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特開2022-30179紫外線殺菌装置および循環式空気殺菌装置
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  • 特開-紫外線殺菌装置および循環式空気殺菌装置 図1
  • 特開-紫外線殺菌装置および循環式空気殺菌装置 図2
  • 特開-紫外線殺菌装置および循環式空気殺菌装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030179
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置および循環式空気殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220210BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133984
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】591018338
【氏名又は名称】コスモ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 孝光
(72)【発明者】
【氏名】兼平 吉史
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA02
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK21
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH11
4C180HH17
(57)【要約】
【課題】テーブルや椅子の裏なども短時間(数秒)で殺菌でき、かつ、軽量で狭い空間も殺菌することができる紫外線殺菌装置、および、この紫外線殺菌装置を用いた循環式空気殺菌装置を提供する。
【解決手段】紫外線殺菌装置10は、石英ガラスからなる石英製低圧水銀ランプ11と、石英製低圧水銀ランプ11を冷却するためのランプ冷却用ファン13と、石英製低圧水銀ランプ11およびランプ冷却用ファン13を収納する収納筐体14と、を備え、石英製低圧水銀ランプ11は、U字形またはコの字形であって、紫外線透過率が90%以上であり、発光長1cm当たりの入力が0.6~1.0Wである。また、収納筐体14の一端側には、作業用取っ手17が設けられている。また、循環式空気殺菌装置20においては、上部に紫外線殺菌装置10を設置し、内部の空気の殺菌ができる空気殺菌用筐体21を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなる低圧水銀ランプと、
前記低圧水銀ランプを冷却するための冷却用ファンと、
前記低圧水銀ランプおよび前記冷却用ファンを収納する収納筐体と、
を備え、
前記低圧水銀ランプは、紫外線透過率が90%以上であり、発光長1cm当たりの入力が0.6~1.0Wである、
ことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記収納筐体の一端側の片寄った位置に取っ手を設け、
前記低圧水銀ランプは、U字形またはコの字形である、
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の紫外線殺菌装置と、
前記紫外線殺菌装置に殺菌される空気を収納する収納空間を有する空気殺菌用筐体と、
を備えた循環式空気殺菌装置であって、
前記空気殺菌用筐体は、
一方の端部に設けられ、前記収納空間に空気を取り込む空気取り入れ口と、
前記収納空間に取り込んだ空気を外部に排出させる排気用ファンと、
を有する、
ことを特徴とする循環式空気殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線殺菌装置および循環式空気殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生活空間におけるテーブルや床、椅子、食器等、事務所・学校・病院などの机・椅子・什器などの表面殺菌は、消毒用エタノールや次亜塩素酸ソーダを吹きかける、または、布等を用いてふき取る方法がある。しかしながら、これらの方法では、ふき残しや薬剤に弱いプラスチック等では表面を傷めてしまう心配がある。
【0003】
そこで、紫外線を用いた殺菌装置を利用することが考えられる。従来の紫外線殺菌装置は、箱形の装置の内部に対象物を載置して、装置内部で殺菌するものが主流であったが、紫外線を直接対象物に向けて照射させる、ハンディタイプまたは携帯できるタイプの殺菌装置や、紫外線LEDを用いた製品が市販されている。
