(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030450
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】電極用フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134500
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 隆太
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA44B
4F100DE01B
4F100DE04B
4F100EH46B
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JK01B
4F100JN01A
4F100JN06
4F100JN30
(57)【要約】
【課題】良好なアンチニュートンリング性を有し、かつ、表示装置上に設置した場合の画像のぎらつきを低減することができる電極用フィルムを提供する。
【解決手段】電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、
透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、
前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、
前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、
前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、
前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルム。
【請求項2】
前記有機溶剤の沸点は、100℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極用フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上5重量部以下のシランカップリング剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極用フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下のレベリング剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電極用フィルム。
【請求項5】
前記有機溶剤は、エーテル系、エステル系の有機溶剤から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電極用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用途、包装用途、建材用途、光学用途、電気製品用途、インテリア用途、遮光用途等、種々の分野にて多種多様なフィルムが使用されている。このようなフィルムの一例として、特許文献1には、ニュートンリング防止性(アンチニュートンリング性)に優れたフィルムが開示されている。このようなアンチニュートンリング性を有するフィルムは、例えば、抵抗膜式のタッチパネルに好適に使用される。抵抗膜式タッチパネルは、2枚の透明電極付きフィルムを透明電極層が対向するように構成される電子デバイスであり、上部透明電極付きフィルムをペンまたは指で押圧し、下部透明電極付きフィルムと接触させることによって押圧部の座標の検知がなされるものであるが、押圧部分周辺にニュートンリングと呼ばれる干渉縞が現れることがあり、視認性を低下させる原因となる。このようなニュートンリング(干渉縞)の発生を抑制するために上述のアンチニュートンリング性を有するフィルムが透明電極付きフィルムの電極用フィルム(基材フィルム)として用いられる。
【0003】
特許文献1に開示のアンチニュートンリング性を備えるフィルムは、透明基材上にハードコート層を備えており、このハードコート層中に数平均粒子径が2.0~8.0μmの粒子(マイクロフィラー)が含まれる構造を有している。また、ハードコート層の膜厚は、粒子(マイクロフィラー)の数平均粒子径未満となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のアンチニュートンリング性を有するフィルムは、ニュートンリングの発生を抑制することができ有用なものではあるが、このフィルムは、粒子(マイクロフィラー)の数平均粒子径が、ハードコート層の膜厚寸法以上に設定する必要があるため、例えば、傷つき性改善のために、ハードコート層の膜厚を厚くすると、それに伴って、含有される粒子(マイクロフィラー)の数平均粒子径も大きくする必要が生じる。
【0006】
しかしながら、粒子(マイクロフィラー)の数平均粒子径を大きくしてフィルムを形成し、抵抗膜式のタッチパネルを構成し、ノートパソコンやカーナビ等の電子機器の表示装置上に設置した場合、画像がぎらついてしまい、視認性の悪化を招いてしまうという問題があった。特に高精細の表示装置上に設置した場合にはぎらつきの程度がより一層酷くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、良好なアンチニュートンリング性を有し、かつ、表示装置上に設置した場合の画像のぎらつきを低減することができる電極用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、 前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルムによって達成される。
【0009】
また、この電極用フィルムにおいて、前記有機溶剤の沸点は、100℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上5重量部以下のシランカップリング剤が更に含有されていることが好ましい。
【0011】
また、前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下のレベリング剤が更に含有されていることが好ましい。
【0012】
また、前記有機溶剤は、エーテル系、エステル系の有機溶剤から選択される1以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好なアンチニュートンリング性を有し、かつ、表示装置上に設置した場合の画像のぎらつきを低減することができる電極用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電極用フィルムを示す概略構成断面図である。
