(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030233
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】流量推定装置及び流量推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20220210BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220210BHJP
G06F 17/10 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G01F1/00 H
G06T7/00 350C
G06F17/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134077
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(71)【出願人】
【識別番号】507060549
【氏名又は名称】エバ・ジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516256294
【氏名又は名称】株式会社コンピュータマインド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 守正
(72)【発明者】
【氏名】大村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕考
(72)【発明者】
【氏名】植松 佑太
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高良 洋平
(72)【発明者】
【氏名】八重森 洋毅
(72)【発明者】
【氏名】古川 拓之介
【テーマコード(参考)】
2F030
5B056
5L096
【Fターム(参考)】
2F030CA02
2F030CE02
2F030CE04
2F030CE09
2F030CE32
5B056BB26
5L096CA05
5L096CA17
5L096DA02
5L096GA08
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、遠隔で、放流口からの流量を精度よく計測することを目的とする。
【解決手段】画像取得部122が、水を放流している放流口を含む所定範囲を表す画像であって、各画素が、特定の第1波長の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、特定の第2波長の光の反射率を表す画素値を有する第2画像と、を取得する。計算部124が、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する。そして、推定部126が、各画素について計算された計算値を画素値とする計算画像と、水の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、水の流量を推定する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の液体を放流している放流口を含む所定範囲を表す画像であって、各画素が、特定の第1波長の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、特定の第2波長の光の反射率を表す画素値を有する第2画像と、を取得する画像取得部と、
各画素について、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する計算部と、
各画素について計算された計算値を画素値とする計算画像と、前記液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定する推定部と、
を含む流量推定装置。
【請求項2】
前記計算値は、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との差分を、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との和で除した値である請求項1記載の流量推定装置。
【請求項3】
前記第1波長は、前記液体の流量を変化させたときの光の反射率の変化が小さくなる波長であり、
前記第2波長は、前記液体の流量を変化させたときの光の反射率の変化が大きくなる波長である請求項1又は2記載の流量推定装置。
【請求項4】
前記推定モデルは、CNN(Convolution Neural Network)である請求項1~請求項3の何れか1項記載の流量推定装置。
【請求項5】
前記推定モデルは、形状が異なる複数の前記放流口を含む複数の画像の各々から計算した前記計算画像と、予め測定された、複数の前記放流口の各々からの前記液体の流量とを含む学習データから予め学習されたものである請求項1~請求項4の何れか1項記載の流量推定装置。
【請求項6】
コンピュータを、
所定の液体を放流している放流口を含む所定範囲を表す画像であって、各画素が、特定の第1波長の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、特定の第2波長の光の反射率を表す画素値を有する第2画像と、を取得する画像取得部、
各画素について、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する計算部、及び
各画素について計算された計算値を画素値とする計算画像と、前記液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定する推定部
