IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社久保田鉄工所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030250
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20220210BHJP
   H02K 1/14 20060101ALI20220210BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H02K1/20 Z
H02K1/14 Z
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134102
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】392008437
【氏名又は名称】株式会社久保田鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直丈
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD12
5H601DD18
5H601DD30
5H601DD42
5H601GA02
5H601GA22
5H601GB13
5H601GB23
5H601GB34
5H601GB48
5H601GC02
5H601GC12
5H601GC22
5H601GE17
5H601JJ02
5H601KK26
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA01
5H621GA04
5H621HH01
5H621JK11
(57)【要約】
【課題】アキシャルギャップモータの軽量化を図りながら、効率を高め、さらに低コスト化も実現する。
【解決手段】ステータ20は、回転中心線と直交する方向に延びるバックヨーク板部20aと、バックヨーク板部20aの一方の側面から板厚方向に突出し、コイル21が巻装される柱状部20bとを備えている。柱状部20bの内部に空洞部S3が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ筐体に固定されたステータ及び当該ステータに巻装されたコイルと、回転体に固定された磁石及びバックヨークとを備えたアキシャルギャップモータにおいて、
前記ステータは、回転中心線と直交する方向に延びるバックヨーク板部と、当該バックヨーク板部の一方の側面から板厚方向に突出し、前記コイルが巻装される柱状部とを備え、
前記バックヨーク板部には、前記柱状部に形成された空洞部に連通する連通孔が当該バックヨーク板部を厚み方向に貫通するように形成され、
前記連通孔は、前記バックヨーク板部の他方の側面に開口していることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記連通孔は、前記バックヨーク板部の他方の側面に近づくほど拡径することを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記バックヨーク板部には、前記回転中心線を通る貫通孔が形成されていることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記柱状部の突出方向先端部は閉塞されるとともに、前記磁石に対向するように配置されていることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のアキシャルギャップモータにおいて、
複数の前記柱状部が前記回転中心線の周方向に互いに間隔をあけて設けられ、
前記柱状部の前記回転中心線と直交する方向の断面形状は、径方向内側へ行くほど幅が狭くなっており、
前記空洞部の前記回転中心線と直交する方向の断面形状は、径方向内側へ行くほど幅が狭くなっていることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動ウォーターポンプ等に設けられるアキシャルギャップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1、2に開示されている電動ウォーターポンプは、回転動作により水の吸入・吐出を行うインペラと、当該インペラを回転させるアキシャルギャップモータとを備えている。アキシャルギャップモータは、ハウジングに固定されたステータ及び当該ステータに巻装されたコイルと、インペラに固定された磁石及びバックヨークとで構成されており、コイルと、磁石及びバックヨークとが軸方向に対向するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110593号公報
【特許文献2】特開2018-135797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に車両等に搭載されるアキシャルギャップモータにおいては軽量化の要求が強い。アキシャルギャップモータを構成する部材の中で特に重い部材として挙げられるのはステータであり、このステータを軽量化することでアキシャルギャップモータ全体の重量を削減できると考えられる。しかし、ステータは効率を高める上で重要な部材であり、安易に小型化ないし軽量化すると、アキシャルギャップモータの効率の低下を招くおそれがあった。
【0005】
また、上述したように軽量化が求められる一方で、アキシャルギャップモータの効率向上の要求も強く、軽量化と効率向上の相反する要求を高い次元で両立させるのが困難であった。さらに、アキシャルギャップモータの低コスト化の要求も強い。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アキシャルギャップモータの軽量化を図りながら、効率を高め、さらに低コスト化も実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、ステータの磁界通路となる断面のうち、所定領域を縮小することによって磁界密度を向上させるようにした。