【
図2】本発明に係る電極用フィルムを用いて構成される抵抗膜式タッチパネルを示す概略構成断面図である。
【
図3】本発明に係る電極用フィルムの製造方法を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電極用フィルムについて添付図を用いて説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明に係る電極用フィルム1を示す概略構成断面図であり、
図2は、本発明に係る電極用フィルム1を用いて構成される抵抗膜式タッチパネル10の概略構成断面図である。本発明に係る電極用フィルム1は、抵抗膜式タッチパネル10が有する透明電極付きフィルムの基材フィルムとして好適に用いることができるフィルムであり、
図1に示すように、透明基材2と、透明基材2の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層3とを備え、可撓性を有している。また、
図2に示すように、抵抗膜式タッチパネル10は、上部側の透明電極付きフィルム11を構成する本発明に係る電極用フィルム1の一方面側に電極層12が形成(配置)されて構成されている。なお、下部側の透明電極付きフィルム13は、透明基材14上に電極層12が形成されており、上部側の透明電極付きフィルム11と下部側の透明電極付きフィルム13とは、周縁部に設けられる粘着層15を介して、両電極層12,12が対向するように、かつ、両電極層12,12の間に空隙部を設けた状態で接合されている。
【0016】
透明基材2は、ハードコート層3の支持体として機能を有するフィルム体であり、例えば、有機高分子材料を用いて形成される。この透明基材2は、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、有機高分子化合物をフィルムとしたものを用いることができる。有機高分子化合物としては、透明な有機高分子であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール、環状オレフィンポリマー等をあげることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンポリマーが好ましい。
【0017】
透明基材2の膜厚は、特に限定されないが、通常13~400μm程度、好ましくは25~300μm程度である。また、透明基材2には、ハードコート層3との密着力を高めるため、易接着層と呼ばれる層を設けることもできる。また、透明基材2とハードコート層3との密着性を高めるため、例えば、コロナ放電処理を透明基材2の表面に対して行い、透明基材2の表面に電気的極性を持たせてもよい。また、透明基材2には、各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤として、例えば紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0018】
ハードコート層3は、透明基材2の少なくとも一方面側に配置される層であり、紫外線硬化性樹脂31、マイクロフィラー32、ナノフィラー33、及び有機溶剤(図示せず)を含有して構成されている。このハードコート層3は、紫外線硬化性樹脂31、マイクロフィラー32、ナノフィラー33、及び有機溶剤を含むハードコート層形成用塗液を透明基材2の表面に公知のウェットコーティング法等を用いて塗布・乾燥等して形成することができる。
【0019】
紫外線硬化性樹脂31は、多官能(メタ)アクリレート化合物好ましく、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクロイル基を含有することが望ましい。多官能アクリレート化合物の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
マイクロフィラー32の材料は特に限定されないが、例えば有機フィラーとしてはアクリル系、スチレン系、ウレタン系、シリコーン系等を挙げることができ、無機フィラーとしてはシリカ等を挙げることができる。また、これらの1種類または2種以上から適宜選択して使用することができる。なお、本発明において、マイクロフィラー32とは、その最頻粒子径が、0.5μm以上であって500μm未満程度のフィラー(粒子)のことを意味する。本発明においては、マイクロフィラー32の最頻粒子径が、0.5μm以上であって10μm以下程度であることが好ましく、1μm以上であって5μm以下程度であることがより好ましい。ここで、最頻粒子径とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、例えば、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA-3000S」)を用いて、所定条件(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)にて、測定することによって求められる。測定試料としては、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。また、マイクロフィラー32の形状としては、球状、楕円球状のものを好適に使用することができる。マイクロフィラー32の形状が楕円球状のものである場合、長軸寸法及び短軸寸法の平均値を用いて最頻粒子径を算出する。
【0021】
また、ハードコート層3に含有されるマイクロフィラー32の最頻粒子径は、ハードコート層3の膜厚よりも小さいものが用いられている。ここで、ハードコート層3の膜厚としては、例えば、1μm以上15μm以下が好ましく、2μm以上10μm以下さらに好ましい。ハードコート層3の膜厚が1μm未満では、耐擦傷性や鉛筆硬度が低下する。また、15μm超えると、ハードコート層3にクラックが発生しやすくなり、加工性が低下する。
【0022】
また、ハードコート層3に含まれるマイクロフィラー32の含有量は、固形分比で紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下の範囲であることが好ましく、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上7重量部以下の範囲であることがより好ましい。マイクロフィラー32の含有量として、0.5重量部未満では、効果的なアンチニュートンリング性を発現させることが難しくなり、また、10重量部を超えると、マイクロフィラー32の凝集が発生するおそれがありフィルム外観に影響を与える可能性がある。
