(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030467
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】充填材および舗装体
(51)【国際特許分類】
E01C 7/10 20060101AFI20220210BHJP
E01C 11/24 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
E01C7/10
E01C11/24
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134534
(22)【出願日】2020-08-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】390017628
【氏名又は名称】大有建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂口 元
(72)【発明者】
【氏名】小椋 拓実
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA05
2D051AB03
2D051AF02
2D051AF17
2D051AH02
(57)【要約】
【課題】優れた温度上昇抑制機能及び凍結抑制機能を併せ持つ充填材と、当該充填材を用いた舗装体とを提供する。
【解決手段】充填材は、アスファルト混合物層またはコンクリート層における、層の内部に形成された空隙または層の表面に形成された溝部に充填される。この充填材は、保水材と、この保水材に混合された、粉体の態様の活性炭とを含有する。この充填材を含んでなる舗装体は、アスファルト混合物層またはコンクリート層における、上記溝部および上記空隙のうちの一方または両方に、充填材が充填されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト混合物層またはコンクリート層における、層の内部に形成された空隙または層の表面に形成された溝部に充填される充填材であって、
保水材と、当該保水材に混合された、粉体の態様の活性炭とを含有する、充填材。
【請求項2】
請求項1に記載された充填材であって、
前記保水材が、セメントを含有し、
前記活性炭の分量が、前記セメントの分量を100[質量部]としたときに、1[質量部]以上50[質量部]以下となっている、
充填材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された充填材であって、
前記活性炭の比表面積が、500[m2/g]以上の範囲にある、
充填材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載された充填材と、
前記アスファルト混合物層又は前記コンクリート層と、
を備える舗装体であって、
前記アスファルト混合物層又は前記コンクリート層における、前記溝部および前記空隙のうちの一方または両方に、前記充填材が充填されている、舗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充填材およびそれを用いた舗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アスファルト舗装体などで舗装された路面は、太陽光を吸収して温度が上昇するため、特に夏季の高温環境下では路面温度が非常に高温(具体的には60[℃]以上)になり、周囲の熱環境に悪影響を及ぼす場合がある。この対策としては、例えば、舗装体の空隙等に保水材を充填することにより、保水材が吸収保持した水分の気化熱をもって路面温度の上昇を抑制する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、冬季の低温環境下では、路面上の水分が凍り付いて凍結路面となり、車両のスリップ事故の原因となる懸念がある。これに対しては、塩化カルシウムなどの凍結防止剤を予め路面上に散布することで、路面上における水分の凍結温度(すなわち凝固点)を降下させ、水分の凍結を抑制する、という対策が一般にとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、路面に散布された凍結防止剤の一部は、走行車両により飛散したり、降雨により流出する。そのため、凍結防止剤の散布に関しては、必要量よりも多い凍結防止剤を路面上に散布することによるコストアップや、飛散等した凍結防止剤による周辺環境への塩害の懸念がある。
【0006】
本願の発明者は、特許文献1に記載された保水材を舗装体の空隙等に充填した場合、充填材が水分に溶解した凍結防止剤を吸収保持し、降雨等の際に徐々に溶出するため、凍結抑制効果を持続的に発揮可能であることを見出した。また、それに伴い、凍結防止剤の散布量を低減することが可能であることも判明した。そのため、本願の発明者は、充填材の凍結抑制効果を向上するために充填材の更なる改良を行い、本開示の構成に想到した。
【0007】
