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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030154
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220210BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220210BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20220210BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220210BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02M3/28 W
H02M3/28 C
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H02J1/00 309C
H02J1/00 306K
B60L3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133944
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】竹内 純一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 定典
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165EA02
5G165EA04
5G165JA04
5G165JA09
5G165LA01
5G165MA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB05
5G503DA04
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA14
5G503FA16
5G503FA19
5G503GB03
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BB07
5H125BB09
5H125BC28
5H125DD10
5H125EE12
5H125EE13
5H730AA20
5H730AS05
5H730AS11
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD31
(57)【要約】
【課題】異常が発生した場合に好適に対応できる電源システムを提供すること。
【解決手段】電源システム10は、高圧バッテリ11と、高圧バッテリ11から出力される高圧バッテリ電圧VbHを降圧する複数の電源装置としてのDC/DCコンバータ20a~20cと、複数の電源ライン31~33と、互いに同一機能を有する複数の負荷41,42と、を備えている。複数の負荷41,42は、複数の電源ライン31~33のうちそれぞれ異なる電源ラインに接続されており、負荷41,42が接続されている電源ラインは、複数のDC/DCコンバータ20a~20cのうち少なくとも2つに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置から出力される電圧を異なる電圧に変換する複数の電源装置と、
複数の電源ラインと、
互いに同一機能、類似機能又は代替機能を有する複数の負荷と、
を備え、
前記複数の負荷は、前記複数の電源ラインのうちそれぞれ異なる電源ラインに接続されており、
前記複数の負荷のいずれかに接続された前記電源ラインは、前記複数の電源装置のうち少なくとも2つの電源装置に接続されており、前記複数の負荷のいずれかに接続された前記電源ラインと、当該電源ラインに接続されている前記少なくとも2つの電源装置との間には開閉器が設けられている
ことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記複数の負荷はそれぞれ、前記複数の電源ラインのうち少なくとも2つの電源ラインに接続されている
請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記蓄電装置は、高圧蓄電装置であり、
前記電源システムは、前記複数の電源ラインの1つに接続され、前記高圧蓄電装置よりも低圧の低圧蓄電装置を備え、
前記複数の電源装置は、前記高圧蓄電装置の電圧を前記低圧蓄電装置の電圧に降圧する
請求項1または請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記複数の電源装置は3つ以上である請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記複数の電源ラインは、互いに接続されて環状の電源網を構成している
請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記開閉器に接続されている電源装置は、当該開閉器の開閉制御を行う開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、前記開閉器が閉状態である状況において当該開閉器に接続されている電源装置から出力される電流が閾値電流以上となることに基づいて、前記開閉器を前記閉状態から開状態に切り替える
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記複数の電源装置が動作していない状況下において前記低圧蓄電装置を用いて前記電源網の断線の有無を判定する断線判定部を備えている
請求項5に記載の電源システム。
【請求項8】
前記電源網は、前記複数の電源装置のうちの1つである特定電源装置と前記低圧蓄電装置とを接続する経路として、第1経路及び第2経路を有しており、
前記断線判定部は、前記第1経路と前記特定電源装置とが接続され且つ前記第2経路と前記特定電源装置とが接続されていない状況下において前記特定電源装置に前記低圧蓄電装置の電圧が印加されなかった場合、又は、前記第2経路と前記特定電源装置とが接続され且つ前記第1経路と前記特定電源装置とが接続されていない状況下において前記特定電源装置に前記低圧蓄電装置の電圧が印加されなかった場合に、前記電源ラインに断線が発生していると判定する
請求項7に記載の電源システム。
【請求項9】
前記電源網は、前記複数の電源装置のうちの1つである特定電源装置と前記低圧蓄電装置とを接続する経路として、第1経路及び第2経路を有しており、
前記電源システムは、
前記第1経路と前記低圧蓄電装置との間に設けられた第1蓄電開閉器と、
前記第2経路と前記低圧蓄電装置との間に設けられた第2蓄電開閉器と、
前記第1経路又は前記第2経路のいずれか一方に接続される検出抵抗と、
前記検出抵抗の両端の電圧を検出する電圧センサと、
を備え、
前記断線判定部は、前記第1蓄電開閉器及び前記第2蓄電開閉器の状態と、前記電圧センサの検出結果とに基づいて、前記電源ラインの断線の有無を判定する
請求項7に記載の電源システム。
【請求項10】
前記電源システムは車両用であり、
前記複数の負荷は、車両のブレーキを制御するブレーキ制御装置である請求項1~9のうちいずれか一項に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、蓄電装置としてのメインバッテリと、メインバッテリの出力電圧を降圧する電源装置としてのDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータによって降圧された電力が供給される電源配線と、電源配線に接続された負荷と、を備えている電源システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-127090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記電源システムにおいては、異常が発生した場合に対応できないおそれがある。例えば、仮にDC/DCコンバータにおいて異常が発生した場合、負荷への電力供給が行われないおそれがある。また、例えば電源配線において異常が発生した場合、電源配線における異常発生箇所よりも下流側の部分に接続されている負荷への電力供給が行われないおそれがある。そして、負荷への電力供給が行われないと、負荷が正常に動作しないおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は異常が発生した場合に好適に対応できる電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する電源システムは、蓄電装置と、前記蓄電装置から出力される電圧を異なる電圧に変換する複数の電源装置と、複数の電源ラインと、互いに同一機能、類似機能又は代替機能を有する複数の負荷と、を備え、前記複数の負荷は、前記複数の電源ラインのうちそれぞれ異なる電源ラインに接続されており、前記複数の負荷のいずれかに接続された前記電源ラインは、前記複数の電源装置のうち少なくとも2つの電源装置に接続されており、前記複数の負荷のいずれかに接続された前記電源ラインと、当該電源ラインに接続されている前記少なくとも2つの電源装置との間には開閉器が設けられていることを特徴とする電源システム。
【0007】
かかる構成によれば、同一機能、類似機能又は代替機能を有する複数の負荷がそれぞれ異なる電源ラインに接続されているため、仮に複数の負荷のうち1つの負荷に接続されている電源ラインにて断線や地絡などの異常が発生した場合であっても、他の電源ラインに接続されている同一機能、類似機能又は代替機能を有する負荷に電力供給を行うことができる。
【0008】
また、複数の負荷のいずれかに接続された電源ラインには少なくとも2つの電源装置が接続されているため、1つの電源装置に異常が発生した場合には、他の電源装置を用いて電力供給を行うことができる。
【0009】
更に、複数の負荷のいずれかに接続された電源ラインにて地絡などの異常が生じた場合には、開閉器を開状態にすることにより、当該電源ラインと電源装置との接続を遮断することができる。これにより、上記電源ラインの地絡などに起因して他の電力供給に支障が生じることを抑制できる。
【0010】
以上のことから、複数の電源ラインの1つ、又は、複数の電源装置の1つに異常が発生した場合であっても、同一機能、類似機能又は代替機能を有する複数の負荷の少なくとも1つには電力供給を行うことができる。したがって、異常発生時において全負荷への電力供給が停止することを抑制でき、負荷が有する機能が失われることを抑制できる。よって、異常が発生した場合に好適に対応できる。
【0011】
上記電源システムについて、前記複数の負荷はそれぞれ、前記複数の電源ラインのうち少なくとも2つの電源ラインに接続されているとよい。
かかる構成によれば、仮に1つの電源ラインに断線や地絡などの異常が発生している場合であっても、他方の電源ラインを介して負荷への電力供給を行うことができる。これにより、電源ラインの異常に対応できる。
【0012】
上記電源システムについて、前記蓄電装置は、高圧蓄電装置であり、前記電源システムは、前記複数の電源ラインの1つに接続され、前記高圧蓄電装置よりも低圧の低圧蓄電装置を備え、前記電源装置は、前記高圧蓄電装置の電圧を前記低圧蓄電装置の電圧に降圧するとよい。
【0013】
かかる構成によれば、複数の電源装置を用いて低圧蓄電装置を充電することができる。また、高圧蓄電装置に異常が発生した場合にも、低圧蓄電装置を用いて負荷への電力供給を行うことができる。
【0014】
