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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030310
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】固形状油性クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20220210BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134223
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】市川 晶子
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AD022
4C083AD152
4C083BB04
4C083BB13
4C083CC22
4C083CC24
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メイクの汚れ落ちに優れ、低温下で使用しても肌なじみが良く、かつ幅広い温度域での安定性が良好である固形状油性クレンジング化粧料の提供。
【解決手段】下記の成分(A)を4~20質量%、成分(B)を50~90質量%、成分(C)を5~30質量%含有することを特徴とする固形状油性クレンジング化粧料。成分(A):融点が60~100℃であり、示差熱曲線における極大ピークの温度から低温側7℃および高温側3℃の合計10℃の範囲に含まれる面積が総ピーク面積の60%である脂肪酸エステルワックス成分(B):25℃で液状の油成分(C):HLB値が5~15であり、多価アルコール骨格を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤およびポリグリセリン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤から選ばれる1種または2種以上のノニオン性界面活性剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)を4~20質量%、成分(B)を50~90質量%、成分(C)を5~30質量%含有することを特徴とする固形状油性クレンジング化粧料。
成分(A):融点が60~100℃であり、示差熱曲線における極大ピークの温度から低温側7℃および高温側3℃の合計10℃の範囲に含まれる面積が総ピーク面積の60%である脂肪酸エステルワックス
成分(B):25℃で液状の油
成分(C):HLB値が5~15であり、多価アルコール骨格を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤およびポリグリセリン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤から選ばれる1種または2種以上のノニオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状油性クレンジング化粧料に関し、詳しくは、メイクの汚れ落ちに優れ、低温下で使用しても肌なじみが良く、かつ幅広い温度域での安定性が良好である固形状油性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐水・耐油性に優れたメイクアップ化粧料が開発され、化粧持ちが著しく向上している。一方、肌上の化粧料や汚れを除去するためのクレンジング料として、水性クレンジング化粧料、乳化クレンジング化粧料、油性クレンジング化粧料等がある。中でもメイクアップ化粧料とのなじみが良く、汚れの除去能に優れた油性クレンジング化粧料は、強固な化粧膜を落とすことができることから、広く使用されている。油性クレンジング化粧料のうち、液状油をベースとした液状油性クレンジング化粧料は、クレンジング効果が高いことが知られているが、粘度が低く、使用時の垂れ落ちや、メイクアップ化粧料となじませる時のマッサージがしにくいという問題があった。そこで、常温で固形状の油性クレンジング化粧料が、使用時の垂れ落ちを防止し、使用性の向上を図る目的で提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、高融点の炭化水素油、エステル油を必須成分として含む液状油、およびHLB値が5~13のノニオン性界面活性剤を組み合わせた固形状油性クレンジング化粧料が開示され、この化粧料は、メイクアップ化粧料とのなじみ性がよく、汚れ落ちに優れ、洗浄後のさっぱり感などの使用感に優れていることが記載されている。
また、特許文献2には、液状の植物油、融点が60~80℃の固形状油脂、HLB値が低い液体のノニオン系界面活性剤およびHLB値が高い液体又は固体のノニオン系界面活性剤を組み合わせた固形状クレンジング剤が開示され、このクレンジング剤は、体温付近での溶解性が良く、肌になじみやすく、汚れ落ちに優れていることが記載されている。
【0004】