として機能させるための流量推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量推定装置及び流量推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光を用いて流量を測定する方法が知られている(特許文献1)。この方法では、まず、加熱部により、流路内を流れる流体を加熱する。ついで、加熱位置の下流側において、第1検出部の発光部から流体に対して光を照射する。流体を透過した光を、受光部で受光する。ついで、受光した光の吸光度スペクトルの変化を検出する。この変化に基づいて、加熱流体の到着時間を知ることができる。さらに、第2検出部により、同様の動作に基づいて、加熱流体の到着時間を検出する。第1・第2検出部で検出された、加熱流体の到着時間に基づいて、加熱流体の流速または流量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放流口より流出している液体については、放流口に通じる配管に流量計を設置する、または流出後の液体を容器等で計量してその流量を測定する必要がある。しかし、特に自然流出している湧水等については、流量が多い場合や流出口に物理的に近づくことが出来ない場合、その流量を計測するのが難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、遠隔で、放流口からの流量を精度よく計測することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流量推定装置は、所定の液体を放流している放流口を含む所定範囲を表す画像であって、各画素が、特定の第1波長の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、特定の第2波長の光の反射率を表す画素値を有する第2画像と、を取得する画像取得部と、各画素について、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する計算部と、各画素について計算された計算値を画素値とする計算画像と、前記液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定する推定部と、を含んで構成されている。
【0007】
本発明に係る流量推定プログラムは、コンピュータを、所定の液体を放流している放流口を含む所定範囲を表す画像であって、各画素が、特定の第1波長の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、特定の第2波長の光の反射率を表す画素値を有する第2画像と、を取得する画像取得部、各画素について、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する計算部、及び各画素について計算された計算値を画素値とする計算画像と、前記液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定する推定部として機能させるためのプログラムである。
【0008】
本発明によれば、画像取得部が、所定の液体を放流している放流口を含む所定範囲を表す画像であって、各画素が、特定の第1波長の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、特定の第2波長の光の反射率を表す画素値を有する第2画像と、を取得する。計算部が、各画素について、前記第1画像の画素値と前記第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する。そして、推定部が、各画素について計算された計算値を画素値とする計算画像と、前記液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定する。
【0009】
このように、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いて計算された計算値を画素値とする計算画像と、液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定することにより、遠隔で、放流口からの流量を精度よく計測することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の流量推定装置及び流量推定プログラムによれば、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いて計算された計算値を画素値とする計算画像と、液体の流量を推定するための予め学習された推定モデルとに基づいて、前記液体の流量を推定することにより、遠隔で、放流口からの流量を精度よく計測することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】流量毎の光の波長と反射率との関係を示すグラフである。
【
図2】水流を対象としたNDSI画像の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る学習装置及び流量推定装置を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る学習装置及び流量推定装置のコンピュータを示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る学習装置のコンピュータを示す機能ブロック図である。
【
図6】各波長のスペクトル画像の例を示す図である。
【
図7】流量毎の光の波長と正規化された反射率との関係を示すグラフである。
【
図8】(A)NDSI画像の例を示す図、及び(B)NDSI部分画像の例を示す図である。
【