優れた温度上昇抑制機能及び凍結抑制機能を併せ持つ充填材と、当該充填材を用いた舗装体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における1つの特徴によると、舗装体のアスファルト混合物層またはコンクリート層における、層の内部に形成された空隙または層の表面に形成された溝部に充填される充填材が提供される。ここで、充填材は、保水材と、この保水材に混合された、粉体の態様の活性炭とを含有する。
【0009】
上記の充填材によれば、活性炭を含有しない場合と比較して、水分の吸収量及び水分に溶解した凍結防止剤(塩分)の吸着量が向上されており、かつ、凍結防止剤をより長期間にわたって徐々に溶出可能である。つまり、降雨の際等により多量の水分を吸収保持できるため、その気化熱を利用した路面温度の上昇抑制をより効果的に行うことができる。また、水分に溶解した凍結防止剤の吸着量が向上されていると共に、より長期間にわたって徐々に凍結防止剤を溶出可能であるため、一度の凍結防止剤の散布により、優れた凍結防止効果を従来の充填材より長期間にわたって発揮することができる。
【0010】
上記の充填材における好ましい実施形態の1つにおいては、保水材が、セメントを含有し、活性炭の分量が、セメントの分量を100[質量部]としたときに、1[質量部]以上50[質量部]以下となっている。
【0011】
上記の充填材における好ましい実施形態の1つにおいては、活性炭の比表面積が、500[m2/g]以上の範囲にある。
【0012】
また、上述した充填材が充填された舗装体も提供される。この舗装体は、上記アスファルト混合物層または上記コンクリート層を有しており、当該層の内部に形成された空隙および層の表面に形成された溝部のうちの一方または両方に、充填材が充填されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、優れた温度上昇抑制機能及び凍結抑制機能を併せ持つ充填材と、当該充填材を用いた舗装体とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】モルタルブロックの単位質量あたりの塩分吸着量を調べる実験について説明するための説明図である。
【
図2】モルタルブロックからの塩分の溶出速度を調べる実験について説明するための説明図である。
【
図3】モルタルブロックからの塩分の溶出速度を調べる実験について説明するための説明図である。
【
図4】供試体における、凍結防止剤の流出と滑り抵抗値の低下とを抑える能力を調べる実験について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示にかかる舗装体は、アスファルト層またはコンクリート層において、その表面に存在する溝部、および、その内部に存在する空隙のうちの一方または両方に、充填材が充填された構成を有する。舗装体は、通常、舗装工事の現場にて基層の上に敷きならされ、道路舗装の表層として用いられる。
【0016】
充填材は、保水材及び活性炭を含み、アスファルト混合物層またはコンクリート層の空隙及び/又は溝部に充填される。アスファルト混合物層またはコンクリート層への充填方法は、表面に充填材を散布し振動をかける方法、圧入装置を用いる方法など、アスファルト混合物層またはコンクリート層の下面まで十分に充填材が充填できる方法で行われる。
【0017】
充填材は、それぞれ粉状に調製されたセメント、多孔質鉱物、および、繊維状粘土鉱物が混合されてなる保水材の材料粉末に粉体の態様の活性炭を混合したものに対し、液状に調製された混和剤および水を添加し、これを練り混ぜることによって得られる。この充填材は、混和剤および水を添加した直後はペースト状であるが、時間経過とともに水和反応が進んで硬化される。
【0018】
上記セメントとしては、例えばポルトランドセメントもしくは高炉セメントなどの各種セメント、または、これらに石膏を加えたものを使用することができる。ここで、上記各種セメントとしては、低アルカリ形タイプのセメントを使用することもできる。しかるに、舗装体を上記現場施工に供する場合には、上記舗装工事を早期に終了させてその現場を交通が開放された状態とするために、超速硬セメントを上記セメントとして用いることが好ましい。この場合においては、上記現場施工の施工環境と上記超速硬セメントの可使時間とのかねあいにより、この超速硬セメントに適宜遅延剤を混入することができる。
【0019】