【0008】
第1の発明は、モータ筐体に固定されたステータ及び当該ステータに巻装されたコイルと、回転体に固定された磁石及びバックヨークとを備えたアキシャルギャップモータにおいて、前記ステータは、回転中心線と直交する方向に延びるバックヨーク板部と、当該バックヨーク板部の一方の側面から板厚方向に突出し、前記コイルが巻装される柱状部とを備え、前記バックヨーク板部には、前記柱状部に形成された空洞部に連通する連通孔が当該バックヨーク板部を厚み方向に貫通するように形成され、前記連通孔は、前記バックヨーク板部の他方の側面に開口していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ステータの柱状部にコイルが巻装されることによってステータとコイルとが一体化される。コイルに通電されると磁界が発生する。このとき発生する磁界の方向はコイルの中心線が位置するステータの柱状部の突出方向に沿う方向になるので、柱状部が磁界通路となる。本発明では、柱状部の内部が中空であり、当該柱状部の断面積が縮小されているので、磁界通路断面積が縮小されることになる。この構成により、磁束を柱状部の周囲に集中させることができ、柱状部の磁束密度が向上し、アキシャルギャップモータの効率が向上する。
【0010】
また、柱状部の内部を中空にし、バックヨーク板部に連通孔を形成することで、重量物であったステータが軽量になるとともに、材料の使用量が削減されてステータが安価になる。
【0011】
第2の発明は、前記連通孔は、前記バックヨーク板部の他方の側面に近づくほど拡径することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、連通孔の径がバックヨーク板部の他方の側面に向かって徐々に拡大することになるので、磁界通路断面形状を徐変させることができる。
【0013】
第3の発明は、前記バックヨーク板部には、前記回転中心線を通る貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、バックヨーク板部における回転中心線上に位置する部分は、いわゆるバックヨークとして殆ど機能しない部分である。この回転中心線を通る貫通孔をバックヨーク板部に形成することで、効率を低下させることなく、ステータの更なる軽量化が可能になる。
【0015】
第4の発明は、前記柱状部の突出方向先端部は閉塞されるとともに、前記磁石に対向するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、柱状部の突出方向先端部を磁石に対向させた状態で、当該磁石と対向する部分の面積を広く確保することができる。これにより、効率の低下が抑制される。
【0017】
第5の発明は、複数の前記柱状部が前記回転中心線の周方向に互いに間隔をあけて設けられ、前記柱状部の前記回転中心線と直交する方向の断面形状は、径方向内側へ行くほど幅が狭くなっており、前記空洞部の前記回転中心線と直交する方向の断面形状は、径方向内側へ行くほど幅が狭くなっていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、各柱状部にコイルを巻装して複数のコイルを設ける場合に、コイルを密に配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ステータのコイルが巻装される柱状部の内部を中空にしたので、磁界通路断面を縮小して効率を向上させることができるとともに、アキシャルギャップモータの軽量化を図ることができ、さらに、材料の使用量が削減されて低コスト化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電動ウォーターポンプの正面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】ステータを柱状部の突出方向先端側から見た図である。
図4図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】ステータを柱状部の突出方向と反対側から見た図である。
図6図12におけるインペラ周辺の拡大図である。
図7】スラスト軸受構造の部分拡大断面図である。
図8】モータ筐体のシャフトが挿入される部分周辺を軸方向から見た拡大図である。
図9】スラスト軸受部品を摺動面側から見た図である。
図10】スラスト軸受部品を反摺動面側から見た図である。
図11】シャフトが挿入され、スラスト軸受部品が組み付けられた状態を示す図8相当図である。
図12A】実施形態に係るステータの磁束密度をシミュレーションした結果を示す図である。
図12B】比較例に係るステータの磁束密度をシミュレーションした結果を示す図である。
図13A】実施形態に係るステータの断面の磁束密度をシミュレーションした結果を示す図である。
図13B】比較例に係るステータの断面の磁束密度をシミュレーションした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る電動ウォーターポンプ1の正面図である。電動ウォーターポンプ1は、車両に搭載されている各種機器を冷却する冷却水を所定の経路内で循環させるためのものである。前記各種機器としては、例えば走行用モータ、インバータ回路、エンジン、変速機、空調機器等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、他の機器の冷却水を循環させることもできる。この実施形態の説明では、図1及び図2の上側を電動ウォーターポンプ1の上側といい、図1及び図2の下側を電動ウォーターポンプ1の下側というものとするが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の使用時の姿勢を限定するものではなく、どのような姿勢で電動ウォーターポンプ1を使用してもよい。