上記電源システムについて、前記複数の電源装置は3つ以上であるとよい。
かかる構成によれば、電源装置が2つである場合と比較して、1つ当たりの電源装置が供給する電力を小さくすることができる。
【0015】
上記電源システムについて、前記複数の電源ラインは、互いに接続されて環状の電源網を構成しているとよい。
かかる構成によれば、環状の電源網が構成されているため、当該電源網に接続されている各負荷には、少なくとも2つの電力供給ルートがある。また、各電源装置は、電源網を介して各負荷に接続されている。これにより、各電源装置の1つに異常が発生した場合には、他の2つ以上の電源装置を用いて負荷に電力供給を行うことができる。したがって、電源システムにおける冗長性の更なる向上を図ることができる。
【0016】
上記電源システムについて、前記開閉器に接続されている電源装置は、当該開閉器の開閉制御を行う開閉制御部を備え、前記開閉制御部は、前記開閉器が閉状態である状況において当該開閉器に接続されている電源装置から出力される電流が閾値電流以上となることに基づいて、前記開閉器を前記閉状態から開状態に切り替えるとよい。
【0017】
かかる構成によれば、電源装置から出力される電流が閾値電流以上である場合には、開閉器が開状態となり、電源ラインへの電力供給が停止する。これにより、電源装置に過電流が流れることに起因する異常を抑制できる。
【0018】
上記電源システムについて、前記複数の電源装置が動作していない状況下において前記低圧蓄電装置を用いて前記電源網の断線の有無を判定する断線判定部を備えているとよい。
【0019】
かかる構成によれば、複数の電源装置が動作していない状況下において電源網の断線の有無を判定することにより、断線が生じている状態で複数の電源装置の動作が開始されることを抑制できる。
【0020】
上記電源システムについて、前記電源網は、前記複数の電源装置のうちの1つである特定電源装置と前記低圧蓄電装置とを接続する経路として、第1経路及び第2経路を有しており、前記断線判定部は、前記第1経路と前記特定電源装置とが接続され且つ前記第2経路と前記特定電源装置とが接続されていない状況下において前記特定電源装置に前記低圧蓄電装置の電圧が印加されなかった場合、又は、前記第2経路と前記特定電源装置とが接続され且つ前記第1経路と前記特定電源装置とが接続されていない状況下において前記特定電源装置に前記低圧蓄電装置の電圧が印加されなかった場合に、前記電源ラインに断線が発生していると判定するとよい。
【0021】
かかる構成によれば、特定電源装置と低圧蓄電装置とを接続する経路として、第1経路と第2経路とが設けられている場合、両経路のうちいずれか一方の経路に断線が生じている場合であっても他方の経路を介して低圧蓄電装置の電圧が印加される。このため、電源ラインの断線を検出できない場合があり得る。
【0022】
この点、本構成によれば、両経路のうちいずれか一方の経路と特定電源装置とが接続されている場合、他方の経路と特定電源装置とは接続されていない。これにより、上記他方の経路を介して特定電源装置に低圧蓄電装置の電圧が印加されることが規制されている。したがって、この状況下で特定電源装置に低圧蓄電装置の電圧が印加されない場合には、上記一方の経路にて断線が生じている蓋然性が高い。よって、電源ラインの断線を検出できる。
【0023】
上記電源システムについて、前記電源網は、前記複数の電源装置のうちの1つである特定電源装置と前記低圧蓄電装置とを接続する経路として、第1経路及び第2経路を有しており、前記電源システムは、前記第1経路と前記低圧蓄電装置との間に設けられた第1蓄電開閉器と、前記第2経路と前記低圧蓄電装置との間に設けられた第2蓄電開閉器と、前記第1経路又は前記第2経路のいずれか一方に接続される検出抵抗と、前記検出抵抗の両端の電圧を検出する電圧センサと、を備え、前記断線判定部は、前記第1蓄電開閉器及び前記第2蓄電開閉器の状態と、前記電圧センサの検出結果とに基づいて、前記電源ラインの断線の有無を判定するとよい。
【0024】
かかる構成によれば、第1蓄電開閉器及び第2蓄電開閉器を制御することにより、第1経路と低圧蓄電装置との接続、及び、第2経路と低圧蓄電装置との接続を制御することができる。そして、各蓄電開閉器の状態と、電圧センサの検出結果とを参照することにより、電源ラインの断線の有無を判定できる。
【0025】
上記電源システムについて、前記電源システムは車両用であり、前記複数の負荷は、車両のブレーキを制御するブレーキ制御装置であるとよい。
かかる構成によれば、異常が発生した場合であっても複数のブレーキ制御装置のうち少なくとも1つには電力供給を行うことができる。これにより、異常発生に起因してブレーキの制御機能が失われ、車両を停止できなくなることを抑制できる。したがって、安全性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、異常が発生した場合に好適に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態の電源システムの概要を示すブロック図。
図2】DC/DCコンバータの一例を示す回路図。
図3】第1電源ラインに地絡が発生した場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図4】第3電源ラインに地絡が発生した場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図5】第2電源ラインにて断線が発生した場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図6】低圧バッテリに異常が発生した場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図7】高圧バッテリに異常が発生した場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図8】第2実施形態の電源システムの概要を示すブロック図。
図9】第1経路の断線判定を行っている場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図10】第2経路の断線判定を行っている場合の電源システムの様子を示すブロック図。
図11】第3実施形態の電源システムの概要を示すブロック図。
図12】各蓄電開閉器のパターンを示す図。
図13】状態テーブルの概要を示す図。
図14】別例の電源システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、電源システムの一実施形態について説明する。
本実施形態では、電源システム10は車両100に搭載されており、車両100に搭載されている各種負荷に対して電力供給を行うのに用いられる。すなわち、本実施形態の電源システム10は車両用である。なお、本実施形態の車両100は、自動で運転を行う自動運転車両である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の電源システム10は、蓄電装置又は高圧蓄電装置としての高圧バッテリ11と、低圧蓄電装置としての低圧バッテリ12と、高圧負荷14と、高圧電源ライン15と、複数のDC/DCコンバータ20と、電源網30と、第1負荷41及び第2負荷42と、補機負荷43と、を備えている。
【0030】
高圧バッテリ11は、例えば充放電可能な二次電池であり、例えば鉛蓄電池やニッケル水素電池、リチウムイオン電池によって構成されている。ただし、高圧バッテリ11の具体的な構成は任意であり、例えば電気二重層キャパシタでもよい。
【0031】
高圧バッテリ11は、外部からの電力供給等によって充電される。また、高圧バッテリ11は、高圧バッテリ電圧VbHの直流電圧を出力するものである。高圧バッテリ電圧VbHの具体的な値は任意である。
【0032】
低圧バッテリ12は、例えば充放電可能な二次電池であり、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池によって構成されている。ただし、低圧バッテリ12の具体的な構成は任意であり、例えば電気二重層キャパシタでもよい。
【0033】
低圧バッテリ12は、高圧バッテリ電圧VbHよりも低い低圧バッテリ電圧VbLの直流電圧を出力するものである。また、低圧バッテリ12は、高圧バッテリ電圧VbHよりも低い直流電圧によって充電されるものである。
【0034】
電源システム10は、低圧バッテリ電圧VbLを検出するバッテリ電圧センサ13を備えている。バッテリ電圧センサ13は、低圧バッテリ電圧VbLとして例えば低圧バッテリ12の開放電圧(OCV)を検出する。これにより、低圧バッテリ12のSOCを推定できる。
【0035】
高圧負荷14は、高圧バッテリ11と電気的に接続されており、高圧バッテリ11から電力供給を受ける。高圧負荷14は、例えば車両100の走行に用いられる負荷である。詳細には、高圧負荷14は、例えば高圧バッテリ電圧VbHを交流電圧に変換する走行用インバータと、走行用インバータによって変換された交流電圧に基づいて駆動する走行用モータと、を含む。すなわち、本実施形態の車両100は、EVやPHVなどである。
【0036】
高圧電源ライン15は、高圧バッテリ11に接続されたラインである。高圧電源ライン15には、高圧バッテリ電圧VbHが印加される。
複数のDC/DCコンバータ20はそれぞれ高圧電源ライン15に接続されている。各DC/DCコンバータ20は、高圧電源ライン15を介して互いに並列に接続されている。
【0037】
各DC/DCコンバータ20には、高圧バッテリ11から出力される高圧バッテリ電圧VbHが印加される。各DC/DCコンバータ20は、高圧バッテリ電圧VbHを降圧変換する。
【0038】
DC/DCコンバータ20の一例について図2を用いて説明する。なお、本実施形態では、各DC/DCコンバータ20は同一の構成である。
図2に示すように、DC/DCコンバータ20は、DC/AC変換回路21と、トランス22と、AC/DC変換回路23と、出力経路24と、第1出力端25及び第2出力端26と、電流センサ27,29と、を備えている。
【0039】
DC/AC変換回路21は、第1配線21aによって互いに接続された第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2と、第2配線21bによって互いに接続された第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4と、を有するフルブリッジ回路である。各スイッチング素子Q1~Q4が周期的にON/OFFすることにより、高圧バッテリ電圧VbHが交流電圧に変換される。
【0040】
トランス22は、1次側巻線22a及び2次側巻線22bを有している。1次側巻線22aは、DC/AC変換回路21、詳細には両配線21a,21bに接続されている。1次側巻線22aには、DC/AC変換回路21によって変換された交流電圧が入力される。
【0041】
2次側巻線22bは、第1パーツ22baと第2パーツ22bbとによって構成されている。第1パーツ22baの第1端はAC/DC変換回路23に接続されている。第1パーツ22baの第2端と第2パーツ22bbの第1端とが接続されており、両者はグランドに接続されている。第2パーツ22bbの第2端は、AC/DC変換回路23に接続されている。
【0042】
AC/DC変換回路23は、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6と、コイル23aと、コンデンサ23cと、を備えている。