多孔質鉱物は、吸水率をより大きくすることに資する多孔質構造を有する自然物または人工物である。本開示で用いられる多孔質鉱物は、その粒径が38[μm]以上300[μm]以下となる粉体の態様であり、かつ、吸水率が70[%]以上であるものが好ましい。このような多孔質鉱物としては、例えば、バーミキュライト(expanded vermiculite)やシリカゲルを、その粒径が38[μm]以上300[μm]以下の粉体となるように調製したものを使用することができる。ここで、バーミキュライトは、板状の結晶が積層された層構造を有する鉱物であるバーミキュル石(vermiculite)を高温で焼成し、もって該層構造を膨張させたものである。バーミキュライトは、その層構造の層間に多数の空気層および空隙を有するため、これら空気層および空隙を多孔質構造として、充填材の保水性能をより効率的に向上させることができる。言いかえると、充填材の保水性能をより効率的に向上させるためには、上記多孔質鉱物としてバーミキュライトを用いることが好ましい。なお、バーミキュライトは、その層構造の層間にある多数の空隙のため、そのかさ比重が非常に小さい(具体的には例えば約0.1)。このため、上記多孔質鉱物としてバーミキュライトを用いる際には、該バーミキュライトを適度な粒径(38[μm]以上300[μm]以下)になるまで粉砕して調製することで、該バーミキュライトの充填材における分離を起こしにくくするようにすることが好ましい。
【0020】
繊維状粘土鉱物は、粘土鉱物からなる繊維状の超微粒子である。本開示で用いられる繊維状粘土鉱物は、その粒径が1.5[μm]以上5.0[μm]以下となるものが好ましい。このような繊維状粘土鉱物としては、セピオライトやパリゴルスカイト(商品名アタパルジャイト)などの、繊維状の超微粒子を使用することができる。これらは、充填材の充填時に体積が増加しないため、舗装体の強度確保に資する。また、セピオライトやパリゴルスカイトなどの繊維状の超微粒子は、内部に多くの空隙が存在する、保水性能の高い物質であるため、充填材に多くの水分を確保させるために使用することができる。
【0021】
上記混和剤としては、一般的に用いられる減水剤、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、および/または、起泡剤などを用いることができる。ペースト状になっている充填材のワーカビリティーを向上させるためには、上記混和剤として高性能減水剤および/または高性能AE減水剤を用いることが好ましい。
【0022】
水は、上記混和剤と一緒に上記保水材の材料粉末に活性炭が混合された混合粉末に添加されることで、これをペースト状の充填材に変化させ、その後、時間経過とともに水和反応により硬化させる。なお、水および混和剤は、その添加割合が、充填材中の活性炭の分量などに応じて適宜調整され、もって上記ペースト状の充填材における流動性を所望の範囲に収める。すなわち、上記ペースト状の充填材は、その流動性が、水/混和剤の添加割合、および、他の要因(例えば充填材中の活性炭の分量など)に応じて変化しうるものである。しかるに、本開示においては、上記他の要因による上記流動性への影響を、水/混和剤の添加割合を調整することで相殺し、上記ペースト状の充填材における流動性を所望の範囲に収める。ここで、上記所望の範囲は、例えば、コンクリート委員会・規準関連小委員会編(2018)『2018年制定 コンクリート標準示方書[規準編]』土木学会に記載の、「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)(JSCE-F521-1999)」に準じた方法で上記ペースト状の充填材を試験した場合に、その流下時間が8[秒]以上14[秒]未満となる範囲である。
【0023】
活性炭は、表面に微細な多数の穴が設けられた炭素を主成分とする黒色の物質である。本開示で用いられる活性炭は、粉体の態様であり、その粒径は180[μm](80[メッシュ])以下であり、75[μm](200[メッシュ])以下であることが好ましい。活性炭の表面に設けられる穴は、活性炭の比表面積および吸着容量を大きくする作用効果を奏する。使用される活性炭の比表面積は特に限定されないが、例えば500[m2/g]以上であることが好ましく、800[m2/g]以上1800[m2/g]以下であることがより好ましい。同様に、活性炭の吸着容量は特に限定されないが、例えば、ヨウ素に対して800[mg/g]以上1500[mg/g]以下の範囲に、メチレンブルーに対して100[mg/g]以上500[mg/g]以下の範囲にあることが好ましい。なお、活性炭の種類は特に限定されず、木炭、ヤシ殻炭、石炭等の周知の活性炭を用いることができる。
【0024】
一方、活性炭の配合量は、セメントの分量を100[質量部]としたときに、1[質量部]以上50[質量部]以下であることが好ましく、3[質量部]以上30[質量部]以下であることがより好ましく、5[質量部]以上10[質量部]以下であるものが更に好ましい。また、活性炭は黒色であるため、活性炭が混合された状態の保水材の明度は、活性炭が混合されていない状態の保水材の明度よりも低くなる。
【0025】
また、多孔質鉱物は、セメント100[質量部]に対して、10[質量部]以上100[質量部]以下であることが好ましい。繊維状粘土鉱物は、セメント100[質量部]に対して、1[質量部]以上20[質量部]以下であることが好ましい。また、上述した多孔質鉱物の効果および繊維状粘土鉱物の効果を十分に発揮させるためには、混和剤の混和量は、セメントの分量を100[質量部]としたときに、1[質量部]以上3[質量部]以下となっていることが好ましい。
【0026】
