(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030147
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 25/08 20060101AFI20220210BHJP
B63J 2/08 20060101ALI20220210BHJP
B63B 57/04 20060101ALI20220210BHJP
F17C 9/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B63B25/08 G
B63J2/08 B
B63B57/04
F17C9/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133937
(22)【出願日】2020-08-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小形 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB11
3E172AB20
3E172BD01
3E172EB02
3E172EB18
3E172EB19
(57)【要約】
【課題】ベントポストからのアンモニアの拡散性を高める。
【解決手段】船舶は、一対の舷側を有する船体と、船体に設けられ、アンモニアを貯留可能なタンクと、前記タンクに連通するアンモニアの流通経路にベント管を介して接続され、上下方向に延びる筒状で、下部から導入されたアンモニアを上部から大気中に排出するベントポスト本体と、ベントポスト本体を上下方向にわたって加熱する加熱部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられ、アンモニアを貯留可能なタンクと、
前記タンクに連通するアンモニアの流通経路にベント管を介して接続され、上下方向に延びる筒状で、下部から導入された前記アンモニアを上部から大気中に排出するベントポスト本体と、
前記ベントポスト本体を上下方向にわたって加熱する加熱部と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記ベントポスト本体及び前記加熱部を覆うように設けられた保温層、をさらに備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記加熱部は、前記ベントポスト本体の外周面に設けられている
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記タンクに連通するアンモニアの流通経路に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置をさらに備え、
前記ベント管は、供給された前記不活性ガスを前記アンモニアとともに前記ベントポスト本体内に導く
請求項1から3の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶推進用の燃料や、貨物として可燃性ガスを搭載する船舶には、可燃性ガスを船外の大気中に排出するためのベントポストが設けられている。例えば、特許文献1には、可燃性ガス(ガス燃料)により駆動されるガスエンジンの配管内等に残る可燃性ガスを、窒素ガス等でパージし、ベントポストを介して大気開放する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可燃性ガスとしてアンモニアを搭載する場合、アンモニアは、メタンガス、ブタンガス等の他の可燃性ガスに比較すると、空気中の水分と反応しやすい。アンモニアガスが空気中の水分と反応すると、霧状(液滴状)のアンモニア水となり、比重が大気よりも大きくなる。このため、霧状のアンモニア水は、ベントポストから大気中に放出しても、十分に拡散しない場合がある。また、液滴状のアンモニア水を含む状態でアンモニアガスをベントポストから放出する際に、液滴状のアンモニア水が気化すると、その気化熱により、アンモニアガスの温度が低下する。また、ベントポスト自体が、外気や、風雨等によって、アンモニアガスよりも低温となると、ベントポスト内を通過する際にアンモニアガスが冷やされることもある。このようなアンモニアガスの温度低下により、アンモニアガスの密度が周囲の大気の密度と同程度か大きくなると、アンモニアガスが滞留し、拡散しにくくなる。
【0005】