固形状油性クレンジング化粧料の肌なじみを向上するには、塗布時の製剤が柔らかく、軽い力で塗り広げられることが重要である。しかし、従来の固形状油性クレンジング化粧料は、冬場などの低温下では製剤が固くなるため、肌に塗り広げるのに強い力を要し、肌なじみに課題があった。一方、低温での肌なじみを向上させると、製剤を高温にした際に柔らかくなりすぎ、分離や油浮きが生じるなど安定性が低下する場合があった。
これら背景から、メイクの汚れ落ちに優れ、低温下で使用しても軽い力で肌に塗り広げることができるので肌なじみが良く、幅広い温度域での安定性が良好である固形状油性クレンジング化粧料は存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-206974号公報
【特許文献2】特開2018-177651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、メイクの汚れ落ちに優れ、低温下で使用しても肌なじみが良く、かつ幅広い温度域での安定性が良好である固形状油性クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記(A)~(C)成分をそれぞれ所定量含有する固形状油性クレンジング化粧料が、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明に係る固形状油性クレンジング化粧料は、下記の成分(A)を4~20質量%、成分(B)を50~90質量%、成分(C)を5~30質量%含有することを特徴とする。
成分(A):融点が60~100℃であり、示差熱曲線における極大ピークの温度から低温側7℃および高温側3℃の合計10℃の範囲に含まれる面積が総ピーク面積の60%である脂肪酸エステルワックス
成分(B):25℃で液状の油
成分(C):HLB値が5~15であり、多価アルコール骨格を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤およびポリグリセリン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤から選ばれる1種または2種以上のノニオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0009】
本発明の固形状油性クレンジング化粧料によれば、メイクの汚れ落ちに優れ、低温下で使用しても軽い力で肌に塗り広げることができるので肌なじみが良く、かつ幅広い温度域での安定性が良好であるという効果が得られ、上記従来の課題をことごとく解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
なお、本発明において「固形状」とは常温(25℃)にて保形性を有することを言い、「液状」とは常温(25℃)にて保形性を有しないことを言う。保形性の有無は、例えば、後記の実施例に記載された<50℃での保形性>の評価と同様の方法により評価することができる。具体的には、試料をガラス製ジャー容器に入れ、25℃において直径25mm、75gの重りを乗せて、重りがまったく沈まない場合を保形性があると評価し、それ以外の場合を保形性が無いと評価することができる。
また、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
更に、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0011】
本発明の固形状油性クレンジング化粧料は、成分(A)、成分(B)および成分(C)をそれぞれ所定量含有する。なお、成分(A)、成分(B)および成分(C)の各含有量の合計は100質量%である。
まず成分(A)から順次説明する。
【0012】
〔成分(A):脂肪酸エステルワックス〕
本発明で用いられる成分(A)は、常温(25℃)で固形状の脂肪酸エステルワックスであり、本発明のクレンジング化粧料を固形状に固める必須成分である。
【0013】
成分(A)の融点は、60~100℃であり、70~90℃が好ましい。融点が過度に低い場合は、クレンジング化粧料を均一に固化させることが困難となり、高温時に固形状を維持できなくなったり、液化したりする可能性がある。融点が過度に高い場合は、クレンジング化粧料が過度に固くなり、低温下での肌なじみが低下する可能性がある。
なお、本発明における成分(A)の融点は、基準油脂分析試験法(日本油化学会編 2.2.4.2 融点(上昇融点))に準じて測定される融点である。
【0014】
成分(A)は、示差熱曲線における極大ピークの温度から低温側7℃および高温側3℃の合計10℃の範囲に含まれる面積が総ピーク面積の60%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。かかる面積の割合が過度に低い場合は、低温下での肌なじみや、幅広い温度での安定性が低下する可能性がある。
なお、極大ピーク温度とは、示差走査熱量分析(Differential scanning calorimetry;DSC)により得られる示差熱曲線において吸熱量が極大になるときの温度のことである。
