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特開2022-30195LDS用熱硬化性樹脂組成物、樹脂成形品および三次元成形回路部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030195
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】LDS用熱硬化性樹脂組成物、樹脂成形品および三次元成形回路部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220210BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220210BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20220210BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20220210BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220210BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/22
C08K3/08
C08K3/10
C08K3/36
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134011
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】光田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊次
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002BG031
4J002BH021
4J002CC031
4J002CC032
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD131
4J002CF211
4J002CH031
4J002DA077
4J002DA087
4J002DA107
4J002DA117
4J002DC007
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE117
4J002DE127
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE157
4J002DE186
4J002DF016
4J002DJ016
4J002EL138
4J002EN048
4J002EN069
4J002EN078
4J002EN088
4J002EQ028
4J002EU119
4J002EU209
4J002EW129
4J002EW139
4J002EW179
4J002FD016
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD142
4J002FD148
4J002FD159
4J002FD160
4J002FD207
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】誘電特性に優れた硬化物を提供することができ、さらに受信感度に優れ、小型化・軽量化されたアンテナ等を得ることができるLDS用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含み、前記非導電性金属化合物が、スピネル型の金属酸化物、周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および錫含有酸化物からなる群から選択される一種以上を含み、前記無機充填材が、比誘電率5以上の無機材料からなる高誘電率充填材を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)に用いるLDS用熱硬化性樹脂組成物であって、
前記非導電性金属化合物が、
スピネル型の金属酸化物、
周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および
錫含有酸化物からなる群から選択される一種以上を含み、
前記無機充填材が、比誘電率5以上の無機材料からなる高誘電率充填材を含む、
LDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填材が、チタン酸バリウム、アルミナ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムからなる群から選ばれる1または2以上の無機材料を含む、請求項1に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填材の平均粒径D50が30μm以下である、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記非導電性金属化合物が、銅またはクロムを含む前記スピネル型の金属酸化物を含有する、請求項1~3のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材がシリカを含む、請求項1~4のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~5のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂、およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上を含む、請求項6に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
硬化剤をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
カップリング剤をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状である、請求項1~10のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える成形品であって、当該硬化物の誘電率が5以上である成形品。
【請求項13】
三次元構造を有する請求項12に記載の成形品と、
前記硬化物の表面に形成された三次元回路と、を備える、三次元成形回路部品。
【請求項14】
請求項13に記載の三次元成形回路部品を含むアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LDS用熱硬化性樹脂組成物、樹脂成形品および三次元成形回路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元回路を形成する技術として、LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)が知られている。当該技術には、LDS添加剤を含む樹脂組成物が用いられ、当該組成物から得られた成形体の表面にレーザーを照射し、レーザーを照射した部分を活性化させ、この活性化された部分に金属メッキ層を形成することで三次元回路を形成することができる。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂と、LDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を、連続的に繊維に含浸させてなる繊維強化樹脂材料が開示されている。
特許文献2には、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、カップリング剤と、を含むLDS用熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-134903号公報
【特許文献2】国際公開第2017/199639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の組成物から得られた硬化物に三次元回路が形成された成形品を含むアンテナ等は、受信感度に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の高誘電率充填材を用いることによりを受信感度に優れる成形品を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0007】
