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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030371
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】気密端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20220210BHJP
   H01R 43/20 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H01R9/16 101
H01R43/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134357
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 典史
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福本 雅史
【テーマコード(参考)】
5E063
5E086
【Fターム(参考)】
5E063HA01
5E063HB03
5E086PP07
5E086PP48
5E086QQ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気密端子において封着部の気密信頼性を向上する。
【解決手段】気密シールする金属部材の所望表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子10。すなわち、少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環と、この金属外環の貫通孔に挿通したリードと、金属外環とリードとを封着する絶縁材とを備え、リードおよび金属外環からなる金属部材のうち所望の金属部材の所定表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環と、この金属外環の前記貫通孔に挿通したリードと、前記金属外環とを封着する絶縁材とを備え、前記リードまたは前記金属外環の表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子。
【請求項2】
前記機械的表面処理痕は、対象表面の微細点刻、または対象表面へのメカニカル/メカノケミカル作用による前記粒子構成物の固着物、または対象表面と該粒子とが反応した反応生成物、の何れか1つ以上からなる請求項1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記粒子は、セラミックス、ガラス、プラスチックス、金属、金属化合物、反応性固体の群から選択された請求項1または請求項2に記載の気密端子。
【請求項4】
前記リードまたは前記金属外環は、ステンレス鋼または銅である請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の気密端子。
【請求項5】
前記ステンレス鋼は、鉄クロム合金からなる請求項4に記載の気密端子。
【請求項6】
前記リードまたは前記金属外環は、表面にニッケルめっき皮膜を有する請求項1ないし請求項5の何れか1つに記載の気密端子。
【請求項7】
少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環と、この金属外環の前記貫通孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを封着する絶縁材とを備え、該リードまたは該金属外環は、表面に粒子固着層を有する気密端子。
【請求項8】
前記前記粒子は、セラミックス、ガラス、プラスチックス、金属、反応性固体の群から選択された請求項7に記載の気密端子。
【請求項9】
前記リードまたは前記金属外環は、ステンレス鋼または銅である請求項7または請求項8記載の気密端子。
【請求項10】
前記ステンレス鋼は、鉄クロム合金からなる請求項9に記載の気密端子。
【請求項11】
前記リードまたは前記金属外環は、表面にニッケルめっき皮膜を有する請求項7ないし請求項10の何れか1つに記載の気密端子。
【請求項12】
導通リードおよび貫通孔を有する金属外環からなる金属部材の表面の所望部分に、粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程と、絶縁材と前記リードと前記金属外環の部材を用意し前記部材のうち必要な部材を組立治具にセットする組立準備工程と、前記金属外環の前記貫通孔に前記リードを挿通し前記金属外環と前記リードとを前記絶縁材で封止する絶縁材封止工程からなる気密端子の製造方法。
