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特開2022-30260活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030260
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220210BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08F290/06
E04F15/02 C
B32B27/30 A
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134125
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 貴教
(72)【発明者】
【氏名】大橋 基弘
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
4J127
【Fターム(参考)】
2E220AA13
2E220AA15
2E220AA16
2E220AA33
2E220BB04
2E220GB32X
2E220GB34X
4F100AA20A
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AK15B
4F100AK25A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100EH46A
4F100EJ54A
4F100GB08
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JB14A
4F100JL06
4F100JN21A
4F100YY00A
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB052
4J127BB221
4J127BB222
4J127BD411
4J127BD412
4J127BG271
4J127BG272
4J127BG27Y
4J127CB151
4J127CB282
4J127CC131
4J127CC132
4J127DA12
4J127FA08
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、2つ以上の不飽和二重結合をもつ多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
(C)(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
(D)光重合開始剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂の重量平均分子量が、500以上100,000以下の範囲内にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
(A)シリカ粒子の吸油量が、150mL/100g未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
ガラス板上に、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して形成した厚さ20~40μmの硬化被膜の60度鏡面光沢度が30未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項1~9のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
基材の少なくとも片面が、請求項1~10のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
【請求項12】
前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項11に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。また、本発明は、基材の少なくとも片面が活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型商業施設、公共施設、オフィス等の各種建築物、鉄道やバス等の車両の床材や内装壁等の基材表面には硬化被膜が設けられている。この硬化被膜に求められる性能としては、耐汚染性や意匠性が挙げられる。耐汚染性については、汚れに対する付着し難さが求められている。さらに、耐汚染性の長期的な維持のために、耐擦り傷性等も求められている。例えば、特許文献1では、耐擦り傷性の向上のために、硬化被膜にアルミナ粒子を添加することが提案されている。
【0003】
また、近年、意匠性については、基材表面の低光沢化が望まれている。そのため、硬化被膜に艶消し材料を添加することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-136673公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの従来の知見では、硬化被膜にアルミナ粒子を添加した場合、耐汚染性が十分ではなく、さらに、基材表面の光沢度が高くなるという問題があった。そこで、硬化被膜に添加する様々な無機粒子を検討したところ、硬化被膜の耐汚染性および低光沢化にはシリカ粒子が好適であった。しかしながら、シリカ粒子は、塗料に一定量以上を含有した場合には高粘度化して作業性が悪化するため、塗料への添加量には限界があった。
【0006】
したがって、本発明は、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含有させ、(A)シリカ粒子の含有量および活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を特定の範囲内に調節することにより、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得られることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(A)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、110KU未満である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[2] 前記(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[1]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、2つ以上の不飽和二重結合をもつ多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4] 前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[3]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[5] (C)(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[6] (D)光重合開始剤をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[7] 活性エネルギー線硬化型樹脂(B)の重量平均分子量が、500以上100,000以下の範囲内にある、[1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[8] (A)シリカ粒子の吸油量が、150mL/100g未満である、[1]~[7]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[9] ガラス板上に、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して形成した厚さ20~40μmの硬化被膜の60度鏡面光沢度が30未満である、[1]~[8]のいずれかにに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[10] 内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[1]~[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[11] 基材の少なくとも片面が、[1]~[10]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
[12] 前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[11]に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜付き基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「活性エネルギー線」とは、紫外線の他、可視光線、赤外線、電子線、X線、γ線、プロトン線、中性子線等を含むものを意味する。
