(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030088
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】射出成形体及びその製造方法並びにヒンジキャップ及びタンパーエビデンスキャップ
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20220210BHJP
B29C 44/02 20060101ALI20220210BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C44/02
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133848
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 貴支
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AA11
4F206AB02
4F206AG20
4F206AG30
4F206AH57
4F206AR08
4F206AR12
4F206JA07
4F206JF04
4F206JN11
4F206JQ81
4F214AA11
4F214AB02
4F214AG20
4F214AG30
4F214AH57
4F214AR08
4F214AR12
4F214UA08
4F214UB01
4F214UF04
4F214UL11
4F214UM81
(57)【要約】
【課題】発泡によって軽量化が図られており且つ十分な強度を有する薄肉部を備える射出成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る射出成形体の製造方法は、(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、(D)発泡に由来する複数の空隙を有する成形体を金型から回収する工程とを含み、成形体が厚さ1.8~10mmの厚肉部と、厚さ0.3~1.7mmの薄肉部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(B)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、
(C)前記キャビティ内において、圧力の低下によって前記溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、
(D)前記発泡に由来する複数の空隙を有する成形体を前記金型から回収する工程と、
を含み、
前記成形体が、1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含む厚肉部と、0.3~1.7mmの厚さを有する薄肉部とを備える、射出成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形体が、キャップ本体と、上蓋と、前記キャップ本体と前記上蓋を連結しているヒンジ部とを備えるヒンジキャップであり、
前記キャップ本体及び前記上蓋が前記厚肉部であり、
前記ヒンジ部が前記薄肉部である、請求項1に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項3】
前記成形体が、キャップと、タンパーと、前記キャップと前記タンパーの連結部とを備えるタンパーエビデンスキャップであり、
前記キャップ及び前記タンパーが前記厚肉部であり、
前記連結部が前記薄肉部である、請求項1に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項4】
前記金型において、前記金型のゲートから前記薄肉部に対応する部分までの距離が40mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項5】
前記金型において、前記薄肉部に対応する部分と異なる部分が流動末端である、請求項1~4のいずれか一項に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料がポリプロピレン樹脂であり、
前記超臨界流体が二酸化炭素であり、
(B)工程における射出速度が5~30mm/秒である、請求項1~5のいずれか一項に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項7】
1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含む厚肉部と、
0.3~1.7mmの厚さを有する薄肉部と、
を備える射出成形体。
【請求項8】
キャップ本体と、
上蓋と、
前記キャップ本体と前記上蓋を連結しているヒンジ部と、
を備え、
前記キャップ本体及び前記上蓋が1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含み、
前記ヒンジ部の厚さが0.3~1.7mmである、ヒンジキャップ。
【請求項9】
キャップと、
タンパーと、
前記キャップと前記タンパーの連結部と、
を備え、
前記キャップ及び前記タンパーが1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含み、
前記連結部の厚さが0.3~1.7mmである、タンパーエビデンスキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は射出成形体及びその製造方法並びにヒンジキャップ及びタンパーエビデンスキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック成形品が身の回りのあらゆる日用品や工業製品に用いられている。プラスチック成形品の品質向上及びコストダウンによる汎用化が進み、プラスチック成形品の需要が高まっている。一方、海洋プラスチックごみ問題にみられるようにマイクロプラスチックによって環境汚染に影響を与えることが注目されるようになり、脱プラスチック運動やプラスチック製品の使用を控える風潮が高まっている。
