(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030136
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/365 20071001AFI20220210BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20220210BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220210BHJP
F16H 3/52 20060101ALI20220210BHJP
F16H 3/72 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B60K6/365
B60K6/445 ZHV
B60K6/40
F16H3/52
F16H3/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133918
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 速人
【テーマコード(参考)】
3D202
3J528
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202EE13
3D202EE23
3J528EA08
3J528EA25
3J528EB37
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528FB06
3J528FC13
3J528FC23
3J528FC65
3J528FD11
3J528FD23
3J528GA01
3J528JA01
(57)【要約】
【課題】車両搭載性に優れた車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】車両用駆動装置(1)は、入力部材(2)と、入力側差動歯車機構(3)と、第1回転電機(4)と、第2回転電機(5)と、出力側差動歯車機構(7)と、出力部材(8)とを備える。入力側差動歯車機構(3)の第1回転要素(31)が第1回転電機(4)に駆動連結され、第2回転要素(32)が入力部材(2)に駆動連結され、第3回転要素(33)が第2回転電機(5)及び出力側差動歯車機構(7)に駆動連結される。第1回転電機(4)が入力側差動歯車機構(3)と同軸に配置され、第2回転電機(5)が入力側差動歯車機構(3)と別軸に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結されているとともに当該内燃機関の出力軸と同軸に配置される入力部材と、
第1回転電機と、
第2回転電機と、
それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
入力される回転を一対の前記出力部材に分配する出力側差動歯車機構と、
前記第1回転電機に駆動連結される第1回転要素、前記入力部材に駆動連結される第2回転要素、並びに前記第2回転電機及び前記出力側差動歯車機構に駆動連結される第3回転要素を有する入力側差動歯車機構と、を備え、
前記第1回転電機と前記第2回転電機とは、それぞれの軸方向の配置領域が少なくとも一部で重なっており、
軸方向視で前記第1回転電機と前記第2回転電機とが離間して配置され、
前記第1回転電機が、前記入力側差動歯車機構と同軸に配置され、
前記入力部材、前記第2回転電機、及び前記出力側差動歯車機構が、それぞれ、前記入力側差動歯車機構と別軸に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第2回転電機が、カウンタギヤ機構を介して前記入力側差動歯車機構における対応する回転要素に駆動連結されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記カウンタギヤ機構が、前記入力部材と同軸に配置されている、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記入力部材が、ギヤ機構を介して前記第2回転要素に駆動連結され、
前記カウンタギヤ機構における入力ギヤであるカウンタ入力ギヤが、軸方向における前記入力側差動歯車機構と前記ギヤ機構との間に配置されている、請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第3回転要素と一体回転する入力側差動出力ギヤと、前記出力側差動歯車機構の入力ギヤである出力側差動入力ギヤとが直接噛み合っている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記入力部材と一体回転する入力一体ギヤと、前記第2回転要素と一体回転する入力側差動入力ギヤとが直接噛み合っている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記第2回転電機は、軸方向視で、前記入力部材に対して前記出力側差動歯車機構とは反対側に配置されており、
軸方向視で前記出力側差動歯車機構と前記第2回転電機とが対向する領域に、前記第1回転電機の少なくとも一部が配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記入力側差動歯車機構は、前記第1回転要素としてのサンギヤ、前記第2回転要素としてのキャリヤ、及び前記第3回転要素としてのリングギヤを備えるシングルピニオン型の遊星歯車機構である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記キャリヤと一体回転する入力側差動入力ギヤが、前記キャリヤと同軸であって軸方向における異なる位置に配置されている、請求項8に記載の車両用駆動装置。
【請求項10】