第5スイッチング素子Q5は、2次側巻線22b(詳細には第1パーツ22baの第1端)に接続されているとともに、コイル23aに接続されている。第6スイッチング素子Q6は、2次側巻線22b(詳細には第2パーツ22bbの第2端)に接続されているとともに、コイル23aに接続されている。コンデンサ23cは、コイル23aよりも後段に設けられており、コイル23aとグランドとに接続されている。第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6が周期的にON/OFFすることにより、交流電圧が直流電圧に変換される。
【0043】
かかる構成によれば、高圧バッテリ11から出力される高圧バッテリ電圧VbHは、DC/AC変換回路21によって交流電圧に変換され、トランス22によって変圧される。そして、トランス22によって変圧された交流電圧はAC/DC変換回路23によって直流電圧に変換されて、当該AC/DC変換回路23から出力される。AC/DC変換回路23から出力される直流電圧は、高圧バッテリ電圧VbHよりも低い。
【0044】
各スイッチング素子Q1~Q6は、例えばボディダイオードを有するn型のMOSFETである。ただし、各スイッチング素子Q1~Q6の具体的な構成は任意であり、例えばIGBTでもよい。
【0045】
出力経路24は、AC/DC変換回路23(詳細にはコイル23a)に接続されており、AC/DC変換回路23から出力される直流電力が伝送する経路である。出力経路24は、分岐点Pで二股に分岐して、それぞれ第1出力端25及び第2出力端26に接続されている。これにより、AC/DC変換回路23から出力された直流電力は、両出力端25,26から分かれて出力される。
【0046】
電流センサ27,29は、DC/DCコンバータ20から出力される電流を検出するものである。本実施形態では、電流センサ27は、分岐点Pと第2出力端26との間に設けられており、電流センサ29は、分岐点Pと第1出力端25との間に設けられている。これにより、電流センサ27は、第2出力端26から出力される電流を検出し、電流センサ29は、第1出力端25から出力される電流を検出する。
【0047】
DC/DCコンバータ20は、各スイッチング素子Q1~Q6の制御を行う制御回路28を備えている。制御回路28は、各スイッチング素子Q1~Q6を制御することにより、降圧変換が行われるようにDC/DCコンバータ20を動作させたり、停止させたりすることができる。
【0048】
ここで、DC/DCコンバータ20の数は例えば3つ以上であるとよく、本実施形態では、図1に示すように、3つである。なお、説明の便宜上、以下の説明では、3つのDC/DCコンバータ20をそれぞれ、第1DC/DCコンバータ20a、第2DC/DCコンバータ20b、第3DC/DCコンバータ20cとする。
【0049】
また、第1DC/DCコンバータ20aの電流センサ27、電流センサ29及び制御回路28を、第1電流センサ27a、第2電流センサ29a及び第1制御回路28aとする。第2DC/DCコンバータ20bの電流センサ27、電流センサ29及び制御回路28を、第3電流センサ27b、第4電流センサ29b及び第2制御回路28bとする。第3DC/DCコンバータ20cの電流センサ27、電流センサ29及び制御回路28を、第5電流センサ27c、第6電流センサ29c及び第3制御回路28cとする。
【0050】
図1に示すように、電源網30は、複数の電源ライン31~33を有している。本実施形態では、電源網30は、第1電源ライン31と、第2電源ライン32と、第3電源ライン33と、を有している。
【0051】
本実施形態における第1負荷41及び第2負荷42は、互いに同一機能を有するものである。例えば、第1負荷41及び第2負荷42は、車両100の停止に必要な機能を有するものであり、一例としては車両100のブレーキの制御機能を有する。詳細には、第1負荷41及び第2負荷42は、車両100のブレーキを制御するブレーキ制御装置である。ブレーキ制御装置は、例えばブレーキシューを駆動させるアクチュエータと、当該アクチュエータを制御する制御回路と、を有する。これにより、仮に第1負荷41に異常が発生した場合であっても、第2負荷42を用いることにより、車両100の停止に支障が生じることを抑制できる。
【0052】
補機負荷43は、例えば車内のライトや車内エアコン等といった、車両100の走行に必要な機能を有するものではない負荷である。換言すれば、補機負荷43は、走行以外の用途に用いられる負荷ともいえるし、安全性の観点から見て、第1負荷41及び第2負荷42よりも優先順位が低い負荷ともいえる。
【0053】
複数のDC/DCコンバータ20a~20cと、電源網30(換言すれば各電源ライン31~33)と、両負荷41,42及び補機負荷43と、低圧バッテリ12との接続関係について以下に詳細に説明する。
【0054】
なお、以下の説明において、接続関係は全て、各DC/DCコンバータ20a~20c、第1負荷41、第2負荷42、補機負荷43、および低圧バッテリ12の高電位側の接続関係を示すものであり、各低電位側は全て、低圧バッテリ12の低電位電極に接続されており、図中での接続関係の図示は省略している。
【0055】
図1に示すように、第1負荷41と第2負荷42とは、複数の電源ライン31~33のうちそれぞれ異なるものに接続されている。詳細には、第1負荷41は、第1電源ライン31に接続されており、第2負荷42は、第3電源ライン33に接続されている。
【0056】
また、本実施形態では、補機負荷43は第2電源ライン32に接続されており、低圧バッテリ12は第3電源ライン33に接続されている。詳細には、電源システム10は、補機負荷43と第2電源ライン32とを接続する補機接続線51と、低圧バッテリ12と第3電源ライン33とを接続するバッテリ接続線52と、を備えている。なお、第3電源ライン33は、低圧バッテリ12が接続されるバッテリラインとも言える。
【0057】
バッテリ接続線52上、換言すれば低圧バッテリ12と第3電源ライン33との間にはヒューズ53が設けられている。バッテリ接続線52に過電流が流れた場合には、ヒューズ53が切れることによって、低圧バッテリ12と第3電源ライン33との接続が遮断される。
【0058】
電源システム10は、低圧バッテリ12に入出力される電流(以下、単に「バッテリ電流Ib」という。)を検出するバッテリ電流センサ54を備えている。バッテリ電流センサ54は、バッテリ接続線52上に設けられており、バッテリ接続線52に流れる電流を検出する。
【0059】
ちなみに、低圧バッテリ12は、バッテリ接続線52において第3電源ライン33から低圧バッテリ12に向かうバッテリ電流Ibが流れる場合に充電される。一方、低圧バッテリ12が放電している場合、バッテリ接続線52において低圧バッテリ12から第3電源ライン33に向かうバッテリ電流Ibが流れる。また、バッテリ接続線52にバッテリ電流Ibが流れていない場合、低圧バッテリ12は、現状のSOC(充電状態)を維持している。このため、バッテリ電流センサ54によって検出されるバッテリ電流Ibの向きや大きさによって、低圧バッテリ12の状態、すなわち充電状態、放電状態又は維持状態のいずれであるかを特定できる。
【0060】
第1電源ライン31及び第2電源ライン32は、複数のDC/DCコンバータ20a~20cのうち少なくとも2つに接続されている。
詳細には、電源システム10は、第1電源ライン31と第1DC/DCコンバータ20aとを接続する第1接続線61と、第1電源ライン31と第2DC/DCコンバータ20bとを接続する第2接続線62と、を備えている。
【0061】
図2に示すように、第1接続線61は、第1電源ライン31と第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26とを接続している。第2接続線62は、第1電源ライン31と第2DC/DCコンバータ20bの第1出力端25とを接続している。これにより、第1電源ライン31は、第1接続線61及び第2接続線62によって、第1DC/DCコンバータ20a及び第2DC/DCコンバータ20bの双方に接続されている。第1電源ライン31には、第1DC/DCコンバータ20aと第2DC/DCコンバータ20bとの双方から電力が供給される。
【0062】
また、電源システム10は、第2電源ライン32と第2DC/DCコンバータ20bとを接続する第3接続線63と、第2電源ライン32と第3DC/DCコンバータ20cとを接続する第4接続線64と、を備えている。第3接続線63は、第2電源ライン32と第2DC/DCコンバータ20bの第2出力端26とを接続している。第4接続線64は、第2電源ライン32と第3DC/DCコンバータ20cの第1出力端25とを接続している。これにより、第2電源ライン32は、第3接続線63及び第4接続線64によって、第2DC/DCコンバータ20b及び第3DC/DCコンバータ20cの双方に接続されている。第2電源ライン32には、第2DC/DCコンバータ20bと第3DC/DCコンバータ20cとの双方から電力が供給される。
【0063】
同様に、電源システム10は、第3電源ライン33と第3DC/DCコンバータ20cとを接続する第5接続線65と、第3電源ライン33と第1DC/DCコンバータ20aとを接続する第6接続線66と、を備えている。第5接続線65は、第3電源ライン33と第3DC/DCコンバータ20cの第2出力端26とを接続している。第6接続線66は、第3電源ライン33と第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25とを接続している。これにより、第3電源ライン33は、第5接続線65及び第6接続線66によって、第1DC/DCコンバータ20a及び第3DC/DCコンバータ20cの双方に接続されている。第3電源ライン33には、第1DC/DCコンバータ20aと第3DC/DCコンバータ20cとの双方から電力が供給される。
【0064】
すなわち、第1DC/DCコンバータ20aは、第1電源ライン31及び第3電源ライン33の双方に接続されており、第1電源ライン31及び第3電源ライン33のそれぞれに対して電力供給を行う。同様に、第2DC/DCコンバータ20bは、第1電源ライン31及び第2電源ライン32の双方に接続されており、第1電源ライン31及び第2電源ライン32のそれぞれに対して電力供給を行う。第3DC/DCコンバータ20cは、第2電源ライン32及び第3電源ライン33の双方に接続されており、第2電源ライン32及び第3電源ライン33のそれぞれに対して電力供給を行う。
【0065】
なお、第1電源ライン31は、第1DC/DCコンバータ20aと第2DC/DCコンバータ20bとを接続するのに用いられているともいえる。同様に、第2電源ライン32は、第2DC/DCコンバータ20bと第3DC/DCコンバータ20cとを接続するのに用いられており、第3電源ライン33は、第1DC/DCコンバータ20aと第3DC/DCコンバータ20cとを接続するのに用いられているともいえる。
【0066】
本実施形態では、各電源ライン31~33は、互いに接続されることによって環状の電源網30を構成している。
詳細には、図1及び図2に示すように、第1電源ライン31と第3電源ライン33とは、第1接続線61及び第6接続線66と、第1DC/DCコンバータ20aの内部(詳細には出力経路24)とを介して接続されている。
【0067】
同様に、第1電源ライン31と第2電源ライン32とは、第2接続線62及び第3接続線63と、第2DC/DCコンバータ20bの内部(詳細には出力経路24)とを介して接続されている。
【0068】
また、第2電源ライン32と第3電源ライン33とは、第4接続線64及び第5接続線65と、第3DC/DCコンバータ20cの内部(詳細には出力経路24)とを介して接続されている。
【0069】