【0004】
例えば、掌大の紫外線照射部と、紫外線照射部に取り付けられた握り部と、を備えた携帯用紫外線殺菌装置が提案されている。この携帯用紫外線殺菌装置は、握り部を一方の掌でもって他方の掌を紫外線照射部にかざし、握り部を持ち替えて反対側の掌を紫外線照射部にかざすようにすることで紫外線により手等を簡易かつ迅速に殺菌することをできるようにしたものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-175041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のハンディタイプまたは携帯できるタイプの殺菌装置や、紫外線LEDを用いた製品では、低電力(数ワット)であり、照度が弱く(数十μW/cm)、一カ所あたり数十秒から数分照射しないと細菌やウィールスが死滅しないのが現状である。
【0007】
また、従来の殺菌灯は、寿命が短かったり、消費エネルギーが高かったり、点灯するまでに時間を要する、また、再点灯までの時間が非常に長くかかる、といった問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、生活空間におけるテーブルや床、椅子、食器等、事務所・学校・病院などの机・椅子・什器などに対するハンディまたは携帯型表面殺菌装置において、テーブルや椅子の裏なども短時間(数秒)で殺菌でき、かつ、軽量で狭い空間も殺菌することができる紫外線殺菌装置およびこの紫外線殺菌装置を用いた循環式空気殺菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る紫外線殺菌装置は、石英ガラスからなる低圧水銀ランプと、前記低圧水銀ランプを冷却するための冷却用ファンと、前記低圧水銀ランプおよび前記冷却用ファンを収納する収納筐体と、を備え、
前記低圧水銀ランプは、紫外線透過率が90%以上であり、発光長1cm当たりの入力が0.6~1.0Wである、ことを特徴とする。
【0010】
また、紫外線殺菌装置は、前記収納筐体の一端側の片寄った位置に取っ手を設け、前記低圧水銀ランプは、U字形またはコの字形である、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る循環式空気殺菌装置は、上記紫外線殺菌装置と、前記紫外線殺菌装置に殺菌される空気を収納する収納空間を有する空気殺菌用筐体と、を備えた循環式空気殺菌装置であって、
前記空気殺菌用筐体は、一方の端部に設けられ、前記収納空間に空気を取り込む空気取り入れ口と、前記収納空間に取り込んだ空気を外部に排出させる排気用ファンと、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テーブルや椅子の裏なども短時間で殺菌でき、かつ、軽量で狭い空間も殺菌することができる紫外線殺菌装置、および、この紫外線殺菌装置を用いた循環式空気殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における紫外線殺菌装置の構成を示す概略図である。
図2】各指標菌に対する従来器具・ランプでの走査速度と、本実施の形態における紫外線殺菌装置での走査速度の下限速度を示す比較対応表である。
図3】本発明の実施の形態における紫外線殺菌装置を用いた循環式空気殺菌装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における紫外線殺菌装置の構成を示す概略図である。なお、図1(a)は、本実施の形態における紫外線殺菌装置の概略構成を示す側面図であり、図1(b)は、本実施の形態における紫外線殺菌装置の概略構成を示す下面図である。また、図2は、各指標菌に対する従来器具・ランプでの走査速度と、本実施の形態における紫外線殺菌装置での走査速度の下限速度を示す比較対応表である。
【0016】
(紫外線殺菌装置10の構成)
図1に示すように、紫外線殺菌装置10は、石英製低圧水銀ランプ11と、アルミ板12と、ランプ冷却用ファン13と、収納筐体14と、作業用取っ手17と、ケーブル18と、を備えている。また、収納筐体14には、窓15と、ガード16と、が設けられている。
【0017】
石英製低圧水銀ランプ11は、殺菌に有効な紫外線が放射される石英ガラスを用いたランプである。また、石英製低圧水銀ランプ11は、発光長1cmあたりのランプ入力を0.6~1.0[W]とし、主発光波長が254[nm]の紫外線を照射するものである。また、石英製低圧水銀ランプ11は、放射される254[nm]の紫外線透過率が90%以上の石英ガラスを用いている。また、石英製低圧水銀ランプ11は、発光管形状が、U字形となっている。なお、この発光管形状は、コの字形などでもよい。
【0018】