総ピーク面積とは、DSCにより得られる示差熱曲線において、高温側のベースラインを低温側に延長したとき、その延長線と示差熱曲線の2線で囲まれた面積のことである。また、極大ピークの温度から低温側7℃および高温側3℃の合計10℃の範囲に含まれる面積とは、極大ピーク温度から低温側7℃、高温側3℃のところで、それぞれ温度軸から垂線(縦軸と平行な線)をひいたとき、示差熱曲線のベースライン(示差熱曲線の高温側のベースラインを低温側に延長したときの延長線を含む。)、高温側の垂線、低温側の垂線、および示差熱曲線の4線で囲まれる範囲の面積のことである。更に具体的な説明については、特許第4435434号公報を参照することができる。
【0015】
本発明の脂肪酸エステルワックスを構成する脂肪酸としては、高級脂肪酸が好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられる。これらのうち、炭素数が12~22の高級脂肪酸がより好ましく、炭素数が18~22の高級脂肪酸が特に好ましい。
本発明の脂肪酸エステルワックスを構成するアルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の一価の高級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール;グリセリン、ペンタントリオール、トリメチロールプロパン等の三価アルコール;ペンタエリスリトール、ヘキサンテトロール等の四価アルコール;グルコース等の五価アルコール;ソルビトール、ソルビタン、マンニトール、ジペンタエリスリトール等の六価アルコール;ポリグリセリン等の重合度によって価数が異なる多価アルコールが挙げられる。これらのうち、多価アルコールが好ましく、分子内に水酸基を3~6個もつ多価アルコールがより好ましい。
【0016】
脂肪酸エステルワックスとしては、例えば、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ヘキサグリセリンオクタベヘネートなどが挙げられる。
【0017】
成分(A)として、単一の脂肪酸エステルワックスを選択して使用してもよいし、また、二種以上の脂肪酸エステルワックスを適宜組み合わせて用いることもできる。さらに、脂肪酸エステルワックスの混合物を用いることができ、例えば、カルナウバロウなどを用いることができる。
【0018】
成分(A)の含有量は、クレンジング化粧料中、4~20質量%であり、好ましくは7~20質量%、より好ましくは7~15質量%である。成分(A)の含有量が過度に少ない場合は、幅広い温度域での安定性が担保できない可能性があり、成分(A)の含有量が過度に多い場合は、低温下での肌なじみが低下する可能性がある。
【0019】
〔成分(B):液状の油〕
本発明で用いられる成分(B)は、常温(25℃)で液状の油である。
成分(B)としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、合成油のいずれであっても用いることがでる。
【0020】
液状油の具体例としては、例えば、炭化水素類、エーテル類、エステル類、植物油類、シリコーン油類が挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテンが挙げられ、エーテル類としては、例えば、ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテルおよびグリセロールモノオレイルエーテルなどが挙げられる。
エステル類としては、例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシル、トリカプリル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、イソステアリン酸イソステアリル、およびイソステアリン酸オクチルドデシルなどが挙げられる。
植物油類としては、例えば、オリーブ油、大豆油およびホホバ油などが挙げられ、シリコーン油類としては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンおよびメチルシクロポリシロキサンなどが挙げられる。
【0021】
成分(B)として、単一の液状油を選択して使用してもよいし、また、二種以上の液状油を適宜組み合わせて用いることもできる。例えば、炭化水素類、エーテル類、エステル類、植物油類、およびシリコーン油類の中から2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
メイクの汚れ落ちを向上させる観点から、これらの液状油のうち、炭化水素類やシリコーン油類等の非極性油と、エーテル類、エステル類、植物油類等の極性油とを混合したものが好ましい。特に、非極性油として炭化水素類を選択し、極性油としてエステル類または植物油類を選択することがより好ましい。混合比としては、非極性油:極性油が1:4~2:1、更に1:2~3:2であることが好ましい。
【0023】
成分(B)の含有量は、クレンジング化粧料中、50~90質量%であり、好ましくは60~85質量%である。成分(B)の含有量が過度に少ない場合は、メイクの汚れ落ちが十分でなくなる可能性があり、成分(B)の含有量が過度に多い場合は、高温下での安定性が低下する可能性や、すすぎ時にべたつきが生じる可能性がある。
【0024】
