(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030300
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置
(51)【国際特許分類】
C07C 5/10 20060101AFI20220210BHJP
C07C 13/18 20060101ALI20220210BHJP
C07C 49/403 20060101ALI20220210BHJP
C07C 45/00 20060101ALI20220210BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
C07C5/10
C07C13/18
C07C49/403 A
C07C45/00
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134198
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】堀 憲次
(72)【発明者】
【氏名】坂下 啓一
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC11
4H006AC44
4H006BA26
4H006BA55
4H006BB14
4H006BC10
4H006BE20
4H039CA40
4H039CB10
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、触媒と水素との接触を効率的に行える接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置を提供することである。
【解決手段】触媒と反応物を含む反応液中に設置された水素放出部材から水素を放出させて接触水素化反応を行う方法であって、前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有する水素放出部材であり、前記水素放出部材の空洞部に水素を導入し、導入した水素を前記水素放出部材の壁に溶解させ、溶解した水素を前記水素放出部材の壁内を拡散させて前記水素放出部材から前記反応液中に放出する接触水素化反応方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒と反応物を含む反応液中に設置された水素放出部材から水素を放出させて接触水素化反応を行う方法であって、
前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有する水素放出部材であり、
前記水素放出部材の空洞部に水素を導入し、
導入した水素を前記水素放出部材の壁に溶解させ、溶解した水素を前記水素放出部材の壁内を拡散させて前記水素放出部材から前記反応液中に放出する
接触水素化反応方法。
【請求項2】
水素放出部材の空洞部に導入された水素が加圧されていることを特徴とする請求項1記載の接触水素化反応方法。
【請求項3】
水素放出部材が管状部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の接触水素化反応方法。
【請求項4】
触媒と反応物を含む反応液を収容する反応液収容部、
前記反応液収容部に設置された水素放出部材、及び
加圧機構を備え、
前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有し、前記空洞部に導入された水素が前記水素放出部材の壁に溶解し、前記壁内を拡散して前記壁外に放出される水素放出部材であり、
前記加圧機構が、前記水素放出部材の空洞部に導入された水素を加圧する機構である
接触水素化反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触水素化反応を効率的に実施するには触媒と水素の接触を効率よく行う必要があり、特に不均一触媒を用いる場合には重要である。水素を反応液中に直接送るには、多孔質膜あるいは多孔質細管の穴から水素を供給する方法が考えられるが、泡の径が十分小さくないために水素の利用効率が低く、穴の径が大きいため水素を大量に使うので経済的ではなく、また反応中穴に触媒が詰まる可能性があるという問題がある。一方で、反応性ガスを供給するために非多孔性均質膜を有する中空糸膜を利用する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1記載の方法では、均質膜層の内側と外側に多孔質膜層を設けた複合中空糸膜を使用し、この中空糸膜を多数並べたモジュールを用意して、中空糸膜の内側に基質液を導入し、中空糸膜の外側に反応性気体を含む気体を導入することにより、反応性気体を含む気体は、中空糸膜を透過して中空糸膜の外側の空間から中空糸膜の内側(中空部)を通過する基質液に供給される。しかし、この方法は、マイクロリアクターでの反応を考慮して反応性ガスを基質液に供給するので見かけ上溶解度以上の高濃度で反応液中に気体を供給できるが、触媒を使用する方法である接触水素化反応において、反応時に触媒表面に直接微小バブル状水素を供給して反応効率を高める方法としては適当ではない。また、高分子等の多孔質体を用いて、多孔質体の一方の面に触媒を固定化し、他方の面から水素を供給して接触水素化反応を行う方法も提案されているが、反応液当たりの膜表面積が小さく、触媒が固定化されているので反応効率は流動する触媒を用いた方法に比べると劣る(特許文献2)。水素透過性金属膜としてP型半導体等を使って高分子膜の水素透過性を高める技術も提案されているが、平膜を使用しての接触水素化反応は触媒と水素との接触機会が弱まるので効率的とは言えない(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130648号公報