アルミ板12は、紫外線を反射するものであり、石英製低圧水銀ランプ11から放出された紫外線を、窓15側に効率よく反射させるものである。
ランプ冷却用ファン13は、石英製低圧水銀ランプ11を冷却するためのものである。
【0019】
収納筐体14は、石英製低圧水銀ランプ11と、アルミ板12と、ランプ冷却用ファン13と、を収納している。また、収納筐体14は、下面に、窓15と、ガード16と、を有している。
【0020】
窓15は、収納筐体14の下面に設けられ、紫外線を照射させるため、石英製低圧水銀ランプ11から放射された紫外線を透過させるものである。また、窓15は、石英製低圧水銀ランプ11から放射された254[nm]の紫外線を十分に透過させることができるものである。
ガード16は、収納筐体14の下面で、窓15よりも下部に設けられ、ガラス製である石英製低圧水銀ランプ11を破損から防止するためのものである。
【0021】
作業用取っ手17は、収納筐体14の上部に設けられ、作業者が紫外線殺菌装置10を使用時に把持するための取っ手である。また、作業用取っ手17は、紫外線殺菌装置10の一端側の片寄った位置に設けられている。例えば、本実施の形態においては、作業用取っ手17は、ケーブル18およびランプ冷却用ファン13が設けられている一端側に取り付けられている。
ケーブル18は、石英製低圧水銀ランプ11を点灯させるための安定器と接続するためのものである。
【0022】
ここで、細菌やウィールスが低圧水銀ランプから放射される254[nm]紫外線によって死滅することはよく知られている。また、細菌によって紫外線耐性が違うことも古くからよく知られている。
例えば、細菌やウィールスの99%不活化に必要な紫外線量は、グラム陰性菌の大腸菌で5.4[mJ/cm]、グラム陽性菌の枯草菌は21.6[mJ/cm]、食中毒を起こすことで知られる黄色ブドウ球菌は9.3[mJ/cm]であることがわかっている(河端俊治、原田常雄、殺菌灯による水の消毒、照明学会誌、36(3)、pp89-96,1952)。
【0023】
したがって、テーブルや椅子などを殺菌したい場合、作業者が作業用取っ手17を持って、紫外線殺菌装置10の紫外線照射側、すなわち、窓15が設けられている下面側を対象物(テーブルや椅子など)に向けて、紫外線を照射させる。そして、殺菌したい範囲に応じて、紫外線殺菌装置10を横に移動させながら、紫外線の照射面を移動(走査)させていく。これにより、テーブルや椅子などの表面を殺菌させることができる。
ただし、上記のように、十分に紫外線を照射させなければ、細菌やウィールスを死滅させることはできない。すなわち、照射距離と、照射速度によって、単位面積当たりの紫外線照射量が変わる。
【0024】
ここで、市販品と本実施の形態の紫外線殺菌装置10との比較例を示す。
市販品殺菌ランプ(GL-15)と専用器具では、照射距離50[mm]、照射速度3[m/min]で照射した場合、9.8[mJ/cm]となった。
本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、照射距離50[mm]、照射速度3[m/min]で照射した場合、112.8[mJ/cm]であった。
【0025】
図2に、各指標菌に対する従来器具・ランプでの走査速度と、本実施の形態における紫外線殺菌装置10での走査速度の下限速度を示す比較対応表を示す。
上記のように、図2は、細菌やウィールスを99%不活化させるための器具走査下限速度[mm/sec]を示すものである。
【0026】
図2に示すように、インフルエンザウィールスでは、99%不活化に必要な紫外線量は、6.6[mJ/cm]である。このとき、市販品では、走査下限速度は、74.2[mm/sec]である。すなわち、市販品では、1秒間に74.2「mm」を超えるスピードでは、インフルエンザウィールスを十分に不活化させることができない。
一方、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、走査下限速度は、854.5[mm/sec]である。このように、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、市販品に比べて、11.5倍ものスピードで走査させても、インフルエンザウィールスを十分に殺菌することができる。
【0027】
また、大腸菌では、99%不活化に必要な紫外線量は、5.4[mJ/cm]であり、市販品の走査下限速度は90.7[mm/sec]である。一方、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、走査下限速度は1044.4[mm/sec]であり、大腸菌でも、市販品に比べて、11.5倍ものスピードで走査が可能である。