また、ベントポストは、タンクや配管系統内の可燃性ガスの内圧が過度に高くなった場合に、安全弁を開いて可燃性ガスを放出するときのガス流量に基づいて設計されている。これに対し、特許文献1に開示されたように、配管内などに残る可燃性ガスを窒素ガス等でパージするときにベントポストから放出されるガス流量は、安全弁を開いたときのガス流量に比較すると大幅に低い。このため、パージ時におけるベントポスト内における可燃性ガスの流速が低い。その結果、アンモニアは、ベントポストから、より一層拡散しにくくなる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、ベントポストからのアンモニアの拡散性を高めることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、タンクと、ベントポスト本体と、加熱部と、を備える。前記タンクは、前記船体に設けられている。前記タンクは、アンモニアを貯留可能である。前記ベントポスト本体は、前記タンクに連通するアンモニアの流通経路にベント管を介して接続されている。前記ベントポスト本体は、上下方向に延びる筒状である。前記ベントポスト本体は、下部から導入された前記アンモニアを上部から大気中に排出する。前記加熱部は、前記ベントポスト本体を上下方向にわたって加熱する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の船舶によれば、ベントポストからのアンモニアの拡散性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶に設けられたタンク、内燃機関、及びベントポストの間の系統を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態の船舶において、通常時におけるアンモニアの流れを示す図である。
【
図4】本開示の実施形態の船舶において、パージを行う場合のガスの流れを示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るベントポストの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造4と、タンク10と、ベントポスト30と、を備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種は、例えば液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。
【0011】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側5A,5Bと、船底6と、を有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側5A,5B及び船底6により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0012】
船体2は、更に、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を備えている。この実施形態で例示する上甲板7は、外部に露出する曝露甲板でもある。上部構造4は、上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首3a側で且つ上甲板7よりも下方の船体2内には、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。
【0013】
また、船体2内には、アンモニアによって作動する機器として内燃機関8が設けられている。内燃機関8は、船舶1を推進させるための主機、船内に電気を供給する発電機等として用いられる。この実施形態において、内燃機関8は、タンク10に貯留されたアンモニアを燃料として作動する。
【0014】
タンク10は、液化アンモニアを貯留する。この実施形態のタンク10は、上部構造4よりも船首尾方向FAの船尾3b側の上甲板7上に配置されている場合を例示している。
【0015】
タンク10と内燃機関8とは、配管系統20を介して接続されている。
図2に示すように、配管系統20は、タンク10に連通するアンモニアの流通経路Rを形成する。この配管系統20は、供給管21と、リターン管22と、開閉弁23、24と、をそれぞれ備えている。配管系統20には、不活性ガス供給装置50と、ベントポスト30と、が接続されている。
【0016】
供給管21、リターン管22は、それぞれ、タンク10と内燃機関8とを接続する。供給管21は、内燃機関8にタンク10からアンモニアを供給する。リターン管22は、内燃機関8で燃料として用いられずに残った余剰のアンモニアをタンク10に戻す。開閉弁23、24は、供給管21、リターン管22に設けられている。開閉弁23、24は、内燃機関8の作動時に常時開放状態とされる。また、開閉弁23、24は、内燃機関8の停止時等に閉塞状態とされる。これら開閉弁23、24が閉塞されることで、供給管21、リターン管22の内部に形成された流路がそれぞれ遮断される。
【0017】
不活性ガス供給装置50は、不活性ガス供給部51と、不活性ガス供給管52と、不活性ガス供給弁53と、を備えている。
【0018】
不活性ガス供給部51は、窒素等の不活性ガス(例えば、イナートガス等)を不活性ガス供給管52へ供給可能とされている。不活性ガス供給管52は、不活性ガス供給部51と、配管系統20とを接続する。不活性ガス供給管52は、配管系統20のパージ対象領域20pに接続されている。パージ対象領域20pとは、配管系統20において、供給管21の開閉弁23とリターン管22の開閉弁24との間で、内燃機関8を含む側である。