【0003】
食品や日用品の用途における使い捨てのプラスチック容器については、ユーザーから少しでも石油由来のプラスチック使用量を少なくできないかという要望が強くなってきている。このような要望に対し、原料の一部に植物由来の樹脂を使用する、再生プラスチック材を活用する、寸法や形状の工夫によってプラスチック使用量を削減するなどの取り組みがなされている。
【0004】
プラスチック成形品を軽量化する手段として発泡成形が知られている。発泡成形は化学発泡成形と物理発泡成形に大別できる。化学発泡成形では発泡剤が使用される。一方、物理発泡成形では超臨界状態の流体が使用され、この方法は超臨界流体成形と称される。化学発泡成形は発泡剤の環境への悪誘響の懸念、金型の汚染等の課題がある。超臨界流体成形は、従来、自動車部品成形や事務用機器類などの比較的大型の工業製品に適用されてきた。近年、超臨界流体の生成技術及び樹脂組成物への混練技術の向上に伴い、ハイサイクルな射出成形に超臨界流体成形を適用することが検討されている。特許文献1~3は超臨界流体成形によって製造される食品用容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6085729号公報
【特許文献2】特許6430684号公報
【特許文献3】特開2020-040690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1~3に記載されているような食品用容器の他に、特定の機能を有するプラスチック成形品の製造にも射出成形が適用されている。例えば、調味料などを収容する容器は開閉自在のヒンジキャップを備える。ヒンジキャップは、キャップ本体と、上蓋と、キャップ本体と上蓋を連結しているヒンジ部とを備える(
図2参照)。このヒンジ部は、キャップ本体及び上蓋と比較して肉薄である。例えば、超臨界流体成形によってヒンジキャップを製造すると、キャップ本体部及び上蓋のみならず、ヒンジ部にも空隙が形成され、ヒンジ部の十分な強度を確保できないおそれがある。
【0007】
本開示は、発泡によって軽量化が図られており且つ十分な強度を有する薄肉部を備える射出成形体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は射出成形体の製造方法に関する。この製造方法は、(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、(D)発泡に由来する複数の空隙を有する成形体を金型から回収する工程とを含み、上記成形体が1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含む厚肉部と、0.3~1.7mmの厚さを有する薄肉部とを備える。
【0009】
本発明者らの検討によると、作製すべき射出成形体に厚肉部と薄肉部があると、超臨界流体に起因する発泡が主に厚肉部で生じる一方、薄肉部においては発泡が抑制される。このため、射出成形体の全体としては発泡によって軽量化を図ることができ且つ薄肉部については十分な強度を維持することができる。溶融樹脂組成物がゲートを通じてキャビティ内に導入されると、圧力の低下によって発泡する。通常の射出成形では樹脂の充填後にキャビティ内に圧力をかける工程(保圧)を実施するのに対し、上記製造方法では、例えば、この圧力をかける工程を実施しないことで厚肉部において発泡が生じる。薄肉部における発泡が抑制される主因は薄肉部において発泡が生じる前に樹脂が冷却固化するためと推察される。
【0010】
上記製造方法においては、使用する樹脂材料に応じて超臨界流体の種類を選択するとともに、(B)工程における射出速度を設定することが好ましい。例えば、上記脂材料がポリプロピレン樹脂である場合、超臨界流体は二酸化炭素であることが好ましく、(B)工程における射出速度は5~20mm/秒であることが好ましい。
【0011】
本発明者らの検討によると、薄肉部における発泡を抑制する観点から、金型において、金型のゲートから薄肉部に対応する部分までの距離は40mm以上であることが好ましい。これと同様の観点から、金型において、薄肉部に対応する部分と異なる部分が流動末端であることが好ましい。つまり、金型の流動末端は薄肉部に対応する部分ではないことが好ましい。
【0012】
本開示の一側面は射出成形体に関する。この射出成形体は、1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含む厚肉部と、0.3~1.7mmの厚さを有する薄肉部とを備える。この射出成形体は、上述の射出成形体の製造方法によって製造することができる。厚肉部が含む空隙は超臨界流体の発泡に由来するものである。
【0013】
薄肉部が特定の機能を果たす射出成形体の例として、上述のとおり、ヒンジキャップが挙げられる。ヒンジキャップは、キャップ本体と、上蓋と、キャップ本体と上蓋を連結しているヒンジ部とを備える。キャップ本体及び上蓋が上記厚肉部に相当し、ヒンジ部が上記薄肉部に相当する。他の例として、タンパーエビデンスキャップが挙げられる。タンパーエビデンスキャップは、キャップと、タンパーと、キャップとタンパーの連結部とを備え、キャップ及びタンパーが上記厚肉部に相当し、連結部が上記薄肉部に相当する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、発泡によって軽量化が図られており且つ十分な強度を有する薄肉部を備える射出成形体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1はキャビティの厚肉部に対応する領域に発泡が生じているのに対し、薄肉部に対応する領域に発泡が生じていない状態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2はヒンジキャップの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(a)はタンパーエビデンスキャップの一例(開封前)を模式的に示す側面図であり、