ここで、本明細書において、「環状」とは、例えば円形や楕円形などといった物理的な形状を示すものではなく、閉じたループ状であることを意味する。すなわち、各電源ライン31~33は、互いに接続されることによって閉じたループ回路を構成しているともいえ、電源網30は、各電源ライン31~33が互いに接続されることによって形成されたループ回路ともいえる。
【0070】
図1及び図2に示すように、電源システム10は、開閉器71~76を備えている。
詳細には、第1負荷41が接続された第1電源ライン31と、第1電源ライン31に接続されている第1DC/DCコンバータ20a及び第2DC/DCコンバータ20bとの間には、第1開閉器71及び第2開閉器72が設けられている。
【0071】
第1開閉器71は、第1接続線61上に設けられている。第1開閉器71は、第1DC/DCコンバータ20a(詳細には第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26)と第1電源ライン31とが接続された閉状態(ON状態)、又は、第1DC/DCコンバータ20aと第1電源ライン31との接続が遮断された開状態(OFF状態)に切り替わる。
【0072】
第2開閉器72は、第2接続線62上に設けられている。第2開閉器72は、第2DC/DCコンバータ20b(詳細には第2DC/DCコンバータ20bの第1出力端25)と第1電源ライン31とが接続された閉状態、又は、第2DC/DCコンバータ20bと第1電源ライン31との接続が遮断された開状態に切り替わる。
【0073】
同様に、第2負荷42が接続された第2電源ライン32と、第2電源ライン32に接続されている第2DC/DCコンバータ20b及び第3DC/DCコンバータ20cとの間には、第3開閉器73及び第4開閉器74が設けられている。また、低圧バッテリ12が接続された第3電源ライン33と、第3電源ライン33に接続されている第3DC/DCコンバータ20c及び第1DC/DCコンバータ20aとの間には、第5開閉器75及び第6開閉器76が設けられている。
【0074】
すなわち、本実施形態では、各DC/DCコンバータ20a~20cの両出力端25,26に対応させて開閉器71~76が設けられている。
第3開閉器73及び第4開閉器74と、第5開閉器75及び第6開閉器76との詳細については、対応する電源ラインとDC/DCコンバータとが異なる点を除き、第1開閉器71及び第2開閉器72と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
ちなみに、第1開閉器71及び第6開閉器76が閉状態である場合、第1DC/DCコンバータ20a内を介して第1電源ライン31と第3電源ライン33とが接続される。一方、第1開閉器71又は第6開閉器76が開状態である場合、第1電源ライン31と第3電源ライン33との接続は遮断される。すなわち、第1開閉器71及び第6開閉器76は、第1電源ライン31と第3電源ライン33とを接続又は遮断するものとしても機能する。
【0076】
図2に示すように、第1DC/DCコンバータ20aの制御回路28である第1制御回路28aは、第1DC/DCコンバータ20aに接続されている第1開閉器71及び第6開閉器76の制御を行う。
【0077】
第1制御回路28aは、第1電流センサ27aによって検出される電流、すなわち第2出力端26から出力される電流の値を取得する。第1制御回路28aは、第1開閉器71が閉状態である状況において第1電流センサ27aにより検出された電流が第1閾値電流以上となることに基づいて、第1開閉器71を開状態に切り替える。例えば、第1制御回路28aは、第1開閉器71が閉状態である状況において第1電流センサ27aにより検出された電流が第1閾値電流以上となることに基づいて、第1開閉器71を閉状態から開状態に切り替える。これにより、第1DC/DCコンバータ20aに過電流が流れることを抑制できる。
【0078】
同様に、第1制御回路28aは、第2電流センサ29aによって検出される電流、すなわち第1出力端25から出力される電流の値を取得する。第1制御回路28aは、第6開閉器76が閉状態である状況において第2電流センサ29aにより検出された電流が第1閾値電流以上となることに基づいて、第6開閉器76を開状態に切り替える。
【0079】
第1閾値電流は任意であるが、例えば第1DC/DCコンバータ20aが出力可能な最大電流が考えられる。なお、説明の便宜上、以降の説明において、第1電流センサ27aによって検出される電流を第1出力電流I1、第2電流センサ29aによって検出される電流を第6出力電流I6という。第6出力電流I6、第1出力電流I1はそれぞれ、第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25、第2出力端26から出力される電流である。
【0080】
第2制御回路28bは、第2DC/DCコンバータ20bに接続されている第2開閉器72及び第3開閉器73の制御を行う。例えば、第2制御回路28bは、第3電流センサ27bによって検出される電流、すなわち第2DC/DCコンバータ20bの第2出力端26から出力される電流の値を取得する。第2制御回路28bは、第3開閉器73が閉状態である状況において第3電流センサ27bにより検出された電流が第2閾値電流以上となることに基づいて、第3開閉器73を開状態に切り替える。例えば、第2制御回路28bは、第3開閉器73が閉状態である状況において第3電流センサ27bにより検出された電流が第2閾値電流以上となることに基づいて、第3開閉器73を閉状態から開状態に切り替える。これにより、第2DC/DCコンバータ20bに過電流が流れることを抑制できる。
【0081】
同様に、第2制御回路28bは、第4電流センサ29bによって検出される電流、すなわち第2DC/DCコンバータ20bの第1出力端25から出力される電流の値を取得する。第2制御回路28bは、第2開閉器72が閉状態である状況において第4電流センサ29bにより検出された電流が第2閾値電流以上となることに基づいて、第2開閉器72を開状態に切り替える。
【0082】
第2閾値電流は任意であるが、例えば第2DC/DCコンバータ20bが出力可能な最大電流が考えられる。なお、説明の便宜上、以降の説明において、第3電流センサ27bによって検出される電流を第3出力電流I3、第4電流センサ29bによって検出される電流を第2出力電流I2という。第2出力電流I2、第3出力電流I3はそれぞれ、第2DC/DCコンバータ20bの第1出力端25、第2出力端26から出力される電流である。
【0083】
第3制御回路28cは、第3DC/DCコンバータ20cに接続されている第4開閉器74及び第5開閉器75の制御を行う。例えば、第3制御回路28cは、第5電流センサ27cによって検出される電流、すなわち第3DC/DCコンバータ20cの第2出力端26から出力される電流の値を取得する。第3制御回路28cは、第5開閉器75が閉状態である状況において第5電流センサ27cにより検出された電流が第3閾値電流以上となることに基づいて、第5開閉器75を開状態に切り替える。これにより、第3DC/DCコンバータ20cに過電流が流れることを抑制できる。
【0084】
同様に、第3制御回路28cは、第6電流センサ29cによって検出される電流、すなわち第3DC/DCコンバータ20cの第1出力端25から出力される電流の値を取得する。第3制御回路28cは、第4開閉器74が閉状態である状況において第6電流センサ29cにより検出された電流が第3閾値電流以上となることに基づいて、第4開閉器74を開状態に切り替える。
【0085】
第3閾値電流は任意であるが、例えば第3DC/DCコンバータ20cが出力可能な最大電流が考えられる。なお、説明の便宜上、以降の説明において、第5電流センサ27cによって検出される電流を第5出力電流I5、第6電流センサ29cによって検出される電流を第4出力電流I4という。第4出力電流I4、第5出力電流I5はそれぞれ、第3DC/DCコンバータ20cの第1出力端25、第2出力端26から出力される電流である。
【0086】
ちなみに、各閾値電流は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
図1に示すように、電源システム10は、複数のDC/DCコンバータ20a~20cを統括して制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、各DC/DCコンバータ20a~20cと接続されており、各DC/DCコンバータ20a~20cと通信可能となっている。本実施形態では、制御装置80が「制御部」に対応する。
【0087】
制御装置80は、各DC/DCコンバータ20a~20cから出力電流I1~I6を取得し、且つ、バッテリ電流センサ54及びバッテリ電圧センサ13からバッテリ電流Ib及び低圧バッテリ電圧VbLを取得する。そして、制御装置80は、出力電流I1~I6及びバッテリ電流Ibに基づいて、各DC/DCコンバータ20a~20cから出力される電圧や電流の目標値を各DC/DCコンバータ20a~20cに与える。
【0088】
制御装置80からの出力電圧や出力電流の目標値は、各DC/DCコンバータ20a~20cの制御回路28a~28cに入力される。各DC/DCコンバータ20a~20cの制御回路28a~28cは、与えられた出力電圧の目標値や出力電流の目標値と、各DC/DCコンバータ20a~20cの出力電流とに基づいて、各DC/DCコンバータ20a~20cのそれぞれの各スイッチング素子Q1~Q6を制御する。
【0089】
以下、フィードバック制御の一例について説明する。なお、念の為に説明すると、制御装置80による各DC/DCコンバータ20a~20cの具体的な制御態様は任意であるため、下記一例に限定されない。
【0090】
制御装置80は、低圧バッテリ電圧VbLを含む各種パラメータに基づいて、現在の低圧バッテリ12のSOCを推定する。
また、制御装置80は、高圧バッテリ11から各DC/DCコンバータ20a~20cに供給可能な最大電力である供給可能電力と、両負荷41,42及び補機負荷43に必要な電力である要求電力と、を把握する。
【0091】
供給可能電力及び要求電力を把握するための具体的な構成は任意である。例えば、車両100が供給可能電力及び要求電力を管理している管理ECUを有している場合には、制御装置80は、上記管理ECUと通信を行うことにより、供給可能電力及び要求電力を取得してもよい。また、制御装置80は、高圧バッテリ11のSOCや温度などに基づいて供給可能電力を自ら導出してもよい。同様に、制御装置80は、両負荷41,42及び補機負荷43の動作状況などに基づいて要求電力を自ら導出してもよい。
【0092】
そして、制御装置80は、例えば低圧バッテリ12のSOC、供給可能電力及び要求電力などに基づいて、バッテリ電流Ibの目標値である目標バッテリ電流Ibtを設定する。
【0093】
目標バッテリ電流Ibtの具体的な設定態様については任意である。例えば、供給可能電力が要求電力よりも小さい場合には、制御装置80は、目標バッテリ電流Ibtを、放電に対応する値に設定してもよい。また、例えば供給可能電力が要求電力以上であり且つ低圧バッテリ12のSOCが目標値よりも小さい場合には、制御装置80は、目標バッテリ電流Ibtを、充電に対応する値に設定してもよい。例えば、供給可能電力が要求電力以上であり且つ低圧バッテリ12のSOCが目標値と一致している場合には、制御装置80は、目標バッテリ電流Ibtを「0」に設定してもよい。また、低圧バッテリ12に異常が発生している場合には、制御装置80は、目標バッテリ電流Ibtを「0」に設定してもよい。
【0094】