本発明によれば、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含むLASER DIRECT STRUCTURING(LDS)に用いるLDS用熱硬化性樹脂組成物であって、
前記非導電性金属化合物が、
スピネル型の金属酸化物、
周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および
錫含有酸化物からなる群から選択される一種以上を含み、
前記無機充填材が、比誘電率5以上の無機材料からなる高誘電率充填材を含む、
LDS用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0008】
本発明によれば、
前記LDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える成形品であって、当該硬化物の誘電率が5以上である成形品を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、
三次元構造を有する前記成形品と、
前記硬化物の表面に形成された三次元回路と、を備える、三次元成形回路部品を提供することができる。
【0010】
本発明によれば、
前記三次元成形回路部品を含むアンテナを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、誘電特性に優れた硬化物を提供することができ、さらに当該硬化物に三次元回路が形成された成形品を含むアンテナ等は受信感度に優れており、アンテナ等を小型化・軽量化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
なお、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、LASER DIRECT STRUCTURING(レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS))に用いる熱硬化性樹脂組成物である。LDSとは、三次元成形回路部品(MID)の製造方法の一つであり、活性エネルギー線を照射して、LDS添加剤を含有する樹脂成形品の表面に金属核を生成し、その金属核をシードとして、例えば無電解めっき処理等により、エネルギー線照射領域にめっきパターン(配線)を形成することができる。
【0014】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含む。
【0015】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、およびマレイミド樹脂からなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性、保存性、耐熱性、耐湿性、および耐薬品性を向上させる観点から、エポキシ樹脂を含むことがとくに好ましい。
【0016】
本実施形態において、熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態において、エポキシ樹脂は、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリスフェノール型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
成形体の反り抑制や、充填性、耐熱性、耐湿性等の諸特性のバランスを向上させる観点からは、これらのうち、ノボラック型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を用いることができる。また、上記エポキシ樹脂としては、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上を含むことができる。このようなエポキシ樹脂とカップリング剤との適切に選択することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物におけるめっき付き特性を向上させることができる。
【0018】
本実施形態において、熱硬化性樹脂の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、2.5質量%以上であることがとくに好ましい。これにより、成形時における流動性を向上させることができる。このため、充填性や成形安定性の向上を図ることができる。一方で、熱硬化性樹脂の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、15質量%以下であることが好ましく、14質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることがとくに好ましい。これにより、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂の含有量をこのような範囲に制御することによって、成形体の反り抑制に寄与することが可能である。
【0019】
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物全体に対する含有量とは、溶媒を含む場合には、熱硬化性樹脂組成物のうちの溶媒を除く固形分全体に対する含有量を指す。熱硬化性樹脂組成物の固形分とは、熱硬化性樹脂組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0020】
[無機充填材]
本実施形態の無機充填材は高誘電率充填材を含む。
前記高誘電率充填材は、比誘電率5以上の無機材料からなる。無機材料の比誘電率は、好ましくは5以上、より好ましくは8以上である。上限値は特に限定されないが、3000以下である。
【0021】
比誘電率5以上の前記無機材料としては、チタン酸バリウム(1500)、アルミナ(8.9)、酸化チタン(80~180)、チタン酸ストロンチウム(300)からなる群から選ばれる1または2以上を用いることができる。括弧内の数値は比誘電率(1MHz)である。前記高誘電率充填材は、本発明の効果の観点から、チタン酸バリウムを含むことが好ましい。
【0022】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、高誘電率充填材を含むことにより、誘電特性に優れた硬化物を提供することができ、さらに当該硬化物に三次元回路が形成された成形品を含むアンテナ等は受信感度に優れており、アンテナ等を小型化・軽量化することができる。
【0023】
本実施形態において、高誘電率充填材の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがとくに好ましい。これにより、成形時における流動性を向上させることができる。このため、充填性や成形安定性の向上を図ることができる。一方で、高誘電率充填材の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがとくに好ましい。これにより、受信感度に優れた成形体を提供することができる。
【0024】
前記無機充填材は、前記高誘電率充填材以外に、他の無機材料を含むことができる。
他の無機材料としては、たとえば、溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化珪素、および窒化アルミからなる群から選択される一種類または二種類以上の無機充填材を挙げることができる。この中でも、他の無機材料として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカを用いることが好ましく、溶融球状シリカを用いることがより好ましい。球状の無機充填材を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の分散性を向上させることができる。
【0025】
他の無機材料の含有量の下限値は、本発明の効果の観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがとくに好ましい。一方で、他の無機材料の含有量の上限値は、本発明の効果の観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがとくに好ましい。