空隙に充填材が充填された舗装体は、ポーラスアスファルト混合物層またはポーラスコンクリート層を形成した後に、ペーストの状態の充填材を層中の空隙に充填し、これを固化させることによって作製することができる。この際に、ポーラスアスファルト混合物層又はポーラスコンクリート層の空隙率は、15[%]以上30[%]以下であることが好ましい。空隙率が15[%]未満であると充填材の注入が困難であり、30[%]を超えると舗装体の構造強度を十分に確保できないためである。また、空隙への充填材の充填率は特に限定されないが、空隙率等に応じて適宜設定することにより、充填材が吸収保持した水分の気化熱をもって温度上昇を抑制する機能および路面凍結を抑制する機能の両機能と、上記ポーラスアスファルト混合物層またはポーラスコンクリート層が有する排水性舗装としての機能との、いずれをも効果的に舗装体に持たせることができる。
【0027】
また、溝部に充填材が充填された舗装体は、密粒度アスファルト混合物層またはコンクリート層の表面に形成された溝部に、ペーストの状態の充填材を充填し、これを固化させることによって作製することができる。ここで、上記溝部の具体例としては、密粒度アスファルト混合物層またはコンクリート層の表面をグルービング加工して形成される直線状の溝や、コンクリート層を固化させる前にその表面に形成される環状の溝などが挙げられる。しかるに、上記溝部は、上記各具体例に限定されるものではない。なお、ポーラスアスファルト混合物層又はポーラスコンクリート層の表面に溝部を形成し、層中の空隙及び層表面の溝部の両方に充填材を充填してもよい。
【0028】
なお、「ポーラスアスファルト混合物層」または「ポーラスコンクリート層」は、その骨材の粒度分布にギャップが設定されることで、層の内部に空隙を有する状態とされたアスファルト混合物層またはコンクリート層のことをいう。また、「密粒度アスファルト混合物層」または「コンクリート層」は、その骨材の粒度分布の調整により、層の内部における空隙率が小さく(具体的には例えば3[%]以上6[%]以下に)なるように調製されたアスファルト混合物層またはコンクリート層のことをいう。
【0029】
ところで、保水材は、活性炭が混ぜ込まれていない状態において、灰色(gray)もしくはディムグレー(dimgray)と表現される色であり、活性炭や上記アスファルト混合物層が呈する黒色より高い明度を有する。そのため、アスファルト混合物層の空隙又は溝部に保水材を充填した場合、両者の境界が明確に視認されてしまい、必要に応じて保水材に顔料が添加されていた。しかし、本開示に係る充填材は保水材に加えて活性炭を含有するため、アスファルト混合物層に明度が近く、保水材のみを充填した場合と比べて両者の境界が明確ではない。そのため、アスファルト混合物層の空隙又は溝部に充填材を充填する場合は、顔料の使用を回避又は使用量を抑制することができる。
【0030】
充填材は、水分を吸収保持する性質と、吸収保持した水分が蒸発することを許容する性質とを有する。このため、本開示にかかる舗装体の上に降水があったときには、その水分の少なくとも一部が充填材によって吸水される。また、吸い込まれた水分は、降水の後に充填材から蒸発されることで、気化熱により舗装体の温度を低下させる。このとき、活性炭は、充填材が水分を吸収する能力を向上させ、その結果、給水した水分の気化熱による温度低下効果が向上する。
【0031】
また、本開示にかかる舗装体は、塩化ナトリウム又は塩化カルシウム等の凍結防止剤が水分に溶解して充填材に浸透すると、凍結防止剤を一時的に吸着保持し、これを降雨等の際に徐々に溶出させることができる。そのため、舗装体は、舗装体上に散布された凍結防止剤による凍結抑制効果を持続的に発揮することができ、その結果、凍結防止剤の散布量を低減することが可能となる。
【0032】
したがって、本開示は、優れた温度上昇抑制機能及び凍結抑制機能を併せ持つ充填材と、当該充填材を用いた舗装体とを提供することができる。
【0033】
また、上記の充填材をアスファルト混合物層の空隙または溝部に充填した場合には、充填材中の活性炭によって、充填材の明度がアスファルト混合物層の明度に近づけられる。このため、充填材およびアスファルト混合物層のうち一方の露出が舗装体の摩耗に伴って増えることによる舗装体の見た目の変化を分かりにくくすることができる。
【0034】
なお、充填材中の活性炭は、充填材の見た目を黒っぽくして、太陽光の吸収による温度上昇の度合いを大きくする性質を有する。しかし、充填材は、その活性炭により水分を効率的に吸収保持できるものであるため、その分の蒸発潜熱の増加分をもって上記性質による影響の少なくとも一部を相殺することができる。
【0035】
続いて、本開示に係る各実験例について説明する。ただし、本開示は、下記の各実験例に限定されるものではない。
【0036】
[活性炭]