制御装置80は、各DC/DCコンバータ20a~20cによって電源網30に対して要求電力の電力供給が行われつつ、バッテリ電流Ibが目標バッテリ電流Ibtとなり且つ各DC/DCコンバータ20a~20cの総出力電流が同一に近づく(好ましくは一致する)ように、各DC/DCコンバータ20a~20cの出力電圧V1~V3を設定する。各DC/DCコンバータ20a~20cの総出力電流とは、第1DC/DCコンバータ20aにおいては両出力電流I1,I6の合計、第2DC/DCコンバータ20bにおいては両出力電流I2,I3の合計、第3DC/DCコンバータ20cにおいては両出力電流I4,I5の合計である。詳細には、制御装置80は、要求電力の電力供給が行われる範囲内にてバッテリ電流Ibが目標バッテリ電流Ibtとなり且つI1+I6、I2+I3、I4+I5の各値が同一となるように、バッテリ電流Ibと目標バッテリ電流Ibtとの差及びI1+I6、I2+I3、I4+I5の各値の差に基づいて各出力電圧V1~V3を設定する。
【0095】
この場合、上記フィードバック制御によって出力電圧V1~V3が常に同じ値になるとは限らない。例えば、目標バッテリ電流Ibtが0である場合であって、第3電源ライン33に接続された第2負荷42に流れる電流がわずかである場合、第1DC/DCコンバータ20aの出力電圧V1と、第3DC/DCコンバータ20cの出力電圧V3は、両方とも低圧バッテリ電圧VbLとほぼ等しくなる。
【0096】
一方、第2負荷42に流れる電流が大きい場合、第3電源ライン33とバッテリ接続線52、第2負荷42、第1DC/DCコンバータ20a、第3DC/DCコンバータ20cとの各接続点の位置関係や、各接続点間の第3電源ライン33のインピーダンスにより、第1DC/DCコンバータ20aの出力電圧V1と第3DC/DCコンバータ20cの出力電圧V3とは異なる可能性がある。これは、当該インピーダンスによる電圧降下が大きくなるため、特定の場所の電位とDC/DCコンバータの出力電圧との間に差が生じるためである。
【0097】
上記フィードバック制御の具体的な態様については任意であるが、例えば、制御装置80は、バッテリ電流Ibと目標バッテリ電流Ibtとの電流差、及び、各出力電流I1~I6と出力電流I1~I6の平均値との差に基づいて、各出力電圧V1~V3の目標値を決定する。そして、制御装置80は、出力電圧V1~V3の目標値を制御回路28a~28cに送信する。制御回路28a~28cは、出力電圧V1~V3が目標値と一致するように第1スイッチング素子Q1~第6スイッチング素子Q6のデューティ比を制御する。
【0098】
本実施形態では、電源システム10は、各電流センサ27a~27c,29a~29cでの電流の検出結果に基づいて、電源ライン31~33における地絡の有無を判定する。詳細には、各DC/DCコンバータ20a~20cの制御回路28a~28cは、電流センサ27a~27c,29a~29cで検出される電流が予め定められた閾値以上であることに基づいて、電源ライン31~33にて地絡が発生していると判定する。例えば、第1制御回路28aは、第1電流センサ27aによって閾値以上の電流が検出されたことに基づいて、第1電源ライン31にて地絡が発生していると判断する。同時に、第2制御回路28bは、第4電流センサ29bによって閾値以上の電流が検出されたことに基づいて、第1電源ライン31にて地絡が発生していると判断する。
【0099】
制御回路28a~28cは、地絡が発生していると判断した場合、地絡が発生していると判断された電源ラインに接続されている開閉器を閉状態から開状態に切り替える。
次に本実施形態の作用について説明する。
【0100】
図3に示すように、仮に第1電源ライン31にて地絡が発生したとすると、第1電流センサ27aによって検出される電流が閾値以上となる。これにより、第1制御回路28aによって第1電源ライン31にて地絡が発生していると判定され、第1制御回路28aは、第1電源ライン31に接続されている第1開閉器71を閉状態から開状態に切り替える。同様に、第4電流センサ29bによって検出される電流が閾値以上となる。これにより、第2制御回路28bによって第1電源ライン31にて地絡が発生していると判定され、第2制御回路28bは、第1電源ライン31に接続されている第2開閉器72を閉状態から開状態に切り替える。これにより、第1負荷41への電力供給が停止する一方、第2負荷42への電力供給が継続される。したがって、第1電源ライン31にて地絡が発生した場合であっても、車両100の走行への影響が生じにくい。
【0101】
図4に示すように、仮に第3電源ライン33にて地絡が発生したとすると、ヒューズ53が切断され、低圧バッテリ12と第3電源ライン33との接続が遮断される。そして、第3電源ライン33に接続されている第5開閉器75と第6開閉器76とが閉状態から開状態に切り替わる。これにより、第1電源ライン31及び第2電源ライン32への電力供給が継続される。
【0102】
図5に示すように、仮に第2電源ライン32における第2DC/DCコンバータ20bと補機負荷43との接続箇所との間にて断線が生じたとする。この場合、第2DC/DCコンバータ20bから補機負荷43への電力供給が行われなくなる一方、第3DC/DCコンバータ20cから補機負荷43への電力供給は継続される。これにより、補機負荷43は動作を継続できる。
【0103】
図6に示すように、仮に低圧バッテリ12にて異常が発生し、低圧バッテリ12から電源網30への電力供給が行われなくなったとする。この場合であっても、各電源ライン31~33を介して各DC/DCコンバータ20a~20cから第1負荷41、第2負荷42及び補機負荷43に対して電力供給が行われる。
【0104】
DC/DCコンバータ20a~20cのうちのいくつかが動作を停止し、当該動作を停止したDC/DCコンバータから電源網30への電力供給が行われなくなった場合にも、動作を停止していないDC/DCコンバータ及び低圧バッテリ12から各電源ライン31~33を介して第1負荷41、第2負荷42及び補機負荷43に対して電力供給が行われる。なお、DC/DCコンバータ20a~20cが動作を停止する原因には、入出力電流や電圧の異常、内部素子の過大な温度上昇、DC/DCコンバータ自体の故障などが含まれる。
【0105】
図7に示すように、仮に高圧バッテリ11にて異常が発生した場合、各開閉器71~76は開状態となり、各DC/DCコンバータ20a~20cからの電力供給は停止する。この場合、第1負荷41と補機負荷43への電力供給は停止するが、低圧バッテリ12から第2負荷42に対して電力供給が行われるため、車両100の走行への影響が生じにくい。
【0106】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1-1)電源システム10は、蓄電装置又は高圧蓄電装置としての高圧バッテリ11と、高圧バッテリ11から出力される高圧バッテリ電圧VbHを降圧する複数の電源装置としてのDC/DCコンバータ20a~20cと、複数の電源ライン31~33と、互いに同一機能を有する複数の負荷41,42と、を備えている。複数の負荷41,42は、複数の電源ライン31~33のうちそれぞれ異なる電源ラインに接続されており、負荷41,42が接続されている電源ラインは、複数のDC/DCコンバータ20a~20cのうち少なくとも2つに接続されている。そして、負荷41,42のいずれかが接続されている電源ラインと、当該電源ラインに接続されている2つのDC/DCコンバータとの間には開閉器が設けられている。
【0107】
一例としては、第1負荷41は第1電源ライン31に接続されており、第1電源ライン31は、第1DC/DCコンバータ20aと第2DC/DCコンバータ20bとに接続されている。そして、第1電源ライン31と第1DC/DCコンバータ20aとの間には第1開閉器71が設けられており、第1電源ライン31と第2DC/DCコンバータ20bとの間には第2開閉器72が設けられている。
【0108】
また、第2負荷42は第3電源ライン33に接続されており、第3電源ライン33は、第1DC/DCコンバータ20aと第3DC/DCコンバータ20cとに接続されている。そして、第3電源ライン33と第1DC/DCコンバータ20aとの間には第6開閉器76が設けられており、第3電源ライン33と第3DC/DCコンバータ20cとの間には第5開閉器75が設けられている。
【0109】
かかる構成によれば、同一機能を有する複数の負荷41,42がそれぞれ異なる電源ライン(本実施形態では第1電源ライン31及び第3電源ライン33)に接続されているため、仮に第1電源ライン31にて断線などの異常が発生した場合には、第3電源ライン33を介して第2負荷42へ電力供給を行うことができる。これにより、両負荷41,42の双方への電力供給が停止することを抑制できる。
【0110】
また、第3電源ライン33には第1DC/DCコンバータ20aと第3DC/DCコンバータ20cとが接続されているため、第1DC/DCコンバータ20aと第3DC/DCコンバータ20cとのうち一方のDC/DCコンバータに異常が発生した場合には、他方のDC/DCコンバータから第3電源ライン33に電力が供給される。
【0111】
更に、仮に第1電源ライン31にて地絡などの異常が生じた場合には、第1開閉器71及び第2開閉器72を開状態にすることにより、第1電源ライン31と第1DC/DCコンバータ20a及び第2DC/DCコンバータ20bとを電気的に遮断することができる。これにより、上記第1電源ライン31の異常によって他の電力供給(例えば第3電源ライン33及び第2負荷42への電力供給)に支障が生じることを抑制できる。
【0112】
以上のことから、複数の電源ライン31~33のうちの1つ、又は、複数のDC/DCコンバータ20a~20cのうちの1つに異常が発生した場合であっても、第1負荷41又は第2負荷42への電力供給を行うことができる。したがって、異常発生時において両負荷41,42の双方に電力供給が行われなり、両負荷41,42の双方が機能しなくなることを抑制できる。よって、異常が発生した場合に好適に対応できる。
【0113】
(1-2)電源システム10は、複数の電源ライン31~33の1つ(本実施形態では第3電源ライン33)に接続され、高圧バッテリ11よりも低圧の低圧バッテリ12を備えている。
【0114】
かかる構成によれば、複数のDC/DCコンバータ20a~20cを用いて低圧バッテリ12を充電することができる。また、低圧バッテリ12を用いて第1負荷41、第2負荷42及び補機負荷43への電力供給を行うことができる。
【0115】
さらに、低圧バッテリ12と第2負荷42とはともに第3電源ライン33に接続されている。したがって、高圧バッテリ11の異常により、DC/DCコンバータ20a~20cの全てからの電力供給が停止した場合でも、低圧バッテリ12から第2負荷42への電力供給が確保される。
【0116】
(1-3)DC/DCコンバータ20a~20cは3つである。
かかる構成によれば、DC/DCコンバータが2つである場合と比較して、1つ当たりのDC/DCコンバータが出力する電力を小さくすることができる。
【0117】
(1-4)複数の電源ライン31~33は、互いに接続されて環状の電源網30を構成している。
かかる構成によれば、環状の電源網30が構成されているため、当該電源網30に接続されている第1負荷41及び第2負荷42には、少なくとも2つの電力供給ルートがある。また、各DC/DCコンバータ20a~20cは、電源網30を介して第1負荷41及び第2負荷42に接続されている。これにより、各DC/DCコンバータ20a~20cの1つに異常が発生した場合には、他の2つのDC/DCコンバータを用いて両負荷41,42に電力供給を行うことができる。
【0118】