【0026】
また、前記無機充填材の平均粒径D50の上限値は、例えば30μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、スルーホール加工性を向上させることができる。また、得られる回路パターンの幅を細くすることも可能になる。一方で、上記無機充填材の平均粒径D50の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上であり、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度を適切に制御できるので、射出成形やトランスファー成形などの成形性を向上させることができる。
【0027】
また、無機充填材のD90の上限値は、例えば、80μm以下であり、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、開口径が小さいレーザーによるスルーホール加工性を向上させることができる。また、レーザー加工後における硬化物の表面粗さを低減できるので、めっき付き特性を向上させることができる。一方で、無機充填材のD90の下限値は、特に限定されないが、例えば、1μm以上でもよく、3μm以上でもよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性をより効果的に向上させることが可能となる。また、ワイヤーボンディング性を高めることもできる。
【0028】
上記無機充填材の粒度分布幅(D90/D50)の上限値は、例えば、10以下であり、好ましくは9以下であり、より好ましくは8以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面粗さのバラツキを抑制できるので、めっき付き特性を向上させることができる。また、上記無機充填材の粒度分布幅(D90/D50)の下限値は、例えば、1以上であってもよい。
【0029】
本実施形態において、無機充填材のD50やD90は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することができる。ここで、得られたメディアン径(D50)を、平均粒径とすることができる。
【0030】
[非導電性金属化合物]
非導電性金属化合物は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する化合物である。
【0031】
非導電性金属化合物は、上記LDS添加剤として作用し、(i)スピネル型の金属酸化物、(ii)周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および(iii)錫含有酸化物からなる群から選択される一種以上を含むことができる。また、上記カップリング剤は、メルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0032】
本実施形態において、上記非導電性金属化合物は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成できるものであれば特に限定されない。詳細なメカニズムは定かでないが、このような非導電性金属化合物は、吸収可能な波長領域を有するYAGレーザー等の活性エネルギー線が照射されると、金属核が活性化して(例えば、還元されて)、金属めっきが可能な金属核が生成される、と考えられる。そして、非導電性金属化合物が分散された熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に対して上記活性エネルギー線を照射すると、その照射面に、金属めっきが可能な金属核を有するシード領域が形成される。得られたシード領域を利用することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に、回路などのめっきパターンを形成することが可能になる。
【0033】
本実施形態によれば、熱硬化性樹脂組成物において、適切なカップリング剤を選択することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物におけるめっき付き特性を向上させることができる。
【0034】
非導電性金属化合物の具体例としては、例えば、スピネル型の金属酸化物、周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および錫含有酸化物からなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0035】
上記スピネル型の金属酸化物としては、例えば、スピネル型の構造とは、複酸化物でAB型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の一つである。順スピネル構造、(AとBが一部入れ替わった)逆スピネル構造(B(AB)O)のいずれでもよいが、順スピネル構造がより好ましく使用できる。この場合、順スピネル構造のAが銅であってもよい。
【0036】
上記スピネル型の金属酸化物を構成する金属原子としては、例えば、銅やクロムを用いることができる。つまり、上記非導電性金属化合物は、銅またはクロムを含むスピネル型の金属酸化物を含有することができる。例えば、銅メッキパターンとの密着性の観点から、上記金属原子として銅を用いることができる。
【0037】
また、上記金属原子としては、銅やクロムの他に、アンチモン、スズ、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウム、カルシウムなどの金属原子を微量含有していてもよい。これらの微量金属原子は酸化物として存在していてもよい。また、微量金属原子の含有量は、それぞれ、金属酸化物中の金属原子全体に対して、0.001質量%以下とすることができる。
【0038】
本実施形態において、上記スピネル型の金属酸化物は、熱的に高安定性があり、酸性またはアルカリ性の水性金属化浴において耐久性を有することができる。上記スピネル型の金属酸化物は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の分散性を適切に制御することにより、高酸化物の状態で、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面における未照射領域に存在することができる。以上のような上記スピネル型の金属酸化物の一例としては、例えば、特許3881338号に記載されている。
【0039】
また、上記遷移金属元素を有する金属酸化物としては、周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物である。ここで、上記遷移金属元素に属する金属は、周期表のn族の金属と、n+1族の金属とを含有すると表すことができる。上記遷移金属元素を有する金属酸化物は、これら金属の酸化物を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記周期表のn族に属する金属としては、例えば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)が挙げられる。
【0041】
周期表のn+1族の金属としては、例えば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)が挙げられる。
以上のような上記遷移金属元素を有する金属酸化物の一例としては、例えば、特許3881338号に記載されている。
【0042】
また、上記錫含有酸化物としては、少なくとも錫を含有する金属酸化物である。上記錫含有酸化物を構成する金属原子は、錫のほかにアンチモンを用いてもよい。このような上記錫含有酸化物は、酸化錫、酸化アンチモンを含有することができる。
【0043】
例えば、錫含有酸化物に含まれる金属成分の、90質量%以上が錫であり、5質量%以上がアンチモンであってもよい。この錫含有酸化物は、金属成分として、鉛および/または銅をさらに含有してもよい。具体的には、錫含有酸化物に含まれる金属成分においては、例えば、90質量%以上が錫であり、5~9質量%がアンチモンであり、0.01~0.1質量%の範囲で鉛を含み、0.001~0.01質量%の範囲で銅を含むことができる。このような錫含有酸化物は、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化鉛および/または酸化銅を含有することができる。なお、上記錫含有酸化物は、スピネル型の金属酸化物で例示された微量金属原子を含有してもよい。また、上記錫含有酸化物は、上記スピネル型の金属酸化物または上記遷移金属元素を有する金属酸化物と併用して使用してもよい。