「固形分」とは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0011】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物>
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、少なくとも、(A)シリカ粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含むものである。本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(C)(メタ)アクリレートモノマー、および/または、(D)光重合開始剤、および/または、(E)消臭剤をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、低粘度であり、作業性に優れるものである。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、JIS K 5600-2-2に準拠し、25℃でストーマー粘度計により測定した粘度が、好ましくは110KU未満であり、より好ましくは90KU未満であり、また、好ましくは50KU以上であり、より好ましくは60KU以上である。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、作業性に優れるため、塗料として好適である。
【0013】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ガラス板上に塗布して形成した厚さ20~40μmの硬化被膜の60度鏡面光沢度が30未満であることが好ましい。ガラス板上に、50μmのすき間を形成するフィルムアプリケータを用いて塗布して形成した硬化被膜の60度鏡面光沢度が30未満であれば、低光沢化が望まれている床材用の塗料として好適である。なお、60度鏡面光沢度は、市販の光沢度計を用いて測定することができる。
【0014】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れるものである。したがって、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、耐汚染性に優れた基材用として、特に床材等の内装材、または屋外もしくは半屋外の床材に好適に使用できる。以下、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0015】
((A)シリカ粒子)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれるシリカ粒子は、特に限定されないが、特定の吸油量を有するシリカ粒子を用いることができる。本発明者らは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に吸油量が高いシリカ粒子を用いた場合、硬化被膜の光沢が下がる傾向にあるが、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上昇する傾向にあることを知見した。一方で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に吸油量の低いシリカ粒子を用いた場合、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の含有量を高めることができ、さらに、多量に添加しても活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上がり難く、塗料として好適であることを知見した。例えば、シリカ粒子の吸油量は、好ましくは150mL/100g未満であり、より好ましくは145mL/100g以下であり、さらに好ましくは140mL/100g以下であり、また、好ましくは10mL/100g以上であり、より好ましくは30mL/100g以上であり、さらに好ましくは50mL/100g以上である。(A)シリカ粒子の吸油量が上記数値範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に多量に配合可能であるため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は低光沢になり、かつ、耐汚染性に優れたものとなる。なお、シリカ粒子の吸油量は、JIS K 5101-13-2に準拠して、測定することができる。
【0016】
(A)シリカ粒子としては、上記の吸油量を満たすものであれば、従来公知のシリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、および薄片状のいずれであってもよい。シリカ粒子としては、非晶質シリカおよび結晶質シリカのいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。シリカ粒子としては、市販品を用いることもでき、例えば、ダブリュー・アール・グレースジャパン株式会社製の商品名:SYLOID AL-1(吸油量:80mL/100g)、SYLOBLOC S400(吸油量:140mL/100g)、SYLOBLOC S500(吸油量:80mL/100g)、PQ Corporation株式会社製の商品名:Gasil 200DF(吸油量:80mL/100g)、富士シリシア株式会社製の商品名:サイリシア710(吸油量:100mL/100g)、サイリシア730(吸油量:95mL/100g)、サイリシア740(吸油量:95mL/100g)、サイリシア770(吸油量:95mL/100g)、サイリシア780(吸油量:90mL/100g)、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-766(吸油量:70mL/100g)、ミズカシルP-763(吸油量:90mL/100g)、ミズカシルP-603(吸油量:120mL/100g)等が挙げられる。
【0017】
(A)シリカ粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以上15μm以下である。(A)シリカ粒子の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れたものとなる。なお、体積平均粒子径は、市販の粒度分布測定機を用いて測定することができる。
【0018】
(A)シリカ粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として12質量%以上40質量%以下であり、好ましくは15質量%以上37質量%以下であり、より好ましくは17質量%以上35質量%以下である。(A)シリカ粒子は吸油量が低いため、含有量が上記範囲内であっても、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上がり難い。さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が高いため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れたものとなる。
【0019】
((B)活性エネルギー線硬化型樹脂)
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂(以下、(B)成分ともいう。)とは、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。(B)成分は、エネルギー照射された時に不飽和二重結合が重合することで、硬化被膜(硬化物)を形成する。前記不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等を挙げることができ、活性エネルギー線照射時の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0020】
(B)成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、硬化被膜の耐汚染性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。このような(B)成分は、従来公知の方法により製造することができる。
【0021】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有する。
【0022】
上記ポリイソシアネートとしては、本発明の効果を損なわない限り炭素数を限定するものではないが、たとえば、全炭素数が4~20、好ましくは6~15の直鎖状または分岐状のイソシアネート基含有炭化水素、イソシアネート基含有環状炭化水素、イソシアネート基含有芳香族炭化水素を用いることができる。
【0023】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0024】