【0023】
ナノフィラー33の材料は特に限定されないが、マイクロフィラー32と同様に、例えば有機フィラーとしてはアクリル系、スチレン系、ウレタン系、シリコーン系等を挙げることができ、無機フィラーとしてはシリカ等を挙げることができる。また、これらの1種類または2種以上から適宜選択して使用することができる。なお、本発明において、ナノフィラー33とは、その最頻粒子径が、0.1nm以上であって、500nm未満程度のフィラー(粒子)のことを意味する。本発明においては、ナノフィラー33の最頻粒子径が、1nm以上であって50nm以下程度であることが好ましく、2nm以上であって45nm以下程度であることがより好ましい。ここで、最頻粒子径とは、上記と同様に、粒子分布の極大値を示す粒径をいう。また、ナノフィラー33の形状としては、球状、楕円球状のものを好適に使用することができる。ナノフィラー33の形状が楕円球状のものである場合、長軸寸法及び短軸寸法の平均値を用いて最頻粒子径を算出する。
【0024】
また、ハードコート層3に含まれるナノフィラー33の含有量は、固形分比で紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下の範囲であることが好ましく、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して20重量部以上60重量部以下の範囲であることがより好ましい。ナノフィラー33の含有量として、10重量部未満では、マイクロフィラー32をハードコート層3表面側に効果的に偏在させることが難しく、その結果、効果的なアンチニュートンリング性を発現させることが難しくなり、また、ハードコート層3表面における表面凹凸が少ないためブロッキングしてしまいロールtoロール生産が困難になる可能性がある。また、70重量部を超えると、ナノフィラー33の凝集が発生するおそれがありフィルム外観に影響を与える可能性がある。
【0025】
また、ハードコート層3に含有される有機溶剤としては、沸点が100℃以上180℃以下であることが好ましく、エーテル系、エステル系の有機溶剤から選択することがより好ましい。エーテル系有機溶剤としては、PGME(沸点:120℃)、PGEE(沸点:133℃)、PGPE(沸点:149℃)、1,2-ジエトキシエタン(沸点:121℃)、ジブチルエーテル(沸点:142℃)、フェネトール(沸点:172℃)が挙げられる。エステル系有機溶剤としては、酢酸ブチル(沸点:126℃)、酢酸イソブチル(沸点:118℃)、酢酸ベンチル(沸点:149℃)、酢酸シクロヘキシル(沸点:174℃)を好適に挙げることができる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用して良い。
【0026】
また、ハードコート層3には、シランカップリング剤が更に含有されてもよい。シランカップリング剤の含有量としては、固形分比で紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下の範囲が好ましく、1重量部以上7重量部以下の範囲より好ましい。このシランカップリング剤は、ハードコート層3上にITO等からなる電極層を形成する場合の該電極層との密着性を向上させるために用いられるものである。上記含有量の範囲であればITO等からなる電極層との密着性が向上して塗膜物性を維持することができるが、10重量部を超えるとマイクロフィラー32が表面に浮上することを妨げるためにHz値が低下し、ニュートンリングが濃く見えてしまう可能性があるため好ましくない。なお、シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0027】
また、ハードコート層3には、レベリング剤が更に含有されてもよい。レベリング剤の含有量としては、固形分比で紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下の範囲が好ましく、0.15重量部以上1.5重量部以下の範囲がより好ましい。このレベリング剤は、フィルム外観(ハードコート層3の外観)にムラが発生することを抑制するために用いられるものであるが、固形分比で紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部未満では、フィルム外観にムラは発生するおそれがあり、また、2重量部を超えてしまうと、マイクロフィラー32の凝集が発生し、フィルム外観に影響を与える可能性があるため好ましくない。なお、レベリング剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤を用いることができるが、シリコーン系レベリング剤がより好ましい。シリコーン系レベリング剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アクリル基を有するポリエーテル変性シリコーン、アクリル基を有するポリエステル変性シリコーン等があるが、特にポリジメチルシロキサン系レベリング剤、例えばジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等が好ましい。また、フッ素系レベリング剤としては、フルオロ基、親水基、親油基、紫外線反応性基含有オリゴマー等がある。
【0028】
次に、本発明にかかる電極用フィルム1の製造方法について説明する。電極用フィルム1の製造方法は、
図3のブロック図に示すように、塗布工程S1、乾燥工程S2、硬化工程S3を備えている。塗布工程S1は、透明基材2の少なくとも一方面上に、紫外線硬化性樹脂31、マイクロフィラー32、ナノフィラー33、及び有機溶剤を含むハードコート層形成用塗液を塗布する工程である。ハードコート層形成用塗液の塗工方法は特に限定されず、公知のウェットコーティング法を採用することができる。なお、塗工に先立ち、ハードコート層形成用塗液を十分に攪拌し、マイクロフィラー32やナノフィラー33が、ハードコート層形成用塗液中に均一に分散させる。
【0029】