【特許文献2】特開2007-045756号公報
【特許文献3】特開2004-018435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、触媒と水素との接触を効率的に行える接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、接触水素化反応方法において触媒と水素との接触を効率的に行える方法の検討を開始した。検討の過程で、触媒と水素との接触効率を向上させるには、可能な限り水素の気泡を小さくして反応系内に送り込むことが重要であることに着目したが、細孔の小さい多孔質膜を使用しても放出される気泡の径は相当大きいものであった。そこで、さらに検討を進めたところ、水素を孔から放出するのではなく、水素を無孔質膜等の無孔質部材に溶解させ膜(部材)中を拡散させて膜(部材)外に放出させることにより、格段に微小な気泡として水素を反応系内に送り込むことができることを見いだした。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)触媒と反応物を含む反応液中に設置された水素放出部材から水素を放出させて接触水素化反応を行う方法であって、前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有する水素放出部材であり、前記水素放出部材の空洞部に水素を導入し、導入した水素を前記水素放出部材の壁に溶解させ、溶解した水素を前記水素放出部材の壁内を拡散させて前記水素放出部材から前記反応液中に放出する接触水素化反応方法。
(2)水素放出部材の空洞部に導入された水素が加圧されていることを特徴とする上記(1)記載の接触水素化反応方法。
(3)水素放出部材が管状部材であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の接触水素化反応方法。
(4)触媒と反応物を含む反応液を収容する反応液収容部、前記反応液収容部に設置された水素放出部材、及び加圧機構を備え、前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有し、前記空洞部に導入された水素が前記水素放出部材の壁に溶解し、前記壁内を拡散して前記壁外に放出される水素放出部材であり、前記加圧機構が、前記水素放出部材の空洞部に導入された水素を加圧する機構である接触水素化反応装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置は、触媒と水素との接触を効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の接触水素化反応方法は、触媒と反応物を含む反応液中に設置された水素放出部材から水素を放出させて接触水素化反応を行う方法であって、前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有する水素放出部材であり、前記水素放出部材の空洞部に水素を導入し、導入した水素を前記水素放出部材の壁に溶解させ、溶解した水素を前記水素放出部材の壁内を拡散させて前記水素放出部材から前記反応液中に放出する方法である。本発明における触媒としては、接触水素化反応に用いることのできる触媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金等の白金族金属、ニッケル、銅、酸化白金、銅-酸化クロム、ラネーニッケル、ラネー銅、パラジウム-炭素、アダムス触媒などを挙げることができる。本発明における水素放出部材としては、内部に空洞部を有し、さらに前記空洞部への水素導入部を有する部材であって、前記空洞部へ導入された水素(H2)が前記空洞部と外部を隔てる壁に溶解し、前記壁内を拡散して前記壁を透過することにより、水素を水素放出部材の外部に放出できるものであれば特に限定されるものではないが、材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。本発明における水素放出部材は、その内部に空洞部を有し、さらに前記空洞部に水素を導入する水素導入部を有する。本発明の接触水素化反応では、炭素と炭素の二重結合や三重結合を水素化して単結合にすることや、炭素と炭素の三重結合を水素化して二重結合にすることができる。本発明の接触水素化反応に使用する反応物としては、目的とする生成物に応じて適宜選択することができ特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、フェノール、桂皮酸、ヒドロキシ桂皮酸、キシレン、アセチレン、アセトン、アセトアルデヒド等を挙げることができる。本発明における反応液としては、触媒と反応物を含んでいれば特に限定されるものではない。反応液は、エタノール等の溶媒を含んでもよく、反応物が反応温度で液体の場合は溶媒を含まなくてもよい。反応は、例えば、常温から100℃の範囲の反応温度で実施することが可能であるが、使用する水素放出部材の耐溶剤性や耐熱性を考慮すると、反応温度は常温から60℃の範囲が好ましい。