前記リングギヤと一体回転する入力側差動出力ギヤが、前記リングギヤと同じ軸方向領域の径方向外側に、当該リングギヤと一体的に配置されている、請求項8又は9に記載の車両用駆動装置。
【請求項11】
前記入力側差動歯車機構は、前記第1回転要素としてのサンギヤ、前記第2回転要素としてのリングギヤ、及び前記第3回転要素としてのキャリヤを備えるシングルピニオン型の遊星歯車機構である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項12】
前記リングギヤと一体回転する入力側差動入力ギヤが、前記リングギヤと同軸であって軸方向における異なる位置に配置されている、請求項11に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、第1回転電機と、第2回転電機と、車輪に駆動連結される一対の出力部材と、入力側差動歯車機構と、出力側差動歯車機構とを備える車両用駆動装置が利用されている。このような車両用駆動装置の一例が、特開2017-71328号公報(特許文献1)に開示されている。入力側差動歯車機構(遊星歯車機構61)は3つの回転要素を有しており、第1回転要素(サンギヤS)に第1回転電機(第1電動機41)が駆動連結され、第2回転要素(キャリアC)に入力部材(エンジンのクランク軸に接続された入力軸)が駆動連結され、第3回転要素(リングギヤR)に第2回転電機(第2電動機44)及び出力側差動歯車機構(デファレンシャル機構)が駆動連結されている。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置では、入力部材と入力側差動歯車機構と第1回転電機とが同軸に配置され、これらと別軸に、第2回転電機と出力側差動歯車機構とが配置されている。入力側差動歯車機構と第2回転電機と出力側差動歯車機構とは、カウンタギヤ機構(カウンタ軸43)を介して、互いに駆動連結されている。
【0004】
しかし、このような構成では、第2回転電機を配置できる位置が、カウンタギヤ機構の近傍の一部の領域に制限されてしまう。より具体的には、第2回転電機のロータと一体回転するギヤがカウンタギヤ機構の入力ギヤに噛み合い、かつ、第2回転電機のステータが第1回転電機のステータ及び一対の出力部材(車軸)に干渉しない位置に、第2回転電機の配置位置が制限される。そのため、車両用駆動装置の外形に関する制約も大きくなり、その結果、車両側の構造によっては駆動装置の車両搭載性(車両への搭載性)が良くない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、車両搭載性に優れた車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両用駆動装置は、
内燃機関に駆動連結されているとともに当該内燃機関の出力軸と同軸に配置される入力部材と、
第1回転電機と、
第2回転電機と、
それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
入力される回転を一対の前記出力部材に分配する出力側差動歯車機構と、
前記第1回転電機に駆動連結される第1回転要素、前記入力部材に駆動連結される第2回転要素、並びに前記第2回転電機及び前記出力側差動歯車機構に駆動連結される第3回転要素を有する入力側差動歯車機構と、を備え、
前記第1回転電機と前記第2回転電機とは、それぞれの軸方向の配置領域が少なくとも一部で重なっており、
軸方向視で前記第1回転電機と前記第2回転電機とが離間して配置され、
前記第1回転電機が、前記入力側差動歯車機構と同軸に配置され、
前記入力部材、前記第2回転電機、及び前記出力側差動歯車機構が、それぞれ、前記入力側差動歯車機構と別軸に配置されている。
【0008】
この構成によれば、入力部材及びそれと同軸の内燃機関が、入力側差動歯車機構及びそれと同軸の第1回転電機に対して別軸に配置されるので、第2回転電機の配置自由度が高まる。比較的重量物である出力側差動歯車機構を例えば車両用駆動装置における下側領域に配置しながら、第2回転電機の配置位置を自由に設定しやすくなる。よって、車両用駆動装置の外形に関する制約を緩和することができ、車両搭載性に優れた車両用駆動装置を実現することができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
【
図2】軸方向から見た車両用駆動装置のレイアウト図
【
図3】第2実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
【
図4】第3実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
【
図5】第4実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
車両用駆動装置の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の車両用駆動装置1は、車輪Wの駆動力源として内燃機関EG及び回転電機4,5の双方を備えるハイブリッド車両用の駆動装置である。この車両用駆動装置1は、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。また、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、FF(Front Engine Front Drive)車両用の駆動装置として構成されている。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置1は、入力部材2と、入力側差動歯車機構3と、第1回転電機4と、第2回転電機5と、カウンタギヤ機構6と、出力側差動歯車機構7と、出力部材8とを備えている。これらは、ケース(駆動装置ケース)9内に収容されている。なお、入力部材2の一部と出力部材8の一部とは、ケース9の外部に露出している。