ここで、紫外線硬化性樹脂31、マイクロフィラー32、ナノフィラー33、及び有機溶剤を含むハードコート層形成用塗液に含まれる各材料の組成比率について説明する。マイクロフィラー32は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下の範囲であることが好ましく、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上7重量部以下の範囲であることがより好ましい。マイクロフィラー32の含有量として、0.5重量部未満では、マイクロフィラー32をハードコート層3表面側に効果的に偏在させることが難しくなってしまい、効果的なアンチニュートンリング性を発現させることが困難となる。また、10重量部を超えると、マイクロフィラー32の凝集が発生するおそれがありフィルム外観に影響を与える可能性があるため好ましくない。
【0030】
また、ナノフィラー33は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下の範囲であることが好ましく、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して20重量部以上60重量部以下の範囲であることがより好ましい。ナノフィラー33の含有量として、10重量部未満では、マイクロフィラー32をハードコート層3表面側に効果的に偏在させることが難しくなってしまい、効果的なアンチニュートンリング性を発現させることが困難となる。また、70重量部を超えると、ナノフィラー33の凝集が発生するおそれがありフィルム外観に影響を与える可能性があるため好ましくない。
【0031】
ハードコート層形成用塗液に含まれる有機溶剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂の重量と同等以上であることが好ましく、例えば、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して100重量部以上400重量部以下の範囲であることが好ましい。また、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して150重量部以上300重量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0032】
また、ハードコート層形成用塗液にシランカップリング剤を添加する場合、シランカップリング剤の含有量としては、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下の範囲が好ましく、1重量部以上7重量部以下の範囲より好ましい。上記含有量の範囲であればITO等からなる電極層との密着性が向上して塗膜物性を維持することができるが、10重量部を超えるとマイクロフィラー32が表面に浮上することを妨げるためにHz値が低下し、ニュートンリングが濃く見えてしまう可能性があるため好ましくない。
【0033】
また、ハードコート層形成用塗液にレベリング剤を添加する場合には、レベリング剤の含有量としては、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下の範囲が好ましく、0.15重量部以上1.5重量部以下の範囲がより好ましい。レベリング剤の含有量が、紫外線硬化樹脂100重量部に対して0.1重量部未満では、フィルム外観にムラが発生するおそれがあり、また、2重量部を超えてしまうと、マイクロフィラー32の凝集が発生し、フィルム外観に影響を与える可能性があるため好ましくない。
【0034】
また、ハードコート層形成用塗液に光重合開始剤を添加してもよい。光重合開始剤の含有量としては、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して2重量部以上10重量部以下の範囲が好ましく、3重量部以上6重量部以下の範囲がより好ましい。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであればよく、具体例としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、チオキサンソン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が例示できる。また、ベンゾイン系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が例示できる。オキシムエステル系化合物としては、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等が例示できる。チオキサンソン系化合物としては、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が例示できる。トリアジン系化合物としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリルs-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等が例示できる。ホスフィン系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が例示できる。また、キノン系化合物としては、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等を例示できる。光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、ハードコート層形成用塗液には、その他添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等を挙げることができる。
【0036】
乾燥工程S2は、透明基材2に塗布されたハードコート層3を乾燥させるための工程であり、例えば、60℃~90℃の雰囲気温度下で1分~4分間保持することにより行う。このハードコート層形成用塗液の塗膜を乾燥させる工程において、ナノフィラー33が下方に沈降しつつマイクロフィラー32を表面側に押し上げ、マイクロフィラー32がハードコート層3の表面側に偏析する。
【0037】
硬化工程S3は、透明基材2に塗布されたハードコート層3を硬化させるための工程であり、マイクロフィラー32がハードコート層3の表面側に偏析した状態で紫外線照射を行うことにより実施する。かかる硬化工程S3を経て、ハードコート層3の表面側にマイクロフィラー32が偏在する電極用フィルム1が完成する。紫外線照射に際しては、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線の積算照射量は、例えば、300~800mJ/cm2程度である。
【0038】