また、電源ライン31~33のいずれか一つが切断した場合にも、切断した電源ラインとは別の電源ラインを介して、第1負荷41及び第2負荷42に電力供給を行うことができる。したがって、冗長性の更なる向上を図ることができる。
【0119】
(1-5)第1DC/DCコンバータ20aは、第1開閉器71の開閉制御を行う開閉制御部としての第1制御回路28aを備えている。第1制御回路28aは、第1開閉器71が閉状態である状況において第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26から出力される電流である第1出力電流I1が第1閾値電流以上となることに基づいて、第1開閉器71を閉状態から開状態に切り替える。
【0120】
かかる構成によれば、第1DC/DCコンバータ20aに過電流が流れることを抑制できる。なお、第2制御回路28b及び第3制御回路28cについても同様である。
(1-6)電源システム10は車両用であり、第1負荷41及び第2負荷42は、車両100のブレーキを制御するブレーキ制御装置である。
【0121】
かかる構成によれば、両電源ライン31,32のいずれかに異常が発生した場合、又は、各DC/DCコンバータ20a~20cのいずれかに異常が発生した場合であっても、第1負荷41又は第2負荷42への電力供給が継続され易いため、車両100のブレーキ制御機能が失われることを抑制できる。
【0122】
(1-7)電源システム10は、高圧バッテリ11と、複数のDC/DCコンバータ20a~20cと、複数のDC/DCコンバータ20a~20cが接続され、各DC/DCコンバータ20a~20cによって降圧された直流電圧が供給される電源網30と、電源網30に接続された複数の負荷41,42と、を備えている。複数のDC/DCコンバータ20a~20cは、電源網30を介して互いに並列接続された第1DC/DCコンバータ20a、第2DC/DCコンバータ20b及び第3DC/DCコンバータ20cを含む。電源網30は、第1DC/DCコンバータ20aと第2DC/DCコンバータ20bとの接続に用いられる第1電源ライン31と、第2DC/DCコンバータ20bと第3DC/DCコンバータ20cとの接続に用いられる第2電源ライン32と、を含む。複数の負荷41,42のうち第1負荷41は、第1電源ライン31に接続され、第2負荷42は第3電源ライン33に接続される。
【0123】
かかる構成によれば、少なくとも3つのDC/DCコンバータ20a~20cが電源網30を介して互いに並列接続されているため、各DC/DCコンバータ20a~20cが協働して第1負荷41及び第2負荷42に電力供給を行うことができる。これにより、仮に3つのDC/DCコンバータ20a~20cのうち1つに異常が発生した場合であっても、他のDC/DCコンバータを用いて第1負荷41及び第2負荷42に電力供給を行うことができる。したがって、DC/DCコンバータ20a~20cの異常に対応できる。
【0124】
特に、第1負荷41が接続されている第1電源ライン31は、第1DC/DCコンバータ20aと第2DC/DCコンバータ20bとの接続に用いられている。これにより、第1DC/DCコンバータ20aと第2DC/DCコンバータ20bとのうち一方に異常が発生した場合であっても、他方から第1負荷41に向けて電力供給を行うことができる。第2負荷42についても同様である。
【0125】
更に、第1電源ライン31及び第2電源ライン32のうち一方の電源ラインに異常が発生した場合、他方の電源ラインを介して当該他方の電源ラインに接続されている負荷へ電力供給を行うことができる。これにより、第1負荷41及び第2負荷42のうち一方の負荷への電力供給に支障が生じる異常が発生した場合であっても他方の負荷への電力供給を継続することができる。以上のことから、異常発生に好適に対応できる。
【0126】
(1-8)電源システム10は、高圧バッテリ11と、高圧バッテリ11よりも低圧の低圧バッテリ12と、補機負荷43、第1負荷41及び第2負荷42の少なくとも1つ(本実施形態では全部)とが接続される複数の電源ライン31~33(換言すれば電源網30)と、を備えている。電源システム10は、複数の電源ライン31~33によって互いに並列接続された複数のDC/DCコンバータ20a~20cと、複数のDC/DCコンバータ20a~20cを制御する制御装置80と、を備えている。制御装置80は、低圧バッテリ12に入出力されるバッテリ電流Ibが目標バッテリ電流Ibtとなり且つ各DC/DCコンバータ20a~20cからの出力電流が同一となるように各DC/DCコンバータ20a~20cの出力電圧V1~V3を制御する。
【0127】
かかる構成によれば、複数のDC/DCコンバータ20a~20cが複数の電源ライン31~33によって互いに並列接続されており、当該複数の電源ライン31~33に、補機負荷43、第1負荷41及び第2負荷42の少なくとも1つと低圧バッテリ12とが接続されている。これにより、各DC/DCコンバータ20a~20cを用いて、補機負荷43、第1負荷41及び第2負荷42の少なくとも1つと低圧バッテリ12とに対して電力供給を行うことができる。この場合、仮に3つのDC/DCコンバータ20a~20cのうち1つに異常が発生した場合であっても他のDC/DCコンバータを用いて電力供給を行うことができるため、DC/DCコンバータ20a~20cの異常に対応できる。
【0128】
また、バッテリ電流Ibが目標バッテリ電流Ibtとなり且つ各DC/DCコンバータ20a~20cからの総出力電流I1+I6、I2+I3、I4+I5が同一となるように各出力電圧V1~V3を制御することにより、各DC/DCコンバータ20a~20cのうち一部のDC/DCコンバータに過度な負担が付与されることを抑制しつつ、低圧バッテリ12の制御を行うことができる。これにより、各DC/DCコンバータ20a~20cのうち一部のDC/DCコンバータを他のDC/DCコンバータよりも大きな電流に対応できるものにする必要がないため、汎用性の向上を図ることができる。また、低圧バッテリ12の充電状態を制御することも可能となるため、低圧バッテリ12の寿命を延ばすこともできる。
【0129】
(第2実施形態)
図8に示すように、本実施形態の電源システム10では、複数の負荷41,42はそれぞれ、複数の電源ライン31~33のうち少なくとも2つに接続されている。例えば、第1負荷41は、第1電源ライン31と第3電源ライン33とに接続されている。第2負荷42は、第2電源ライン32と第3電源ライン33とに接続されている。
【0130】
かかる構成によれば、第1負荷41と第2負荷42はともに、低圧バッテリ12が接続されている電源ライン33に接続されている。これにより、高圧バッテリ11の異常の場合等、DC/DCコンバータ20a~20cの全てからの電力供給が停止した場合であっても、第1負荷41と第2負荷42の両方への電力供給を継続できる。
【0131】
本実施形態では、補機負荷43は、補機接続線51によって第2電源ライン32に接続されている一方、第1電源ライン31及び第3電源ライン33には接続されていない。これにより、配線の複雑化を抑制できる。
【0132】
ここで、図8の二点鎖線に示すように、仮に第2電源ライン32における補機接続線51と第3DC/DCコンバータ20cとの接続部分に断線が発生した場合、図8の一点鎖線に示すように、第2DC/DCコンバータ20bから補機負荷43に向けて電力供給が行われる。これにより、断線が生じた場合であっても補機負荷43への電力供給を継続できる。一方、仮に上記断線が発生している状況下で更に第2DC/DCコンバータ20bに異常が発生した場合、補機負荷43への電力供給が行われなくなる。
【0133】
以上のとおり、電源網30の断線とその他の異常との多重異常を起因として、第1負荷41、第2負荷42又は補機負荷43への電力供給が停止することがあり得る。このため、電源網30(換言すれば各電源ライン31~33)における断線について検出しておきたい場合がある。
【0134】
これに対して、本実施形態の電源システム10は、電源網30の断線を検出可能に構成されている。この点について以下に詳細に説明する。
本実施形態では、複数のDC/DCコンバータ20a~20cのうち第1DC/DCコンバータ20aの第1制御回路28aが、各DC/DCコンバータ20a~20cが動作していない状況下において低圧バッテリ12を用いて電源網30の断線の有無を判定する断線判定を行う。第1制御回路28aが断線判定を行うタイミングは任意であるが、例えば車両100の始動時が考えられる。本実施形態では、第1DC/DCコンバータ20aが「特定電源装置」に対応し、第1制御回路28aが「断線判定部」に対応する。なお、各DC/DCコンバータ20a~20cが動作していない状況下とは、各DC/DCコンバータ20a~20cによる電圧変換が行われない状況ともいえる。
【0135】
断線判定の具体的な制御について説明する。
図9に示すように、第1DC/DCコンバータ20aと低圧バッテリ12との接続態様について着目すれば、電源網30は、第1DC/DCコンバータ20aと低圧バッテリ12とを接続する経路として第1経路91及び第2経路92を有している。換言すれば、複数の電源ライン31~33は第1経路91及び第2経路92を構成している。
【0136】
第1経路91は、図9において時計回りの経路であり、第3電源ライン33における第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25と低圧バッテリ12とを接続するのに用いられている部分によって構成されている。
【0137】
第2経路92は、図9において反時計回りの経路であり、第1電源ライン31、第2電源ライン32、及び第3電源ライン33における第3DC/DCコンバータ20cの第2出力端26と低圧バッテリ12とを接続するのに用いられている部分によって構成されている。
【0138】
なお、本実施形態では、図9及び図10に示すように、断線判定時において、第2制御回路28bは、第2開閉器72及び第3開閉器73を閉状態にし、第3制御回路28cは、第4開閉器74及び第5開閉器75を閉状態にする。これにより、第1電源ライン31と第2電源ライン32とが接続され、且つ、第2電源ライン32と第3電源ライン33とが接続されるため、第2経路92が繋がっている。
【0139】
かかる構成において、図9に示すように、第1制御回路28aは、第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとを接続し、且つ、第2経路92と第1DC/DCコンバータ20aとの接続を遮断する。詳細には、第1制御回路28aは、第6開閉器76を閉状態(ON状態)にする一方、第1開閉器71を開状態(OFF状態)にする。
【0140】
そして、第1制御回路28aは、第1出力端25に低圧バッテリ電圧VbLが印加されるか否かを判定する。
詳細には、仮に第1経路91にて断線が生じていない場合には、第1経路91及び第6開閉器76を介して第1DC/DCコンバータ20aに低圧バッテリ12から出力される低圧バッテリ電圧VbLが印加される。
【0141】
詳細には、第1経路91にて断線が発生していない場合、低圧バッテリ電圧VbLは、第1経路91を経由して第1出力端25に印加される。第1出力端25に印加される電圧は、例えば第1DC/DCコンバータ20aの出力電圧フィードバック用の電圧検出回路93(図2参照)を用いて検出できる。
【0142】
一方、第1経路91にて断線が生じている場合、低圧バッテリ電圧VbLは第1DC/DCコンバータ20aに印加されない。この場合、低圧バッテリ電圧VbLは、電圧検出回路93によって検出されない。
【0143】