【請求項13】
前記表面粒子処理工程の前工程に先めっき工程と、前記絶縁材封止工程の後工程に仕上げめっき工程とを、さらに有する請求項12に記載の気密端子の製造方法。
【請求項14】
前記組立準備工程は、さらに必要に応じて前記リードに挿着されて前記金属外環と前記リードとの沿面距離を拡張し耐トラッキング性を増すために用いる絶縁スリーブを準備し、これを絶縁材封止工程で前記リードに挿着して前記金属外環と前記リードと共に前記絶縁材で封止する工程からなる請求項12または請求項13に記載の気密端子の製造方法。
【請求項15】
リードまたは金属外環に所望の予備めっきを施す先めっき工程、該先めっきを施した前記リードまたは前記金属外環の少なくとも封着または封止したい表面に粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程と、前記金属外環と、前記リードと、前記金属外環と前記リードとを気密に固着する絶縁材とを準備する組立準備工程と、次いで前記金属外環の貫通孔に前記リードを挿通し前記金属外環と前記リードとを絶縁材で封着または封止する絶縁材封止工程、最後に前記金属外環と前記リードとが前記絶縁材で気密封止されてた組み立てられた気密端子の露出金属表面に所望のめっき皮膜を施す仕上げめっき工程によって製造されること特徴とする気密端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
気密端子は、金属外環(ハトメまたはアイレットとも言う)の挿通孔に絶縁材を介してリードを気密に封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。特に金属外環とリードを絶縁ガラスで封着するGTMS(Glass-to-Metal-Seal)タイプの気密端子は、整合封止型と圧縮封止型の2種類に大別される。前述の気密端子において信頼性の高い気密封止を確保するには、外環およびリードの金属材と絶縁ガラスの熱膨張係数を適正に選択することが重要となる。封止用の絶縁ガラスは、金属外環とリードの素材、要求温度プロファイルおよびその熱膨張係数によって決定されている。整合封止の場合、金属材と絶縁ガラスの熱膨張係数が可能な限り一致するように封止素材を選定する。一方、圧縮封止は、金属外環が絶縁ガラスおよびリードを圧縮するように意図的に異なる熱膨張係数の金属材と絶縁ガラスの材料が選択されている。
【0003】
上述の気密端子は高い気密信頼性ならびに電気絶縁性を確保するため、整合封止型気密端子においては、金属外環およびリード材に広い温度範囲でガラス材と熱膨張係数が一致しているコバール合金(Fe54%、Ni28%、Co18%)を使用して、両者をホウケイ酸ガラスからなる絶縁ガラスで封着し、圧縮封止型気密端子においては、使用温度範囲においてガラスに同心円状の圧縮応力が加わるように、炭素鋼またはステンレス鋼などの鋼製の金属外環と、鉄ニッケル合金(Fe50%、Ni50%)や鉄クロム合金(Fe72%、Cr28%)などの鉄合金のリード材を使用して、両者をソーダバリウムガラスからなる絶縁ガラスで封着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2019/116598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、気密端子の封着面には、特定金属のめっき被膜や特定の金属酸化物被膜を施して、これら金属材料と絶縁材との化学結合を利用して絶縁シール部の濡れや密着を確保してきた。前記被膜の形成には、めっき工程、エッチング工程、熱処理工程等が必然的に付随するため、生産性は必ずしも効率的とは言えない部分もあったが、有効な代替工法は無く専らこれらに頼らざるを得ない状況にあった。しかしながら、気密端子の用途は各種センサやリレー、ストレージ装置など広範かつ多様化しており、材料構成や要求特性も複雑高度化している。また、従来は気密端子の材料として用いられなかった材料を採用する機会も増えてきた。このような新規材料は、気密シール形成に必ずしも適しているとは限らない。また、材質や熱的特性が異なるリードと金属外環とを絶縁材により効率良く気密シールし、信頼性の高い気密端子を生産することは容易ではない。このような中、気密端子を構成する金属材料と絶縁材との濡れや密着を比較的簡便に改善ないし調製できれば便利である。
【0006】