【0023】
以下の説明では、本発明を電動ウォーターポンプ1に適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明は、様々な液体や気体を送る電動ポンプに適用することもできる。また、気体を送る電動ポンプは、ブロアーやファン、圧縮機等であってもよい。
【0024】
図2に示すように、電動ウォーターポンプ1は、アキシャルギャップモータ2と、モータ筐体3と、インペラ4と、ハウジング5と、回路基板(制御基板)6と、背面部材7とを備えている。インペラ4はハウジング5内に収容されており、このハウジング5内に収容されたインペラ4がアキシャルギャップモータ2によって所定の方向に回転駆動されるようになっている。
【0025】
(ハウジング5の構成)
ハウジング5は、例えば樹脂材を射出成形してなる射出成形品である。図1に示す正面視においてハウジング5の中央に位置する部分には、図2に示すようにインペラ4の回転中心線方向に突出する吸入管部50が一体成形されている。吸入管部50の先端部(上流端部)には、吸入口50aが開口している。吸入口50aには、図示しない吸入側配管を流通した冷却水が吸入されるようになっている。
【0026】
ハウジング5は、吸入管部50の基端部(下流端部)から径方向に延びるポンプ室形成壁部51を有しており、吸入管部50の突出方向と反対側は略全体が開放された形状となっている。ポンプ室形成壁部51の内方には、吸入管部50の下流端部に連通するポンプ室S1が形成されており、このポンプ室S1内にインペラ4が収容されている。ポンプ室形成壁部51には、吸入管部50の基端部から径方向に離れた部分に膨出部51aが形成されている。膨出部51aは、インペラ4の回転中心線周りに円弧状に延びるように形成されており、その膨出部51aの内方には、ポンプ室S1に連通する流出通路S2が形成されている。
【0027】
図1に示すように、ハウジング5における流出通路S2の下流端部に対応する部分には、吐出管部52が一体成形されている。吐出管部52は、インペラ4の回転中心を中心とする仮想円の接線方向に突出するように形成されている。吐出管部52の基端部(上流端部)は、流出通路S2の下流端部と連通している。吐出管部52の先端部(下流端部)には、吐出口52aが開口している。吐出口52aには、図示しない吐出側配管が連通しており、吐出管部52を流通した冷却水が吐出側配管に流入するようになっている。
【0028】
(モータ筐体3の構成)
モータ筐体3は、例えば樹脂材を射出成形してなる射出成形品であり、ハウジング5を開放側から覆うように形成されている。図1に示すように、モータ筐体3の上側は、ハウジング5の上側よりも上方へ突出している。図2に示すように、モータ筐体3は、後述するアキシャルギャップモータ2のステータ20及びコイル21が埋め込まれるステータ埋込部31を有している。ステータ埋込部31は、厚肉な板状をなしており、ハウジング5のポンプ室形成壁部51と対向するように配置されている。ステータ埋込部31と、ハウジング5のポンプ室形成壁部51との間に、上記ポンプ室S1が形成されている。
【0029】
また、モータ筐体3には、ハウジング5のポンプ室形成壁部51の内側に嵌まるように形成された環状部30が設けられている。環状部30は、ステータ埋込部31の周縁部からハウジング5内へ向けて突出するように形成されており、この環状部30の外周面と、ポンプ室形成壁部51の内周面とは互いに密着するようになっている。環状部30の外周面と、ポンプ室形成壁部51の内周面とを密着させることにより、両者間の水密性が確保される。モータ筐体3の外周部には、被締結部54がインペラ4の回転中心線Xの径方向へ突出するように形成されている。各被締結部54には、インペラ4の回転中心線X方向に貫通する締結孔54aが形成されている。
【0030】
環状部30の外周面と、ポンプ室形成壁部51の内周面とを密着、もしくは接着することにより、両者間の水密性及び気密性が確保される。他の接合例として、環状部30とポンプ室形成壁部51とを例えばスピン融着(溶着)することもでき、これにより、ガスケットなどの封止部品とボルト締結を廃止しながら2部品を接合して水密性及び気密性を確保できる。また、融着等することなく、環状部30とポンプ室形成壁部51との間にガスケットなどの封止部品(図示せず)を介在させた状態で、ボルト締結して両者を接合してもよい。環状部30とポンプ室形成壁部51との接合構造は、水密性及び気密性を確保できればよいので、上述した構造以外の接合構造を用いることも可能である。
【0031】
被締結部54の締結孔54aには例えば防振ゴムなどで構成された筒状の弾性材100が装着される。弾性材100の内部には、金属製のカラー101が挿入されている。カラー101の端面にはワッシャ102が当接するように配設されている。この状態でボルトBの軸部を、ワッシャ102及びカラー101に挿入してエンジンE等に締結することで電動ウォーターポンプ1をエンジンE等にフローティングマウントすることができる。この取付構造は一例であり、必要に応じて変更することができる。また、電動ウォーターポンプ1は車体に取り付けてもよい。
【0032】
(アキシャルギャップモータ2の構成)
図2に示すように、アキシャルギャップモータ2は、モータ筐体3に固定されたステータ20及び当該ステータ20に巻装されたコイル21と、インペラ4に固定された磁石22及びバックヨーク23と、モータ筐体3に固定された金属製のシャフト24とを備えている。シャフト24は導電性を有する部材で構成されており、例えば鉄等を挙げることができる。シャフト24の基端側(図2の左側)は、モータ筐体3のステータ埋込部31の中心部に埋め込まれて当該モータ筐体3を構成する樹脂材によって覆われた状態で保持されている。シャフト24の先端側は、ステータ埋込部31からハウジング5内に突出するように配設されており、シャフト24におけるハウジング5内へ突出した部分によってインペラ4を回転可能に支持している。シャフト24の中心線はインペラ4の回転中心線Xとなる。
