IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宮城県の特許一覧 ▶ 東北興商株式会社の特許一覧

特開2022-30374田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置
<>
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図1
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図2
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図3
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図4
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図5
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図6
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図7
  • 特開-田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030374
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
A01G25/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134361
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】591074736
【氏名又は名称】宮城県
(71)【出願人】
【識別番号】501126630
【氏名又は名称】東北興商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】小泉 慶雄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 幸生
(57)【要約】
【課題】水田の水位調整装置に用いる新規の田んぼダム用堰板を提供する。
【解決手段】田んぼダム用堰板は、前面側で水田に面して着脱可能に配置される水位調整板と、水位調整板の左右両側に設けられ水位調整板を位置決めするための縦溝を有する側壁と、水位調整板の後側に設けられ水位調整板の上端を超えた水を排出するための排水孔を有する後壁とを有する水位調整装置に配置される。この田んぼダム用堰板は、側壁に設けられる縦溝に差し込み可能に左右に設けられ且つ縦方向に延びる平面状のフランジと、フランジから後側に第1の奥行き長さを有する錐体状の立体を形成する立体形成面とを備え、立体形成面は、フランジの位置から前後方向に第1の奥行き長さ離れた位置に設けられる孔と、孔の位置からフランジの位置に向かって傾斜する傾斜面とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側で水田に面して着脱可能に配置される水位調整板と、前記水位調整板の左右両側に設けられ前記水位調整板を位置決めするための縦溝を有する側壁と、前記水位調整板の後側に設けられ前記水位調整板の上端を超えた水を排出するための排水孔を有する後壁とを有する水位調整装置に配置される田んぼダム用堰板において、
前記側壁に設けられる縦溝に差し込み可能に左右に設けられ且つ縦方向に延びる平面状のフランジと、
前記フランジから後側に第1の奥行き長さを有する錐体状の立体を形成する立体形成面とを備え、
前記立体形成面は、前記フランジの位置から前後方向に前記第1の奥行き長さ離れた位置に設けられる孔と、前記孔の位置から前記フランジの位置に向かって傾斜する傾斜面とを備えることを特徴とする田んぼダム用堰板。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記孔の位置から前記フランジの位置に向かって左右方向に傾斜する第1の面と、前記孔の位置から前記フランジ位置に向かって上方向に傾斜する第2の面とを有することを特徴とする請求項1に記載の田んぼダム用堰板。
【請求項3】
前記第2の面は、傾斜角度が異なる連続する少なくとも2つの面から形成されることを特徴とする請求項2に記載の田んぼダム用堰板。
【請求項4】
