(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030409
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】マイクロ波照射装置、及びマイクロ波照射方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/70 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
H05B6/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134438
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】植村 和史
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆平
(72)【発明者】
【氏名】塚原 保徳
(72)【発明者】
【氏名】今泉 卓三
(72)【発明者】
【氏名】芝 尚紀
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AB11
3K090BA01
3K090CA02
3K090NB04
3K090NB07
(57)【要約】
【課題】マイクロ波の照射対象物の所定の箇所を効率よく加熱することができるマイクロ波照射装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波照射装置1は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器11と、マイクロ波発生器11からのマイクロ波を伝送するための導波管12であって、導波管12の長手方向に直交する断面が導波管12の先端の開口に向かって徐々に小さくなるテーパ部22を有する導波管12と、テーパ部22の先端を通過するようにマイクロ波の照射対象物3を移動させる移動部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器からのマイクロ波を伝送するための導波管であって、前記導波管の長手方向に直交する断面が前記導波管の先端に向かって小さくなるテーパ部を有する導波管と
を備えたマイクロ波照射装置。
【請求項2】
前記テーパ部の先端を通過するようにマイクロ波の照射対象物を移動させる移動部をさらに備える、請求項1記載のマイクロ波照射装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記導波管内の前記マイクロ波の照射対象物を当該導波管の長手方向に移動させ、前記開口から外部に移動させる、請求項2記載のマイクロ波照射装置。
【請求項4】
前記マイクロ波の照射対象物は、長尺である、請求項3記載のマイクロ波照射装置。
【請求項5】
前記テーパ部は、当該テーパ部の長手方向に直交する方向の矩形状の断面における短辺が前記開口に向かって短くなるように形成されている、請求項1から請求項4のいずれか記載のマイクロ波照射装置。
【請求項6】
前記導波管は、
前記テーパ部と、
前記マイクロ波発生器に一端が接続され、他端が前記テーパ部に接続される本体部と
を有する、請求項1から請求項5のいずれか記載のマイクロ波照射装置。
【請求項7】
前記本体部は、前記照射対象物を前記導波管内に移動させるための開口を有する、請求項6記載のマイクロ波照射装置。
【請求項8】
前記テーパ部の長さは、前記導波管内を伝搬する周波数のマイクロ波に関する自由空間波長の2倍以上である、請求項1から請求項7記載のマイクロ波照射装置。
【請求項9】
マイクロ波を発生させるステップと、
前記マイクロ波を伝送するための導波管であって、前記導波管の長手方向に直交する断面が前記導波管の先端の開口に向かって小さくなるテーパ部を有する導波管における前記テーパ部の先端を通過するようにマイクロ波の照射対象物を移動させるステップと
を含むマイクロ波照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波の照射対象物にマイクロ波を照射するためのマイクロ波照射装置、及びマイクロ波照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂シートをプレートヒータによって加熱した後に、ローラで圧延することが行われていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例では、ローラで樹脂シートを圧延する直前に加熱することが困難であった。一般的にいえば、加熱工程から次の工程までの所要時間を短縮することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に応じてなされたものであり、その第1の目的は、対象物を加熱してから次の工程までの所要時間を短縮することができるマイクロ波照射装置及びマイクロ波照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、マイクロ波発生器からのマイクロ波を伝送するための導波管であって、導波管の長手方向に直交する断面が導波管の先端に向かって小さくなるテーパ部を有する導波管とを備えたものである。