この点に鑑みて、第1制御回路28aは、電圧検出回路93によって既定の値以上の電圧(低圧バッテリ電圧VbL)が検出されない場合には電源網30(第1経路91)に断線が発生していると判定し、既定の値以上の電圧が検出される場合には第1経路91にて断線が発生していないと判定する。
【0144】
第1制御回路28aは、第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとを接続してから所定期間内に、電圧検出回路93によって既定の値以上の電圧が検出されなかった場合には、第1経路91にて断線が発生していると判定する。この場合、第1制御回路28aは、電源網30の断線に対応するエラー処理を実行する。エラー処理は、各DC/DCコンバータ20a~20cの全部または一部の動作が開始されることを禁止する処理、ユーザーに断線の存在を知らせる処理、車両の走行を禁止する処理、自動運転を禁止する処理等を含む。これにより、車両の走行前に電源網30の断線の有無を検知でき、車両走行前に適切な措置を講ずることが可能となる。
【0145】
第1制御回路28aは、第1経路91にて断線が発生していないと判定した場合には、第2経路92の断線の有無を判定する。
詳細には、図10に示すように、第1制御回路28aは、第2経路92と第1DC/DCコンバータ20aとを接続し、且つ、第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとの接続を遮断する。本実施形態では、第1制御回路28aは、第6開閉器76を開状態(OFF状態)にする一方、第1開閉器71を閉状態(ON状態)にする。
【0146】
そして、第1制御回路28aは、電圧検出回路93の検出結果に基づいて、第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26に電圧が印加されるか否かを判定する。
詳細には、第2経路92にて断線が発生していない場合、低圧バッテリ電圧VbLは、第2経路92を経由して第2出力端26に印加される。これにより、電圧検出回路93によって低圧バッテリ電圧VbLを検出できる。
【0147】
一方、第2経路92にて断線が生じている場合、低圧バッテリ電圧VbLは第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26には印加されない。この場合、低圧バッテリ電圧VbLは、電圧検出回路93によって検出されない。
【0148】
この点に鑑みて、第1制御回路28aは、電圧検出回路93によって既定の値以上の電圧(低圧バッテリ電圧VbL)が検出されない場合には電源網30(換言すれば第2経路92)にて断線が発生していると判定し、既定の値以上の電圧が検出される場合には第2経路92にて断線が発生していないと判定する。
【0149】
第1制御回路28aは、第2経路92にて断線が発生している場合には、エラー処理を実行する。エラー処理については既に説明したとおりである。
一方、第1制御回路28aは、電源網30(詳細には両経路91,92)に断線が生じていない場合には、通常動作に移行する。例えば、第1制御回路28aは、正常である旨の信号を制御装置80に送信し、制御装置80は、その信号が受信したことに基づいて、各DC/DCコンバータ20a~20cの動作を開始させる指令を各DC/DCコンバータ20a~20cに送信する。これにより、各DC/DCコンバータ20a~20cの動作が開始され、各DC/DCコンバータ20a~20cによる両負荷41,42及び補機負荷43への電力供給が行われる。
【0150】
なお、上記の例では、特定電源装置を第1DC/DCコンバータ20aに固定したが、必要に応じて、特定電源装置を、第1DC/DCコンバータ20a、第2DC/DCコンバータ20b、第3DC/DCコンバータ20cと順次切り替えて、各DC/DCコンバータにおいて上記と同様の断線検出動作を行うことも可能である。この場合、どのDC/DCコンバータを特定電源装置とするかは、制御装置80が決定してもよい。このように、複数のDC/DCコンバータを特定電源装置として断線検出をすることにより、断線の位置をより具体的に特定することが可能となる。
【0151】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(2-1)第1負荷41及び第2負荷42はそれぞれ、複数の電源ライン31~33のうち少なくとも2つの電源ラインに接続されている。
【0152】
かかる構成によれば、仮に1つの電源ラインに断線などの異常が発生している場合であっても、他方の電源ラインを介して負荷への電力供給を行うことができる。例えば、第1負荷41が第1電源ライン31と第3電源ライン33とに接続されている構成においては、第1電源ライン31に断線などの異常が発生した場合であっても、第3電源ライン33を介して第1負荷41への電力供給を行うことができる。
【0153】
(2-2)車両100の走行以外の用途に用いられる補機負荷43は、複数の電源ライン31~33のうち1つのみ(本実施形態では第2電源ライン32)に接続されている。
かかる構成によれば、補機負荷43を2つの電源ラインに接続する構成と比較して、配線数を削減でき、構成の簡素化を図ることができる。また、補機負荷43は、走行以外の用途に用いられるものであるため、仮に電力供給に支障が生じた場合であっても、直ちに走行不能となりにくい。したがって、安全性を確保することができる。
【0154】
(2-3)電源システム10は、複数のDC/DCコンバータ20a~20cが動作していない状況下において低圧バッテリ12を用いて電源網30の断線の有無を判定する断線判定部としての第1制御回路28aを備えている。
【0155】
かかる構成によれば、電源網30の断線の有無が判定されるため、例えば車両の走行前に電源網30内の断線の有無を検出することができ、事前に必要な措置を講ずることができる。必要な措置の例として、例えば、断線が検出されたことをユーザーに知らせる、断線状態での自動運転を禁止する、断線状態での車両の走行を禁止するなどがある。
【0156】
(2-4)電源網30は、複数のDC/DCコンバータ20a~20cのうち1つである第1DC/DCコンバータ20aと低圧バッテリ12とを接続する経路として、第1経路91及び第2経路92を有している。
【0157】
第1制御回路28aは、第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとが接続され且つ第2経路92と第1DC/DCコンバータ20aとが接続されていない状況下で第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25に低圧バッテリ電圧VbLが印加されない場合には、電源網30にて断線が発生していると判定する。
【0158】
また、第1制御回路28aは、第2経路92と第1DC/DCコンバータ20aとが接続され且つ第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとが接続されていない状況下で第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25に低圧バッテリ電圧VbLが印加されない場合には、電源網30にて断線が発生していると判定する。
【0159】
かかる構成によれば、第1経路91と第2経路92とが設けられている場合、両経路91,92のうちいずれか一方の経路に断線が生じている場合であっても他方の経路を介して低圧バッテリ電圧VbLが印加される。このため、電源網30(各電源ライン31~33)の断線を検出できない場合があり得る。
【0160】
この点、本構成によれば、第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとが接続されている場合、第2経路92と第1DC/DCコンバータ20aとは接続されていない。これにより、第2経路92を介して第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26に低圧バッテリ電圧VbLが印加されない。したがって、この状況下で第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25に低圧バッテリ電圧VbLが印加されない場合には、第1経路91にて断線が生じている蓋然性が高い。よって、第1経路91の断線を検出できる。
【0161】
同様に、第2経路92と第1DC/DCコンバータ20aとが接続されている場合、第1経路91と第1DC/DCコンバータ20aとは接続されていない。これにより、第1経路91を介して第1DC/DCコンバータ20aの第1出力端25に低圧バッテリ電圧VbLが印加されない。したがって、この状況下で第1DC/DCコンバータ20aの第2出力端26に低圧バッテリ電圧VbLが印加されない場合には、第2経路92にて断線が生じている蓋然性が高い。よって、第2経路92の断線を検出できる。
【0162】
以上のことから、低圧バッテリ12と第1DC/DCコンバータ20aとを接続する経路として第1経路91と第2経路92との2つがある場合であっても、電源網30の断線を検出できる。
【0163】
(第3実施形態)
本実施形態では、断線判定を含む異常判定を行うための構成が第2実施形態と異なっている。その異なる点について以下に説明する。
【0164】
図11に示すように、本実施形態では、電源システム10は、低圧バッテリ12を有する蓄電ユニット110を備えている。
蓄電ユニット110は、第1経路91と低圧バッテリ12との間に設けられた第1蓄電開閉器111と、第2経路92と低圧バッテリ12との間に設けられた第2蓄電開閉器112と、を備えている。第1蓄電開閉器111及び第2蓄電開閉器112は例えばリレーである。ただし、両蓄電開閉器111,112の具体的な構成は任意である。
【0165】
蓄電ユニット110は、各経路91,92のうちいずれか一方に印加される電圧(以下、「印加電圧Va」という。)を検出するのに用いられる検出抵抗113と、検出抵抗113の両端の電圧を検出する電圧センサ114と、検出抵抗113と電源網30との間に設けられた第3蓄電開閉器115と、を備えている。
【0166】
第3蓄電開閉器115と検出抵抗113とは互いに直列に接続されている。本実施形態では、検出抵抗113は、第3蓄電開閉器115を介して第2経路92に接続されている。電圧センサ114は、検出抵抗113に印加される電圧を検出する。
【0167】
かかる構成によれば、第3蓄電開閉器115が閉状態である場合には、検出抵抗113が第2経路92に接続され、電圧センサ114が印加電圧Vaを検出することができる。
一方、第3蓄電開閉器115が開状態である場合には、検出抵抗113は第2経路92に接続されない。このため、電源網30から検出抵抗113へ電流は流れず、検出抵抗113での損失を抑制できる。
【0168】
なお、電源システム10が蓄電ユニット110を備えている点に着目すれば、電源システム10が、各蓄電開閉器111,112,115、検出抵抗113及び電圧センサ114を備えているともいえる。
【0169】
電源システム10は、電源網30(換言すれば各電源ライン31~33)の断線判定を含む異常判定を行う異常検出回路120を備えている。本実施形態では、異常検出回路120が「断線判定部」に対応する。異常検出回路120は、各蓄電開閉器111,112,115を制御することができるとともに、電圧センサ114の検出結果を取得することができる。
【0170】
本実施形態の制御装置80は、断線判定が行われる場合には、各開閉器71~76が閉状態となるように各DC/DCコンバータ20a~20cに対して指令を送信する。これにより、各開閉器71~76が閉状態となり、各電源ライン31~33が接続される。
【0171】
