IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンファインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インクジェット記録装置 図1
  • 特開-インクジェット記録装置 図2
  • 特開-インクジェット記録装置 図3
  • 特開-インクジェット記録装置 図4
  • 特開-インクジェット記録装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030430
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134468
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立原 祐司
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056FA10
2C056HA37
2C056HA38
(57)【要約】
【課題】画像の記録時においてキャリッジに接触し、キャリッジに対するサブキャリッジの主走査方向の位置を決める突出部の摩耗を抑制することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置Aにおいて、サブキャリッジ23における主走査方向の端面23dには、主走査方向に突出する突出部23bと、副走査方向において突出部23bと隣接して配置され、主走査方向に突出する突出部23cが設けられ、サブキャリッジ23が、記録ヘッド21により記録媒体に画像を記録しない時に位置する位置に配置されている場合、突出部23bはキャリッジ24に接触することなく、突出部23cはキャリッジ24に接触し、サブキャリッジ23が、記録ヘッド21により記録媒体に画像を記録する時に位置する位置に配置されている場合、突出部23cはキャリッジ24に接触することなく、突出部23bはキャリッジ24に接触し、サブキャリッジ23のキャリッジ24に対する主走査方向の位置を決める。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを着脱自在に保持するサブキャリッジと、
前記サブキャリッジを支持し、第1方向に移動可能であり、前記第1方向の移動に伴って前記サブキャリッジと前記記録ヘッドを前記第1方向に移動させるキャリッジと、
を備え、
前記サブキャリッジが前記キャリッジに対して前記第1方向と直交する第2方向に移動可能なインクジェット記録装置において、
前記サブキャリッジにおける前記第1方向の端面には、前記第1方向に突出する第1突出部と、前記第2方向において前記第1突出部と隣接して配置され、前記第1方向に突出する第2突出部が設けられ、
前記サブキャリッジが、前記記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録しない時に位置する第1位置に位置する場合、前記第1突出部は前記キャリッジに接触することなく、前記第2突出部は前記キャリッジに接触し、
前記サブキャリッジが前記第1位置から前記第2方向に移動して、前記記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する時に位置する第2位置に位置する場合、前記第2突出部は前記キャリッジに接触することなく、前記第1突出部は前記キャリッジに接触し、前記サブキャリッジの前記キャリッジに対する前記第1方向の位置を決めることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記キャリッジにおいて、前記サブキャリッジの前記端面と対向する対向部には、前記サブキャリッジに向かって前記第1方向に突出する第3突出部が設けられ、
前記サブキャリッジが前記第1位置に位置する場合、前記キャリッジの前記第3突出部には、前記サブキャリッジの前記第2突出部が接触することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1突出部、前記第2突出部、前記第3突出部は、それぞれ二箇所ずつ設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記サブキャリッジが前記第1位置に位置する時に前記第2突出部を前記キャリッジに押し付け、前記サブキャリッジが前記第2位置に位置する時に前記第1突出部を前記キャリッジに押し付けるように、前記サブキャリッジを前記第1方向に付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記サブキャリッジを前記第1位置と前記第2位置とに移動させる移動部材を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記移動部材は、前記サブキャリッジに接触して前記サブキャリッジを前記第1位置に保持させる第1部分と、前記サブキャリッジに接触して前記サブキャリッジを前記第2位置に保持させる、前記第1部分と前記第1方向及び前記第2方向の位置が異なる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分を繋ぐ、前記第1方向に対して傾斜した斜面である第3部分と、を有し、