図3(b)は
図3(a)に示すタンパーエビデンスキャップを開封した後の状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<射出成形体の製造方法>
本実施形態に係る射出成形体の製造方法は以下の工程を含む。
(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程。
(D)溶融樹脂組成物の発泡に由来する複数の空隙を有する成形体を金型から回収する工程。
この方法によって製造される成形体は、1.8~10mmの厚さを有し且つ複数の空隙を含む厚肉部と、0.3~1.7mmの厚さを有する薄肉部とを備える。厚肉部は、1.8~3.0mm又は3.0~7.0mmの厚さを有してもよい。薄肉部は、0.3~0.6mm又は0.7~1.0mmの厚さを有してもよい。なお、薄肉部は、その強度の影響が出ない程度であれば、溶融樹脂組成物の発泡に由来する空隙を含んでもよい。(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(特許文献1,2参照)。
【0018】
[(A)工程]
まず、樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料として、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂が挙げられる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン及びヘリウムが挙げられる。本発明者らの検討によると、超臨界流体が二酸化炭素である場合、樹脂材料100質量部に対して、好ましくは1.5~4.5質量部、より好ましくは3~4質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。溶融樹脂組成物の二酸化炭素含有量が1.5質量部以上であることで、厚肉部に十分に均一の発泡層を形成しやすいとともに発泡による軽量化を実現し得る傾向にある。一方、溶融樹脂組成物の二酸化炭素含有量を4.5質量部以下であることで、過剰な発泡を抑制し得る傾向にある。
【0019】
超臨界流体が窒素である場合、樹脂材料100質量部に対して、好ましくは0.1~2.0質量部、より好ましくは0.5~1.0質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。溶融樹脂組成物の窒素含有量が0.5質量部以上であることで、厚肉部に十分に均一の発泡層を形成しやすいとともに発泡による軽量化を実現し得る傾向にある。一方、溶融樹脂組成物の窒素含有量を2.0質量部以下であることで、過剰な発泡を抑制し得る傾向にある。
【0020】
使用する樹脂材料がポリプロピレン樹脂である場合、溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、210~230℃程度であることが好ましい。使用する樹脂材料がポリエチレン樹脂である場合、この温度は220~240℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、例えば、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
【0021】
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
【0022】
[(B)工程及び(C)工程]
(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。溶融樹脂組成物がキャビティ内に導入されると、圧力の低下によって気泡セルが成長して独立した気泡が樹脂組成物内に発生する。射出速度は、5~100mm/秒であることが好ましく、10~30mm/秒であることがより好ましい。射出速度が5mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。他方、射出速度が100mm/秒以下であることで、成形体内において気泡が疎の部分が生じたり、成形体の表面に凹凸ができたりすることを抑制できる傾向にある。本発明者らの検討によると、樹脂材料がポリプロピレン樹脂であり、超臨界流体が二酸化炭素である場合、(B)工程における射出速度は5~30mm/秒であることが好ましく、10~20mm/秒であることがより好ましい。
【0023】
図1は、キャビティCの厚肉部に対応する領域R1に発泡が生じているのに対し、薄肉部に対応する領域R2に発泡が生じていない状態を模式的に示す断面図である。なお、キャビティCは上型D1と下型D2によって形成されている。厚肉部における空隙の平均直径は、例えば、100~600μmである。空隙の大きさは、溶融樹脂組成物の射出量、射出速度、樹脂温度又はキャビティ内の圧力を調節することによって制御することができる。なお、空隙の平均直径は顕微鏡の画像から求めることができる。
【0024】
本実施形態においては、キャビティの厚肉部に対応する領域における発泡を十分に促進させる観点から、キャビティ内に溶融樹脂組成物を充填した後、キャビティ内に圧力をかける工程(保圧)を実施しなくてよい。他方、キャビティの薄肉部に対応する領域における発泡を抑制する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビディに充填された溶融樹脂が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビディの容積を拡大させる工程である(特許文献1参照)。本実施形態においては、上述のとおり、溶融樹脂組成物がキャビティ内に導入されることに伴う圧力低下により、キャビティにおける厚肉部に対応する領域で発泡を生じさせることでき、一方、薄肉部に対応する領域での発泡を抑制することができる。
【0025】