【0013】
入力部材2、入力側差動歯車機構3、第1回転電機4、第2回転電機5、カウンタギヤ機構6、出力側差動歯車機構7、及び出力部材8は、それぞれの回転軸が互いに平行となるように配置されている。本実施形態では、これらの回転軸に平行な方向を「軸方向L」と言う。また、軸方向Lにおける一方側であって本例では内燃機関EGが配置される側を「軸方向第1側L1」と言い、軸方向Lにおける他方側であって本例では内燃機関EG側とは反対側を「軸方向第2側L2」と言う。
【0014】
入力部材2は、内燃機関EGに駆動連結される。内燃機関EGは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)である。本実施形態では、内燃機関EGの出力軸(クランクシャフト等)である内燃機関出力軸Eoに、入力部材2が駆動連結されている。なお、入力部材2は、ダンパやクラッチ等を介して内燃機関EGに駆動連結されても良い。入力部材2は、内燃機関出力軸Eoと同軸に配置されている。
【0015】
なお、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体回転するように連結された状態や、1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
【0016】
また、入力部材2は、入力側差動歯車機構3に駆動連結されている。本実施形態では、入力部材2は、ギヤ機構25を介して入力側差動歯車機構3に駆動連結されている。本実施形態のギヤ機構25は、同速ギヤ機構(変速ギヤ機構の一例)であり、互いに噛み合う2つのギヤ、具体的には入力一体ギヤ21とそれと同径の入力側差動入力ギヤ34とで構成されている。入力一体ギヤ21は、入力部材2における内燃機関EGよりも軸方向第2側L2に、入力部材2と一体回転するように設けられている。入力側差動入力ギヤ34は、入力側差動歯車機構3の入力回転要素である第2回転要素32(キャリヤC)に連結されたキャリヤ連結部材36における、第2回転要素32(キャリヤC)よりも軸方向第1側L1に、一体回転するように連結されている。
【0017】
入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31、第2回転要素32、及び第3回転要素33の3つの回転要素を有している。本実施形態では、入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのキャリヤC、及び第3回転要素33としてのリングギヤRを有する遊星歯車機構により構成されている。本実施形態の入力側差動歯車機構3はシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、3つの回転要素31~33は、回転速度の順に、第1回転要素31(サンギヤS)、第2回転要素32(キャリヤC)、及び第3回転要素33(リングギヤR)となっている。
【0018】
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素31~33の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素31~33の回転速度は、入力側差動歯車機構3の回転状態によって変化するが、各回転要素31~33の回転速度の高低の並び順は、入力側差動歯車機構3の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、各回転要素31~33の回転速度の順は、当業者にとって周知の速度線図(共線図とも言う)における各回転要素31~33の配置順に等しい。
【0019】
第1回転要素31(サンギヤS)は、第1回転電機4に駆動連結されている。第1回転要素31(サンギヤS)は、第1回転電機4の第1ロータ42から延びる第1ロータ軸43における第1ロータ42よりも軸方向第1側L1に、第1ロータ42と一体回転するように設けられている。
【0020】
第2回転要素32(キャリヤC)は、第1回転要素31(サンギヤS)及び第3回転要素33(リングギヤR)の両方に噛み合う複数のピニオンギヤを回転可能に支持している。第2回転要素32(キャリヤC)は、入力部材2に駆動連結されている。第2回転要素32(キャリヤC)は、キャリヤ連結部材36に連結されている。キャリヤ連結部材36は、第2回転要素32(キャリヤC)から軸方向第1側L1に延びており、そのキャリヤ連結部材36に、入力側差動入力ギヤ34が一体回転するように連結されている。第2回転要素32(キャリヤC)は、入力側差動入力ギヤ34を含むギヤ機構25を介して、入力部材2に駆動連結されている。
【0021】
第3回転要素33(リングギヤR)は、円筒状に形成されたリングギヤ形成部材37の内周面に形成されている。リングギヤ形成部材37の外周面には、入力側差動出力ギヤ35が形成されている。これにより、第3回転要素33(リングギヤR)と入力側差動出力ギヤ35とが一体回転するように連結されている。本実施形態では、入力側差動出力ギヤ35が、第3回転要素33(リングギヤR)と同じ軸方向領域の径方向外側に、当該第3回転要素33(リングギヤR)と一体的に配置されている。すなわち、径方向視で、第3回転要素33(リングギヤR)と入力側差動出力ギヤ35とが重複して配置されている。ここで、2つの部材の配置に関して、「ある方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。
【0022】