前記移動部材は、前記サブキャリッジとの接触位置が、前記第1部分と前記第2部分との間で前記第3部分を介して切り替えられるように、前記サブキャリッジに対して前記第1方向に移動自在に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記サブキャリッジを前記第2方向に付勢して前記移動部材に押し付ける他の付勢部材を備えることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット記録装置として、記録ヘッドを保持するキャリッジを主走査方向に往復移動させながら、記録ヘッドから記録媒体に対してインクを吐出することにより、文字や図形等の画像を記録する構成が広く知られている。
【0003】
また特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、記録ヘッドを着脱可能に保持し、キャリッジに対して副走査方向に移動可能となるように構成され、キャリッジに支持されたサブキャリッジを備える構成が記載されている。特許文献1の構成では、キャリッジによって記録ヘッドを主走査方向に移動させつつ、サブキャリッジによって記録ヘッドを副走査方向に移動させながら、記録ヘッドにより停止した状態の記録媒体に対して画像を記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-116091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、サブキャリッジの主走査方向の端面から主走査方向に突出する突出部がキャリッジに接触することにより、サブキャリッジのキャリッジに対する主走査方向の位置が決められている。
【0006】
ここでインクジェット記録装置の運搬時などに振動が生じ、振動によって突出部とキャリッジとが摺動して突出部が摩耗する場合、サブキャリッジのキャリッジに対する位置精度が低下するおそれがある。このようにサブキャリッジの位置精度が低下する場合、サブキャリッジに保持されている記録ヘッドの位置精度が低下するため、記録媒体に対する画像の位置ずれ(レジずれ)が発生し、画像品質が低下するおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、画像の記録時においてキャリッジに接触し、キャリッジに対するサブキャリッジの主走査方向の位置を決める突出部の摩耗を抑制することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るインクジェット記録装置の代表的な構成は、記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを着脱自在に保持するサブキャリッジと、前記サブキャリッジを支持し、第1方向に移動可能であり、前記第1方向の移動に伴って前記サブキャリッジと前記記録ヘッドを前記第1方向に移動させるキャリッジと、を備え、前記サブキャリッジが前記キャリッジに対して前記第1方向と直交する第2方向に移動可能なインクジェット記録装置において、前記サブキャリッジにおける前記第1方向の端面には、前記第1方向に突出する第1突出部と、前記第2方向において前記第1突出部と隣接して配置され、前記第1方向に突出する第2突出部が設けられ、前記サブキャリッジが、前記記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録しない時に位置する第1位置に位置する場合、前記第1突出部は前記キャリッジに接触することなく、前記第2突出部は前記キャリッジに接触し、前記サブキャリッジが前記第1位置から前記第2方向に移動して、前記記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する時に位置する第2位置に位置する場合、前記第2突出部は前記キャリッジに接触することなく、前記第1突出部は前記キャリッジに接触し、前記サブキャリッジの前記キャリッジに対する前記第1方向の位置を決めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェット記録装置において、画像の記録時にキャリッジに接触し、キャリッジに対するサブキャリッジの主走査方向の位置を決める突出部の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インクジェット記録装置の断面概略図である。