前記孔は、前記フランジから後側に第2の奥行き長さを有する先細の筒形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の田んぼダム用堰板。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の田んぼダム用堰板が配置された水位調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田に一定量の雨水を貯水できるようにするダム機能を持たせるための水位調整装置に用いる田んぼダム用堰板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化により頻発する豪雨被害を軽減するための方策として、水田に一時的に雨水を貯めてダム化するいわゆる「田んぼダム」の取組が実施されている。田んぼダムは、水田に設置されている水位調整装置を利用して実施され、田んぼダムに用いることができる水位調整装置が各種提案されている(特許文献1乃至8)。
【0003】
水位調整装置は、畦畔に設置される落水桝であり、落水桝に設置される水位調整板の高さを変えることで、稲の生育状況に合わせて水田の水位を調整することができる。水位調整板の高さを超える分の水量は、水位調整板を超えて、落水桝から排水路に流れて排出される。降雨の際、水位調整板より高さがあり且つ排水量を調整するための孔が穿設されているある田んぼダム用堰板を落水桝に追加的に配置することで、水田により多くの水を貯めることができるようになり、一時的に排水路から河川への流れ込む水量を抑制する。これにより、降雨による河川の増水のピークをずらし、下流域での急激な水位上昇を抑え、洪水による水害を予防することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-110543号公報
【特許文献2】特開2014-132851号公報
【特許文献3】特開2012-120510号公報
【特許文献4】特開2019-60092号公報
【特許文献5】特許第5914744号公報
【特許文献6】特許第5939526号公報
【特許文献7】特開2017-36623号公報
【特許文献8】特開2017-74011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既設の水位調整装置は田んぼダム用堰板を設置できない構造のものもあり、その場合、水田に田んぼダム機能を持たせるには、田んぼダム用堰板を設置可能な別の水位調整装置に取替交換する必要があり、そのための多大なコストと作業のために田んぼダムの普及・拡大の遅れを招いている。この度、本願の発明者は、田んぼダム機能を有しないさまざまな形状・サイズの既設の水位調整装置に田んぼダム機能を持たせることができる田んぼダム用堰板を開発した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、水田の水位調整装置に用いる新規の田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の田んぼダム用堰板は、前面側で水田に面して着脱可能に配置される水位調整板と、前記水位調整板の左右両側に設けられ前記水位調整板を位置決めするための縦溝を有する側壁と、前記水位調整板の後側に設けられ前記水位調整板の上端を超えた水を排出するための排水孔を有する後壁とを有する水位調整装置に配置される田んぼダム用堰板であって、前記側壁に設けられる縦溝に差し込み可能に左右に設けられ且つ縦方向に延びる平面状のフランジと、前記フランジから後側に第1の奥行き長さを有する錐体状の立体を形成する立体形成面とを備え、前記立体形成面は、前記フランジの位置から前後方向に前記第1の奥行き長さ離れた位置に設けられる孔と、前記孔の位置から前記フランジの位置に向かって傾斜する傾斜面とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、さまざまな形状・サイズの既設の水位調整装置に田んぼダム機能を持たせることができる汎用性の高い田んぼダム用堰板およびこれを用いた水位調整装置が提供される。また、水位調整板を超えた水の流れをスムーズに流すことができ、設計通りの田んぼダム機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態における田んぼダム用堰板の構成例を示す図である。
図2図1の田んぼダム用堰板の斜視図を示す。
図3図1及び図2の田んぼダム用堰板の上側一部分を切り取った形態を示す図である。
図4図2に示す田んぼダム用堰板の水位調整装置に設置された状態を示す図である。
図5】水位調整装置に本発明の実施の形態における田んぼダム用堰板10を設置した状態を示す図である。
図6】水位調整装置に本発明の実施の形態における田んぼダム用堰板10を設置した状態を示す図である。
図7】水位調整装置に本発明の実施の形態における田んぼダム用堰板10を設置した状態を示す図である。
