(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030373
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
F24F7/06 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134360
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591224869
【氏名又は名称】クリフ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598169011
【氏名又は名称】有限会社 隆計画
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八田 良行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和也
(72)【発明者】
【氏名】穂苅 伸博
(72)【発明者】
【氏名】福田 大空
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 彩也夏
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 正夫
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BK01
(57)【要約】
【課題】周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得る。
【解決手段】換気システム1は、横方向に延在して設けられた板部材2と、板部材2の上方に設けられ、板部材2から露出する下面に環状に設けられて、同一の周方向における斜め下に向けて空気を室内Rに供給する給気口6、及び、給気口6よりも径方向の内側に設けられ、空気を室外へ排出する排気口7を備えている給排気装置3と、板部材2から吊架され、板部材2の下方の空間Srを環状に囲繞するように、給気口6よりも径方向の外側に設けられた筒状部材4と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延在して設けられた板部材と、
当該板部材の上方に設けられ、前記板部材から露出する下面に環状に設けられて、同一の周方向における斜め下に向けて空気を室内に供給する給気口、及び、前記給気口よりも径方向の内側に設けられ、空気を室外へ排出する排気口を備えている給排気装置と、
前記板部材から吊架され、前記板部材の下方の空間を環状に囲繞するように、前記給気口よりも径方向の外側に設けられた筒状部材と、を備えている、
換気システム。
【請求項2】
前記給気口よりも径方向の内側に、前記排気口を囲繞し、かつ前記排気口から下方に延伸させるように設けられた、中空の筒体を備えている、請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記筒体は、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状とされている、請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記筒体は、円筒形状である、請求項2に記載の換気システム。
【請求項5】
前記筒体は、円筒形状の第1筒部と、前記第1筒部の下端に、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状となるように形成された第2筒部を備えている、請求項2に記載の換気システム。
【請求項6】
前記筒体は、高さが、前記筒状部材の高さの半分以上となるように形成されている、請求項2から5のいずれか一項に記載の換気システム。
【請求項7】
前記筒状部材の高さは、500mm以上650mm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内で局所的に発生する、臭気、加熱作業に起因する熱や汚染空気、タバコの煙、粉塵、オイルミスト等を換気(排気)するため、局所換気システムが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、略円錐形状の送風チャンバー内に形成された空間内に導入された空気を、周方向に所定の間隔を保って多数配設された旋回流生成ステータによって旋回方向のベクトルを大きく付与して、空気吹出口から螺旋状の旋回流(旋回渦流)として吹き出すとともに、送風チャンバーの内側に吸気フードを備えた構成のトルネード型気流制御装置が開示されている。このような構成では、室内に吹き出した螺旋状の旋回流は、エアカーテン流を形成し、その内側に、吸気フードによって排気方向に吸引される吸引力により竜巻状に上昇する渦流(吸気旋回渦流)が形成されて、局所領域の換気作用が実現される。