同様に、枯草菌、枯草菌(芽胞)、黒カビでも、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、市販品に比べて、下限走査速度を11倍以上とすることができている。特に、黒カビでは、市販品のものでは、現実的に走査をさせることができなかったものが、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、走査下限速度を現実的に走査可能な21.4[mm/sec]まで上昇させることができる。
【0028】
以上のように、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、市販品に比べ、走査下限速度が格段に上昇したので、生活空間におけるテーブルや床、椅子、食器等、事務所・学校・病院などの机・椅子・什器などに対して、短時間(数秒)で殺菌することができる。
また、本実施の形態の紫外線殺菌装置10は、構成が簡略で、収納筐体14の一端部に作業用取っ手17が設けられているので、軽量で狭い空間も殺菌することができる。
【0029】
次に、紫外線殺菌装置10を用いた循環式空気殺菌装置について、説明する。
図3は、本発明の実施の形態における紫外線殺菌装置10を用いた循環式空気殺菌装置の構成を示す概略図である。なお、図3(a)は、本実施の形態における循環式空気殺菌装置の概略構成を示す側面図であり、図3(b)は、本実施の形態における循環式空気殺菌装置の概略構成を示す正面図である。
【0030】
図3に示すように、循環式空気殺菌装置20は、紫外線殺菌装置10に加え、空気殺菌用筐体21と、空気取り入れ口22と、循環ファン23と、を有している。また、空気殺菌用筐体21には、空気取り入れ口22が設けられている。
【0031】
紫外線殺菌装置10は、上記実施の形態の紫外線殺菌装置10と同様のものである。
空気殺菌用筐体21は、筒状の筐体であり、内部に、紫外線殺菌装置10に殺菌される空気を収納する収納空間を有している。また、空気殺菌用筐体21は、上部に紫外線殺菌装置10が設置されるようになっている。また、空気殺菌用筐体21は、上部に設置された紫外線殺菌装置10が照射した紫外線を内部に取り込むことができるようになっている。例えば、空気殺菌用筐体21は、上部に空洞が設けられており、紫外線殺菌装置10の端部を支えることが可能となっている。なお、空気殺菌用筐体21は、上部にガラス面が設けられており、その上に、紫外線殺菌装置10を載置することが可能となったものとしてもよい。
【0032】
また、空気殺菌用筐体21は、一方の端部に空気取り入れ口22が設けられており、空気殺菌用筐体21の外部から空気を取り込むようになっている。
また、空気殺菌用筐体21は、空気取り入れ口22の対面に循環ファン23が設けられており、空気殺菌用筐体21の内部の空気を排気させるようになっている。なお、空気殺菌用筐体21は、循環ファン23が設けられている他方の端部に、図示しない空気排出口が設けられている。
【0033】
このような循環式空気殺菌装置20を室内で作動させる。具体的には、紫外線殺菌装置10を作動させ、循環ファン23を稼働させると、空気取り入れ口22から、空気殺菌用筐体21の内部に、室内の空気を取り込む。空気殺菌用筐体21の内部に取り込んだ空気は、紫外線殺菌装置10により殺菌される。そして、殺菌された空気は、循環ファン23によって、空気殺菌用筐体21が排出される。したがって、循環式空気殺菌装置20は、紫外線殺菌装置10を用いて、室内の空気を殺菌することができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態の紫外線殺菌装置10では、生活空間におけるテーブルや床、椅子、食器等、事務所・学校・病院などの机・椅子・什器など、特に、テーブルや椅子の裏なども、短時間(数秒)で殺菌でき、かつ、軽量で狭い空間も殺菌することができる。
また、本実施の形態の紫外線殺菌装置10を用いた循環式空気殺菌装置20によって、室内の空気を殺菌することもできる。
【0035】
なお、本実施の形態において、石英製低圧水銀ランプ11は、本願の低圧水銀ランプを構成する。また、本実施の形態において、ランプ冷却用ファン13は、本願の冷却用ファンを構成する。また、本実施の形態において、作業用取っ手17は、本願の取っ手を構成する。
さらに、本実施の形態において、空気取り入れ口22は、本願の取り入れ口を構成する。また、本実施の形態において、循環ファン23は、本願の排気用ファンを構成する。
【符号の説明】
【0036】
10 紫外線殺菌装置
11 石英製低圧水銀ランプ
12 アルミ板
13 ランプ冷却用ファン
14 収納筐体
15 窓
16 ガード
17 作業用取っ手
18 ケーブル
20 循環式空気殺菌装置
21 空気殺菌用筐体
22 空気取り入れ口
23 循環ファン
図1
図2
図3