上記ポリイソシアネートは、イソシアヌレート等に変性されていてもよく、イソシアヌレート変性されたものとしては、たとえば、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記以外のポリイソシアネートとして、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアネート基含有アクリレート等の多官能イソシアネートを用いてもよい。このようなポリイソシアネートは、1種単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、本発明の効果を損なわない限りその炭素数を限定するものではないが、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0026】
具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。また、上記以外にも、ポリカプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の変性体を用いてもよい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
必要に応じて用いられる、上記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等の公知のポリオールを用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンポリオール、アルキレンジオール等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。このようなポリオールは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの重量平均分子量は、通常500~100,000、好ましくは600~50,000、より好ましくは1,000~30,000である。本明細書において、重量平均分子量は、(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0029】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常10質量%以上80質量%以下、好ましくは15質量%以上70質量%以下、より好ましくは20質量%以上60質量%以下である。活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、油や薬品等の各種の汚れに対する耐汚染性により優れたものとなる。
【0030】
((b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂として、2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、(b1)成分ともいう。)を用いることが好ましい。(b1)成分を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される硬化被膜は、耐汚染性により優れる。
【0031】
(b1)2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールと反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、2官能のものを適宜選択して利用することができる。市販されているものとしては、具体的には、UV-841、UV-71、UV-72、UV-73、UV-820、UV-822、UV-831(商品名、以上、大竹明新化学株式会社製)、EBECRYL210、EBECRYL215、EBECRYL230、EBECRYL244、EBECRYL245、EBECRYL270、EBECRYL284、EBECRYL285、EBECRYL8402、EBECRYL9270、(商品名、以上ダイセル・オルネクス株式会社製)、紫光UV-3310B、紫光UV-6630B、紫光UV-6640B(商品名、以上日本合成化学工業株式会社製)、UA-122P、U-200PA、UA-4200(商品名、以上新中村化学工業株式会社製)、アートレジンUN-333、アートレジンUN-2600、アートレジンUN-2700、アートレジンUN-9000PEP(商品名、以上根上工業株式会社製)等が挙げられる。このような2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b1)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(b1)2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常500~50,000、好ましくは600~20,000、より好ましくは1,000~15,000である。
【0033】
((b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂として、2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b1)とともに、あるいは2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b1)の代わりに、3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b2)(以下、(b2)成分ともいう。)を含有しても良い。(b2)成分を用いる本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される硬化被膜は、表面硬度が向上することによって、より汚れが付着しにくくなり、耐汚染性が向上する。(b1)成分と(b2)成分を併用する場合、得られる硬化被膜は、耐汚染性により優れたものとなる。
【0034】
(b2)3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、3官能以上のものを適宜選択して利用することができる。市販されているものとしては、具体的には、UV-55(商品名、大竹明新株式会社製)、EBECRYL 4738、EBECRYL 4740、EBECRYL 8254(商品名、ダイセル・オルネクス株式会社製)等が挙げられる。このような3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b2)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(b2)3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常500~50,000、好ましくは600~20,000、より好ましくは1,000~15,000である。
【0036】
((C)(メタ)アクリレートモノマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(以下、(C)成分ともいう。)が含有されていてもよい。(C)(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、樹脂組成物に対して活性エネルギー線照射した際、(B)活性エネルギー線硬化性樹脂とともに硬化被膜を形成する。
【0037】
(C)(メタ)アクリレートモノマーとしては、たとえば、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、このような(メタ)アクリレート系モノマーは、たとえばε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート等のラクトン変性体であってもよい。
【0038】
上記のうちでも、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度調整および硬化被膜の硬度調整の観点から、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートが好ましい。フェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはメトキシトリエチレングリコールアクリレートを用いると、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度調整が行いやすい。また、トリプロピレングリコールジアクリレートまたは1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートを用いると硬化被膜の硬度調整が行いやすい。特に、フェノキシポリエチレングリコールアクリレートとトリプロピレングリコールジアクリレートを併用すると、耐摩耗性に優れる。このような(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
(C)(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常95質量%以下の量で含まれ、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~70質量%の割合で含有される。また、(C)(メタ)アクリレートモノマーの(B)活性エネルギー線硬化型樹脂に対する重量比率は、(B)成分:(C)成分が、通常は100:0~5:95、好ましくは80:20~20:80、さらに好ましくは70:30~30:70の比率にあることが望ましい。
