内動態パラメータのうち、AUC結果を示したグラフであり、その実験結果、エンロフロキサシン粉末薬剤を実施例2の組成物に混合して、犬に投与する場合、対照群(飲み水)と一緒に投与したよりも、吸収程度が有意に増加(p<0.005)した。
【0091】
また、エンロフロキサシン粉末薬剤を実施例11の組成物に混合して投与したときも、エンロフロキサシンの血中濃度は、増加する傾向を示したが、個体間変異が大きく、統計的な有意性は認められなかった。
【0092】
前記結果から、飲み水と薬物を混ぜて投与するよりも、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物と混合して給与したとき、血中薬物濃度及び吸収程度が上昇することが確認された。
【0093】
したがって、実施例2及び実施例11の組成物は、粉砕した薬物の給与を嫌がる保護者に、薬物の効能を減少させない投薬補助制としての機能を行うことができる。
【0094】
特に、キャノーラ油を含む実施例2及び実施例11の組成物において、酵素混合製剤をさらに含む実施例2の場合、薬効成分の吸収能力を増進させることが確認された。
【0095】
<実験例4>剤形別の薬物濃度の変化
前記実施例2で製造された組成物に、抗生剤成分のエンロフロキサシン粉末薬剤を混合して、スティック包装のゲル剤形製品を製造した。このとき、犬の体重1kg当たり5mgのエンロフロキサシンを含有させた。
【0096】
他の試験群では、実施例2で製造された組成物に、エンロフロキサシンの錠剤剤形を混合し、対照群では、滅菌蒸溜水にエンロフロキサシン粉末薬剤を含有させて調剤して、それぞれの剤形別試験群を犬に経口投与した。
【0097】
投薬12時間(0、5、10、15、30、45、60、90、120、180、300、420、720分)の間、血液サンプルを採取し、それぞれHPLC-MS/MS(API 4000 LC-MS/MS system)を用いて、血中エンロフロキサシン濃度を分析した。
【0098】
【0099】
【0100】
図4は、本発明に係るゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に、処方による粉末薬剤を剤形別に調剤して投与した後、経時的な薬物血中濃度を示すグラフであって、前記結果から、実施例2で製造された組成物に粉末薬剤を混合した試験群Aの結果が、血中薬剤成分の初期濃度が顕著に高く発現された。
【0101】
以上、本発明は、記載された具体例についてのみ詳述されたが、本発明の技術思想の範囲内で、様々な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかなものであり、これらの変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することは、当然である。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット対象の投薬用途に有用な、油成分が含有されたゲル誘導型のペット投薬補助用組成物であって、
前記油成分100重量部に対して、シリコアルミン酸ナトリウムが20~45重量部含有され、または、前記油成分100重量部に対して、キサンタンガムが110~160重量部含有され、
温度25℃で、回転式粘度計の回転数10rpmを測定基準として、9,500~100,000cPの粘度を有することを特徴とする、ゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項2】
前記油成分に、酵素が含有されたことを特徴とする請求項1に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項3】
前記酵素が、タンパク質分解酵素(Protease)、炭水化物分解酵素(Alpha Amylase)、食餌繊維のセルロース分解酵素(Cellulase)、脂肪分解酵素(Lipase)、及び多糖類のペクチン分解酵素(Pectinase)よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項4】
前記油成分が、植物性油または動物性油から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項5】
前記植物性油が、キャノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、グレープシードオイル、及び玄米油よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項4に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のゲル誘導型のペット投薬補助用組成物に、処方による調剤粉末薬剤が、ペットの体重当たり1日標準餌摂取量の5~10重量%で含有されて包装されたペット投薬補助用のゲル剤形製品。
【請求項7】
前記ゲル剤形が、水相では難溶解性であり、油相では溶解性であることを特徴とする請求項6に記載のペット投薬補助用のゲル剤形製品。
【外国語明細書】