図9】推定モデルであるCNNの構成例を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る流量推定装置のコンピュータを示す機能ブロック図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る学習装置の学習処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態に係る流量推定装置の流量推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態では、既知の流量の排水を行っている放流口に対して、マルチスペクトルカメラにて撮影を行う。マルチスペクトルカメラより得られたNDSI(Normalized Difference Spectral Index)画像を、流体の濃度分布情報として取得する。
【0014】
得られたNDSI画像に対して閾値の設定などの画像処理を施すことにより、放流口の位置を同定する。予め定められた流量に対する放流口周辺の部分画像を切り出した上でCNN(Convolution Neural Network)に入力することにより、NDSI値と流量とを関連付けるように、CNNを学習する。
【0015】
未知の流量に対する放流口周辺のNDSI部分画像を取得し、学習されたCNNを用いて、その流量を推定する。RGBカメラによって得られた映像上に、放流口の位置および流量をリアルタイムで表示する。
【0016】
<流量を推定する原理の説明>
光は波であり、粒子でもある。光を波として捉えた時に、この波の種類に応じて、物体の色の見え方は変化し、例えば、可視光線の中で波の周期が長い光を赤色、短い光は紫色として人間は認識する。この波長を分析することで、物体の特性や状態を解明することができる。
【0017】
この波の周期の違いは、「波長」と呼ばれ、その波長の違いにより光の種類が区別される。波長を表す単位は「nm(10億分の1メートル)」として表現でき、人間が見える可視光線は380nm付近~780nm付近の領域を指す。
【0018】
この波長を細かく分析する手法を「分光」と呼び、分光することで、物体の特性や状態を詳細に分析することができる。その分光によって分けられた光の要素は「スペクトル」と呼ばれ、分光分析はスペクトル分析とも呼ばれている。
【0019】
分光により、物体が持つ固有のスペクトルを分析することで、人間の目では評価困難な物質の特性や状態を評価することができる。
【0020】
例えば、人間の目ではまったく違いがわからない、樹脂、油、粉末の種類を識別することが可能である。そのため、このスペクトル技術は、分野・業界を問わず、あらゆる場面で活用されている。
【0021】
いま、コンクリートの表面に一定の水深(=流量)を持つ水の反射率スペクトルを考える。流量が0の時は水深が存在しないのでそのスペクトル特性はコンクリートのものと等しいが、水深が大きくなるにしたがって特に水の吸光光度付近の波長(λ
2)において顕著に下がっていく。ただし、水深の変化に対して反射率の変化が比較的小さな波長(λ
1)も存在する(
図1参照)。
【0022】
ここで、各流量におけるスペクトルをλ1の反射率で正規化(λ1における反射率=1.0とし、他の波長における反射率をこの値の比率とする)し、λ1とλ2における正規化された反射率の差分を用いて、NDSI値を計算する。
【0023】
また、下向きの蛇口から水が流れている状態を考える。
【0024】
蛇口から出る水流は鉛直軸の回りに軸対象、つまり水流の水平断面は円であるとする。また、蛇口から下方向に距離x(cm)の位置における水流の半径をr(cm)とする。
【0025】
蛇口の出口の内径をr0(cm)、そこでの流速をv0(cm/s)とし、重力の効果だけを考えた単純なモデルを解くと、半径rはxの関数として次のように表すことができる。
【0026】
【0027】
ただし、gは重力加速度(=9.8m/s2)とする。
【0028】
今、流量Qは断面積πr2に流速v0を掛け合わせたものであり、蛇口の流量Qを変化させない限り、高さxによらず一定である。蛇口の流量Qを変化させた場合、それに伴い半径Rも変化する。
【0029】
この水流に対してスペクトルカメラにより撮影された画像からNDSI値からなるNDSI画像を取得した場合、半径rはカラーコンターの色および範囲で示される(
図2参照)。また、半径rの高さ方向の変化率は、流量Qとの相関がある。従って、水平・鉛直方向におけるNDSI値の積分値は流量Qと相関がある。
【0030】
また、xが大きくなるほど重力加速度の影響により流速が大きくなり、水の流れは乱流に近づく。このとき、水流の形状は不定形となり、流量Qとの相関が取りづらくなる。従って、蛇口に近い一定範囲の積分値の方が、流量Qとの相関性が高い。この相関性に着目し、機械学習により既知の流量QとNDSI画像とを関連付けることにより、下向きに流れる水の未知流量の予測が可能となる。また、この理屈に従うと、流出口の形状が違った場合でも流量が等しい場合、例えば流速がほとんど0である流出口直下においてはカラーコンターの積分値が等しくなると予想される。よって、流出口の形状に依存せず未知流量の予測が可能であると考えられる。
【0031】
<本発明の実施の形態の学習装置の構成>
図3に示すように、本発明の実施の形態に係る学習装置100は、RGBカメラ40と、マルチスペクトルカメラ50と、コンピュータ60とを備えている。
【0032】
図4に示すように、コンピュータ60は、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。
【0033】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する学習処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0034】
本実施の形態におけるコンピュータ60を、学習処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図5に示すようになる。コンピュータ60は、入力部10及び演算部20を備えている。
【0035】
