(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030050
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ドレーン材の打設方法及びそれに使用するドレーン材打設装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20220210BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
E02D3/10 103
E02D27/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133786
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502080047
【氏名又は名称】キャドテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591159675
【氏名又は名称】錦城護謨株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】503275129
【氏名又は名称】りんかい日産建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】佐々 真志
(72)【発明者】
【氏名】赤金 秀孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊治
(72)【発明者】
【氏名】大寺 正志
(72)【発明者】
【氏名】山内 義文
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】グエン タング タン ビン
(72)【発明者】
【氏名】浅田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】田口 博文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竹史
(72)【発明者】
【氏名】元水 佑介
【テーマコード(参考)】
2D043
2D046
【Fターム(参考)】
2D043DA10
2D043DC02
2D046DA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主に短尺のドレーン材の打設において効率よく施工でき、且つ、安全に作業を行うことができるドレーン材の打設方法及びそれに使用するドレーン材打設装置の提供。
【解決手段】所定長さLのドレーン材1の上端部に吊り具13を設け、マンドレル8内に挿通され、先端がマンドレル8の下端より引き出されたワイヤ9を吊り具13に連結し、ワイヤ9でマンドレル8内にドレーン材1を下方から引き入れた後、ドレーン材1の下端にアンカー部材を係止させ、ワイヤ9を繰り出しつつマンドレル8を地盤Aに貫入し、しかる後、マンドレル8を地盤Aより引き抜くことによってドレーン材1を埋設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレル内に挿通させたドレーン材の下端にアンカー部材を係止させた状態で前記マンドレルを鉛直又は斜めに貫入させた後、前記マンドレルを地盤より引き抜き、前記ドレーン材を地盤中に埋設するドレーン材の打設方法において、
所定長さのドレーン材の上端部に吊り具を設け、前記マンドレル内に挿通され、先端が前記マンドレルの下端より引き出されたワイヤを前記吊り具に連結し、該ワイヤで前記マンドレル内に前記ドレーン材を下方から引き入れた後、前記ドレーン材の下端に前記アンカー部材を係止させ、前記ワイヤを繰り出しつつ前記マンドレルを地盤に貫入し、しかる後、前記マンドレルを地盤より引き抜くことを特徴としてなるドレーン材の打設方法。
【請求項2】
前記マンドレルを地盤に貫入した後、前記ワイヤを緩めた状態で前記マンドレルの下端を前記吊り具より高い位置まで引き抜き、しかる後、前記ワイヤを前記吊り具より取り外す請求項1に記載のドレーン材の打設方法。
【請求項3】
前記吊り具は、前記ドレーン材の上端部を封鎖するキャップと一体に形成されている請求項1又は2に記載のドレーン材の打設方法。
【請求項4】
吊り具が一体に形成されたキャップを前記ドレーン材の上端部に着脱可能に取り付け、ドレーン材の埋設後に前記吊り具が一体に形成されたキャップに替えて土砂混入防止用のキャップを前記ドレーン材の上端部に取り付ける請求項3に記載のドレーン材の打設方法。
【請求項5】
前記ドレーン材の所定長さを、前記地盤を構成する地表と液状化層との間に介在する非液状化層に留まる長さとした請求項1~4の何れか一に記載のドレーン材の打設方法。
【請求項6】