例えば、冷凍機コンプレッサに用いられる気密端子には、低炭素鋼製の金属外環と、この金属外環の貫通孔に挿通した鉄クロム合金製のリードと、金属外環とリードとを封着するソーダガラス製の絶縁材とを備え、該リードと金属外環は、表面にニッケルめっきを施した気密端子がある。この気密端子は、耐圧容器内に冷媒と共に配置されたモータに電気供給する必要から、耐圧性に優れた圧縮封止型気密端子が用いられ、金属外環は鉄系合金が利用されることが多い鉄製外環は錆び易いためニッケルの仕上げめっきを封着後の気密端子に施す必要がある。このため、予め鉄クロム合金製リードにニッケルめっきを施し、これを鉄製外環に封着させた後、金属外環とリードに無電解ニッケルの仕上げを施す先めっき法と呼ばれる製造方法がある。
【0007】
先めっき法は、封着前の鉄クロム合金リードにニッケルめっきを施し、該ニッケルめっきリードを封着炉で金属外環に絶縁材のガラスを封着させる。リードをガラス封着した気密端子は、その後、リードと金属外環の金属面に無電解ニッケル-リンめっきの仕上げめっきを施して気密端子は完成される。先めっき法は、高温の封着炉を通す前に予めリードの全表面にニッケルめっきを施すため、クロム合金の表面酸化膜は比較的少なく強いエッチング剤を使用しなくてよい利点がある。反面、先めっき法は、リードの封着面がガラスとの密着性が劣るニッケルめっきで構成されているため、封着後にめっきとガラスの界面が剥離し易い欠点があった。従って、従来これを冷凍機のコンプレッサなどの高圧に曝される気密端子へ適用することは容易ではなかった。
【0008】
本発明の目的は、気密端子において封着部の気密信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、気密シールする金属部材の所望表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子が提供される。すなわち、少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環と、この金属外環の貫通孔に挿通したリードと、金属外環とリードとを封着する絶縁材とを備え、リードおよび金属外環からなる金属部材のうち所望の金属部材の所定表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子が提供される。該当金属部材の所定表面は、粒子を用いた機械的表面処理によって、次の何れか1つ以上の特徴を有する。1)リード材または金属外環の表面の物理的な微細点刻を有する。2)該当金属表面にメカニカル/メカノケミカル作用により、前記粒子の一部または該粒子に由来する物質の固着物を有する。3)対象表面と該粒子とが反応した反応生成物を有する。本発明に係る粒子は、上述の特徴の何れか1つ以上を実現できればよく特に限定されないが、セラミックス、ガラス、プラスチックス、金属、金属化合物(例えば、金属酸化物など)、反応性固体(例えば、酸化性固体のドライアイスなど)が好適に利用できる。なお、該粒子を用いた機械的表面処理は、上述の特徴の何れか1つ以上を実現できればよく特定の方法に限定されないが、例えば、ブラスト処理などで所望の粒子に高い運動エネルギーを与えて該当処理表面に衝突させる方法か、または、例えばバレル処理などで所望の粒子と該当処理表面とを接触させながら共に流動または振動を与える方法が好適に利用できる。
【0010】
本発明の別の観点によれば、少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環と、この金属外環の貫通孔に挿通したリードと、金属外環とリードとを封着する絶縁材とを備え、該リードまたは該金属外環は、表面に粒子固着層を有する気密端子が提供される。この粒子固着層は、該リードまたは該金属外環の母材表面にメカニカルまたはメカノケミカル作用により粒子の一部または該粒子に由来する物質を直接固着させている。すなわち、粒子の一部または該粒子に由来する物質が対象母材に固着して形成されているか、または前記母材表面と該粒子とが反応した生成物が固着している。本発明に係る粒子は、セラミックス、ガラス、プラスチックス、金属、金属化合物(例えば、金属酸化物など)、反応性固体(例えば、酸化性固体のドライアイスなど)から選択された粒子で構成される。
【0011】
一例として、電解ニッケルめっき表面にブラスト処理を適用することで、鉄クロム合金を含むステンレス鋼のリードまたは金属外環を用いた圧縮封止型気密端子に先めっき法が適用できるようになる。鉄クロム合金製リードに電解ニッケルめっきを施したリード表面をアルミナ粒子または銅粒子で機械的表面処理することにより、電解ニッケルめっきの表面にガラス親和性の固着層を形成してリード表面を活性化できる。機械的表面処理によりガラス絶縁材とニッケルとの界面剥離の心配なしに、電解ニッケルめっきリードを鉄系金属外環にガラス封着させることができる。
【0012】
本発明の気密端子は、少なくともリードまたは金属外環の絶縁材を封着する表面に所望の特性を付与させることができ、選択できる粒子の種類も無機材料、有機材料、金属材など幅広く利用でき、これまでめっき工程で成膜できなかった物質の表面コーティングを可能とする。