図2】インクジェット記録装置により記録された画像を例示した図である。
図3】キャリッジとサブキャリッジを下から見た図である。
図4】キャリッジとサブキャリッジを下から見た図である。
図5】キャリッジとサブキャリッジを下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<インクジェット記録装置>
以下、まず本発明に係るインクジェット記録装置の全体構成を、画像の記録動作とともに図面を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、単色のインクを用いて記録媒体にバーコードやバーコードに関連する文字などの画像を記録するものである。記録媒体としては、例えば封筒やハガキなどの郵便物が想定される。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
図1は、インクジェット記録装置Aの斜視図である。図1に示す様に、インクジェット記録装置Aは、記録媒体Pが載置される載置部11を備える。載置部11は、ユーザによって記録媒体Pが載置、又は取り出されるセット位置と、セット位置から上昇して記録媒体Pに画像が記録される記録位置との間を鉛直方向(矢印Z方向、-Z方向)に移動可能に構成されている。載置部11は、不図示のセンサによって記録媒体Pが載置されたことが検出されると上昇し、セット位置から記録位置へ移動する。また載置部11が記録位置に位置する時、記録媒体Pはその厚みに関わらず一定の押圧力で載置部11の上方に配置されたプラテン部材12に押し付けられる。
【0014】
またインクジェット記録装置Aは、インクを収容し、インクをノズル21a(図3)から記録媒体Pに吐出して画像を記録する記録ヘッド21(図3)と、記録ヘッド21を着脱自在に保持するサブキャリッジ23と、サブキャリッジ23を支持するキャリッジ24を備える。記録ヘッド21は、キャリッジ24に設けられた不図示の回路基板を介して、インクジェット記録装置Aの不図示のCPUに電気的に接続されている。不図示のCPUは、不図示のホストコンピュータから送信された画像データに応じて記録ヘッド21の駆動を制御し、画像データに応じた画像を記録させる。
【0015】
キャリッジ24は、ガイドレール31に係合するとともに、不図示のモータの駆動力によって移動する駆動ベルト32に接続されている。モータが駆動すると、駆動ベルト32が主走査方向(矢印X方向、-X方向)に移動し、これにより駆動ベルト32に連結されているキャリッジ24がガイドレール31にガイドされながら主走査方向に移動する。またキャリッジ24の主走査方向の移動に伴い、キャリッジ24に支持されているサブキャリッジ23や、サブキャリッジ23に保持されている記録ヘッド21も主走査方向に移動する。またガイドレール31の近傍には、主走査方向に沿ってリニアエンコーダ33が設けられている。キャリッジ24に設けられた不図示のフォトセンサは、リニアエンコーダ33を読み取ることによってキャリッジ24の主走査方向の位置を検出する。
【0016】
サブキャリッジ23は、キャリッジ24に対し、副走査方向(矢印Y方向、-Y方向)に移動可能となるように構成されている。副走査方向(第2方向)は、主走査方向(第1方向)に対して直交する方向である。サブキャリッジ23が副走査方向へ移動するための構成については後述する。またサブキャリッジ23に形成された抜け止め部23vは、キャリッジ24に形成され、副走査方向に延びる孔部24vにそれぞれ係合する。抜け止め部23vは、キャリッジ24の孔部24vを通過してキャリッジ24の内側から外側へ出ており、外側に位置する鉤形部がサブキャリッジ23に引っ掛かることでサブキャリッジ23のキャリッジ24に対する抜け止めを行う。
【0017】
次に、インクジェット記録装置Aによる画像の記録動作について説明する。まず載置部11に記録媒体Pがセットされると、載置部11がセット位置から記録位置に移動し、載置部11に載置されている記録媒体Pがプラテン部材12に押し付けられて位置が固定される。
【0018】