第3回転要素33(リングギヤR)は、入力側差動出力ギヤ35を介して、第2回転電機5及び出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。本実施形態では、第3回転要素33(リングギヤR)は、入力側差動出力ギヤ35及びカウンタギヤ機構6を介して第2回転電機5に駆動連結されているとともに、入力側差動出力ギヤ35から直接出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。入力側差動出力ギヤ35と出力側差動入力ギヤ71とが直接噛み合って、第3回転要素33(リングギヤR)及び入力側差動出力ギヤ35が出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0023】
第1回転電機4は、ケース9に固定された第1ステータ41と、当該第1ステータ41の径方向内側に回転自在に支持された第1ロータ42とを有する。第1ロータ42は、第1ロータ軸43と一体回転するように連結されている。第1ロータ軸43における第1ロータ42よりも軸方向第1側L1には、入力側差動歯車機構3の第1回転要素31(サンギヤS)が当該第1ロータ軸43と一体回転するように連結されている。
【0024】
第1回転電機4は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能である。第1回転電機4は、蓄電装置(バッテリやキャパシタ等;図示せず)に電気的に接続されている。第1回転電機4は、主に入力側差動歯車機構3を介して入力される入力部材2(内燃機関EG)のトルクにより発電を行うジェネレータとして機能する。なお、車両の高速走行時や内燃機関EGの始動時等には、第1回転電機4がモータとして機能する場合もある。
【0025】
第2回転電機5は、ケース9に固定された第2ステータ51と、当該第2ステータ51の径方向内側に回転自在に支持された第2ロータ52とを有する。第2ロータ52は、第2ロータ軸53と一体回転するように連結されている。第2ロータ軸53における第2ロータ52よりも軸方向第1側L1には、第2回転電機出力ギヤ54が当該第2ロータ軸53と一体回転するように連結されている。第2回転電機出力ギヤ54は、カウンタギヤ機構6のカウンタ入力ギヤ61に噛み合っている。カウンタギヤ機構6のカウンタ出力ギヤ62は、入力側差動出力ギヤ35に噛み合っている。このようにして、第2回転電機5は、カウンタギヤ機構6を介して、入力側差動出力ギヤ35及び入力側差動歯車機構3の第3回転要素33(リングギヤR)に駆動連結されている。また、第2回転電機5は、カウンタギヤ機構6及び入力側差動出力ギヤ35を介して、出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0026】
第2回転電機5も、モータとしての機能とジェネレータとしての機能とを果たすことが可能であり、蓄電装置(図示せず)に電気的に接続されている。第2回転電機5は、主に車両を走行させるための駆動力を補助するモータ(アシストモータ)として機能する。なお、車両の減速時等には、第2回転電機5がジェネレータとして機能する場合もある。
【0027】
本実施形態では、第1回転電機4と第2回転電機5とは、入力側差動歯車機構3に対して軸方向Lにおける内燃機関EGとは反対側で、径方向視で互いに重複するように配置されている。第1回転電機4と第2回転電機5とは、それぞれの軸方向Lの配置領域が少なくとも一部で重なっている。図示の例のように、軸方向Lにおける第1回転電機4の配置領域と第2回転電機5の配置領域とが一致していても良い。また、第1回転電機4と第2回転電機5とは、軸方向視で離間して配置されている(
図2を参照)。
【0028】
カウンタギヤ機構6は、第2回転電機5と入力側差動歯車機構3との間の動力伝達経路に設けられている。カウンタギヤ機構6は、カウンタ入力ギヤ61と、このカウンタ入力ギヤ61とは軸方向Lの異なる位置に設けられたカウンタ出力ギヤ62と、これら2つのギヤ61,62を連結するカウンタ軸63とを有する。本実施形態では、カウンタ出力ギヤ62は、カウンタ入力ギヤ61に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、カウンタ出力ギヤ62は、カウンタ入力ギヤ61よりも小径に形成されている。
【0029】
カウンタ入力ギヤ61は、第2回転電機5の第2ロータ52と一体回転する第2回転電機出力ギヤ54に噛み合っている。カウンタ出力ギヤ62は、入力側差動歯車機構3の入力側差動出力ギヤ35に噛み合っている。カウンタギヤ機構6は、第2回転電機5の出力回転を減速して(同時に第2回転電機5の出力トルクを増幅して)入力側差動出力ギヤ35に伝達する減速機構として機能する。本実施形態では、カウンタギヤ機構6のカウンタ入力ギヤ61が、軸方向Lにおける入力側差動歯車機構3とギヤ機構25との間に配置されている。
【0030】
入力側差動歯車機構3の入力側差動出力ギヤ35は、出力側差動歯車機構7の出力側差動入力ギヤ71に噛み合っている。出力側差動歯車機構7は、出力側差動入力ギヤ71に入力される回転を一対の出力部材8に分配する。一対の出力部材8は、それぞれ車輪Wに駆動連結される。出力側差動歯車機構7は、入力側差動歯車機構3から出力側差動入力ギヤ71に入力される回転及びトルクを、左右2つの出力部材8(すなわち、左右2つの車輪W)に分配して伝達する。
【0031】
車両用駆動装置1を構成する各部品の配置について言及すると、入力部材2は、第1軸X1上に配置されている。第1回転電機4及び入力側差動歯車機構3は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。第2回転電機5は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。カウンタギヤ機構6は、入力部材2と同軸となる、第1軸X1上に配置されている。出力側差動歯車機構7は、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3とは異なる第4軸X4上に配置されている。
【0032】