以上の工程を経て形成されたフィルムを抵抗膜式タッチパネル10における透明電極付きフィルムの電極用フィルム1として使用する場合、少なくとも一方面側に電極層12が配置形成される。電極層12としては、酸化インジウムを主成分としたものを用いることができる。電極層12としては、酸化インジウム以外にも他の成分を含むことができ、他の成分としては具体的には錫、亜鉛、チタン、モリブデン、タングステン、セリウム、ジルコニウムの酸化物などを挙げることができる。
【0039】
電極層12の膜厚は、1nm以上200nm以下の範囲に設定することが好ましい。このような数値範囲に設定することで高入力耐久性、高透明性、タッチパネル用途に最適な導電性を得ることができる。
【0040】
電極層12の形成方法としては、均一な薄膜が形成される方法であれば特に限定されない。例えば、スパッタリングや蒸着などのPVD法や、各種CVD法などのドライコーティングなどの他に、電極層12の原料を含む溶液をスピンコート法やロールコート法、スプレー塗布やディッピング塗布などにより塗布した後に加熱処理などで形成する方法が挙げられるが、ナノメートルレベルの薄膜を均一に形成しやすいという観点からドライコーティングが好ましく、中でもスパッタリング法がより好ましい。
【0041】
本発明に係る電極用フィルム1は、マイクロフィラー32がハードコート層3の表面側に偏在する構造を有しているため、ハードコート層3の表面全体に凹凸を形成することができ、優れたアンチニュートンリング性を発揮することができる。また、ハードコート層3の膜厚は、従来のフィルムのように、該ハードコート層3中に含まれるマイクロフィラー32の粒子径に制約されることもなく、例えば、傷つき性改善のために、ハードコート層3の膜厚を厚くして、抵抗膜式タッチパネル10を構成し、ノートパソコンやカーナビ等の電子機器の表示装置上に設置した場合であっても、画像がぎらついてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本発明においては、ハードコート層3中におけるナノフィラー33の含有量は、固形分比で紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下の範囲に設定されている。このような範囲に設定することにより、乾燥工程S2において、ナノフィラー33がマイクロフィラー32の下側に効果的に回り込んで該マイクロフィラー32をハードコート層3の表面側に押し上げて(浮上させて)、ハードコート層3の表面側に効率よくマイクロフィラー32を偏在させることができる。
【0043】
また、ハードコート層3に含有される有機溶剤として、その沸点が、100℃以上のものを使用する場合、より効果的にハードコート層3の表面側にマイクロフィラー32を偏在させることが可能となる。具体的に説明すると、沸点が低い有機溶剤を用いた場合、乾燥工程S2において揮発する有機溶剤の揮発速度が速く、ナノフィラー33がマイクロフィラー32の下側に回り込んでマイクロフィラー32を十分に浮き上がらせる前に乾燥してしまうおそれがあるが、沸点が高い有機溶剤を用いた場合、乾燥工程S2において揮発する有機溶剤の揮発速度を緩やかにすることができるため、多くのナノフィラー33がマイクロフィラー32の下側に回り込み、より多くのマイクロフィラー32をハードコート層3の表面側に押し上げて効果的に偏在させることが可能になる。
【0044】
また、発明者らは、本発明に係る電極用フィルム1のサンプルA~Gを作成し、各サンプルについて、ヘイズ、アンチニュートンリング性、干渉ムラの程度、ギラツキの程度の確認試験を行ったので、この試験内容及び結果について以下に示す。
【0045】
試験内容は、下記に示すサンプルA~Gのそれぞれに関し、ヘイズ、アンチニュートンリング性、干渉ムラの程度、ギラツキの程度について評価を行った。また、ヘイズに関しては、日本電色工業株式会社製:ヘイズメーターNDH5000を用いて測定を行った。なお、ヘイズ値測定に際しては、φ7mmの穴の黒鉄板で校正し、測定時に黒鉄板の孔部にサンプルを設置して測定した。また、アンチニュートンリング性に関しては、電極用フィルム1のハードコート層3が厚さ3mmの平滑なガラス板と接するようにして載置した後、電極用フィルム1側から目視で観察した。また、干渉ムラの程度に関しては、3波長光域型蛍光灯下において、目視により干渉ムラの発生の有無を確認した。また、ギラツキの程度に関しては、作成した各サンプルを422ppiのディスプレイ直上に配置し、その程度について評価を行った。
【0046】
サンプルAは、透明基材2として、縦:横=21cm:30cm、厚み188μmのPETフィルムを使用し、この透明基材2(PETフィルム)上に、ワイヤーバーコータを用いてハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃の雰囲気温度で2分間保持して乾燥を行い、その後、紫外線照射を行ってハードコート層3を硬化させることにより作成した。紫外線照射に際しては、UV照射装置(へレウス株式会社製)を用い、積算照射量を500mJ/cm2としている。また、このサンプルAに関し、ハードコート層3の乾燥膜厚が4~6μmとなる電極用フィルムサンプルを作成した。
【0047】
また、サンプルAに関し、ハードコート層形成用塗液は、紫外線硬化性樹脂31、マイクロフィラー32、ナノフィラー33を有機溶剤中に下段[0048]段落に記載の通り調整することにより作製した。紫外線硬化性樹脂31としては、アクリル系樹脂を用い、マイクロフィラー32としては、シリカから形成される最頻粒子径が2μmのものを用いている。ナノフィラー33しては、シリカから形成される最頻粒子径が20nmのものを用い、有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を用いている。なお、ハードコート層形成用塗液に、光重合開始剤、レベリング剤及びシランカップリング剤も添加している。
【0048】
ハードコート層形成用塗液における各材料の組成比率は、マイクロフィラー32が、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して2.8重量部、ナノフィラー33が、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して40重量部である。また、溶剤は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して161.7重量部である。また、レベリング剤は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.2重量部添加し、シランカップリング剤は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して2.44重量部添加している。