前記ドレーン材の所定長さを、前記地盤を構成する液状化層の上層部に留まる長さとした請求項1~4の何れか一に記載のドレーン材の打設方法。
【請求項7】
請求項1~6に記載のドレーン材の打設方法に使用するドレーン材打設装置において、
前記ドレーン材の上端部に取り付けられる吊り具と、前記マンドレル内に挿通され、先端が前記吊り具に連結されるワイヤと、該ワイヤを繰り出し・巻取り可能なワイヤ操作手段とを備えていることを特徴としてなるドレーン材の打設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂質地盤や軟弱地盤等の地盤に埋設されるドレーン材の打設方法及びそれに使用するドレーン材打設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飽和状態にある砂質地盤等の地盤(以下、液状化層という)では、地震動等による衝撃で地盤中の土砂粒子間の水(間隙水)の圧力が急激に上昇することにより土砂粒子間の均衡が崩れ、土砂が液体の如き挙動を示す現象、即ち、地盤の液状化現象が問題視されている。
【0003】
従来、液状化が懸念される地盤には、防災上の観点から、予め地盤の液状化を防止する対策を講じる必要があり、この液状化対策としては、液状化層に通水性を有する複数のドレーン材を埋め込み、このドレーン材に地震動等の衝撃により生じた過剰間隙水を流入させることにより、間隙水圧の上昇を抑制するようにした間隙水圧抑制による液状化防止方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
この間隙水圧抑制による液状化防止方法に用いられるドレーン材は、地盤全体の透水性を高めるため、液状化層の下端に至る深さ(一般的に20~30m程度)まで打設されるようになっている。
【0005】
このような長尺のドレーン材を打設するには、先ず、ドレーン材打設装置を所定の位置に移動させるとともに、ドレーン材を巻き取ったリールをドレーン材打設装置に設置する。
【0006】
次に、当該リールから繰り出されたドレーン材をマンドレルの上端より内部に挿入し、マンドレルの下端から引き出し、引き出したドレーン材の下端にアンカー部材を取り付ける。
【0007】
そして、ドレーン材打設装置によってマンドレルとともにドレーン材を改良対象地盤の所定深さ、即ち、液状化層の下端に至る深さまで打設する。
【0008】
次に、マンドレルのみを地盤より引き抜き、ドレーン材を液状化層に埋設し、しかる後、ドレーン材の上端を所定の位置で切断し、ドレーン材の上端に土砂混入防止用のキャップを装着し、埋設作業が完了する。
【0009】
一方、近年では、人命や建物等の資産保全を最優先とする従来の防災対策に加え、優先事業の継続自体を目的とした防災手法(以下、BCP防災という)が着目されている。
【0010】
BCP防災では、地震時の液状化現象に対してある程度の被害は許容しつつ、事業継続性の確保或いは早期の復旧再開を可能とする対策が求められる。
【0011】
具体的には、道路や資材ヤード等であれば、地震後に液状化現象が発生したとしても地表面の変状が緊急車両や工事車両が通行可能な程度に収まるような対策を施せば必要十分であると考えられている。
【0012】
そこで、近年では、このようなBCP防災に対応すべく、液状化層全体にグラベルドレーンを設置するのではなく、液状化層の上層部のみにグラベルドレーンを設置し、液状化層の深層部での液状化を許容しつつも、液状化層上層部における液状化を抑止することで、ボイリングによる噴砂を抑止し、地盤表層の変状を極力抑えることが検討されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平09-189025号公報
【特許文献2】特開2015-101938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の如き従来の技術は、液状化層の上層部にグラベルドレーンを設置するものであり、バーチカルドレーンパイプやプラスチックボードドレーン(PBD)等の既製の人工ドレーン材を設置する場合に比べ、施工が煩雑であり、作業効率が悪いという問題があった。
【0015】
さらに、この従来技術では、液状化層の上層部を改良するため、埋設するドレーン材が当該液状化層の上層部に到達していなければならず、地表面と液状化層との間に地震動等による繰り返しせん断力による液状化のおそれがない土層(以下、非液状化層という)が介在される場合等の地表面から比較的深い位置に液状化層が位置する場合、必然的にドレーン材による改良長が深くなるという問題があった。
【0016】
また、工場で製造される人工ドレーン材に対し、グラベルドレーンは、天然材料を用いるため、粒度組成、透水係数などの品質にばらつきが生じることも問題であった。
【0017】