特許文献1に開示されたような構成は、狭小な室内での使用を前提としている。すなわち、特許文献1の構成では、室内空間を形成するように設けられた建屋の壁により、室内に吹き出した螺旋状の旋回流は、周囲に拡散せずに旋回渦流を維持しつつ2~3m程度下方へと流れていく。これに対し、このような装置を、例えば工場等の広い空間に設置しようとした場合、室内に吹き出した螺旋状の旋回流は、下方に向かって40~50cm程度進んだ時点で、外周側に拡散してしまう。螺旋状の旋回流をより下方まで流すために、装置の周囲に壁を構築することは、特に工場においては作業に支障を来すために、現実的ではない。このため、旋回流の内側に竜巻状の渦流が十分に発生せず、意図する換気作用が得られないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることができる、換気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の換気システムは、横方向に延在して設けられた板部材と、当該板部材の上方に設けられ、前記板部材から露出する下面に環状に設けられて、同一の周方向における斜め下に向けて空気を室内に供給する給気口、及び、前記給気口よりも径方向の内側に設けられ、空気を室外へ排出する排気口を備えている給排気装置と、前記板部材から吊架され、前記板部材の下方の空間を環状に囲繞するように、前記給気口よりも径方向の外側に設けられた筒状部材と、を備えている。
このような構成によれば、横方向に延在して設けられた板部材から露出して設けられた環状の給気口から室内に供給される空気は、同一の周方向における斜め下に向けて流れる。この斜め下に向けて流れた空気は、径方向の外側に広がっていき、給気口よりも径方向の外側に設けられた筒状部材の内周面に突き当たった後に、筒状部材の内周面に沿って流れる。これにより、給気口から下方に向かって渦巻き状に旋回しながら流れていく旋回流が発生する。
このように、給気口から吹き出された空気は、筒状部材の内周面に突き当たって旋回流となるため、径方向の外側への拡散が規制される。その後は、旋回流は、筒状部材の内周面に沿いつつ、旋回しながら下方に流れていき、筒状部材の下端からさらに下方へも、旋回状態を維持しながら流れていく。
このようにして生成される旋回流の径方向の内側では、排気口で空気を吸い込むことで排出口の下方空間に負圧が生じ、下方から上方の排気口に向かって連続する竜巻状の渦流が生成される。この渦流によって空気が下方から上方へと運ばれ、排気口を通して室外へと排出される。
これにより、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、本発明の換気システムは、前記給気口よりも径方向の内側に、前記排気口を囲繞し、かつ前記排気口から下方に延伸させるように設けられた、中空の筒体を備えている。
このような構成によれば、旋回流の径方向の内側に生じる、下方から上方に向かって連続する竜巻状の渦流が、板部材近傍まで到達し得ない場合であっても、中空の筒体により竜巻状の渦流の上端が捕捉され、中空の筒体を通して排気口へと空気が排出される。これにより、旋回流の径方向の内側における、空気の排出を、より効率良く行うことができる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明の換気システムは、前記筒体が、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状とされている。
このような構成によれば、筒体の下端が拡径しているので、筒状部材の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流の径方向の内側で、中空の筒体を通して排気口へと排出する渦流の空気を、より効率良く回収することができる。また、筒状部材の内周面と、筒体の外周面との隙間の断面積が、上方から下方に向かって漸次小さくなる。これにより、筒状部材の内側で下方に向かって旋回しながら流れる旋回流の流速が高まり、筒状部材の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流の勢いが、より強くなる。したがって、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より顕著なものとすることができる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の換気システムは、前記筒体が、円筒形状である。
このような構成によれば、筒体を容易に製作することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の換気システムは、前記筒体が、円筒形状の第1筒部と、前記第1筒部の下端に、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状となるように形成された第2筒部を備えている。