【0013】
本発明に係る気密端子の製造方法は、絶縁材封止工程の前に予め金属部材の所望表面に粒子を用いた機械的表面処理を施す。すなわち、絶縁材封止の前に予め金属部材の所望表面に粒子を用いた機械的表面処理を施す気密端子の製造方法であって、導通リードおよび貫通孔を有する金属外環からなる金属部材のうち所望の金属部材の所定表面に粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程と、絶縁材とリードと金属外環とを用意する組立準備工程と、金属外環の貫通孔にリードを挿通し金属外環とリードとを絶縁材で封止する絶縁材封止工程からなり、これに適宜追加されるめっき工程とを有する。組立準備工程は、さらに必要に応じてリードに挿着されて金属外環とリードとの沿面距離を拡張し耐トラッキング性を増すために用いる絶縁スリーブを準備し、これを絶縁材封止工程でリードに挿着して金属外環とリードと共に絶縁材で封止してもよい。例えば、リードまたは金属外環に所望の予備めっきを施す先めっき工程、該先めっきを施したリードまたは金属外環の少なくとも封着または封止したい表面に粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程と、前記金属外環と、前記リードと、前記金属外環と前記リードとを気密に固着する絶縁材とを準備する組立準備工程と、次いで前記金属外環の貫通孔に前記リードを挿通し前記金属外環と前記リードとを絶縁材で封着または封止する絶縁材封止工程、最後に金属外環とリードとが絶縁材で気密封止されてた組み立てられた気密端子の露出金属表面に所望のめっき皮膜を施す仕上げめっき工程によって製造される。該粒子を用いた機械的表面処理は、その処理表面に対して次の何れか1つ以上を施すことができる。1)リード材または金属外環の表面の物理的な微細点刻を施す。2)該当金属表面にメカニカル/メカノケミカル作用により、前記粒子の一部または該粒子に由来する物質を導入する。3)対象表面と該粒子とが反応して表面物性を改質する。該粒子を用いた機械的表面処理は、対象表面に対して、上述の何れか1つ以上を施すことができればよく特定の方法に限定されないが、例えば、ブラスト処理などで所望の粒子に高い運動エネルギーを与えて該当処理表面に衝突させる方法か、または、例えばバレル処理などで所望の粒子と該当処理表面とを接触させながら共に流動または振動を与える方法が好適に利用できる。
【0014】
本発明の気密端子の製造方法は、少なくともリードまたは金属外環の絶縁材を封着する表面に所望の特性を付与させることができ、選択できる粒子の種類も無機材料、有機材料、金属材など幅広く利用でき、これまでめっき工程で成膜できなかった物質の表面コーティングを可能とする。
【0015】
本発明のメカニカルまたはメカノケミカル作用とは、封止部の金属表面に機械的なインパクトを与えて、前記金属表面に粒子を物理的または化学的に固着させることをいう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る気密端子10を示し、リードに機械的表面処理を施した例であって、(a)はその平面図を、(b)は(a)のA-A線に沿って切断した正面断面図を示す。
図2】本発明に係る気密端子20を示し、リードに機械的表面処理を施した例であって、その平面図を示す。
図3】本発明に係る気密端子20を示し、リードに機械的表面処理を施した例であって、その正面図を示し、図2のD-D線に沿って切断した正面部分断面図を示す。
図4】本発明に係る気密端子20を示し、リードに機械的表面処理を施した気密端子の例であって、その下面図を示す。
図5】本発明に係る気密端子の製造方法50の工程フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る気密端子10は、気密シールする金属部材の所望表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子であって、図1に示すように、少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環11と、金属外環11の貫通孔に挿通したリード13と、金属外環11とリード13とを封着する絶縁材14とを備え、金属外環11またはリード13の表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する。本発明に係る粒子は、セラミックス、ガラス、プラスチックス、金属、金属化合物、反応性固体から選択される。前記粒子は、該粒子を用いた機械的表面処理によるメカニカル/メカノケミカル作用を利用して、リード材または金属外環の表面に物理的な微細点刻を行うか、または、リードまたは金属外環の対象表面に前記粒子の一部または該粒子に由来する物質を貫入させるなどして固着せしめるか、あるいは対象表面と該粒子とが反応するかして表面物性を改質できれば、何れの粒子を利用しても良い。例えば、アルミナ、ソーダライムガラス、炭化ケイ素、メラミン樹脂、銅、金属酸化物、ドライアイスなどの粒子が好適に利用できる。