一方、従来のドレーン材の打設方法では、地盤全体の透水性を高め、地盤全体の液状化現象を抑制する場合、ドレーン材を液状化層の下端に至る深さ(一般的に20~30m程度)まで打設するようになっているため、当該工法に用いる機材では非液状化層である地盤の上層部のみにドレーン材を打設する場合に適さないという問題があった。
【0018】
具体的には、地盤の上層部に用いるドレーン材は短尺ドレーン材であるのに対し、長尺ドレーン材の打設に適用される長尺のマンドレルを支持するドレーン材打設装置が大掛かりなものであるため、短尺のドレーン材を打設するためには作業性がわるく、施工費用が嵩むという問題があった。
【0019】
また、地盤の上層部だけに液状化現象抑制対策を施すような地域は、すでに市街地となっている場合が多く、大型の重機を設置して施工することが困難であり、施工した場合に周辺地域に及ぼす影響も大きいという問題もあった。
【0020】
また、従来のドレーン材の打設方法では、ドレーン材を打設した後、ドレーン材の上端を切断するため、マンドレル内等に切断するための複雑な機構を設けるか、引き抜いたマンドレル下端近傍で作業員による作業が必要であった。
【0021】
また、従来の方法では、ドレーン材をマンドレルの上端より挿入するため、その挿入のために高所での作業を必要とし、危険性が高いという問題があった。
【0022】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、短尺のドレーン材の打設において効率よく施工でき、且つ、安全に作業を行うことができるドレーン材の打設方法及びそれに使用するドレーン材打設装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、マンドレル内に挿通させたドレーン材の下端にアンカー部材を係止させた状態で前記マンドレルを鉛直又は斜めに貫入させた後、前記マンドレルを地盤より引き抜き、前記ドレーン材を地盤中に埋設するドレーン材の打設方法において、所定長さのドレーン材の上端部に吊り具を設け、前記マンドレル内に挿通され、先端が前記マンドレルの下端より引き出されたワイヤを前記吊り具に連結し、該ワイヤで前記マンドレル内に前記ドレーン材を下方から引き入れた後、前記ドレーン材の下端に前記アンカー部材を係止させ、前記ワイヤを繰り出しつつ前記マンドレルを地盤に貫入し、しかる後、前記マンドレルを地盤より引き抜くことにある。
【0024】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記マンドレルを地盤に貫入した後、前記ワイヤを緩めた状態で前記マンドレルの下端を前記吊り具より高い位置まで引き抜き、しかる後、前記ワイヤを前記吊り具より取り外すことにある。
【0025】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記吊り具は、前記ドレーン材の上端部を封鎖するキャップと一体に形成されていることにある。
【0026】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、吊り具が一体に形成されたキャップを前記ドレーン材の上端部に着脱可能に取り付け、ドレーン材の埋設後に前記吊り具が一体に形成されたキャップに替えて土砂混入防止用のキャップを前記ドレーン材の上端部に取り付けることにある。
【0027】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成に加え、前記ドレーン材の所定長さを、前記地盤を構成する地表と液状化層との間に介在する非液状化層に留まる長さとしたことにある。
【0028】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成に加え、前記ドレーン材の所定長さを、前記地盤を構成する液状化層の上層部に留まる長さとしたことにある。
【0029】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項1~6に記載のドレーン材の打設方法に使用するドレーン材打設装置において、前記ドレーン材の上端部に取り付けられる吊り具と、前記マンドレル内に挿通され、先端が前記吊り具に連結されるワイヤと、該ワイヤを繰り出し・巻取り可能なワイヤ操作手段とを備えていることにある。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るドレーン材の打設方法は、請求項1の構成を具備することによって、作業現場における作業性に優れ、作業効率の向上と施工費用の削減を図ることができる。また、ドレーン材を設置する際に下方から挿通するため高所での作業が不要となり、安全に作業を行うことができる。さらに、ドレーン材を切断する作業が不要であるので、装置を簡略化することができる。