【0007】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、テーパ部の先端を通過するようにマイクロ波の照射対象物を移動させる移動部をさらに備えてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、移動部は、導波管内のマイクロ波の照射対象物を導波管の長手方向に移動させ、開口から外部に移動させてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、マイクロ波の照射対象物は、長尺であってもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、テーパ部は、テーパ部の長手方向に直交する方向の矩形状の断面における短辺が開口に向かって短くなるように形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、導波管は、テーパ部と、マイクロ波発生器に一端が接続され、他端がテーパ部に接続される本体部とを有してもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、本体部は、照射対象物を導波管内に移動させるための開口を有してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置では、テーパ部の長さは、導波管内を伝搬する周波数のマイクロ波に関する自由空間波長の2倍以上であってもよい。
【0014】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射方法は、マイクロ波を発生させるステップと、マイクロ波を伝送するための導波管であって、導波管の長手方向に直交する断面が導波管の先端の開口に向かって小さくなるテーパ部を有する導波管におけるテーパ部の先端を通過するようにマイクロ波の照射対象物を移動させるステップとを含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によるマイクロ波照射装置及びマイクロ波照射方法によれば、導波管の先端に向かって断面を小さくしてマイクロ波を集中して照射可能とすることによって、対象物の一部の箇所を先端近傍で効率よく加熱することができる。そのため、対象物を加熱してから次の工程までの所要時間を短縮するができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態によるマイクロ波照射装置の構成を示す模式図
【
図2】同実施の形態におけるテーパ部及びマイクロ波の照射対象物を示す斜視図
【
図3】同実施の形態における移動部の構成を示す模式図
【
図4A】同実施の形態におけるテーパ部の長手方向に垂直な断面を示す断面図
【
図4B】同実施の形態におけるテーパ部の長手方向に垂直で
図4Aよりも先端側の断面を示す断面図
【
図5】同実施の形態におけるシミュレーション結果を示す図
【
図6】同実施の形態におけるシミュレーション結果を示す図
【
図7A】同実施の形態におけるテーパ部の他の一例を示す模式図
【
図7B】同実施の形態におけるテーパ部の他の一例を示す模式図
【
図8】同実施の形態におけるテーパ部の他の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるマイクロ波照射装置、及びマイクロ波照射方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるマイクロ波照射装置は、導波管に設けられたテーパ部の先端においてマイクロ波の照射対象物にマイクロ波を集中的に照射するものである。
【0018】
図1は、本実施の形態によるマイクロ波照射装置1の構成を示す模式図である。
図2は、テーパ部22及びマイクロ波の照射対象物3を示す斜視図である。
図3は、移動部13の構成を示す模式図である。
【0019】
本実施の形態によるマイクロ波照射装置1は、マイクロ波発生器11と、マイクロ波発生器11に本体部21が接続される本体部21及びテーパ部22を有する導波管12とを備え、さらに移動部13を備えることができる。マイクロ波照射装置1は、少なくとも導波管12が有するテーパ部22の先端において、マイクロ波の照射対象物3(以下、「対象物3」と呼ぶこともある。)にマイクロ波を照射して加熱するものである。
【0020】
対象物3は、長尺のもの、すなわち、シート状、板状、紐状、棒状などの一方向に延びたものである。換言すれば、対象物3は、長手方向の長さが、幅方向の長さよりも長いものである。なお、シート状または紐状の対象物3は柔軟性を有していてもよく、板状または棒状の対象物3は柔軟性を有していなくてもよい。また、対象物3は、シート状、板状、紐状、棒状などの一方向に延びた成形品を製造するための材料であってもよく、化学反応の材料であってもよく、乾燥の対象となるものであってもよく、マイクロ波の照射の対象となるその他のものであってもよい。なお、本実施の形態では、対象物3がシート状のものである場合について主に説明する。
【0021】
通常、対象物3へのマイクロ波の照射は、対象物3を移動させながら、すなわち連続式で行われる。なお、対象物3は、継続的に移動していてもよく、移動と停止とを繰り返してもよい。
【0022】
対象物3へのマイクロ波の照射は、例えば、対象物3を軟化させるために行われてもよく、対象物3の融解、昇華、または蒸発のために行われてもよく、対象物3の反応のために行われてもよく、対象物3の焼成のために行われてもよく、対象物3の殺菌のために行われてもよく、その他の用途のために行われてもよい。対象物3の反応は、例えば、化学反応であってもよい。本実施の形態では、マイクロ波を照射することによって、熱可塑性のシート状の対象物3を軟化させる場合について主に説明する。対象物3へのマイクロ波の照射は、例えば、常圧、減圧下、または加圧下で行われてもよい。また、マイクロ波の照射は、例えば、空気、または不活性ガスの気流下で行われてもよく、または、そうでなくてもよい。不活性ガスは、例えば、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、または窒素であってもよい。