このような構成によれば、截頭円錐形状の第2筒部の下端が拡径しているので、筒状部材の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流の径方向の内側で、中空の筒体を通して排気口へと排出する渦流の空気を、より効率良く回収することができる。また、筒状部材の内周面と、筒体の外周面との隙間の断面積が、截頭円錐形状の第2筒部において、上方から下方に向かって漸次小さくなる。これにより、筒状部材の内側で下方に向かって旋回しながら流れる旋回流の流速が高まり、筒状部材の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流の勢いが、より強くなる。したがって、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より顕著なものとすることができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明の換気システムは、前記筒体は、高さが、前記筒状部材の高さの半分以上となるように形成されている。
このような構成によれば、渦流の空気をより効率良く回収し、旋回流の流速をより高めることができる。これにより、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より確実に得ることができる。
【0012】
本発明の一態様においては、本発明の換気システムは、前記筒状部材の高さが、500mm以上650mm以下である
このような構成によれば、形成された旋回流が、より下方まで到達するようになる。これにより、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周囲に壁のない空間であっても、十分な換気作用を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る換気システムの構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の換気システムのI-I部分断面図である。
【
図4】
図1の換気システムを移設する場合の例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る換気システムの第1変形例の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る換気システムの第2変形例の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施例における検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による換気システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る換気システムの構成を示す断面図を
図1に示す。
図2は、
図1の換気システムのI-I部分断面図である。
図3は、
図1の換気システムの拡大断面図である。
【0016】
図1~
図3に示されるように、換気システム1は、板部材2と、給排気装置3と、筒状部材4と、筒体5と、を備えている。
板部材2は、横方向に延在して設けられている。特に本実施形態においては、板部材2は、水平に設けられている。板部材2は、本実施形態においては、図示されない天井スラブから吊架され固定されている、鋼板である。板部材2は、本実施形態においては、後述する筒状部材4と略同等の輪郭形状となるように、円形に形成されている。
給排気装置3は、板部材2の上方に配置されている。給排気装置3は、板部材2に形成された開口2aから下面が露出するように設けられている。給排気装置3は、ケーシング31と、ケーシング31内に設けられた排気管32と、上部仕切板33と、下部筒状体34と、下部仕切板35と、複数の案内羽根36と、を有している。
【0017】
図3に示すように、ケーシング31は、上下方向Dvに延びる円筒状をなしている。ケーシング31の上端部31tは閉塞されている。ケーシング31の下端部31bは、下方に向かって開口している。
排気管32は、上下方向Dvに延びる円筒状で、ケーシング31よりも小さな径寸法を有している。排気管32は、ケーシング31と同心状に配置されている。排気管32は、後に詳述する上部仕切板33、及び下部仕切板35を上下方向Dvに貫通して設けられている。排気管32は、下部仕切板35の下側に拡径部32aを有している。拡径部32aは、排気管32における下部仕切板35よりも上側の中間部32bよりも拡径されている。拡径部32aは、給排気装置3の下面において下方に向かって開口し、空気を室内Rから室外へ排出する排気口7を形成している。排気管32は、上部仕切板33よりも上方で、上下方向Dvに直交する径方向Drに屈曲し、径方向Drの外側に向かって延びる接続管部32cを有している。接続管部32cは、ケーシング31を貫通してケーシング31から径方向Drの外側に突出し、外部の排気ダクト102に接続される。排気管32は、排気ダクト102に設けられたファン(図示無し)等により、排気口7から室内Rの空気を吸い込む。
【0018】