また、制御装置80は、各DC/DCコンバータ20a~20cが電圧変換動作を行わないように、各DC/DCコンバータ20a~20cに対して指令を送信する。
かかる状況下において、異常検出回路120は、第1蓄電開閉器111及び第2蓄電開閉器112の状態と電圧センサ114の検出結果とに基づいて、電源網30の断線の有無などの異常を判定する。
【0172】
例えば、図12に示すように、異常検出回路120は、予め定められたパターンで各蓄電開閉器111,112,115の開閉を切り替える。詳細には、異常検出回路120は、図12に示すように、第1パターン→第2パターン→第3パターン→…→第8パターンの順に各蓄電開閉器111,112,115を切り替える。なお、図12では、開状態(OFF状態)を「0」とし、閉状態(ON状態)を「1」として示す。
【0173】
そして、異常検出回路120は、蓄電開閉器111,112,115の各開閉パターン毎の電圧センサ114の検出結果と、異常検出回路120に設けられた状態テーブル121とに基づいて、電源網30の異常の有無を判定する。
【0174】
電源網30の異常には、電源網30の断線と、各蓄電開閉器111,112,115のオープン異常又はショート異常と、地絡と、が含まれる。図13に示すように、状態テーブル121には、正常時及び各異常時における、各開閉パターン時の電圧センサ114の検出結果の組み合わせが記載されている。
【0175】
異常検出回路120は、状態テーブル121を参照して各開閉パターンに対する電圧センサ114の検出結果(検出電圧)の組み合わせと一致する状態を特定することによって異常の有無を判定する。
【0176】
例えば、第4パターン時、第6パターン時、および第8パターン時の電圧センサ114の検出結果がVaで、その他の開閉パターン時には電圧センサ114の検出結果が0Vの場合、異常検出回路120は、正常であると判定する。
【0177】
一方、例えば第4パターン時及び第8パターン時の電圧センサ114の検出結果がVaで、その他の開閉パターン時には電圧センサの検出結果が0Vであった場合には、異常検出回路120は、電源網30に断線が発生していると判定する。
【0178】
なお、異常検出回路120は、異常判定が行われた後は、第3蓄電開閉器115を閉状態から開状態に切り替える。これにより、検出抵抗113に流れる電流を抑制でき、損失の低減を図ることができる。
【0179】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(3-1)電源システム10は、第1経路91と低圧バッテリ12との間に設けられた第1蓄電開閉器111と、第2経路92と低圧バッテリ12との間に設けられた第2蓄電開閉器112と、第1経路91又は第2経路92のいずれか一方(本実施形態では第2経路92)への印加電圧Vaを検出する電圧センサ114と、を備えている。異常検出回路120は、両蓄電開閉器111,112の状態と電圧センサ114の検出結果とに基づいて、各電源ライン31~33の断線の有無を判定する。
【0180】
かかる構成によれば、第1蓄電開閉器111及び第2蓄電開閉器112を制御することにより、第1経路91と低圧バッテリ12との接続、及び、第2経路92と低圧バッテリ12との接続を制御することができる。そして、各蓄電開閉器111,112の状態と、電圧センサ114の検出結果とを参照することにより、各電源ライン31~33の断線の有無を判定できる。
【0181】
(3-2)電源システム10は、第3蓄電開閉器115を介して第2経路92に接続されている検出抵抗113を備えている。電圧センサ114は、検出抵抗113の両端の電圧を検出する。
【0182】
異常検出回路120は、予め定められたパターンで各蓄電開閉器111,112,115の開閉を順次切り替え、且つ、電圧センサ114を用いて各開閉パターンにおける検出抵抗113の両端の電圧を検出する。また、異常検出回路120は、正常時における各開閉パターンに対する電圧センサ114の検出結果と、断線時を含む各種異常時における各開閉パターンに対する電圧センサ114の検出結果とが設定されている状態テーブル121を備えている。そして、異常検出回路120は、状態テーブル121を参照して、各開閉パターンに対する電圧センサ114の検出結果の組み合わせが、正常時における各パターンの電圧センサ114の検出結果の組み合わせと一致する場合には正常であると判定する。異常検出回路120は、各パターンに対する電圧センサ114の検出結果の組み合わせが、断線時における各パターンに対する電圧センサ114の検出結果の組み合わせと一致する場合には断線が発生していると判定する。これにより、(3-1)の効果を得ることができる。
【0183】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。また、技術的に矛盾が生じない範囲内で上記各実施形態と下記別例とを適宜組み合わせもよい。
図14に示すように、第2実施形態において、第1負荷41が各電源ライン31~33に接続されていてもよい。第2負荷42についても同様である。
【0184】
○ DC/DCコンバータ20の数は任意であり、例えば2つでもよいし、4つ以上でもよい。
○ DC/DCコンバータ20の具体的な構成は任意である。
【0185】
○ 電源ラインの数は任意であり、例えば2つでもよいし、4つ以上でもよい。
○ 第1負荷41及び第2負荷42は、ブレーキ制御装置に限られず、車両100の走行に必要な機能を有するものであれば任意である。例えば、第1負荷41及び第2負荷42は、車両100に設けられた操舵装置を駆動させるアクチュエータと当該アクチュエータを制御する制御回路とを有する制動制御装置であってもよい。
【0186】
○ 第1負荷41と第2負荷42とは、互いに同一機能を有するものに限られず、類似機能又は代替機能を有するものであってもよい。
○ 低圧バッテリ12の接続先は第3電源ライン33に限られず任意であり、例えば第1負荷41が接続される第1電源ライン31、又は、第2負荷42が接続される第2電源ライン32でもよい。
【0187】
○ 電源網30は環状に形成されていたが、これに限られず、環状に形成されていなくてもよい。つまり、電源網30は閉じたループ回路でなくてもよい。例えば、第3電源ライン33は、第1DC/DCコンバータ20aと第3DC/DCコンバータ20cとを接続していなくてもよい。また、第3電源ライン33を省略してもよい。
【0188】
○ 制御装置80が各開閉器71~76を制御する構成でもよい。詳細には、制御装置80が各電流センサ27a~27c,29a~29cの検出結果を受信し、その検出結果に基づいて各開閉器71~76を制御する指令を送信してもよい。この場合、制御装置80が「開閉制御部」に対応する。
【0189】
○ 第2実施形態では、特定電源装置として第1DC/DCコンバータ20aが採用されていたが、これに限られず、第2DC/DCコンバータ20bでもよいし、第3DC/DCコンバータ20cでもよい。なお、特定電源装置として第2DC/DCコンバータ20bを用いる場合、第2制御回路28bが断線判定を行うとよく、特定電源装置として第3DC/DCコンバータ20cを用いる場合、第3制御回路28cが断線判定を行うとよい。つまり、断線判定を行う主体(換言すれば断線判定部)は、第1制御回路28aに限られず任意である。
【0190】
○ 断線判定を省略してもよい。
○ 車両100は、自動運転車両に限られず、運転者が運転を行う車両であってもよい。
【0191】
○ 第3実施形態において、第3蓄電開閉器115が開状態である場合のパターン、詳細には第1パターン、第3パターン、第5パターン、第7パターンは省略してもよい。この場合であっても、各電源ライン31~33の断線の有無は判定できる。
【0192】
○ 第3実施形態において、第3蓄電開閉器115は常時閉状態でもよいし、第3蓄電開閉器115を省略してもよい。ただし、検出抵抗113に不要な電流が流れることを抑制する点に着目すれば、第3蓄電開閉器115が設けられている方がよい。
【0193】
○ 第3実施形態において、検出抵抗113は、第1経路91に接続されていてもよい。要は、検出抵抗113は、第1経路91又は第2経路92のいずれか一方に接続されればよい。
【0194】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)蓄電装置と、前記蓄電装置から出力される電圧を降圧する複数の電源装置と、前記複数の電源装置が接続され、前記複数の電源装置によって降圧された直流電力が供給される電源網と、前記電源網に接続された複数の負荷と、を備え、前記複数の電源装置は、前記電源網を介して互いに並列接続された第1電源装置、第2電源装置及び第3電源装置を含み、前記電源網は、前記第1電源装置と前記第2電源装置とを接続するのに用いられる第1電源ラインと、前記第2電源装置と前記第3電源装置とを接続するのに用いられる第2電源ラインと、を含み、前記複数の負荷は、前記第1電源ラインに接続されている第1負荷と、前記第2電源ラインに接続されている第2負荷を含むことを特徴とする電源システム。
【0195】
なお、上記(イ)の技術的思想に着目すれば、第1負荷41及び第2負荷42は、互いに異なる機能を有するものでもよく、任意である。つまり、第1負荷41及び第2負荷42は、互いに同一機能、類似機能又は代替機能を有するものでなくてもよい。
【0196】
(ロ)高圧蓄電装置と、前記高圧蓄電装置よりも低圧の低圧蓄電装置と、負荷と、前記低圧蓄電装置と前記負荷とが接続される1又は複数の電源ラインと、前記高圧蓄電装置から出力される電圧を降圧し、その降圧された直流電力を前記1又は複数の電源ラインに供給する複数の電源装置と、前記複数の電源装置を制御する制御部と、を備え、前記複数の電源装置は、前記1又は複数の電源ラインによって互いに並列接続されており、前記制御部は、前記低圧蓄電装置に入出力される電流が目標値となり且つ前記各電源装置から出力される総出力電流が同一となるように前記各電源装置から出力される電圧を制御することを特徴とする電源システム。
【0197】
なお、上記(ロ)の技術的思想に着目すれば、電源システム10は、第1負荷41及び第2負荷42のいずれか一方を有していても良い。つまり、電源システム10において、互いに同一機能、類似機能又は代替機能を有する複数の負荷は必須ではない。また、電源ラインは1つでもよい。
【0198】
(ハ)前記複数の電源装置は、第1電源装置、第2電源装置及び第3電源装置を含み、前記電源ラインは複数あり、前記複数の電源ラインは、前記第1電源装置と前記第2電源装置とを接続するのに用いられる第1電源ラインと、前記第2電源装置と前記第3電源装置とを接続するのに用いられる第2電源ラインと、前記低圧蓄電装置が接続されるバッテリラインと、を含み、前記負荷は、前記第1電源ラインに接続される第1負荷と、前記第2電源ラインに接続される第2負荷と、を含むとよい。
【符号の説明】
【0199】
10…電源システム、11…高圧バッテリ(高圧蓄電装置)、12…低圧バッテリ(低圧蓄電装置)、14…高圧負荷、20a~20c…DC/DCコンバータ(電源装置)、28a~28c…制御回路、30…電源網、31~33…電源ライン、41…第1負荷、42…第2負荷、71~76…開閉器、91…第1経路、92…第2経路、100…車両、110…蓄電ユニット、111…第1蓄電開閉器、112…第2蓄電開閉器、113…検出抵抗、114…電圧センサ、115…第3蓄電開閉器、121…状態テーブル、VbH…高圧バッテリ電圧、VbL…低圧バッテリ電圧、Ib…バッテリ電流、Ibt…目標バッテリ電流。
図1
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