【0023】
マイクロ波発生器11は、マイクロ波を発生させる。マイクロ波発生器11は、例えば、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロンなどを用いてマイクロ波を発生させてもよく、半導体素子を用いてマイクロ波を発生させてもよい。マイクロ波の周波数は、例えば、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、24GHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。また、マイクロ波の強度は、図示しない制御部によって適宜、制御されてもよい。その制御は、例えば、対象物3の温度、対象物3の水分量などのセンシング結果を用いたフィードバック制御であってもよい。
【0024】
導波管12は、マイクロ波発生器11からのマイクロ波を伝送するものであり、一端がマイクロ波発生器11に接続された本体部21と、本体部21のマイクロ波発生器11と反対側の端部に接続されたテーパ部22とを有する。導波管12は、中空導波管であってもよい。
【0025】
本体部21は、一実施形態において、長手方向に直交する断面が矩形状である方形導波管である。なお、
図1に示されるように、一部が折れ曲がっていてもよく、または直線状であってもよい。一部が折れ曲がっている場合には、本体部21は、例えば、直線導波管とコーナ導波管とを組み合わせることによって構成されてもよい。また、本体部21は通常、断面が矩形状である矩形導波管であるが、断面が円形状である円形導波管を一部に含んでいてもよい。テーパ部22の長手方向に直交する断面は矩形状であるため、円形導波管を有する本体部21は、テーパ部22との接続箇所では断面が矩形状となるように、円形導波管を方形導波管に変換するための変換導波管を有してもよい。
【0026】
テーパ部22は、導波管12の長手方向または導波方向に直交する断面が導波管12の先端の開口24に向かって徐々に小さくなる導波管である。すなわち、テーパ部22は、対向する一対のテーパ面22aを有しており、マイクロ波発生器11側から先端に向かって先細りになっている。先端とは、導波管12のマイクロ波発生器11と反対側の端部のことである。
図4Aは、
図1におけるIVA-IVA線断面図であり、
図4Bは、
図1におけるIVB-IVB線断面図である。テーパ部22は、例えば、
図2、
図4A、
図4Bで示されるように、テーパ部22の長手方向に直交する方向の矩形状の断面における短辺が先端の開口24に向かって徐々に短くなり、矩形状の断面における長辺の長さは変化しないように形成されていてもよい。なお、後述するように、矩形状の断面における長辺も、先端の開口24に向かって徐々に短くなってもよい。
図4A、
図4Bで示されるように、テーパ部22の長手方向に直交する断面における空間部分の断面積は、開口24に向かって小さくなっており、テーパ部22の長手方向に直交する断面における対向する一対のテーパ面22aの間隔も、開口24に向かって小さくなっている。なお、一対のテーパ面22aのそれぞれの角度は、テーパ部22の長手方向の長さに応じて変わることになる。本実施の形態では、このようにテーパ部22が構成されている場合について主に説明し、それ以外の場合については後述する。
【0027】
テーパ部22の長手方向の長さが短い場合には、
図5のシミュレーション結果で示されるように、本体部21からテーパ部22に入射するマイクロ波の反射が大きくなり、テーパ部22の先端の開口24付近にマイクロ波が集中しないことになる。
図5は、テーパ部22の長手方向の長さと、テーパ部22に導入されるマイクロ波の反射率との関係の電場解析のシミュレーション結果を示している。なお、当該シミュレーションでは、テーパ部22の本体部21側の開口の大きさを109.2×54.6(mm)、テーパ部22の先端の開口24の大きさを100×3.2(mm)、対象物3の長手方向に直交する断面の大きさを80×3.0(mm)、対象物3の電気伝導率を1000(S/m)、マイクロ波の周波数を2.45GHzとした。
図5で示されるように、テーパ部22の長さが長くなるに応じて、マイクロ波の反射率が低くなることがわかる。したがって、テーパ部22の長手方向の長さは、例えば、導波管12内を伝搬する周波数のマイクロ波に関する自由空間波長の2倍以上の長さであることが好適であり、3倍以上の長さであることがさらに好適である。周波数が2.45GHzであるマイクロ波の自由空間波長の2倍は約245(mm)であるため、
図5のシミュレーション結果から、テーパ部22の長手方向の長さを、導波管12内を伝搬する周波数のマイクロ波に関する自由空間波長の2倍以上の長さとすることによって、テーパ部22におけるマイクロ波の反射率が55%未満となり、テーパ部22においてエネルギー効率のよいマイクロ波の照射を実現できることがわかる。
図6は、テーパ部22における対象物3によるマイクロ波の吸収に関するシミュレーション結果を示す図である。
図6のシミュレーション結果において、シミュレーションの条件は、
図5と同じにした。また、テーパ部22の長さは400(mm)とした。