【0018】
例えば、鉄クロム合金に電解ニッケルめっきを施したリード表面に銅粒子を用いた機械的表面処理を施した場合、ニッケルめっき表面が銅粒子により点刻されて銅粒子の一部がニッケルめっき表面に貫入され固着することで、ニッケルめっきが溶融ガラスに濡れやすい表面に改質できる。また、銅合金リード表面にドライアイス粒子を用いた機械的表面処理を施した場合には、炭酸ガスの酸化性により銅表面が適度に酸化されることにより、溶融ガラスに濡れやすいリード表面に改質できる。さらに銅合金リードにセラミクス粒子を用いた機械的表面処理を施した場合には、銅合金リード表面がセラミクス粒子により点刻されてセラミクス粒子の一部がリード表面に斑紋状ないし点描状に貫入され固着することで、リード表面に存在する前記粒子の貫入点を基点として溶融ガラスに濡れやすい表面に改質できる。鉄クロム合金リード表面にプラスチック粒子を用いた機械的表面処理を施した場合、リード表面がプラスチック粒子により点刻されて該粒子の一部がリード表面に貫入され固着することで、リードがエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に濡れやすい表面に改質できる。該粒子を用いた機械的表面処理は、金属外環11またはリード13の表面に物理的な微細点刻を有するか、該当金属表面にメカニカル/メカノケミカル作用により、前記粒子の一部または該粒子に由来する物質の固着物を有するか、対象表面と該粒子とが反応した反応生成物を有するか、何れか1つ以上を実現ことができればよく、特定の方法に限定されない。例えば、ブラスト処理などで所望の粒子に高い運動エネルギーを与えて該当処理表面に衝突させる方法か、または、例えばバレル処理などで所望の粒子と該当処理表面とを接触させながら共に流動または振動を与える方法が利用できる。
【0019】
本発明の別の観点によれば、気密シールする金属部材の表面に粒子固着層を有する気密端子であって、図1に示すように、少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環11と、金属外環11の貫通孔に挿通したリード13と、金属外環11とリード13とを封着する絶縁材14とを備え、金属外環11またはリード13は、表面に粒子固着層15を有する気密端子が提供される。本発明に係る粒子固着層15は、セラミックス、ガラス、プラスチックス、金属、金属化合物、反応性固体から選択された粒子で構成され、金属外環11またはリード13の母材表面にメカニカルまたはメカノケミカル作用により、前記粒子の一部または該粒子に由来する物質を直接固着させている。すなわち、前記粒子の一部または該粒子に由来する物質が対象母材に固着して形成されているか、または前記母材表面と該粒子とが反応した生成物が固着している。
【0020】
一例として、電解ニッケルめっき表面にブラスト処理を適用することで、鉄クロム合金などのステンレス鋼のリードを用いた圧縮封止型気密端子に先めっき法が適用できるようになる。鉄クロム合金に電解ニッケルめっきを施したリードの表面をアルミナ粒子で機械的表面処理することにより、電解ニッケルめっきの表面にガラス親和性の固着層を形成してリード表面を活性化できる。機械的表面処理によりガラス絶縁材とニッケルとの界面剥離の心配なしに、電解ニッケルめっきリードを鉄系金属外環にガラス封着させることができる。
【0021】
本発明に係る気密端子の製造方法は、絶縁材封止の前に予め金属部材の所望表面に粒子を用いた機械的表面処理を施す気密端子の製造方法50であって、図5の工程フロー図に示すように、少なくとも、該気密端子を構成する導通リードおよび貫通孔を有する金属外環からなる金属部材の表面の所望部分に、粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程52と、絶縁材と前記リードと前記金属外環の部材を用意し前記部材のうち必要な部材を組立治具にセットする組立準備工程53と、金属外環の貫通孔に前記リードを挿通し金属外環とリードとを絶縁材で封止する絶縁材封止工程54からなり、必要に応じて表面粒子処理工程52の前工程に先めっき工程51と、絶縁材封止工程54の後工程に仕上げめっき工程55とを有する。組立準備工程53は、必要に応じて、さらにリードに挿着されて金属外環とリードとの沿面距離を拡張し耐トラッキング性を増すために用いる絶縁スリーブの部材を準備し、これを絶縁材封止工程54でリードに挿着して金属外環とリードと共に絶縁材で封止してもよい。