【0010】
一般的に、ガス(気体)を液相に供給する場合、気泡の大きさはガスの出口の径に依存する。気泡の大きさを小さくするために多孔質膜の細孔やオリフィスが用いられているが、気泡を小さくする効果には限度がある。一方、本発明の接触水素化反応方法では、多孔質膜の細孔やオリフィスを用いることなく、水素放出部材の内側(空洞部)に導入され、水素放出部材の壁に溶解し、壁内を拡散して透過する水素を放出させて反応液に供給するため、多孔質膜の細孔やオリフィスを用いて水素を供給する場合に比べ極めて微小な気泡になると思われる。本発明においては、このように溶解及び拡散による透過によって反応液に供給される水素を微泡状水素と称する。本発明では、このような微泡状水素を触媒が存在する反応液に直接供給することができ、このため微泡状水素は、あたかも溶解しているような挙動をしながら触媒と接して反応する。これは、見かけ上は水素の溶解度を上げて反応させることに等しく、触媒と水素との接触を効率的に行うことができる。水素放出部材の形状としては、特に限定されるものではないが、水素を多く放出する観点から表面積が大きくなる形状が好ましい。また本発明は、水素放出部材中への溶解及び拡散により水素を反応液中に供給するものであるので、本発明における水素放出部材は、溶解及び拡散によらずに水素が水素放出部材の外部に放出される孔を有さないことが好ましく、非多孔性の材料で構成されていることが好ましい。ただし、本発明の効果を阻害しない程度の細孔を有してもよい。本発明における水素放出部材の形状としては、例えば、管状形状を挙げることができる。管状形状の管状部材を使用することにより、水素放出部材の表面積を大きくできる。管状部材の表面積を大きくする観点及び管状部材の内側に導入された水素を効率良く拡散させる観点から、管状部材の外径は、0.2~10mmが好ましく、0.2~5mmがより好ましい。管状部材としては、例えば、中空糸膜、樹脂製のチューブ等を挙げることができる。中空糸膜としては、外径が0.2~5mmの中空糸膜を例示することができ、樹脂製のチューブとしては、外径が1.0~10mm又は1.0~5mm、内径が0.5~9.0mm又は0.5~4.0mmのチューブを例示することができる。中空糸膜としては、非多孔性均質膜を有する中空糸膜が好ましい。管状部材は、例えば束ねる等して複数使用してもよい。本発明の接触水素化反応方法において水素放出部材は反応液中に設置されるが、反応容器に水素放出部材を設置した状態に反応液を注いで水素放出部材が反応液に浸るようにしてもよく、反応容器に反応液を入れた状態に水素放出部材を挿入して水素放出部材が反応液に浸るようにしてもよい。また、水素放出部材の空洞部に導入された水素は加圧されていることが好ましい。水素を効率的に溶解及び拡散し放出させる観点から水素放出部材の空洞部内の圧力は大気圧より大きいことが好ましく、1.1気圧以上であることが好ましく、1.3気圧以上であることがより好ましい。また、空洞部内の圧力があまりに高いと耐圧のための特別な構造や部材が必要となるため、水素放出部材の耐圧性の観点からは空洞部内の圧力は1.5気圧以下が好ましく、1.2気圧以下がより好ましい。また、本発明の接触水素化反応方法では、反応液を撹拌しながら反応を行うことが好ましく、必要な反応温度に応じて反応液を加熱することが好ましい。
【0011】
本発明の接触水素化反応装置は、触媒と反応物を含む反応液を収容する反応液収容部、前記反応液収容部に設置された水素放出部材、及び加圧機構を備え、前記水素放出部材が、空洞部と前記空洞部への水素導入部を有し、前記空洞部に導入された水素が前記水素放出部材の壁に溶解し、前記壁内を拡散して前記壁外に放出される水素放出部材であり、前記加圧機構が、前記水素放出部材の空洞部に導入された水素を加圧する機構の装置であり、本発明の接触水素化反応を行うために好適な装置である。本発明の接触水素化反応装置における触媒及び反応物、これらを含む反応液並びに水素放出部材は、本発明の接触水素化反応方法に使用するものと同じものを使用できる。本発明の接触水素化反応装置における反応液収容部は、反応液が収容できる形状及び材質であれば、その形状及び材質は特に限定されない。反応液収容部は、反応液を収容したときに反応液の上方に空間ができる容積を有することが好ましい。水素放出部材は、反応液収容部内の反応液が収容されると反応液中となる位置に設置される。水素を加圧する機構は、水素放出部材の空洞部に導入された水素を加圧できるものであれば特に限定されない。例えば、水素放出部材を水素導入部以外に開口部を有さない構造とし、あるいは水素導入部以外の開口部を塞いで、水素導入部から空洞部へ圧力をかけて水素を導入することができる。また、水素放出部材が開口部を複数有する場合は、全ての開口部を水素導入部とし、これらの開口部から空洞部へ圧力をかけて水素を導入することができる。本発明の接触水素化反応装置は、水素ガスボンベからの配管を接続する接続部、前記接続部と水素放出部材の水素導入部をつなぐ配管を備えてもよい。また、反応液収容部内の気体を排気する排気装置を備えてもよく、反応液収容部内の圧力は、大気圧又は大気圧から減圧した状態が好ましい。本発明の接触水素化反応装置は、反応液を撹拌するための撹拌装置を備えてもよく、反応液を加熱するための加熱装置を備えてもよい。
【0012】