【0040】
((D)光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を紫外線等の光により重合硬化させる場合には、光重合開始剤(以下、(D)成分ともいう。)を使用する。電子線により重合硬化させる場合は、通常用いない。
【0041】
(D)光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール(別名、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ジエトキシアセトフェノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、メチルベンゾイルホルメート等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましく、ベンゾフェノンがより好ましい。このような(D)光重合開始剤は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(D)光重合開始剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1~10質量%、好ましくは3~7質量%の割合で用いることが望ましい。
【0043】
((E)抗菌剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(E)抗菌剤(以下、(E)成分ともいう。)が含有されていてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は抗菌剤が含有されることで、抗菌塗料として用いることができる。
【0044】
(E)抗菌剤は、特に限定されず、従来公知の抗菌剤を用いることができる。抗菌剤としては、有機系抗菌剤および無機系抗菌剤が挙げられる。有機系抗菌剤としては、イミダゾール系、チアゾール系、イソチアゾリン系、ピリジン系の化合物が挙げられる。また、無機系抗菌剤としては、銀、亜鉛、銅等が挙げられる。このような(E)抗菌剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせ、または無機系材料に有機系抗菌剤を担持して用いてもよい。
【0045】
(E)抗菌剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常0.1~10.0質量%、好ましくは0.5~5.0質量%の割合で用いることが望ましい。
【0046】
((F)抗ウィルス剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(F)抗ウィルス剤(以下、(F)成分ともいう。)が含有されていてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は抗ウィルス剤が含有されることで、抗ウィルス剤塗料として用いることができる。
【0047】
(F)抗ウィルス剤は、特に限定されず、従来公知の抗ウィルス剤を用いることができる。抗ウィルス剤としては、有機系抗ウィルス剤および無機系抗ウィルス剤が挙げられる。有機系抗ウィルス剤としては、カルボキシ基、スルホン酸基を有する塩若しくは誘導体が挙げられる。また、無機系抗ウィルス剤としては、銀、亜鉛、銅や酸化チタン等の光触媒が挙げられる。このような(F)抗ウィルス剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせ、または無機系材料に有機系抗ウィルス剤を担持して用いてもよい。
【0048】
(F)抗ウィルス剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常0.1~8.0質量%、好ましくは0.5~5.0質量%の割合で用いることが望ましい。
【0049】
((G)消臭剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(G)消臭剤(以下、(G)成分ともいう。)が含有されていてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は消臭剤が含有されることで、消臭塗料として用いることができる。
【0050】
(G)消臭剤は、特に限定されず、従来公知の消臭剤を用いることができる。物理的に吸着する消臭剤としては、活性炭、ゼオライト、珪藻土、シリカ等の多孔質無機材料等が挙げられる。また有機系消臭剤としては、植物抽出成分等も好ましい。このような(G)消臭剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせ、または無機材料に有機系消臭剤を担持して用いてもよい。
【0051】
(G)消臭剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1~30質量%、好ましくは5~25質量%の割合で用いることが望ましい。
【0052】
(その他の成分)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中には、上記成分の他に、更に必要に応じて、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマー、シリコーンアクリレート、シリコーン変性ウレタンアクリレート、フッ素変性ウレタンアクリレート、およびフッ素変性アクリレート等の上記成分以外のアクリレート、重合禁止剤、非反応性希釈剤、艶消し剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚性向上剤、基材密着性向上剤、光増感剤、帯電防止剤、―防カビ剤、シランカップリング剤、可塑剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0053】
なお、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、シンナーやアルコール等の有機溶剤(非反応性希釈剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のどちらとしても構わない。ただし、揮発性有機化合物(VOC)の残留がないため、人体への影響がなく環境対応性に優れる等の理由から、無溶剤型樹脂組成物であることが好ましい。
【0054】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記の諸成分を従来より公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用い、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0055】
[硬化被膜付き基材]
本発明に係る硬化被膜付き基材は、少なくとも片面が、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる。硬化被膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化被膜の態様は特に制限されず、たとえば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。
【0056】
(基材)
本発明において、基材は、内装材として用いることができる。内装材とは、建築物や車両等の内部で使用される部材をいう。例えば、窓、壁、天井、床、屋根、建具、壁紙などが挙げられる。また、基材は、屋外や半屋外の床材としても用いることもできる。特に、耐汚染性が要求される床材や壁材等が好ましく、床材がより好ましい。基材としては、例えば、合成樹脂からなる基材が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また熱硬化型樹脂としては、具体的にはフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。それらのうち、合成樹脂製床材用とする場合は、加工性や床材としての施工容易性の面から、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも塩化ビニル系樹脂がより好ましい。基材の厚さは特に制限されないが、0.2~10mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。
【0057】
(硬化被膜)
硬化被膜は、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される。硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、耐汚染性の長期的な維持の観点から、通常1~100μm、好ましくは3~70μm、さらに好ましくは5~50μmが望ましい。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0058】