【0019】
不活性ガス供給弁53は、不活性ガス供給管52に設けられている。
図3に示すように、不活性ガス供給弁53は、通常時は閉塞状態とされ、不活性ガス供給部51から配管系統20のパージ対象領域20pへの不活性ガスの供給を遮断する。この状態で、開閉弁23、24は開状態とされ、タンク10から供給管21を通して内燃機関8にアンモニアが供給可能にされるとともに、余剰のアンモニアが内燃機関8からタンク10に戻される。
【0020】
図4に示すように、不活性ガス供給弁53は、内燃機関8の緊急停止時、長期停止時等に閉塞状態から開放状態にされる。この状態で、開閉弁23、24は閉塞状態とされ、供給管21、リターン管22は遮断されている。つまり、タンク10から内燃機関8へのアンモニアの供給が停止状態となる。この状態で、不活性ガス供給弁53を開放状態にすると、不活性ガス供給部51から配管系統20のパージ対象領域20pに不活性ガスが供給される。不活性ガス供給装置50は、アンモニアの流通経路Rである配管系統20のパージ対象領域20pに不活性ガスを供給することで、パージ対象領域20p(流通経路R)内のアンモニアを不活性ガスに置き換える、いわゆるパージが行われる。
【0021】
図5に示すように、ベントポスト30は、船体2の上甲板7上に設けられている。ベントポスト30は、ベントポスト本体31と、加熱部32と、保温層33と、を備えている。
【0022】
ベントポスト本体31は、上甲板7上で、上下方向Dvに延びている。ベントポスト本体31は、上下方向Dvに延びる筒状で、その上部に開口31aを有している。ベントポスト本体31の下部には、ベント管38が接続されている。
ベントポスト本体31は、ベント管38を介して、タンク10のリリーフ配管(図示無し)に接続されている。リリーフ配管は、タンク10に接続されている。リリーフ配管には、安全弁(図示無し)が設けられている。安全弁は、タンク10内の圧力が基準以上に上昇した場合に開き、タンク10内のアンモニアを、リリーフ配管、ベント管38を経て、ベントポスト本体31から外部に放出する。
【0023】
図2~
図4に示すように、ベントポスト本体31は、ベント管38を介して、タンク10に連通するアンモニアの流通経路Rとしての、パージ対象領域20pに接続されている。
【0024】
ベント管38には、パージ開閉弁39が設けられている。パージ開閉弁39は、通常時は閉塞状態とされ、ベント管38内の流路を遮断する。パージ開閉弁39は、内燃機関8の緊急停止時、長期停止時等に閉塞状態から開放状態にされる。つまりパージ開閉弁39は、不活性ガス供給弁53と連動して開閉する。パージ開閉弁39は、不活性ガス供給装置50により不活性ガス供給部51から配管系統20のパージ対象領域20pに不活性ガスが供給される場合に、開放状態とされる。
図4に示すように、パージ開閉弁39を開放状態にすると、ベント管38を通して、配管系統20のパージ対象領域20pから、パージ対象領域20p内のアンモニアが、不活性ガスとともにベントポスト本体31の下部に導入される。
【0025】
図5に示すように、このようにしてベントポスト本体31の下部には、ベント管38を通して、配管系統20のパージ対象領域20pからアンモニアを含むガスGが導入される。ベントポスト本体31は、下部から導入されたアンモニアを含むガスGを、上部の開口31aから大気中に放出する。
【0026】
この実施形態のベントポスト30は、ベントポスト本体31内に雨水受け35を備えている。雨水受け35は、開口31aの下方に設けられ、開口31aからベントポスト本体31内に入った雨水を受ける。この実施形態の雨水受け35は、下方に向かって径寸法が窄まる漏斗状をなしている。雨水受け35には、排水管36が接続されている。排水管36は、雨水受け35で受けた雨水を、ベントポスト本体31の外部に排出する。このように雨水をベントポスト本体31の外部に排出することで、ベントポスト本体31内でアンモニアが雨水と反応することを抑えている。
【0027】
加熱部32は、ベントポスト本体31を上下方向Dvにわたって加熱する。この実施形態における加熱部32は、ベントポスト本体31の外周面に取り付けられている。加熱部32は、例えば、線状のヒータ32hを用いることができる。この実施形態で例示するヒータ32hは、ベントポスト本体31の外周面に螺旋状に巻き付けられている。ヒータ32hは、通電することで発熱する電熱線等の電熱ヒータや、蒸気等の加熱された流体を流通させることで発熱するヒータ管等を用いることができる。この実施形態で例示する加熱部32は、ベントポスト本体31の上下方向Dvに取り付けられ、ベントポスト本体31の上下方向Dvを加熱する。
【0028】
保温層33は、ベントポスト本体31及び加熱部32を外側から覆うように配置されている。保温層33は、例えば、ウレタン、グラスウール等の断熱材料によって形成することができる。