図8】水位調整装置に本発明の実施の形態における田んぼダム用堰板10を設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の実施の形態について、具体的な図に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態における田んぼダム用堰板の構成例を示す図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図である。また、図2図1の田んぼダム用堰板の斜視図、図3図1及び図2の田んぼダム用堰板の上側一部分を切り取った形態を示す図、図4図2に示す田んぼダム用堰板の水位調整装置に設置された状態を示す図である。
【0012】
田んぼダム用堰板10は、水位調整装置1に設置される。図4に示す水位調整装置1は、前面側2aで水田に面して着脱可能に配置される水位調整板2と、水位調整板2の左右両側に設けられその水位調整板2を位置決めするための縦溝3aを有する側壁3と、水位調整板2の後側に設けられ水位調整板2の上端を超えた水を排出するための排水孔4aを有する後壁4とを有して構成される。
【0013】
水位調整板2は、木製、合成樹脂製又は金属製の板であり、水田耕作用に水の高さを調整するためのものであり、耕作時期に応じて高さの異なる板を適宜入れ替えることで、水田の水位を調整する。水位調整板2を縦溝3aに抜き差しすることで取り替えることができる。
【0014】
水位調整装置1の側壁3に設けられる縦溝3aは、図4では、左右それぞれに2つずつ設けられている例が示される。縦溝3aが2つ設けられている場合、水田に近い側の縦溝3aには、水位調整板2が差し込まれ、その奥側のもう一つの縦溝3aには、本発明における田んぼダム用堰板10を差し込むことができる。
【0015】
また、水位調整装置1に縦溝3aが左右に一つずつのみ設けられる構成のものも存在するが(特に、既設の水位調整装置1では、縦溝3aが左右一つのものが多い)、この場合、図4に例示されるように、一つの縦溝3aに水位調整板2と本発明における田んぼダム用堰板10の両方が重なるように差し込まれ、一つの縦溝3aを共用する。この場合も、水田に面する側に水位調整版2が配置され、その奥側に田んぼダム用堰板10が配置される。
【0016】
田んぼダム用堰板10は、側壁3に設けられる縦溝3aに差し込み可能に左右に設けられ且つ縦方向に延びる平面状のフランジ12と、フランジ12から後側(奥側)に第1の奥行き長さLを有する錐体状の立体を形成する立体形成面14とを備える。そして、この立体形成面14は、フランジ12の位置から前後方向に第1の奥行き長さL1だけ離れた位置に設けられる孔16と、この孔16の位置からフランジ12の位置に向かって傾斜する傾斜面18とを有して構成される。すなわち、田んぼダム用堰板10は、孔16に向かって先細となる漏斗状に形成される。
【0017】
田んぼダム用堰板10は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂製であり、射出成形などにより一体形成される。フランジ12は、左右両側で所定幅を有して縦方向に延びる薄板状に形成され、水位調整装置1の縦溝3aに差し込まれる。水位調整板2と田んぼダム用堰板10が水位調整装置1の同じ縦溝3aに重ねてられて挿入される場合であっても、フランジ12の厚さは、水位調整板2が差し込まれている縦溝3aにフランジ12を差し込める程度の薄い厚さであり、その厚さは例えば3mm程度である。水位調整装置1の縦溝3aが左右の複数本ずつ設けられている場合は、一つの縦溝3aを共用可能であり、水位調整板2と田んぼダム用堰板10を別々の縦溝3aに差し込んで使用することもできる。このように、本発明の田んぼダム用堰板10は、田んぼダム用堰板用の縦溝3aを有しない既存の水位調整装置1にも適用することができる。
【0018】
また、水位調整装置1のさまざまな寸法・形状に対応可能とするために、例えば側壁3又はその縦溝3aの左右間の間隔長さに応じて、フランジ12の幅を狭めるようにノコギリなどの切断手段で切り取ることで、田んぼダム用堰板10の幅を縦溝3aの間隔に合わせたサイズに調整することができる。田んぼダム用堰板10上部の一部分を適当な高さ分だけ水平に切り取ることで、田んぼダム用堰板10の高さサイズも調整することができる。図3は、図2の田んぼダム用堰板10の上側一部分を切り取った形態を示す。
【0019】