図6において、白いほど、より多くのマイクロ波が吸収されていることを示している。したがって、テーパ部22の開口24付近、換言すれば導波管12の先端近傍において適切なマイクロ波の照射を実現できることがわかる。また、矩形状の開口24の短手方向の長さは、対象物3と開口24との間の隙間が小さくなるように決められてもよい。開口24の短手方向の長さは、例えば、数ミリメートル程度であってもよい。また、テーパ部22の各側面は、
図2で示されるように、それぞれ平面であってもよい。
【0028】
本実施の形態では、導波管12の内部を対象物3が移動するため、導波管12に、対象物3を導入するための開口を有する導入部23が設けられていてもよい。対象物3を導波管12内に移動させるための開口は、本体部21が有していてもよい。なお、導波管12の内部のマイクロ波が外部に漏洩することを防止するため、導入部23の開口には、チョーク構造などのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられていてもよい。
【0029】
移動部13は、テーパ部22の先端を通過するように対象物3を移動させる。より具体的には、移動部13は、導波管12内の対象物3を導波管12の長手方向に移動させ、開口24から外部に移動させる。
図1で示されるように、本体部21が折れ曲がっている場合には、対象物3を導波管12の長手方向に移動させるとは、対象物3を導波管12の少なくとも一部において長手方向に移動させることであってもよい。導波管12の内部から外部への対象物3の移動は、導波管12の外部において、対象物3を開口24から引き出すことによって行われてもよい。本実施の形態では、移動部13が、カバー30と、カバー30内の一対の圧延ローラ31,32と、一対の圧延ローラ31,32を回転させる回転機構33とを備える場合について主に説明する。
【0030】
カバー30と、テーパ部22の先端の開口24との間からマイクロ波が漏洩しないように両者が接続されていることが好適である。例えば、カバー30にも開口24と同サイズの開口が設けられており、そのカバー30の開口と、テーパ部22の開口24とが接続されていてもよい。カバー30は、マイクロ波を透過しないもので構成されていることが好適である。カバー30は、例えば、マイクロ波反射性の材料によって構成されてもよい。マイクロ波反射性の材料は、例えば、金属であってもよい。金属は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などであってもよい。
【0031】
一対の圧延ローラ31,32は、開口24から対象物3を引き出すと共に、対象物3を圧延する。対象物3は、テーパ部22の先端の開口24を通過する際に加熱され軟化されているため、圧延ローラ31,32によって容易に圧延することができる。例えば、圧延ローラ31,32によって、数ミリメートル程度の厚さのシート状の対象物3が数マイクロメートル程度の厚さに圧延されてもよい。
【0032】
回転機構33は、
図3で示されるように、ギヤ331,332,333と、モータ334とを有しており、一対の圧延ローラ31,32をそれぞれ回転させる。具体的には、ギヤ331は圧延ローラ31と同軸に接続されており、ギヤ332は圧延ローラ32と同軸に接続されており、両ギヤ331,332は噛み合っている。また、ギヤ332に噛み合うようにギヤ333が設けられており、ギヤ333はモータ334と同軸に接続されている。したがって、モータ334が回転駆動することによってギヤ333が回転され、ギヤ331,332が回転されることによって、圧延ローラ31,32がそれぞれ逆方向に回転され、対象物3が圧延される。なお、回転機構33は、
図3で示される以外の構成であってもよいことは言うまでもない。例えば、回転機構33は、圧延ローラ31,32をそれぞれ回転させる2個の回転駆動手段を有していてもよい。また、モータ334の回転は、ギヤ以外の回転伝達手段、例えば、プーリとベルトとを用いて圧延ローラ31,32に伝達されてもよい。
【0033】
なお、移動部13は、上記した以外の構成であってもよい。例えば、対象物3の圧延を行わなくてもよい場合には、移動部13は、対象物3を挟んで搬送するための一対の搬送ローラと、その搬送ローラを回転させる回転機構とを有するものであってもよい。その搬送ローラは、例えば、
図1と同様に、開口24の下流側において対象物3を移動させてもよく、または、導入部23の上流側において対象物3を移動させてもよい。
【0034】
また、テーパ部22の開口24と接続されているカバー30の開口に、チョーク構造などのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられていてもよい。また、そのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられていない場合には、カバー30から対象物3が出る箇所において、チョーク構造などのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられていてもよい。また、テーパ部22の先端の開口24にマイクロ波の漏洩防止機構が設けられていてもよい。
【0035】