【0029】
このようなベントポスト30において、加熱部32は、タンク10にアンモニアを収納している状態では、常にベントポスト本体31を加熱している状態にするのが好ましい。また、加熱部32は、ベントポスト本体31を、常に大気温度よりも高い状態に加熱するのが好ましい。さらに、加熱部32は、ベントポスト本体31内で結露が生じないような温度にベントポスト本体31を加熱するのが好ましい。そのため、例えば、ベントポスト本体31を検出する温度センサ、大気温度を検出する温度センサ等の検出値に基づいて、結露が生じないように加熱部32によるベントポスト本体31の加熱を制御するようにしてもよい。
【0030】
上記実施形態の船舶1は、加熱部32でベントポスト本体31を加熱することによって、ベントポスト本体31が、外気や風雨等によって冷やされることが抑えられる。これにより、ベントポスト本体31内で大気中の水分が結露することが抑えられる。したがって、ベントポスト本体31を通して大気中に排出されるアンモニアが、ベントポスト本体31内で水分と反応することが抑えられる。また、ベントポスト本体31を通して大気中に排出されるアンモニアが、ベントポスト本体31内で温度低下することが抑えられる。したがって、アンモニアの温度低下によるアンモニアの密度上昇が抑えられる。また、加熱されたベントポスト本体31内をアンモニアが通過する際に、アンモニアが加熱されて昇温膨張することで、ベントポスト本体31からのアンモニアの放出流速が上昇する。これにより、アンモニアの拡散性が高まり、ベントポスト本体31の出口近傍での大気中の水分との反応によるアンモニア水(液滴)の発生による滞留を抑えることもできる。その結果、ベントポスト30からのアンモニアの拡散性を高めることが可能となる。したがって、安全弁を有したリリーフ配管(図示無し)を通してタンク10内のアンモニアを緊急的に放出するときのガス流量に基づいて設けられたベントポスト本体31であっても、パージ時の小流量でのアンモニア放出を円滑に行うことができる。
【0031】
上記実施形態では、保温層33により、加熱部32によって加熱されるベントポスト本体31の温度低下を抑えることができる。これにより、ベントポスト30からのアンモニアの拡散性を高める効果を、より効率良く実現することができる。また、加熱部32における消費エネルギーを低減することも可能となる。
【0032】
上記実施形態では、加熱部32は、ベントポスト本体31の外周面に設けられている。これにより、ベントポスト本体31に対し、加熱部32を容易に設置することができる。また、既存のベントポスト本体31に対しても、加熱部32(及び保温層33)を容易に追設して、ベントポスト30からのアンモニアの拡散性を高めることが可能となる。
【0033】
上記実施形態では、不活性ガス供給装置50から不活性ガスをアンモニアの流通経路Rであるパージ対象領域20pに供給することで、パージ対象領域20p(流通経路R)内のアンモニアを不活性ガスに置き換える、いわゆるパージを行うことができる。このように、加熱部32でベントポスト本体31を加熱することによって、パージを行う際に不活性ガスとともにベントポスト本体31内に導かれるアンモニアの、ベントポスト本体31からの拡散性を高めることができる。
【0034】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、加熱部32として線状のヒータ32hを螺旋状に設けるようにしたが、これに限られない。例えば、直線状のヒータ32hをベントポスト本体31の筒状の中心軸周りに間隔をあけて複数設けるようにしたり、上下方向Dvに間隔をあけてリング状のヒータ32hを複数設けたりしてもよい。また、加熱部32は、線状のヒータ32hを用いるものに限られない。例えば、加熱部32として、例えばパネル状のヒータ等を用いることもできる。
【0035】
また、ベントポスト本体31内に、不活性ガス供給装置50によるパージ対象領域20pのアンモニアを導入するようにしたが、ベントポスト本体31には、タンク10に連通するアンモニアの流通経路Rであれば、適宜の他の部位の配管からアンモニアを導入することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、タンク10から供給されるアンモニアによって作動する機器として、内燃機関8を示したが、内燃機関8の用途については何ら限定するものではない。また、機器は、内燃機関8に限らず、アンモニアによって駆動されるのであれば、ボイラーなどであってもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、タンク10を、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に配置するようにしたが、これに限られない。例えば、上部構造4に対して船首3a側の上甲板7上に、タンク10を設けるようにしてもようにしてもよい。さらには、上甲板7上に限らず、上甲板7の下側の船体2内に、タンク10を設けるようにしてもよい。