入力部10は、マルチスペクトルカメラ50によって撮影された、水を放流している放流口を含むマルチスペクトル画像と、当該水の流量とのペアである学習データを、入力として受け付ける。この水の流量は、流量計などを用いて計測されたデータである。本実施の形態では、入力部10は、形状が異なる複数の放流口を含む複数のマルチスペクトル画像の各々について、学習データを受け付ける。例えば、マルチスペクトル画像として、
図6に示すような、各波長のスペクトル画像を受け付ける。
【0036】
演算部20は、学習データ取得部22、計算部24、学習部26、及びモデル記憶部28を備えている。
【0037】
学習データ取得部22は、各学習データについて、当該学習データのマルチスペクトル画像から、各画素が、第1波長λ1の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、第2波長λ2の光の反射率を表す画素値を有する第2画像とを取得する。ここで、第1波長λ1は、水の流量を変化させたときの光の反射率の変化が小さくなる波長であり、第2波長λ2は、水の流量を変化させたときの光の反射率の変化が大きくなる波長である。
【0038】
例えば、上記
図1に示すようなスペクトル特性から、水の流量を変化させたときの光の反射率の変化が小さくなる第1波長λ
1と、水の流量を変化させたときの光の反射率の変化が大きくなる波長である第2波長λ
2とを、計算処理により自動で、又は人手で決定する。
【0039】
計算部24は、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する。具体的には、計算値は、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を、第1画像の画素値と第2画像の画素値との和で除した値である。
【0040】
例えば、
図7に示すような、第1波長λ
1の光の反射率で正規化した第1波長λ
1の光の反射率(すわなち、1)と、第1波長λ
1の光の反射率で正規化した第2波長λ
2の光の反射率とを用いて、各画素について、以下の式に従って、計算値NDSIを計算する。
【0041】
【0042】
ただし、Iλ1は、第1画像の画素値で第1画像の画素値を正規化された値(すわなち、1)であり、Iλ2は、第2画像の画素値を、第1画像の画素値で正規化した値である。
【0043】
これによって、
図8(A)に示すような、各画素の計算値NDSIからなるNDSI画像を生成する。なお、NDSI画像が、計算画像の一例である。
【0044】
学習部26は、得られたNDSI画像に対して閾値処理などの画像処理を施すことにより、放流口の位置を同定し、NDSI画像から、放流口の位置周辺のNDSI部分画像(
図8(B)参照)を切り出す。
【0045】
学習部26は、各学習データについて得られたNDSI部分画像と水の流量との組み合わせに基づいて、放流口からの水の流量を推定するための推定モデルを学習する。
【0046】
具体的には、
図9に示すような、NDSI部分画像を入力とし水の流量を出力するCNN(Convolution Neural Network)を、推定モデルとして学習する。
【0047】
図9では、CNNが、第1畳み込み層、第1プーリング層、第2畳み込み層、第2プーリング層、全結合層、及び出力層を含んで構成されている例を示している。
【0048】
モデル記憶部28は、学習部26により学習された推定モデルを記憶している。
【0049】
<本発明の実施の形態の流量推定装置の構成>
図3に示すように、本発明の実施の形態に係る流量推定装置150は、RGBカメラ40と、マルチスペクトルカメラ50と、コンピュータ160とを備えている。
【0050】
図4に示すように、コンピュータ160は、コンピュータ60と同様に、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。HDD18には、後述する流量推定処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0051】
本実施の形態におけるコンピュータ160を、流量推定処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図10に示すようになる。コンピュータ160は、入力部110、演算部120、及び出力部130を備えている。
【0052】
入力部110は、マルチスペクトルカメラ50によって撮影された、水の流量が未知の放流口を含むマルチスペクトル画像を、入力として受け付ける。
【0053】
演算部120は、画像取得部122、計算部124、及び推定部126を備えている。
【0054】
画像取得部122は、入力されたマルチスペクトル画像から、各画素が、第1波長λ1の光の反射率を表す画素値を有する第1画像と、各画素が、第2波長λ2の光の反射率を表す画素値を有する第2画像とを取得する。
【0055】
計算部124は、計算部24と同様に、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いた計算値を計算する。具体的には、第1波長λ1の光の反射率で正規化した第1波長λ1の光の反射率と、第1波長λ1の光の反射率で正規化した第2波長λ2の光の反射率とを用いて、計算値NDSIを計算し、NDSI画像を生成する。
【0056】
推定部126は、得られたNDSI画像に対して閾値処理などの画像処理を施すことにより、放流口の位置を同定し、NDSI画像から、放流口の位置周辺のNDSI部分画像を切り出す。推定部126は、得られたNDSI部分画像を、学習装置100により学習された推定モデルに入力して、推定モデルの出力に基づいて、放流口からの水の流量を推定する。
【0057】
出力部130は、RGBカメラ40によって得られた映像上に、推定部126により同定された放流口の位置及び推定された流量をリアルタイムで表示する。
【0058】