本発明の接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置の一実施形態を
図1に示す。反応装置Aは、反応液2を収容する反応液収容部1と、反応液2に水素を供給するためのガス配管5及びガス配管5の端部に水素ガスが漏れないように取り付けられた水素放出部材4を備えている。反応液収容部1に反応液2を収容した後、反応液収容部1内を、窒素置換して触媒を添加し、次に減圧して窒素を追い出してから反応液収容部1内を減圧又は常圧にする。その後、水素ガス導入口7から圧力をかけて水素を水素ガス室11に導入する。水素ガス室11は水素ガス導入口7及びガス配管5以外に開口部は有しない。そのため、水素ガス室11に導入された水素はガス配管5に導入され、ガス配管5を通り水素放出部材4に導入される。反応装置Aでは、水素放出部材4を管状部材としループ状に曲げてその端部(開口部)を2本のガス配管5のそれぞれの端部に取り付け、ガス配管5の水素放出部材4が取り付けられていない端部は、水素ガス室11内に配置されているので、ガス配管5及び水素放出部材4内では水素が圧力のかかった状態で保持される。この機構により水素放出部材4内の水素を加圧できる。水素放出部材4の空洞部内(管状部材の内側)に導入された水素は、水素放出部材4の壁に溶解し拡散することにより壁中を透過して反応液2に供給される。反応液2には触媒3と反応物が含まれており、反応液2に供給された水素(微泡状水素)は、反応液2中を浮遊する触媒に接触する。これにより触媒の表面で反応物の水素化反応が行われる。必要に応じてスタラー9等で反応液2を撹拌してもよく、ヒーター10等で反応液2を加熱してもよい。反応液2から気化した溶媒や水素は、冷却された後、残ガス回収部8に回収される。反応液収容部1では、管状部材をループ状に曲げてその両端をガス配管5に接続しているが、管状部材の1つの端部のみをガス配管5と接続し、他の端部は栓をする等により塞いでもよい。また、管状部材を束ねて複数本使用してもよい。
【実施例0013】
以下に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの具体的実施形態に限定されるものではない。
【0014】
[実施例1]
図1と同様の接触水素化反応装置を使用した。水素放出部材として信越化学製シリコン系架橋チューブSR-1556(外径3mm、内径1mm)を5cmに切り、その両端をそれぞれガス配管に接続した。反応装置として使用した50mLの四ツ口フラスコに、30%トルエン/エタノール液30gを入れ、反応装置内を窒素ガスで置換してPt/C(活性炭に担持したPt触媒、Ptの割合30%)30mgを加え、系内を減圧にしてから60℃で水素圧をかけて4時間反応させた。反応後の液をガスクロマトグラフ(GCMS-QP5000、島津製作所製)により分析したところトルエンの5%がメチルシクロヘキサンになっていた。水素は10気圧の水素ボンベから圧力を少し絞り供給した。
【0015】
[実施例2]
同じ水素供給装置を用いて、5%フェノール/エタノール液30gにPt/C20mgを加えて、実施例1と同様に60℃で水素圧をかけて4時間反応させた。反応後の液をガスクロマトグラフにより分析したところフェノールの4%がシクロヘキサノンになっていた。
【0016】
[実施例3]
同じ水素供給装置を用いて、5%桂皮酸/エタノール溶液30gにPt/C20mgを加えて、実施例1と同様に60℃で水素圧をかけて4時間反応させた。反応後の液をガスクロマトグラフにより分析したところ桂皮酸は100%還元されていた。
【0017】
[実施例4]
図1と同様の接触水素化反応装置を使用した。水素放出部材として低密度ポリエチレンを均質膜層とする中空糸膜(外径0.6mm)を約30cmに切断し、それを2つ折りにしたものを50本束ねて穴を空けたゴム栓に通してエポキシ系の接着剤で固め、中空糸膜の端面をカットして水素を供給できるようにして、水素ガス室に接続して水素供給装置を作製した。反応装置として使用した50mLの四ツ口フラスコに反応物として4-ヒドロキシ桂皮酸0.2gを取り、エタノール30mLに溶解した。四ツ口フラスコの側管には作製した水素供給装置と風船を付けた三方コックを付け、他は共栓で塞いだ。反応装置内を窒素ガスで置換してPd/C(活性炭に担持したPd触媒、Pdの割合30%)20mgを反応装置内に入れ、ポンプで系内を減圧にしてから、10気圧の水素ボンベから中空糸膜に水素を供給した。反応装置は40℃のオイルバスに浸けて4時間反応させた。反応後の液をガスクロマトグラフにより分析したところ、原料が残っていないで全量水素化が完了していることを確認した。実施例1~4において、水素の気泡は目視では確認できず、水素放出部材から拡散により放出された水素は極めて微小な気泡になっているものと考えられる。
【0018】
[比較例1]
50mLの四ツ口フラスコに30%トルエン/エタノール溶液30g、Pt/C20mgを入れて、三方コックで水素を充填した風船を接続し、系内を減圧にしてから水素置換して60℃で4時間反応させてもトルエンの還元は出来なかった。
本発明の接触水素化反応方法及び接触水素化反応装置は、触媒と水素との接触を効率的に行なうことができるので、接触水素化反応を効率的に行うことができ、各種の接触水素化反応に利用できる。特に医薬品など高付加価値化合物の水素化反応への応用や、燃料電池の水素源としてトルエンの還元へ利用できる。