本開示者は、充填材において分散質とされる活性炭として、下記の表1に示される、タイプ1、タイプ2、タイプ3、タイプ4、タイプ5の5種類の活性炭を調製した。ここで、表1の5種類の活性炭は、その比表面積と、活性炭1[g]あたりのヨウ素吸着量およびメチレンブルー吸着量とがそれぞれ異なるものとして調製した。また、各活性炭は、粉砕機によって粒径が75[μm]以下となるように粉砕された粉体の態様で調製した。なお、タイプ1、タイプ2、タイプ3の各活性炭はコーヒー滓を、タイプ4の活性炭はヤシ殻を、タイプ5の活性炭は石炭を、それぞれ賦活処理することによって調製した。
【0037】
【0038】
[充填材及びアスファルト混合物]
以下の試験で用いた充填材及びアスファルト混合物の組み合わせを下記の表2に示す。ここで、表2のNo.19の充填材は、市販の半たわみ舗装用の充填材であり、各成分が粉体の態様で混合された材料粉末の態様で購入した。また、No.19の充填材を実験に供する際には、その材料粉末100[質量部]に対して45[質量部]の水を添加することでペースト状に変化させ、これを養生することで固化させた。また、表2のNo.1~No.18の充填材は、保水材の材料粉末に追加の粉末を混合した混合粉末の態様で用意した。また、No.1~No.18の充填材を実験に供する際には、その混合粉末に水および高性能減水剤を添加することでペースト状にし、これを養生することで固化させた。ここで、保水材の材料粉末は、セメント100[質量部]に対し、多孔質鉱物15[質量部]、繊維状粘土鉱物6[質量部]を混合してなる粉末とした。また、上記混合粉末に対する水の添加量は、混合粉末中のセメント100[質量部]に対し、170[質量部]とした。また、上記混合粉末に対する高性能減水剤の添加量は、混合粉末中のセメント100[質量部]に対し、1.0[質量部]とした。
【0039】
【0040】
ここで、表2に記載の「セメント」「多孔質鉱物」「繊維状粘土鉱物」「高性能減水剤」「カーボンブラック」の性状は、下記の表3に示すとおりであった。
【0041】
【0042】
また、表2に記載の「ポーラス」のアスファルト混合物は、骨材の最大粒径が13[mm]であり、かつ、空隙率が20[%]であるポーラスアスファルト混合物として調製した。また、表2に記載の「密粒度」のアスファルト混合物は、骨材の最大粒径が13[mm]である密粒度アスファルト混合物として調製した。
【0043】
[モルタルブロックおよび供試体]
上記各充填材を用いて、充填材からなるモルタルブロックと、アスファルト混合物の空隙に充填材を充填した供試体とを調製した。調製したモルタルブロックおよび供試体の形状は、下記の表4に示すとおりである。
【0044】
【0045】
ここで、各モルタルブロックは、表2の配合に基づいて調製したペースト状の充填材を、20[℃]、湿度95[%]の恒温恒湿の雰囲気で3[日]養生したのち、60[℃]の恒温雰囲気で24[時間]以上乾燥させることで調製された。
【0046】
また、供試体Aは、日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている「マーシャル安定度試験方法」において、該方法により試験される供試体の調製方法に準じた方法で調製された。また、供試体Bは、日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている「ホイールトラッキング試験方法」において、該方法により試験される供試体の調製方法に準じた方法で調製された。なお、No.1~No.19の各供試体は、そのポーラスアスファルト混合物層の内部の空隙に、充填材が充填されて固化された状態に調製された。また、No.20~No.21の各供試体においては、充填材が充填されていないアスファルト混合物層をそのまま使用した。
【0047】
続いて、上述のモルタルブロック及び供試体を用いて行った実験について説明する。ここで、下記の実験においては、毎回モルタルブロックまたは供試体を新たに用意して実験を行った。
【0048】
[充填材の最大吸水率の測定]
日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている「保水材の最大吸水率試験方法」に準拠し、モルタルブロックAを用いて充填材の最大吸水率を測定した。その結果を下記の表5に示す。
【0049】
【0050】
この実験結果によれば、充填材の最大吸水率は、活性炭の添加量が多くなるほど大きくなった。また、活性炭の添加量が一定である場合、充填材の最大吸水率は、添加される活性炭における比表面積が大きいほど大きくなった。
【0051】
[舗装体の路面温度低減値の測定]
日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている「路面温度上昇抑制舗装の路面温度低減値測定方法」に準拠し、供試体Aを用いて舗装体の路面温度低減値を測定した。なお、No.21の供試体Aを比較舗装用の供試体として使用した。
【0052】
その結果を下記の表6に示す。なお、この実験においては、比較舗装用の供試体たるNo.21の供試体Aは、その表面温度が60.6[℃]に昇温された。
【0053】
【0054】