〔成分(C):ノニオン性界面活性剤〕
本発明で用いられる成分(C)は、HLB値が5~15、好ましくは5~12、より好ましくは7~12のノニオン性界面活性剤である。ノニオン性界面活性剤のHLB値が過度に低い場合および過度に高い場合は、メイクの汚れ落ちが低下する可能性がある。
【0025】
HLBとは、Hydrophile-Lipophile Balanceの略であり、界面活性剤の親水基および親油基のバランスを数値化した概念である。一般に、HLBは0から20の範囲内の数値で示され、数値のより大きいほど親水性がより高いことを示す。
HLB値は、下記式で示されるグリフィン法によって求めることができる。
HLB値=20×(親水基の分子量/全体の分子量)
【0026】
成分(C)は、多価アルコール骨格を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤およびポリグリセリン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤から選ばれる1種または2種以上のノニオン性界面活性剤である。
【0027】
多価アルコール骨格を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビットが挙げられる。具体的には、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB:5.5)、トリステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:5.0)、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:5.0)、トリオレイン酸PEG-10グリセリル(HLB:5.0)、イソステアリン酸PEG-3グリセリル(HLB:6.0)、ジイソステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:7.0)、イソステアリン酸PEG-5グリセリル(HLB:8.0)、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:8.0)、トリイソステアリン酸PEG-30グリセリル(HLB:10.0)、テトライソステアリン酸ソルベス-30(HLB:11. 1)、テトラオレイン酸ソルベス-6(HLB:5.0)、イソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:12)などが挙げられる。
【0028】
ポリグリセリン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB:5.0)、オレイン酸ポリグリセリル-2(HLB:5.5)、ステアリン酸ポリグリセリル-4(HLB:6.0)、オレイン酸ポリグリセリル-4(HLB:6.0)、トリステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB:7.5)、トリオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB:7.0)などが挙げられる。
【0029】
これらのノニオン性界面活性剤のうち好ましくはポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビットであり、より好ましくはトリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、テトライソステアリン酸ソルベス-30である。
【0030】
成分(C)の含有量は、クレンジング化粧料中、5~30質量%であり、好ましくは10~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。成分(C)の含有量が過度に少ない場合は、メイクの汚れ落ちが十分でなくなる可能性があり、成分(C)の含有量が過度に多い場合は、すすぎ時にべたつきが生じる可能性がある。
【0031】
本発明の固形状油性クレンジング化粧料には、必要に応じて、化粧料に常用されている添加剤を適宜配合することができる。かかる添加剤としては、本発明の目的を妨げない限り特に限定されないが、例えば油分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、色材、アルコール類、紫外線防御剤、アミノ酸類、ビタミン類、美白剤、有機酸、無機塩類、酵素、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、皮膚賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤等の薬剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、収斂剤、清涼剤、香料、色素等が挙げられる。なお、これら添加剤のうち成分(A)~(C)に相当するものは除かれる。
【実施例0032】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0033】
<実施例1~11、比較例1~5>