<硬化被膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き基材は、基材の少なくとも片面に、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(塗布工程)と、該塗布面に活性エネルギー線を照射して、該組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むものである。
【0059】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも片面に、従来公知の方法により、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0060】
塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、1~100μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点から更に好ましい上限は100μmであり、耐摩耗性、耐汚染性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0061】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0062】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に活性エネルギー線を照射して、塗布された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。活性エネルギー線としては、紫外線(遠紫外線、近紫外線等)、赤外線等の光線に加えて、電子線等が挙げられ、中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等の面から、紫外線が好ましい。
【0063】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、上記紫外線等の光線により硬化させる場合は、光重合開始剤を使用する。一方、上記電子線等により硬化させる場合は、通常、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0064】
紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cmであり、より好ましくは200~2,000mJ/cmである。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
まず、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・シリカ粒子1(吸油量:80mL/100g、平均粒子径:8μm、ダブリュー・アール・グレースジャパン株式会社製、商品名:SYLOID AL-1)
・シリカ粒子2(吸油量:140mL/100g、平均粒子径:4μm、ダブリュー・アール・グレースジャパン株式会社製、商品名:SYLOBLOC S400)
・シリカ粒子3(吸油量:80mL/100g、平均粒子径:5μm、ダブリュー・アール・グレースジャパン株式会社製、商品名:SYLOBLOC S500)
・シリカ粒子4(吸油量:80mL/100g、平均粒子径:4.3μm、PQ Corporation株式会社製、商品名:Gasil 200DF)
・シリカ粒子5(吸油量:70mL/100g、平均粒子径:6μm、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-766)
・シリカ粒子6(吸油量:90mL/100g、平均粒子径:3μm、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-763)
・シリカ粒子7(吸油量:120mL/100g、平均粒子径:3μm、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-603)
・シリカ粒子8(吸油量:150mL/100g、平均粒子径:4μm、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-73)
・シリカ粒子9(吸油量:230mL/100g、平均粒子径:18μm、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-78F)
・アルミナ粒子(吸油量:22mL/100g、平均粒子径:25μm、昭和電工セラミックス株式会社製、商品名:ホワイトモランダムWA#500)
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大竹明新化学株式会社製、商品名:UV-841)
・3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大竹明新化学株式会社製、商品名:UV-55)
・単官能アクリレートモノマー(メトキシトリエチレングリコールアクリレート、大阪有機化学工業株式会社製、商品名:ビスコート#MTG)
・2官能アクリレートモノマー(トリプロピレングリコールジアクリレート、大阪有機化学工業株式会社製、商品名:TPGDA)
・光重合開始剤(ベンゾフェノン、ChemFine International社製、商品名:HYCURE BENZOPHENONE)
【0067】
[実施例1~10、比較例1~10]
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
表1に記載の配合に従って、(A)成分または(A)成分以外の粒子、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を、ホモディスパーを用いて混合・攪拌して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0068】
<評価>
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度)
上記で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を、JIS K 5600-2-2に準拠し、25℃で、ストーマー粘度計により測定した。また、粘度を下記の基準で評価した。測定値および評価結果を表1および2に示した。なお、比較例8の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、粘度が高過ぎて測定不可であった。そのため、比較例8については、下記の鏡面光沢度および耐汚染性の試験は実施しなかった。
[評価基準]
◎:組成物の粘度が90KU未満であった。
○:組成物の粘度が90KU以上110KU未満であった。
×:組成物の粘度が110KU以上であった。
【0069】
(鏡面光沢度)
上記で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、JIS K 5600-4-7を参考に、板面温度45℃のガラス板との間に50μmのすき間を形成するフィルムアプリケータ(太佑機材株式会社製フィルムアプリケーター AP50)を用いて、硬化後の被膜の厚さが20~40μmになるように塗布した。続いて、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)にて、紫外線を積算光量500mJ/cmで照射し硬化させて、硬化被膜付き基材を得た。次に、得られた硬化被膜付き基材について、光沢度計(株式会社堀場製作所製、型番:IG-320)を用いて、60度鏡面光沢度を測定した。また、60度鏡面光沢度(%)を下記の基準で評価した。測定値および評価結果を表1および2に示した。
[評価基準]
○:60度鏡面光沢度が30未満であった。
×:60度鏡面光沢度が30以上であった。
【0070】
(耐汚染性)
上記で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、厚さ2mmの塩化ビニル性シートにロールコーターを用いて硬化後の被膜の厚さが10μmになるように塗布した。続いて、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)にて、紫外線を積算光量500mJ/cmで照射し硬化させて、硬化被膜付き基材を得た。また、シリカ粒子を含まない市販の紫外線硬化型塗料(中国塗料株式会社製、商品名:オーレックスNo.160)を、厚さ2mmの塩化ビニル性シートにロールコーターを用いて硬化後の被膜の厚さが10μmになるように塗布した。続いて、上記と同様にして硬化させて、標準試験板を得た。次に、得られた硬化被膜付き基材の表面および対照として標準試験板の表面に、スネルカプセルテスターを用いて、JIS K 3920を参考にした耐ヒールマーク性試験を5000回転実施し、表面積に対する汚れの付着面積(%)を測定した。標準試験板の付着面積をスコア100とした場合の、各硬化被膜付き基材の表面の汚れのスコア(相対値)を算出した。また、耐汚染性を下記の基準で評価した。スコアおよび評価結果を表1および2に示した。
[評価基準]
○:標準試験板に対するスコアが50未満であった。
△:標準試験板に対するスコアが50以上100未満であった。
×:標準試験板に対するスコアが100以上であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】