【0049】
サンプルBは、レベリング剤を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した点以外は、上記サンプルAと同様にして形成し、サンプルCは、レベリング剤を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部添加した点以外は、上記サンプルAと同様にして形成している。
【0050】
サンプルDは、ハードコート層形成用塗液における有機溶剤を、メチルエチルケトン(MEK)を用いている点、及び、レベリング剤を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した点以外は、上記サンプルAと同様にして形成している。
【0051】
サンプルEは、ナノフィラー33を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して5重量部としている点、レベリング剤を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した点以外は、上記サンプルAと同様にして形成している。
【0052】
サンプルFは、レベリング剤を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した点、及び、シランカップリング剤を添加していない点以外は、上記サンプルAと同様にして形成している。
【0053】
サンプルGは、レベリング剤を、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した点、及び、シランカップリング剤を紫外線硬化性樹脂100重量部に対して4.76重量部添加した点以外は、上記サンプルAと同様にして形成している。
【0054】
なお、サンプルB~Gに関しても、ハードコート層3の乾燥膜厚が4~6μmとなる電極用フィルムサンプルを作成した。
【0055】
サンプルA~Gに関するヘイズ、アンチニュートンリング性、干渉ムラの程度、ギラツキの程度についての試験結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
サンプルA~Gの内、サンプルA,B,C,Fについては、全くニュートンリングを確認できない優れた電極用フィルム1であることが確認された。また、サンプルGについては、僅かにニュートンリングが確認されるものであるが、使用に際して特に問題となるレベルのものではないことが確認された。また、サンプルD,Eについては、ニュートンリングがはっきりと確認されるものであり、使用に際して問題となるレベルのものであるが確認された。また、サンプルA~Gのいずれもが、干渉ムラ、ギラツキが無い極めて視認性に優れた電極用フィルム1であることが確認された。
【0058】
ここで、サンプルDは、溶媒としてメチルエチルケトン(沸点:79.5℃)を使用している点以外は、サンプルB(溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;沸点:120℃)を使用)と同一構成である点を勘案すると、沸点が高い溶媒(例えば、沸点が100℃以上の溶媒)を用いる方が、極めて良好なアンチニュートンリング性を効果的に発現させることができ、アンチグレア性を効果的に発現させることができるといえる。
【0059】
また、サンプルEは、ハードコート層形成用塗液におけるナノフィラー33の含有量が、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して5重量部である点以外は、サンプルB(ハードコート層形成用塗液におけるナノフィラー33の含有量が、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して40重量部)と同一構成である点を勘案すると、ハードコート層形成用塗液におけるナノフィラー33の含有量が少ないと、マイクロフィラー32をハードコート層3表面側に効果的に偏在させることが難しくなってしまい、極めて良好なアンチニュートンリング性を発現させることが困難になることが分かる。同様に、ハードコート層3の膜厚を厚くした場合に、アンチグレア性を効果的に発現させることが難しくなることも分かる。
【0060】
次に、下記表2にフィルム外観の官能試験結果とITOとの密着性についての試験結果を示す。
【0061】
【0062】
サンプルA~Gの内、レベリング剤の含有量が少ないサンプルAについては、若干のムラがフィルム表面に生じていたが、使用に際して問題となるレベルのものではなく、良好なフィルム外観を有するものであることが確認された。レベリング剤の含有量が多いサンプルCについても、若干マイクロフィラー32の凝集が確認されたが、使用に際して問題となるレベルのものではないことが確認された。また、一方、レベリング剤の含有量が、紫外線硬化樹脂100重量部に対して0.5重量部であるサンプルB,D,E,F,Gに関しては、フィルム表面に全くムラや、マイクロフィラー32の凝集が発生しておらず、極めて優れたフィルム外観を有するものであることが確認された。以上より、レベリング剤の含有量としては、0.1重量部以上2重量部以下の範囲であることが好ましく、0.15重量部以上1.5重量部以下の範囲がより好ましいことが確認された。
【0063】
また、サンプルA~Gの内、シランカップリング剤を含有していないサンプルFについては、ITOとの密着性が悪いことが確認されたが、その他のシランカップリング剤を含有するサンプルA、B,C,D,E,Gについては、ITOとの良好な密着性を有することが確認された。このことからITO等からなる電極層をハードコート層3に設ける場合、当該ハードコート層3はシランカップリング剤を含有する構成とすることが好ましいことがわかる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態に係る電極用フィルム1について説明したが、この電極用フィルム1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、透明基材2の一方面にハードコート層3を形成される構造を有しているが、透明基材2の両面にハードコード層を形成するようにして電極用フィルム1を構成してもよい。特に、抵抗膜式タッチパネル10における透明電極付きフィルムの電極用フィルム1として使用する場合、タッチパネルの入力面(タッチ面)に防眩性を付与する観点から、透明基材2の両面に本発明に係るハードコート層3を形成することが好ましい。なお、透明基材2の両面にハードコート層3を形成する場合、ITO等からなる電極層を設けるハードコート層3にのみシランカップリング剤を含有する構成とすることが好ましい。