次に、本実施の形態によるマイクロ波照射装置1による対象物3へのマイクロ波の照射について簡単に説明する。まず、マイクロ波発生器11によってマイクロ波を発生させる。また、移動部13のモータ334による回転駆動を開始させ、一対の圧延ローラ31,32をそれぞれ回転させる。マイクロ波発生器11によって発生されたマイクロ波は、導波管12内を伝搬してテーパ部22の先端側に進行する。導波管12の導入部23から導入されたシート状の対象物3は、導波管12の本体部21を通り、テーパ部22に進む。そして、テーパ部22の先端に集中しているマイクロ波が照射された対象物3は加熱されて軟化され、一対の圧延ローラ31,32によって圧延されてあらかじめ決められた厚さになる。このようにして圧延されたシート状の対象物3は、適宜、巻き取りローラなどによって巻き取られてもよい。このように、マイクロ波の照射、シート状の対象物3の移動が継続されることにより、順次、圧延シートが製造されることになる。圧延シートは、例えば、導電性を有するシートであってもよい。そのシートは、例えば、熱可塑性樹脂にカーボンが練り込まれたものであってもよい。なお、対象物3が紐状または棒状のものである場合には、移動部13によって、複数の紐状または棒状の対象物3を平行して移動させてもよい。
【0036】
次に、本実施の形態によるマイクロ波照射装置1の変形例について説明する。
【0037】
[テーパ部の他の形状]
本実施の形態では、テーパ部22が、長手方向に直交する方向の矩形状の断面の短辺が開口24に向かって徐々に短くなり、断面の長辺の長さは変化しない
図2で示される形状を有する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。
図7A、
図7Bで示されるように、テーパ部22の長手方向に直交する方向の矩形状の断面における長辺も、開口24に向かって徐々に短くなるようにテーパ部22が形成されていてもよい。なお、
図7Aは、本体部21及びテーパ部22の長手方向に直交する方向の断面における矩形の長辺の方向が紙面に垂直な方向となる図面であり、
図7Bは、その断面における矩形の短辺の方向が紙面に垂直な方向となる図面である。また、その矩形状の断面における長辺について、短辺と同様に開口24における長さを短くした場合には、テーパ部22でのマイクロ波の反射が大きくなり、先端にまでマイクロ波が到達しないことになる。そのため、例えば、
図7Bで示されるように、開口24における長辺の長さは、導波管12において伝送されるマイクロ波の管内波長の半分より短くならないことが好適である。すなわち、開口24における長辺の長さは、マイクロ波の管内波長の半分以上の長さであることが好適である。一方、開口24における短辺の長さについては、そのような制限はない。
【0038】
また、本実施の形態では、テーパ部22において、矩形状の断面における短辺が開口24に向かって徐々に短くなる際に、
図1で示されるように矩形状の断面における長辺を有する対向する側面がそれぞれ均等に傾斜する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、
図8で示されるように、テーパ部22において、矩形状の断面における短辺が開口24に向かって徐々に短くなる際に、矩形状の断面における長辺を有する対向する側面の一方のみが傾斜してもよく、その対向する側面が不均等に傾斜してもよい。なお、
図8は、本体部21及びテーパ部22の長手方向に直交する方向の断面における矩形の長辺の方向が紙面に垂直な方向となる図面である。また、矩形状の断面における短辺を有する対向する側面が傾斜する際にも同様である。
【0039】
以上のように、本実施の形態によるマイクロ波照射装置1によれば、テーパ部22の先端において集中したマイクロ波を、対象物3に照射することができる。したがって、対象物3のうち、テーパ部22の先端に局所的に集中してマイクロ波を照射して効率よく加熱することができる。その結果、加熱工程から次の工程、例えば、圧延工程までの所要時間を短縮することができる。また、対象物3が導波管12の内部を移動する場合には、テーパ部22の導波管12内においても、対象物3にマイクロ波を照射することができるようになる。したがって、対象物3が開口24に到達する前においてもある程度は加熱することができる。例えば、開口24の手前側においても、対象物3を予備加熱することができるようになる。また、開口24を通過する際に、集中してマイクロ波を照射することができ、集中的な加熱を行うことができる。さらに、対象物3が開口24を通過するように構成することによって、マイクロ波の反射率のより高い対象物3、例えば、導電性を有する対象物3についても加熱を行うことができるようになる。
【0040】
また、マイクロ波によって対象物3を加熱するため、効率よく対象物3を加熱することができ、電気ヒータなどを用いて加熱して圧延シートを製造する場合と比較して省エネルギー化を実現することもできる。
【0041】
また、移動部13が一対の圧延ローラ31,32と回転機構33とを有する場合には、テーパ部22の先端の開口24を通過する際に加熱された対象物3を圧延することができ、例えば、薄膜状の圧延シートを製造することができる。また、圧延シートの製造において、省エネルギー化を実現できる。
【0042】
なお、本実施の形態では、導波管12が本体部21を有する場合について説明したが、テーパ部22のみを有することも考えられる。その場合には、テーパ部22の大きい方の開口にマイクロ波発生器11が接続されてもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、マイクロ波照射装置1が移動部13を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。対象物3は、マイクロ波照射装置1の外部の移動部によって移動されてもよい。
【0044】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 マイクロ波照射装置
3 マイクロ波の照射対象物
11 マイクロ波発生器
12 導波管
13 移動部
22 テーパ部
31、32 圧延ローラ
33 回転機構