この結果によれば、舗装体の路面温度低減値は、カーボンブラックを添加した場合(No.12~No.14)よりも活性炭を添加した場合(No.2~No.11、No.15~No.18)のほうがより大きくなった。また、タイプ1の活性炭を添加したNo.2~No.5の実験例においては、舗装体の路面温度低減値は、活性炭の添加量が多くなるほど大きくなった。
【0055】
[明度の測定]
日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている「色彩色差計を用いた明度測定方法」に準拠し、供試体Aを用いてその60℃乾燥状態及び表面乾燥飽水状態の各状態における明度を測定した。その結果を下記の表7に示す。
【0056】
【0057】
この結果によれば、舗装体の明度は、その充填材に活性炭およびカーボンブラックのいずれを添加することによっても低くなった。ここで、充填材に活性炭を添加した場合の、舗装体の明度の低下の度合いは、活性炭の添加量が多いほど、また、添加される活性炭における比表面積が大きいほど、顕著になった。
【0058】
[塩分吸着量の測定]
下記の手順に基づき、モルタルブロックBを用いてその単位質量あたりの塩分吸着量(すなわち、凍結防止剤の吸着量)を測定した。なお、本試験の説明においては、モルタルブロックBのことをモルタルブロック80として、
図1を参照しながら説明を行う。
【0059】
(1)モルタルブロック80を容器81内に立て、この容器81に水深が1[cm]となるように塩化ナトリウム水溶液81Aを張ることで、この塩化ナトリウム水溶液81Aをモルタルブロック80に吸水させた(
図1を参照)。ここで、塩化ナトリウム水溶液81Aの濃度は、質量パーセント濃度で5[%]とした。また、塩化ナトリウム水溶液81Aをモルタルブロック80に吸水させる時間は、24[時間]とした。この際、モルタルブロック80の吸水による、塩化ナトリウム水溶液81Aの水深変化の影響を抑えるため、吸水の途中で塩化ナトリウム水溶液81Aを補充した。この補充は、吸水開始から1[時間]の間は10[分]おき、同じく1[時間]~5[時間]の間は30[分]おき、同じく5[時間]~24[時間]の間は60[分]おきに行い、もって塩化ナトリウム水溶液81Aの水深が約1[cm]に保たれるようにした。
【0060】
(2)モルタルブロック80を容器81に立てた状態のまま乾燥機(図示せず)に入れて、105[℃]の雰囲気温度で12[時間]以上乾燥させることで、モルタルブロック80を絶対乾燥状態とした。この際には、モルタルブロック80を上記の雰囲気温度で乾燥させながらその質量を3[時間]おきに測定し、該質量の変化が見られなくなった状態を絶対乾燥状態であるものとみなした。
【0061】
(3)絶対乾燥状態となったモルタルブロック80をその高さ方向に4等分して立方体形状の分割片80A(
図1の仮想線を参照)とした。
【0062】
(4)4つの分割片80Aをそれぞれ粉砕機によって粒径が150[μm]以下となるように粉砕し、粉末状の試料を得た。
【0063】
(5)各試料につき、その2[g]分を抜き取ってこれに6[g]の水を加えたものを振とう機にて30[分]振とうさせることで、抜き取った試料に含まれる塩分が水に溶出されたスラリーを調製した。
【0064】
(6)(5)で得られたスラリーを沈殿物と上澄み液とに分離し、分離された上澄み液における塩分濃度を塩分濃度屈折計によって測定した。
【0065】
(7)(6)で得られた塩分濃度(塩化ナトリウムの濃度)c[質量%]と、(5)で抜き取った試料の量a(=2[g])およびそれに加えた水の量b(=6[g])とから、各試料における単位質量あたりの塩分吸着量S[mg/g]を計算で求めた。この計算は、下記の式1と同値な式によって行った。この式1において、xは試料に含まれる塩化ナトリウムの質量であり、yは試料に含まれる充填材の質量である。
【0066】
【0067】
(8)(7)で得られた、各試料における単位質量あたりの塩分吸着量S[mg/g]の相加平均を求め、求めた相加平均の値をモルタルブロックBにおける単位質量あたりの塩分吸着量とした。
【0068】
上記実験の結果を下記の表8に示す。
【0069】
【0070】
この結果によれば、モルタルブロックBの単位質量あたりの塩分吸着量は、カーボンブラック、または、活性炭の添加によってより多くなったが、その増加の程度がカーボンブラックまたは活性炭の添加量によって大きく変化することはなかった。
【0071】
[塩分の溶出速度の測定]
下記の手順に基づき、No.1、No.4、No.8、No.11、No.14、No.15、No.18、No.19の各モルタルブロックBを用いて、塩分(凍結防止剤)の溶出速度およびその塩分濃度を測定した。ここで、No.4、No.8、No.11、No.14、No.15、No.18は、いずれも、充填材の材料粉末におけるセメントの分量を100[質量部]として、添加される追加の粉末の分量が10[質量部]となる実験例であり、追加の粉末たる物質の種類のみが異なるものであった。なお、本試験の説明においては、モルタルブロックBのことをモルタルブロック80として、
図2および
図3を参照しながら説明を行う。
【0072】