【0031】
また、本発明において、請求項2の構成を具備することによって、ワイヤをドレーン材より容易に取り外すことができる。
【0032】
さらに、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、吊り具とキャップの取り付けを同時に行うことができ、作業効率が向上する。
【0033】
また、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、施工時は吊り具付きキャップを使用してドレーン材のマンドレルへの引き込み作業及びマンドレルの地盤への貫入作業を行い、マンドレルを地盤より引き抜いた後、吊り具付きキャップからワイヤを外すと同時に吊り具付きキャップもドレーン材から取り外し、代わりに土砂混入防止用のキャップを取り付ければ、作業効率とコストとの釣り合いを勘案し、高価な吊り具付きキャップを埋め殺しにせずに再利用することを選択することができる。
【0034】
さらにまた、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、地表部と液状化層との間に介在される非液状化層内に留まる長さでドレーン材を埋設することで、液状化層が繰り返しせん断力によって液状化を生じたとしても、過剰間隙水圧を速やかに消散せしめ、液状化の地表面への伝播やボイリングによる噴砂を抑止し、地盤表層の変状を極力抑え、災害対応活動を行うことができる。また、液状化層が深い場所に位置する場合、液状化層と地表面の間にある非液状化層内に留まる長さでドレーン材を埋設すればよく、液状化層の上層部にまでドレーン材を埋設する場合に比べ、ドレーン材が短くてよく、経済性、施工性において有利である。
【0035】
また、本発明において、請求項6の構成を具備することによって、液状化層が地表より比較的浅い場所に位置するときでも、液状化層の上層部に留まる長さでドレーン材を埋設することで、液状化層が繰り返しせん断力により液状化を生じたとしても、液状化の地盤表層への伝播やボイリングによる噴砂を抑止し、地盤表層の変状を極力抑え、災害対応活動を行うことができる。
【0036】
また、本発明において、請求項7の構成を具備することによって、ドレーン材をマンドレルの下端より円滑にマンドレル内に引き入れることができ、また、ドレーン材を内部に収容した状態でマンドレルを地盤に貫入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係るドレーン材の打設方法におけるドレーン材打設装置及びドレーン材の設置作業の第1工程の状態を示す側面図である。
【
図2】同上のドレーン材の設置作業の第2工程の状態を示す側面図である。
【
図3】
図2中のドレーン材の引き込み作業の状態を示す拡大図である。
【
図4】同上のドレーン材をマンドレル内に設置した状態を示す側面図である。
【
図5】同上のドレーン材を挿通したマンドレルの貫入作業の状態を示す側面図である。
【
図6】同上のマンドレルの引き抜き作業の状態を示す側面図である。
【
図7】同上のワイヤの取り外し作業の状態を示す側面図である。
【
図8】同上のワイヤの取り外し作業の状態を示す拡大図である。
【
図9】同上の地盤構成の異なる場合でドレーン材を打設した状態を示す断面図であって、(a)は非液状化層が標準的な厚さである場合、(b)は非液状化層が厚い場合、(c)は非液状化層が薄い場合である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明に係るドレーン材の打設方法の実施態様を
図1~
図9に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aは地盤、符号1はドレーン材、符号2はドレーン材打設装置である。
【0039】
地盤Aは、
図1に示すように、地表面側からグラベルマット等の排水層B、地震動等による繰り返しせん断力による液状化のおそれがない土層(以下、非液状化層という)C及び地震動等による繰り返しせん断力によって液状化するおそれのある砂質層からなる液状化層Dが順次積層している。尚、図中符号D1は液状化層Dの上層部である。
【0040】
ドレーン材打設装置2は、自走式の装置本体3と、装置本体3にアーム4を介して支持されたリーダ5と、このリーダ5にスライド可能に装着されたスライダ6と、このスライダ6に支持された打設ユニット7と、打設ユニット7の下端に固定されたマンドレル8とを備え、リーダ5に沿ってマンドレル8を下降させ、マンドレル8を地盤A中に貫入できるようになっている。
【0041】
尚、リーダ5は、アーム4によって角度を調節でき、マンドレル8を鉛直又は斜めに支持できるようになっている。
【0042】
マンドレル8は、上端が開口した筒状に形成され、内部にドレーン材1が挿通されるようになっている。