【0065】
また、本発明に係るフィルムに関し、抵抗膜式タッチパネル10における透明電極付きフィルムの電極用フィルム1として使用する場合を主として説明しているが、このような電極用フィルム1の他、偏光板の表面保護フィルム、反射防止フィルム等各種光学用途に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 電極用フィルム
2 透明基材
3 ハードコート層
31 紫外線硬化性樹脂
32 マイクロフィラー
33 ナノフィラー
【手続補正書】
【提出日】2020-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、
透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、
前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、
前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、
前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、
前記ナノフィラーの最頻粒子径が50nm以下であり、
前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルム。
【請求項2】
前記有機溶剤の沸点は、100℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極用フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上5重量部以下のシランカップリング剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極用フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下のレベリング剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電極用フィルム。
【請求項5】
前記有機溶剤は、エーテル系、エステル系の有機溶剤から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電極用フィルム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の上記目的は、電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、 前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、前記ナノフィラーの最頻粒子径が50nm以下であり、前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルムによって達成される。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、
透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、
前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、
前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、
前記マイクロフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下であり、
前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、
前記ナノフィラーの最頻粒子径が50nm以下であり、
前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルム。
【請求項2】
前記有機溶剤の沸点は、100℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極用フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上5重量部以下のシランカップリング剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極用フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層には、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下のレベリング剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電極用フィルム。
【請求項5】
前記有機溶剤は、エーテル系、エステル系の有機溶剤から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電極用フィルム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の上記目的は、電極層が少なくとも一方面側に配置される電極用フィルムであって、透明基材と、 前記透明基材の少なくとも一方面側に配置されるハードコート層とを備えており、 前記ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂、マイクロフィラー、ナノフィラー、及び有機溶剤を含有しており、前記マイクロフィラーの最頻粒子径は、前記ハードコート層の膜厚よりも小さく、前記マイクロフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下であり、前記ナノフィラーの含有量は、固形分比で前記紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上70重量部以下であり、前記ナノフィラーの最頻粒子径が50nm以下であり、前記マイクロフィラーは、前記ハードコート層表面側に偏在することを特徴とする電極用フィルムによって達成される。