<学習装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る学習装置100の動作について説明する。
【0059】
まず、入力部10によって、形状が異なる複数の放流口を含む複数のマルチスペクトル画像の各々についての学習データを含む複数の学習データを受け付ける。
【0060】
そして、学習装置100のコンピュータ60によって、
図11に示す学習処理ルーチンが実行される。
【0061】
ステップS100において、学習データ取得部22は、各学習データについて、当該学習データのマルチスペクトル画像から、第1波長λ1の第1画像と第2波長λ2の第2画像とを取得する。
【0062】
ステップS102において、計算部24は、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いた計算値NDSIを計算し、各画素の計算値NDSIからなるNDSI画像を生成する。
【0063】
ステップS104において、学習部26は、得られたNDSI画像に対して閾値処理などの画像処理を施すことにより、放流口の位置を同定し、NDSI画像から、放流口の位置周辺のNDSI部分画像を切り出す。
【0064】
そして、学習部26は、各学習データについて得られたNDSI部分画像と液体の流量との組み合わせに基づいて、液体の流量を推定するための推定モデルを学習し、学習した推定モデルを、モデル記憶部28に格納する。
【0065】
<流量推定装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る流量推定装置150の動作について説明する。
【0066】
まず、入力部110によって、マルチスペクトルカメラ50によって撮影された、水の流量が未知の放流口を含むマルチスペクトル画像を、入力として受け付ける。そして、流量推定装置150のコンピュータ160によって、
図12に示す流量推定処理ルーチンが実行される。
【0067】
ステップS110において、画像取得部122は、入力されたマルチスペクトル画像から、第1波長λ1の第1画像と第2波長λ2の第2画像とを取得する。
【0068】
ステップS112では、計算部124は、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いて計算値NDSIを計算し、NDSI画像を生成する。
【0069】
ステップS114では、推定部126は、得られたNDSI画像に対して閾値処理などの画像処理を施すことにより、放流口の位置を同定し、NDSI画像から、放流口の位置周辺のNDSI部分画像を切り出す。そして、推定部126は、得られたNDSI部分画像を、学習装置100により学習された推定モデルに入力して、放流口からの水の流量を推定する。
【0070】
ステップS116では、出力部130は、RGBカメラ40によって得られた映像上に、推定部126により同定された放流口の位置及び推定された流量をリアルタイムで表示する。
【0071】
<実験例>
放流口の直下部分を表すNDSI部分画像を入力とし、第1波長λ1を、波長1100nmとし、第2波長λ2を、1400nmとした場合における、流量推定装置150を用いた流量推定の実験例について説明する。閾値を50とした。
【0072】
図13に、正解の水の流量と、流量の推定結果とを比較した実験結果を示す。
図13では、横軸をNDSI積算値とし、縦軸を流量とし、流量の推定結果をプロットし、正解の水の流量を実線で示している。放流口の水の流量を、精度よく推定できていることがわかる。
【0073】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る流量推定装置によれば、各画素について、第1画像の画素値と第2画像の画素値との差分を用いて計算された計算値NDSIを画素値とするNDSI画像と、水の流量を推定するための予め学習されたCNNである推定モデルとに基づいて、水の流量を推定することにより、遠隔で、放流口からの流量を精度よく計測することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0075】
例えば、上記の実施形態では、学習装置と流量推定装置とを別々の装置として構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。学習装置と流量推定装置とを一つの流量推定装置として構成してもよい。
【0076】
また、放流口からの水の流量を推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。水以外の所定の液体の流量を推定する場合に、本発明を適用してもよい。
【0077】
また、放流口の形状が異なる複数の学習データを用いて推定モデルを学習する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。推定対象の放流口の形状が決まっている場合には、推定対象の放流口と形状が対応する複数の学習データを用いて推定モデルを学習してもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、人工の放流口の水の量を推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、自然の放流口の水の量を推定するようにしてもよい。例えば、滝の流量や、トンネル工事における切羽面の湧き水の流量を推定するようにしてもよい。
【0079】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10、110 入力部
20、120 演算部
22 学習データ取得部
24、124 計算部
26 学習部
28 モデル記憶部
50 マルチスペクトルカメラ
60、160 コンピュータ
100 学習装置
122 画像取得部
126 推定部
130 出力部
150 流量推定装置