田んぼダム用堰板10の高さは水位調整板2よりも高く、また、孔16は立体形成面14の最下部付近に設けられ、その口径は、水位調整装置1の排水孔4aよりも小さい。田んぼダム用堰板10が水位調整装置1に配置された場合、水位調整板2の高さを超えた分の水量は、田んぼダム用堰板10の立体形成面14の内面側から孔16を経由して、水位調整装置1の排水孔4aから排出される。立体形成面14の孔16の口径は水位調整装置1の排水孔4aより小さいため、水田からの単位時間当たりの排水量は減少し、水位調整板2より高い田んぼダム用堰板10の高さまで、水田に貯水することができる。田んぼダム用堰板10の高さを超える分の水量は、田んぼダム用堰板10の上端を超えて、直接水位調整装置1の排水孔4aから排出される。このように、本発明の田んぼダム用堰板10は、既存の水位調整装置1を含めて、さまざまな形状・サイズの水位調整装置に適応させることができ、汎用性が高い。
【0020】
立体形成面14の傾斜面18を、錐体若しくは漏斗形状となるように孔16に向かって傾斜する面とすることで、立体形成面14の内面側の水の流れがスムーズとなり、孔16が目詰まりすることなく、孔16に向かって速やかに流下するようになる。水位調整板2と田んぼダム用堰板10の間の水の流れが乱れると、田んぼダム用堰板10の孔16に草の葉、茎、根などのゴミが詰まり、必要な排水量を確保できない事態もありうる。本発明の田んぼダム用堰板10は、孔16に向かって傾斜する面で構成される立体形成面14とすることで、ゴミが孔16に引っかからないスムーズな水の流れを生み出す。
【0021】
また、田んぼダム用堰板10は、前後方向に奥行き長さを有する立体形成面14とすることで、水位調整板2と田んぼダム用堰板10が水位調整装置1の同じ縦溝3aに挿入された場合であっても、水位調整板2とダム用堰板10の間に水が流れる間隔・空間を作り出すことができる。
【0022】
特に、図1乃至図4に示す例では、田んぼダム用堰板10の傾斜面18は、孔16の位置からフランジ12の位置に向かって左右方向に傾斜する第1の面18aと、孔16の位置からフランジ12の位置に向かって上方向に傾斜する第2の面18bとを有する。さらに、この第2の面18bは、傾斜角度が異なる連続する少なくとも2つの面から形成される。傾斜角度が異なる2つの面に区分することで、その境界線は、田んぼダム用堰板10上部の一部分を適当な高さ分だけ水平に切り取る際の目安とすることができる。傾斜面18により形成される立体形成面14の形状は、図示されるような多面体による形態例に限らず、例えば、円錐状や椀形状などの湾曲した面による形態でもよい。
【0023】
立体形成面14の孔16は、第2の奥行き長さL2を有する筒形状であり、その筒形状は先細形状である。したがって、孔16の口径は、その根元部分から先端部分に向かって連続的に変化し、筒横断面を任意の位置で切り落とすことで、その口径を変え、排水量を調整することができる。水位調整装置1が設置されている水田の貯水能力に応じて、孔16の口径を最適に設定することができる。
【0024】
図5乃至図8は、さまざまなタイプの水位調整装置に本発明の田んぼダム用堰板10を設置した状態を示す図である。図5は、比較的高さのある深型のコンクリート製水位調整装置を示し、田んぼダム用堰板10は、その上端位置が水位調整板2より高い位置になるように、木製板状台20の上に載置されて配置される。側壁3の縦溝3aは左右に一本ずつであるため、田んぼダム用堰板10のフランジ12は、水位調整板2と同一の縦溝3aに差し込まれている。
【0025】
図6は、図5の水位調整装置より高さの低い小型のコンクリート製水位調整装置を示し、田んぼダム用堰板10は、それ自体の高さが水位調整板2より高いため、木製板状台に載せずそのまま水位調整板2と重ねて配置される。
【0026】
図7は、比較的高さのある深型のポリエチレン製水位調整装置を示し、田んぼダム用堰板10は、その上端位置が水位調整板2より高い位置になるように、木製板状台20の上に載置されて配置される。側壁3の縦溝3aは左右に二本ずつ設けられているが、田んぼダム用堰板10のフランジ12は、水位調整板2と同一の縦溝3aに差し込まれている。
【0027】
図8は、図7の水位調整装置より高さの低い小型のポリエチレン製水位調整装置を示し、田んぼダム用堰板10は、それ自体の高さが水位調整板2より高いため、木製板状台に載せられずそのまま水位調整板2と重ねて配置され、さらに、高さ調整のために田んぼダム用堰板10の上側の一部分が水平に切り取られた形態で配置される。
【0028】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1:水位調整装置、2:水位調整板、2a:前面側、3:側壁、3a:縦溝、4:後壁、4a:排水孔、10:田んぼダム用堰板、12:フランジ、14:立体形成面、16:孔、18:傾斜面、18a:第1の面、18b:第2の面、20:木製板状台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8