【0038】
加えて、ベントポスト本体31で放出するアンモニアは、船舶1を推進させるための燃料を貯留するタンク10に限らず、船舶1で運搬する貨物用のタンクに貯留されたものであってもよい。
【0039】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る船舶1は、一対の舷側5A、5Bを有する船体2と、前記船体2に設けられ、アンモニアを貯留可能なタンク10と、前記タンク10に連通するアンモニアの流通経路Rにベント管38を介して接続され、上下方向Dvに延びるとともに、下部から導入された前記アンモニアを上部から大気中に排出するベントポスト本体31と、前記ベントポスト本体31を上下方向Dvにわたって加熱する加熱部32と、を備える。
加熱部32の例としては、電気式のヒータや、加熱媒体を流通させるヒータが挙げられる。
【0041】
この船舶1は、加熱部32でベントポスト本体31を加熱することによって、ベントポスト本体31が、外気や風雨等によって冷やされることが抑えられる。これにより、ベントポスト本体31内で大気中の水分が結露することが抑えられる。したがって、ベントポスト本体31を通して大気中に排出されるアンモニアが、ベントポスト本体31内で水分と反応することが抑えられる。また、ベントポスト本体31を通して大気中に排出されるアンモニアが、ベントポスト本体31内で温度低下することが抑えられる。したがって、アンモニアの温度低下によるアンモニアの密度上昇が抑えられる。加熱されたベントポスト本体31内をアンモニアが通過する際に、アンモニアが昇温膨張することで、ベントポスト本体31からのアンモニアの放出流速が上昇する。これにより、アンモニアの拡散性が高まり、ベントポスト本体31の出口近傍での大気中の水分との反応によるアンモニア水(液滴)の発生による滞留を抑えることもできる。その結果、ベントポスト30からのアンモニアの拡散性を高めることが可能となる。
【0042】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記ベントポスト本体31及び前記加熱部32を覆うように設けられた保温層33、をさらに備える。
保温層33としては、ウレタン、グラスウール等の断熱材料によって形成されたものが挙げられる。
【0043】
このような構成によれば、保温層33で、加熱部32によって加熱されるベントポスト本体31の温度低下を抑えることができる。これにより、ベントポスト30からのアンモニアの拡散性を高める効果を、より効率良く実現することができる。また、加熱部32における消費エネルギーを低減することも可能となる。
【0044】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)又は(2)の船舶1であって、前記加熱部32は、前記ベントポスト本体31の外周面に設けられている。
【0045】
これにより、ベントポスト本体31に対し、加熱部32を容易に設置することができる。また、既存のベントポスト本体31に対しても、加熱部32を容易に追設して、ベントポスト30からのアンモニアの拡散性を高めることが可能となる。
【0046】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(1)から(3)の何れか一つの船舶1であって、前記タンク10に連通するアンモニアの流通経路Rに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置50をさらに備え、前記ベント管38は、供給された前記不活性ガスを前記アンモニアとともに前記ベントポスト本体31内に導く。
【0047】
このような構成によれば、不活性ガス供給装置50から不活性ガスをアンモニアの流通経路Rに供給することで、流通経路R内のアンモニアを不活性ガスに置き換える、いわゆるパージを行うことができる。このように、パージを行う場合に、加熱部32でベントポスト本体31を加熱することによって、不活性ガスとともにベントポスト本体31内に導かれるアンモニアの、ベントポスト本体31からの拡散性を高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…船舶
2…船体
3a…船首
3b…船尾
4…上部構造
5A、5B…舷側
6…船底
7…上甲板
8…内燃機関
10…タンク
20…配管系統
20p…パージ対象領域
21…供給管
22…リターン管
23、24…開閉弁
30…ベントポスト
31…ベントポスト本体
31a…開口
32…加熱部
32h…ヒータ
33…保温層
35…雨水受け
36…排水管
38…ベント管
39…パージ開閉弁
50…不活性ガス供給装置
51…不活性ガス供給部
52…不活性ガス供給管
53…不活性ガス供給弁
Dv…上下方向
FA…船首尾方向
G…ガス
R…流通経路