【0044】
上記非導電性金属化合物の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、めっき付き特性を良好なものとすることができる。また、上記非導電性金属化合物の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、絶縁性の低下を抑制したり、誘電正接の増加を抑制することができる。また、非導電性金属化合物が非球形の場合において、熱硬化性樹脂組成物の流動性を良好なものとすることができる。
【0045】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記の非導電性金属化合物のほかに、少なくとも1種類の有機性の熱安定性金属キレート錯塩を含有していてもよい。
【0046】
[硬化剤]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記硬化剤として用いられる重付加型の硬化剤は、たとえばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類からなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。
【0048】
上記硬化剤として用いられる触媒型の硬化剤は、たとえばベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸からなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。
【0049】
上記硬化剤として用いられる縮合型の硬化剤は、たとえばレゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂などの尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂などのメラミン樹脂からなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。
【0050】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂系硬化剤を含むことがより好ましい。フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は特に限定されない。
【0051】
本実施形態の硬化剤として用いられるフェノール樹脂系硬化剤は、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物からなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。これらの中でも、成形体の反りを抑制する観点からは、ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂およびフェノールアラルキル型フェノール樹脂を含むことがより好ましい。また、フェノールノボラック樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく使用することができる。
【0052】
本実施形態において、硬化剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがとくに好ましい。これにより、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図ることができる。一方で、硬化剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがとくに好ましい。これにより、電子部品の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。また、硬化剤の含有量をこのような範囲に制御することによって得られる成形体の反り抑制に寄与することが可能である。
【0053】
[硬化促進剤]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含むことができる。
上記硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂と硬化剤との架橋反応を促進させるものであればよく、一般の熱硬化性樹脂組成物に使用するものを用いることができる。
【0054】
本実施形態において、硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、前記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
【0055】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0056】
【化1】
【0057】
上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R、R、RおよびRは芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1~3の数、zは0~3の数であり、かつx=yである。
【0058】
一般式(6)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0059】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0060】
【化2】
【0061】
上記一般式(7)において、Pはリン原子を表す。Rは炭素数1~3のアルキル基、Rはヒドロキシル基を表す。fは0~5の数であり、gは0~3の数である。
【0062】
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0063】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0064】
【化3】
【0065】
上記一般式(8)において、Pはリン原子を表す。R10、R11およびR12は炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R13、R14およびR15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。
【0066】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0067】
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0068】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0069】
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0070】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0071】
【化4】
【0072】
上記一般式(9)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R16、R17、R18およびR19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中R20は、基YおよびYと結合する有機基である。式中R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYは、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。R20、およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y、Y、YおよびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。Zは芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0073】