(一)モルタルブロック80を容器81内に寝かせ、この容器81に塩化ナトリウム水溶液81Aを張ってモルタルブロック80を水浸させる処置により、このモルタルブロック80に塩化ナトリウム水溶液81Aを吸水させた(
図2参照)。ここで、塩化ナトリウム水溶液81Aの濃度は、質量パーセント濃度で5[%]とした。また、塩化ナトリウム水溶液81Aをモルタルブロック80に吸水させる時間は、24[時間]とした。
【0073】
(二)容器81からモルタルブロック80を取り出してその表面水をウエスでふき取ることで、このモルタルブロック80を表面乾燥飽水状態にした。
【0074】
(三)横倒しに寝かせた姿勢のモルタルブロック80に対して、これをはめあい状態に入れることができるうちのり(4×16[cm])を有する容器18を用意し、この容器18に1[mm]の水深で水道水(6.4[g]の水量。以下では「水18A」と称する。)を張った。しかるのちに、表面乾燥飽水状態にあるモルタルブロック80を横倒しに寝かせた姿勢にして容器18内に入れ、もってモルタルブロック80の模擬降雨状態を実現させた(
図3参照)。ここで、容器18に張られた水18Aは、この水18Aに浸されたモルタルブロック80からの塩化ナトリウム水溶液81Aの溶出によって、その塩分濃度が徐々に上昇した。
【0075】
(四)(三)の容器18に張られた水18Aにおける塩分濃度を、模擬降雨の適用開始から15[分]、30[分]、60[分]、120[分]、180[分]、240[分]、300[分]の各タイミングで測定した。この測定は、モルタルブロック80を一時的に容器18から取り出して、この容器18内の水18Aの一部をサンプルとして採取し、このサンプルにおける塩分濃度を測定することによって行った。
【0076】
上記試験の結果を下記の表9に示す。
【0077】
【0078】
この結果によれば、モルタルブロックBから溶出する塩分の量およびその溶出速度は、カーボンブラックまたは活性炭の添加により大きくなった。この傾向は、充填材にカーボンブラックを適用した場合(No.14)よりも、充填材に活性炭を適用した場合(No.4、No.8、No.11、No.15、No.18)のほうが、より顕著に表れた。また、充填材に活性炭を添加した場合においては、上記傾向は、タイプ2の活性炭を添加したとき(No.8)において最も顕著に表れた。
【0079】
[凍結防止剤の溶出量および滑り抵抗値の測定]
下記の手順に基づき、No.1、No.4、No.18、No.19、No.20、No.21の供試体Bを用いて、散布された凍結防止剤の溶出量と、凍結等による滑り抵抗値とを測定した。なお、以下においては、後述する(い)のステップ(
図4のステップS20)から、この(い)のステップに処理が戻るまでか、測定にかかる手順が終了するまでかの間に実行される一連のステップのことを、「試験サイクル」とも称する。
【0080】
(あ)各供試体を用意した(
図4のステップS10を参照)。ここで、No.1、No.4、No.18、No.19の各供試体Bは、その飽和度が90[%]以上95[%]以下となる状態に用意した。また、No.20、No.21の各供試体Bは、空気中乾燥状態で用意した。
【0081】
(い)各供試体Bを-3[℃]の恒温雰囲気で12[時間]静置した(
図4のステップS20を参照)。
【0082】
(う)各供試体Bの滑り抵抗値の初期値が、測定前であるか測定済であるかによって実行する処理が異なる、条件分岐の処理(
図4のステップS30を参照)を行った。すなわち、各供試体Bが滑り抵抗値の初期値の測定前のものである場合、各供試体Bの上面の滑り抵抗値を、滑り抵抗値の初期値として測定した(
図4のステップS40を参照)。そして、これら供試体Bの上面全体に凍結防止剤を均一に散布した(
図4のステップS50を参照)。ここで、凍結防止剤としては、2.7[g]の塩化ナトリウムを使用し、これを供試体Bの上面に、30[g/m
2]の散布量で散布した。また、滑り抵抗値の測定は、日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている、「振り子式スキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定方法」に従い、[BPN]の単位で測定した。なお、各供試体の滑り抵抗値の初期値が測定済である場合(
図4のステップS30を参照)、上記(う)の各ステップはそのすべてをスキップした。
【0083】
(え)各供試体Bの上面に模擬降雨を適用し、もってこの上面を表面水がついた状態にした(
図4のステップS60を参照)。ここで、模擬降雨は、ミスティングシステムによる水道水の霧吹きによって、0.5[mm/時間]の雨量に相当する水量(すなわち質量が45[g]となる水量)で適用した。また、模擬降雨の霧吹きを適用した時間は、1[分]未満であった。
【0084】
(お)各供試体を-3[℃]の恒温雰囲気で2[時間]静置した(
図4のステップS70を参照)。この静置の条件は、本開示者が実際の冬季の気象条件を想定し、この条件下における各舗装体の路面凍結状態を室内的に生じさせて評価するための養生の条件として設定したものであった。