これを、入力側差動歯車機構3を中心として見ると、第1回転電機4が入力側差動歯車機構3と同軸に配置され、入力部材2(及びカウンタギヤ機構6)、第2回転電機5、及び出力側差動歯車機構7が、それぞれ、入力側差動歯車機構3と別軸に配置されている。
【0033】
図2に示すように、第1回転電機4及び入力側差動歯車機構3の共通の回転軸心である第2軸X2の上方に、入力部材2及びカウンタギヤ機構6の共通の回転軸心である第1軸X1が配置されている。本例では、第1軸X1は、水平方向Hにおける第2軸X2と略同じ位置(本例では車両前後方向の前側)に配置されており、言いかえれば第2軸X2の直上となる位置に配置されている。また、軸方向視で、カウンタ入力ギヤ61と入力側差動入力ギヤ34とが重複して配置されている。
【0034】
第1軸X1及び第2軸X2に対して水平方向Hの一方側である水平方向第1側H1に、第2回転電機5の回転軸心である第3軸X3が配置されている。本例では、第3軸X3は、第1軸X1及び第2軸X2のうち上方に位置している方の第1軸X1よりもさらに上方に配置されている。第3軸X3は、第1軸X1に対して、水平方向第1側H1の斜め上方に配置されている。また、第2回転電機5が、軸方向視で、カウンタ入力ギヤ61と重複し、かつ、カウンタ出力ギヤ62とは重複しないように配置されている。
【0035】
第1軸X1及び第2軸X2に対して水平方向Hの他方側である水平方向第2側H2に、出力側差動歯車機構7の回転軸心である第4軸X4が配置されている。本例では、第4軸X4は、鉛直方向Vにおいて、第2軸X2と略同じ位置に配置されている。また、本実施形態では、軸方向視で、第1軸X1、第3軸X3、及び第4軸X4が、全体として直線状となるように配置されている。第4軸X4、第1軸X1、及び第3軸X3は、水平方向第2側H2から水平方向第1側H1に向かうに従って次第に上方に向かう方向に傾斜した直線に沿って配置されている。
【0036】
第3軸X3を回転軸心とする第2回転電機5は、軸方向視で、第1軸X1を回転軸心とする入力部材2及びカウンタギヤ機構6に対して、第4軸X4を回転軸心とする出力側差動歯車機構7とは反対側に配置されている。このとき、第2回転電機5は、軸方向視で当該第2回転電機5と出力側差動歯車機構7とが対向する領域(対向領域D)に第1回転電機4の少なくとも一部が配置されることになる位置に配置されている。なお、対向領域Dは、第2回転電機5と出力側差動歯車機構7とに共通に接する2つの仮想平面と、第2回転電機5の外面と、出力側差動歯車機構7の外面とによって囲まれる領域である。本実施形態では、対向領域Dにおける下側の領域(対向領域Dのうち、第3軸X3と第4軸X4とを包含する仮想平面よりも下側の領域)に第1回転電機4の少なくとも一部が配置されることになる位置に、第2回転電機5が配置されている。
【0037】
このような構成では、鉛直方向Vにおける出力側差動歯車機構7よりも上方であって、かつ、カウンタギヤ機構6よりも水平方向第2側H2の空間には、車両用駆動装置1の他の構成要素が存在していない。このため、仮に車両用駆動装置1が搭載される車両に、例えばステアリングシャフトやブレーキサーボ等の設置物OB(
図2を参照)が存在していても、当該設置物OBとの干渉を回避することができる。よって、車両搭載性に優れた車両用駆動装置1を実現することができる。
【0038】
上述したように本実施形態では、第2回転電機5が、カウンタギヤ機構6を介して入力側差動歯車機構3における対応する回転要素(第3回転要素33(リングギヤR))に駆動連結されている。
【0039】
この構成によれば、第2回転電機5を第1回転電機4及び出力側差動歯車機構7から相対的に離して配置することができる。また、第2回転電機5の回転を変速して出力部材8側に伝達することができる。
【0040】
また、カウンタギヤ機構6が、入力部材2と同軸に配置されている。
【0041】
この構成によれば、入力側差動歯車機構3と第2回転電機5との間の動力伝達経路にカウンタギヤ機構6を設けながらも、4軸構成を維持することができる。
【0042】
また、入力部材2が、ギヤ機構25を介して第2回転要素32に駆動連結され、カウンタギヤ機構6における入力ギヤであるカウンタ入力ギヤ61が、軸方向Lにおける入力側差動歯車機構3とギヤ機構25との間に配置されている。
【0043】
この構成によれば、入力部材2に入力される内燃機関EGの回転を変速して入力側差動歯車機構3に伝達することができる。また、軸方向Lにおける入力側差動歯車機構3とギヤ機構25との間の空間にカウンタ入力ギヤ61を収めて、カウンタギヤ機構6をコンパクトに配置することができる。よって、カウンタギヤ機構6を追加的に設けながらも、車両用駆動装置1が大型化するのを抑制することができる。
【0044】
また、第3回転要素33と一体回転する入力側差動出力ギヤ35と、出力側差動歯車機構7の入力ギヤである出力側差動入力ギヤ71とが直接噛み合っている。
【0045】
この構成によれば、構成軸数を少なく抑えることができ、車両用駆動装置1の構成を簡素化することができる。
【0046】
また、入力部材2と一体回転する入力一体ギヤ21と、第2回転要素32と一体回転する入力側差動入力ギヤ34とが直接噛み合っている。
【0047】
この構成によれば、簡易な構成で、入力部材2と入力側差動歯車機構3とを別軸に配置することができる。また、入力部材2に入力される内燃機関EGの回転を変速して入力側差動歯車機構3に伝達することができる。
【0048】
また、第2回転電機5は、軸方向視で、入力部材2に対して出力側差動歯車機構7とは反対側に配置されており、軸方向視で出力側差動歯車機構7と第2回転電機とが対向する領域(対向領域D)に、第1回転電機4の少なくとも一部が配置されている。
【0049】
この構成によれば、出力側差動歯車機構7と第2回転電機5との間の対向領域Dを少なくとも部分的に利用して第1回転電機4を配置し、車両用駆動装置1の各構成要素をコンパクトに配置することができる。