次に、キャリッジ24が矢印X方向へ移動を開始する。そして記録ヘッド21がプラテン部材12に形成された開口部12aを通過する際、不図示のホストコンピュータから送信される画像データに基づいて記録ヘッド21がインクを吐出し、記録媒体Pに第一列目の画像の記録を行う。これにより記録媒体Pには、図2(a)に示す往路分の画像が記録される。なお、記録ヘッド21によるインクの吐出タイミングは、キャリッジ24に設けられた不図示のフォトセンサがリニアエンコーダ33を読み取ることで検出されたキャリッジ24の位置情報に基づいて、不図示のCPUにより制御される。
【0019】
次に、記録媒体Pに第一列目の画像が記録された後、サブキャリッジ23は矢印Y方向に移動される。その後、キャリッジ24は、矢印-X方向へ移動を開始する。そして記録ヘッド21がプラテン部材12に形成された開口部12aを通過する際、不図示のホストコンピュータから送信された画像データに基づいて記録ヘッド21がインクを吐出し、記録媒体Pに第二列目の画像の記録を行う。これにより記録媒体Pには、図2(b)に示す往路分と復路分の画像が記録される。このように記録媒体Pに対して画像の記録が行われる。
【0020】
本実施形態では、インクジェット記録装置Aにより記録される画像の副走査方向の最大幅は1インチであるのに対し、記録ヘッド21の副走査方向の記録領域は0.5インチである。そこで上述したように、サブキャリッジ23の副走査方向の移動によって記録ヘッド21を移動させることにより記録ヘッド21を用いて1インチの画像を記録する。
【0021】
次に、載置部11が記録位置から下降してセット位置に移動する。その後、ユーザがセット位置に位置する載置部11に載置された記録媒体Pを取り出すことにより、一連の画像の記録動作が終了する。
【0022】
<サブキャリッジの副走査方向の移動>
次に、サブキャリッジ23の副走査方向の移動について説明する。
【0023】
図3図4は、キャリッジ24とサブキャリッジ23を下から見た図である。図3図4に示す様に、サブキャリッジ23は、バネ28(他の付勢部材)によってシフトバー25(移動部材)に向かって矢印-Y方向に付勢されている。シフトバー25は、サブキャリッジ23を副主走査方向に移動させる部材であり、サブキャリッジ23に対して主走査方向にスライド移動自在となるように、キャリッジ24に支持されている。
【0024】
シフトバー25は、主走査方向、及び、副走査方向の位置が異なる三つの平坦部25a、25b、25cを有する。平坦部25a~25cは、主走査方向に延びる面である。平坦部25aと平坦部25bは、主走査方向に対して傾斜した斜面である傾斜部25dによって繋がっている。平坦部25b(第2部分)と平坦部25c(第1部分)は、主走査方向に対して傾斜した斜面である傾斜部25e(第3部分)によって繋がっている。サブキャリッジ23は、バー接触部23aを介して、シフトバー25の平坦部25a~25cや傾斜部25d、25eに接触する。
【0025】
図3に示す様に、インクジェット記録装置Aによって画像の記録が開始される時点において、サブキャリッジ23のバー接触部23aは、シフトバー25の平坦部25aと接触する位置に配置される。この状態でキャリッジ24が矢印X方向に移動し、記録ヘッド21により記録媒体Pに副走査方向の半分の画像が記録された後、シフトバー25の端部25gがインクジェット記録装置Aの側壁51(図1)に突き当たる。
【0026】
シフトバー25の端部25gが側壁51に突き当たると、シフトバー25は側壁51から反力を受けて矢印-X方向に移動し、図3に示す位置から図4に示す位置へ移動する。このシフトバー25の移動により、サブキャリッジ23のバー接触部23aのシフトバー25との接触位置は、平坦部25aと接触する位置から、傾斜部25dを介して、平坦部25bと接触する位置へ移行する。これによりサブキャリッジ23が矢印Y方向に移動して図4に示す状態となる。
【0027】
次に、キャリッジ24が矢印-X方向に移動し、記録ヘッド21により記録媒体Pに副走査方向の半分の画像が記録された後、シフトバー25の端部25fは、インクジェット記録装置Aの側壁52(図1)に突き当たる。シフトバー25の端部25fが側壁52に突き当たると、シフトバー25が側壁52から反力を受けて矢印X方向へ移動し、図4に示す位置から図3に示す位置へ移動する。このシフトバー25の移動により、サブキャリッジ23のバー接触部23aのシフトバー25との接触位置は、平坦部25bと接触する位置から、傾斜部25dを介して、平坦部25aと接触する位置へ移行する。これによりサブキャリッジ23が矢印-Y方向に移動し、図3に示す状態となる。このようにして、サブキャリッジ23は次の第一列目の画像が記録可能な位置に配置される。
【0028】