【0033】
ステータ20及びコイル21は、モータ筐体3を構成する樹脂材によって覆われて当該モータ筐体3と一体化されている。すなわち、ステータ20は、鉄等の金属製の部材からなるものであり、図3図5に示すように、円板状のベース部20aと、該ベース部20aの外周部分からハウジング5内へ向けて突出し、シャフト24周りに等間隔に位置する複数の柱状部20bとを有している。柱状部20bは、ベース部20aの一方の側面(図4における右側に位置する側面)からベース部20aの板厚方向に突出している。
【0034】
ベース部20aの中心部には、シャフト24の基端側が挿通するシャフト挿通孔(貫通孔)20cが形成されている。シャフト挿通孔20cは、回転中心線Xを通っており、ベース部20aの両側面に開口している。シャフト挿通孔20cは、円形にすることができるが、その形状は特に限定されるものではない。
【0035】
ベース部20aにおけるシャフト挿通孔20cの周囲には、複数の肉抜き孔20dが回転中心線Xの周方向に互いに間隔をあけて形成されている。各肉抜き孔20dは、回転中心線Xの周方向に長い円弧状に形成されており、ベース部20aを板厚方向に貫通している。肉抜き孔20dは省略してもよい。
【0036】
各柱状部20bの回転中心線と直交する方向の断面形状は、径方向内側へ行くほど周方向の幅が狭くなっており、具体的には径方向内側に頂点を有する三角形状とされている。従って、例えば図3に示すように、回転中心線Xの周方向に隣合う柱状部20b、20bの互いに対向する側面同士の間隔は、径方向外側から内側まで略等しく設定される。この互いに対向する側面間に、コイル21を構成する線材が位置している。
【0037】
図4及び図5に示すように、各柱状部20bの内部には空洞部S3が設けられている。柱状部20bを肉抜きすることによって空洞部S3を得ることができる。空洞部S3が設けられることで、柱状部20bは中空状をなし、これによりステータ20が軽量になるとともに、ステータ20を構成する材料の使用量を減少させてステータ20の低コスト化を図ることができる。
【0038】
空洞部S3の回転中心線と直交する方向の断面形状は、柱状部20bの断面形状と同様に、径方向内側へ行くほど周方向の幅が狭くなっており、具体的には径方向内側に頂点を有する三角形状とされている。空洞部S3の断面形状と、柱状部20bの断面形状とは略相似形とすることができるが、これに限らず、両者の断面形状を明確に変えてもよい。
【0039】
各柱状部20bはコイル21への通電時に磁界通路となる。具体的には、コイル21への通電時に発生する磁界の方向はコイル21の中心線D(図4に示す)が位置するステータ20の柱状部20bの突出方向に沿う方向になる。本実施形態では、柱状部20bの内部が中空であり、当該柱状部20bの断面積が縮小されているので、磁界通路断面積が縮小されることになる。この構成により、後述するように、磁束を柱状部20bの周囲の部分に集中させて磁束密度を高めることができ、その結果、アキシャルギャップモータ2の効率が向上する。つまり、空洞部S3は、柱状部20bの磁束密度を向上させるための手段の一つである。
【0040】
ベース部20aには、各柱状部20bの空洞部S3に連通する連通孔20eが当該ベース部20aを厚み方向に貫通するように形成されている。連通孔20eは、ベース部20aの他方の側面(図4における左側に位置する側面)に開口している。これにより、空洞部S3は、連通孔20eを介してステータ20の外方に開放されることになるので、空洞部S3を有する柱状部20bの形成が容易に行えるようになる。尚、ステータ20は、例えば圧粉成形によって得ることができるが、その他にも、例えば複数の珪素鋼板を積層した積層構造のものであってもよいし、鋳造品であってもよく、また、これら以外の方法で製造されたものであってもよい。
【0041】
図4に示すように、連通孔20eにおける空洞部S3と連通する側の端部は、当該空洞部S3の断面形状と同じに設定されており、空洞部S3から連通孔20eまで柱状部20bの内面には段差が形成されていない。また、連通孔20eは、ベース部20aの他方の側面に近づくほど拡径している。つまり、連通孔20eの径がベース部20aの他方の側面に向かって徐々に拡大することになるので、磁界通路断面形状を徐変させることができる。
【0042】
柱状部20bの突出方向先端部は閉塞されるとともに、図2に示すように磁石22に対して回転中心線Xの軸方向に対向するように配置されている。柱状部20bの突出方向先端部を閉塞しているので、磁石22と対向する部分の面積を広く確保することができ、これにより、アキシャルギャップモータ2の効率の低下が抑制される。
【0043】
図2に示すように、シャフト24の基端側は、ステータ20のシャフト挿通孔20cに挿通されている。シャフト24の基端側とステータ20とは相対回転することがないように、シャフト24の基端側及びステータ20は、ステータ埋込部31に対して固定されている。
【0044】
ステータ20の各柱状部20bにコイル21が巻装されてコイル21とステータ20とが一体化されている。従って、アキシャルギャップモータ2は複数のコイル21をシャフト24周りに等間隔に備えている。各コイル21の端部には、当該コイル21に電力を供給するための端子21aが設けられており、この端子21aは回路基板6に接続されている。
【0045】