薄肉部における発泡をより一層抑制する観点から、金型において、金型のゲートから薄肉部に対応する部分までの距離は好ましくは40mm以上であり、より好ましくは40~60mmである。これと同様の観点から、金型において、薄肉部に対応する部分と異なる部分が流動末端であることが好ましい。つまり、金型の流動末端は薄肉部に対応する部分ではないことが好ましい。
【0026】
[(D)工程]
成形体の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形体を金型から回収する。厚肉部に発泡に由来する空隙が形成されていることで、軽量化が図られ、プラスチック材料の使用量が削減されている。空隙が形成されていることで、空隙が形成されていない成形体(通常の射出成形体)と比較して、5質量%以上の軽量化が図られていることが好ましい。また、成形体の表面に微小な凹凸(ディンプル)や発泡痕(スワールマーク)などの外観上の欠陥が認められないことが好ましい。
【0027】
<成形体>
上記方法で製造される成形体として、例えば、ヒンジキャップ及びタンパーエビデンスキャップが挙げられる。
図2はヒンジキャップの一例を模式的に示す断面図である。この図に示すヒンジキャップ5は、キャップ本体1と、上蓋2と、キャップ本体1と上蓋2を連結しているヒンジ部3とを備える。キャップ本体1及び上蓋2が厚肉部に相当し、ヒンジ部3が薄肉部に相当する。
【0028】
図3(a)はタンパーエビデンスキャップの一例(開封前)を模式的に示す側面図であり、
図3(b)は
図3(a)に示すタンパーエビデンスキャップを開封した後の状態を模式的に示す側面図である。これらの図に示すタンパーエビデンスキャップ10は、キャップ6と、タンパー7と、キャップ6とタンパー7の連結部8とを備える。キャップ6及びタンパー7が厚肉部に相当し、連結部8が薄肉部に相当する。例えば、ペットボトルを開封するために、キャップ6を回転させると、連結部8が切断されて、キャップ6がタンパー7から分離される(
図3(b)参照)。
【実施例0029】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(比較例)
以下の樹脂材料を使用し、通常の射出成形によってヒンジキャップを作製した。
[樹脂材料]
・ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、PM940M、ランダムコポリマー、メルトフローレート:30g/10分)
[ヒンジキャップの構成]
・キャップ本体の厚さ:1.0~1.4mm
・上蓋の厚さ:1.7~3.2mm
・ヒンジ部の厚さ:0.1~0.5mm
・重量:12.6g
【0031】
(実施例1)
上記樹脂材料100質量部に対して3質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して比較例と同じ形状のヒンジキャップを作製した。射出速度は10mm/秒とした。実施例1に係るヒンジキャップの重量は11.8gであり、比較例を基準として6.3%の軽量化率が達成された。なお、本実施例及び以下の実施例ではMuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用した。
【0032】
実施例1に係るヒンジキャップのヒンジ部の内部をCTスキャンによる断面画像(倍率:50倍)で確認したところ、発泡は認められなかった。一方、ヒンジキャップの厚肉部の内部をCTスキャンによる断面画像で確認したところ、均一の空隙が広がっていた。また、成形体の表面にわずかにスワールマークが認められたものの、外観は良好であった。
【0033】
(実施例2)
上記樹脂材料100質量部に対して1.5質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して比較例と同じ形状のヒンジキャップを作製した。射出速度は10mm/秒とした。実施例2に係るヒンジキャップの重量は11.6gであり、比較例を基準として8.5%の軽量化率が達成された。
【0034】
実施例2に係るヒンジキャップのヒンジ部の内部をCTスキャンによる断面画像(倍率:50倍)で確認したところ、発泡は認められなかった。一方、ヒンジキャップの厚肉部の内部をCTスキャンによる断面画像で確認したところ、実施例1と比較すると空隙が不均一に広がっていた。また、成形体の表面に凹みが認められた。
【0035】
(実施例3)
上記樹脂材料100質量部に対して1.0質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して比較例と同じ形状のヒンジキャップを作製した。射出速度は10mm/秒とした。実施例2に係るヒンジキャップの重量は11.7gであり、比較例を基準として7.4%の軽量化率が達成された。
【0036】
実施例3に係るヒンジキャップのヒンジ部の内部をCTスキャンによる断面画像(倍率:50倍)で確認したところ、発泡は認められなかった。一方、ヒンジキャップの厚肉部の内部をCTスキャンによる断面画像で確認したところ、均一の空隙が広がっていた。しかし、成形体の表面に線状のスワールマークが認められた。
【0037】
(実施例4)
上記樹脂材料100質量部に対して0.5質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して比較例と同じ形状のヒンジキャップを作製した。射出速度は30mm/秒とした。実施例4に係るヒンジキャップの重量は11.9gであり、比較例を基準として5.6%の軽量化率が達成された。
【0038】
実施例4に係るヒンジキャップのヒンジ部の内部をCTスキャンによる断面画像(倍率:50倍)で確認したところ、発泡は認められなかった。一方、ヒンジキャップの厚肉部の内部をCTスキャンによる断面画像で確認したところ、実施例1と比較すると空隙が疎に広がっていた。また、成形体の表面に凹みが認められた。
1…キャップ本体(厚肉部)、2…上蓋(厚肉部)、3…ヒンジ部(薄肉部)、5…ヒンジキャップ(成形体)、6…キャップ(厚肉部)、7…タンパー(厚肉部)、8…連結部(薄肉部)、10…タンパーエビデンスキャップ(成形体)、C…キャビティ、D1…上型、D2…下型、R1…厚肉部に対応する領域、R2…薄肉部に対応する領域