上部仕切板33は、ケーシング31内の上部に設けられている。上部仕切板33は、上下方向Dvに直交する水平面に沿って設けられ、ケーシング31内を上下に仕切っている。
下部筒状体34は、ケーシング31内の下部に設けられている。下部筒状体34の上端は、上部仕切板33の下方に上下方向Dvに所定間隔をあけて配置されている。下部筒状体34は、ケーシング31よりも径寸法が小さく、かつ、排気管32の拡径部32aよりも径寸法が大きい。下部筒状体34は、ケーシング31と同心状に設けられている。これにより、ケーシング31と下部筒状体34との間には、円環状で上下方向Dvに連続する環状流路37が形成されている。環状流路37は、給排気装置3の下面において下方に向かって開口し、空気を室内Rに供給する環状の給気口6を形成している。環状流路37は、下部筒状体34の上端とケーシング31との間で上方に向かって開口している。
下部仕切板35は、上部仕切板33と平行に設けられている。下部仕切板35は、下部筒状体34の上端と、排気管32の外周面との隙間を閉塞している。
【0019】
上部仕切板33と下部仕切板35との間で、ケーシング31の内周面と排気管32の中間部32bの外周面との間には、上下方向Dvから見て断面円環状のチャンバー室38が形成されている。ケーシング31の外周面には、給気管39が設けられている。
図2に示すように、給気管39は、円環状のチャンバー室38の接線方向に延び、その一端がケーシング31を貫通してチャンバー室38に連通している。給気管39の他端には、外部の給気ダクト101が接続される。この給気管39を通して、図示しないファン等の給気手段によって、給気ダクト101からチャンバー室38に空気が供給される。
【0020】
複数の案内羽根36は、ケーシング31の内周面と下部筒状体34の外周面との間の環状流路37に設けられている。複数の案内羽根36は、ケーシング31の中心軸回りの周方向Dcに間隔を開けて設けられている。
図3に示すように、各案内羽根36は、上端36aから下端36bに向かって、上下方向Dvに対して、周方向Dcの一方側から他方側に傾斜して設けられている。各案内羽根36は、上下方向Dvに直交する径方向Dr(水平方向)に対し、所定の傾斜角度θで傾斜して設けられている。各案内羽根36の傾斜角度θは、例えば、10~30°が望ましい。実際には、この傾斜角度θはより浅いほうが望ましくはあるが、浅すぎると製造が容易でなくなるため、現実的には、傾斜角度θは15~20°とするのが、より好ましい。
【0021】
筒状部材4は、板部材2から吊架されている。筒状部材4は、上下方向Dvに延びる円筒状を成している。筒状部材4は、その上端が、板部材2によって塞がれている。筒状部材4は、給排気装置3のケーシング31よりも大きな径寸法を有している。これにより、筒状部材4は、給気口6よりも径方向Drの外側に設けられている。筒状部材4は、板部材2の下方の室内Rの空間Srの、特に給排気装置3の近傍に位置する上方の部分を、環状に囲繞するように設けられている。筒状部材4は、例えば、筒状部材4の直径を1500mm、給気口6の直径を600mm程度としたときに、上下方向Dvの高さH1が、500mm以上650mm以下とするのが好ましい。
【0022】
筒体5は、板部材2の下側に設けられている。筒体5は、その上端が給排気装置3の下面に固定されている。筒体5は、中空の筒状で、給排気装置3の下面(下端)から下方に延伸させるように設けられている。筒体5の上端5tは、給気口6よりも径方向Drの内側に設けられている。筒体5の上端5tは、排気口7よりも径方向Drの外側に設けられている。これにより、筒体5は、排気口7を囲繞するように設けられている。筒体5の上下方向Dvの高さH2は、筒状部材4の高さH1の半分以上、かつ筒状部材4の高さH1以下であるのが好ましい。
本実施形態において、筒体5は、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状とされている。
【0023】
このような換気システム1において、給排気装置3では、給気管39を通してケーシング31内のチャンバー室38に空気を供給する。すると、給気管39から供給された空気は、円環状のチャンバー室38内で、チャンバー室38の内周面に沿って周方向Dcに旋回しながら、その下方の環状流路37に流れ込む。環状流路37内に流れ込んだ空気は、周方向Dcに旋回しながら、複数の案内羽根36の間を通って環状の給気口6から下方の室内Rに流出される。このようにして、給気口6は、同一の周方向Dcにおける斜め下に向けて空気を供給する。ここで、給気口6から室内Rに流出する空気の流れは、複数枚の案内羽根36の傾斜角度θに応じて、水平方向に対して10~30°の角度、より好ましくは15~20°の角度で吐出される。
このようにして、板部材2に露出して設けられた環状の給気口6から室内Rに供給される空気は、同一の周方向における斜め下に向けて流れる。この斜め下に向けて流れた空気は、径方向Drの外側に広がっていき、給気口6よりも径方向Drの外側に設けられた筒状部材4の内周面に突き当たった後に、筒状部材4の内周面に沿って流れる。これにより、給気口6から下方に向かって渦巻き状に旋回しながら流れていく旋回流F1が発生する。