一方、図6に示すように、磁石22及びバックヨーク23は、インペラ4の羽根部41を構成する電磁シールド樹脂材によって覆われてインペラ4と一体化されている。電磁シールド樹脂材は、電磁波をシールドすることが可能な樹脂材であり、従来から周知の材料である。例えばベース樹脂材に導電性炭素繊維を配合することによって得られた電磁シールド樹脂材を使用することができる。例えば、ポリフェニレンサルファイドをベース樹脂とした炭素繊維強化熱可塑性樹脂が好適であるが、これに限られるものではない。
【0046】
磁石22は、例えば樹脂磁石等を用いることができる。磁石22は円板状に形成され、その中心部に、厚み方向に貫通する貫通孔22aを有している。磁石22には、複数のN極部分とS極部分とがシャフト24周りに交互に設けられている。磁石22とステータ20の柱状部20bとの間隔ができるだけ小さくなるように、磁石22のステータ20に対する位置が設定されている。
【0047】
バックヨーク23は、例えば鉄等の金属製の部材で構成されている。バックヨーク23も円板状に形成され、磁石22におけるステータ20と反対側の面に積層されて当該磁石22と一体化されている。バックヨーク23の厚みと磁石22の厚みとは同程度にしてもよいし、異なっていてもよい。バックヨーク23の中心部には、厚み方向に貫通する貫通孔23aが形成されており、このバックヨーク23の貫通孔23aと、磁石22の貫通孔22aとは相互の中心が同軸上(シャフト24の中心線上)に位置するように配置されている。バックヨーク23の外径は磁石22の外径よりも大きく設定してもよいし、同程度に設定してもよい。
【0048】
アキシャルギャップモータ2の回転時、バックヨーク23から電磁波が放射される。具体的には、バックヨーク23における磁石22と反対側の面が主に電磁波放射面となり、この電磁波放射面から放射された電磁波が他の電子機器に影響を及ぼすことが考えられる。特に、本実施形態のように自動車に取り付けられる電動ウォーターポンプ1のアキシャルギャップモータ2では、レイアウトの都合上、アキシャルギャップモータ2と他の電子機器とを十分に離すことができない場合があり、この場合には、アキシャルギャップモータ2から放射される電磁波が他の電子機器に影響を及ぼすおそれがある。
【0049】
本実施形態では、アキシャルギャップモータ2から放射される電磁波を遮蔽するべく、バックヨーク23の電磁波放射面が電磁シールド樹脂材によって覆われており、これによりバックヨーク23がインペラ4と一体化されている。
【0050】
(インペラ4の構成)
インペラ4は、上述した電磁シールド樹脂材を射出成形してなる射出成形品であり、磁石22及びバックヨーク23が内蔵された部材である。インペラ4は、モータ筐体3に固定されたシャフト24に対して回転可能に支持される軸受部40と、複数の羽根部41と、磁石22及びバックヨーク23を覆うカバー部42とが一体成形されたものである。したがって、軸受部40、羽根部41、磁石22及びバックヨーク23は一体となって回転する回転体となる。この実施形態では、羽根部41とは別部材で構成されるとともに当該羽根部41を覆う樹脂製のシュラウド43も備えている。
【0051】
軸受部40は、例えば円筒状部材からなるものであり、シャフト24と同軸上に配置され、当該軸受部40の内方にシャフト24の先端側が相対回転可能に挿通されるようになっている。本実施形態の軸受部40は、導電性を有する部材で構成されている。軸受部40は、例えばカーボン等で構成することができるが、これに限られるものではなく、例えばボールベアリング等で構成することもできる。軸受部40にカバー部42及び羽根部41が固定されている。シャフト24及び軸受部40の両方が導電性部材からなるものであるとともに、軸受部40の内周面がシャフト24の外周面に接触していることから、シャフト24及び軸受部40は導通可能な状態になる。
【0052】
バックヨーク23は、軸受部40の周囲を囲むように配設されている。すなわち、バックヨーク23の貫通孔23a内に軸受部40の基端側が配置されており、バックヨーク23の貫通孔23aの内周面と軸受部40の外周面との間には、羽根部41を構成する電磁シールド樹脂材が介在している。バックヨーク23と軸受部40とは、当該バックヨーク23と当該軸受部40との間に介在された電磁シールド樹脂材によって一体化されている。磁石22も同様に電磁シールド樹脂材によって軸受部40と一体化されている。また、軸受部40は、羽根部41を構成する樹脂材にインサート成形することもできる。
【0053】
電磁シールド樹脂材は導電性を有しており、またシャフト24及び軸受部40も導電性を有しているので、電磁シールド樹脂材が持つ電荷は、軸受部40を介してシャフト24に移動可能になる。シャフト24は、回路基板6のグランドに接続されている。従って電磁シールド樹脂材を回路基板6のグランドに電気的に接続することができる。
【0054】
カバー部42は、バックヨーク23の電磁波放射面を覆うバックヨークカバー部(第1被覆板部)42aと、バックヨーク23及び磁石22の外周面を覆う外周面カバー部(第2被覆板部)42bとを有している。バックヨークカバー部42aと外周面カバー部42bとは一体成形されている。羽根部41とカバー部42とが一体成形されているので、バックヨークカバー部42a及び外周面カバー部42bは、共に電磁シールド樹脂材によって構成されている。カバー部42は、磁石22の側面を覆う磁石カバー部を備えていてもよい。
【0055】
バックヨークカバー部42aは、バックヨーク23の電磁波放射面に沿うように形成された薄板状の部分であり、このバックヨークカバー部42aに羽根部41が一体成形されている。羽根部41は、バックヨークカバー部42aから厚み方向(図6の右側)に突出するように形成されている。この羽根部41が電磁シールド樹脂材で構成されているので、羽根部41によっても電磁波のシールド効果を得ることができる。
【0056】
外周面カバー部42bは、バックヨークカバー部42aの周縁部に連続しており、バックヨーク23及び磁石22の外周面に沿うように形成されている。カバー部42の肉厚は羽根部41の肉厚よりも薄くなっており、外部の冷却水が内部に浸入しない程度の肉厚に設定されている。