【0050】
また、入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのキャリヤC、及び第3回転要素33としてのリングギヤRを備えるシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0051】
この構成によれば、入力部材2に入力される内燃機関EGの駆動力の一部を利用して第1回転電機4に発電させつつ他の一部を車輪W側に伝達する、いわゆるスプリットハイブリッドモードを実現できる。
【0052】
また、キャリヤCと一体回転する入力側差動入力ギヤ34が、キャリヤCと同軸であって軸方向Lにおける異なる位置に配置されている。
【0053】
この構成によれば、入力部材2と入力側差動歯車機構3とを適切に別軸配置することができる。また、軸方向LにおけるキャリヤCとは異なる位置で、他の構成部品との干渉を回避しつつ入力部材2とキャリヤCとを駆動連結することが容易である。
【0054】
また、リングギヤRと一体回転する入力側差動出力ギヤ35が、リングギヤRと同じ軸方向領域の径方向外側に、当該リングギヤRと一体的に配置されている。
【0055】
この構成によれば、入力側差動歯車機構3の第3回転要素33であるリングギヤRと一体的に入力側差動出力ギヤ35を設けることで、その出力ギヤである入力側差動出力ギヤ35も含めた入力側差動歯車機構3の構成を簡素化することができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
車両用駆動装置の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、入力側差動歯車機構3の3つの回転要素31~33に対する入力部材2及び第2回転電機5の連結構成が、第1実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の車両用駆動装置1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
図3に示すように、本実施形態の入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのリングギヤR、及び第3回転要素33としてのキャリヤCを有する遊星歯車機構により構成されている。この入力側差動歯車機構3はシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、3つの回転要素31~33は、回転速度の順に、第1回転要素31(サンギヤS)、第3回転要素33(キャリヤC)、及び第2回転要素32(リングギヤR)となっている。
【0058】
本実施形態では、第2回転要素32としてのリングギヤRが、入力部材2に駆動連結されている。第2回転要素32(リングギヤR)は、円筒状に形成されたリングギヤ形成部材37の内周面に形成されている。リングギヤ形成部材37は、軸方向第1側L1に延びるリングギヤ連結部材38に連結されている。リングギヤ連結部材38における第2回転要素32(リングギヤR)よりも軸方向第1側L1に、入力側差動入力ギヤ34が一体回転するように連結されている。第2回転要素32(リングギヤR)は、入力側差動入力ギヤ34を含むギヤ機構25を介して、入力部材2に駆動連結されている。なお、本実施形態のギヤ機構25は、増速ギヤ機構(変速ギヤ機構の一例)であり、入力一体ギヤ21とそれよりも小径の入力側差動入力ギヤ34とで構成されている。
【0059】
また、第3回転要素33としてのキャリヤCの外周面(具体的には、キャリヤケースの外周面)には、入力側差動出力ギヤ35が形成されている。これにより、第3回転要素33(キャリヤC)と入力側差動出力ギヤ35とが一体回転するように連結されている。第3回転要素33(キャリヤC)は、入力側差動出力ギヤ35を介して、第2回転電機5及び出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。本実施形態では第3回転要素33(キャリヤC)は、入力側差動出力ギヤ35及びカウンタギヤ機構6を介して第2回転電機5に駆動連結されているとともに、入力側差動出力ギヤ35から直接出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0060】
本実施形態でも、第1回転電機4が入力側差動歯車機構3と同軸に配置され、入力部材2及びカウンタギヤ機構6、第2回転電機5、並びに出力側差動歯車機構7が、それぞれ、入力側差動歯車機構3と別軸に配置されている。よって、車両側に設けられる場合がある設置物OBとの干渉を回避でき、車両搭載性を向上させることができる。
【0061】
上述したように本実施形態では、入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのリングギヤR、及び第3回転要素33としてのキャリヤCを備えるシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0062】
この構成によれば、入力部材2に入力される内燃機関EGの駆動力と第1回転電機4の駆動力とを合成して車輪W側に伝達する、いわゆる電気式トルクコンバータモードを実現できる。
【0063】
また、リングギヤRと一体回転する入力側差動入力ギヤ34が、リングギヤRと同軸であって軸方向Lにおける異なる位置に配置されている。
【0064】
この構成によれば、入力部材2と入力側差動歯車機構3とを適切に別軸配置することができる。また、軸方向LにおけるリングギヤRとは異なる位置で、他の構成部品との干渉を回避しつつ入力部材2に駆動連結することが容易である。
【0065】
〔第3実施形態〕