このように、給気口6から径方向Drの外側に吹き出された空気は、筒状部材4の内周面に突き当たって旋回流F1となるため、径方向Drの外側への拡散が規制される。その後は、旋回流F1は、筒状部材4の内周面に沿いつつ、旋回しながら下方に流れていき、筒状部材4の下端からさらに下方の床面9(
図1参照)に向かって、旋回状態を維持しながら流れていく。
このようにして生成される旋回流F1の径方向Drの内側では、排気口7で空気を吸い込むことで排気口7の下方の空間Srに負圧が生じ、下方から上方の排気口7に向かって連続する竜巻状の渦流F2が生成される。この渦流F2によって排気口7の下方の空間Srの空気が下方から上方へと運ばれ、排気口7を通して室外へと排出される。
【0024】
上述したような換気システム1によれば、横方向に延在して設けられた板部材2と、板部材2の上方に設けられ、板部材2から露出する下面に環状に設けられて、同一の周方向Dcにおける斜め下に向けて空気を室内Rに供給する給気口6、及び、給気口6よりも径方向Drの内側に設けられ、空気を室外へ排出する排気口7を備えている給排気装置3と、板部材2から吊架され、板部材2の下方の空間Srを環状に囲繞するように、給気口6よりも径方向Drの外側に設けられた筒状部材4と、を備えている。
このような構成によれば、上記のような作用により、周囲に壁のない空間Srであっても、十分な換気作用を得ることが可能となる。
【0025】
また、換気システム1は、給気口6よりも径方向Drの内側に、排気口7を囲繞し、かつ排気口7から下方に延伸させるように設けられた、中空の筒体5を備えている。
このような構成によれば、旋回流F1の径方向Drの内側に生じる、下方から上方に向かって連続する竜巻状の渦流F2が、板部材2近傍まで到達し得ない場合であっても、中空の筒体5により竜巻状の渦流F2の上端が捕捉され、中空の筒体5を通して排気口7へと空気を案内することができる。これにより、旋回流F1の径方向Drの内側における、渦流F2による空気の排出を、より効率良く行うことができる。
【0026】
また、筒体5が、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状である。
このような構成によれば、截頭円錐形状の筒体5の下端が拡径しているので、中空の筒体5を通して排気口7へと排出する渦流F2の空気を、より効率良く回収することができる。また、筒状部材4の内周面と、筒体5の外周面との隙間の断面積が、上方から下方に向かって漸次小さくなる。これにより、筒状部材4の内側で下方に向かって旋回しながら流れる旋回流F1の流速が高まり、筒状部材4の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流F1の勢いが、より強くなる。したがって、周囲に壁のない空間Srであっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より顕著なものとすることができる。
【0027】
また、筒体5は、高さH2が、筒状部材4の高さH1の半分以上となるように形成されている。
このような構成によれば、渦流F2の空気をより効率良く回収し、旋回流F1の流速をより高めることができる。これにより、周囲に壁のない空間Srであっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より確実に得ることができる。
【0028】
また、筒状部材4の高さH1が、500mm以上650mm以下である。
このような構成によれば、形成された旋回流F1が、より下方まで到達するようになる。これにより、周囲に壁のない空間Srであっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より確実に得ることができる。
【0029】
また、本実施形態においては、換気システム1は、板部材2と、給排気装置3と、筒状部材4と、筒体5とが、互いに連結されて、これらにより一つのユニットとして形成されている。このようにして、板部材2を含んで換気システム1をユニット化することで、
図4に示すように、工場等において、換気システム1を、給気ダクト101や排気ダクト102から取り外し、他の給気ダクト101や排気ダクト102に接続すれば、例えば天井パネル等の既存設備の改装工事等を行うことなく、換気システム1の移設を容易に行うことができる。
【0030】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の換気システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、筒体5を截頭円錐台形状としたが、これに限らない。
図5に示すように、筒体5Bを、上下方向Dvで一定の径寸法を有した円筒形状としてもよい。
このような構成によれば、筒体5Bを、容易に製作することができる。
【0031】