一般式(9)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0074】
また、一般式(9)において、R20は、YおよびYと結合する有機基である。同様に、R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にYおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
このような一般式(9)中の-Y-R20-Y-、およびY-R21-Y-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノール、1,1'-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0076】
また、一般式(9)中のZは、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0077】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0078】
本実施形態において、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全体に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることがとくに好ましい。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形時における硬化性を効果的に向上させることができる。
【0079】
一方で、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、成形時における流動性の向上を図ることができる。
【0080】
[カップリング剤]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、さらにカップリング剤を含むことができる。
上記カップリング剤は、メルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0081】
上記エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
また、上記アミノシランとしては、例えば、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランとしては、2級アミノ基を有してもよい。
【0083】
また、上記メルカプトシランとしては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。
【0084】
これらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0085】
本実施形態において、カップリング剤として、メルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される一種以上を含むことにより、熱硬化性樹脂組成物の粘度を最適にすることにより、金型成形性を向上させることができる。
【0086】
連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、2級アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0087】
上記カップリング剤の含有量の下限値としては、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物のフロー流動長を長くすることができるので、射出成形性を向上させることができる。一方で、カップリング剤の含有量の上限値としては、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、良好な防錆性を得ることができる。
【0088】
(その他の成分)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、たとえば、離型剤、難燃剤、イオン捕捉剤、着色剤、低応力剤および酸化防止剤等の添加剤を含有することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
上記離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックスや酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0090】
上記難燃剤は、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
上記イオン捕捉剤は、ハイドロタルサイト類またはマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0091】
上記着色剤は、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
上記低応力剤は、ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0092】
また、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記着色剤として用いるカーボンブラックなどのカーボンを含有しない構成とすることができる。これにより、めっき付き特性を向上させることができる。
【0093】
[熱硬化性樹脂組成物の特性]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の特性について説明する。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物のスパイラルフロー流動長の下限値は、例えば、50cm以上であり、好ましくは55cm以上であり、より好ましくは60cm以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性を優れたものとすることができ、その成形性を向上させることができる。上記スパイラルフロー流動長の上限値は、特に限定されないが、例えば、600cm以下としてもよい。
【0094】
本実施形態において、上記スパイラルフロー流動長は、EMMI-1-66法に従い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で測定することができる。
【0095】
[熱硬化性樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、上記熱硬化性樹脂組成物の各成分を、公知の手段で混合することにより混合物を得る。さらに、混合物を溶融混練することにより、混練物を得る。混練方法としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。冷却した後、混練物を所定の形状とすることができる。
【0096】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の形状としては、例えば、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状等の所定の形状を有していてもよい。これにより、トランスファー成形、射出成形、および圧縮成形等の公知の成形方法に適する熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0097】
本実施形態において、粉粒状の熱硬化性樹脂組成物とは、得られた混練物を粉砕した粉砕物であり、顆粒状の熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂組成物の粉末(粉粒状の混練物)同士を固めた凝集体または公知の造粒法で得られた造粒物であり、タブレット状の熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂組成物を高圧で打錠成形することによって所定形状を有するように造形された造形体であり、シート状の熱硬化性樹脂組成物とは、例えば、枚葉状または巻き取り可能なロール状を有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜であることを意味する。
本実施形態において、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状の、熱硬化性樹脂組成物は、半硬化状態(Bステージ状態)であってもよい。
【0098】
[成形品]
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形やトランスファー成形などの金型形成が挙げられる。このような成形方法を使用することにより、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える樹脂成形品を製造することができる。
本実施形態における樹脂成形品は、三次元構造を有していれば特に形状は限定されないが、一部に曲面を有していてもよい。
【0099】
得られた硬化物の誘電率は、受信感度を向上させる観点から、1MHzで5以上が好ましく、8以上がより好ましい。同様に、得られた硬化物の誘電正接は、電気信号の誘電損失を低減する観点から、1MHzで、0.05以下が好ましい。より好ましいのは0.02以下である。
【0100】
三次元成形回路部品(MOLDED INTERCONNECT DEVICE(以下、「MID」と呼称する))は、三次元形状、上記樹脂成形品、三次元回路の3要素を有するものであり、例えば、三次元構造の樹脂成形品の表面に金属膜で回路形成された部品である。具体的には、上記三次元成形回路部品は、例えば、三次元構造を有する樹脂成形品と、この樹脂成形品の表面に形成された三次元回路と、を備えることができる。このような三次元成形回路部品(MID)を使用することにより、空間を有効活用でき、部品点数の削減や軽薄短小化が可能である。
【0101】
本実施形態のLDSとは、MIDの製造方法の一つであり、活性エネルギー線により、LDS添加剤を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物(三次元構造の樹脂成形品)の表面に金属核を生成し、その金属核をシードとして、例えば無電解めっき処理等により、エネルギー線照射領域にめっきパターン(配線)を形成することができる。
【0102】
本実施形態において、MIDの製造工程は、LDSに用いる熱硬化性樹脂組成物の作製、この熱硬化性樹脂組成物の成形、得られた樹脂成形品に対する活性エネルギー線の照射、及びめっき処理による回路形成を含むことができる。なお、めっき処理前に表面洗浄工程を追加してもよい。
【0103】
本実施形態において活性エネルギー線としては、例えば、レーザーを用いることができる。レーザーは、例えば、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではないが、例えば、200nm~12000nmである。この中でも、好ましくは248nm、308nm、355nm、532nm、1064nmまたは10600nmを使用してもよい。
【0104】
上記めっき処理としては、電界めっきまたは無電解メッキのいずれを用いてもよい。上述のレーザーが照射された領域に、めっき処理を施すことにより、回路(めっき層)を形成することができる。めっき液としては、特に定めるものではなく、公知のめっき液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているめっき液を用いてもよい。
【0105】
本実施形態において、上記樹脂成形品(熱硬化性樹脂組成物の硬化物)は、最終製品に限らず、複合材料や各種部品も含むことができる。上記樹脂成形品は、携帯電子機器、車両および医療機器の部品や、その他の電気回路を含む電子部品、半導体封止材ならびに、これらを形成するための複合材料として用いることができる。また、上記MIDとしては、携帯電話やスマートフォンの内臓アンテナ、車載アンテナ、センサー、半導体装置に適用することもできる。本発明の効果の観点から、上記MIDは、携帯電話やスマートフォンの内臓アンテナ、車載アンテナ等に好適に用いることができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0107】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に、実施例、比較例で用いた成分を示す。
【0108】
(無機充填材)
・高誘電性無機充填剤1:チタン酸バリウム(日本化学工業株式会社製、パルセラムBT-UP-2、粒径D50=2μm、粒径D90=2.8μm、比誘電率(1MHz)=1500、比表面積=0.8m/g、形状:破砕状、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量:13質量%)
・高誘電性無機充填剤2:アルミナ(株式会社マイクロン製、AX3-20R、粒径D50=4μm、粒径D90=10μm、比表面積=0.6m/g、比誘電率(1MHz)=8.9、形状:球状、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量:14質量%)
・無機充填材3:溶融球状シリカ(株式会社マイクロン製、TS-6026、粒径D50=9μm、円形度0.96以上)
・無機充填材4:溶融球状シリカ(株式会社アドマテックス製、SC-2500-SQ、ヘキサメチルジシラザン表面処理、粒径D50=0.5μm)
【0109】
(非導電性金属化合物)
・非導電性金属化合物1:銅クロム酸化物(アサヒ化成工業社製、Black 3702、粒径D50=0.8μm)
【0110】
(熱硬化性樹脂)
・熱硬化性樹脂1: ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000K)
【0111】
(硬化剤)
・硬化剤1:2-ヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒドとフェノールの反応生成物(エア・ウォーター社製、HE910-20)
【0112】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083)
【0113】
(離型剤)
・離型剤1:カルナバワックス(東亜化成社製、TOWAX-132)
【0114】
(触媒)
・触媒1:テトラフェニルフォスフォニウム 4,4'-スルフォニルジフェノラート
・触媒2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
【0115】
(添加剤)
・低応力剤1:カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(宇部興産社製、CTBN1008SP)
・低応力剤2:シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、FZ-3730)
【0116】
[実施例1~4、比較例1]
下記の表1に示す配合量の各原材料を、常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して、粉粒状の熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、高圧で打錠成形することによってタブレット状の熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物について、以下のスパイラルフローの評価を行った。
【0117】
(スパイラルフロー)
スパイラルフロー流動長は、得られた熱硬化性樹脂組成物を使用し、EMMI-1-66法に従い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で測定した。
【0118】
(Dk:誘電率、Df:誘電正接)
実施例1~4、比較例1の熱硬化性樹脂組成物をタブレット状に打錠したのち、持ち出し金型を用いたトランスファー成型を行い、φ50mmの硬化物を得た。
得られた硬化物について、JIS C2565に準じ1MHzでの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)をQメーターで測定した。
【0119】
【表1】
【0120】
表1の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化物は、誘電率が高くかつ誘電正接が低いことから誘電特性に優れていることが明らかとなった、さらに、得られた硬化物に三次元回路が形成された成形品を含むアンテナ等は受信感度に優れており、アンテナ等を小型化・軽量化できることが推察された。