車両用駆動装置の第3実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、入力側差動歯車機構3の具体的構成、入力側差動歯車機構3の3つの回転要素31~33に対する入力部材2及び第2回転電機5の連結構成、並びに各構成部品の配置位置が、第1実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の車両用駆動装置1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0066】
図4に示すように、入力部材2は、カウンタギヤ機構6のカウンタ軸63の径方向内側を貫通して配置されている。入力部材2におけるカウンタギヤ機構6よりも軸方向第2側L2には、当該入力部材2と一体回転するように入力一体ギヤ21が連結されている。入力一体ギヤ21は、入力側差動歯車機構3の入力側差動入力ギヤ34に直接噛み合っている。
【0067】
本実施形態の入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのリングギヤR、及び第3回転要素33としてのキャリヤCを有する遊星歯車機構により構成されている。この入力側差動歯車機構3はダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、3つの回転要素31~33は、回転速度の順に、第1回転要素31(サンギヤS)、第2回転要素32(リングギヤR)、及び第3回転要素33(キャリヤC)となっている。
【0068】
本実施形態では、第2回転要素32としてのリングギヤRが、入力部材2に駆動連結されている。第2回転要素32(リングギヤR)は、円筒状に形成されたリングギヤ形成部材37の内周面に形成されている。リングギヤ形成部材37の外周面には、入力側差動入力ギヤ34が形成されている。これにより、第2回転要素32(リングギヤR)と入力側差動入力ギヤ34とが一体回転するように連結されている。本実施形態では、入力側差動入力ギヤ34が、第2回転要素32(リングギヤR)と同じ軸方向領域の径方向外側に、当該第2回転要素32(リングギヤR)と一体的に配置されている。すなわち、径方向視で、第2回転要素32(リングギヤR)と入力側差動入力ギヤ34とが重複して配置されている。入力側差動入力ギヤ34は、入力一体ギヤ21に噛み合っており、この入力一体ギヤ21を介して入力部材2に駆動連結されている。
【0069】
また、第3回転要素33としてのキャリヤCは、キャリヤ連結部材36に連結されている。キャリヤ連結部材36は、第3回転要素33(キャリヤC)から軸方向第1側L1に延びており、当該第3回転要素33(キャリヤC)よりも軸方向第1側L1に、入力側差動出力ギヤ35が一体回転するように連結されている。第3回転要素33(キャリヤC)は、入力側差動出力ギヤ35を介して、第2回転電機5及び出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。本実施形態では、第3回転要素33(キャリヤC)は、入力側差動出力ギヤ35及びカウンタギヤ機構6を介して第2回転電機5に駆動連結されているとともに、入力側差動出力ギヤ35から直接出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0070】
カウンタギヤ機構6は、カウンタ入力ギヤ61と、このカウンタ入力ギヤ61とは軸方向Lの異なる位置に設けられたカウンタ出力ギヤ62と、これら2つのギヤ61,62を連結するカウンタ軸63とを有する。本実施形態では、カウンタ出力ギヤ62は、カウンタ入力ギヤ61に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、カウンタ軸63は中空軸とされており、このカウンタ軸63が入力部材2に外挿されている。
【0071】
本実施形態でも、第1回転電機4が入力側差動歯車機構3と同軸に配置され、入力部材2及びカウンタギヤ機構6、第2回転電機5、並びに出力側差動歯車機構7が、それぞれ、入力側差動歯車機構3と別軸に配置されている。よって、車両側に設けられる場合がある設置物OBとの干渉を回避でき、車両搭載性を向上させることができる。
【0072】
〔第4実施形態〕
車両用駆動装置の第4実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、入力側差動歯車機構3の配置位置、及び入力側差動歯車機構3の3つの回転要素31~33に対する入力部材2及び第2回転電機5の連結構成が、第1実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の車両用駆動装置1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0073】
図5に示すように、本実施形態の入力側差動歯車機構3は、軸方向Lにおいて内燃機関EG側に寄せて配置されている。すなわち、入力側差動歯車機構3は、カウンタギヤ機構6や出力側差動歯車機構7よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0074】
また、本実施形態の入力側差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのリングギヤR、及び第3回転要素33としてのキャリヤCを有する遊星歯車機構により構成されている。この入力側差動歯車機構3はシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、3つの回転要素31~33は、回転速度の順に、第1回転要素31(サンギヤS)、第3回転要素33(キャリヤC)、及び第2回転要素32(リングギヤR)となっている。
【0075】