【0057】
図2に示すように、インペラ4の軸受部40の先端側には、先端側環状部材46が配設されている。先端側環状部材46にはシャフト24が挿通しており、シャフト24における先端側環状部材46よりも先端側には、止め輪47が設けられている。この止め輪47により、インペラ4がシャフト24の中心線方向に移動するのが抑制されている。
【0058】
(スラスト軸受構造)
図6等に示すように、本実施形態の電動ウォーターポンプ1は、シャフト24に回転可能に支持されたインペラ4の軸受部40に作用するスラスト力を受けつつ、軸受部40の回転を許容するスラスト軸受部品60を備えている。スラスト軸受部品60は、軸受部40の軸方向の端面と摺動可能に配設されている。以下、スラスト軸受部品60を使用したスラスト軸受構造の詳細について説明する。
【0059】
まず、シャフト24の詳細構造について説明する。図6図7に示すように、シャフト24の基端側には、先端側よりも大径に形成された大径部24aが形成されている。大径部24aにおける先端側の端面24bは、回転中心線Xに対して直交しており、回転中心線Xの周方向に連続している。
【0060】
シャフト24における大径部24aよりも先端側の内部には、排出通路24cが形成されている。排出通路24cは、回転中心線X方向に延びており、シャフト24の先端面において開口している。図2に示すように、シャフト24の先端面は、吸入管部50の内部で開口している。この吸入管部50の内部には、インペラ4によって送給される前の液体が流通している。送給される前の液体の圧力は、インペラ4によって送給された液体の圧力よりも低いので、吸入管部50の内部を流通する液体は低圧液体である。つまり、排出通路24cの先端部は低圧液体が流通する部分に連通することになる。
【0061】
シャフト24の大径部24a近傍には、流入孔24dが形成されている。流入孔24dは、シャフト24の外周面に開口し、排出通路24cに達するまで延びている。流入孔24dは、複数設けることができ、この場合、複数の流入孔24dをシャフト24の周方向に互いに間隔をあけて設けることができる。
【0062】
図7に示すように、シャフト24の大径部24aは、モータ筐体3に嵌合するようになっている。モータ筐体3には、シャフト24の大径部24aを囲むように形成された凹部3aが形成されている。凹部3a内には、シャフト24の大径部24aの外周面に接触するOリングCが嵌入されている。
【0063】
モータ筐体3の凹部3aの内周面には、スラスト軸受部品60が収容される収容部3bが設けられている。収容部3bは、凹部3aの深い側であるOリングCが嵌入する部分に比べて大径となっている。図7及び図8における符号3cは、シャフト24の大径部24aよりも基端側が挿入されている孔部を示している。また、図7及び図8における符号3dは、シャフト24の大径部24aが嵌合しているテーパー面部を示している。
【0064】
図8に示すように、収容部3bの内周面には、一対の平面部3f、3fが形成されている。平面部3f、3fは、回転中心線Xを対称の中心とした点対称に位置付けられており、共に、回転中心線Xを中心とした仮想円の接線方向に延びている。各平面部3fには、窪み部3gが形成されている。窪み部3gは回転中心線Xの径方向外方に窪むように形成されている。窪み部3gの周方向の位置と、シャフト24の流入孔24dの周方向の位置とは一致させても、一致させなくてもよい。すなわち、例えば図6図7に示すように、軸受部40の内周面とシャフト24の外周面との間に空間Rが設けられている。この空間Rは軸受部40の回転方向に連続しており、これにより、窪み部3gの周方向の位置と、シャフト24の流入孔24dの周方向の位置とは一致させなくても、流路を形成することができる。空間Rは、軸受部40の内周面に形成された溝で構成することができる。
【0065】
図7に示すように、スラスト軸受部品60は、全体として円形に近い板状をなしており、図9及び図10に示すように、スラスト軸受部品60の中心部にはシャフト24が挿通する挿通孔64が形成されている。図9に示すように、スラスト軸受部品60における軸受部40の端面と摺動する摺動面61は、回転中心線Xと直交する方向に延びている。摺動面61には、回転中心線Xの周方向に延びる円弧状の周方向溝61aが形成されている。この実施形態では、3つの周方向溝61aが回転中心線Xの周方向に互いに間隔をあけて形成されているが、周方向溝61aの数は3つに限られるものではなく、1つであってもよいし、2つまたは4つ以上であってもよい。周方向溝61aは、摺動面61における径方向中央部近傍に位置付けられている。
【0066】
スラスト軸受部品60には、高圧液体を周方向溝61aに導入するための導入孔62が形成されている。すなわち、例えば図2に示すように、吸入管部50から吸い込まれた液体は、矢印Y1方向に流れてインペラ4の羽根部41の間を流通して図6に矢印Y2で示すように径方向外方へ向けて流出し、インペラ4の径方向外方では液体の圧力が吸入管部50内に比べて高くなっている。インペラ4の径方向外方の液体の圧力が高くなっていることから、その液体は、矢印Y3に示すようにモータ筐体3とインペラ4との間に流入して矢印Y4で示すようにスラスト軸受部品60における反摺動面63側に達する。つまり、吸入側よりも高圧の液体はスラスト軸受部品60の反摺動面63側に存在しており、この反摺動面63側に存在している高圧液体をスラスト軸受部品60の摺動面61側に導いて周方向溝61aに導入させるのが導入孔62である。
【0067】