【0022】
以下の実施例において三端子の気密端子を例示するが、リードと金属外環とを絶縁材で封止した気密端子であれば何れの形態を用いてもよい。
【実施例0023】
本発明に係る実施例1の気密端子20は、図2ないし図4に示すように、3個の貫通孔を有した炭素鋼の金属外環21と、この金属外環21の貫通孔に挿通した鉄クロム合金製の母材に電解ニッケルめっき22を施したリード23と、金属外環21とリード23とを封着するソーダバリウムガラスの絶縁材24とを備え、該リード23は、表面に銅粒子の機械的表面処理痕を有する。実施例1の気密端子20のリード23は、めっき22の表面に銅の粒子固着層24を有することを特徴とする。
【0024】
実施例1の気密端子の製造方法50は、図5に示すように、先ず鉄クロム合金製のリードに電解ニッケルめっきを施す先めっき工程51と、前記めっきを施したリードの表面に銅粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程52と、表面粒子処理により点刻されて銅粒子の一部がリード表面に斑紋状ないし点描状に貫入され固着した3本のリードと3個の貫通孔を有する炭素鋼からなる金属外環と円管状に予備成形されたソーダバリウムガラスからなる絶縁材とを用意する組立準備工程53と、金属外環の貫通孔に各リードを挿通し金属外環とリードとの間に円管状の絶縁材を組み合わせて、高温の封着炉に通炉させてガラスを軟化させ金属外環とリードとの間を絶縁材で封止する絶縁材封止工程54により集合端子を組み立て、最後に絶縁材封止工程54で組み立てられた端子の金属部に無電解ニッケルの仕上げめっきを施す仕上めっき工程55によって製造される。
【0025】
本発明に係る実施例2の気密端子20は、図2ないし図4に示すように、3個の貫通孔を有した炭素鋼の金属外環21と、この金属外環21の貫通孔に挿通した銅製の母材に電解ニッケルめっき22を施したリード23と、金属外環21とリード23とを封着するソーダバリウムガラスの絶縁材24とを備え、リード23は、表面にアルミナ粒子を用いた機械的表面処理痕を有する。実施例2の気密端子20のリード23は、めっき22の表面に酸化アルミニウムの粒子固着層25を有することを特徴とする。
【0026】
実施例2の気密端子の製造方法50は、図5に示すように、先ず銅製のリードに電解ニッケルめっきを施す先めっき工程51と、前記先めっきを施したリードの表面にアルミナ粒子を用いた機械的表面処理を施す表面粒子処理工程52と、表面粒子処理により点刻されてアルミナ粒子の一部がリード表面に斑紋状ないし点描状に貫入され固着した3本のリードと3個の貫通孔を有する炭素鋼からなる金属外環と円管状に予備成形されたソーダバリウムガラスからなる絶縁材とを用意する組立準備工程53と、金属外環の貫通孔に各リードを挿通し金属外環とリードとの間に円管状の絶縁材を組み合わせて、高温の封着炉に通炉させでガラスを軟化させ金属外環とリードとの間を絶縁材で封止する絶縁材封止工程54により集合端子を組み立て、最後に絶縁材封止工程54で組み立てられた端子の金属部に無電解ニッケルの仕上げめっきを施す仕上めっき工程55によって製造される。
【0027】
本発明に係る気密端子のリードは気密封止できれば何れの材料を用いてもよく、鉄クロム合金に限らず、適宜、鉄ニッケル合金、炭素鋼等に変更してもよい。同様に実施例に記載の絶縁材は、リードと金属外環とを電気絶縁および気密封着できればよく、ソーダバリウムガラスに限らず任意のガラス材を用いることができるほか、必要ならばガラス材に替えてエポキシ樹脂等の樹脂材を用いてもよい。また、本発明の気密端子のリードおよび金属外環の一部にシリコーン樹脂等の絶縁被覆を装着させても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、特に高電圧・高電流に耐久し、かつ高い気密性が要求される気密端子に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
気密端子10、金属外環11、リード13、絶縁材14、粒子固着層15、気密端子20、金属外環21、めっき22、リード23、絶縁材24、粒子固着層25、気密端子の製造方法50、先めっき工程51、表面粒子処理工程52、組立準備工程53、絶縁材封止工程54、仕上めっき工程55。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
少なくとも1個の貫通孔を有した金属外環と、この金属外環の前記貫通孔に挿通したリードと、前記リードと前記金属外環とを封着する絶縁材とを備え、前記リードまたは前記金属外環の表面に粒子を用いた機械的表面処理痕を有する気密端子。