またサブキャリッジ23の主走査方向の一方の端面23dには、端面23dから矢印-X方向に突出する二つの突出部23b(第1突出部)が形成されている。記録媒体Pに対して記録を行う時、即ちバー接触部23aがシフトバー25の平坦部25a、又は平坦部25bに接触する位置に位置する時、サブキャリッジ23の二つの突出部23bはキャリッジ24の壁部24aにそれぞれ接触する。これによりサブキャリッジ23のキャリッジ24に対する主走査方向の位置が決められる。
【0029】
またサブキャリッジ23の主走査方向の他方の端面23eとキャリッジ24の壁部24bとの間には、サブキャリッジ23をキャリッジ24の壁部24aに向かって付勢する板バネ27(付勢部材)が設けられている。板バネ27は、サブキャリッジ23の突出部23bがキャリッジ24の壁部24aに接触している時、突出部23bが壁部24aに押し付けられるように、サブキャリッジ23を矢印-X方向に向かって付勢する。
【0030】
<インクジェット記録装置の運搬時の構成>
上述した通り、記録媒体Pに対して記録を行う時、サブキャリッジ23の突出部23bは、キャリッジ24の壁部24aに接触し、サブキャリッジ23のキャリッジ24に対する主走査方向の位置を決める。ここで突出部23bが壁部24aに接触した状態でインクジェット記録装置Aが運搬されると、運搬時の振動によって突出部23bと壁部24aとが摺動し、突出部23bが摩耗するおそれがある。突出部23bが摩耗する場合、画像の記録時において、サブキャリッジ23のキャリッジ24に対する位置が所望の位置からずれて、サブキャリッジ23に保持された記録ヘッド21の位置精度も低下する。記録ヘッド21の位置精度が低下する場合、記録媒体Pに対する画像の位置ずれ(レジずれ)が生じ、画像品質が悪化するおそれがある。
【0031】
そこで本実施形態では、インクジェット記録装置Aの運搬時の突出部23bの摩耗を抑制するために、インクジェット記録装置Aを運搬する際、キャリッジ24の壁部24aからサブキャリッジ23の突出部23bを離間させる。以下、インクジェット記録装置Aの運搬時の構成について説明する。
【0032】
図5は、インクジェット記録装置Aの運搬時のキャリッジ24とサブキャリッジ23を下から見た図である。図5に示す様に、サブキャリッジ23の端面23dには、副走査方向において突出部23bと隣接し、矢印-X方向に突出する二つの突出部23c(第2突出部)が形成されている。突出部23cの端面23dからの矢印-X方向への突出量L2は、突出部23bの端面23dからの矢印-X方向への突出量L1よりも小さく設定されている。
【0033】
またキャリッジ24の壁部24aには、サブキャリッジ23に向かって主走査方向に突出する二つの突出部24c(第3突出部)が形成されている。矢印Z方向において、キャリッジ24の突出部24cとサブキャリッジ23の突出部23b、23cは略同一の位置に配置されている。また突出部24cの壁部24aからの矢印X方向への突出量をL3とする場合、L1<L2+L3となるように突出部24cの突出量は設定されている。キャリッジ24の壁部24aは、主走査方向に関し、キャリッジ24におけるサブキャリッジ23の端面23dと対向する対向部である。
【0034】
インクジェット記録装置Aの運搬時において、サブキャリッジ23は、バー接触部23aがシフトバー25の平坦部25cと接触する運搬位置(第1位置)に配置される。この時、サブキャリッジ23の突出部23cはキャリッジ24の突出部24cに接触し、この接触によってサブキャリッジ23の矢印-X方向への移動が規制されて、サブキャリッジ23の突出部23bがキャリッジ24の壁部24aから離間している。また板バネ27は、サブキャリッジ23の突出部23cがキャリッジ24の突出部24cに接触するとき、突出部23cが突出部24cに押し付けられるようにサブキャリッジ23を矢印-X方向に向かって付勢する。
【0035】
このようにサブキャリッジ23の突出部23bがキャリッジ24の壁部24aから離間した状態で、インクジェット記録装置Aは工場から出荷されて運搬される。このようにインクジェット記録装置Aを運搬することにより、運搬時に振動が発生した場合であっても、突出部23bと壁部24aとの摺動が抑制され、突出部23bの摩耗が抑制される。従って、サブキャリッジ23及び記録ヘッド21の位置精度の低下が抑制され、記録媒体Pに対する画像の位置ずれ(レジずれ)が抑制され、画像品質の低下が抑制される。
【0036】