導入孔62は、スラスト軸受部品60の反摺動面63側に開口して摺動面61側まで延び、周方向溝61aに達している。これにより、導入孔62はスラスト軸受部品60を厚み方向に貫通する貫通孔となる。スラスト軸受部品60には、3つの導入孔62が各周方向溝61aに達するように形成されており、1つの周方向溝61aに1つの導入孔62が連通している。導入孔62の数は、周方向溝61aの数と合わせればよいので、3つに限られるものではない。また、1つの周方向溝61aに複数の導入孔62が連通していてもよい。
【0068】
各導入孔62は、周方向溝61aの一端部に達している。これにより、スラスト軸受部品60の反摺動面63側に存在している高圧液体が周方向溝61aの一端部に導入されることになる。周方向溝61aの一端部に導入された高圧液体は、周方向溝61aの他端部へ向けて流通可能になっている。
【0069】
また、各導入孔62は、シャフト24の大径部24aよりも径方向外方に位置付けられている。この場合、各導入孔62の開口の全部がシャフト24の大径部24aよりも径方向外方に位置付けられていてもよいし、当該開口の一部のみがシャフト24の大径部24aよりも径方向外方に位置付けられていてもよい。これにより、導入孔62に高圧液体を確実に流入させることができ、周方向溝61aに流すことができる。尚、スラスト軸受部品60は、シャフト24の端面24bに接しているが、これに限らず、筐体等、他の静止面に接していてもよい。
【0070】
また、インペラ4の回転に対し、周方向溝61aの上流側端部に導入孔62を連通させている。図9を例にすると、インペラ4を左回転させるのが好ましい。
【0071】
周方向溝61a内の高圧液体は、スラスト軸受部品60の摺動面61と、軸受部40の端面との間に流入し、スラスト軸受部品60の摺動面61と軸受部40の端面との間に介在することになる。スラスト軸受部品60の摺動面61と軸受部40の端面との間に介在した液体によって軸受部40がフローティング状態になる。周方向溝61aは軸受部40の周方向に延びているので、軸受部40が高速で回転しても周方向溝61a内の高圧液体は周方向に流動するだけであり、径方向外方へ流出しにくくなる。よって、軸受部40のフローティング状態が維持される。
【0072】
図10に示すように、スラスト軸受部品60の反摺動面63側には、一対の径方向溝63a、63aが当該スラスト軸受部品60の外周面から内周面に亘って径方向に延びるように形成されている。径方向溝63a、63aは、回転中心線Xを対称の中心として点対称となるように位置付けられている。スラスト軸受部品60の反摺動面63側に高圧液体が存在しているので、径方向溝63a、63aには高圧液体が流入する。径方向溝63aの数は、2つに限られるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0073】
径方向溝63aにおけるスラスト軸受部品60の内周面側の端部(内端部)は、当該内周面に開口している。シャフト24の流入孔24dは、軸受部40の内周面とシャフト24の外周面との間にある空間Rに配置されている。径方向溝63aからスラスト軸受部品60の内周面に形成されている窪み部60dを通り、空間Rを経由することで径方向溝63aと流入孔24dの回転方向位置にかかわらず、両者を連通させることができる。これにより、径方向溝63aの内端部、窪み部60dを通って上がってきたごみを、摺動面61に潜り込ませることなく、すぐに流入孔24dに排出させることができる。
スラスト軸受部品60の挿通孔64には、シャフト24の流入孔24dが形成された部分が配置されるようになっている。これにより、径方向溝63aの内端部はシャフト24の流入孔24dを介して排出通路24cと連通する。また、径方向溝63aの内端部は、スラスト軸受部品60の内周面における他の部分に比べて径方向外方に位置するように形成されている。すなわち、図9図10に示すように、スラスト軸受部品60を厚み方向から見たとき、スラスト軸受部品60の内周面における径方向溝63aの内端部に対応する部分が径方向外方へ窪むように形成されている。これにより、径方向溝63aの内端部から液体が流出し易くなる。
【0074】
したがって、径方向溝63aに流入した高圧液体は、径方向溝63aの内端部へ流れた後、シャフト24の流入孔24dから排出通路24cに流入する。排出通路24cは相対的に低圧の液体が存在している吸入管部50の内部に連通しているので、排出通路24c内は径方向溝63a内に比べて低圧になり、これにより、径方向溝63a内の液体が、流入孔24d及び排出通路24cを経て吸入管部50に排出されることになる。尚、排出通路24cから吸入管部50に排出される液体の量は僅かである。
【0075】
また、スラスト軸受部品60の周方向溝61aはスラスト軸受部品60の摺動面61に形成されているので、軸受部40の端面によって閉塞されていて高圧流体の導入量は少なくなる反面、径方向溝63aはシャフト24の内部の排出通路24cに接続されていて高圧流体の流入量は多くなる。したがって、例えば高圧流体に異物が混入していた場合、高圧流体が流れ易い径方向溝63aを流通して排出通路24cから排出されるので、摺動部分への異物の侵入を抑制できる。
【0076】
スラスト軸受部品60の外周面には、一対の平面部60a、60aが形成されている。平面部60a、60aは、回転中心線Xを対称の中心とした点対称に位置付けられており、共に、回転中心線Xを中心とした仮想円の接線方向に延びている。図11に示すように、スラスト軸受部品60をモータ筐体3の収容部3bに収容した状態では、スラスト軸受部品60の平面部60aと、収容部3bの平面部3fとが隙間をあけた状態で互いに対向するように配置される。スラスト軸受部品60の平面部60aと、収容部3bの平面部3fとの隙間は狭く設定されており、これにより、スラスト軸受部品60が回転中心線Xまわりに回転しようとした際に両平面部60a、3fを接触させてスラスト軸受部品60の回転を阻止することができる。
【0077】
径方向溝63aにおけるスラスト軸受部品60の外周面側の端部(外端部)は、平面部60aに開口している。径方向溝63aの外端部と、収容部3bの窪み部3gとは互いに対向している。したがって、高圧液体は、収容部3bの窪み部3gから径方向溝63aの外端部へ流入し易くなる。