【0085】
(か)各供試体Bの上面から表面水を採取し、その塩分濃度を塩分濃度屈折計によって測定した(
図4のステップS80を参照)。
【0086】
(き)各供試体Bの上面の滑り抵抗値を測定した(
図4のステップS90を参照)。ここで、滑り抵抗値の測定は、日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている、「振り子式スキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定方法」に従い、[BPN]の単位で測定した。
【0087】
(く)試験サイクルが5回目であるか否かによって実行する処理が異なる、条件分岐の処理を行った。すなわち、試験サイクルが5回目でない(1~4回目である)場合(
図4のステップS100を参照)、各供試体Bをそれぞれホイールトラッキング試験機にセットし、このホイールトラッキング試験機により各供試体Bに走行負荷を適用した(
図4のステップS110を参照)。そして、上述した(い)のステップ(
図4のステップS20)に処理を戻すことで、この(い)のステップから上記走行負荷の適用(
図4のステップS110)に至る一連のステップを1回の試験サイクルとした。ここで、上記ホイールトラッキング試験機としては、日本道路協会編『舗装調査・試験法便覧(平成31年版)』(日本道路協会、平成31年3月)に記載されている「水浸ホイールトラッキング試験方法」に供される、トラバース機構付きのホイールトラッキング試験機を使用した。しかるに、各供試体Bは、水浸のない状態で上記ホイールトラッキング試験機にセットされ、このホイールトラッキング試験機とトラバース機構との両方が動作することにより、その上面の全体にトラバース走行負荷が適用された。このトラバース走行負荷は、20[℃]の雰囲気温度の環境下で、1[時間]適用された。なお、上記トラバース走行負荷は、本開示者が車両走行による凍結防止剤の飛散もしくは流出を想定して設定した負荷であった。なお、試験サイクルが5回目である場合(
図4のステップS100を参照)、上記走行負荷の適用(
図4のステップS110)をスキップして試験サイクルの終わりとし、もって測定にかかる手順を終了させた。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
この結果によれば、各供試体は、走行負荷の適用によって表面水の塩分濃度が低下された。しかるに、充填材に活性炭が添加された実験例の供試体は、上記塩分濃度が1.9[%](No.4)または1.3[%](No.18)で下げ止まったところ、充填材に活性炭が添加されていない各実験例(No.1、No.19、No.20、No.21)の供試体は、上記塩分濃度が1[%]未満にまで低下した。ここから、充填材に活性炭が添加された実験例(No.4、No.18)は、充填材に活性炭が添加されていない他の各実験例と比して、散布された凍結防止剤(塩化ナトリウム)の流出を抑える能力が高いということができる。
【0092】
また、充填材を使用していない密粒度アスファルト混合物の実験例(No.21)の供試体Bの滑り抵抗値は、この供試体Bにおける表面水の塩分濃度の低下にともなって、2回目以降の試験サイクルにおいては急に減少した。同様に、充填材として半たわみ舗装用の充填材を使用した実験例(No.19)の供試体Bの滑り抵抗値は、この供試体Bにおける表面水の塩分濃度の低下にともなって、2回目以降の試験サイクルにおいては急に減少した。この結果は、供試体Bの上面が路面凍結状態もしくはブラックアイスバーン(氷があるようには見えないが、実際には氷で覆われた状態)となったことによるものであると推測される。
【0093】
しかるに、充填材を使用していないポーラスアスファルト混合物の実験例(No.20)の供試体Bの滑り抵抗値は、40[BPN]程度の値を維持した。この結果は、ポーラスアスファルト混合物の表面粗さが大きいこと、及び、供試体Bの表面水が該供試体B内の空隙を通って流出したことにより、供試体Bの上面にて凍結される水分の量が少なくなったこと、が原因であると推測される。
【0094】
また、充填材に活性炭が添加された実験例の供試体Bにおける滑り抵抗値は、5回の試験サイクルを経てもその減少幅が小さく、良好なすべり抵抗性を示す値(No.4では56[BPN]、No.18では47[BPN])を維持した。ここから、充填材に活性炭が添加された実験例(No.4、No.18)は、充填材に活性炭が添加されていない他の各実験例(No.1、No.19、No.20、No.21)と比して、凍結等による滑り抵抗値の低下を抑える能力が高いということができる。この結果は、充填材において凍結防止剤の流出を抑える能力が高いこと、及び、この充填材が充填されるポーラスアスファルト混合物の表面粗さが大きいこと、によるものであると推測される。
【符号の説明】
【0095】
18 容器
18A 水
80 モルタルブロック
80A 分割片
81 容器
81A 塩化ナトリウム水溶液