(実施形態の第2変形例)
また、
図6に示すように、筒体5Cが、円筒形状の第1筒部52と、第1筒部52の下端に、上方から下方に向かって径寸法が漸次拡径する截頭円錐形状となるように形成された第2筒部53を備えているようにしてもよい。
このような構成によれば、截頭円錐形状の第2筒部53の下端が拡径しているので、筒状部材4の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流F1の径方向Drの内側で、中空の筒体5を通して排気口7へと排出する渦流F2の空気を、より効率良く回収することができる。また、筒状部材4と筒体5との隙間の断面積が、截頭円錐形状の第2筒部53において、上方から下方に向かって漸次小さくなる。これにより、筒状部材4の内側で下方に向かって旋回しながら流れる旋回流F1の流速が高まり、筒状部材4の下端から下方に向かって旋回しながら流れる旋回流F1の勢いが、より強くなる。その結果、周囲に壁のない空間Srであっても、十分な換気作用を得ることが可能となるという効果を、より顕著なものとすることができる。
【0032】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【実施例0033】
次に、上記実施形態で示したような筒状部材4、及び筒体5を備えた換気システム1について検証を行ったので、その結果を示す。
【0034】
まず、上記実施形態で示したような構成において、給気口6からの給気と排気口7からの排気の双方を実施する場合と、給気口6からの給気を行わず、排気口7からの排気のみを行った場合(給気流量は0m3/h)との比較を行った。給気口6からの給気を行う場合、その給気流量は、1100m3/h、1300m3/hの2通りとした。また、筒状部材4の高さH1は500mmとした。
それぞれの条件において、排気口7の鉛直下方の床面9上に、ミスト状の油煙を粉塵として発生させ、排気口7を通して捕集された油煙の量を計測した。捕集された油煙の量(mg/h)と、排気風量(m3/h)との比から、粉塵濃度(mg/m3)を算出した。
【0035】
その結果を、
図7に示す。
図7に示すように、給気口6からの給気を行わず、排気口7からの排気のみを行った場合に比較し、給気口6からの給気と排気口7からの排気の双方を実施した場合では、給気流量に関わらず、粉塵(油煙)の捕集率が向上していた。また、給気口6からの給気を行わず、排気口7からの排気のみを行った場合では、明確な渦流F2の発生が認められなかったのに対し、給気口6からの給気と排気口7からの排気の双方を実施した場合では、給気流量に関わらず、竜巻状の渦流F2が発生していることが、目視によって確認された。つまり、竜巻状の渦流F2を発生することで、粉塵(油煙)を、より確実に捕集することが可能となっている。
【0036】
次に、換気システム1の各部の条件について様々に異ならせ、その検証を行ったので、検証結果を以下に示す。
(検証条件)
検証条件は、表1に示すようなものとした。
【表1】
筒状部材4(フード)は、径寸法(直径)1500mmとし、高さH1を300mm、500mm、600mm、650mmの4通りとした。
筒体5(ベルマウス)は、截頭円錐台形状とし、上端5tの直径D1を300mm、下端5bの径寸法(直径)D2(
図3参照)は、600mm、800mm、1000mmの3通り、高さH2は150mm、300mm、500mmとした。また、比較のため、筒体5を備えない場合についても検討した(表1の条件No12、13)。
【0037】
給排気装置3は、ケーシング31の径寸法を600mmとし、案内羽根36の傾斜角度θを15°とした。また、給気口6からの給気風量は、800m
3/h、900m
3/h、1000m
3/h、1100m
3/h、1200m
3/h、1300m
3/hの6通りとした。排気口7からの排気風量は、900m
3/hとした。
板部材2の高さHt(
図1参照)は、2100mm、2200mm、2300mm、2400mmの4通りとした。
【0038】
これらの条件を組み合わせた検証条件No.1~No.51について、排気口7の鉛直下方の床面上に、ミスト状の油煙を粉塵として発生させ、竜巻状の渦流F2の発生状況を目視により確認し、「◎」、「〇」、「△」の3段階で評価した。評価が「◎」となるほど、渦流F2が顕著に発生する。
その結果を表1に示す。
【0039】
表1に示すように、例えば、筒体5の直径D2のみを異ならせた、検証条件No.26、30、39の比較から、筒体5の直径D2は、大きい方が、渦流F2の発生が顕著なものとなっている。
【0040】
また、例えば、筒状部材4の高さH1のみを異ならせた、検証条件No.17、23、31、36の比較から、筒状部材4の高さH1は、500mm以上とすることで、渦流F2の発生が顕著なものとなっている。
【0041】
また、例えば、筒体5の高さH2のみを異ならせた、検証条件No.10、23、28の比較から、筒体5の高さH2は、筒状部材4の高さH1の半分(1/2)以上とすることで、渦流F2の発生が顕著なものとなっている。