またインクジェット記録装置Aがユーザまで運搬され、使用が開始される際のキャリブレーション時において、キャリッジ24は矢印-X方向に移動され、シフトバー25の端部25fが側壁52に突き当たる。これによりシフトバー25が側壁52から反力を受けて矢印X方向に移動し、サブキャリッジ23は、バー接触部23aがシフトバー25の平坦部25cと接触する運搬位置から、傾斜部25eを介して、平坦部25bと接触する位置に移行する。即ちサブキャリッジ23は、記録ヘッド21により画像を記録しない時に位置する運搬位置から、画像を記録する時に位置する位置(第2位置)に移動する。この状態で、キャリッジ24が矢印-X方向に更に移動すると、サブキャリッジ23のバー接触部23aのシフトバー25との接触位置は、平坦部25bと接触する位置から、傾斜部25dを介して、平坦部25aと接触する位置へ移行する。これによりサブキャリッジ23は画像の記録を開始する位置に配置される。
【0037】
なお、サブキャリッジ23の運搬位置への移動は、工場において作業者によって手作業で行われても、次に説明するように自動的に行われてもよい。サブキャリッジ23を運搬位置へ自動的に移動させる場合、サブキャリッジ23のバー接触部23aがシフトバー25の平坦部25bと接触する位置に位置する状態でキャリッジ24を矢印X方向に移動させ、シフトバー25の端部25gを側壁51に突き当てる。これによりシフトバー25が側壁51から反力を受けて矢印-X方向へ移動し、サブキャリッジ23のバー接触部23aのシフトバー25との接触位置は、平坦部25bと接触する位置から、傾斜部25eを介して、平坦部25cと接触する位置に移行する。
【0038】
なお、本実施形態では、工場出荷時において、サブキャリッジ23を運搬位置に配置する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、例えばサブキャリッジ23を画像の記録が終了する毎に運搬位置に配置させる構成や、インクジェット記録装置Aの電源を落とすタイミングで運搬位置に配置させる構成としてもよい。このような構成により、ユーザがインクジェット記録装置Aを再度運搬する際に振動による突出部23bの摩耗を抑制することができる。
【0039】
また本実施形態では、サブキャリッジ23の突出部23cをキャリッジ24の突出部24cに接触させることにより、サブキャリッジ23の突出部23bをキャリッジ24の壁部24aから離間させる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。即ち、サブキャリッジ23の突出部23cをキャリッジ24の壁部24aの平坦部分に接触させるとともに、サブキャリッジ23の突出部23bをキャリッジ24の壁部24aから離間させるための凹部を壁部24aに形成する構成としても、上記同様の効果を得ることができる。
【0040】
また本実施形態では、サブキャリッジ23の突出部23b、23cとキャリッジ24の突出部24cをそれぞれ二箇所ずつ設ける構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、これらの突出部23b、23c、24cの数は一つであっても、三つ以上であってもよい。しかしながら、サブキャリッジ23の突出部23b、23cとキャリッジ24の突出部24cをそれぞれ二箇所ずつ設ける構成とするのが好ましい。これは一箇所の場合、画像の記録時にガタが生じやすく、さらに突出部23bに掛かる負担も大きく摩耗しやすいためである。また三箇所以上の場合、公差の影響で三つ以上の突出部23bの突出量にそれぞれ差が生じた場合に、三つ以上の突出部23bがキャリッジ24の壁部24aに接触して位置決めする際にガタが生じやすくなるためである。
【0041】
また本実施形態では、突出部23bと突出部23cが一体化された構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、突出部23bと突出部23cを別体として構成し、別体の突出部23bと突出部23cが副走査方向において異なる(隣接する)位置に位置する構成であっても上記同様の効果を得ることができる。また矢印Z方向に関し、サブキャリッジ23の突出部23cとキャリッジ24の突出部24cを接触させるために両者は略同一の位置に配置される必要があるものの、サブキャリッジ23の突出部23bと突出部23cは異なる位置に配置されていてもよい。同様に、サブキャリッジ23の突出部23bとキャリッジ24の突出部24cも矢印Z方向において異なる位置に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
21…記録ヘッド
23…サブキャリッジ
23b…突出部(第1突出部)
23c…突出部(第2突出部)
23d…端面(サブキャリッジの第1方向の端面)
24…キャリッジ
24a…壁部(対向部)
24c…突出部(第3突出部)
25…シフトバー(移動部材)
25b…平坦部(第2部分)
25c…平坦部(第1部分)
25e…傾斜部(第3部分)
27…板バネ(付勢部材)
28…バネ(他の付勢部材)
A…インクジェット記録装置
図1
図2
図3
図4
図5