【0043】
また、このドレーン材打設装置2には、ワイヤ9を繰り出し・巻取り可能なウインチ等のワイヤ操作手段10を備え、ワイヤ操作手段10より繰り出されたワイヤ9がマンドレル8の上端からマンドレル8内部に挿通され、ワイヤ9の下端をマンドレル8の下端より引き出せるようになっている。
【0044】
尚、ワイヤ9の下端には、フック11が取り付けられ、フック11がドレーン材1の端部に装着した土砂混入防止用のキャップ12と一体に形成された吊り具13と係合できるようになっている。
【0045】
また、ワイヤ操作手段10は、ワイヤ9の繰り出し・巻取り速度を調節可能な制御装置を備え、マンドレル8の貫入速度に同調してワイヤ9を繰り出すことができるようになっている。
【0046】
このようなドレーン材打設装置2を使用してドレーン材1を地盤Aに打設するには、先ず、
図1に示すように、ドレーン材打設装置2をドレーン材1の打設位置に移動させるとともに、マンドレル8の位置に合わせてドレーン材1を地表面に敷設する。
【0047】
ドレーン材1は、高密度ポリエチレン製の円筒形ドレーン材を使用し、予め所定の長さL、具体的には、グラベルマット等の排水層Bを貫通し、且つ、地盤Aを構成する非液状化層Cに留まる長さ(約2~5m程度)に切り揃えられている。
【0048】
このドレーン材1の長さLは、液状化層全体の液状化を抑制する過剰間隙水圧抑制による液状化防止方法に使用するドレーン材の長さに比べ、1/10~1/6程度となり、単位改良面積当たりの施工費(材料費)を低減できるとともに、施工歩掛かりの向上を図ることができる。
【0049】
尚、ドレーン材1は、上述の円筒形ドレーン材に限定されず、例えば、プラスチックボードドレーン(PBD)を使用してもよい。
【0050】
また、このドレーン材1には、一方の端部(上端部)に土砂混入防止用のキャップ12が挿着されている。
【0051】
キャップ12は、
図3に示すように、ドレーン材1の端部に嵌合される上面が閉鎖されたキャップ状に形成され、上面を閉鎖する天板の上面に吊り具13が一体に形成されている。
【0052】
次に、
図2に示すように、ワイヤ操作手段10より繰り出され、マンドレル8内に挿通されたワイヤ9の先端部をマンドレル8の下端より引き出し、敷設されたドレーン材1の位置まで繰り出す。
【0053】
そして、十分に繰り出されたワイヤ9の先端に取り付けられたフック11を地表上に敷設されたドレーン材1の端部の吊り具13に連結させる。
【0054】
次に、ワイヤ操作手段10によってワイヤ9を巻取り、
図3に示すように、ドレーン材1をマンドレル8の下端より内部に引き入れ、マンドレル8内の所定の高さまで引き上げる。即ち、ドレーン材1の下端部が一定長さだけマンドレル8の下端より突出した位置となるまでドレーン材1を引き上げる。
【0055】
その後、
図4に示すように、ドレーン材1の下端にアンカー部材14を取り付け、打設の準備が完了する。
【0056】
次に、
図5に示すように、リーダ5に沿ってスライダ6を下降させ、ドレーン材1が挿通されたマンドレル8を地盤Aの所定深さ、即ち、液状化層Dまで到達せず、非液状化層C内に留まる深さまで地盤Aに貫入する。
【0057】
その際、ワイヤ操作手段10によってマンドレル8の下降と同調してワイヤ9を繰り出し、ワイヤ9が弛緩した状態にしておくことによって、ドレーン材1がマンドレル8とともに地盤Aに貫入される。
【0058】
そして、所定の深さまでマンドレル8及びドレーン材1が貫入されたら、
図6~
図7に示すように、マンドレル8を引き抜き、マンドレル8の下端が地表より上に位置するまで上昇させる。
【0059】
その際、ワイヤ9は弛緩した状態を維持し、ドレーン材1がマンドレル8と共に引き抜かれないようにする。
【0060】
マンドレル8の下端が地表より上に位置するまで引き抜いたら、
図8に示すように、フック11をキャップ12上端部の吊り具13より取り外し、ドレーン材1の埋設作業が完了する。
【0061】
そして、ドレーン材打設装置2の位置を変え、
図1~
図8に示す一連の作業を繰り返し、ドレーン材1を地表から非液状化層C内に所定の間隔をおいて埋設する。
【0062】
これによって、液状化層Dでの液状化を許容しつつ、液状化の地盤A表層への伝播やボイリングによる噴砂を抑止し、地盤A表層の変状を極力抑えることができ、事業継続性確保あるいは早期復旧再開が可能となる。
【0063】
このように構成されたドレーン材1の打設方法は、従来の工法に比べ、ドレーン材1を予め所定の長さLに切り揃えておくため、施工現場での作業性に優れており、また、マンドレル8の下端より引き込むようにしているため、高所での作業が不要となり、安全に作業を行うことができる。
【0064】