【0078】
(ステータの磁束)
図12A及び図13Aは、本実施形態に係るステータ20の磁束密度をシミュレーションした結果を示すものである。図3等に示すステータ20の中央部の形状はシミュレーション上、複雑になるので図12A及び図13Aのシミュレーション形状に反映されていないが、貫通孔が形成されているという点では、図3等に示すステータ20と、図12A及び図13Aのシミュレーション形状は同じである。
一方、図12B及び図13Bは、比較例に係るステータ200の磁束密度をシミュレーションした結果を示すものである。比較例に係るステータ200では、実施形態に係るステータ20と同様なコイル21を有しているが、コイル21が巻装される柱状部の内部は中実構造となっている。また、比較例に係るステータ200では、中心部に貫通孔が形成されていない。
【0079】
図12A及び図13Aに示すように、実施形態に係るステータ20では、コイル21が巻装される柱状部の内部が中空であり、当該柱状部の断面積が縮小されているので、磁界通路断面積が縮小されることになる。この構成により、磁束を柱状部の周囲に集中させることができ、磁束密度が向上していることが分かる。一方、図12B及び図13Bに示す比較例に係るステータ200では、全体として磁束密度が低く、特に柱状部における磁束密度が実施形態のステータ20に比較して大幅に低くなっていることが分かる。比較例では、ステータの磁束密度が低くなっているので、アキシャルギャップモータ2の効率が低くなる。
【0080】
尚、上記シミュレーションの条件としては、アキシャルギャップモータ2の回転数が5000回転/分であり、コイル21に8Aの電流を流している。
【0081】
(電動ウォーターポンプ1の動作)
回路基板6を介してアキシャルギャップモータ2に電力を供給すると、インペラ4がアキシャルギャップモータ2によって回転中心線X周りに回転する。インペラ4が回転すると、冷却水がハウジング5の吸入管部50に吸入されてポンプ室S1内に流入する。ポンプ室S1内に流入した冷却水は、インペラ4の羽根部41によって径方向外方へ流れて流出通路S2に流入する。流出通路S2を流通した冷却水は、吐出管部52から吐出する。
【0082】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、アキシャルギャップモータ2のバックヨーク23の電磁波放射面がインペラ4の羽根部41を構成する電磁シールド樹脂材で覆われているので、電磁波放射面から放射される電磁波が電磁シールド樹脂材によってシールドされる。よって、他の電子部品に対する電磁波の影響が極めて小さくなる。また、バックヨーク23の電磁波放射面を覆う電磁シールド樹脂材は羽根部41を構成する樹脂材であることから、羽根部41と一体化されており、部品点数の増加は抑制される。
【0083】
また、アキシャルギャップモータ2に使用されるスラスト軸受部品60の反摺動面63側の高圧液体が当該スラスト軸受部品60の導入孔62に流入し、周方向溝61aに導入される。周方向溝61aはスラスト軸受部品60の摺動面61に形成されているので、周方向溝61a内の液体はスラスト軸受部品60の摺動面61と軸受部40の端面との間に介在することになる。スラスト軸受部品60の摺動面61と軸受部40の端面との間に介在した液体によって軸受部40がフローティング状態になる。周方向溝61aは軸受部40の周方向に延びているので、軸受部40が高速で回転しても周方向溝61a内の液体は周方向に流動するだけであり、径方向外方へ流出しにくくなる。よって、軸受部40のフローティング状態が維持される。
【0084】
また、ステータ20の柱状部20bにコイル21が巻装されることによってステータ20とコイル21とが一体化され、このコイル21に通電されると磁界が発生する。このとき発生する磁界の方向はコイル21の中心線が位置するステータ20の柱状部20bの突出方向に沿う方向になるので、柱状部20bが磁界通路となる。本実施形態では、柱状部20bの内部が中空であり、当該柱状部20bの断面積が縮小されているので、磁界通路断面積が縮小されることになり、磁束を柱状部20bの周囲に集中させることができ、効率が向上する。
【0085】
また、柱状部20bの内部を中空にすることで、重量物であったステータ20が軽量になるとともに、材料の使用量が削減されてステータが安価になる。
【0086】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0087】
すなわち、上記実施形態では、シャフト24及びスラスト軸受部品60が共にモータ筐体3に固定されているが、これに限らず、シャフト24が回転する構造であってもよいし、スラスト軸受部品60が回転する構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、例えば自動車に搭載される電動ウォーターポンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 電動ウォーターポンプ
2 アキシャルギャップモータ
3 モータ筐体
4 インペラ
5 ハウジング
6 回路基板(制御基板)
20 ステータ
20a ベース部(バックヨーク板部)
20b 柱状部
20c シャフト挿通孔(貫通孔)
20e 連通孔
21 コイル
23 バックヨーク
24 シャフト
24c 排出通路
40 軸受部(回転体)
41 羽根部
42a バックヨークカバー部(第1被覆板部)
42b 外周面カバー部(第2被覆板部)
60 スラスト軸受部品
61 摺動面
61a 周方向溝
62 導入孔
63 反摺動面
63a 径方向溝
S3 空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B