本実施形態では、第2回転要素32としてのリングギヤRが、入力部材2に駆動連結されている。第2回転要素32(リングギヤR)は、円筒状に形成されたリングギヤ形成部材37の内周面に形成されている。リングギヤ形成部材37の外周面には、入力側差動入力ギヤ34が形成されている。これにより、第2回転要素32(リングギヤR)と入力側差動入力ギヤ34とが一体回転するように連結されている。本実施形態では、入力側差動入力ギヤ34が、第2回転要素32(リングギヤR)と同じ軸方向領域の径方向外側に、当該第2回転要素32(リングギヤR)と一体的に配置されている。すなわち、径方向視で、第2回転要素32(リングギヤR)と入力側差動入力ギヤ34とが重複して配置されている。入力側差動入力ギヤ34は、入力一体ギヤ21に噛み合っており、この入力一体ギヤ21を介して入力部材2に駆動連結されている。
【0076】
また、第3回転要素33としてのキャリヤCが、キャリヤ連結部材36に連結されている。キャリヤ連結部材36は、第3回転要素33(キャリヤC)から軸方向第2側L2に延びており、当該第3回転要素33(キャリヤC)よりも軸方向第2側L2に、入力側差動出力ギヤ35が一体回転するように連結されている。第3回転要素33(キャリヤC)は、入力側差動出力ギヤ35を介して、第2回転電機5及び出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。本実施形態では、第3回転要素33(キャリヤC)は、入力側差動出力ギヤ35及びカウンタギヤ機構6を介して第2回転電機5に駆動連結されているとともに、入力側差動出力ギヤ35から直接出力側差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0077】
本実施形態でも、第1回転電機4が入力側差動歯車機構3と同軸に配置され、入力部材2及びカウンタギヤ機構6、第2回転電機5、並びに出力側差動歯車機構7が、それぞれ、入力側差動歯車機構3と別軸に配置されている。よって、車両側に設けられる場合がある設置物OBとの干渉を回避でき、車両搭載性を向上させることができる。
【0078】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、第2回転電機5と入力側差動歯車機構3との間の動力伝達経路にカウンタギヤ機構6が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図6に示すように、第2回転電機5と入力側差動歯車機構3とがアイドルギヤ66を介して駆動連結されても良い。アイドルギヤ66は、第2回転電機出力ギヤ54に直接噛み合うとともに、入力側差動歯車機構3の入力側差動出力ギヤ35に直接噛み合っている。アイドルギヤ66は、入力部材2と同軸となる、第1軸X1上に配置されることが好ましい。
【0079】
(2)上記の各実施形態では、第2回転電機5が、軸方向視で入力部材2及びカウンタギヤ機構6に対して出力側差動歯車機構7とは反対側に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2回転電機5が、例えば第1軸X1と第4軸X4とを包含する仮想平面に対して、第1回転電機4とは反対側に配置されても良い。
【0080】
(3)上記の各実施形態では、カウンタギヤ機構6が、入力部材2と同軸となる第1軸X1上に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、カウンタギヤ機構6が、第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4とは異なる第5軸上に配置されても良い。
【0081】
(4)上記の各実施形態では、ギヤ機構25として同速ギヤ機構又は増速ギヤ機構を用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ギヤ機構25として減速ギヤ機構(変速ギヤ機構の一例)を用いても良い。この場合、ギヤ機構25は、互いに噛み合う2つのギヤ、具体的には入力一体ギヤ21とそれよりも大径の入力側差動入力ギヤ34とで構成される。
【0082】
(5)上記の各実施形態において、第1回転電機4と第2回転電機5とを入れ替えて配置しても良い。すなわち、第2回転電機5が入力側差動歯車機構3と同軸に配置され、入力部材2及びカウンタギヤ機構6、第1回転電機4、並びに出力側差動歯車機構7が、それぞれ、入力側差動歯車機構3と別軸に配置されても良い。この場合においても、第1回転電機4が入力側差動歯車機構3の第1回転要素31に駆動連結されるとともに、第2回転電機5が入力側差動歯車機構3の第3回転要素33及び出力側差動歯車機構7に駆動連結される。
【0083】
(6)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:車両用駆動装置、2:入力部材、3:入力側差動歯車機構、4:第1回転電機、5:第2回転電機、6:カウンタギヤ機構、7:出力側差動歯車機構、8:出力部材、9:ケース、21:入力一体ギヤ、25:ギヤ機構、31:第1回転要素、32:第2回転要素、33:第3回転要素、34:入力側差動入力ギヤ、35:入力側差動出力ギヤ、36:キャリヤ連結部材、37:リングギヤ形成部材、38:リングギヤ連結部材、41:第1ステータ、42:第1ロータ、43:第1ロータ軸、51:第2ステータ、52:第2ロータ、53:第2ロータ軸、54:第2回転電機出力ギヤ、61:カウンタ入力ギヤ、62:カウンタ出力ギヤ、63:カウンタ軸、66:アイドルギヤ、71:出力側差動入力ギヤ、C:キャリヤ、D:対向領域、EG:内燃機関、Eo:内燃機関出力軸、H:水平方向、H1:水平方向第1側、H2:水平方向第2側、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、OB:設置物、R:リングギヤ、S:サンギヤ、V:鉛直方向、W:車輪、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸、X4:第4軸