表1および2に記載した組成で原料を量り取り、成分(A)の脂肪酸エステルワックスの融点以上で加熱しながら、均一になるまで撹拌することにより、固形状油性クレンジング料を調製した。
実施例および比較例で得られた各試料を用いて、メイクの汚れ落ち、相対せん断粘度、低温下での肌なじみ、50℃での保形性、4℃および50℃での保存安定性について下記のとおり評価し、その結果を表1および2にあわせて記載した。
使用した成分(A)の脂肪酸エステルワックスについて、示差熱曲線を用いて溶融特性を測定し、総ピーク面積に対する極大ピーク温度から低温側7℃および高温側3℃の面積割合を求めた。求めた極大ピークを含む10℃の範囲の面積を表1および2中の成分(A)の表示名称に併記した。
なお、表1および2中の各成分の組成は、クレンジング化粧料全量に対する質量%で示し、有効分を換算した値である。
【0034】
<メイクの汚れ落ち>
健常パネラー10名が、市販の口紅を肌に塗布した後、実施例および比較例で調製した固形状油性クレンジング料を使用してクレンジングを行った。その際のメイクの汚れ落ちについて、下記評点基準により3段階で相対評価した。10名の合計点を算出し、以下の評価基準により評価した。
(評点基準)
3点:メイクの汚れ落ちが良好である。
2点:メイクの汚れ落ちがやや良好である。
1点:メイクの汚れ落ちが良好ではない。
(評価基準)
◎:25点以上
○:20点以上、25点未満
△:15点以上、20点未満
×:15点未満
【0035】
<相対せん断粘度>
粘弾性測定器を用いて、4℃と50℃にて、せん断速度10(1/s) におけるせん断粘度(Pa・s)を測定し、4℃でのせん断粘度を50℃でのせん断粘度で割った値を相対せん断粘度とした。せん断粘度はせん断応力に比例するので、相対せん断粘度の値が大きいということは、4℃でのせん断応力が50℃でのせん断応力に対して高いことを表しており、4℃で延び広げる際に50℃で延び広げる時よりも強い力が必要なことを示している。求めた相対せん断粘度を以下の評価基準により評価した。
(評価基準)
◎:相対せん断粘度が2以下である。
○:相対せん断粘度が2より大きく3以下である。
△:相対せん断粘度が3より大きく5以下である。
×:相対せん断粘度が5より大きい。
【0036】
<低温下での肌なじみ>
健常パネラー10人が、4℃に静置した実施例および比較例の固形状油性クレンジング料を肌に塗布し、低温下での肌なじみについて下記評点基準により3段階で相対評価した。10名の合計点を算出し、以下の評価基準により評価した。
(評点基準)
3点:低温下での肌なじみが良好である。
2点:低温下での肌なじみがやや良好である。
1点:低温下での肌なじみが良好ではない。
(評価基準)
◎:25点以上
○:20点以上、25点未満
△:20点未満
【0037】
<50℃での保形性>
実施例および比較例の固形状油性クレンジング料をガラス製ジャー容器に入れ、50℃において直径25mm、75gの重りを乗せ、重りの沈み具合を下記基準で視覚判定することにより、50℃での保形性の評価を行った。
(評価基準)
○:重りがまったく沈まない。
△:重りがわずかに沈み、表面からの発汗が生じる。
×:重りが沈み、形状の崩れが生じる。
【0038】
<幅広い温度域での保存安定性>
実施例および比較例の固形状油性クレンジング料を30gガラス製ジャー容器に入れて密封し、4℃および50℃の恒温槽へ保管した。1週間後の固形状油性クレンジング料の外観を下記基準で視覚判定することにより、4℃および50℃での保存安定性の評価を行った。
(評価基準)
◎:外観の変化が全くない。
○:外観にごくわずかに発汗が認められる。
△:明らかに発汗が認められる。
×:分離している。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1から明らかなように、実施例1~11は、いずれもメイクの汚れ落ち、相対せん断粘度、50℃での保形性に優れ、低温下で使用しても肌なじみがよく、幅広い温度域での安定性が良好であった。
【0042】
これに対して、表2から明らかなように、比較例1では、成分(A)の含有量が少なすぎるため、相対せん断粘度が劣り、保形性および安定性が良好ではなかった。
比較例2では、成分(A)の含有量が多すぎるため、メイクの汚れ落ちが良好でなく、低温下での肌なじみが良好ではなかった。
比較例3では、成分(B)の含有量が少なすぎるため、メイクの汚れ落ちが良好ではなかった。
比較例4では、示差熱曲線における所定範囲の面積の割合が低いので成分(A)に該当しない炭化水素系ワックスを使用しているため、相対せん断粘度が大きく、低温下での肌なじみが良好ではなかった。
比較例5では、成分(C)に代えてHLB値の大きいノニオン性界面活性剤とHLB値の小さいノニオン性界面活性剤とを用いているため、相対せん断粘度が大きく、50℃での保形性および保存安定性が良好ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の固形状油性クレンジング化粧料は、肌上のメイクアップ化粧料や汚れを除去するためのクレンジング料として、また顔面を除く全身の皮膚上に適用された医薬品、医薬部外品、化粧品を除去するためのクレンジング料として利用することかできる。