また、使用するマンドレル8も従来のように長いものを用いる必要はなく、ドレーン材1の長さLに合わせ短いものを使用でき、ドレーン材打設装置2自体も小型な装置を用いることができる。
【0065】
さらに、ドレーン材1を切断する作業が不要となるので、マンドレル8に複雑なドレーン材1切断用の機構を設ける必要がなく、装置を簡略化することができるとともに、施工現場における工程を省くことができ、効率よく作業を行うことができる。
【0066】
また、本発明方法では、地表と液状化層Dとの間に非液状化層Cが介在された地盤に適用し、ドレーン材の長さLを非液状化層C内に留まる長さとしたことによって、液状化層Dで生じた過剰間隙水圧を速やかに消散させ、液状化現象の地表面への伝播を抑制することができる。
【0067】
一般的に、地震動等によって液状化層Dに生じた過剰間隙水圧は、地表面に向けて消散しようとし、地表面と液状化層Dとの間に介在された非液状化層Cに伝播しようとする。
【0068】
よって、過剰間隙水圧が非液状化層Cに到達すると、過剰間隙水圧の大きさ、地盤の土質や層厚の不均一さなどの諸条件によって、速やかな浸透透水が妨げられ、パイピング、噴砂、ボイリングが生じるおそれがある。
【0069】
そこで、本発明方法では、非液状化層Cにドレーン材1を配したことによって、過剰間隙水圧を速やかに消散させ、液状化現象の地表面への伝播を防止することでパイピング、噴砂、ボイリングを抑止し、地盤A表層の変状を極力抑えることができ、事業継続性確保あるいは早期復旧再開が可能となる。
【0070】
尚、上述の実施例では、施工現場での工程に沿って適宜キャップ12及びアンカー部材14を取り付ける場合について説明したが、キャップ12及びアンカー部材14については、予め取り付けた状態で現場に搬入するようにしてもよく、その場合、施工現場における工程をより省くことができ、効率よく作業を行うことができる。
【0071】
また、上述の実施例では、吊り具13が一体に形成されたキャップ12(以下、吊り具付きキャップという)を埋め殺しにする場合について説明したが、吊り具付きキャップと土砂混入用のキャップとを別体としてもよい。
【0072】
その場合、吊り具付きキャップをドレーン材1の上端部にネジ構造等によって着脱可能に取り付けておき、この吊り具付きキャップを用いてドレーン材1のマンドレル8への引き込み作業及びマンドレル8の地盤への貫入作業を行い、マンドレル8を地盤より引き抜いた後、吊り具付きキャップからワイヤを外すと同時に吊り具付きキャップもドレーン材から取り外し、代わりに吊り具が設けられていない土砂混入防止用のキャップを取り付ける。
【0073】
これによって、作業効率とコストとの釣り合いを勘案しつつ、高価な吊り具付きキャップを埋め殺しせずに再利用することも可能となる。
【0074】
尚、上述の実施例では、
図9(a)に示すように、ドレーン材1の長さLをドレーン材1が地表から非液状化層C全体に亘る長さとした場合について説明したが、ドレーン材1の長さLは、非液状化層C内に一定の長さが埋設されるような長さが確保されていればよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
例えば、非液状化層Cが厚い場合(液状化層が深い位置にある場合)には、
図9(b)に示すように、ドレーン材1が非液状化層Cの一定の深さまで至る長さであればよい。
【0076】
従来工法のように、液状化層Dまで改良する場合には、ドレーン材1が液状化層Dまで至る必要があるため、ドレーン材1の打設長が長くなるのに対し、本願発明では、ドレーン材1が非液状化層Cの一定の深さまで至る長さであればよいので、その分、施工費用及び施工性の面で有利となる。
【0077】
尚、非液状化層Cが薄い場合(液状化層が浅い位置にある場合)には、
図9(c)に示すように、非液状化層C全体に亘ってドレーン材1が埋設されるとともに、ドレーン材1の先端部が液状化層の上層部D1まで至っていてもよい。
【0078】
尚、本発明は、ドレーン材1の所定の長さに関して約2~5m程度としているが、上述の実施例に記載したドレーン材の長さに限定されず、地盤全体の透水性を高めるため、液状化層の下端に至る深さ(一般的に20~30m程度)としたものに適用してもよい。
【0079】
また、上述の実施例では、地盤の上層部にグラベルマット等の排水層Bを形成した場合について説明したが、排水層Bの無い地盤構成にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
A 地盤
B 排水層(グラベルマット)
C 非液状化層
D 液状化層
D1 液状化層の上層部
1 ドレーン材
2 ドレーン材打設装置
3 装置本体
4 アーム
5 リーダ
6 スライダ
7 打設ユニット
8 マンドレル
9 ワイヤ
10 ワイヤ操作手段
11 フック
12 キャップ
13 吊り具